(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】検眼システムおよび検眼プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20240827BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61B3/028
A61B5/16 400
(21)【出願番号】P 2020063526
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】平山 幸人
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 譲児
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第6606264(JP,B2)
【文献】特開2014-087660(JP,A)
【文献】特開昭63-135124(JP,A)
【文献】特開2019-069049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の
眼屈折力を自覚的に測定するための検眼システムであって、
前記被検眼に向けて視標光束を出射する視標呈示手段と、
前記視標呈示手段から出射した前記視標光束の光学特性を変化させる矯正手段と、
前記検眼システムの動作を制御する制御手段と、
前記被検眼の
前記眼屈折力の測定が開始された開始タイミングであって、前記制御手段によって前記視標呈示手段または前記矯正手段が制御された開始タイミングと、前記開始タイミングよりも後の応答タイミングであって、応答入力手段によって前記測定に対する応答信号が入力された応答タイミングと、に基づいて、前記測定の開始から応答までに要する反応時間を取得する反応時間取得手段と、
前記反応時間取得手段により取得された前記反応時間を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする検眼システム。
【請求項2】
請求項1の検眼システムにおいて、
前記反応時間取得手段は、前記反応時間として、異なるタイミングにて取得される第1反応時間と第2反応時間とを取得し、
前記第1反応時間と前記第2反応時間とは、前記開始タイミングと前記応答タイミングとの少なくともいずれかが異なるタイミングであって、
前記出力手段は、前記第1反応時間と前記第2反応時間とを比較可能に出力することを特徴とする検眼システム。
【請求項3】
請求項1または2の検眼システムにおいて、
前記制御手段は、前記視標呈示手段および前記矯正手段の少なくともいずれかを制御可能であって、前記反応時間取得手段により取得された前記反応時間に基づいて、前記検眼システムの動作を制御することを特徴とする検眼システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの検眼システムにおいて、
前記制御手段により前記視標呈示手段または前記矯正手段が制御された際における前記検眼システムの状態として、前記被検眼に呈示された視標に関する状態、または、前記被検眼を矯正した矯正度数に関する状態と、を取得する状態取得手段を備え、
前記出力手段は、前記反応時間取得手段により取得された前記反応時間とともに、前記状態取得手段により取得された前記検眼システムの状態を出力することを特徴とする検眼システム。
【請求項5】
被検眼に向けて視標光束を出射する視標呈示手段と、
前記視標呈示手段から出射した前記視標光束の光学特性を変化させる矯正手段と、
検眼システムの動作を制御する制御手段であって、前記視標呈示手段および前記矯正手段の少なくともいずれかを制御可能な制御手段と、を備えた、前記被検眼の
眼屈折力を自覚的に測定するための検眼システムにて用いられる検眼プログラムであって、
前記制御手段に前記検眼プログラムが実行されることで、
前記被検眼の
前記眼屈折力の測定が開始された開始タイミングであって、前記制御手段により前記視標呈示手段または前記矯正手段が制御された開始タイミングと、前記測定の開始よりも後の応答タイミングであって、応答入力手段により前記測定に対する応答信号が入力された応答タイミングと、に基づいて、前記測定の開始から応答までに要する反応時間を取得する反応時間取得ステップと、
前記反応時間取得
ステップにより取得された前記反応時間を出力する出力ステップと、
を前記検眼システムに実行させることを特徴とする検眼プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の光学特性を自覚的に測定するための検眼システムおよび検眼プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検眼システムにおいては、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置が用いられる。例えば、自覚式検眼装置は、被検眼の眼前に光学部材を配置し、被検眼に光学部材を介した視標を呈示することによって、被検眼の光学特性を測定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自覚式検眼装置を用いて被検眼の光学特性を測定する際、検者は、被検者の回答に応じて測定を進め、測定結果を得ている。例えば、検者は、屈折矯正検査では、被検眼を矯正する矯正度数を変更しながら、都度、被検者の回答に基づいて、被検眼に視標がみえているかを判断している。しかし、被検者は偶然に正答することがあり、このような場合に、検者は被検眼に実際に視標がみえているかを把握することが難しく、被検眼の正しい測定結果を得られない可能性があった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼の光学特性を精度よく測定することができる眼科装置の提供を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)本開示の第1態様に係る検眼システムは、 被検眼の眼屈折力を自覚的に測定するための検眼システムであって、前記被検眼に向けて視標光束を出射する視標呈示手段と、前記視標呈示手段から出射した前記視標光束の光学特性を変化させる矯正手段と、前記検眼システムの動作を制御する制御手段と、前記被検眼の前記眼屈折力の測定が開始された開始タイミングであって、前記制御手段によって前記視標呈示手段または前記矯正手段が制御された開始タイミングと、前記開始タイミングよりも後の応答タイミングであって、応答入力手段によって前記測定に対する応答信号が入力された応答タイミングと、に基づいて、前記測定の開始から応答までに要する反応時間を取得する反応時間取得手段と、前記反応時間取得手段により取得された前記反応時間を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
(2)本開示の第2態様に係る検眼プログラムは、 被検眼に向けて視標光束を出射する視標呈示手段と、前記視標呈示手段から出射した前記視標光束の光学特性を変化させる矯正手段と、検眼システムの動作を制御する制御手段であって、前記視標呈示手段および前記矯正手段の少なくともいずれかを制御可能な制御手段と、を備えた、前記被検眼の眼屈折力を自覚的に測定するための検眼システムにて用いられる検眼プログラムであって、前記制御手段に前記検眼プログラムが実行されることで、前記被検眼の前記眼屈折力の測定が開始された開始タイミングであって、前記制御手段により前記視標呈示手段または前記矯正手段が制御された開始タイミングと、前記測定の開始よりも後の応答タイミングであって、応答入力手段により前記測定に対する応答信号が入力された応答タイミングと、に基づいて、前記測定の開始から応答までに要する反応時間を取得する反応時間取得ステップと、前記反応時間取得ステップにより取得された前記反応時間を出力する出力ステップと、を前記検眼システムに実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】検眼システムが備える検眼装置の一例である。
【
図3】検眼装置の内部を正面方向から見た概略構成図である。
【
図4】検眼装置の内部を側面方向から見た概略構成図である。
【
図5】検眼装置の内部を上面方向から見た概略構成図である。
【
図7】被検眼に対する自覚式検査の流れの一例を示す図である。
【
図9】屈折矯正検査における反応時間と矯正度数との関係を示すグラフの一例である。
【
図10】裸眼視力検査における反応時間と視力値との関係を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示の実施形態に係る検眼システムの概要について説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0011】
本実施形態における検眼システムは、被検眼の光学特性を自覚的に測定するための検眼システムである。例えば、被検眼の光学特性は、被検眼の眼屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、プリズム量、等)、両眼視機能(例えば、プリズム量、立体視機能、等)コントラスト感度、等の少なくともいずれかであってもよい。
【0012】
本実施形態における検眼システムは、少なくとも、自覚式検眼装置(例えば、検眼装置100)を備えてもよい。例えば、自覚式検眼装置は、被検眼に向けて視標光束を投影し、視標光束の光学特性を変化させることで、被検眼の光学特性を自覚的に測定することができる。例えば、自覚式検眼装置は、後述の視標呈示手段、後述の矯正手段、等を有してもよい。
【0013】
<視標呈示手段>
本実施形態における検眼システムは、視標呈示手段を備える。視標呈示手段は、被検眼に向けて視標光束を出射する。
【0014】
例えば、視標呈示手段は、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ31)であってもよい。また、例えば、視標呈示手段は、光源およびDMD(Digital Micromirror Device)であってもよい。また、例えば、視標呈示手段は、光源および視標板であってもよい。
【0015】
例えば、視標呈示手段からの視標光束は、被検眼に向けて直接的に出射されてもよい。また、例えば、視標呈示手段からの視標光束は、投光光学系(例えば、投光光学系30)を介し、被検眼に向けて間接的に導光されてもよい。例えば、投光光学系は、視標呈示手段から出射された視標光束を経由させるための光学部材を、少なくとも1つ有してもよい。一例として、レンズ、ミラー、等の少なくともいずれかを有してもよい。
【0016】
なお、検眼システムは、自覚式検眼装置を構成する一部の部材として、視標呈示手段を有してもよい。この場合、自覚式検眼装置に視標呈示手段が設けられてもよい。また、検眼システムは、自覚式検眼装置とは別に、視標呈示装置として、視標呈示手段を有してもよい。
【0017】
<矯正手段>
本実施形態における検眼システムは、矯正手段を備える。例えば、矯正手段は、矯正光学系(例えば、矯正光学系60)を備えてもよい。例えば、矯正光学系は、投光光学系の光路中に配置され、視標光束の光学特性を変化させる。
【0018】
矯正光学系は、視標光束の光学特性を変化させることができる構成であればよい。
【0019】
