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特許7543721インクジェット用インク及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】インクジェット用インク及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240827BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240827BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 501
B41J2/01 209
B41M5/00 120
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020109872
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007126
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 範晃
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188328(JP,A)
【文献】特開2011-074256(JP,A)
【文献】特開2017-206021(JP,A)
【文献】特開2013-199634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、顔料分散樹脂と、水溶性有機溶媒と、高分子ノニオン界面活性剤とを含有し、
前記顔料分散樹脂の酸価は、55mgKOH/g以上97mgKOH/g以下であり、
前記高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量は、7000以上12500以下であり、
温度25℃において、
表面寿命50ミリ秒における動的表面張力は、38.0mN/m以上40.0mN/m以下であり、
静的表面張力は、34.0mN/m以上36.0mN/m以下である、インクジェット用インク。
【請求項2】
顔料と、顔料分散樹脂と、水溶性有機溶媒と、高分子ノニオン界面活性剤とを含有し、
前記顔料分散樹脂の酸価は、55mgKOH/g以上97mgKOH/g以下であり、
前記高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量は、7000以上12500以下であり、
前記水溶性有機溶媒は、特定水溶性有機溶媒を含み、
前記特定水溶性有機溶媒のオクタノール/水分配係数(LogP)は、-0.5以上0.1以下であり、
前記特定水溶性有機溶媒の含有割合は、15.0質量%以上30.0質量%以下であるインクジェット用インク。
【請求項3】
前記特定水溶性有機溶媒は、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル又は1,5-ペンタンジオールを含む、請求項に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
記録媒体を搬送する搬送部と、ラインヘッドとを備え、
前記ラインヘッドは、請求項1~の何れか一項に記載のインクジェット用インクを前記記録媒体に吐出する、インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置は急速に進歩している。例えば、インクジェット記録装置は、記録媒体として写真用紙を用いる場合、銀塩写真に匹敵する高画質の画像を形成することができる。
【0003】
ラインヘッドを備えるインクジェット記録装置は、インクジェット記録装置の中でも、印刷速度に優れる。一方、ラインヘッドを備えるインクジェット記録装置は、重ね描きを行わないため、形成される画像に白筋が発生する場合がある。この現象は、普通紙にソリッド画像を形成した際に発生し易い。
【0004】
ラインヘッドを備えるインクジェット記録装置において、白筋の発生を抑制するためには、記録媒体に対する浸透性(記録媒体に濡れ広がり易い性質)に優れるインクジェット用インクを用いることが有効である。記録媒体に対する浸透性に優れるインクジェット用インクとして、例えば、特定範囲の動的表面張力及び静的表面張力を有するインクジェット用インクが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-206021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット用インクは、後述する非印字部のヨレが発生し易い傾向がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部のヨレの発生を抑制できるインクジェット用インクと、このインクジェット用インクを用いたインクジェット記録装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェット用インクは、顔料と、顔料分散樹脂と、水溶性有機溶媒と、高分子ノニオン界面活性剤とを含有する。前記顔料分散樹脂の酸価は、55mgKOH/g以上97mgKOH/g以下である。前記高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量は、7000以上12500以下である。
【0009】
