(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】アルデヒド系ガス又はケトン系ガスに好適な消臭剤組成物、消臭製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20240827BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240827BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20240827BHJP
D06M 13/432 20060101ALI20240827BHJP
D06M 13/192 20060101ALI20240827BHJP
B60R 13/02 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
A61L9/01 K
B01J20/22 A
A61L9/01 Z
D06M11/79
D06M13/432
D06M13/192
B60R13/02 Z
(21)【出願番号】P 2020091541
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鷹觜 篤
(72)【発明者】
【氏名】上杉 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜直
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-204686(JP,A)
【文献】特開2015-117323(JP,A)
【文献】国際公開第2006/046611(WO,A1)
【文献】特開2008-259804(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199756(WO,A1)
【文献】特開2009-019184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01J 20/00-20/28、
20/30-20/34
D06M 10/00-11/84、
13/00-15/715、
16/00、19/00-23/18
B60R 13/01-13/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有
する消臭剤組成物であって、前記キレート剤の含有量は、前記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に1~50質量部であり、前記アミノグアニジン塩の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して20~90質量%であり、前記キレート剤の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して2~10質量%であり、車両の室内に使用されることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項2】
車両用内装材に用いられることを特徴とする請求項1に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項3】
前記車両が自動車である請求項1又は2に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項4】
アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有
する消臭剤組成物であって、前記キレート剤の含有量は、前記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に1~50質量部であり、前記アミノグアニジン塩の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して20~90質量%であり、前記キレート剤の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して2~10質量%であり、フィルターに使用されることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項5】
アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有
する消臭剤組成物であって、前記キレート剤の含有量は、前記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に1~50質量部であり、前記アミノグアニジン塩の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して20~90質量%であり、前記キレート剤の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して2~10質量%であり、建造物の室内に使用されることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項6】
住宅用内装材に用いられることを特徴とする請求項5に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項7】
アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有
する消臭剤組成物であって、前記キレート剤の含有量は、前記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に1~50質量部であり、前記アミノグアニジン塩の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して20~90質量%であり、前記キレート剤の含有割合は、前記消臭剤組成物の全体に対して2~10質量%であり、衣料に使用されることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項8】
前記アミノグアニジン塩が、アミノグアニジン塩酸塩及びアミノグアニジン硫酸塩から選ばれた少なくとも1種である請求項1~7のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項9】
前記キレート剤が、無機リン酸、カルボン酸及びこれらの塩から選ばれた少なくとも1種である請求項1~7のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項10】
前記アミノグアニジン塩及び前記キレート剤の少なくとも一方が無機担体に担持されている請求項1~9のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項11】