一例として、矯正光学系は、光学素子を有し、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。例えば、光学素子は、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリプリズム、波面変調素子、可変焦点レンズ、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、光学素子は、これらとは異なってもよい。
【0020】
また、一例として、矯正光学系は、被検眼に対する視標の呈示位置(呈示距離)を光学的に変更することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。この場合、視標呈示手段を光軸方向に移動させてもよいし、光路中に配置された光学素子(例えば、球面レンズ等)を光軸方向に移動させてもよい。
【0021】
また、一例として、矯正光学系は、投光光学系からの視標光束を被検眼に向けて導光するための光学部材と、視標呈示手段と、の間に光学素子を配置し、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。すなわち、矯正光学系は、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正光学系)であってもよい。
【0022】
<反応時間取得手段>
本実施形態における検眼システムは、反応時間取得手段(例えば、制御部70)を備える。反応時間取得手段は、被検眼の測定が開始された開始タイミングであって、後述の制御手段によって視標呈示手段または矯正手段が制御された開始タイミングと、開始タイミングよりも後の応答タイミングであって、応答入力手段(例えば、コントローラ6)によって測定に対する応答信号が入力された応答タイミングと、に基づいて、測定の開始から応答までに要する反応時間を取得する。
【0023】
例えば、被検眼の測定が開始された開始タイミングは、視標呈示手段または矯正手段を制御するためのトリガとなる開始信号が取得されたタイミングであってもよい。例えば、検眼プログラム等に基づいて自動的に開始信号が入力されたタイミングでもよい。また、例えば、検者による操作手段(例えば、コントローラ6)の操作によって開始信号が入力されたタイミングでもよい。また、例えば、検者による操作手段の操作によって入力された開始信号を受信したタイミングであってもよい。
【0024】
例えば、このような開始タイミングは、被検眼に対する検査項目の測定の過程において、個々に測定を開始したタイミングでもよい。より詳細には、検査項目の測定の過程において、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが順次に制御されたタイミングでもよい。例えば、検査項目の測定の過程において、視標を切り換えるための開始信号が入力あるいは受信される毎のタイミングであり、開始信号に基づいて視標が切り換えられた各々のタイミングでもよい。視標が切り換えられるタイミングは、視標の視力値が切り換えられるタイミングでもよいし、視標の種類が切り換えられるタイミングでもよい。また、例えば、検査項目の測定の過程において、被検眼を矯正する矯正度数を切り換えるための開始信号が入力あるいは受信される毎のタイミングであり、開始信号に基づいて矯正度数が切り換えられた各々のタイミングでもよい。
【0025】
また、例えば、このような開始タイミングは、被検眼に対する検査項目の測定を開始したタイミングでもよい。より詳細には、検査項目の測定を開始するために、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最初に制御されたタイミングでもよい。例えば、検査項目の測定において、視標を切り換えるための開始信号が最初に入力あるいは受信されたタイミングであり、開始信号に基づいて視標が最初に切り換えられたタイミングでもよい。また、例えば、検査項目の測定において、矯正度数を切り換えるための開始信号が最初に入力あるいは受信されたタイミングであり、開始信号に基づいて矯正度数が最初に切り換えられたタイミングでもよい。
【0026】
例えば、測定に対する応答信号が入力された応答タイミングは、応答入力手段の操作に基づいて応答信号が取得されたタイミングでもよい。例えば、応答入力手段の操作によって応答信号が入力されたタイミングでもよい。また、例えば、応答入力手段の操作によって入力された応答信号を受信したタイミングであってもよい。なお、応答入力手段は、検者によって操作されてもよいし、被検者によって操作されてもよい。応答入力手段を検者が操作する場合は、応答入力手段が操作手段を兼ねてもよい。
【0027】
例えば、このような応答タイミングは、被検眼に対する検査項目の測定の過程において、個々の測定を終了したタイミングでもよい。より詳細には、検査項目の測定の過程において、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが順次に制御され、これに対する応答信号が入力される毎のタイミングでもよい。例えば、検査項目の測定の過程において、視標の切り換えに応じて応答信号が入力される毎のタイミングであり、被検者の応答が入力された各々のタイミングでもよい。また、例えば、検査項目の測定の過程において、矯正度数の切り換えに応じて応答信号が入力される毎のタイミングであり、被検者の応答が入力された各々のタイミングでもよい。
【0028】
また、例えば、被検眼の測定に対する応答信号が入力された応答タイミングは、被検眼に対する検査項目の測定を終了したタイミングでもよい。より詳細には、検査項目の測定において、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最後に制御され、これに対する応答信号が入力されたタイミングであり、被検者の応答が入力されたタイミングでもよい。
【0029】
なお、前述の検査項目は、自覚式検査の全体の検査でもよい。また、前述の検査項目は、自覚式検査における各々の検査項目であってもよい。例えば、裸眼視力検査、屈折矯正検査、等の少なくともいずれかでもよい。例えば、屈折矯正検査には、球面検査、乱視検査、等の少なくともいずれかが含まれてもよい。例えば、球面検査には、レッドグリーン検査等が含まれてもよい。例えば、乱視検査には、クロスシリンダ検査等が含まれてもよい。
【0030】
例えば、反応時間取得手段は、開始タイミングから応答タイミングまでの時間を計測することによって、反応時間を取得してもよい。すなわち、反応時間取得手段は、前述の開始信号に基づいて時間の計測を開始し、前述の応答信号に基づいて時間の計測を終了することによって、反応時間を取得してもよい。
【0031】
一例として、反応時間取得手段は、検査項目の測定の過程において、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが制御された開始タイミングで時間の計測を開始し、これに対する応答信号が入力された応答タイミングで時間の計測を終了することで、視標および矯正度数の少なくともいずれかを順次に切り換えたときの、各々の反応時間を取得してもよい。
【0032】
また、一例として、反応時間取得手段は、検査項目の測定において、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最初に制御された開始タイミングで時間の計測を開始し、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最後に制御されたときに応答信号が入力された応答タイミングで時間の計測を終了することで、検査項目の測定に要した全体の反応時間を取得してもよい。
【0033】
例えば、反応時間取得手段は、このような開始タイミングと応答タイミングとの差分を算出することによって、反応時間を取得してもよい。例えば、反応時間取得手段は、所定のタイミングで時間の計測を開始し、前述の開始信号および前述の応答信号を得た時間を記憶させ、これらの差分を求めることによって、反応時間を取得してもよい。
【0034】
一例として、反応時間取得手段は、検査項目の測定の過程において、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが制御された開始タイミングと、これに対する応答信号が入力された応答タイミングと、の差分から、視標および矯正度数の少なくともいずれかを順次に切り換えたときの、各々の反応時間を取得してもよい。
【0035】
また、一例として、反応時間取得手段は、検査項目の測定において、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最初に制御された開始タイミングと、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最後に制御されたときに応答信号が入力された応答タイミングと、の差分から、検査項目の測定に要した全体の反応時間を取得してもよい。
【0036】
なお、例えば、反応時間取得手段は、検査項目の測定の過程において、各々に取得された反応時間を合わせることで、全体の反応時間を取得してもよい。
【0037】
例えば、反応時間取得手段は、測定の開始から応答までに要する反応時間として、異なるタイミングにて取得される第1反応時間と第2反応時間とを取得してもよい。第1反応時間と第2反応時間とは、開始タイミングと応答タイミングとの少なくともいずれかが異なるタイミングであればよい。
【0038】
例えば、反応時間取得手段は、異なる開始タイミングにおける第1反応時間と第2反応時間とを取得してもよい。一例としては、検査項目の測定の過程における、2つ以上の反応時間であってもよい。また、一例としては、検査項目の測定に要した全体の反応時間と、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最初に制御されたときの開始タイミングを除く反応時間と、を含む反応時間であってもよい。
【0039】
また、例えば、反応時間取得手段は、異なる応答タイミングにおける第1反応時間と第2反応時間とを取得してもよい。一例としては、検査項目の測定の過程における、2つ以上の反応時間であってもよい。また、一例としては、検査項目の測定に要した全体の反応時間と、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最後に制御されたときの応答タイミングを除く反応時間と、を含む反応時間であってもよい。
【0040】
また、例えば、反応時間取得手段は、異なる開始タイミングかつ異なる応答タイミングにおける第1反応時間と第2反応時間とを取得してもよい。一例としては、検査項目の測定の過程における、2つ以上の反応時間であってもよい。また、一例としては、検査項目の測定に要した全体の反応時間と、視標呈示手段または矯正手段のいずれかが最初に制御されたときの開始タイミングおよび最後に制御されたときの応答タイミングを除く反応時間と、を含む反応時間であってもよい。
【0041】