本発明に係るインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、ラインヘッドとを備える。前記ラインヘッドは、上述のインクジェット用インクを前記記録媒体に吐出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインクジェット用インクは、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部のヨレの発生を抑制できる。本発明に係るインクジェット記録装置は、白筋の発生及び非印字部のヨレの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示す側面図である。
図2図1に示すインクジェット記録装置の搬送ベルトを上方からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下において、体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定された値である。
【0013】
以下において、酸価の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本産業規格)K0070:1992」に従い測定した値である。また、質量平均分子量(Mw)の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。更に、オクタノール/水分配係数(LogP)は、「JIS(日本産業規格)Z7260-107:2000」に記載のフラスコ振盪法によって測定した値である。
【0014】
本明細書において、動的表面張力及び静的表面張力は、実施例に記載の方法又はこれに準ずる方法により測定された値である。
【0015】
本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
【0016】
<第1実施形態:インク>
以下、本発明の第1実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)を説明する。本発明のインクは、顔料と、顔料分散樹脂と、水溶性有機溶媒と、高分子ノニオン界面活性剤とを含有する。顔料分散樹脂の酸価は、55mgKOH/g以上97mgKOH/g以下である。高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量は、7000以上12500以下である。
【0017】
本発明のインクの用途としては、特に限定されないが、後述するように、ラインヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるインクとして好適である。
【0018】
本発明のインクは、上述の構成を備えることにより、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部(インクが塗布されていない部分)のヨレ(記録媒体が波打つ現象)の発生を抑制できる。その理由は以下の通りであると推察される。公知のインクは、ヘッドから吐出された直後(吐出から10μs後程度)のインク滴の表面張力(初期動的表面張力)が低いほど、記録媒体に対する浸透性に優れる。一方、初期動的表面張力が低い公知のインクは、静的表面張力も低い傾向がある。静的表面張力が低い公知のインクは、ノズルから吐出されてインク滴を形成する際に、インク滴の尾部(インク滴においてノズルに近い側の部位)で波が発生する。静的表面張力が低いインクにおいて、インク滴の尾部で発生した波は、インク滴が記録媒体に着弾した後もしばらく収まらず、インク滴の表面を揺らし続ける。上述のインク滴の尾部で発生した波は、非印字部のヨレの原因となる。つまり、初期動的表面張力が低い公知のインクは、記録媒体に対する浸透性には優れるが、静的表面張力の低さに起因して非印字部のヨレを発生させ易い傾向がある。これに対して、本発明のインクは、高分子ノニオン界面活性剤を含有する。高分子ノニオン界面活性剤は、分子量が適度に大きいため気液界面に移行し難い。そのため、高分子ノニオン界面活性剤は、本発明のインクの静的表面張力をあまり低下させずに、本発明のインクの初期動的表面張力を効果的に低下させることができる。また、本発明のインクは、酸価が比較的低い顔料分散樹脂を含有する。酸価が比較的低い顔料分散樹脂は、水和力が低いため、本発明のインクの初期動的表面張力を低下させる。以上から、本発明のインクは、初期動的表面張力の低さと、静的表面張力の高さとを両立しているため、記録媒体に対する浸透性と、非印字部のヨレの発生の抑制とを両立できる。
【0019】
以下、本発明のインクについて、更に詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
[表面張力]
本発明のインクは、温度25℃において、表面寿命50ミリ秒における動的表面張力が38.0mN/m以上40.0mN/m以下であり、静的表面張力が34.0mN/m以上36.0mN/m以下であることが好ましい。なお、表面寿命50ミリ秒における動的表面張力は、初期動的表面張力の指標である。本発明のインクの表面寿命50ミリ秒における動的表面張力を38.0mN/m以上とすることで、本発明のインクの静的表面張力が過度に低くなることを抑制できる。その結果、本発明のインクは非印字部のヨレの発生を更に効果的に抑制できる。本発明のインクの表面寿命50ミリ秒における動的表面張力を40.0mN/m以下とすることで、本発明のインクの初期動的表面張力を低下させることができる。その結果、本発明のインクの記録媒体に対する浸透性を更に向上できる。本発明のインクの静的表面張力を34.0mN/m以上とすることで、上述のインク滴の尾部で発生した波が収まり易くなり、非印字部のヨレの発生を更に効果的に抑制できる。本発明のインクの静的表面張力を36.0mN/m以下とすることで、本発明のインクの初期動的表面張力が増大することを抑制できる。その結果、本発明のインクの記録媒体に対する浸透性を更に向上できる。
