(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240827BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C12M1/00 C
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2020098001
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 昂司
(72)【発明者】
【氏名】小柳 博
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-059157(JP,A)
【文献】特表2012-520668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0163666(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0170189(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0219890(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0220481(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0089993(US,A1)
【文献】国際公開第2016/065470(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082471(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/109934(WO,A1)
【文献】欧州特許第03177708(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成されたプレートと、
前記プレートを保持する保持体と、を備え、
前記保持体は、前記プレートの第一主面の少なくとも外周縁と当接する
枠状の第一保持部材と、前記第一主面の反対側の前記プレートの第二主面の少なくとも外周縁と当接する
枠状の第二保持部材と、前記第一保持部材と前記第二保持部材との間に前記プレートを挟み込んだ状態で前記第一保持部材と前記第二保持部材を固定する固定部材と、を有する、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記プレート並びに前記第一保持部材及び前記第二保持部材は、それぞれ樹脂で構成されており、前記第一保持部材及び前記第二保持部材を構成する樹脂の吸水率は、前記プレートを構成する樹脂の吸水率よりも大きく、且つ前記プレートの硬さは、前記第一保持部材及び前記第二保持部材の硬さよりも硬い、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記プレートの前記第一主面の中央領域には、前記流路に流体を注入するための複数の開口が形成されており、前記第一保持部材は、前記中央領域の周囲に位置する前記第一主面の外周縁と当接する枠状である、請求項1又は2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記保持体の外形は、平面視において4本の辺を有する矩形であり、前記固定部材は、一つの辺に等間隔で複数設けられている、請求項1~3の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記保持体の外形は、平面視において4本の辺を有する矩形であり、前記固定部材は、一つの辺の中央に設けられている、請求項1~3の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記第二保持部材は、前記プレートの第二主面の少なくとも外周縁と当接する支持板と、前記支持板から立ち上がって前記第一保持部材の外側面を取り囲む側壁と、を有し、
前記固定部材は、前記第一保持部材の外側面から突出する係止突起と、前記第二保持部材の側壁に形成されて前記係止突起が挿入される係止孔と、で構成される、請求項1~5の何れか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞及び組織培養は、培養ディッシュやプレートを使用して行われてきた。これら培養ディッシュやプレートを用いた細胞及び組織の培養は、2次元(平面)の環境で行われるものであるため、細胞外微小環境を再現することができない。そこで、近年、従来法では困難であった、3次元(立体)の細胞培養・実験環境を作製できるマイクロ流路を有するマイクロ流体デバイス(「細胞培養チップ」、「バイオチップ」、「マイクロチップ」等とも称される)が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、二つの基板を互いに接合して、少なくとも一方の基板に形成された流路形成用段差によって、接合した両基板の接合部に包囲された流路を形成したマイクロ流体デバイスが記載されている。
