(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240827BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/06 101
(21)【出願番号】P 2020048556
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上原 大洋
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219666(JP,A)
【文献】特開平08-286475(JP,A)
【文献】特開2014-203040(JP,A)
【文献】特開2017-090832(JP,A)
【文献】特開2013-167714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
13/06-13/08
13/095
13/34
15/00-15/01
15/06-15/08
15/095
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面に色材とキャリアを含む粉体を保持して粉体保持体上に形成された静電潜像を前記粉体で現像する粉体供給ロールを備えた粉体供給手段と、
前記粉体保持体と前記粉体供給ロールとの間に直流電圧を重畳した交流電圧からなる現像バイアス電圧を印加する現像バイアス印加手段と、
前記粉体保持体と前記粉体供給ロールの間隙の大きさ
が大きい程、大きな値をとる、前記粉体保持体と前記粉体供給ロールの間隙の大きさに関するデータを算出する算出手段と、
装置本体内の温度及び湿度を検知する検知手段と、
通常よりも画像濃度が高い高濃度出力のとき、前記検知手段により検知された前記温度及び湿度に基づいて、前記現像バイアス電圧の前記交流電圧のピーク間電圧と前記交流電圧の周波数を決定し、前記粉体保持体と前記粉体供給ロールの間隙の大きさに関する前記データに基づいて、前記交流電圧のデューティ比を決定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記粉体保持体と前記粉体供給ロールの間隙の大きさに関する前記データが大きい場合には、前記データが小さい場合よりも、前記デューティ比を小さく決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知手段により検知された前記温度及び湿度が予め定められた閾値よりも低い場合、通常画像濃度出力する場合に比べて、前記交流電圧のピーク間電圧を大きくし、前記交流電圧の周波数を下げる、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検知手段により検知された前記温度及び湿度が予め定められた閾値よりも高い場合、通常画像濃度出力する場合に比べて、前記交流電圧のピーク間電圧を小さくし、前記交流電圧の周波数を上げる、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電潜像が形成される静電潜像担持体に対して間隔をあけて配置され、その静電潜像担持体表面に対して非接触状態となるように現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、その静電潜像担持体と現像剤担持体との間に直流電圧を重畳した交流電圧からなる現像バイアス電圧を印加する現像バイアス用電源とを備えた現像装置において、現像バイアス電圧の交流成分の電流値を検出する電流検知手段と、その電流検知手段からの検知情報に基づいて現像条件を補正する現像制御手段とを具備する現像装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
感光体に帯電、露光、現像を繰り返して行うことにより画像を形成する画像形成装置において、感光体ドラム面と現像剤担持体間のギャップを検出する現像ギャップ検出手段と、この現像ギャップ検出手段により検出された信号をメモリに格納するデータ格納手段と、データ格納手段に基づいて画像形成条件を変化させることにより出力画像を制御する画像補正手段を備えた画像形成装置も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-286475号公報
【文献】特開平5-333685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用電力量を抑制しながら、高濃度出力時の画質不良を抑制することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の印刷装置は、
その表面に色材とキャリアを含む粉体を保持して粉体保持体上に形成された静電潜像を前記粉体で現像する粉体供給ロールを備えた粉体供給手段と、
前記粉体保持体と前記粉体供給ロールとの間に直流電圧を重畳した交流電圧からなる現像バイアス電圧を印加する現像バイアス印加手段と、