前記無機担体が、ケイ素化合物からなる請求項10に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む自動車内装用消臭樹脂。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭
剤組成物を含む自動車内装用消臭繊維。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む自動車内装用消臭布帛。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む自動車内装消臭フィルター。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする自動車内装用消臭樹脂の製造方法。
【請求項17】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする自動車内装用消臭繊維の製造方法。
【請求項18】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする自動車内装用消臭布帛の製造方法。
【請求項19】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする自動車内装用消臭フィルターの製造方法。
【請求項20】
請求項4に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む消臭フィルター。
【請求項21】
請求項4に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする消臭フィルターの製造方法。
【請求項22】
請求項6に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む消臭住宅内装材。
【請求項23】
請求項6に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする消臭住宅内装材の製造方法。
【請求項24】
請求項7に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む消臭衣料。
【請求項25】
請求項7に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする消臭衣料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属(合金を含む。以下、同じ。)製の容器に貯蔵した際に腐食が抑制されるアルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭に好適な消臭剤組成物に関する。又、本発明は、消臭製品の製造原料である、消臭剤組成物と、接着剤樹脂等とを含む加工液を、金属製の容器、撹拌羽根等を備える装置を用いて製造する場合、及び、消臭剤組成物又は加工液を使用して消臭製品を製造する場合に、容器、部材等の腐食が抑制される、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスに好適な消臭剤組成物に関し、前記消臭剤組成物を含む消臭製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活環境、職場環境等に応じて、空気中には、悪臭、有害ガス等の様々なガス状汚染物質が存在しており、これらガス状汚染物質を除去し、快適な環境を得ることに関心が持たれるようになってきた。例えば、アルデヒド系ガスやケトン系ガスは、タバコの煙、体臭(汗臭、口臭等)、ペット臭、カビ臭、塗料臭、印刷臭等の各種の臭気に含まれており、人体への影響が指摘されていることから、近年、室内、車内等において、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスを含む空気を浄化するための消臭濾材、消臭フィルター等の消臭製品が提案されている。そして、これらの消臭製品の製造原料として、種々のアルデヒド系ガス消臭剤及びケトン系ガス消臭剤が知られている(特許文献1~4参照)。
【0003】
特許文献1には、ケイ酸塩化合物及び4価金属リン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものに、コハク酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド及びシュウ酸ジヒドラジドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものを担持したアルデヒド系ガス消臭剤が開示されている。
【0004】
特許文献2には、モノアミノグアニジン塩、ジアミノグアニジン塩及びトリアミノグアニジン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有するアルデヒド系ガス消臭剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ジヒドラジド化合物と含水無機質粉体と水とを含有する消臭組成物を調製する工程、及び、消臭剤全体の中で水分が4.5質量%以上残存するように消臭組成物を45℃以上90℃以下の温度で加熱する工程により得られたアルデヒド系ガス消臭剤が開示されている。
又、特許文献3には、バインダーを用いてアルデヒド系ガス消臭剤を後加工して得られた消臭加工製品(消臭製品)が開示されており、この場合、通常、アルデヒド系ガス消臭剤、バインダー及び液状媒体を含有する加工液が用いられる。
【0006】
特許文献4には、第一級アミン化合物を含有することを特徴とするケトン系ガス吸着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2004/58311号
【文献】国際公開第2006/46611号
【文献】国際公開第2013/118714号
【文献】国際公開第2016/199756号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、アミノグアニジン塩を主とする消臭剤は、アルデヒド系ガスやケトン系ガスの消臭剤として広く用いられる一方で、このような消臭剤の貯蔵容器が金属を含む場合や、消臭製品の製造に用いられる、消臭剤、接着剤樹脂等を含有する加工液を調製するための製造設備(容器、撹拌羽根等)が金属を含む場合には、アミノグアニジン塩が原因と思われる腐食が確認されることがあった。このような腐食により、アミノグアニジン塩を主とする消臭剤又は加工液が不純物を含むことになったり、製造設備に不具合をもたらしたりするため、消臭製品を安定生産するために、消臭剤の改善が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記[1]~[13]に記載の消臭性組成物に関する。