【0021】
[顔料]
本発明のインクにおいて、顔料は、例えば、顔料分散樹脂と共に顔料粒子を構成する。顔料粒子は、例えば、顔料を含むコアと、コアを被覆する顔料分散樹脂とにより構成される。顔料分散樹脂は、例えば、溶媒に分散して存在する。本発明のインクの色濃度、色相、又は安定性を向上させる観点から、顔料粒子のD50としては、30nm以上200nm以下が好ましく、70nm以上130nm以下がより好ましい。
【0022】
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
【0023】
本発明のインクにおいて、顔料の含有割合としては、1.0質量%以上12.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以上8.0質量%以下がより好ましい。顔料の含有割合を1.0質量%以上とすることで、本発明のインクにより形成される画像の画像濃度を向上できる。また、顔料の含有割合を12.0質量%以下とすることで、本発明のインクの流動性を向上できる。
【0024】
[顔料分散樹脂]
顔料分散樹脂は、水溶性を有し、顔料の表面に付着することで顔料の凝集を抑制する。
【0025】
顔料分散樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン及びビニルナフタレンのうち少なくとも1種のモノマーと、(メタ)アクリル酸及びマレイン酸のうち少なくとも1種のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0026】
顔料分散樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位((メタ)アクリル酸単位)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位((メタ)アクリル酸アルキルエステル単位)と、スチレン単位とを有する樹脂が好ましい。この場合、顔料分散樹脂の有する全繰り返し単位のうち、(メタ)アクリル酸単位の割合としては、4.5質量%以上8.0質量%以下が好ましい。顔料分散樹脂の有する全繰り返し単位のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の割合としては、35質量%以上70質量%以下が好ましい。顔料分散樹脂の有する全繰り返し単位のうち、スチレン単位の割合としては、27質量%以上60質量%以下が好ましい。顔料分散樹脂としては、メタクリル酸に由来する繰り返し単位と、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位と、アクリル酸ブチルに由来する繰り返し単位と、スチレン単位とを有する樹脂がより好ましい。
【0027】
本発明のインクにおいて、顔料分散樹脂の含有割合としては、0.5質量%以上8.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。顔料分散樹脂の含有割合を0.5質量%以上とすることで、顔料の凝集をより効果的に抑制できる。顔料分散樹脂の含有割合を8.0質量%以下とすることで、ノズル詰まりが発生することを抑制できる。
【0028】
顔料分散樹脂の酸価は、55mgKOH/g以上97mgKOH/g以下であり、70mgKOH/g以上85mgKOH/g以下が好ましい。顔料分散樹脂の酸価を55mgKOH/g以上とすることで、本発明のインクの静的表面張力が過度に低くなることを抑制できる。その結果、本発明のインクは非印字部のヨレの発生を抑制できる。顔料分散樹脂の酸価を97mgKOH/g以下とすることで、インクの初期動的表面張力を低下させることができる。その結果、本発明のインクは記録媒体に対する浸透性を向上できる。
【0029】
顔料分散樹脂の酸価は、顔料分散樹脂を合成する際に使用するモノマーを変更することで調整できる。例えば、顔料分散樹脂を合成する際に、酸性の官能基(例えば、カルボキシ基)を有するモノマー(例えば、アクリル酸及びメタクリル酸)を使用することで、顔料分散樹脂の酸価を増大させることができる。
【0030】
顔料分散樹脂の質量平均分子量としては、10000以上50000以下が好ましく、15000以上30000以下がより好ましい。顔料分散樹脂の質量平均分子量を10000以上50000以下とすることで、本発明のインクの粘度の増大を抑制しつつ、形成される画像の画像濃度を向上できる。
【0031】
顔料分散樹脂の質量平均分子量は、顔料分散樹脂の重合条件(例えば、重合開始剤の使用量、重合温度、及び重合時間)を変えることによって調整できる。なお、顔料分散樹脂は、塩基(例えば、KOH)で等量中和されていることが好ましい。
【0032】
[水溶性有機溶媒]
水溶性有機溶媒は、特定水溶性有機溶媒を含むことが好ましい。特定水溶性有機溶媒のオクタノール/水分配係数(LogP)は、-0.5以上0.1以下である。特定水溶性有機溶媒は、比較的疎水性の高い溶媒である。本発明のインクが特定水溶性有機溶媒を含有することで、本発明のインクの初期動的表面張力が低下する。その結果、本発明のインクの記録媒体に対する浸透性を更に向上できる。
【0033】
代表的な水溶性有機溶媒のオクタノール/水分配係数の文献値を下記表1に示す。下記表1において、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ペンタンジオール、エチルジグリコール及び1,5-ペンタンジオールは、特定水溶性有機溶媒である。特定水溶性有機溶媒としては、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル又は1,5-ペンタンジオールが好ましい。