もちろん、例えば、反応時間取得手段は、測定の開始から応答までに要する反応時間とは異なる時間を取得してもよい。一例として、反応時間取得手段は、検査項目における一連の測定に要した検査時間を取得してもよい。この場合、反応時間取得手段は、検査項目の測定に要した全体の反応時間に、操作者が応答入力手段を操作する操作時間を合わせることによって、検査時間を取得してもよい。より詳細には、例えば、検査項目の測定に要した全体の反応時間に、検査項目の測定の過程における各々の応答タイミングから次の開始タイミングまでの時間を合わせることによって、検査時間を取得してもよい。
【0042】
<状態取得手段>
本実施形態における検眼システムは、状態取得手段(例えば、制御部70)を備える。状態取得手段は、後述の制御手段により視標呈示手段または矯正手段が制御された際における検眼システムの状態を取得する。
【0043】
例えば、状態取得手段は、制御手段により視標呈示手段が制御された際における、視標呈示手段の状態を取得してもよい。また、例えば、状態取得手段は、制御手段により視標呈示手段が制御された際における、矯正手段の状態を取得してもよい。また、例えば、状態取得手段は、制御手段により矯正手段が制御された際における、視標呈示手段の状態を取得してもよい。また、例えば、状態取得手段は、後述の制御手段により矯正手段が制御された際における、矯正手段の状態を取得してもよい。もちろん、これらが組み合わされた状態を取得してもよい。
【0044】
なお、例えば、視標呈示手段の状態とは、制御手段が視標呈示手段を制御することによって被検眼に呈示された、視標の種類の状態、視標の視力値の状態、等の少なくともいずれかの状態でもよい。例えば、視標呈示手段の状態には、視標の種類の切り換え回数(頻度)、視標の視力値の切り換え回数(頻度)、等が含まれてもよい。また、例えば、矯正手段の状態とは、制御手段が矯正手段を制御することによって被検眼を矯正した、被検眼の矯正度数の状態でもよい。例えば、矯正手段の状態には、矯正度数の切り換え回数(頻度)等が含まれてもよい。
【0045】
<判定手段>
本実施形態における検眼システムは、判定手段(例えば、制御部70)を備える。判定手段は、反応時間取得手段により取得された反応時間に基づいて、状態取得手段により取得された検眼システムの状態の適否を判定する。
【0046】
例えば、判定手段は、反応時間が予め設定された第1閾値を超えるか否かに基づいて、検眼システムの状態の適否を判定してもよい。例えば、反応時間の第1閾値は、実験やシミュレーション等から設定されてもよい。また、例えば、反応時間の第1閾値は、人間の平均的な反応速度に基づいて設定されてもよい。なお、この場合、反応時間の第1閾値は、年齢毎に設定されてもよい。もちろん、年齢とは異なる項目毎に設定されてもよい。また、例えば、反応時間の第1閾値は、被検者毎の反応速度に基づいて設定されてもよい(つまり、被検者毎に反応時間の基準値が設定されてもよい)。なお、反応時間の第1閾値には、許容範囲が設けられてもよい。
【0047】
例えば、判定手段は、反応時間取得手段により取得された反応時間に基づき、検眼システムの状態の適否として、被検眼に対する検査が良好に行われているか否かを判定してもよい。一例として、判定手段は、反応時間に基づき、被検者に正しく視標が見えていると推測して、被検眼に対する検査が良好に行われていると判断してもよい。より詳細には、例えば、反応時間が第1閾値と同程度であれば、視標呈示手段の状態および矯正手段の状態が適切であるために、被検者が容易に視標を認識できたと判断してもよい。
【0048】
また、一例として、判定手段は、反応時間に基づき、被検者が回答に困惑していると推測して、被検眼に対する検査が良好に行われていないと判定してもよい。より詳細には、例えば、反応時間が第1閾値よりも長い場合は、被検者の回答が遅いために困惑していると推測し、視標呈示手段の状態および矯正手段の状態の少なくともいずれかが不適切であるために、視標が認識できていないと判断してもよい。
【0049】
また、一例として、判定手段は、反応時間に基づき、被検者が偶然に正答していると推測して、被検眼に対する検査が良好に行われていないと判定してもよい。より詳細には、例えば、反応時間が第1閾値よりも短い場合は、被検者の回答が早いために感覚で答えたと推測し、視標呈示手段の状態および矯正手段の状態の少なくともいずれかが不適切であるために、視標が認識できていないと判断してもよい。
【0050】
なお、例えば、判定手段は、反応時間が予め設定された第2閾値を超えるか否かに基づいて、被検者の応答の成否を判定してもよい。例えば、検眼システムの状態の適否を判定するための第1閾値と、被検者の応答の成否を判定するための第2閾値と、は同一であってもよいし、異なってもよい。例えば、第1閾値と第2閾値とが異なる場合、第2閾値は、第1閾値に対して反応時間が短くなる方向に設けられてもよいし、第1閾値に対して反応時間が長くなる方向に設けられてもよい。もちろん、第2閾値は、第1閾値に対して反応時間が短くなる方向と、反応時間が長くなる方向と、の双方に設けられてもよい。
【0051】
例えば、判定手段は、反応時間が予め設定された第2閾値を超えるか否かに基づいて、被検者の応答の成否の判定方法を変更してもよい。一例として、判定手段は、反応時間が第2閾値を超えない場合は、被検者の応答が成立したと判定してもよい。このとき、さらに、判定手段は、被検者の応答が正答であれば、被検者の応答を成功と判定し、被検者の応答が誤答であれば、被検者の応答を失敗と判定してもよい。また、一例として、判定手段は、反応時間が第2閾値を超える場合は、被検者の応答を不成立と判定してもよい。このとき、さらに、判定手段は、被検者の応答が正答であっても誤答であっても、被検者の応答を失敗と判定してもよい。
【0052】
<制御手段>
本実施形態における検眼システムは、制御手段(例えば、制御部70)を備える。制御手段は、検眼システムの動作を制御する。例えば、制御手段は、検眼システムの動作を制御するための開始信号に基づいて、検眼システムの動作を制御してもよい。この場合、制御手段は、検眼プログラム等に基づいて自動的に入力された開始信号に基づき、検眼システムの動作を制御してもよい。また、この場合、制御手段は、検者による操作手段(例えば、コントローラ6)の操作によって入力された開始信号に基づき、検眼システムの動作を制御してもよい。また、この場合、制御手段は、検者による操作手段の操作によって受信された開始信号に基づき、検眼システムの動作を制御してもよい。
【0053】
例えば、制御手段は、視標呈示手段および矯正手段の少なくともいずれかを制御することが可能である。一例としては、視標呈示手段の表示を制御し、視標の種類、視標の視力値、等の少なくともいずれかを変更させることができる。また、一例としては、矯正光学系を制御し、被検眼を矯正する矯正度数、光学素子の配置、等の少なくともいずれかを変更させることができる。もちろん、例えば、制御手段は、視標呈示手段および矯正手段とは異なる手段を制御することが可能とされてもよい。
【0054】
例えば、制御手段は、反応時間取得手段により取得された反応時間に基づいて、検眼システムの動作を制御してもよい。一例として、制御手段は、所定の反応時間が経過した際に、視標の視力値を変更してもよい。また、一例として、所定の反応時間が経過した際に、矯正度数を変更してもよい。つまり、制御手段は、所定の反応時間が経過すると、自動的に検眼システムを次の設定へと切り換えてもよい。これによって、検査の内容が最適化され、検査時間が短縮される。
【0055】
例えば、制御手段は、判定手段が検眼システムの状態の適否を判定した判定結果に基づいて、検眼システムの動作を制御してもよい。なお、例えば、制御手段は、検眼システムの状態の適否を示す判定結果が得られる毎に、検眼システムの動作を制御してもよい。また、例えば、制御手段は、検眼システムの状態の適否を示す判定結果が、連続して所定の回数で同じ結果となった場合に、検眼システムの動作を制御してもよい。
【0056】
例えば、制御手段は、検眼システムの状態の適否に基づき、視標呈示手段の状態(すなわち、視標の視力値の状態、等)を変更してもよい。一例として、制御手段は、検眼システムの状態の適否に基づき、視標の視力値を変更する段階数を変更してもよい。より詳細には、制御手段は、検眼システムの状態が適切であった場合は、視標の視力値を2段階で変更し、検眼システムの状態が不適切であった場合は、視標の視力値を1段階で変更する、等としてもよい。
【0057】
また、例えば、制御手段は、検眼システムの状態の適否に基づき、矯正手段の状態(すなわち、矯正度数の状態、等)を変更してもよい。一例として、制御手段は、検眼システムの状態の適否に基づき、矯正度数を変更するステップ数を変更してもよい。より詳細には、制御手段は、検眼システムの状態が適切であった場合は、矯正度数を1ステップ(0.25D)で変更し、検眼システムの状態が不適切であった場合は、矯正度数を2ステップ(0.5D)で変更する、等としてもよい。
【0058】
なお、例えば、制御手段は、判定手段が被検者の応答の成否を判定した判定結果に基づいて、検眼システムの動作を制御してもよい。例えば、制御手段は、被検者の応答が成立したと判定された場合に、上記のような検眼システムの動作を制御してもよい。また、例えば、制御手段は、被検者の応答が不成立と判定された場合は、検眼システムの動作を必ずしも制御しなくてもよい。すなわち、制御手段は、被検者の応答が成立した反応時間を用い、被検者の応答が不成立と判定された反応時間は除外して、検眼システムの動作を制御してもよい。
【0059】
<出力手段>
本実施形態における検眼システムは、出力手段(例えば、制御部70)を備える。出力手段は、反応時間取得手段により取得された反応時間を出力する。例えば、被検者が検査の開始から応答までに要した反応時間を出力することによって、被検者が偶然に正答した可能性を推測し、被検眼の検査結果が正確か否かを判断することができる。また、被検者が偶然に正答した可能性を考慮して、次に行う検査の設定等を、容易に決定することができる。
【0060】
例えば、出力手段は、反応時間を表示手段(例えば、モニタ6a)へ出力することで、反応時間を表示手段に表示させてもよい。また、例えば、出力手段は、反応時間を音声発生手段(例えば、スピーカ)へ出力することで、反応時間を音声ガイドとして発生させてもよい。また、例えば、出力手段は、反応時間を印刷手段(例えば、プリンタ)へ出力することで、反応時間を印刷させてもよい。また、例えば、出力手段は、反応時間を記憶手段(例えば、メモリ、サーバ、等)へ出力することで、反応時間を記憶させてもよい。
【0061】
例えば、出力手段は、これらの少なくともいずれかの出力形態で、反応時間を出力してもよい。もちろん、例えば、出力手段は、これらの少なくともいずれかの出力形態で、反応時間を対応付けた識別子を出力してもよい。一例としては、文字列、1次元コード、2次元コード、等のいずれかを利用して出力してもよい。
【0062】
例えば、出力手段は、反応時間取得手段により取得された第1反応時間と第2反応時間とを、比較可能に出力してもよい。一例として、出力手段は、第1反応時間と第2反応時間とを並べて出力してもよいし、切り換え可能に出力してもよい。また、一例として、出力手段は、第1反応時間と第2反応時間とを経時的に出力してもよい。これによって、被検者の反応時間の変化から、被検者が偶然に正答した可能性を把握しやすくなる。
【0063】
