IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図1
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図2
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図3
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図4
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図5
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図6
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図7
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図8
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図9
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図10
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図11
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図12
  • 特許-情報記録体、媒体及び冊子体 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】情報記録体、媒体及び冊子体
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/26 20140101AFI20240827BHJP
   G07D 7/005 20160101ALI20240827BHJP
   G07D 7/20 20160101ALI20240827BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20240827BHJP
   B42D 25/382 20140101ALI20240827BHJP
   B42D 25/387 20140101ALI20240827BHJP
   B42D 25/391 20140101ALI20240827BHJP
【FI】
B42D25/26
G07D7/005
G07D7/20
B41M3/14
B42D25/382
B42D25/387
B42D25/391
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020047787
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146568
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】増山 祐子
(72)【発明者】
【氏名】山川 俊尚
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173756(WO,A1)
【文献】特開2013-091248(JP,A)
【文献】特開2005-264342(JP,A)
【文献】特開2016-093895(JP,A)
【文献】特開2015-193967(JP,A)
【文献】特開2010-110943(JP,A)
【文献】特表2010-518474(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/26
G07D 7/005
G07D 7/20
B41M 3/14
B42D 25/382
B42D 25/387
B42D 25/391
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インキ層と、第2インキ層とを備えた情報記録体であって、
前記第1インキ層と、前記第2インキ層とは、
基材の一表面上に設けられ、
それぞれ観察角度によって反射光量の異なるように構成され、
前記第1インキ層は、光輝材料で形成され、当該情報記録体を特定する第1のコードに対応する第1画像を少なくとも2つ有するものであり、
前記第2インキ層は、透明素材で形成され、当該情報記録体を特定し、前記第1のコードとは異なる第2のコードに対応する第2画像を有するものであり、
前記第1のコードは、前記第1画像に対して第1の規則に従った変換処理をすることにより得られるものであり、
前記第2のコードは、前記第2画像に対して第2の規則に従った変換処理をすることにより得られるものであり、
前記第1インキ層に有する一の前記第1画像と前記第2インキ層に有する前記第2画像とは、少なくとも一部を重畳して形成され、
前記第1インキ層に有する前記一の第1画像及び前記第2インキ層に有する前記第2画像を重畳して有する領域とは異なる位置に、前記第1インキ層に有する前記一の第1画像を除く他の前記第1画像が設けられている、情報記録体。
【請求項2】
請求項1に記載の情報記録体において、
前記第1インキ層に有する前記一の第1画像の少なくとも一部の領域上に、前記第2インキ層に有する前記第2画像が形成されている、情報記録体。
【請求項3】
請求項2に記載の情報記録体において、
前記基材の少なくとも一部の領域上に、前記第2インキ層に有する前記第2画像が直接形成されている、情報記録体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記第1インキ層及び前記第2インキ層のうち少なくとも一方は、赤外線又は紫外線による発光材料、赤外線の吸収材料及び偏光材料のうちの少なくとも1つの材料を含んだ真贋判定材料を用いて形成される、情報記録体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記第1画像と、前記第2画像とは、特定の規則によって生成されたパターン画像である、情報記録体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記第1インキ層は、明度の低い色要素で形成され、
前記第2インキ層は、前記第1インキ層より明度の高い色要素で形成されたものである、情報記録体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記基材の一表面上に設けられた第3インキ層を備え、
前記第3インキ層は、赤外線又は紫外線による発光材料、赤外線の吸収材料及び偏光材料のうちの少なくとも1つの材料を含んだ真贋判定材料を用いて形成される第3画像である、情報記録体。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記基材の一表面上に設けられた第4インキ層を備え、