【0034】
【表1】
【0035】
本発明のインクが特定水溶性有機溶媒を含有する場合、本発明のインクにおいて、特定水溶性有機溶媒の含有割合としては、15.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、18.0質量%以上23.0質量%以下がより好ましい。特定水溶性有機溶媒の含有割合を15.0質量%以上とすることで、本発明のインクの初期動的表面張力を更に低下させることができる。その結果、本発明のインクの記録媒体に対する浸透性を更に向上できる。特定水溶性有機溶媒の含有割合を30.0質量%以下とすることで、本発明のインクの静的表面張力が過度に低下することを抑制できる。その結果、本発明のインクは非印字部のヨレを更に効果的に抑制できる。
【0036】
本発明のインクは、特定水溶性有機溶媒以外の水溶性有機溶媒(以下、他の水溶性有機溶媒と記載することがある)を更に含有してもよい。他の水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、多価アルコールのエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド及び後述する浸透剤が挙げられる。
【0037】
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが挙げられる。
【0038】
多価アルコールのエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0039】
ラクタム化合物としては、例えば、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0040】
含窒素化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0041】
アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0042】
浸透剤は、本発明のインクの記録媒体に対する浸透性を更に向上させる性質を有する他の水溶性有機溶媒である。浸透剤としては、例えば、1,2-へキサンジオール、1,2-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。浸透剤としては、1,2-オクタンジオールが好ましい。
【0043】
本発明のインクは、他の水溶性有機溶媒として、グリセリン、2-ピロリドン及び浸透剤のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0044】
本発明のインクがグリセリンを含有する場合、本発明のインクにおけるグリセリンの含有割合としては、1.0質量%以上10.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以上7.0質量%以下がより好ましい。
【0045】
本発明のインクが2-ピロリドンを含有する場合、本発明のインクにおける2-ピロリドンの含有割合としては、1.0質量%以上10.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以上7.0質量%以下がより好ましい。
【0046】
本発明のインクが浸透剤を含有する場合、本発明のインクにおける浸透剤の含有割合としては、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
【0047】
[高分子ノニオン界面活性剤]
高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量は、7000以上12500以下であり、8000以上11000以下が好ましい。高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量を7000以上とすることで、本発明のインクの静的表面張力の低下を抑制できる。その結果、本発明のインクは非印字部のヨレの発生を抑制できる。高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量を12500以下とすることで、本発明のインクの初期動的表面張力を低下させることができる。その結果、本発明のインクの記録媒体に対する浸透性を向上できる。
【0048】
高分子ノニオン界面活性剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位とを有する共重合体(以下、共重合体(α)と記載することがある)が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールメチルエーテル及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールメチルエーテルにおいて、ポリエチレングリコール部分の分子量としては、例えば、100以上300以下である。(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールメチルエーテルにおいて、ポリプロピレン部分の分子量としては、例えば、80以上150以下である。(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、アクリル酸ポリエチレングリコールメチルエーテル(PEGA)又はアクリル酸ポリプロピレングリコールメチルエーテル(PPGA)が好ましい。