例えば、出力手段は、少なくとも反応時間を含む情報を出力できればよい。一例として、出力手段は、反応時間そのものを出力してもよい。つまり、被検者が測定の開始から応答までに要した秒数を出力してもよい。また、一例として、出力手段は、反応時間とともに、状態取得手段により取得された検眼システムの状態を出力してもよい。より詳細には、反応時間とともに、視標呈示手段の状態(視標の種類、視標の視力値、視標の種類の切り換え回数、視標の視力値の切り換え回数、等の少なくともいずれかの状態)、矯正手段の状態(被検眼の矯正度数、被検眼の矯正度数の切り換え回数、等の少なくともいずれかの状態)、等を出力してもよい。これによって、被検者の反応時間が検眼システムの状態の変化に応じて増減したか否か等が、容易に判断される。
【0064】
例えば、出力手段は、反応時間と検眼システムの状態との関係を把握することが可能なデータを出力してもよい。例えば、検眼システムの状態の変化にともなう反応時間の変化を連続的に示すデータを出力してもよい。一例としては、このような変化を連続的に示す、グラフデータ、表データ、等の少なくともいずれかを出力してもよい。
【0065】
例えば、出力手段は、反応時間と検眼システムの状態を、反応時間と検眼システムの状態との関係を示すグラフデータとして出力してもよい。一例として、出力手段は、反応時間と視標呈示手段により設定された視標の視力値と、の関係を示すグラフデータを出力してもよい。また、一例として、出力手段は、反応時間と、矯正手段により設定された矯正度数と、の関係を示すグラフデータを出力してもよい。これによって、被検者の反応時間が検眼システムの状態に応じて変化した推移が、容易に把握される。
【0066】
もちろん、例えば、出力手段は、反応時間とともに、検眼システムの状態とは異なる情報を出力してもよい。例えば、自覚式検査にて測定された被検眼の自覚値、各々の検査項目における一連の測定に要した検査時間、等の少なくともいずれかの情報を出力してもよい。
【0067】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0068】
<実施例>
本実施形態に係る検眼システムの一実施例について説明する。
【0069】
図1は、検眼システム1が備える自覚式検眼装置100の一例である。例えば、検眼装置100は、被検眼の光学特性を自覚的に測定することができる。例えば、被検眼の光学特性としては、被検眼の自覚的な眼屈折力(すなわち、自覚値)を測定することができる。例えば、検眼装置100は、筐体2、呈示窓3、額当て4、顎台5、コントローラ6、撮像部90、等を備える。
【0070】
呈示窓3は、被検眼Eに視標を呈示するために用いる。額当て4は、被検眼Eと検眼装置100との距離を一定に保つために用いる。顎台5は、被検眼Eと検眼装置100との距離を一定に保つために用いる。
【0071】
コントローラ6は、モニタ6a、スイッチ部6b、等を備える。モニタ6aは、各種の情報(例えば、被検眼Eの測定結果、等)を表示する。モニタ6aは、タッチパネルであり、モニタ6aがスイッチ部6bの機能を兼ねている。スイッチ部6bは、各種の設定(例えば、開始信号の入力、等)を行うために用いる。コントローラ6からの操作指示に応じた信号は、図示なきケーブルを介した有線通信により、制御部70へ出力される。もちろん、コントローラ6からの操作指示に応じた信号は、赤外線等を介した無線通信により、制御部70へ出力されてもよい。
【0072】
撮像部90は、図示なき撮像光学系を備える。例えば、撮像光学系は、被検者の顔を撮像するために用いられる。例えば、撮像光学系は、撮像素子とレンズにより構成されてもよい。
【0073】
<測定部>
測定部7は、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rを備える。本実施例において、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、は同一の部材で構成される。もちろん、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、はその少なくとも一部が異なる部材で構成されてもよい。測定部7は、左右一対の後述する自覚式測定部と、左右一対の後述する他覚式測定部と、を有する。測定部7からの視標光束及び測定光束は、呈示窓3を介して被検眼Eに導光される。
【0074】
図2は、測定部7を示す図である。
図2では、測定部7として、左眼用測定部7Lを例に挙げる。右眼用測定部7Rは、左眼用測定部7Lと同様の構成であるため省略する。例えば、左眼用測定部7Lは、他覚式測定光学系10、自覚式測定光学系25、第1指標投影光学系45、第2指標投影光学系46、観察光学系50、等を備える。
【0075】
<他覚式測定光学系>
他覚式測定光学系10は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力を測定する他覚式測定部を例に挙げて説明する。なお、被検眼Eの光学特性は、眼屈折力の他、眼軸長、角膜形状、等であってもよい。例えば、他覚式測定光学系10は、投影光学系10aと、受光光学系10bと、で構成される。
【0076】
投影光学系10aは、被検眼Eの瞳孔中心部を介して、被検眼Eの眼底にスポット状の測定指標を投影する。例えば、投影光学系10aは、光源11、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、対物レンズ93、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、等を備える。
【0077】
受光光学系10bは、被検眼Eの眼底で反射された眼底反射光束を、被検眼Eの瞳孔周辺部を介してリング状に取り出す。例えば、受光光学系10bは、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、対物レンズ93、プリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22、等を備える。
【0078】
なお、本実施例では、投影光学系10aと受光光学系10bとの説明を省略する。これらの詳細については、例えば、特開2018-47049号公報を参考されたい。
【0079】
<自覚式測定光学系>
自覚式測定光学系25は、被検眼Eの光学特性を自覚的に測定する自覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力を測定する自覚式測定部を例に挙げる。なお、被検眼Eの光学特性は、眼屈折力の他、コントラスト感度、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、等であってもよい。例えば、自覚式測定光学系25は、投光光学系30と、矯正光学系60と、で構成される。
【0080】
<投光光学系>
投光光学系30は、被検眼Eに向けて視標光束を投光する。例えば、投光光学系30は、ディスプレイ31、投光レンズ33、投光レンズ34、反射ミラー36、対物レンズ92、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、等を備える。
【0081】
ディスプレイ31には、視標(固視標、検査視標、等)が表示される。ディスプレイ31から出射した視標光束は、投光レンズ33からダイクロイックミラー29までの光学部材を順に経由して、被検眼Eに投影される。ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光路と、自覚式測定光学系25の光路と、を共通光路にする。すなわち、ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光軸L1と、自覚式測定光学系25の光軸L2と、を同軸にする。ダイクロイックミラー29は、光路分岐部材である。ダイクロイックミラー29は、投光光学系30による視標光束と、後述の投影光学系10aによる測定光束と、を反射して被検眼Eに導く。
【0082】
<矯正光学系>
矯正光学系60は、投光光学系30の光路内に配置される。また、矯正光学系60は、ディスプレイ31から出射した視標光束の光学特性を変化させる。例えば、矯正光学系60は、乱視矯正光学系63、後述の駆動機構39、等を備える。
【0083】
乱視矯正光学系63は、被検眼Eの円柱度数や乱視軸角度を矯正するために用いる。乱視矯正光学系63は、投光レンズ33と投光レンズ34との間に配置される。乱視矯正光学系63は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ61aと円柱レンズ61bで構成される。円柱レンズ61aと円柱レンズ61bは、回転機構62aと回転機構62bの駆動によって、光軸L2を中心として、各々が独立に回転する。
【0084】
なお、本実施例では、乱視矯正光学系63として、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。乱視矯正光学系63は、円柱度数、乱視軸角度、等を矯正できる構成であればよい。一例としては、投光光学系30の光路に、矯正レンズを出し入れしてもよい。
【0085】
<駆動ユニット>
本実施例において、投影光学系10aが備える光源11及びリレーレンズ12と、受光光学系10bが備える受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、及び撮像素子22と、投光光学系30が備えるディスプレイ31と、は駆動機構39によって光軸方向へ一体的に移動可能となっている。つまり、ディスプレイ31、光源11、リレーレンズ12、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、及び撮像素子22、が駆動ユニット95として同期し、駆動機構39によって、これらが一体的に移動される。駆動機構39は、モータ及びスライド機構からなる。駆動機構39が移動した移動位置は、図示なきポテンショメータによって検出される。
【0086】
駆動機構39は、駆動ユニット95を光軸方向へ移動させることで、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる。これによって、他覚式測定では、被検眼Eに雲霧をかけることができる。自覚式測定では、被検眼Eに対する視標の呈示距離を光学的に変更し、被検眼Eの球面度数を矯正することができる。すなわち、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる構成が、被検眼Eの球面度数を矯正する球面矯正光学系として用いられ、ディスプレイ31の位置を変更することによって、被検眼Eの球面度数が矯正される。なお、球面矯正光学系の構成は、本実施例とは異なっていてもよい。例えば、多数の光学素子を光路内に配置することで、球面度数を矯正してもよい。また、例えば、レンズを光路内に配置し、レンズを光軸方向に移動させることで、球面度数を矯正してもよい。
【0087】
また、駆動機構39は、駆動ユニット95を光軸方向へ移動させることで、光源11とリレーレンズ12、及び、受光絞り18から撮像素子22、を光軸L1方向へ移動させる。これによって、被検眼Eの眼底に対し、光源11、受光絞り18、及び撮像素子22が光学的に共役となるように配置される。なお、駆動ユニット95の移動にかかわらず、ホールミラー13とリングレンズ20は、被検眼Eの瞳と一定の倍率で共役になるように配置されている。このため、投影光学系10aの測定光束が反射された眼底反射光束は、常に平行光束として受光光学系10bのリングレンズ20に入射し、被検眼Eの眼屈折力に関わらず、リングレンズ20と同一の大きさのリング状光束が、ピントの合った状態で、撮像素子22に撮像される。