前記粉体保持体と前記粉体供給ロールの間隙の大きさが大きい程、大きな値をとる、前記粉体保持体と前記粉体供給ロールの間隙の大きさに関するデータを算出する算出手段と、
装置本体内の温度及び湿度を検知する検知手段と、
通常よりも画像濃度が高い高濃度出力のとき、前記検知手段により検知された前記温度及び湿度に基づいて、前記現像バイアス電圧の前記交流電圧のピーク間電圧と前記交流電圧の周波数を決定し、前記粉体保持体と前記粉体供給ロールの間隙の大きさに関する前記データに基づいて、前記交流電圧のデューティ比を決定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記粉体保持体と前記粉体供給ロールの間隙の大きさに関する前記データが大きい場合には、前記データが小さい場合よりも、前記デューティ比を小さく決定する、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記検知手段により検知された前記温度及び湿度が予め定められた閾値よりも低い場合、通常画像濃度出力する場合に比べて、前記交流電圧のピーク間電圧を大きくし、前記交流電圧の周波数を下げる、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記検知手段により検知された前記温度及び湿度が予め定められた閾値よりも高い場合、通常画像濃度出力する場合に比べて、前記交流電圧のピーク間電圧を小さくし、前記交流電圧の周波数を上げる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、使用電力量を抑制しながら、高濃度出力時の画質不良を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、使用電力量を抑制しながら、画像濃度を高くすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、カブリを抑制しながら、画像濃度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】画像形成装置の全体構成の一例を示す断面模式図である。
【
図2】画像形成装置における画像形成部の内部構成を示す断面模式図である。
【
図3】画像形成部における感光体ユニット、現像装置、転写装置等から構成される作像部の機能を説明するための模式図である。
【
図4】帯電ローラに印加する印加電圧と感光体ドラムの表面電位との関係を示す図である。
【
図5】感光体ドラムにおける帯電電位および露光部電位と現像装置におけるAC重畳バイアスを印加した現像電位との関係を説明するための図である。
【
図6】高濃度出力モード時のAC現像バイアスのパラメータ設定の流れを示すフローチャートである。
【
図8】AC重畳用パラメータの一例を示す図である。
【
図9】実施例におけるAC重畳用パラメータと画像結果を示す図である。
【
図10】比較例におけるAC重畳用パラメータと画像結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0018】
(1)画像形成装置の全体構成及び動作
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す断面模式図、
図2は画像形成装置1における画像形成部10の内部構成を示す断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、画像形成装置1の全体構成及び動作を説明する。
【0019】
(1.1)画像形成装置の全体構成
画像形成装置1は、画像形成部10と、画像形成部10の底部に装着された給紙装置20と、操作表示部30と、制御装置40と、を備えて構成されている。
また、画像形成装置1は印刷装置の一例であり、他の装置で構成されていてもよい。例えば、各実施の形態における現像剤を塗装用粉体として利用することで、粉体塗装装置を印刷装置の一例として構成してもよい。
【0020】
具体的には、各実施の形態における現像装置14を静電粉体塗装法における粉体塗装ヘッド(粉体供給装置の一例)として利用し、この粉体塗装ヘッドに近接させて導電性のシート状媒体を搬送させる。粉体塗装ヘッドと導電性のシート状媒体との間にバイアス電圧を印可することで、帯電した塗装用粉体(例えば、熱硬化性トナー)がシート状媒体上に塗布される。その後、シート状媒体を加熱すれば、シート状媒体表面が塗装される。
【0021】
画像形成部10は、露光装置12、感光体ユニット13、粉体供給手段の一例としての現像装置14、転写装置15、定着装置16を備えて構成され、画像情報を給紙装置20から送り込まれた用紙P上にトナー像として形成する。
【0022】
画像形成部10の底部には、用紙トレイ21、22を有する給紙装置20が設けられ、更に給紙装置20の下方には、上下方向に多段(本実施形態においては2段)に配置され、用紙Pを収容する用紙トレイT1、T2からなるトレイモジュールTMが接続されて画像形成部10に対する用紙供給を行う。