前記第4インキ層は、光輝材料で形成され、真贋判定模様を有する第4画像である、情報記録体。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記基材には、特定の繊維が含まれているか、及び/又は、透かしが施されている、情報記録体。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載の情報記録体を備える媒体。
【請求項11】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載の情報記録体を備える冊子体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録体、媒体及び冊子体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像等に特定の情報を埋め込む電子透かしの技術がある。この技術を印刷物に用いれば、人間が視覚で認識できないレベルで情報を埋め込むことができ、印刷物における美術的な効果を損なうことがない。また、印刷物に埋め込まれた情報は、読取装置で読み取ることができる。
【0003】
この埋め込まれた情報を、例えば、真贋判定に用いる場合には、複製物からは、埋め込まれた情報を推定されにくいものが望ましい。そのため、埋め込み情報を推定されにくいように工夫した情報記録体に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-93895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のものは、2つの画像のうち一方の画像にコードに対応する特徴点を有するものであり、他方の画像は、一方の画像の特徴点を阻害するためのものであった。よって、他方の画像は、いわゆるダミーの画像にすぎなかった。そして、特許文献1の仕組みが公開された場合には、一方の画像のみを有する偽造品が製造される可能性があった。
【0006】
本発明は、よりセキュリティ性が向上した情報記録体等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0008】
第1の発明は、第1インキ層(31)と、第2インキ層(32)とを備えた情報記録体(30)であって、前記第1インキ層と、前記第2インキ層とは、基材(11)の一表面上に設けられ、それぞれ観察角度によって反射光量の異なるように構成され、前記第1インキ層は、当該情報記録体を特定する第1のコードに対応する第1画像(C1)であり、前記第2インキ層は、当該情報記録体を特定し、前記第1のコードとは異なる第2のコードに対応する第2画像(C2)であり、前記第1のコードは、前記第1画像に対して第1の規則に従った変換処理をすることにより得られるものであり、前記第2のコードは、前記第2画像に対して第2の規則に従った変換処理をすることにより得られるものであり、前記第1インキ層と前記第2インキ層とが少なくとも一部を重畳して形成されている、情報記録体である。
第2の発明は、第1の発明の情報記録体(30)において、前記第1画像(C1)と、前記第2画像(C2)とは、特定の規則によって生成されたパターン画像である、情報記録体である。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の情報記録体(30-3)において、前記第1インキ層(31)の少なくとも一部の領域上に、前記第2インキ層(32)が形成されている、情報記録体である。
第4の発明は、第3の発明の情報記録体(30-3)において、前記基材(11)の少なくとも一部の領域上に、前記第2インキ層(32)が直接形成されている、情報記録体である。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明までのいずれかの情報記録体(30)において、前記第1インキ層(31)は、明度の低い色要素で形成され、前記第2インキ層(32)は、前記第1インキ層より明度の高い色要素で形成されたものである、情報記録体である。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明までのいずれかの情報記録体(30)において、前記第1インキ層(31)は、光輝材料で形成され、前記第2インキ層(32)は、透明素材で形成される、情報記録体である。
第7の発明は、第6の発明の情報記録体(230)において、前記第1インキ層(31)及び前記第2インキ層(234)のうち少なくとも一方は、赤外線又は紫外線による発光材料、赤外線の吸収材料及び偏光材料のうちの少なくとも1つの材料を含んだ真贋判定材料を用いて形成される、情報記録体である。
第8の発明は、第1の発明から第7の発明までのいずれかの情報記録体(230-2)において、前記基材(11)の一表面上に設けられた第3インキ層(240)を備え、前記第3インキ層は、赤外線又は紫外線による発光材料、赤外線の吸収材料及び偏光材料のうちの少なくとも1つの材料を含んだ真贋判定材料を用いて形成される第3画像である、情報記録体である。
第9の発明は、第1の発明から第8の発明までのいずれかの情報記録体において、前記基材の一表面上に設けられた第4インキ層を備え、前記第4インキ層は、有彩色の要素又は光輝材料で形成され、真贋判定模様を有する第4画像である、情報記録体である。
第10の発明は、第1の発明から第9の発明までのいずれかの情報記録体(230-3)において、前記基材(211)には、特定の繊維が含まれているか、及び/又は、透かしが施されている、情報記録体である。
第11の発明は、第1の発明から第10の発明までのいずれかの情報記録体(30)を備える媒体(10)である。
第12の発明は、第1の発明から第10の発明までのいずれかの情報記録体を備える冊子体である。
第13の発明は、第1の発明から第10の発明までのいずれかの情報記録体(30)の真贋を判定する真贋判定装置(5)であって、読取部(65)と、前記読取部が、前記情報記録体の前記第1画像(C1)を読み取って、前記第1のコードを取得する第1読取手段(51,52)と、前記読取部が、前記情報記録体の前記第2画像(C2)を読み取って前記第2のコードを取得する第2読取手段(54,55)と、前記第1読取手段により取得した前記第1のコードと前記第2読取手段により取得した前記第2のコードとの組み合わせが、予めコード記憶部(63)に記憶されている前記第1のコードと前記第2のコードとの組み合わせに一致する場合に、前記情報記録体が本物であると判定する真贋判定手段(56)と、を備える真贋判定装置である。
第14の発明は、第13の発明の真贋判定装置(5)であって、光を照射する発光部(66)と、前記第1読取手段(51,52)により前記第1のコードを取得できた場合に、前記発光部による照射を行うように前記発光部を制御する光制御手段(53)と、を備え、前記第2読取手段(54,55)は、前記光制御手段により前記発光部から光が照射されている間に、前記情報記録体の前記第2画像を読み取って前記第2のコードを取得する、真贋判定装置である。