[1]アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有し、車両の室内に使用されることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[2]車両用内装材に用いられることを特徴とする前記[1]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[3]前記車両が自動車である前記[1]又は[2]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[4]アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有し、フィルターに使用されることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[5]アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有し、建造物の室内に使用されることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[6]住宅用内装材に用いられることを特徴とする前記[5]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[7]アミノグアニジン塩と、金属のキレート剤とを含有し、衣料に使用されることを特徴とするアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[8]前記アミノグアニジン塩が、アミノグアニジン塩酸塩及びアミノグアニジン硫酸塩から選ばれた少なくとも1種である前記[1]~[7]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[9]前記キレート剤が、無機リン酸、カルボン酸及びこれらの塩から選ばれた少なくとも1種である前記[1]~[7]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[10]前記アミノグアニジン塩及び前記キレート剤の少なくとも一方が無機担体に担持されている前記[1]~[9]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[11]前記無機担体が、ケイ素化合物からなる前記[10]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[12]前記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に、前記キレート剤の含有量が1~50質量部である前記[1]~[11]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
[13]前記アミノグアニジン塩の含有割合が、組成物の全体に対して5~70質量%である請求項1~12のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物。
【0010】
又、本発明は、下記[14]~[27]に記載の消臭製品及びその製造方法に関する。
[14]前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む自動車内装用消臭樹脂。
[15]前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む自動車内装用消臭繊維。
[16]前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む自動車内装用消臭布帛。
[17]前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む自動車内装消臭フィルター。
[18]前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする自動車内装用消臭樹脂の製造方法。
[19]前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする自動車内装用消臭繊維の製造方法。
[20]前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする自動車内装用消臭布帛の製造方法。
[21]前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする自動車内装用消臭フィルターの製造方法。
[22]前記[4]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む消臭フィルター。
[23]前記[4]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする消臭フィルターの製造方法。
[24]前記[6]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む消臭住宅内装材。
[25]前記[6]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする消臭住宅内装材の製造方法。
[26]前記[7]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む消臭衣料。
[27]前記[7]に記載のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を用いることを特徴とする消臭衣料の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の消臭剤組成物は、アルデヒド系ガス及び/又はケトン系ガスの消臭に好適な消臭製品の製造に好適である。又、(1)消臭剤組成物、(2)消臭剤組成物を含む消臭製品の製造に用いられる、消臭剤組成物と、接着剤樹脂と、分散媒とを含む加工液、(3)消臭剤組成物と、分散媒とを含むスラリー、又は、(4)消臭剤組成物を含む消臭製品の、収容又は製造に用いられる、容器、撹拌装置の撹拌羽根又は撹拌軸、及び、塗布、紡糸並びに成型等に用いる部材等、が金属製である場合に、腐食を抑制することができる。従って、腐食に起因する不純物の混入が抑制された消臭製品を効率よく製造することができる。特に、キレート剤の含有量が、アミノグアニジン塩の含有量を100質量部としたときに、1~50質量部である場合には、上記効果が顕著となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.消臭剤組成物