【0004】
ところで、複数の分析プレートをホルダーに収容したアセンブリを分析装置に供することが知られている(特許文献2参照)。ホルダーは、分析プレートの端部に設けられた突起に対応する凹部を有し、突起と凹部を嵌め合わせることでホルダーに対して分析プレートを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-78707号公報
【文献】特開2019-105528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロ流路を有するプレートを、保持体に収容したマイクロ流体デバイスが求められている。プレートを保持体に収容したマイクロ流体デバイスを分注装置のテーブルに載置できると、取扱いの利便性が向上する。
【0007】
しかしながら、当該プレートを保持体に収容する際、例えば特許文献2のように突起と凹部を嵌め合わせることで保持体に対してプレートを固定するためには、凹部を突起に対して大きな寸法(高さ、幅ともに)とする必要がある。この場合、プレートが保持体に対してガタついてしまう。当該ガタつきは、観察のタイミング毎の観察面の高さのバラツキにつながり好ましくない。
【0008】
また、当該プレートが樹脂よりなる場合、その製造過程や使用環境において反りやうねり等の変形を生じる場合がある。当該変形は、マイクロ流体デバイス毎の観察面の高さのバラツキにつながり好ましくない。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、観察面の高さのバラツキを低減することができるマイクロ流体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマイクロ流体デバイスは、内部に流路が形成されたプレートと、
前記プレートを保持する保持体と、を備え、
前記保持体は、前記プレートの第一主面の少なくとも外周縁と当接する第一保持部材と、前記第一主面の反対側の前記プレートの第二主面の少なくとも外周縁と当接する第二保持部材と、前記第一保持部材と前記第二保持部材との間に前記プレートを挟み込んだ状態で前記第一保持部材と前記第二保持部材を固定する固定部材と、を有する。
【0011】
この構成によれば、保持体は、第一保持部材と第二保持部材によりプレートを両面から挟み込んで保持するため、保持体とプレートの間のガタツキが抑制され、観察のタイミング毎の観察面の高さのバラツキを低減することができる。また、第一保持部材と第二保持部材との間にプレートを挟み込んだ状態で固定部材により第一保持部材と第二保持部材が固定されるため、第一保持部材、第二保持部材、及びプレートが一体となって、全体として形状が矯正され、マイクロ流体デバイス毎の観察面の高さのバラツキを低減することができる。
【0012】
マイクロ流体デバイスにおいて、前記プレート並びに前記第一保持部材及び前記第二保持部材は、それぞれ樹脂で構成されており、前記第一保持部材及び前記第二保持部材を構成する樹脂の吸水率は、前記プレートを構成する樹脂の吸水率よりも大きく、且つ前記プレートの硬さは、前記第一保持部材及び前記第二保持部材の硬さよりも硬いという構成でもよい。
【0013】
この構成によれば、吸湿に伴い第一保持部材と第二保持部材がプレートよりも大きく変形したとしても、第一保持部材及び第二保持部材よりも硬いプレートがマイクロ流体デバイス全体の変形を抑制することができる。
【0014】
マイクロ流体デバイスにおいて、前記プレートの前記第一主面の中央領域には、前記流路に流体を注入するための複数の開口が形成されており、前記第一保持部材は、前記中央領域の周囲に位置する前記第一主面の外周縁と当接する枠状であるという構成でもよい。
【0015】
この構成によれば、開口が第一保持部材によって覆われないため、開口から流路へ流体を確実に注入することができる。
【0016】
マイクロ流体デバイスにおいて、前記保持体の外形は、平面視において4本の辺を有する矩形であり、前記固定部材は、一つの辺に等間隔で複数設けられているという構成でもよい。
【0017】
複数の固定部材を等間隔で設けることで、第一保持部材と第二保持部材とを確実にバランスよく固定することができる。
【0018】
マイクロ流体デバイスにおいて、前記保持体の外形は、平面視において4本の辺を有する矩形であり、前記固定部材は、一つの辺の中央に設けられているという構成でもよい。
【0019】
辺の中央に固定部材を設けることで、第一保持部材と第二保持部材とをバランスよく固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るマイクロ流体デバイスの斜視図
【
図2】
図1に示すマイクロ流体デバイスの分解斜視図
【
図3】
図1に示すマイクロ流体デバイスのA-A断面図
【
図4】
図1に示すマイクロ流体デバイスのB-B断面図
【