【0050】
共重合体(α)の有する全繰り返し単位に対して、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する繰り返し単位の含有割合としては、60質量%以上95質量%以下が好ましく、75質量%以上90質量%以下がより好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸ラウリルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸ラウリル(LA)又はアクリル酸ブチル(BA)が好ましい。
【0052】
共重合体(α)の有する全繰り返し単位に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位の含有割合としては、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上25質量%以下がより好ましい。
【0053】
共重合体(α)としては、下記組み合わせ(1)のモノマーに由来する繰り返し単位を有する共重合体、又は下記組み合わせ(2)のモノマーに由来する繰り返し単位を有する共重合体が好ましい。
組み合わせ(1):PEGA、PPGA、LA及びMMA
組み合わせ(2):PEGA、PPGA、BA及びMMA
【0054】
本発明のインクにおいて、高分子ノニオン界面活性剤の含有割合としては、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。高分子ノニオン界面活性剤の含有割合を0.1質量%以上とすることで、本発明のインクの記録媒体に対する浸透性を更に向上できる。高分子ノニオン界面活性剤の含有割合を5.0質量%以下とすることで、本発明のインクは非印字部のヨレの発生を更に効果的に抑制できる。
【0055】
[水]
本発明のインクは、溶媒として、水を含有することが好ましい。本発明のインクが水を含有する場合、本発明のインクにおける水の含有割合としては、例えば、60.0質量%以上90.0質量%以下である。
【0056】
[低分子界面活性剤]
本発明のインクは、低分子界面活性剤(例えば、分子量2000以下の界面活性剤)を更に含有することが好ましい。低分子界面活性剤は、本発明のインクに含まれる各成分の相溶性及び分散安定性を向上させる。また、低分子界面活性剤は、本発明のインクの記録媒体に対する浸透性を更に向上させる。低分子界面活性剤としては、低分子ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0057】
低分子ノニオン界面活性剤としては、例えば、アセチレンジオール及びアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。アセチレンジオールとしては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール及び2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オールが挙げられる。低分子ノニオン界面活性剤としては、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0058】
本発明のインクが低分子界面活性剤を含有する場合、本発明のインクにおいて、低分子界面活性剤の含有割合としては、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0059】
[他の成分]
本発明のインクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
【0060】
[インクの製造方法]
本発明のインクは、例えば、顔料及び顔料分散樹脂を含む顔料分散液と、水溶性有機溶媒と、高分子ノニオン界面活性剤と、必要に応じて配合される他の成分(例えば、水)とを攪拌機により均一に混合することにより製造できる。本発明のインクの製造では、各成分を均一に混合した後、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。
【0061】
(顔料分散液)
顔料分散液は、顔料及び顔料分散樹脂を含む分散液である。顔料分散液の分散媒としては、水が好ましい。顔料分散液は、顔料粒子の分散性を向上させるため、低分子界面活性剤を更に含有することが好ましい。
【0062】
顔料分散液において、顔料及び顔料分散樹脂により構成される顔料粒子のD50としては、50nm以上200nm以下が好ましく、70nm以上130nm以下がより好ましい。
【0063】
顔料粒子のD50は、例えば、顔料分散液をイオン交換水で300倍に希釈した溶液を試料として、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定することができる。
【0064】
顔料分散液における顔料の含有割合としては、5.0質量%以上25.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。顔料分散液における顔料分散樹脂の含有割合としては、2.0質量%以上10.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以上8.0質量%以下がより好ましい。顔料分散液が低分子界面活性剤を含有する場合、顔料分散液における低分子界面活性剤の含有割合としては、0.1質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
【0065】