給紙装置20は、種類(例えば、材質や厚さ、用紙サイズ、紙目)の異なる用紙を収容する複数のトレイを備えており、これら複数のトレイのいずれか一つから繰り出した用紙を画像形成部10に対して供給するように構成されている。
【0023】
操作表示部30は、いわゆるユーザインタフェースに相当するもので、具体的には液晶表示パネル、各種操作ボタン、タッチパネル等を組み合わせて構成され各種の設定や指示の入力及び情報表示に用いられる。
【0024】
制御装置40は、画像形成装置1の動作を制御するコントローラ410と、コントローラ410により作動を制御される画像処理部420、電源装置430等を有する。電源装置430は、後述する帯電ロール32、現像ロール(粉体供給ロール)42、一次転写ロール52、二次転写ロール53等に電圧を印加する。
画像処理部420は、外部の情報送信装置(例えばパーソナルコンピュータ等)から入力された印刷情報を潜像形成用の画像情報に変換して予め設定されたタイミングで、駆動信号を露光装置12に出力する。本実施形態の露光装置12は、LED(Light Emitting Diode)が線状に配置されたLEDヘッドにより構成されている。
【0025】
(1.2)画像形成部10の構成及び動作
このような構成の画像形成装置1では、画像形成のタイミングに合わせて給紙装置20又はトレイモジュールTMのうち、印刷ジョブで印刷の1枚毎に指定されたトレイから繰り出された用紙Pが画像形成部10へ送り込まれる。
【0026】
感光体ユニット13は、給紙装置20の上方(Z方向)に、それぞれが並列して設けられ、駆動装置(不図示)によって回転駆動される感光体ドラム31を備えている。感光体ドラム31の回転方向にそって、帯電ロール32、露光装置12、現像装置14、一次転写ロール52、クリーニングブレード34が配置されている。帯電ロール32には、帯電ロール32の表面をクリーニングするクリーニングロール33が接触して配置されている。
【0027】
現像装置14は、内部に色材とキャリアを含む粉体の一例としての現像剤が収容される現像ハウジング41を有する。現像ハウジング41内には、感光体ドラム31に対向して配置された駆動装置(不図示)によって回転駆動される現像ロール(粉体供給ロール)42と、この現像ロール42の背面側斜め下方には現像剤を現像ロール42側へ撹拌搬送する一対のオーガ44、45が配設されている。現像ロール42には、現像剤の層厚を規制する層規制部材46が近接配置されている。
現像装置14各々は、現像ハウジング41に収容される現像剤を除いて略同様に構成され、それぞれが色材の一例であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナーでトナー像を形成する。
【0028】
回転する感光体ドラム31の表面は、帯電ロール32により帯電され、露光装置12から出射する潜像形成光により静電潜像が形成される。感光体ドラム31上に形成された静電潜像は現像ロール42によりトナー像として現像される。
【0029】
転写装置15は、各感光体ユニット13の感光体ドラム31にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト51、各感光体ユニット13にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト51に順次転写(一次転写)する一次転写ロール52、中間転写ベルト51上に重畳して転写された各色トナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール53とから構成されている。
【0030】
各感光体ユニット13の感光体ドラム31に形成された各色トナー像は、コントローラ410により制御される電源装置430等から所定の転写電圧が印加された一次転写ロール52により中間転写ベルト51上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。
【0031】
中間転写ベルト51上の重畳トナー像は、中間転写ベルト51の移動に伴って二次転写ロール53が配置された領域(二次転写部TR)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部TRに搬送されると、そのタイミングに合わせて給紙装置20から用紙Pが二次転写部TRに供給される。そして、二次転写ロール53には、コントローラ410により制御される電源装置430等から所定の転写電圧が印加され、レジストロール対24から送り出され、搬送ガイドにより案内された用紙Pに中間転写ベルト51上の多重トナー像が一括転写される。
【0032】
二次転写部TRの上流側には、濃度センサSRが配置されている。濃度センサSRは、中間転写ベルト51上に形成される画質調整用トナー像を読み取ってその濃度を検知している。コントローラ410は、得られた読み取り結果に基づいて、各色トナー像の濃度及び現像剤のトナー濃度調整を行っている。
【0033】
感光体ドラム31表面の残留トナーは、クリーニングブレード34により除去され、廃トナー収容部(不図示)に回収される。感光体ドラム31の表面は、帯電ロール32により再帯電される。尚、クリーニングブレード34で除去しきれず帯電ロール32に付着した残留物は、帯電ロール32に接触して回転するクリーニングロール33表面に捕捉される。