図7】プレートの硬さの評価方法を説明するための図
【
図10】他の実施形態に係る固定部材を示す斜視図及び断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るマイクロ流体デバイスの実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0022】
図1は、マイクロ流体デバイス100の斜視図であり、
図2は、マイクロ流体デバイス100の分解斜視図である。
図3は、
図1に示すマイクロ流体デバイス100のA-A断面図である。
図4は、
図1に示すマイクロ流体デバイス100のB-B断面図である。
図1に示すように、マイクロ流体デバイス100は、プレート1と、プレート1を保持する保持体2と、を有する。
【0023】
以下において、XYZ座標系を適宜参照して説明される。また、本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。本実施形態において、水平面は、XY平面に平行であり、鉛直方向は、-Z方向である。プレート1の主面はXY平面に平行である。
【0024】
[プレート]
図5は、プレート1の上面図である。プレート1は、
図2に示すように第一基板11と第二基板12とを含む。第二基板12は、第一基板11の下面に貼り合わされている。第一基板11及び第二基板12はいずれも略矩形板状であり、プレート1は全体として略矩形板状である。
図5に示すように、第二基板12は第一基板11よりも小さく、第二基板12を構成する側面が第一基板11を構成する側面よりも内側に位置する。
【0025】
プレート1は、第一主面1aと、第一主面1aの反対側の面である第二主面1bと、第一主面1aと第二主面1bとをつなぐ4つの側部1cと、を有する。第一主面1aは第一基板11の上面であり、第二主面1bは第二基板12の下面である。また、側部1cは、X方向又はY方向にそれぞれ平行に延びている。
【0026】
図6は、
図5に示すプレート1のC-C断面図である。プレート1の内部には、流路13が形成されている。具体的には、第一基板11の下面に溝を形成し、この溝を覆うように第二基板12を第一基板11に貼り合わせることにより、両基板(11,12)に挟まれた中空状の流路13が形成される。この中空状の流路は、マイクロメートルからミリメートルのオーダーの幅及び深さを有するマイクロ流路(微小流路)である。
【0027】
第一主面1aの中央領域には、複数の開口14が形成されている。一つの流路13に対し、二つの開口14が接続されている。接続された二つの開口14から流路13に流体を注入したり、流路13から開口14を介して流体を排出したりすることができる。流路13は、流路13内に流体があるときに、該流体が流れを形成する状態にあるとは限らない。例えば、細胞を培養するために、細胞を含む流体を貯溜する状態など、流体の流れの無い状態にあることを含む。
【0028】
第一基板11は、Y方向に延伸するスリット状の空隙15を有する。空隙15は、X方向に離間した複数箇所に形成されている。空隙15は、隣り合う開口14の間に形成される。空隙15は、その両端がいずれも側部1cの内側に位置している。複数のスリット状の空隙15を第一基板11に形成することで、プレート1を両面から加圧した際に反りやうねりが矯正されやすい。
【0029】
また、プレート1の側部1c(第一基板11の側面)には、凹部16が設けられる。詳細は後述するが、凹部16に保持体2の突出部223が挿入され、凹部16の底に突出部223の先端が接触する。
【0030】
第一基板11又は第二基板12を構成する材料として、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン(PS)、シリコーン等の樹脂材料が挙げられる。本実施形態では、第一基板11及び第二基板12にCOPを使用している。なお、これらの樹脂材料が2種以上組み合わせられていても構わない。また、第一基板11と第二基板12とで使用する材料を異ならせてもよい。
【0031】
[保持体]
保持体2は、上枠21(第一保持部材の一例)と、下枠22(第二保持部材の一例)と、を有する。保持体2の外形は、平面視において矩形状である。上枠21と下枠22は、
図3に示すように、プレート1を上下から挟み込んだ状態で互いに固定される。
【0032】
上枠21は、全体として矩形枠状を呈している。上枠21の枠部分の断面は、Z方向に長尺な長方形状をしており、上面21a、底面21b、内側面21c、及び外側面21dを有する。内側面21cは、プレート1の側部1cよりも内側に位置する(
図4参照)。すなわち、4つの内側面21cで構成される貫通孔21eは、プレート1の外形よりも小さい。また、内側面21cは、プレート1の複数の開口14よりも水平方向の外側に位置する(
図1参照)。一方、外側面21dは、プレート1の側部1cよりも水平方向の外側に位置する(
図4参照)。これにより、上枠21の底面21bは、複数の開口14が形成された中央領域の周囲に位置する第一主面1aの外周縁10aに当接することができる。