顔料分散液は、顔料と、顔料分散樹脂と、分散媒(例えば、水)と、必要に応じて添加される成分(例えば、低分子界面活性剤)とをメディア型湿式分散機により湿式分散することで調製できる。メディア型湿式分散機による湿式分散では、メディアとして、例えば、小粒径ビーズ(例えば、D50が0.5mm以上1.0mm以下のビーズ)を用いることができる。ビーズの材質としては、特に限定されないが、硬質の材料(例えば、ガラス及びジルコニア)が好ましい。
【0066】
本発明のインクの製造において顔料分散液を添加する場合、インクの全原料に対する顔料分散液の割合としては、例えば、25.0質量%以上60.0質量%以下である。
【0067】
<第2実施形態:インクジェット記録装置>
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置を説明する。本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、ラインヘッドとを備える。ラインヘッドは、上述の第1実施形態に係るインクを記録媒体に吐出する。以下、図面を参照して本実施形態に係るインクジェット記録装置の詳細について説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。
【0068】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるインクジェット記録装置100の構成を示す側面図である。図2は、図1に示すインクジェット記録装置100の搬送ベルト5を上方から見た図である。
【0069】
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、搬送部1と、複数のラインヘッド11とを主に備える。インクジェット記録装置100は、搬送部1及び複数のラインヘッド11に加え、給紙トレイ2、給紙ローラー3、給紙従動ローラー4、排出ローラー8、排出従動ローラー9及び排紙トレイ10を更に備える。
【0070】
インクジェット記録装置100には、記録媒体(後述する記録用紙P)の搬送方向X(以下、単に搬送方向Xと記載することがある)の上流側から下流側にかけて、給紙トレイ2と、給紙ローラー3及び給紙従動ローラー4と、搬送部1と、排出ローラー8及び排出従動ローラー9と、排紙トレイ10とがこの順番で配設されている。
【0071】
給紙トレイ2には、記録用紙Pが積み重ねられて収容されている。給紙ローラー3及び給紙従動ローラー4は、給紙トレイ2に隣接する位置に配設されている。給紙ローラー3及び給紙従動ローラー4は、互いに対向する位置で圧接されている。給紙ローラー3は、図1において半時計方向に回転駆動される。給紙従動ローラー4は、給紙ローラー3の回転に従動して回転する。これにより、給紙ローラー3及び給紙従動ローラー4は、給紙トレイ2に積み重ねられて収容されている記録用紙Pを、上から順番に一枚ずつ搬送部1に供給する。
【0072】
搬送部1は、搬送方向Xの下流側に配設されたベルト駆動ローラー6と、搬送方向Xの上流側に配設されたベルト従動ローラー7と、ベルト駆動ローラー6及びベルト従動ローラー7に掛け渡されている無端ベルトである搬送ベルト5とを備える。ベルト駆動ローラー6は、図1において時計方向に回転駆動される。これにより、ベルト駆動ローラー6は、搬送ベルト5を駆動する。これにより、搬送ベルト5は、搬送方向Xに記録用紙Pを搬送する。ベルト従動ローラー7は、搬送ベルト5を介してベルト駆動ローラー6に従動して回転する。
【0073】
複数のラインヘッド11は、搬送ベルト5の上方に配設される。複数のラインヘッド11は、第1ラインヘッド11C、第2ラインヘッド11M、第3ラインヘッド11Y及び第4ラインヘッド11Kを含む。第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kは、搬送方向Xに沿って、この順番で併設されている。第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kの各々は、同じ高さに配設されている。第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kには、それぞれ異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のインクが充填されている。第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kに充填された4色のインクのうち、少なくとも1色のインクは、第1実施形態に係るインクである。第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kに充填された4色のインクは、全て第1実施形態に係るインクであることが好ましい。第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kは、各々、後述する複数のノズルの各々からインクを吐出することにより、搬送ベルト5が搬送する記録用紙P上に画像(例えば、カラー画像)を形成する。
【0074】
排出ローラー8及び排出従動ローラー9は、互いに対向する位置で圧接されている。排出ローラー8は、図1において時計回りに回転駆動される。排出従動ローラー9は、排出ローラー8の回転に従動して回転する。これにより、排出ローラー8及び排出従動ローラー9は、搬送部1から搬送された記録用紙Pを排紙トレイ10へ排出する。排紙トレイ10には、排出された記録用紙Pが載置される。
【0075】