本発明は、アルデヒド系ガス及び/又はケトン系ガスのアミノグアニジン塩に対する化学吸着作用を利用したアルデヒド系ガス及び/又はケトン系ガスに好適な消臭剤組成物であり、アミノグアニジン塩と、キレート剤とを含有する組成物であって、他の成分(後述)を更に含有してもよい固体組成物である。尚、アルデヒド系ガスとは、アルデヒド基を含む化合物に由来するガスを意味し、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブロパナール、ブタナール、ノネナール等に由来するガスである。又、ケトン系ガスとは、カルボニル基を含む化合物に由来するガスを意味し、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン等に由来するガスである。本発明の消臭剤組成物は、特にアルデヒド系ガスに対して好適であるが、ケトン系ガスに対しても消臭効果を有する消臭剤組成物である。
【0013】
1-1.アミノグアニジン塩
上記アミノグアニジン塩としては、モノアミノグアニジン、ジアミノグアニジン又はトリアミノグアニジンの塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
上記モノアミノグアニジン塩としては、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩、アミノグアニジン重炭酸塩、アミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。
上記ジアミノグアニジン塩としては、ジアミノグアニジン塩酸塩、ジアミノグアニジン硫酸塩、ジアミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。
又、上記トリアミノグアニジン塩としては、トリアミノグアニジン塩酸塩、トリアミノグアニジン硝酸塩等が挙げられる。上記アミノグアニジン塩としては、アミノグアニジン塩酸塩及びアミノグアニジン硫酸塩が好ましい。
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物に含まれるアミノグアニジン塩は、1種のみでも、2種以上でもよい。
【0014】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物に含有されるアミノグアニジン塩の含有割合は、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭効果の観点から、組成物の全体に対して、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%、更に好ましくは20~55質量%である。
【0015】
1-2.キレート剤
上記キレート剤としては、金属イオンに配位してキレート化合物を形成するもの(多座配位子)であれば、特に限定されない。本発明の実施形態においては、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、タングステン、マンガン、モリブデン、亜鉛等の重金属イオンに配位してキレート化合物を形成するものが好ましく、無機リン酸、カルボン酸又はこれらの塩を用いることができる。これらの化合物は、組み合わせて用いてもよい。
上記キレート剤が無機リン酸を含む場合には、消臭剤組成物の変色がなく、より好ましい。
【0016】
上記無機リン酸としては、リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸等が挙げられる。又、無機リン酸の塩は、これらの無機リン酸と、1価又は2価の金属との塩であり、好ましくは、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩である。上記無機リン酸塩としては、ヘキサメタリン酸ナトリウムが好ましい。
【0017】
上記カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸;ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸等のアミノカルボン酸;ジヒドロキシエチルグリシン、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、トリエタノールアミンL-グルタミン酸二酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミノ四酢酸等のヒドロキシアミノカルボン酸;クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。上記カルボン酸としては、ジカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸が好ましい。
又、カルボン酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等とすることができる。
ヒドロキシカルボン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ナトリウムグリコヘプトネート等が挙げられる。アミノカルボン酸塩としては、ニトリロ三酢酸・3ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸・4ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム、ジエチレントリアミノ五酢酸・5ナトリウム等が挙げられる。ヒドロキシアミノカルボン酸塩としては、ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸・2ナトリウム、トリエタノールアミンL-グルタミン酸二酢酸・4ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミノ四酢酸・4ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物に含まれるキレート剤の含有量は、特に限定されない。上記キレート剤の含有割合は、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭効果を維持しつつ、本発明の効果が十分に得られることから、上記アミノグアニジン塩の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは1~50質量部、より好ましくは5~45質量部、更に好ましくは10~40質量部である。
【0019】
1-3.無機担体
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物において、アミノグアニジン塩及びキレート剤の少なくとも一方が無機担体に担持されていることが好ましく、少なくともアミノグアニジン塩が無機担体に担持されてなる複合体(以下、「複合体(1)」という)を含む組成物であることが特に好ましい。