【0034】
定着装置16は、加熱モジュール16Aと加圧モジュール16Bを有し、加熱モジュール16Aと加圧モジュール16Bの圧接領域によって定着ニップ部NP(定着領域)が形成される。二次転写部TRにおいてトナー像が転写された用紙Pは、トナー像が未定着の状態で搬送ガイド65を経由して定着装置16に搬送される。定着装置16に搬送された用紙Pは、一対の加熱モジュール16Aと加圧モジュール16Bにより、加熱と圧着の作用でトナー像が定着される。
【0035】
定着トナー像が形成された用紙Pは、搬送ガイドによってガイドされ、排出ローラ対69から画像形成装置1上面の排出トレイTR1に排出される。
【0036】
画像形成装置1には、発熱を伴う定着装置16や電源装置43等から直接輻射熱を受けない機内に、温湿度センサSTが備えられている。温湿度センサSTは、画像形成装置1の機内環境条件である温度及び湿度を検知し、コントローラ410は検知結果に基づいて、画像形成条件の設定及び変更を行う。
【0037】
(2)作像部の機能構成・動作
(2.1)作像部の機能構成
図3は画像形成部10における感光体ユニット13、現像装置14、転写装置15等から構成される作像部の機能を説明するための模式図、
図4は帯電ローラに印加する印加電圧と感光体ドラム31の表面電位との関係を示す図、
図5は感光体ドラム31における帯電電位VHおよび露光部電位VLと現像装置14におけるAC重畳バイアスを印加した現像電位との関係を説明するための図である。
【0038】
図3に示すように、作像部は感光体ドラム31の周りに、帯電ロール32と帯電ロール32にはクリーニングロール33が対向、接触して配置されている。帯電ロール32の下流側には、露光装置12の露光位置が設定され、その下流側には、現像ロール42が対向して配置されている。現像ロール42の下流側には、一次転写ロール52が中間転写ベルト51を挟んで接触配置され一次転写部を形成している。一次転写部の下流側で帯電ロール32の上流側にはクリーニングブレード34が弾力的に接触している。
【0039】
コントローラ410は、プログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラムやプログラムを実行する際に使用するデータ等を記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラムを実行する際に一時的に生成されるデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)とを備えている。
【0040】
コントローラ410には、使用者の操作を受け付ける操作表示部30から、使用者から受け付けた設定指示データが入力される。さらに、コントローラ410には、感光体ドラム31と現像ロール42との間に形成される領域における負荷容量を算出する検知器434から負荷容量データが入力され、画像形成装置1がおかれた環境(温度及び湿度)を検知する温湿度センサSTから、環境検知データが入力される。
【0041】
コントローラ410は、帯電ロール32に直流帯電バイアスを供給する直流帯電電源431A、帯電ロール32に交流帯電バイアスを供給する交流帯電電源431B(不図示)、露光装置12を駆動する露光駆動部(不図示)に、それぞれ制御信号を出力する。
また、コントローラ410は、現像装置14に設けられた現像ロール42に直流現像バイアスを供給する直流現像電源432A、現像ロール42に交流現像バイアスを供給する交流現像電源432Bに、それぞれ制御信号を出力する。さらに、コントローラ410は、一次転写ロール52に一次転写バイアスを供給する一次転写電源433A、二次転写ロール53に二次転写バイアスを供給する二次転写電源433B(不図示)に、それぞれ制御信号を出力する。
【0042】
(2.2)帯電電位制御
帯電ロール32を用いた接触帯電方式においては、帯電ロール32に帯電のための直流電圧Vcと交流電圧Vppとが重畳された帯電バイアスを印加している。直流電圧Vcの印加だけでは、感光体ドラム31上の抵抗の低いところにだけ電流が流れるため均一に帯電することができない。また、感光体ドラム31表面が局所的に汚れると、その部分だけ帯電しなくなるという問題が生じる。そのため、直流電圧Vcと交流電圧Vppとが重畳された帯電バイアスを印加して、感光体ドラム31表面を帯電させている。
【0043】
また、
図4に示すように、回転駆動される感光体ドラム31に対して接触配置された帯電ロール32に所定の直流電圧Vcと交流電圧Vppとが重畳された重畳電圧が印加されると、感光体ドラム31の表面電位は、一定値以上の交流電圧Vppを帯電ロール32に印加しても、直流電圧Vcの電圧(肩電圧)以上には上がらない。
【0044】
実際には、画質的観点や環境変動に対応するため肩電圧をもとに最適な交流電流値に設定する。例えば、交流電流値は大きすぎると感光体ドラム31が磨耗するという不具合が生じる。逆に小さすぎると、帯電の均一性が保てなくなり、画像形成したときに画像ムラができる。そのため、交流電流値を必要最低限の最適な値に設定している。