第15の発明は、第1の発明から第10の発明までのいずれかの情報記録体(30)の真贋を判定するコンピュータ(5)で実行するプログラム(61a,61b)であって、前記コンピュータを、前記情報記録体の前記第1画像(C1)から前記第1のコードを取得する第1読取手段と、前記情報記録体の前記第2画像(C2)から前記第2のコードを取得する第2読取手段と、前記第1のコードと前記第2のコードとの組み合わせを記憶したコード記憶部(63)を参照し、前記第1読取手段により取得した前記第1のコードと前記第2読取手段により取得した前記第2のコードとの組み合わせが、前記コード記憶部の組み合わせに一致する場合に、前記情報記録体が本物であると判定する真贋判定手段と、して機能させるためのプログラムである。
第16の発明は、第1の発明から第10の発明までのいずれかの情報記録体(30)の真贋判定方法であって、前記第1画像(C1)を読み取って前記第1のコードを取得するステップと、前記第2画像(C2)を読み取って前記第2のコードを取得するステップと、取得した前記第1のコードと取得した前記第2のコードとの組み合わせに基づいて真贋を判定するステップと、を含む真贋判定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、よりセキュリティ性が向上した情報記録体等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る印刷物を説明するための図である。
図2】第1実施形態に係る情報記録体のパターン画像の例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る情報記録体のパターン画像の他の例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る情報記録体の構造に基づく観察態様を説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る印刷物のコピー時の照明光源とカメラとの位置関係を説明するための図である。
図6】第1実施形態に係る読取装置の機能ブロック図である。
図7】第1実施形態に係る読取装置での真贋判定処理を示すフローチャートである。
図8図7の続きである。
図9】第1実施形態に係る他の印刷物の具体例を示す図である。
図10】第1実施形態に係る他の印刷物の具体例を示す図である。
図11】第2実施形態に係る印刷物を説明するための図である。
図12】第2実施形態に係る他の印刷物の具体例を示す図である。
図13】第2実施形態に係る他の印刷物の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。なお、これは、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る印刷物10を説明するための図である。
<印刷物10>
図1(A)に示す印刷物10(媒体)は、例えば、入場券等のチケットである。図1(A)は、鉛直方向Zの上側から下方を見た印刷物10の平面図を示す。印刷物10は、例えば、それ自体に金銭的な価値を有するが、印刷物10をコピーしたコピー品は、金銭的な価値を有さない。印刷物10は、用紙11と、情報記録体30とを備える。
用紙11は、印刷物10の基礎となる基材であり、例えば、白色用紙である。なお、用紙11は、白色用紙に限らず、上質紙、コート紙、タック紙、プラスチックカード、フィルム等、印刷画像を担持できる平面を有していれば、他のものであってもよい。印刷画像は、この例では、チケットの内容に関するものである。
【0012】
<情報記録体30の構造>
用紙11の表面側、つまり、Z方向の上側には、情報記録体30を有する。情報記録体30は、潜像印刷によって、例えば、コード等の真贋判定に用いる情報が印刷されたものである。情報記録体30に印刷された画像は、用紙11の観察方向を変えることで変わるものである。
【0013】
図1(B)は、図1(A)におけるX-X方向断面の部分模式図である。図1(B)は、Y方向手前から見た印刷物10の断面図を示す。図1(B)に示すように、情報記録体30は、用紙11上に、光輝層31(第1インキ層)と、透明層32(第2インキ層)とを含む合成画像を備える。合成画像は、光輝層31と、透明層32とを重ねた合成層による画像である。
光輝層31は、光輝性材料を含むインキによって、パターン画像(第1画像)が印刷された層である。
透明層32は、透明なインキによって、光輝層31のパターン画像とは異なるパターン画像(第2画像)が印刷された層である。
この例では、光輝層31と、透明層32とは、正方形状であり、透明層32は、光輝層31の全体に形成されている。
【0014】
ここで、情報記録体30の製造方法を、簡単に説明する。
まず、予めチケットの内容を印刷済の用紙11を用意し、用紙11の上に光輝層31として、光輝性材料を含む光沢インキ等で、パターン画像をグラビア印刷する。パターン画像を描く光輝性材料を含むインキは、例えば、以下に例示するように、様々な種類のインキが想定される。
例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉、錫粉、又はリン化鉄等を成分とする銀色インキであってよい。また、銀色インキに、顔料や染料を含む有色色素の有彩色のインキを混合したインキであってよい。
【0015】
さらに、光輝層31は、青味金色又は赤味金色を示す光輝性材料のみのインキであってもよい。また、青味金色又は赤味金色を示す光輝性材料のインキに、上述した有色色素の有彩色のインキを混合したものであってもよい。
さらにまた、光を反射させることで色彩が変化する機能性顔料を含んだインキである、パールインキ、液晶インキ、OVI(Optical Variable Ink)、CSI(Color Shifting Ink)等であってもよい。なお、パールインキは、通常の顔料と比較して真珠光沢を有し、その安全性、光沢性、高級感を有するパール顔料を含んでなるインキである。液晶インキは、温度で色が変わる特性を持つ液晶を含んでなるインキである。
今回の例では、光輝層31には、光輝性材料を含む銀色インキを用いている。
【0016】
次に、この光輝層31のパターン画像上に、透明層32として、透明なインキ等で別のパターン画像を重ねてグラビア印刷する。このパターン画像を描くインキは、例えば、マットOPニス、透明ニス、インキワニス、透明インキ又はメジウムインキ等の無彩色のインキである。なお、これらのインキは、紫外線硬化型インキ、酸化重合型インキ、浸透型インキ、過熱乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ等のいずれの印刷インキであってもよい。