【0020】
上記無機担体は、水と反応せず、且つ、水に溶解しないものであれば、特に限定されない。上記無機担体としては、ケイ素化合物、4価金属リン酸塩化合物等が挙げられる。これらのうち、ケイ素化合物が好ましい。
【0021】
上記ケイ素化合物としては、ケイ酸塩化合物、ゼオライト、シリカ、シリカゲル等が挙げられる。上記ケイ酸塩化合物としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
上記ケイ酸アルミニウムは、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物であり、上記ケイ酸マグネシウムは、好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物である。
Al2O3・mSiO2・nH2O (1)
(式中、mは6以上の数であり、nは1以上の数である。)
MgO・qSiO2・nH2O (2)
(式中、qは1以上の数であり、nは0.1以上の数である。)
【0022】
上記ケイ酸アルミニウムを表す一般式(1)において、mは、好ましくは6~50、より好ましくは8~15である。又、nは、好ましくは1~20、より好ましくは3~15である。
上記ケイ酸マグネシウムを表す一般式(2)において、qは、好ましくは1~20、より好ましくは3~15である。又、nは、好ましくは0.1~20、より好ましくは1~8である。
【0023】
上記ゼオライトとしては、A型、X型、Y型、α型、β型、ZSM-5等の構造を有するものを用いることができる。これらは、天然物及び合成物のいずれでもよい。
【0024】
上記4価金属リン酸塩化合物としては、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズ等が挙げられる。これらの化合物は、結晶性及び非晶性のいずれでもよい。
【0025】
上記無機担体の性状及びサイズは、特に限定されない。アルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭効果の観点から、BET比表面積は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上であり、平均粒径は、好ましくは0.01~50μm、より好ましくは0.02~20μmである。
【0026】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物の好ましい態様である、アミノグアニジン塩が無機担体に担持されてなる複合体(1)を含む組成物において、この複合体(1)を構成するアミノグアニジン塩及び無機担体の含有割合は、特に限定されない。この複合体(1)の安定性及びアルデヒド系ガス又はケトン系ガスの消臭効果の観点から、アミノグアニジン塩の含有割合は、無機担体の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは5~500質量部、より好ましくは11~200質量部、更に好ましくは20~100質量部である。
【0027】
上記複合体(1)は、従来、公知の方法により得られたものとすることができる。例えば、アミノグアニジン塩の粉末と、無機担体の粉末とを混合する方法、アミノグアニジン塩の溶液と、無機担体の粉末とを混合した後、媒体を除去する方法等とすることができる。尚、ここに挙げた方法に限るものではない。
【0028】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物は、キレート剤が無機担体に担持されてなる複合体(以下、「複合体(2)」という)を含む組成物であってもよい。この複合体(2)は、上記複合体(1)と同様にして製造することができる。
【0029】
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物は、アミノグアニジン塩及びキレート剤の両方が無機担体に担持されてなる複合体(以下、「複合体(3)」という)を含む組成物であってもよい。この複合体(3)において、担持されたアミノグアニジン塩及びキレート剤は接触状態であってもよいし、非接触状態であってもよい。
【0030】
1-4.他の成分
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物は、更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスを化学吸着する他の消臭剤(ヒドラジド化合物、アミノ基を有するアゾール化合物等);硫黄系ガス、塩基性ガス、有機酸性ガス等を化学吸着する固体の消臭剤等が挙げられる。又、上記複合体(1)、複合体(2)及び複合体(3)は、従来、公知の解砕・粉砕により、粒子サイズが調整されたものであってもよい。解砕・粉砕の具体的な方法としては、ジェットミル粉砕、ACM粉砕、ピンミル粉砕等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0031】
2.貯蔵容器
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物を容器に貯蔵する場合、容器の材質は、通常、樹脂又は金属である。容器が金属製である場合には、消臭剤組成物が貯蔵されても内壁面を腐食させることはなく、その後、好適に取り扱うことができる。
【0032】
3.消臭製品
本発明の車両用に使用されることに特に制限はなく、例えば、車両用内装材等が挙げられる。本発明の車両には特制限はなく、例えば、自動車、鉄道、馬車、人力車及びオートバイ等が挙げられる。車両用内装材として特に制限はなく、例えば、カーシート、カーマット、自動車天井材、カーエアコンフィルター、カーキャビンフィルター、レジスター、センタークラスター、インストルメンタル、グローブボックス、シフトレバー、センターコンソール、ステアリングホイール、ピラートリム、ドアトリム、ルーフトリム、リアエプロン、サンバイザー、コンソールボックス、ドアオーナメント、ミドルボード、アームレスト、アンダートレー、トノカバー、シートベルト、ヘッドレスト、灰皿、デッキボード、吸音材、遮音材遮音断熱材、防音クッション材、防振材、緩衝材、カーテン、カーテンパネル、ゴミ箱、エアコン、オーディオ、ドライブレコーダー及びカーナビゲーション等が挙げられる。車両用内装材に使用される材質に特に制限はなく、例えば樹脂、繊維、布帛、紙、フェルト、発泡体、金属及びセラミックス等が挙げられる。
【0033】
本発明のフィルターに特に制限はなく、例えば、空気清浄機用フィルター、エアコン用フィルター、除湿器用フィルター、加湿器用フィルター、室内換気扇用フィルター、室外換気扇用フィルター、トイレ用換気扇フィルター、浴室用換気扇フィルター、空調用フィルター及びキッチン用換気扇フィルター等が挙げられる。フィルターとして用いられる素材に特に制限はなく、例えば、樹脂、不織布、織布、紙、ガラス、金属及びセラミックス等が挙げられる。