【0088】
<第1指標投影光学系及び第2指標投影光学系>
第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46は、ダイクロイックミラー29と、後述の偏向ミラー81と、の間に配置される。第1指標投影光学系45は、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。第2指標投影光学系46は、第1指標投影光学系45とは異なる位置に配置され、被検眼の角膜に有限遠のアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。第2指標投影光学系46から出射される近赤外光(アライメント光)は、観察光学系50によって被検眼の前眼部を撮影するための前眼部撮影光としても用いられる。
【0089】
<観察光学系>
観察光学系(撮像光学系)50は、ダイクロイックミラー29、対物レンズ103、撮像レンズ51、撮像素子52、等を備える。ダイクロイックミラー29は、前眼部観察光及びアライメント光を透過する。撮像素子52は、被検眼Eの前眼部と共役な位置に配置された撮像面をもつ。撮像素子52からの出力は、制御部70に入力される。これによって、被検眼Eの前眼部画像は撮像素子52により撮像され、モニタ6a上に表示される。なお、この観察光学系50は、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46によって、被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によってアライメント指標像の位置が検出される。
【0090】
<情報解析装置の内部構成>
検眼装置100の内部構成について説明する。
図3は、検眼装置100の内部を正面方向から見た概略構成図である。
図4は、検眼装置100の内部を側面方向から見た概略構成図である。
図5は、検眼装置100の内部を上面方向から見た概略構成図である。なお、
図4及び
図5では、説明の便宜上、左眼用測定部7Lの光軸のみを示している。
【0091】
検眼装置100は、自覚式測定部を備える。例えば、自覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、駆動機構82、駆動部83、反射ミラー84、凹面ミラー85、等で構成される。なお、自覚式測定部はこの構成に限定されない。例えば、反射ミラー84を有しない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束が、偏向ミラー81を介した後に凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束を、ハーフミラーを介して凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向に照射し、その反射光束を被検眼Eに導光してもよい。
【0092】
検眼装置100は、左眼用駆動部9Lと、右眼用駆動部9Rと、を有し、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、をそれぞれX方向に移動させることができる。例えば、左眼用測定部7L及び右眼用測定部7Rを移動させることによって、測定部7と、後述の偏向ミラー81と、の間の距離が変化し、測定部7からの視標光束のZ方向における呈示位置が変更される。これによって、被検眼Eに、矯正光学系60で矯正された視標光束を導光し、被検眼Eの眼底に矯正光学系60で矯正された視標光束の像が形成されるように、測定部7がZ方向に調整される。
【0093】
例えば、偏向ミラー81は、左右一対にそれぞれ設けられた右眼用偏向ミラー81Rと左眼用偏向ミラー81Lとを有する。例えば、偏向ミラー81は、矯正光学系60と被検眼Eとの間に配置される。すなわち、本実施例における矯正光学系60は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系とを有しており、左眼用偏向ミラー81Lは左眼用矯正光学系と左眼ELの間に配置され、右眼用偏向ミラー81Rは右眼用矯正光学系と右眼ERの間に配置される。例えば、偏向ミラー81は、瞳共役位置に配置されることが好ましい。
【0094】
例えば、左眼用偏向ミラー81Lは、左眼用測定部7Lから投影される光束を反射して、左眼ELに導光する。また、例えば、左眼用偏向ミラー81Lは、左眼ELからの眼底反射光束を反射して、左眼用測定部7Lに導光する。例えば、右眼用偏向ミラー81Rは、右眼用測定部7Rから投影される光束を反射して、右眼ERに導光する。また、例えば、右眼用偏向ミラー81Rは、右眼ERからの眼底反射光束を反射して、右眼用測定部7Rに導光する。なお、本実施例では、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射させて導光する偏向部材として、偏向ミラー81を用いる構成を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。偏向部材は、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射して導光することができればよく、例えば、プリズム、レンズ、等であってもよい。
【0095】
例えば、駆動機構82は、モータ(駆動部)等からなる。例えば、駆動機構82は、左眼用偏向ミラー81Lを駆動するための駆動機構82Lと、右眼用偏向ミラー81Rを駆動するための駆動機構82Rと、を有する。例えば、駆動機構82の駆動によって、偏向ミラー81は回転移動する。例えば、駆動機構82は、水平方向(X方向)の回転軸、及び鉛直方向(Y方向)の回転軸に対して偏向ミラー81を回転させる。すなわち、駆動機構82は偏向ミラー81をXY方向に回転させる。なお、偏向ミラー81の回転は、水平方向又は鉛直方向の一方であってもよい。
【0096】
例えば、駆動部83は、モータ等からなる。例えば、駆動部83は、左眼用偏向ミラー81Lを駆動するための駆動部83Lと、右眼用偏向ミラー81Rを駆動するための駆動部83Rと、を有する。例えば、駆動部83の駆動によって、偏向ミラー81はX方向に移動する。例えば、左眼用偏向ミラー81L及び右眼用偏向ミラー81Rが移動されることによって、左眼用偏向ミラー81L及び右眼用偏向ミラー81Rとの間の距離が変更され、被検眼Eの瞳孔間距離にあわせて、左眼用光路と右眼用光路との間のX方向における距離を変更することができる。
【0097】
なお、例えば、偏向ミラー81は、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて複数設けられてもよい。例えば、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれに、2つの偏向ミラーを設ける構成(例えば、左眼用光路に2つの偏向ミラーを設ける構成、等)が挙げられる。この場合、一方の偏向ミラーがX方向に回転され、他方の偏向ミラーがY方向に回転されてもよい。例えば、偏向ミラー81が回転移動されることによって、視標光束の像を被検眼の眼前に形成するためのみかけの光束を偏向させ、視標光束の像の形成位置を光学的に補正することができる。
【0098】
例えば、凹面ミラー85は、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、で共有される。例えば、凹面ミラー85は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、で共有される。すなわち、凹面ミラー85は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、を共に通過する位置に配置されている。もちろん、凹面ミラー85は、左眼用光路と右眼用光路とで共有される構成でなくてもよい。すなわち、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、のそれぞれに凹面ミラーが設けられる構成であってもよい。例えば、凹面ミラー85は、被検眼Eに矯正光学系60を通過した視標光束を導光し、被検眼Eの眼前に矯正光学系60を通過した視標光束の像を形成する。
【0099】
<自覚式測定部の光路>
自覚式測定部の光路について、左眼用光路を例に挙げて説明する。なお、右眼用光路は、左眼用光路と同様の構成である。例えば、左眼用の自覚式測定部において、自覚式測定光学系25におけるディスプレイ31から出射した視標光束は、投光レンズ33を介して乱視矯正光学系63へと入射し、乱視矯正光学系63を通過すると、投光レンズ34、反射ミラー36、対物レンズ92、ダイクロイックミラー35、及びダイクロイックミラー29、を経由して、左眼用測定部7Lから左眼用偏向ミラー81Lに向けて導光される。左眼用偏向ミラー81Lで反射された視標光束は、反射ミラー84により凹面ミラー85に向けて反射される。ディスプレイ31とから出射した視標光束は、このように各光学部材を経由して、左眼ELに到達する。
【0100】
これにより、左眼ELの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、左眼ELの眼底上に、矯正光学系60で矯正された視標光束の像が形成される。従って、球面度数の矯正光学系(本実施例では、駆動機構39の駆動)による球面度数の調整が眼前で行われたことと、乱視矯正光学系63があたかも眼前に配置されたことと、が等価になっている。被検者は、自然な状態で、凹面ミラー85を介して光学的に所定の検査距離で眼前に形成された視標光束の像を視準することができる。
【0101】
<制御部>
図6は、検眼装置100の制御系を示す図である。例えば、制御部70には、モニタ6a、不揮発性メモリ75(以下、メモリ75)、測定部7が備える光源11、撮像素子22、ディスプレイ31、撮像素子52、等の各種部材が電気的に接続されている。また、例えば、制御部70には、駆動部9、駆動機構39、駆動部83、等がそれぞれ備える図示なき駆動部が電気的に接続されている。
【0102】
例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、検眼装置100における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、検眼装置100の動作を制御するための各種プログラム、視標、初期値、等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0103】
例えば、メモリ75は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ75としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。例えば、メモリ75には、他覚式測定部及び自覚式測定部を制御するための制御プログラムが記憶されている。
【0104】
<制御動作>
検眼装置100の制御動作について説明する。
【0105】