このようにして一様に帯電された感光体ドラム31は、露光装置12から出射する潜像形成光により静電潜像が形成され、現像ロール42と対向した領域でトナー像が形成される。
【0045】
(2.3)現像電位制御
直流現像電源432Aは、DC成分を含むDC現像バイアスVdv-DCを現像ロール42に供給する。これに対し、交流現像電源432Bは、AC成分を含むAC現像バイアスVdv-ACを現像ロール42に供給する。ここで、DC現像バイアスVdv-DCは、現像ロール42から感光体ドラム31にトナーを移動させるためのものであり、AC現像バイアスVdv-ACは、トナーを振動させることで、DC現像バイアスVdv-DCによる現像ロール42から感光体ドラム31へのトナーの移動を促進するためのものである。
【0046】
ここで、帯電電位VHは、帯電バイアスにおける直流電圧Vcの大きさによって決まり、露光部電位VLは、帯電バイアスと露光装置12による露光エネルギーとによって決まる。
また、現像電位VBは、DC現像バイアスVdv-DCの大きさによって決まる。AC現像バイアスVdv-ACは、
図5に示すように、現像バイアスの大きさであるピークトゥピーク電圧値(Vpp)と、ピークトゥピーク電圧値(Vpp)の周波数f(周期T=1/f)と、ピークトゥピーク電圧値(Vpp)のデューティ比Duty(%)のパラメータを選択することで、その現像作用を変化させることができる。
【0047】
本実施形態においては、
図5に示すように、帯電電位VHおよび露光部電位VLがともに負極性となっているが、露光部電位VLの大きさは、絶対値で帯電電位VHよりも小さい値となる(|VL|<|VH|)。そして、現像電位VBすなわちDC現像バイアスVdv-DCの値は、負極性であって、その絶対値が帯電電位VHと露光部電位VLとの間の大きさに設定される(|VL|<|VB|<|VH|)。
帯電電位VHと露光部電位VLと現像電位VBとがこのような大小関係を有している場合、現像領域を通過する現像ロール42上のトナー(負極性に帯電)は、感光体ドラム31上で相対的に正電位となる露光部電位VL(画像部)に移動(飛翔:現像濃度となる)しやすくなる(Vdv)一方、感光体ドラム31上で相対的に負電位となる帯電電位VH(背景部)には移動(飛翔:カブリとなる)しにくくなる(Vc)。
【0048】
(2.3)現像濃度制御
図6は高濃度出力モード時のAC現像バイアスのパラメータ設定の流れを示すフローチャート、
図7は温湿度環境条件を示す図、
図8はAC重畳用パラメータの一例を示す図である。
低温・低湿環境では、現像剤の帯電量が高く、通常環境や高温・高湿環境に比べて現像濃度が上がりにくく濃度ムラが発生しやすい。低画像密度の印刷が連続して実施された後も、現像剤の帯電量が上昇し、現像濃度が上がりにくく濃度ムラが発生しやすくなる。また、現像装置14に個体差が有り、例えば感光体ドラム31と現像ロール42の間隙が広い(負荷容量が大きい)と、濃度ムラが発生しやすい。
このような現像濃度が上がりにくい条件で、通常よりも高濃度で高画像密度の印刷要求(高濃度出力モード)があった場合には、濃度ムラが発生して現像により得られるトナー像の画質が低下してしまう虞がある。
【0049】
現像濃度が上がりにくい条件で、通常よりも高濃度で高画像密度の印刷要求(高濃度出力モード)があった場合には、AC現像バイアスVdv-ACのパラメータを選択して濃度ムラの発生を抑制することが行われる。
一方、電源装置430の消費電力は、DC現像バイアスVdv-DCに比べて、AC現像バイアスVdv-ACが大きく、現像濃度を上げるために、例えばピークトゥピーク電圧値(Vpp)を大きくした場合、電源装置430の使用電力量も増加する。
【0050】
本実施形態に係る画像形成装置1においては、通常よりも画像濃度が高い高濃度出力のとき、検知器434により算出された負荷容量データと温湿度センサSTにより検知された温度及び湿度に基づいて、AC現像バイアスVdv-ACのピークトゥピーク電圧値(Vpp)を決定し、決定されたピークトゥピーク電圧値(Vpp)に応じて、AC現像バイアスVdv-ACの周波数f及びデューティ比を変更する。
【0051】
図6には高濃度出力モード時のAC現像バイアスのパラメータ設定の流れを示している。
コントローラ410は、印刷ジョブを受け付けた場合、高濃度出力モードであるか否か判定する(S101)。印刷ジョブが高濃度出力モードである場合(S101:Yes)、温湿度環境条件が通常環境以外であるか判定する(S102)。
【0052】
ここで、温湿度環境条件は、
図7に示すように、温湿度センサSTにより検知された温度及び湿度によって、予め範囲が定められている。例えば、領域1、2、3は高温・高湿環境、領域4、5、6は通常環境、領域7、8、9は低温・低湿環境となっている。