なお、上述した光輝層31及び透明層32に用いる材料は、一例であり、それぞれ観察角度によって反射光量の異なるものであれば、他の材料であってもよい。
【0017】
ここで、塗布するインキの厚さは、いずれも、例えば、1マイクロメートル程度である。なお、インキの厚さは、これに限定するものではない。また、例えば、材料によって、インキの厚さを変えてもよい。
上述の印刷工程は、グラビア印刷に限らず、ウェットオフセット印刷、ドライオフセット印刷、凸版印刷、水無平版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷及び凹版印刷等であってもよい。
【0018】
次に、情報記録体30の印刷工程で印刷される一定面積の印刷領域において、下地を隠蔽しうる面積を%で表した印刷条件を面積率とし、特に網点で下地を隠しうる場合を網点面積率として、光輝層31及び透明層32の印刷を説明する。
図2及び図3は、第1実施形態に係る情報記録体30のパターン画像の例を示す図である。
図4は、第1実施形態に係る情報記録体30の構造に基づく観察態様を説明するための図である。
【0019】
図2(A)は、光輝層31の画像C1(第1画像)及びその一部である領域E1を拡大したものを示す。光輝層31は、画像C1が印刷された層である。画像C1は、領域E1に示すように、前景部C1aと、背景部C1bとを2値で表したパターン画像である。
前景部C1aは、例えば、網点面積率100%の印刷がされており、背景部C1bは、例えば、網点面積率75%の印刷がされている。但し、この割合は、一例であって、これに限定されない。例えば、前景部C1aの網点面積率が100%未満であってもよく、また、背景部C1bの網点面積率が75%以外であってもよい。その場合には、前景部C1aと、背景部C1bとの網点面積率の差が15%以上50%以下になるようにするのが望ましい。また、前景部C1aと、背景部C1bとの疎密が逆であってもよい。
【0020】
図2(B)は、透明層32の画像C2(第2画像)及びその一部である領域E2を拡大したものを示す。透明層32は、画像C2が印刷された層である。画像C2は、領域E2に示すように、前景部C2aと、背景部C2bとを2値で表したパターン画像である。
前景部C2aは、例えば、網点面積率100%の印刷がされており、背景部C2bは、例えば、網点面積率25%の印刷がされている。但し、この割合も一例であって、これに限定されない。例えば、前景部C2aの網点面積率は、100%未満であってもよく、また、背景部C2bの網点面積率は、前景部C2aとの間で所定の差があれば、網点面積率25%以上であっても以下であってもよい。また、前景部C2aと、背景部C2bとの疎密が逆であってもよい。
そして、前景部C2aと背景部C2bとの疎密差は、前景部C1aと背景部C1bとの疎密差よりも大きい。
このように、情報記録体30の光輝層31の画像C1と、透明層32の画像C2とは、パターン画像であるので、人が一見しただけでは無意味な画像である。
【0021】
ここで、情報記録体30の光輝層31及び透明層32は、前景部及び背景部からなるパターン画像が印刷されているものに限定されない。
図3(A)及び図3(B)は、光輝層31の画像Cxと、透明層32の画像Cyとが、前景部のみからなるパターン画像である場合を示す。この場合、画像Cx及び画像Cyの印刷領域Cxa及びCyaを網点面積率100%で印刷し、印刷領域Cxa及びCyaと、印刷しない非印刷領域Cxb及びCybとによって、2値でパターン画像を表したものになる。
【0022】
次に、図2及び図3に示されるパターン画像について説明する。
パターン画像は、特定の規則(第1の規則、第2の規則)によって生成された画像である。パターン画像は、例えば、フーリエ変換を行うことで周波数変換した空間周波数領域に、特徴的な点や線を表すことができるものである。パターン画像に対して変換処理を行うことによって、例えば、特徴的な点を表すことができるものである場合、画像C1に対して変換処理をすることで表される点と、画像C2に対して同様の変換処理をすることで表される点とは異なる。また、画像C1と画像C2とを含む合成画像に対して変換処理をすることで表される点は、上記のものとはさらに異なる。
ここで、特定の規則は、フーリエ変換に限定されるものではなく、他の変換処理であってもよい。例えば、バーコードに対する変換処理や、QRコード(登録商標)等の二次元コードに対する変換処理等であってもよい。
【0023】
上述の情報記録体30は、観察する視点の角度(観察角度)によって、認識可能な画像が変化する。
図4(A)は、拡散反射領域及び正反射(鏡面反射)領域での照明光源21と、視点22と、情報記録体30との3つの位置関係を図示したものである。
図4(A)に示すような照明光源21と情報記録体30との位置に対して、位置P1に視点22(22a)があるとき、位置P1では、拡散反射領域で観察したことになる。これは、照明光源21が情報記録体30の面に対して斜め方向から照射されている場合であり、このときの位置P1は、情報記録体30の法線方向(Z方向)であって、情報記録体30に対向する位置である。また、照明光源21と情報記録体30とが同じ条件で、位置P2に視点22(22b)があるとき、位置P2では、正反射領域で観察したことになる。この場合、位置P2は、情報記録体30の法線と照明光源21との間の角度を角度θLとすると、情報記録体30の法線に対して照明光源21と対称の位置であって、角度θLと同じ角度である角度θRの方向から情報記録体30を視認する位置である。
【0024】
ここで、照明光源21は、可視光を出力するものである。
なお、図4(B)に示すような照明光源21と情報記録体30との位置に対して、位置P3に視点22(22c)があるとき、情報記録体30の法線を対称の軸として、照明光源21と位置P3とが線対称の位置にある。そのため、この場合も、位置P3では、正反射領域で観察したことになる。
以下において、図2に示す画像C1及び画像C2を例に説明する。
【0025】
情報記録体30が光輝層31のみからなる場合には、拡散反射領域においては、図2(A)の画像C1の前景部C1aと背景部C1bとの疎密差により反射光量に大きく差が生じるため、前景部C1aと背景部C1bとが区別できる。他方、正反射領域においては、前景部C1aと背景部C1bとが共に反射光量が大きくなるため、その差を感知できず、前景部C1aと背景部C1bとは、区別できなくなる。
【0026】
次に、情報記録体30が透明層32のみからなる場合には、拡散反射領域においては、図2(B)の前景部C2aと背景部C2bとは、透明なため区別できない。他方、正反射領域においては、前景部C2aと背景部C2bとの疎密差で反射光量が変わるため、前景部C2aと背景部C2bとが区別できる。