図2に示すように、第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kは、各々、搬送方向Xに沿って併設される第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2を備える。第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2は、各々、搬送方向Xと直交する方向(以下、幅方向と記載することがある)に沿って配列する複数のノズルにより構成される。第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の幅方向の長さ(即ち、第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kによって記録可能な領域の幅方向の長さ)は、記録用紙Pの幅方向の長さよりも長い。そのため、第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kは、各々、固定された状態で、搬送ベルト5上を搬送される記録用紙Pに画像を記録することができる。即ち、インクジェット記録装置100には、シャトル運動を行わない方式であるシングルパス方式が採用されている。
【0076】
ここで、一般的に、シングルパス方式のインクジェット記録装置は、高速印刷が可能であるというメリットを有する。一方、シングルパス方式のインクジェット記録装置は、マルチパス方式のインクジェット記録装置のように重ね描きを行わないため、形成される画像に白筋が発生する傾向がある。この傾向は、記録媒体が普通紙である場合に顕著である。しかし、インクジェット記録装置100は、第1実施形態に係るインクを用いている。第1実施形態に係るインクは、記録媒体に対する浸透性に優れる。そのため、インクジェット記録装置100は、シングルパス方式を採用する場合でも、白筋の発生を抑制できる。
【0077】
以上、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるインクジェット記録装置100について図面に基づいて説明した。しかし、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、インクジェット記録装置100に限定されない。例えば、本実施形態に係るインクジェット記録装置が備えるラインヘッドの個数は、1~3個又は5個以上でもよい。また、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、複合機であってもよい。更に、本実施形態に係るインクジェット記録装置において、記録媒体は、記録用紙以外の他の材料(例えば、布帛)でもよい。更に、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、マルチパス方式が採用されていてもよい。
【0078】
また、図2の第1ラインヘッド11C~第4ラインヘッド11Kにおいて、ノズルの個数、ノズルの間隔及びノズルの位置関係は、装置の仕様に応じて適宜設定することができる。
【0079】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、ラインヘッドを備えるため、シリアルヘッドを備えるインクジェット記録装置と比較し、高速印刷できる。本実施形態に係るインクジェット記録装置は、第1実施形態に係るインクを用いるため、白筋の発生及び非印字部のヨレの発生を抑制できる。
【実施例
【0080】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0081】
実施例において、高分子ノニオン界面活性剤及び顔料分散樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8020GPC」)を用いて下記条件により測定した。検量線は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレンであるF-40、F-20、F-4、F-1、A-5000、A-2500、及びA-1000と、n-プロピルベンゼンとを用いて作成した。
【0082】
(質量平均分子量の測定条件)
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
・カラム本数:3本
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.35mL/分
・サンプル注入量:10μL
・測定温度:40℃
・検出器:IR検出器
【0083】
<検討1:高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量>
まず、高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量について検討した。以下、インクの製造に用いた各原料の調製方法を示す。
【0084】
(顔料分散樹脂の準備)
メタクリル酸に由来する繰り返し単位(MAA単位)と、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位(MMA単位)と、アクリル酸ブチルに由来する繰り返し単位(BA単位)と、スチレンに由来する繰り返し単位(ST単位)とを有する顔料分散樹脂(R-1)を準備した。この顔料分散樹脂(R-1)は、質量平均分子量(Mw)が20000、酸価が80mgKOH/gであった。この顔料分散樹脂(R-1)における各繰り返し単位の質量比は、「MAA単位:MMA単位:BA単位:ST単位=6.5:30.0:30.0:33.5」であった。この顔料分散樹脂(R-1)と、水酸化カリウムを含有する水酸化カリウム水溶液とを混合した。水酸化カリウム水溶液には、顔料分散樹脂(R-1)の等量中和に必要な量の1.05倍量の水酸化カリウムが含まれていた。これにより、顔料分散樹脂(R-1)を、等量(厳密には、105%量)のKOHで中和した。その結果、顔料分散樹脂(R-1)及び水を含有する顔料分散樹脂溶液を得た。