例えば、温湿度が20℃/50%RHであれば、通常環境であり、現像条件とは、濃度が出やすく、カブリ(背景部の地汚れ)も抑制されやすい条件である。一方、例えば、温湿度が10℃/15%RHであれば、低温・低湿環境であり、現像条件としては、濃度が出にくい条件、温湿度が30℃/80%RHであれば、高温・高湿環境であり、現像条件としては、濃度は出やすいが、カブリやすい条件である。
【0053】
ステップ102における判定の結果、通常環境以外である場合(S102:Yes)、負荷容量の大きさが判定される(S103)。負荷容量は、感光体ドラム31と現像ロール42の間隙の大きさに依存する。感光体ドラム31と現像ロール42とは所定の間隙で対向しているが、現像装置14の個体差で、間隙が必要以上に大きくなっている場合は、負荷容量が大きくなり、間隙が必要以上に狭まっている場合には、負荷容量が小さくなる。ステップ103においては、この負荷容量が250C(クーロン)以上の場合(S103:Yes)、AC重畳用パラメータの設定Aを行う(S104)。
【0054】
ここで、AC重畳用パラメータの設定Aは、環境条件が低温・低湿環境(領域7、8、9)である場合、
図8に模式的に示すように、通常画像モード(
図8(a) 参照、Vpp0、f0)に比べて、AC現像バイアスVdv-ACのピークトゥピーク電圧値(Vpp)を大きく(Vpp1)し、AC現像バイアスVdv-ACの周波数を下げた(f1)設定をする(
図8(b) 参照)。これにより、電源装置430の使用電力量を大きく増加させることなく、現像濃度を上げて、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0055】
さらに、AC重畳用パラメータの設定Aは、環境条件が高温・高湿環境(領域1、2、3)である場合、
図8に模式的に示すように、通常画像モード(
図8(a) 参照、Vpp0、f0)に比べて、AC現像バイアスVdv-ACのピークトゥピーク電圧値(Vpp)を小さく(Vpp2)し、AC現像バイアスVdv-ACの周波数を上げる(f2)設定をする(
図8(c) 参照)。これにより、現像濃度は低下させず、カブリの発生を抑制することができる。
【0056】
ステップ103において、この負荷容量が250C(クーロン)以下の場合(S103:No)、AC重畳用パラメータの設定Bを行う(S105)。
ここで、AC重畳用パラメータの設定Bは、環境条件が低温・低湿環境(領域7、8、9)である場合、
図8に模式的に示すように、通常画像モード(
図8(a) 参照、Vpp0、f0)に比べて、AC現像バイアスVdv-ACのピークトゥピーク電圧値(Vpp)を大きく(Vpp1)し、AC現像バイアスVdv-ACの周波数(f1)を下げた設定をする(
図8(b) 参照)。さらに、デューティ比を通常画像モードに比べて大きくする。これにより、電源装置430の使用電力量を大きく増加させることなく、現像濃度をより上げやすくして、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0057】
さらに、AC重畳用パラメータの設定Bは、環境条件が高温・高湿環境(領域1、2、3)である場合、
図8に模式的に示すように、通常画像モード(
図8(a) 参照、Vpp0、f0)に比べて、AC現像バイアスVdv-ACのピークトゥピーク電圧値(Vpp)を小さく(Vpp2)し、AC現像バイアスVdv-ACの周波数(f2)を上げる設定をする(
図8(c) 参照)。さらに、デューティ比を通常画像モードに比べて大きくする。これにより、電源装置430の電力量を大きく増加させることなく、現像濃度は低下させず、カブリの発生を抑制することができる。
【0058】
ステップ106でパラメータ設定が完了したと判定された場合(S106:Yes)、温湿度条件及び負荷容量に応じて設定されたAC現像バイアスVdv-ACで画像形成を行う(S107)。また、ステップ102において、温湿度条件が通常環境であった場合(S102:No)、AC重畳用パラメータは変更することなく画像形成を行う(S107)。
【実施例】
【0059】
図9は実施例におけるAC重畳用パラメータと画像結果を示す図であり、それぞれの温湿度条件及び負荷容量に対するAC重畳用パラメータの設定と画像結果を示している。
図10は比較例におけるAC重畳用パラメータと画像結果を示す図であり、それぞれの温湿度条件及び負荷容量に対するAC重畳用パラメータの設定と画像結果を示している。
【0060】
「比較例」
図10に示すように、温湿度条件が高温・高湿環境(領域1、2、3)、通常環境(領域4、5、6、7)、低温・低湿環境(領域8、9)において、それぞれ負荷容量が低い200Cと負荷容量が高い250Cの条件で、画像結果としてカブリと濃度を評価した。
実験1~6において、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vpp=600V、周波数f=13kHz、デューティ比Duty(%)=65と同一パラメータに固定した。
【0061】
実験1、2(高温・高湿環境)においては、濃度は出た(G)が、カブリが発生(Y)した。
実験3、4(通常環境)においては、カブリ、濃度ともに良好(G)であった。