そして、情報記録体30が光輝層31上に透明層32が形成されたものである場合には、拡散反射領域においては、前景部C1aと背景部C1bとが区別でき、前景部C2aと背景部C2bとが区別できないため、全体としては、前景部C1aと背景部C1bとが観察される。また、正反射領域においては、前景部C1aと背景部C1bとは区別できないが、前景部C2aと背景部C2bとが区別でき、全体として前景部C2aと背景部C2bとが観察される。
【0027】
このように、光輝層31と、透明層32とは、観察角度によって反射光量が異なる材料(インキ等)を用いることで、光輝層31の画像と、透明層32の画像とは、観察角度によって見えたり見えなかったり、と様々な見せ方をさせることができる。
【0028】
<印刷物10の複製>
次に、印刷物10が複製された場合について説明する。
図5は、第1実施形態に係る印刷物10のコピー時の照明光源21とカメラ23との位置関係を説明するための図である。
図5は、コピー機等の複製機の照明光源21とカメラ23と印刷物10との位置関係を示す。印刷物10の情報記録体30は、図5に示す照明光源21から光が照射された状態で、カメラ23によってその画像が取得される。
【0029】
図5は、照明光源21が情報記録体30に対してやや斜め方向から照射し、カメラ23が情報記録体30に対して垂直方向から撮影して画像を取得する場合である。コピー機等の複製機に代表されるように、照明光源21とカメラ23と印刷物10とが図5のような位置関係にある場合、例えば、特開2009-21812の段落[0009]に示すように、カメラ23は、印刷物10の面で乱反射した光を読み取る。そのため、カメラ23には、照明光源21と情報記録体30との位置関係によって、情報記録体30の光輝層31と透明層32との両方の画像が捉えられる。
このようにして、カメラ23が得た画像をもとに、複製機では、印刷物10のコピー品が作製される。
【0030】
そして、コピー品は、印刷物10の情報記録体30(図1(A)参照)に対応する位置に、印刷体を有するものになる。印刷体には、情報記録体30の光輝層31が有するパターン画像と、透明層32が有するパターン画像との合成画像を有する。また、印刷体は、例えば、一般的なカーボンを含む黒色インキ、又は、カラーコピーの場合には有色インキからなる層を有する。よって、印刷体をいずれの領域(拡散反射領域、正反射領域等)からの観察角度で観察した場合であっても、印刷体は、合成画像のみが見えるものになる。よって、印刷体は、透明層32が有するパターン画像のみを観察できないものになる。
【0031】
<読取装置5>
次に、印刷物10の情報記録体30からコードを読み取る読取装置5(真贋判定装置)について説明する。
図6は、第1実施形態に係る読取装置5の機能ブロック図である。
読取装置5は、例えば、スマートフォンに代表される携帯端末である。
読取装置5は、制御部50と、記憶部60と、読取部65と、光出力部66(発光部)と、タッチパネルディスプレイ67と、通信インタフェース部69とを備える。
【0032】
制御部50は、読取装置5の全体を制御するCPU(中央処理装置)である。制御部50は、記憶部60に記憶されているOS(オペレーティングシステム)やアプリケーションプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、各種機能を実行する。
制御部50は、第1画像受付部51と、第1変換部52と、光制御部53と、第2画像受付部54と、第2変換部55と、真贋判定部56とを備える。
【0033】
第1画像受付部51は、情報記録体30を読取部65が読み取ることで、読取部65を介して情報記録体30の画像データを受け付ける。
第1変換部52は、後述する変換アプリ61bを用いて、第1画像受付部51が受け付けた画像データに対して所定の変換を行い、第1データ(第1のコード)を取得する。
光制御部53は、第1変換部52により第1データが取得できた場合に、光出力部66から光を照射させて、光の出力を継続させた状態にする。また、光制御部53は、次に説明する第2変換部55により第2データが取得できた場合に、光出力部66から照射させていた光の出力を停止させる。
【0034】
第2画像受付部54は、再度、同じ情報記録体30を読取部65が読み取ることで、読取部65を介して情報記録体30の画像データを受け付ける。
第2変換部55は、変換アプリ61bを用いて、第2画像受付部54が受け付けた画像データに対して所定の変換を行い、第2データ(第2のコード)を取得する。
真贋判定部56は、真贋判定テーブル63(コード記憶部)を参照して、第1変換部52により取得された第1データ及び第2変換部55により取得された第2データが対応付けられて記憶されているか否かにより、情報記録体30の真贋を判定する。
【0035】
記憶部60は、制御部50が各種の処理を実行するために必要なプログラム、データ等を記憶するための半導体メモリ素子等の記憶領域である。
なお、コンピュータとは、制御部、記憶装置等を備えた情報処理装置をいい、読取装置5は、制御部50、記憶部60等を備えた情報処理装置であり、コンピュータの概念に含まれる。
【0036】
記憶部60は、プログラム記憶部61と、真贋判定テーブル63とを記憶する。
プログラム記憶部61は、各種のプログラムを記憶する記憶領域である。プログラム記憶部61は、制御プログラム61a(プログラム)と、変換アプリ61bとを記憶する。制御プログラム61aは、制御部50の各機能を実行するためのプログラムである。変換アプリ61bは、制御プログラム61aから呼び出されることで用いられる、画像データに対して所定の変換を行うための専用アプリ(アプリケーション)である。制御プログラム61a及び変換アプリ61bは、通信インタフェース部69を介して、例えば、図示しないアプリ配信サーバからダウンロードして、プログラム記憶部61に記憶される。
なお、この例では、制御プログラム61aと、変換アプリ61bとは、別プログラムとして説明したが、1つのプログラムによって実現してもよい。
【0037】
真贋判定テーブル63は、情報記録体30を特定する第1データ及び第2データの組み合わせを記憶したテーブルである。真贋判定テーブル63には、予め正しい情報記録体30の光輝層31の第1画像に対応したデータと、透明層32の第2画像に対応したデータとを対応付けて記憶している。
【0038】
読取部65は、例えば、カメラであって、画像や文字等の印刷内容を画像として取得する装置である。読取部65は、例えば、タッチパネルディスプレイ67とは反対側であって、読取装置5の背面側に有するアウトカメラである。印刷物10の情報記録体30は、読取装置5の読取部65によって読み取られる。
光出力部66は、例えば、読取部65の近傍に設けられたライトである。
タッチパネルディスプレイ67は、液晶パネル等で構成される表示部としての機能と、ユーザの指等によるタッチ入力を検出する入力部としての機能とを有する。
通信インタフェース部69は、例えば、上述したアプリ配信サーバ等との間で通信を行うためのインタフェースである。
【0039】
<読取装置5の処理>