【0034】
本発明の建造物の室内に使用されることに特に制限はなく、建造物としては例えば、住宅、病院、学校、保育園、幼稚園、公民館、介護施設、図書館、美術館、博物館、駅舎、庁舎、ビル、店舗、事務所、ホテル、旅館及び浴場等が挙げられる。これらの住宅等の建造物の内装材としては特に制限はなく、例えば、フロアーマット、壁紙、カーテン、ブラインダー、ソファー、床材、フローリング材、絨毯、障子、襖、箪笥、クローゼット、下駄箱、玄関マット、トイレマット、バスマット、ベッド、クッション、棚材、ドア材、天井材、照明器具、スイッチ、コンセント、トイレ材、バス材、空調設備、キッチン材及び畳材等が挙げられる。住宅等の建造物の内装材に使用される材質に特に制限はなく、例えば樹脂、繊維、布帛、紙、金属及びセラミックス等が挙げられる。
【0035】
本発明の衣料に特に制限はなく、寝具等を含み、例えば、シャツ、下着、パンツ、ブラジャー、ガードル、スパッツ、ジャンパー、ダウンジャケット、セーター、カーディガン、ズボン、ベスト、帽子、手袋、靴下、ストッキング、ワンピース、靴、サンダル、作業着、制服、白衣、パジャマ、マフラー、ネックウォーマー、肌着、Tシャツ、Yシャツ、スーツ、礼服、ネクタイ、枕、布団、枕カバー、シーツ、毛布、タオルケット、敷きパット、布団収納袋、タオル、ハンカチ、ガウン、スリッパ、腹巻、帯、着物、足袋、スポーツウェア、ジャージ、バンダナ、トレーナー、スウェット及びリストバンド等が挙げられる。衣料に用いられる布帛、繊維及びシート等の材質に特に制限はなく、公知の化学繊維、天然繊維及び樹脂等が挙げられる。
【0036】
本発明の消臭剤組成物は消臭スプレーとして用いることができる。消臭スプレーとすることにより、例えば、車両内や建造物の屋内の内装材等に消臭機能を容易に付与することができる上、車両内や建造物の屋内の内装材等に使用されている金属部材や車両内や建造物の屋内に存在する金属部材の腐食を抑制又は防止することができ、更に、消臭スプレー容器が金属の場合には、その腐食を抑制又は防止することができる。
【0037】
本発明のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物は、化学吸着型消臭剤であるため、吸着したアルデヒド系ガス又はケトン系ガスを高温下でも再放出することがほとんどなく、長期間に亘って保持し続けることができる。そのため、夏季など、車両内温度や建造物内温度が高くなった場合でも、効率よくアルデヒド系ガス又はケトン系ガスを吸着・消臭することができる。
【0038】
4.消臭製品の製造方法
本発明の実施形態に係る消臭剤組成物は、これを基材に添着させて消臭製品とするために、好適な製造原料である。このような消臭製品は、通常、本発明の消臭剤組成物と、分散媒とを含有するスラリー(接着剤樹脂を含まない分散液)、又は、本発明の消臭剤組成物と、接着剤樹脂と、分散媒とを含有する加工液を、基材に塗工した後、乾燥させることにより製造することができる。
【0039】
上記塗工工程では、基材の形状等に応じて、パディング、浸漬、コーティング、スプレー、及びプリント等を適用して、消臭剤組成物のスラリー又は加工液を基材の表面に塗布し、塗膜を形成する。
【0040】
上記のスラリー又は加工液の調製に用いる分散媒は、水、有機溶剤又はこれらの混合液のいずれでもよい。
上記のスラリー又は加工液は、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、芳香剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防腐剤等の添加剤を含有することができる。
【0041】
上記加工液に含まれる接着剤樹脂は、特に限定されず、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はその変性物、エチレン・塩化ビニル共重合体又はその変性物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、変性オレフィン樹脂(塩素化ポリオレフィン等)、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はその変性物、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体等を用いることができる。
【0042】
上記加工液に含まれる接着剤樹脂の含有割合は、本発明の消臭剤組成物を100質量部とした場合に、通常、10~300質量部である。
【0043】
上記のスラリー又は加工液は、好ましくは分散媒として水を主とする水系混合液であり、この水系混合液のpHは特に限定されないが、安定性の観点から、好ましくはpH1~7である。上記水系混合液からなるスラリー又は加工液を製造する際には、通常、原料を収容し撹拌する容器、撹拌羽根等を備える装置が用いられる。これらの設備が金属製である場合には、スラリー又は加工液のpHが上記範囲にあっても、その製造後において腐食が抑制される。従って、同じ設備を用いて、連続的に製造を行う場合には、スラリー又は加工液の組成が安定に維持されるため、大量生産を効率よく行うことができる。又、加工液を使用して消臭製品を製造する場合にも、消臭製品の製造装置における腐食が抑制される。
【0044】
本発明の消臭剤組成物を樹脂等に練り込んだ後、紡糸及び成型等をすることにより、消臭製品を製造することもできる。本発明の消臭剤組成物を用いると、紡糸及び成型等の加工時に加工設備の腐食を抑制し、又は防止するともに、その腐食により生成する不純物の消臭製品への混入を抑制し、又は防止することができる。紡糸方法及び成型方法等に特に制限はない。
【0045】
本発明のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物は、樹脂と混合することにより消臭樹脂組成物とすることができる。樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂及び塩化ビニル樹脂等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されるものではない。
【0046】
本発明のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を使用して消臭性繊維を製造する方法としては、常法に従えば良い。
例えば、本発明のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を繊維に練り込み紡糸する方法や、紡糸した繊維に本発明のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を含む加工液を塗工する方法等が挙げられる。