【0033】
上枠21のZ方向の厚みは、プレート1のZ方向の厚みよりも大きい。また、上枠21のZ方向の厚みは、下枠22の支持板221(後述する)のZ方向の厚みよりも大きい。
【0034】
上枠21には、貯液槽4が形成されている。貯液槽4は、複数の槽に区画されている。貯液槽4は、
図4に示すように、上面21aから下面21bへ向かって形成された凹部である。貯液槽4の目的は、プレート1内に注入される液の濃度変化を抑制することである。プレート1内に注入される液は微量であるため、時間の経過とともに注入した液が蒸発することがある。液が蒸発すると流路13に残存する液の濃度が変化し、細胞の培養や観察に好ましくない。そこで、貯液槽4に、プレート1の雰囲気の湿度を制御するための液体(例えば、水)を注入し、液体を貯溜する。これにより、プレート1の雰囲気の湿度の低下を防ぎ、プレート1に注入された液の蒸発を防ぐ。
【0035】
上枠21の外側面21dには、外側に向けて突出する係止突起31が形成されている。X方向に平行な外側面21dには、3個の係止突起31がX方向に等間隔で設けられている。3個の係止突起31のうち真ん中の係止突起31は、外側面21dのX方向中央部に設けられている。Y方向に平行な外側面21dには、Y方向中央部に1個の係止突起31が設けられている。なお、一つの外側面21dに設ける係止突起31の個数は特に限定されず、少なくとも1個設ければよい。
【0036】
係止突起31の断面は、
図4に示すように略三角形である。係止突起31の上部31aはXY平面に略平行な平坦面となっている。係止突起31の下部31bは、+Z方向に向かうに連れて上枠21の外側面21dから離れる方向に延びる傾斜面となっている。
【0037】
下枠22は、全体として矩形枠状を呈している。すなわち、下枠22と上枠21を有する保持体2は、中央領域が貫通した矩形枠状を呈しており、マイクロ流体デバイス100の上側(+Z側)から光を照射し、マイクロ流体デバイス100の下側(-Z側)においてプレート1の流路13を透過した光を分析できる。下枠22は、支持板221と、支持板221の外周縁からZ方向に立ち上がる側壁222と、を有する。
【0038】
側壁222は、プレート1の側部1c及び上枠21の外側面21dよりも外側に位置し、且つ側壁222の上端は、上枠21の上面21aよりも高くなっている。これにより、側壁222は、プレート1及び上枠21を側方から取り囲む。プレート1及び上枠21は、下枠22の上方から側壁222内に嵌め入れられる。
【0039】
支持板221は、中央部にプレート1の外形よりも小さな貫通孔22eを有する矩形枠状を呈している。これにより、支持板221は、プレート1の第二主面1bの外周縁10bに当接して、プレート1を下方から支持することができる。
【0040】
側壁222は、下壁222aと、下壁222aより薄くなった上壁222bと、を有する。上壁222bの外側面は、下壁222aの外側面より内側にオフセットされている。上壁222bの外側であって下壁222aの上側には、マイクロ流体デバイス100を上方から覆うカバー(不図示)の側面板を配置することができる。
【0041】
下壁222aと支持板221で形成される隅部には、突出部223が設けられている(
図2参照)。突出部223は、プレート1に設けられた凹部16に挿入でき、凹部16の底面に接触できる構造である。これにより、プレート1を下枠22に嵌め入れる際、プレート1の凹部16の底が突出部223に接触するように押し付けることで、プレート1を下枠22に対して位置決めすることができる。
【0042】
上壁222bには、上壁222bを貫通する複数の係止孔32が形成されている。X方向に平行な上壁222bには、三つの係止孔32がX方向に等間隔で設けられている。三つの係止孔32のうち真ん中の係止孔32は、上壁222bのX方向中央部に設けられている。Y方向に平行な上壁222bには、Y方向中央部に一つの係止孔32が設けられている。
【0043】
係止孔32は、上枠21の係止突起31に対応する位置に設けられ、係止突起31が挿入される。係止孔32の両側には、スリット33が形成されている。スリット33を設けることで、係止孔32が形成された部分の上壁222bは外方へ撓みやすくなるため、係止突起31を係止孔32に挿入しやすい。
【0044】
係止突起31を係止孔32に挿入することで、上枠21と下枠22との間にプレート1を挟み込んだ状態で上枠21と下枠22を固定することができる。すなわち、本実施形態では、係止突起31と係止孔32が固定部材に相当する。
【0045】
係止孔32は、上枠21と下枠22でプレート1を挟み込んだ状態で、支持板221の上面から係止孔32の上縁部32aまでの高さが、支持板221の上面から係止突起31の上部31aまでの高さと略同じとなるように形成されている。これにより、上枠21でプレート1の第一主面1aの外周縁10aを押圧し、下枠22でプレート1の第二主面1bの外周縁10bを押圧することができるため、上枠21、下枠22、及びプレート1が一体となって、全体として形状が矯正される。