実験5、6(低温・低湿環境)においては、カブリは良好(G)であったが、濃度が出にくい(Y)結果となった。
【0062】
「実施例」
図9に示すように、温湿度条件が高温・高湿環境(領域1、2、3)、通常環境(領域4、5、6)、低温・低湿環境(領域7、8、9)において、それぞれ負荷容量が低い200Cと負荷容量が高い250Cの条件で、画像結果としてカブリと濃度を評価した。
【0063】
実験1(高温・高湿環境(領域1、2、3)、負荷容量が低い200C)においては、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vpp=500V、周波数f=18kHz、デューティ比Duty(%)=70に設定変更し、カブリ、濃度ともに良好(G)な結果を得た。
実験2(高温・高湿環境(領域1、2、3)、負荷容量が高い250C)においては、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vpp=500V、周波数f=18kHz、デューティ比Duty(%)=65に設定変更し、カブリ、濃度ともに良好(G)な結果を得た。
【0064】
実験3(通常環境(領域4、5、6)、負荷容量が低い200C)においては、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vpp=600V、周波数f=13kHz、デューティ比Duty(%)=70に設定変更し、カブリ、濃度ともに良好(G)な結果を得た。
実験4(通常環境(領域4、5、6)、負荷容量が高い250C)においては、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vpp=600V、周波数f=13kHz、デューティ比Duty(%)=70に設定変更し、カブリ、濃度ともに良好(G)な結果を得た。
【0065】
実験5(低温・低湿環境(領域7、8、9)、負荷容量が低い200C)においては、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vpp=1000V、周波数f=11kHz、デューティ比Duty(%)=70に設定変更し、カブリ、濃度ともに良好(G)な結果を得た。
実験6(低温・低湿環境(領域7、8、9)、負荷容量が高い250C)においては、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vpp=1000V、周波数f=11kHz、デューティ比Duty(%)=65に設定変更し、カブリ、濃度ともに良好(G)な結果を得た。
【0066】
このように、低温・低湿環境においては、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vppを大きくし、周波数fを下げることで、電源装置430の電力量を大きく増加させることなく、現像濃度を上げて、濃度ムラの発生を抑制することができる。また、現像装置14の個体差があり、負荷容量が大きい場合は、AC重畳用パラメータは、更にデューティ比Duty(%)を下げることで、電源装置430の電力量を大きく増加させることなく、現像濃度を上げて、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0067】
高温・高湿環境においては、AC重畳用パラメータは、ピークトゥピーク電圧値Vppを小さくし、周波数fを上げることで、現像濃度は低下させず、カブリの発生を抑制することができる。また、現像装置14の個体差があり、負荷容量が大きい場合は、AC重畳用パラメータは、更にデューティ比Duty(%)を下げることで、現像濃度は低下させず、カブリの発生を抑制することができる。
【0068】
以上、本発明に係る実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で種々の変更を行うことが可能である。
本実施形態では画像形成装置1は、いわゆるタンデム型であったが、これに限られるものではない。また、現像装置を複数備えたカラー画像形成装置として説明したが、これに限られず、例えば、モノクロの画像形成装置であっても適用することができる。
【0069】
また、トナーとキャリアを含む現像剤を収容した現像装置14を備えた画像形成装置1のAC重畳用パラメータの設定について説明したが、圧力室と、アクチュエータと、ノズルと、駆動信号出力部を有するインクジェットヘッド駆動装置におけるインクの吐出パルスのパラメータ設定に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1・・・画像形成装置
10・・・画像形成部
13・・・感光体ユニット
31・・・感光体ドラム
14・・・現像装置
42・・・現像ロール
15・・・転写装置
51・・・中間転写ベルト
52・・・一次転写ロール
53・・・二次転写ロール
16・・・定着装置
20・・・給紙装置
30・・・操作表示部
40・・・制御装置
410・・・コントローラ
420・・・画像処理部
430・・・電源装置
SR・・・濃度センサ
ST・・・温湿度センサ