【0047】
本発明のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物の加工に使用できる繊維用樹脂に制限はなく、公知の化学繊維はいずれも使用することができる。この好ましい具体例としては、例えばポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、レーヨン、アクリル樹脂、アラミド、ビニロン、ポリエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、アクリル樹脂及びポリエチレンであることが好ましい。これらの樹脂は、単独重合体であっても共重合体であってもよい。共重合体の場合、各共重合成分の重合割合に特に制限はない。
【0048】
ポリウレタンは、ポリマージオール及びジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。又、その合成法も特に限定されるものではない。
【0049】
又、ポリエステルは特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0050】
本発明のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を繊維練り込み用消臭剤とし使用する場合の、消臭繊維の具体的な製造方法としては、溶融した液状繊維用樹脂又は溶解した繊維用樹脂溶液に本発明の消臭剤組成物を練り込み、これを紡糸する方法や、アルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物を高濃度に含有するマスターバッチ樹脂に加工した後、繊維用樹脂と混合溶融し、紡糸する方法等が挙げられる。
【0051】
繊維用樹脂に含有させる本発明のアルデヒド系ガス又はケトン系ガスに用いる消臭剤組成物の割合は、特に限定されない。一般に含有量を増やせば消臭性を強力に発揮させ、長期間持続させることができるが、ある程度以上に含有させても消臭効果に大きな差が生じないこと、あるいは樹脂の強度が低下すること、及び経済性の観点から、好ましくは樹脂100質量部当たり0.1~10.0質量部であり、より好ましくは0.5~3.0質量部である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、下記において、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0053】
1.消臭剤組成物の原料
消臭剤組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
1-1.アミノグアニジン塩
(1)アミノグアニジン塩酸塩
(2)アミノグアニジン硫酸塩
これらは、いずれも試薬の粉末である。
【0054】
1-2.キレート剤
(1)ヘキサメタリン酸ナトリウム
(2)リン酸二水素ナトリウム
(3)コハク酸(4)クエン酸(5)エチレンジアミン四酢酸2ナトリウムこれらは、いずれも試薬の粉末である。
【0055】
1-3.無機担体
(1)シリカ粒子
平均粒子径は5μmであり、BET比表面積は、700m2/gである。
(2)ケイ酸アルミニウム粒子
Al2O3・9SiO2・H2Oで表される粒子であり、平均粒子径は10μmであり、BET比表面積は600m2/gである。
(3)ゼオライト粒子
ZSM-5型ゼオライト粒子であり、平均粒子径は6μmであり、BET比表面積は350m2/gである。
【0056】
2.消臭剤組成物の製造及び評価
表1に示す構成の消臭剤組成物(D1)~(D19)を製造した。尚、組成物の種類により、予め、調製した水溶液を用いて製造した場合がある。
【0057】
実施例1
アミノグアニジン塩酸塩の粉末100部と、ヘキサメタリン酸ナトリウムの粉末11.1部とを混合し、消臭剤組成物(D1)を製造した。
【0058】
実施例2
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液13.2部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液1.3部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D2)を製造した。
【0059】
実施例3
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液64.1部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液6.4部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D3)を製造した。
【0060】
実施例4シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液182部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液22.7部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D4)を製造した。
【0061】
実施例5
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液875部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液125部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D5)を製造した。
【0062】
実施例6
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液28.7部と、40%リン酸二水素ナトリウム水溶液8.6部とを混合した後、120 ℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D6)を製造した。
【0063】
実施例7
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液112部と、8%コハク酸水溶液56.0部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D7)を製造した。
【0064】
実施例8
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液266部と、40%クエン酸水溶液16.0部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D8)を製造した。
【0065】
実施例9