図7は、被検眼Eに対する自覚式検査の流れの一例を示す図である。ここでは、自覚式検査を、第1の自覚式検眼装置(以下、検眼装置100)と、第2の自覚式検眼装置200(以下、検眼装置200)と、の2台の装置を用いて進める場合を例示する。もちろん、自覚式検査は、1台の装置を用いて進められてもよいし、2台以上の装置を用いて進められてもよい。
【0106】
まず、自覚式検査(自覚式測定)では、被検者または検者Dを補助する補助者Aにより、被検眼Eに対する検査(測定)が、検眼装置100を用いて行われる。一例としては、被検眼Eに対し、裸眼視力検査、屈折矯正検査、等の少なくともいずれかの検査が行われる。なお、補助者Aは、検査に不慣れな場合もあり得る。
【0107】
例えば、補助者Aは、被検眼Eに呈示する所定の視標と、被検眼Eを矯正する所定の矯正度数と、の少なくともいずれかを設定し、検査を開始する。また、例えば、補助者Aは、被検者に視標が確認できるかを問い、被検者からの応答を得る。例えば、検眼装置100の制御部70は、検査の開始から被検者の応答が得られるまでに要した反応時間を取得する。例えば、補助者Aは、被検者の応答の内容や正誤を考慮して、視標や矯正度数の少なくともいずれかを切り換え、再度、検査を開始し、被検者からの応答を得る。例えば、制御部70は、反応時間を再び取得する。例えば、補助者Aによるこのような動作が繰り返されることによって、被検者の反応時間が、順次、取得される。例えば、制御部70は、検眼装置100が有するモニタ6aへ、取得した反応時間を表示させる。
【0108】
続いて、自覚式検査では、検査に慣れた検者Dにより、被検眼Eに対する検査が、検眼装置100とは異なる検眼装置200を用いて行われる。例えば、検者Dは、検眼装置100のモニタ6aを確認し、被検者の反応時間から被検眼Eの検査結果が適切か否かを判断して、必要に応じて再検査を行ってもよい。一例としては、被検者の反応時間に基づき、所定の視標と所定の矯正度数を設定した状態のみを、再検査してもよい。これによって、検者は被検眼Eの正しい検査結果を精度よく得られる。また、これによって、検者は被検眼Eの検査を効率的に進めることができる。
【0109】
なお、このような被検者の反応時間は、検眼装置100から検眼装置200へと送信されてもよい。例えば、検眼装置200における制御部270は、被検者の反応時間を受信して、これを検眼装置200が有するモニタ26aへ表示させてもよい。例えば、検者Dは、検眼装置200のモニタ26aを確認することで、再検査を実施するか否かを決定してもよい。
【0110】
以下、被検眼Eに対し、屈折矯正検査を行う場合を例に挙げて、より詳細に説明する。
【0111】
<被検眼と測定部のアライメント>
まず、被検眼Eと測定部7とのアライメントが行われる。例えば、補助者Aがスイッチ部6bの図示なきアライメント開始スイッチを選択すると、制御部70が被検眼Eに対して測定部7を移動させる。これによって、被検眼Eと、自覚式測定光学系25における光軸L2と、が一致(略一致)する。
【0112】
<反応時間の基準値の取得>
次に、被検眼Eに対する予備測定が開始され、被検者の反応時間の基準値が設定される。例えば、被検者の反応速度には個人差があるため、被検者が視標を正しく認識してからすぐに応答できるタイミングは異なる。つまり、被検者が視標を正しく認識してからすぐに応答するまでに要する反応時間は、被検者毎に変化する。
【0113】
そこで、制御部70は、モニタ6aの表示を制御し、被検者が容易に認識できる視標を表示させる。例えば、被検者が容易に認識できる視標は、被検者からすぐに正答が得られるような視標であればよい。言い換えると、被検者が自信をもって応答できるような視標であればよい。また、制御部70は、被検者がこのような視標を認識してから応答するまでの反応時間を取得して、これを基準値に設定する。
【0114】
一例として、制御部70は、被検者の反応速度が速く、モニタ6aに視標を表示してから(被検眼に視標を呈示してから)1秒で応答が得られた場合に、被検者の反応時間の基準値を1秒と設定する。また、一例として、制御部70は、被検者の反応速度が遅く、モニタ6aに視標を表示してから(被検眼に視標を呈示してから)3秒で応答が得られた場合に、被検者の反応時間の基準値を3秒と設定する。例えば、被検者毎に反応時間の基準値を予め設定しておくことで、後述の屈折矯正検査を精度よく実施することができる。
【0115】
例えば、補助者Aは、スイッチ部6bを操作し、所定の視標を選択する。一例として、補助者Aは、視力値がもっとも低いランドルト環視標を選択する。例えば、制御部70は、スイッチ部6bからの選択信号に応じて、ディスプレイ31を制御し、ランドルト環視標を表示させる。また、例えば、制御部70は、ディスプレイ31にランドルト環視標を表示させたタイミングを、メモリ75に記憶させる。
【0116】
例えば、補助者Aは、被検者にランドルト環視標の隙間の方向を問い、被検者からの応答が得られた際に、スイッチ部6bを操作して、被検者の応答の正誤を選択する。補助者Aが被検者の応答の正誤を選択すると、被検者の応答を入力した応答信号が入力される。制御部70は、応答信号に基づいて、被検者が応答した応答タイミングをメモリ75に記憶させる。
【0117】
制御部70は、ディスプレイ31を制御してから応答信号が得られるまでの反応時間を、開始タイミングと応答タイミングとに基づいて取得する。言い換えると、被検眼Eに視標を呈示してから被検者の応答が得られるまでの反応時間を、開始タイミングと応答タイミングとに基づいて取得する。例えば、制御部70は、開始タイミングと応答タイミングとの差分を、反応時間として取得する。また、例えば、制御部70は、被検者のこのような反応時間を基準値として、メモリ75に記憶させる。
【0118】
なお、補助者Aは、被検眼Eに呈示するランドルト環視標の隙間の方向を変えて、同様の操作を複数回行ってもよい。例えば、この場合、制御部70は、被検者の反応時間の平均を基準値として、メモリ75に記憶させてもよい。
【0119】
<屈折矯正検査の開始>
次に、被検者の自覚的な眼屈折力(自覚値)の測定が開始される。補助者Aは、スイッチ部6bを操作し、所定の矯正度数(第1矯正度数)を選択する。例えば、補助者Aは、予め取得した被検眼Eの他覚的な眼屈折力に基づいて、被検眼Eを矯正する、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等を選択してもよい。一例として、本実施例では、被検眼Eの他覚値が、球面度数-3D、円柱度数0D、乱視軸角度0度、と得られており、補助者Aは、これに基づいて、被検眼Eを矯正する球面度数を-3D、円柱度数を0D、乱視軸角度を0度、と選択する。すなわち、補助者Aは、被検眼Eを0Dで矯正するように、各々の値を選択する。
【0120】
制御部70は、スイッチ部6bからの選択信号に応じ、投光光学系30と、矯正光学系60と、の少なくともいずれかを制御する。例えば、制御部70は、駆動機構39を駆動し、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させることで、被検眼Eの球面度数を矯正してもよい。また、例えば、制御部70は、回転機構62aと回転機構62bを駆動し、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを光軸L2bの軸周りに回転させることで、被検眼Eの円柱度数と乱視軸角度との少なくともいずれかを矯正してもよい。これによって、被検眼Eは第1矯正度数で矯正される。
【0121】
<屈折矯正検査における反応時間の取得>
補助者Aは、被検眼Eを第1矯正度数で矯正すると、スイッチ部6bを操作し、所定の視標を選択する。例えば、補助者Aは、視標の視力値と、視標の種類と、をそれぞれ選択してもよい。一例として、本実施例では、視力値1.0のランドルト環視標が選択されてもよい。
【0122】
制御部70は、スイッチ部6bからの選択信号に応じ、ディスプレイ31を制御して、その画面にランドルト環視標を表示させる。また、制御部70は、ディスプレイ31にランドルト環視標を表示させたタイミング(すなわち、被検眼の検査を開始する開始タイミング)を、メモリ75に記憶させる。
【0123】
補助者Aは、被検眼Eを第1矯正度数で矯正した状態で、被検者にランドルト環視標の隙間の向きを問い、被検者からの応答を得る。また、補助者Aは、被検者からの応答を得ると、スイッチ部6bを操作し、被検者の応答の正誤を選択する。例えば、補助者Aが被検者の応答の正誤を選択すると、被検者の応答を入力した応答信号が入力される。制御部70は、スイッチ部6bからの応答信号に基づいて、被検者の応答の正誤が選択されたタイミング(すなわち、被検者が応答した応答タイミング)を、メモリ75に記憶させる。
【0124】
制御部70は、被検眼の検査を開始した開始タイミングと、被検者が応答した応答タイミングと、に基づいて、検査の開始から被検者の応答を得るまでに要した反応時間を取得する。より詳細には、被検眼Eを第1矯正度数(球面度数-3D、円柱度数0D、乱視軸角度0度)で矯正し、視力値1.0のランドルト環視標の呈示を開始してから、被検者の応答を得るまでに要した反応時間を取得する。例えば、制御部70は、開始タイミングと応答タイミングの差分から、反応時間を取得する。これによって、被検眼Eの第1矯正度数に対する反応時間が得られる。
【0125】
なお、補助者Aは、被検眼Eに呈示した視力値1.0のランドルト環視標の隙間の向きを変更し、都度、被検者の応答を得てもよい。制御部70は、スイッチ部6bからの選択信号に基づき、第1視標の向きを変更するためにディスプレイ31を制御する度(被検眼の検査を開始する度)、開始タイミングをメモリ75へ記憶させる。また、制御部70は、スイッチ部6bからの選択信号に基づき、被検者の応答信号が入力される度(被検者が応答する度)、応答タイミングをメモリ75へ記憶させる。これによって、制御部70は、被検眼Eを第1矯正度数で矯正し、視力値1.0のランドルト環視標を呈示した際の、複数回の反応時間を取得することができる。例えば、制御部70は、これらの複数回の反応時間の平均時間を、被検眼Eの第1矯正度数に対する反応時間として得てもよい。
【0126】
例えば、補助者Aは、被検眼Eの第1矯正度数が適切か否かを確認し、これが不適切であれば、被検眼Eを第1矯正度数とは異なる第2矯正度数で矯正する。一例として、補助者Aは、球面度数を-2.75D、円柱度数が0D、乱視軸角度が0度、と選択してもよい。すなわち、補助者Aは、被検眼Eを-0.25Dで矯正するように、各々の値を選択してもよい。制御部70は、補助者Aによるスイッチ部6bの選択に応じ、投光光学系30と矯正光学系60との少なくともいずれかを制御して、第1矯正度数を第2矯正度数に変更するとともに、第2矯正度数を設定した開始タイミングをメモリ75に記憶させる。また、制御部70は、補助者Aによるスイッチ部6bの選択に応じ、被検眼Eを第2矯正度数で矯正した際に応答を得た応答タイミングをメモリ75に記憶させる。例えば、制御部70は、開始タイミングと応答タイミングの差分に基づき、被検眼Eの第2矯正度数に対する反応時間を取得する。もちろん、ランドルト環視標の隙間の向きを変更する毎に得られる、複数回の反応時間の平均時間を、被検眼Eの第2矯正度数に対する反応時間として得てもよい。
【0127】