【0046】
上枠21又は下枠22の材質は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン(PS)、シリコーン等の樹脂材料が挙げられる。本実施形態では、上枠21及び下枠22にPSを使用している。
【0047】
上枠21及び下枠22を構成する樹脂の吸水率は、プレート1を構成する樹脂の吸水率よりも大きく、且つプレート1の硬さは、上枠21及び下枠22の硬さよりも硬いことが好ましい。これにより、吸湿に伴い上枠21と下枠22がプレート1よりも大きく変形したとしても、プレート1が上枠21及び下枠22よりも硬いため、上枠21と下枠22でプレート1を挟み込む際、プレート1の形状に沿うように上枠21及び下枠22が変形し、結果としてマイクロ流体デバイス100全体の変形が抑制される。
【0048】
マイクロ流体デバイス100は、例えば温度37度、湿度90%の条件下で使用される。本実施形態で使用しているPSの吸水率は、本実施形態で使用しているCOPの吸水率よりも大きい。
【0049】
なお、本発明における「硬さ」とは、部品の一辺を把持固定した状態で、前記一辺に対向する辺を、部品に対し垂直に一定の力で押圧した際の変形量δの大小で評価される。プレート1であれば、
図7に示すように、Y方向に平行な一対の辺のうち一方の辺を把持固定した状態で、他方の辺をプレート1に対し垂直に(-Z方向に)一定の力で押圧した際の変形量δを計測する。このとき、押圧する領域は、辺の全域(
図7(a)に示す領域Ar1)、又は辺の端部(
図7(a)に示すAr2)とする。領域Ar1を押圧して「硬さ」を評価する場合、
図7(b)に示すように、プレート1の高さ方向(Z方向)の反りの矯正に関して評価できる。一方、領域Ar2を押圧して「硬さ」を評価する場合、
図7(c)に示すように、プレート1の底面のうねりの矯正に関して評価できる。
【0050】
上枠21であれば、
図8に示すように、Y方向に平行な一対の辺のうち一方の辺を把持固定した状態で、他方の辺を上枠21に対し垂直に(-Z方向に)一定の力で押圧した際の変形量δを計測する。下枠22も上枠21と同様に「硬さ」を評価できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0053】
(1)上記実施形態に係るマイクロ流体デバイス100においては、上枠21と下枠22を固定する固定部材として、係止突起31と係止孔32の組み合わせを示しているが、これに限定されない。固定部材としては、例えば
図9に示すように、下枠22の側壁222の上端に形成された係止爪34でもよい。係止爪34を上枠21の上面21aに係止することで、上枠21と下枠22を固定することができる。
【0054】
(2)また、上枠21と下枠22を固定する固定部材としては、
図10に示すようなネジ35でもよい。
図10(a)はマイクロ流体デバイス100を下方から見た斜視図であり、
図10(b)はネジ35を含む断面図である。下枠22に設けられたネジ35により上枠21を下枠22側に引き付ける構成としてもよい。これにより、上枠21と下枠22は、プレート1を上下から挟み込んだ状態で互いに固定される。
【0055】
(3)上記実施形態に係るマイクロ流体デバイス100においては、プレート1の第二主面1bの少なくとも外周縁10bに当接する第二保持部材として、下枠22を示しているが、これに限定されない。第二保持部材としては、中央領域が貫通していない矩形板状の保持部材でもよい。この場合、マイクロ流体デバイス100の上側から光を照射し、プレート1の流路13の内部で反射した光又は散乱した光を使用して、細胞や組織の分析を行うとよい。
【0056】
(4)上記実施形態に係るマイクロ流体デバイス100においては、一つの流路13に対し、直線状の流路13の端部にそれぞれ開口14が接続されている例を示したが、これに限定されない。流路13は、例えばY字状でもよく、この場合、一つの流路13に対し、Y字状の流路13の端部にそれぞれ開口14が接続される。流路13及び開口14の形状、個数等は適宜設定され得る。
【0057】
(5)マイクロ流体デバイスの用途として、細胞や組織の培養と分析を上述した。しかしながら、本発明に係るマイクロ流体デバイスは、細胞や組織の培養と分析以外にも使用できる。例えば、本発明に係るマイクロ流体デバイスは、化学薬品の混合、分離、反応、合成、抽出又は分析等の様々な用途に使用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 :プレート
1a :第一主面
1b :第二主面
1c :側部
2 :保持体
4 :貯液槽
10a :第一主面の外周縁
10b :第二主面の外周縁
11 :第一基板
12 :第二基板
13 :流路
14 :開口
21 :上枠
22 :下枠
31 :係止突起
32 :係止孔
34 :係止爪
35 :ネジ
100 :マイクロ流体デバイス