ケイ酸アルミニウム粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液13.4部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液5.4部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D9)を製造した。
【0066】
実施例10ケイ酸アルミニウム粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液28.4部と、40%リン酸二水素ナトリウム水溶液5.7部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D10)を製造した。
【0067】
実施例11
ケイ酸アルミニウム粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液64.1部と、8%コハク酸水溶液32.1部とを混合した後、120℃ で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D11)を製造した。
【0068】
実施例12
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液112部と、40%クエン酸水溶液11.2部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D12)を製造した。
【0069】
実施例13
ゼオライト粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液175部と、10%EDTA・2ナトリウム水溶液52.6部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D13)を製造した。
【0070】
実施例14
ゼオライト粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液28.1部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液2.8部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D14)を製造した。
【0071】
実施例15
ゼオライト粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液66.7部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液16.7部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D15)を製造した。
【0072】
実施例16
ゼオライト粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液125部と、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液41.7部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D16)を製造した。
【0073】
比較例1
アミノグアニジン塩酸塩の粉末のみを消臭剤組成物(D17)とした。
【0074】
比較例2
シリカ粒子100部と、40%アミノグアニジン塩酸塩水溶液62.5部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D18)を製造した。
【0075】
比較例3
ケイ酸アルミニウム粒子100部と、40%アミノグアニジン硫酸塩水溶液42.9部とを混合した後、120℃で2時間加熱乾燥して、媒体を留去させ、固体の消臭剤組成物(D19)を製造した。
【0076】
得られた各組成物に対して、以下の評価を行い、その結果を表1に併記した。
(A)消臭容量
(A-1)アセトアルデヒドガスの消臭容量
消臭剤組成物0.01gを、内容積5リットルのジーエルサイエンス社製「スマートバッグPA」(商品名)に収容した。次いで、この樹脂製袋に750ppmのアセトアルデヒドガスを3リットル注入し、密封して、室温で静置した。24時間経過後、樹脂製袋の中に残存するアセトアルデヒドの濃度を、ガステック社製ガス検知管を用いて測定した。そして、下記式(1)により消臭容量(mL/g)を得た。
消臭容量(mL/g)=〔(C0-C)×V/W〕/1000 (1)
(式中、C0は、注入したアセトアルデヒドガス初期濃度[ppm]であり、Cは、24時間経過後の樹脂製袋の中に残存するアセトアルデヒドガス濃度[ppm]であり、Vは、アセトアルデヒドガス注入量[L]であり、Wは、消臭剤組成物量[g]である。)
(A-2)ジアセチルガスの消臭容量
750ppmのアセトアルデヒドガスの代わりに300ppmのジアセチルガスを用いた以外は上記(A-1)と同様にしてジアセチルガスの消臭容量を求めた。
(A-3)アセトンガスの消臭容量
750ppmのアセトアルデヒドガスの代わりに300ppmのアセトンガスを用いた以外は上記(A-1)と同様にしてアセトンガスの消臭容量を求めた。
【0077】
(B)金属腐食性
消臭剤組成物とイオン交換水とを用いて、消臭剤組成物を10%含むスラリーを調製した。次いで、SUS304からなる箔又はアルミニウム箔(いずれも、サイズは100mm×100mm×0.01mm)により作製された角型容器(底面積:900mm2)に、スラリー2mLを入れ、130℃で1時間加熱乾燥した。その後、角型容器内の乾燥残渣を除去した。角型容器へのスラリーの収容から乾燥残渣を除去するまでの操作を、合計8回繰り返した後、容器の内表面を目視観察し、容器の腐食性を、下記基準で判定した。
◎:繰り返し操作8回後も錆びが見られなかった。
〇:繰り返し操作3回目以降に錆びが見られ、8回後も程度の軽い錆びであった。
×:繰り返し操作1回目で錆びが見られ、8回後は著しい錆びが見られた。
【0078】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の消臭剤組成物は、消臭車両用内装材、消臭フィルター、消臭住宅用内装材及び消臭衣料等の製造に好適であり、消臭製品は車両内の悪臭、屋内の悪臭及び生活臭、人体及びペット等から発生する悪臭、加齢臭及びミドル臭等を除去することができる。又、製品自身からアルデヒド系ガス及び/又はケトン系ガスを発生する材料、例えば、合板、集成材、フローリング材、パーティクルボード、断熱材等の建材、フロア-カーペット、消音パット、クッション材、カーシート、ヘッドレスト、アームレスト、トアトリム、成形天井、サンバイザー、リアパッケージトレイ、インストルメントパネル、ダッシュインシュレーサー等を扱う現場において、これらの製品に含有させることができる。