例えば、補助者Aは、被検眼Eの屈折矯正検査中において、このように、被検眼Eの矯正度数と、視力値1.0のランドルト環視標の隙間の向きと、の少なくともいずれかを、被検者の応答を考慮しながら切り換える。例えば、補助者Aが適切と判断した被検眼Eの矯正度数が、被検眼Eの自覚値として取得される。
【0128】
例えば、制御部70は、被検眼Eの屈折矯正検査中において、ディスプレイ31、投光光学系30、および矯正光学系60のいずれかを制御して視標または矯正度数を切り換えた開始タイミングと、この変化に対して被検者が応答した応答タイミングと、に基づいて、順次、被検者の反応時間を求める。また、例えば、制御部70は、被検眼Eの屈折矯正検査中において、被検眼Eの矯正度数と、視力値1.0のランドルト環視標の隙間の向きと、が切り換えられる毎に得られた被検者の反応時間を合わせ、各々の検査項目に要した反応時間を求めてもよい。
【0129】
<反応時間の表示>
例えば、制御部70は、被検者の反応時間を取得すると、これをモニタ6aに表示させる。例えば、片眼に対して屈折矯正検査を順に行った場合は、片眼測定における反応時間を表示させてもよい。また、例えば、両眼に対して屈折矯正検査を行った場合は、両眼測定における反応時間を表示させてもよい。もちろん、片眼および両眼に対する屈折矯正検査を行った場合は、片眼測定における反応時間と、両眼測定における反応時間と、の少なくともいずれかを表示させてもよい。
【0130】
例えば、制御部70は、屈折矯正検査中の異なる開始タイミングに対する反応時間を比較できるように、モニタ6aに表示させてもよい。一例として、被検者が屈折矯正検査における各々の検査項目に要した反応時間を示すグラフ(後述のグラフ500)を生成して、これをモニタ6aに表示させてもよい。また、一例として、被検者の反応時間と、被検眼Eを矯正した矯正度数と、の関係を示すグラフ(後述のグラフ600)を生成して、これをモニタ6aに表示させてもよい。もちろん、例えば、制御部70は、被検者の反応時間とともに、屈折矯正検査に要した検査時間、被検眼Eの自覚値、矯正度数を切り換えた回数(頻度)、等の少なくともいずれかをモニタ6aに表示させてもよい。
【0131】
図8は、モニタ6aの一例である。例えば、モニタ6aには、被検眼Eの検査結果を示す結果画像80、屈折矯正検査における各々の検査項目に要した反応時間を示すグラフ500、屈折矯正検査における反応時間と矯正度数との関係を示すグラフ600、等が表示される。
【0132】
例えば、本実施例では、グラフ500として棒グラフを例に挙げるが、グラフ500は、棒グラフ、折れ線グラフ、面グラフ、近似曲線グラフ、等の少なくともいずれかの形式のグラフとしてもよい。さらに、例えば、本実施例では、グラフ500に、各々の検査項目に要する一般の平均的な反応時間501が表示されてもよい。
【0133】
例えば、グラフ500には、屈折矯正検査の球面検査において、被検眼Eを矯正する球面度数を切り換える毎に得られた反応時間を合わせた、球面検査の反応時間502が含まれる。また、例えば、グラフ500には、屈折矯正検査の乱視検査において、被検眼Eを矯正する円柱度数または乱視軸角度を切り換える毎に得られた反応時間を合わせた、乱視検査の反応時間503が含まれる。なお、乱視検査の反応時間503は、円柱度数の切り換えに対する反応時間と、乱視軸角度の切り換えに対する反応時間と、に分けられていてもよい。
【0134】
例えば、検者は、被検者に対する各々の検査項目の反応時間をグラフ500により確認することで、応答に時間をかけた項目を容易に把握できる。一例として、検者は、各々の検査項目の反応時間から、被検眼Eの自覚値が信用できるものであるかを判断してもよい。また、一例として、検者は、検査項目の反応時間が、一般の平均的な反応時間501に対して極度に短い場合、あるいは、極度に長い場合には、その検査項目について、再度、検査を実施してもよい。
【0135】
図9は、屈折矯正検査における反応時間と矯正度数との関係を示すグラフ600の一例である。本実施例では、グラフ600として折れ線グラフを例に挙げるが、グラフ600は、折れ線グラフ、棒グラフ、面グラフ、近似曲線グラフ、等の少なくともいずれかの形式のグラフとしてもよい。例えば、グラフ600の縦軸は被検者の反応時間、横軸は被検眼Eを矯正する矯正度数(本実施例では、球面度数)である。
【0136】
例えば、グラフ600には、被検者の反応時間が各々の球面度数毎にプロットされた複数の点601が含まれる。すなわち、被検者の反応時間が、被検眼Eを矯正する球面度数を切り換える毎にプロットされた、複数のプロット点601が含まれる。また、例えば、グラフ600には、複数のプロット点601に基づいて生成された折れ線602が含まれる。なお、グラフ600は、複数のプロット点601および折れ線602のいずれかを含むものでもよい。また、例えば、グラフ600には、被検者の反応時間の基準値に基づいて生成された、基準線Stdが含まれてもよい。
【0137】
例えば、検者は、被検者の反応時間をグラフ600により確認することで、被検者が感覚的に回答したか否か、被検者が視標を容易に認識したか否か、被検眼Eが調節状態であったか否か、等の様々な情報を推測することができる。
【0138】
一例として、被検眼Eがランドルト環視標をはっきりと視認でき、自信をもって回答した場合、被検者は所定の反応時間で回答する。しかし、被検眼Eがランドルト環視標を視認できず、「わからない」と回答したり感覚(勘)で回答した場合、被検者の反応時間は、所定の反応時間と同程度か、あるいは、所定の反応時間よりも短くなる傾向にある。このため、検者は、被検者が感覚で回答した可能性がある矯正度数(または、被検者が感覚で回答した可能性がある矯正度数の範囲)を、プロット点601の変化から推測することができる。
【0139】
また、一例として、被検眼Eを矯正する矯正度数が適切であれば、被検眼Eはランドルト環視標をはっきりと視認できるため、被検者の反応時間が短くなる傾向にある。しかし、被検眼Eを矯正する矯正度数が不適切であると、被検眼Eは雲霧状態となり、ランドルト環視標がぼやけて視認されるため、被検者の反応時間が長くなる傾向にある。このため、検者は、被検眼Eにとって適切な矯正度数を、プロット点601の変化から推測することができる。
【0140】
また、一例として、被検眼Eの調節が働くと、被検眼Eはランドルト環視標に焦点を合わせられるため、ランドルト環視標をはっきりと視認でき、被検者の反応時間が短くなる傾向にある。しかし、被検眼Eの調節が働いていないと(あるいは、被検眼Eの調節が解除されると)、被検眼Eはランドルト環視標に焦点を合わせられず、ランドルト環視標がぼやけて視認されるため、被検者の反応時間が長くなる傾向にある。このため、検者は、被検眼Eの調節が働く矯正度数(球面度数)の範囲ΔSを、プロット点601の変化から推測することができる。
【0141】
なお、検者は、被検者に自信をもって応答できる視標を呈示した場合の反応時間に基づく基準線Stdと、各々のプロット点601と、を比較することで、感覚で回答した可能性、適切な矯正度数、調節が働く範囲ΔS、等をより判断しやすくなる。例えば、検者は、被検者の反応時間が短くなっていた矯正度数(球面度数)のみ、再度、検査を実施してもよい。
【0142】
なお、屈折矯正検査における被検者の回答が「わからない」や誤答であった場合、検者がその旨を把握できるよう、モニタ6aに表示がなされてもよい。例えば、被検者の回答に応じて、各々の矯正度数に対応するプロット点601のマーカー(例えば、丸、四角、三角、等)を変更してもよい。また、例えば、被検者の回答に応じて、各々の矯正度数に対応するプロット点601とともに記号(例えば、「?」、「×」、等)を示してもよい。もちろん、被検者の回答が正答であった場合にも、同様に、その旨がモニタ6aに表示されてもよい。
【0143】
以上、説明したように、例えば、本実施例における検眼システムは、被検眼の検査(測定)が開始された開始タイミングであって、視標呈示手段または矯正手段が制御された開始タイミングと、開始タイミングよりも後の応答タイミングであって、応答入力手段によって検査に対する応答信号が入力された応答タイミングと、に基づき、検査の開始から応答までに要する反応時間を取得して出力する。このため、検者は、被検者の反応時間から、被検眼の検査結果が正確か否かを判断することができる。また、検者は、被検者の反応時間から、次の設定等を容易に決定することができる。
【0144】
また、例えば、本実施例における検眼システムは、少なくとも2つの異なるタイミングにおける反応時間を取得して、これを比較可能に出力する。これによって、検者は、被検者の反応時間を比較し、被検眼の検査結果の適否を判断しやすくなる。また、検者は、次に行う動作を決定しやすくなる。
【0145】
また、例えば、本実施例における検眼システムは、少なくとも2つの開始タイミングが異なる反応時間を取得して、これを比較可能に出力する。例えば、これによって、検者は被検者の反応時間の変化を把握しやすくなる。
【0146】
また、例えば、本実施例における検眼システムは、被検者の反応時間とともに検眼システムの状態を出力する。このため、検者は、被検者の反応時間が検眼システムの状態の変化に応じて増減したか否か等を、容易に判断することができる。
【0147】
また、例えば、本実施例における検眼システムは、被検者の反応時間と検眼システムとの関係を示すグラフデータを出力する。例えば、被検者の反応時間と、矯正手段により設定された矯正度数と、の関係を示すグラフデータ等を出力することができる。例えば、このため、検者は、被検者の反応時間が検眼システムの状態に応じて変化した推移を、容易に把握することができる。
【0148】
<変容例>
なお、本実施例では、補助者がスイッチ部6bを操作して被検者の応答を入力する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検者が自ら応答を入力する構成としてもよい。この場合、検眼装置100は、被検者が操作するための被検者用コントローラを備えてもよい。一例として、被検者用コントローラは、ランドルト環視標の隙間の方向に応じて傾倒可能な応答レバーと、ランドルト環視標を認識できない場合に押圧するボタンと、を有してもよい。制御部70は、このような応答レバーおよびボタンの少なくともいずれかから入力された応答信号に基づいて、応答タイミングをメモリ75に記憶させてもよい。
【0149】
なお、本実施例では、被検眼Eに対する予備測定にて、被検者の反応時間の基準値を取得する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検者の反応時間の基準値は必ずしも取得しなくてもよい。この場合には、折れ線602の傾き等を利用して、被検眼Eの適切な矯正度数等が推測されてもよい。
【0150】
また、本実施例では、被検眼Eに対する予備測定にて、視力値がもっとも低いランドルト環視標を呈示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、ランドルト環視標の視力値は、被検眼の他覚値に基づいて選択されてもよい。
【0151】
また、本実施例では、被検眼Eに対する予備測定にて、被検眼Eを裸眼状態とする構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼Eは矯正状態とされてもよい。この場合には、被検眼の他覚値に基づいて、被検眼Eを矯正する矯正度数を選択してもよい。