次に、読取装置5の処理について説明する。
図7及び図8は、第1実施形態に係る読取装置5での真贋判定処理を示すフローチャートである。
この処理を開始するにあたって、まず、ユーザの読取装置5に対する操作によって、読取装置5の制御部50は、読取部65を起動させた状態にする。
図7のステップS(以下、ステップSを単に「S」という。)11において、制御部50(第1画像受付部51)は、読取部65を介して情報記録体30に有する画像を読み取る。
【0040】
ここで、ユーザは、読取部65を、情報記録体30の光輝層31が有する第1画像を読取可能な角度から、第1画像を読み取ることができる。また、ユーザは、読取部65を、情報記録体30の透明層32が有する第2画像を読取可能な角度から、第2画像を読み取ることができる。さらに、ユーザは、読取部65を、情報記録体30の光輝層31が有する第1画像及び透明層32が有する第2画像の両方を読取可能な角度から、第1画像及び第2画像を読み取ることができる。
【0041】
このS11では、情報記録体30の光輝層31が有する第1画像から第1データを取得したいため、ユーザは、光輝層31が有する第1画像のみを視認可能な拡散反射領域を特定して、画像を読み取るための操作を行う。拡散反射領域を特定するには、例えば、ユーザは、部屋の光等の光源が情報記録体30の面に対して斜め方向から照射されるようにし、かつ、読取装置5の読取部65を、情報記録体30の法線方向であって、情報記録体30に対向するように、読取装置5の読取部65を配置すればよい。これは、図4(A)の照明光源21と、位置P1との関係と同様である。
【0042】
S12において、制御部50(第1変換部52)は、S11によって読み取った画像に対して変換処理を行い、第1データを取得する。変換処理は、変換アプリ61bにより実行される。
S13において、制御部50は、S12において第1データが取得できたか否かを判断する。ここで、制御部50は、真贋判定テーブル63を参照して、第1データが、真贋判定テーブル63の第1データの記憶項目のいずれかに記憶されているか否かを判断することによって、第1データが取得できたか否かを判断してもよい。また、制御部50は、単にS12によって何かしらのデータが取得できたか否かによって、第1データが取得できたか否かを判断してもよい。第1データが取得できた場合(S13:YES)には、制御部50は、処理をS14に移す。他方、第1データが取得できなかった場合(S13:NO)には、制御部50は、処理をS18に移す。
【0043】
S14において、制御部50(光制御部53)は、光出力部66を制御して、光を出力(照射)させた状態にする。
S15において、制御部50(第2画像受付部54)は、読取部65を介してS11で読み取ったのと同じ情報記録体30に有する他の画像を読み取る。
このS15では、情報記録体30の透明層32が有する第2画像から第2データを取得したいため、ユーザは、透明層32が有する第2画像のみを視認可能な正反射領域を特定して、画像を読み取るための操作を行う。正反射領域を特定するには、例えば、ユーザは、読取装置5を、情報記録体30の法線方向であって、情報記録体30に対向するように配置すればよい。このようにすれば、読取装置5の光出力部66と読取部65との位置関係が、図4(B)の照明光源21と、位置P3との関係と同様になるので、読取部65は、情報記録体30の透明層32が有する第2画像を読み取ることができる。
【0044】
S16において、制御部50(第2変換部55)は、S15によって読み取った画像に対して変換処理を行い、第2データを取得する。変換処理は、変換アプリ61bにより実行される。
S17において、制御部50は、S16において第2データが取得できたか否かを判断する。第2データが取得できた場合(S17:YES)には、制御部50は、処理を図8のS21に移す。他方、第2データが取得できなかった場合(S17:NO)には、制御部50は、処理をS18に移す。なお、制御部50は、第2データが取得できたか否かの判断を、第1データの取得時の判断(S13)と同様に行う。
S18において、制御部50は、読取エラーである旨を、タッチパネルディスプレイ67に出力する。その後、制御部50は、本処理を終了する。
【0045】
他方、図8のS21において、制御部50(光制御部53)は、光出力部66を制御して、出力させていた光の出力を停止させる。制御部50は、その際、読取部65の実行を終了してもよい。また、制御部50は、情報記録体30に有する画像を読み取った後(図7のS11の処理後)に読取部65の実行を終了(停止)してもよい。そして、制御部50は、画像の読み取りが再度必要になった場合(図7のS15の処理前)に、読取部65の起動を再度行って、その後(図7のS15の処理後)に、再度読取部65の実行を終了してもよい。
【0046】
S22において、制御部50(真贋判定部56)は、第1データ及び第2データの組み合わせに一致する組み合わせ(レコード)が真贋判定テーブル63に存在するか否かを判断する。第1データ及び第2データの組み合わせに一致する組み合わせが真贋判定テーブル63に存在する場合(S22:YES)には、制御部50は、処理をS23に移す。他方、第1データ及び第2データの組み合わせに一致する組み合わせが真贋判定テーブル63に存在しない場合(S22:NO)には、制御部50は、処理をS24に移す。
【0047】
S23において、制御部50(真贋判定部56)は、印刷物10が本物である旨を、タッチパネルディスプレイ67に出力する。その後、制御部50は、本処理を終了する。
他方、S24において、制御部50(真贋判定部56)は、印刷物10が偽物である旨を、タッチパネルディスプレイ67に出力する。その後、制御部50は、本処理を終了する。
【0048】
この例では、第1画像を読み取ってから、第2画像を読み取るものを例に説明したが、この順番に限定されるものではなく、第2画像を読み取ってから、第1画像を読み取ってもよい。その場合には、制御部50は、まず、図7のS14から図8のS21までの処理を行った後、図7のS11からS13までの処理を行い、図8のS22以降の処理を行えばよい。
【0049】
次に、他の情報記録体30を有する印刷物10の例について説明する。なお、説明に際しては、上述した印刷物10及び情報記録体30と同じ機能を果たす部分には、末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略し、上述した印刷物10及び情報記録体30と異なる構成について、詳細に説明する。
図9から図11までは、第1実施形態に係る他の印刷物10の具体例を示す図である。
【0050】
図9(A)は、印刷物10-2の例を示す。
印刷物10-2は、用紙11上に、光輝層31及び31-2と、透明層32とによって構成された情報記録体30-2を有するものである。
図9(B)は、図9(A)におけるX1-X1方向断面の部分模式図である。図9(B)に示すように、情報記録体30-2は、光輝層31の上に透明層32が重なったものと、光輝層31-2のみのものとに分けて形成される。ここで、光輝層31と、光輝層31-2とは、共に同じパターン画像であり、パターン画像に対して変換処理を行うことによって表される特徴(特徴的な点や線)は、同じである。
【0051】
このように、情報記録体30-2は、光輝層31の上に透明層32が形成された領域とは別に、光輝層31-2だけの領域を有する。このようにすることで、光輝層31-2を読み取ることで、光輝層31の上に透明層32が形成された領域を読み取るものに比較して、第1画像を読み取りやすくできる。
なお、図9では、光輝層31と、光輝層31-2との大きさが異なるものを例に示したが、これに限定されない。大きさは、同じであってもよい。また、光輝層31と、光輝層31-2とは、結合されていてもよい。
【0052】
図10(A)は、印刷物10-3の例を示す。
印刷物10-3は、用紙11上に、光輝層31と、透明層32とによって構成された情報記録体30-3を有するものである。情報記録体30-3は、透明層32が、光輝層31の一部に重なると共に、用紙11上に一部がはみ出した状態になっている。
図10(B)は、図10(A)におけるX2-X2方向断面の部分模式図である。図10(B)に示すように、情報記録体30-3は、光輝層31が形成された領域と、透明層32が形成された領域とが、平面視で一致せず、大きさ及び位置が異なる。
【0053】
そのため、光輝層31が観察されている状態と、透明層32が観察されている状態とが判別しやすくなるので、光輝層31から第1画像を、透明層32から第2画像を、それぞれ読み取りやすいものにできる。
また、光輝層31だけの部分と、透明層32だけの部分の大きさを、コードが読み取れない程度の小さいものにすれば、印刷物10-3をコピーした際に作製される印刷体の合成画像では、コードを読み取れないものにできる。
【0054】
このように、第1実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)情報記録体30は、光輝層31と、透明層32との両方に、異なる画像を有し、両方の画像は、共に、変換処理によってコードが得られるものである。よって、得られた複数のコードを用いることで、よりセキュリティ性の高いものにできる。
(2)光輝層31に有する画像と、透明層32に有する画像とを、共にパターン画像にすることで、人が一見しただけでは無意味なものにできる。
(3)画像C1は、光輝層31に有し、画像C2は、透明層32が有するものであるので、情報記録体30の観察角度によって、画像C1と、画像C2とを切り替えて観察できる。そして、光輝層31は、光輝性材料を含む光沢インキ等で作製でき、透明層32は、透明なインキ等で作製できるので、切り替えられる印刷が安価にできる。
【0055】
(4)読取装置5によって、画像C1のみが見える観察角度で情報記録体30を読み取り、次に、光を出力して画像C2のみが見える観察角度で情報記録体30を読み取ることで、読取装置5は、画像C1と、画像C2とをそれぞれ変換処理して取得したデータからコードを得ることができる。
そして、読取装置5は、得られたコードの組み合わせが、真贋判定テーブル63に有する否かによって、情報記録体30の真贋を判定するので、両方の画像が正しい場合にのみ、本物であると判断でき、セキュリティ性が高いものにできる。
さらに、読取装置5は、画像C1と画像C2とからなる合成画像のみを観察可能なコピー品の印刷体を読み取った場合には、合成画像からは、画像C1に対応するコードや、画像C2に対応するコードを得られず、合成画像を用いた場合には必ず偽物であると判断できる。
【0056】
(5)読取装置5は、画像C1を読み取った後に、光を出力し、画像C2を読み取った後に、出力していた光を停止させる。よって、読取装置5は、情報記録体30をユーザに読み取らせるオペレーションに即した制御を行うことができ、情報記録体30の真贋判定をする場合に、ユーザにとって使い勝手が良いものにできる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、他の真贋判定可能な構成を、追加で備えるものである。
図11は、第2実施形態に係る印刷物210を説明するための図である。
図11(A)に示す印刷物210は、用紙11と、情報記録体230とを備える。
情報記録体230は、光輝層31と、透明層234(第2インキ層)とを備える。
透明層234は、透明なインキによって、光輝層31のパターン画像とは異なるパターン画像が印刷された層である。このパターン画像を描くインキは、例えば、マットOPニスや透明ニス等の第1実施形態での透明層32で用いられた無彩色のインキに、真贋判定材料として蛍光材料である、特定の紫外線の励起波長によって発光する蛍光インキを混ぜたインキである。蛍光インキは、例えば、紫外線の波長が315~380nm程度であるUV-A域のインク等、ブラックライトによって発光するよるものであってもよい。
【0058】
図11(B)は、図11(A)におけるX3-X3方向断面の部分模式図である。図11(B)に示すように、情報記録体230は、光輝層31の上に透明層234が重なったものである。
情報記録体230は、可視光によるものでは、第1実施形態の図1に示す例と同様に、拡散反射領域か、正反射領域かにより、光輝層31に有する第1画像と、透明層234に有する第2画像とを切り替えて視認が可能である。
また、情報記録体230は、蛍光インキに対応した特定の紫外線の励起波長の光により、第2画像が蛍光するものにできる。
【0059】
そのため、例えば、第1実施形態で説明した真贋判定処理によって、情報記録体230が偽物であると判定された場合に、例えば、ユーザは、印刷物210の製造会社等の確認機関に確認を依頼する。確認機関では、さらに真贋を詳細に判定するため、情報記録体230に、ブラックライトを照射させる。そうすると、第2画像が蛍光するか否かにより、より正確な真贋が判定できる。
【0060】
なお、上記では、透明層234を構成するものとして、透明層32で用いられた無彩色のインキに、蛍光材料として、特定の紫外線の励起波長によって発光する蛍光インキを混ぜたインキであるものを例に説明したが、これに限定されない。他の真贋判定材料を無彩色のインキに混ぜたインキでもよい。他の真贋判定材料としては、例えば、赤外線の励起波長により発光するアップコンバージョンや赤外線発光材料であってもよい。また、赤外線の吸収材料であってもいし、偏光材料であってもよい。
【0061】
(変形例1)
次に、情報記録体230の他の例について説明する。
図12及び図13は、第2実施形態に係る他の印刷物210の具体例を示す図である。
図12(A)は、印刷物210-2の例を示す。
印刷物210-2は、用紙11上に、光輝層31及び31-2と、透明層32と、真贋判定層240(第3インキ層)とによって構成された情報記録体230-2を有するものである。