【0152】
なお、本実施例では、被検眼Eに対する予備測定を行うことで、被検者の反応時間の基準値を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検者の反応時間の基準値は、年齢等に応じて、予め設定されていてもよい。例えば、この場合、検者は、スイッチ部6bを操作して、被検者情報を入力してもよい。一例として、被検者情報は、被検者毎に付与されるIDであって、氏名や年齢等が対応付けられたIDであってもよい。例えば、制御部70は、このようなIDに対応付けられた被検者の年齢を読み取ることで、被検者の年齢に応じた基準値を設定してもよい。
【0153】
なお、本実施例においては、被検眼Eに対する屈折矯正検査にて、被検眼Eを矯正する矯正度数を徐々に変化させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼Eに対する屈折矯正検査にて、都度、所定の矯正度数から所望の矯正度数へと、矯正度数を変化させる構成としてもよい。この場合、検眼システムにおける制御手段は、矯正手段の制御状態を、初期状態から第1矯正状態に変更し、第1矯正状態における応答が完了した後に、初期状態へ戻す。その後、制御手段は、矯正手段の制御状態を、初期状態から第1矯正状態とは異なる第2矯正状態へと変更する。つまり、制御手段は、矯正手段による矯正状態を変更していく際に、一度、初期状態へ矯正状態を変更した後で、次の矯正状態へと、矯正状態を変更する。
【0154】
例えば、被検眼Eを矯正する矯正度数の初期状態(初期値)は、被検者の他覚値に基づいて設定されてもよい。例えば、被検者の他覚値から予測される、被検眼Eの調節が働かない矯正度数(例えば、他覚値から+2.0Dの値)が設定されてもよい。もちろん、任意の値を設定することができてもよい。また、例えば、被検眼Eの矯正度数が初期値に設定されると、被検眼Eの矯正度数を所定のステップ(一例として、0.25D間隔)で切り換えた場合の反応時間が、逐次、取得される。このとき、被検眼Eの矯正度数を次のステップに切り換える際には、都度、矯正度数が初期値に戻される。
【0155】
一例として、被検眼Eの他覚値が-2.0Dであった場合は、矯正度数の初期値が0Dと設定される。制御部70は、被検眼Eの矯正度数を0Dから-0.25Dに切り換え、被検眼Eを-0.25Dで矯正してから応答を得るまでの反応時間を取得する。続いて、制御部70は、被検眼Eの矯正度数を-0.25Dから0Dに戻し、その後に、被検眼Eの矯正度数を0Dから-0.5Dに切り換え、被検眼Eを-0.5Dで矯正した際の反応時間を同様に取得する。続いて、制御部70は、被検眼Eの矯正度数を-0.5Dから0Dに戻し、その後に、被検眼Eの矯正度数を0Dから-0.75Dに切り換え、被検眼Eを-0.75Dで矯正した際の反応時間を同様に取得する。なお、このような矯正度数の切り換えは、少なくとも他覚値(-2.0D)に到達するまで繰り返されてもよい。例えば、他覚値を超えても矯正度数の切り換えを繰り返す場合は、反応時間に変化がみられなくなった際に、繰り返しが終了されてもよい。
【0156】
例えば、制御部70は、被検眼Eの矯正度数の切り換えを繰り返して得られた各々の反応時間に基づいて、グラフデータを作成し、これを表示させてもよい。例えば、これによって、被検眼Eが調節に要した時間が反映された、反応時間の推移を把握することができる。一例として、被検眼Eの調節が働く矯正度数では、プロット点の変化が小さくなる(あるいは、ほとんど変化しなくなる)ため、被検眼Eの正しい眼屈折力を推測することができる。
【0157】
なお、本実施例では、被検眼Eに対する屈折矯正検査中に得られたすべての異なる開始タイミングにおける反応時間を、グラフデータとして比較可能に表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、屈折矯正検査中に得られた少なくとも2つの異なる開始タイミングにおける反応時間を、比較可能に表示できればよい。例えば、この場合には、補助者Aまたは検者Dが任意の矯正度数を複数選択できるように構成され、制御部70が選択信号に応じて、該当する反応時間を表示させてもよい。また、例えば、この場合には、前述のグラフデータとともに、任意の矯正度数における反応時間を表示させてもよい。
【0158】
なお、本実施例では、被検眼Eの屈折矯正検査を行う構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。もちろん、本実施例では、被検眼Eの裸眼視力検査、レッドグリーン検査、クロスシリンダ検査、等の少なくともいずれかの検査を行ってもよい。これらの場合にも、制御部70は、ディスプレイ31、投光光学系30、および矯正光学系60のいずれかを制御して視標または矯正度数を切り換えた開始タイミングと、この変化に対して被検者が応答した応答タイミングと、に基づいた被検者の反応時間を求めることができる。
【0159】
一例として、被検眼Eの裸眼視力検査では、被検眼Eの応答の正誤を考慮して、被検眼Eに呈示された視標の視力値が切り換えられる。このため、制御部70は、ディスプレイ31を制御して視標の視力値を切り換えたタイミング(開始タイミング)と、被検者の応答を得た応答タイミングと、を記憶させてもよい。
【0160】
図10は、裸眼視力検査における反応時間と視力値との関係を示すグラフ700の一例である。例えば、グラフ700の縦軸は被検者の反応時間、横軸は被検眼Eに呈示した視標の視力値である。例えば、グラフ700には、被検者の反応時間が各々の視力値毎にプロットされた複数のプロット点701、複数のプロット点701に基づいて生成された折れ線702、被検者の反応時間の基準値に基づいて生成された基準線Std、等が含まれてもよい。例えば、被検眼Eの裸眼視力検査を実施する場合、通常は、呈示する視標の視力値が1段階ずつ変更される。しかし、検者は、プロット点701の推移に基づき、被検者の反応時間が短くなっていた視力値については、2段階ずつ変更する等してもよい。
【0161】
なお、被検眼Eのレッドグリーン検査では、被検眼Eの応答の正誤を考慮して、被検眼Eを矯正する球面度数が切り換えられる。このため、制御部70は、投光光学系30を制御して球面度数を切り換えたタイミング(開始タイミング)と、被検者の応答を得た応答タイミングと、を記憶させてもよい。また、制御部70は、被検者の反応時間を縦軸とし、被検眼Eを矯正する球面度数を横軸としたグラフを生成してもよい。
【0162】
また、被検眼Eのクロスシリンダ検査では、被検眼Eの応答の正誤を考慮して、被検眼Eを矯正する乱視軸角度が切り換えられる。このため、制御部70は、矯正光学系60を制御して乱視軸度数を切り換えたタイミング(開始タイミング)と、被検者の応答を得た応答タイミングと、を記憶させてもよい。また、制御部70は、被検者の反応時間を縦軸とし、被検眼Eを矯正する乱視軸角度を横軸としたグラフを生成してもよい。
【0163】
なお、本実施例では、被検眼Eに対する屈折矯正検査にて、被検眼Eを矯正する球面度数を切り換え、被検者の反応時間と球面度数との関係を示すグラフ600を表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼Eに対する屈折矯正検査にて、被検眼Eの円柱度数を切り換え、被検者の反応時間と円柱度数との関係を示すグラフを表示する構成としてもよい。また、例えば、被検眼Eに対する屈折矯正検査にて、被検眼Eの乱視軸角度を切り換え、被検者の反応時間と乱視軸角度との関係を示すグラフを表示する構成としてもよい。なお、被検眼Eを矯正する球面度数、円柱度数、および乱視軸角度のすべてが切り換えられた場合は、各々のグラフを生成して表示させてもよい。
【0164】
なお、本実施例では、被検眼Eに対する屈折矯正検査にて、被検眼Eに呈示する視標の視力値を変更せず、被検眼Eを矯正する矯正度数のみを変更する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。もちろん、被検眼Eに対する屈折矯正検査にて、被検眼Eに呈示する視標の視力値と、被検眼Eを矯正する矯正度数と、をともに変更してもよい。この場合には、被検者の反応時間と視力値との関係を示すグラフ、および、被検者の反応時間と各々の矯正度数との関係を示すグラフ、が生成されてもよい。また、この場合には、被検者の反応時間と、視力値と、各々の矯正度数と、の関係を3次元で表すグラフが生成されてもよい。
【0165】
なお、本実施例では、被検眼Eの反応時間に基づき、検者が次の動作を判断する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、本実施例では、被検眼Eの反応時間に基づき、制御部70が自動的に次の動作を決定する構成としてもよい。例えば、制御部70は、被検者の反応時間の基準値に対して所定の許容範囲を設け、被検者の反応時間が許容範囲を超えるか否かに基づいて、次に切り換える視標の視力値を変更してもよい。より詳細には、被検者の反応時間が基準値と同程度であれば(つまり、許容範囲内であれば)、視標の視力値を1段階高いものに切り換えてもよい。また、被検者の反応時間が基準値とは大きく異なっていれば(つまり、許容範囲外であれば)、視標の視力値を2段階高いものに切り換えてもよい。
【0166】
また、例えば、制御部70は、被検者の反応時間の基準値に対して所定の許容範囲を設け、被検者の反応時間が許容範囲を超えるか否かに基づいて、次に切り換える矯正度数を変更してもよい。より詳細には、被検者の反応時間が基準値と同程度であれば(つまり、許容範囲内であれば)、矯正度数を小さなステップ(一例として、0.25D間隔)で切り換えてもよい。また、被検者の反応時間が基準値とは大きく異なっていれば(つまり、許容範囲外であれば)、矯正度数を大きなステップ(一例として、0.5D間隔)で切り換えてもよい。
【0167】
例えば、このように、本実施例における検眼システムは、被検者の反応時間に基づいて、検眼システムの動作を制御することができる。なお、検眼システムは、被検者の反応時間を用いて検眼システムの状態の適否を判定し、その結果に基づいて検眼システムの動作を制御することもできる。これによって、次に被検眼へ呈示する視標の視力値や、次に被検眼を矯正する矯正度数が適切に選択されるので、検査の内容を最適化し、検査時間を短縮させることができる。
【0168】
なお、本実施例では、被検者の反応時間をモニタ6aに表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、被検者の反応時間に加えて、被検者の反応時間に基づいて得られる情報をモニタ6aに表示してもよい。一例としては、左眼と右眼において、各々の矯正度数で矯正した場合の反応時間に所定の差があったときは、所定の差を表示してもよいし、所定の差がある旨を報知するメッセージ等を表示してもよい。所定の差は、実験やシミュレーション等から、予め設定しておいてもよい。例えば、このような構成であれば、検者は、左眼と右眼の反応時間に大きな差が生じる原因(被検眼Eに疾患がある可能性、左眼および右眼を矯正する矯正度数がずれている可能性、等)を推測しやすくなる。
【符号の説明】
【0169】
7 測定部
10 他覚式測定光学系
25 自覚式測定光学系
70 制御部
75 メモリ
81 偏向ミラー
84 反射ミラー
85 凹面ミラー
100 自覚式検眼装置