【0062】
図12(B)は、図12(A)におけるX4-X4方向断面の部分模式図である。図12(B)に示すように、情報記録体230-2は、光輝層31の上に透明層32が重なったものと、光輝層31-2のみのものとの他に、真贋判定層240が形成される。ここで、光輝層31と、光輝層31-2とは、共に同じパターン画像であり、パターン画像に対して変換処理を行うことによって表される特徴(特徴的な点や線)は、同じである。
【0063】
真贋判定層240は、例えば、何かしらの画像である第3画像が描かれており、この第3画像を描くインキは、例えば、マットOPニスや透明ニス等の第1実施形態での透明層32で説明した無彩色のインキに、真贋判定材料として蛍光材料である、上記したものと同様の特定の紫外線の励起波長によって発光するインキを混ぜたインキである。
【0064】
このように、情報記録体230-2は、光輝層31の上に透明層32が形成された領域とは別に、光輝層31-2だけの領域を有する。このようにすることで、光輝層31-2を読み取ることで、光輝層31の上に透明層32が形成された領域を読み取るものに比較して、第1画像を読み取りやすくできる。
【0065】
また、情報記録体230-2は、蛍光インキに対応した特定の紫外線の励起波長の光により、真贋判定層240に描かれた第3画像が蛍光するので、情報記録体230-2を有する印刷物210-2の他の方法による真贋の判定が可能になる。
【0066】
(変形例2)
図13(A)は、印刷物210-3の例を示す。
印刷物210-3は、用紙211上に、光輝層31と、透明層32とによって構成された情報記録体230-3を有するものである。
用紙211は、例えば、白色用紙に、特定の繊維として有色繊維を含むものである。なお、用紙211は、その他、特定の繊維として蛍光繊維を含むものであってもよいし、透かしを含むものであってもよい。また、用紙211は、特定の繊維と透かしとの両方を含むものであってもよい。このように、用紙211は、それ自体が、真贋判定が可能なように、特殊な加工によって製造されたものである。
【0067】
図13(B)は、図13(A)におけるX5-X5方向断面の部分模式図である。図13(B)に示すように、情報記録体230-3は、光輝層31の上に透明層32が重なって形成される。
【0068】
このように、情報記録体230-3は、光輝層31の上に透明層32が形成された領域によって、第1実施形態で説明したように、情報記録体230-3を含む印刷物210-3の真贋を判定できる。また、用紙211は、白色用紙に有色繊維を含むといった、真贋判定可能な特徴が施されたものであるので、用紙211という別の方法によっても、印刷物210-3の真贋を判定できる。
【0069】
(変形例3)
他の印刷物210として、図示しないが、情報記録体230に、光輝性インキや有色インキを用いた真贋判定模様の画像である第4画像をさらに設けるようにしてもよい。その場合、真贋判定模様の第4画像が描かれるインキ層(第4インキ層)は、情報記録体230とは別の領域に設けるようにする。真贋判定模様としては、例えば、マイクロ文字、コピー牽制パターン、フィルム潜像、凹版印刷等がある。
【0070】
このように、真贋判定模様の画像である第4画像を、情報記録体230に有するようにすることで、第4画像の有無によっても、情報記録体230を有する印刷物210の他の方法による真贋の判定が可能になる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0072】
(変形形態)
(1)各実施形態では、パターン画像を印刷するものを例に説明したが、これに限定されない。転写や、レーザ描画等の印刷以外の手法で、パターン画像を形成するものであってもよい。
(2)各実施形態では、情報記録体を有する印刷物を、チケットを例に説明したが、これに限定されない。例えば、ゲームで使用するカード類や、セキュリティ保護のラベル等であってもよい。また、情報記録体を、電子透かしに用いてもよい。
(3)各実施形態では、光輝層31及び透明層32を正方形状であるものとして説明したが、これに限定されない。光輝層31及び透明層32は、長方形状や、円形状、楕円形上等、他の形状であってもよい。
【0073】
(4)各実施形態では、光輝層31の上に、直接透明層32を形成したものを例に説明したが、これに限定されない。例えば、光輝層31と、透明層32との間に透明フィルムのような基材を有するものであってもよい。また、例えば、各実施形態で説明した光輝層31の上に透明層32を形成したものに対して、さらに、透明層32の上に、透明フィルムのような基材を有するものであってもよい。このように透明フィルムのような基材を有することによって、透明フィルムの下の層である光輝層31の部分が削られにくくなる。
【0074】
(5)各実施形態では、読取装置を、携帯端末を例に説明したが、これに限定されない。例えば、パーソナルコンピュータであってもよい。そして、読取部は、スキャナ等であってもよい。また、光出力部は、例えば、パーソナルコンピュータに接続されたライト等であってもよい。
(6)各実施形態では、読取装置による処理として、第1のコードと第2のコードとの組み合わせが、読取装置の記憶部に記憶された真贋判定テーブルに記憶されているか否かによって、真贋判定を行うものを例に説明したが、これに限定されない。例えば、真贋判定テーブルは、読取装置に対して通信可能に接続されたサーバ等に有していてもよい。
【0075】
(7)各実施形態では、光輝層31の第1画像に対する変換処理と、透明層32の第2画像による変換処理とを、同じ処理として説明したが、これに限定されない。第1画像に対する変換処理と、第2画像に対する変換処理とは、異なる処理であってもよい。
(8)各実施形態では、情報記録体を有する媒体として印刷物を例に説明したが、これに限定されない。情報記録体を有する媒体であれば、カード等の他のものであってもよい。また、情報記録体を有する媒体に限定されるものではなく、情報記録体を有する冊子体であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
5 読取装置
10,10-2,10-3,210,210-2,210-3 印刷物
11,211 用紙
21 照明光源
23 カメラ
30,30-2,30-3,230,230-2,230-3 情報記録体
31,31-2 光輝層
32,234 透明層
50 制御部
51 第1画像受付部
52 第1変換部
53 光制御部
54 第2画像受付部
55 第2変換部
56 真贋判定部
60 記憶部
61a 制御プログラム
61b 変換アプリ
63 真贋判定テーブル
65 読取部
66 光出力部
67 タッチパネルディスプレイ
240 真贋判定層
C1,C2,Cx,Cy 画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13