【0085】
(顔料分散液(D-1)の調製)
下記表2に示す組成となるように、顔料(トーヨーカラー株式会社製「リオノール(登録商標)ブルーFG-7330」、成分:銅フタロシアニン、カラーインデックス:ピグメントブルー15:3)と、上述の顔料分散樹脂溶液と、低分子ノニオン界面活性剤としての日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」(アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物)と、イオン交換水とを、容量0.6Lのベッセルに投入した。次いで、ベッセルの内容物を、メディア型湿式分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「DYNO(登録商標)-MILL」)を用いて湿式分散した。
【0086】
なお、下記表2の「水」の含有割合は、上述のベッセルに投入したイオン交換水と、顔料分散樹脂溶液に含まれていた水(詳しくは、顔料分散樹脂の中和に用いた水酸化カリウム水溶液に含まれていた水、並びに顔料分散樹脂及び水酸化カリウムの中和反応で生じた水)との合計含有割合を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
続けて、メディアとしてのジルコニアビーズ(粒子径0.5mm)と、湿式分散機(浅田鉄工株式会社製「ナノグレンミル」)とを用いて、上述のベッセルの内容物を分散処理した。分散条件は、温度10℃、周速8m/秒、吐出量300g/分とした。これにより、顔料分散液(D-1)を得た。
【0089】
得られた顔料分散液(D-1)に含まれる顔料粒子の体積中位径(D50)を測定した。詳しくは、得られた顔料分散液(D-1)をイオン交換水で300倍に希釈し、これを測定試料とした。動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて、測定試料中の顔料粒子のD50を測定した。測定試料中の顔料粒子のD50を、顔料分散液(D-1)に含まれる顔料粒子のD50とした。顔料分散液(D-1)に含まれる顔料粒子のD50は、100nmであった。
【0090】
(高分子ノニオン界面活性剤(S-1))
アクリル酸ポリエチレングリコールメチルエーテル(ポリエチレングリコール部分の分子量:200)に由来する繰り返し単位(PEGA単位)と、アクリル酸ポリプロピレングリコールメチルエーテル(ポリプロピレングリコール部分の分子量:100)に由来する繰り返し単位(PPGA単位)と、アクリル酸ラウリルに由来する繰り返し単位(LA単位)と、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位(MMA単位)とを有する共重合体(質量平均分子量(Mw)5200)を用意した。この共重合体を、高分子ノニオン界面活性剤(S-1)とした。高分子ノニオン界面活性剤(S-1)における各繰り返し単位の質量比は、「PEGA単位:PPGA単位:LA単位:MMA単位=60:23:12:5」であった。高分子ノニオン界面活性剤(S-1)は、水に可溶であった。
【0091】
(高分子ノニオン界面活性剤(S-2)~(S-6))
下記表3に示す繰り返し単位及び質量平均分子量を有する共重合体を用意し、これらを高分子ノニオン界面活性剤(S-2)~(S-6)とした。高分子ノニオン界面活性剤(S-2)~(S-6)は、何れも水に可溶であった。なお、下記表3において、繰り返し単位の項は、該当するモノマー(アクリル酸ポリエチレングリコールメチルエーテル(PEGA)、アクリル酸ポリプロピレングリコールメチルエーテル(PPGA)と、アクリル酸ラウリル(LA)、メタクリル酸メチル(MMA)及びアクリル酸ブチル(BA))に由来する繰り返し単位を有することを示す。
【0092】
【表3】
【0093】
[インク(I-1)~(I-6)の調製]
攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標)BL-600」)を装備したフラスコにイオン交換水を投入した。上述の攪拌機で内容物を攪拌(攪拌速度:400rpm)しながら、顔料分散液(D-1)と、2-ピロリドンと、高分子ノニオン界面活性剤(S-1)と、浸透剤としての1,2-オクタンジオールと、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと、グリセリンとを、この順番で投入した。各原料の投入量の割合は、下記表4に示す通りとした。
【0094】
【表4】
【0095】
得られた混合液から異物及び粗大粒子を除去するため、孔径5μmのフィルターを用いて混合液をろ過した。これにより、インク(I-1)を得た。
【0096】
高分子ノニオン界面活性剤の種類を下記表5に示す通りに変更した以外は、インク(I-1)の調製と同様の方法により、インク(I-2)~(I-6)を調製した。
【0097】
(表面張力の測定)
インク(I-1)~(I-6)の各々について、動的表面張力測定装置(KRUSS社製「BP-100」)を用いた最大泡圧法により、表面寿命50ミリ秒での動的表面張力(γ50ms)と、表面寿命1000ミリ秒での動的表面張力(γeq)とを測定した。表面寿命1000ミリ秒での動的表面張力(γeq)を、動的表面張力が平衡状態になった状態におけるインクの表面張力(静的表面張力)と見做した。測定温度は25℃とした。
【0098】
[評価1]
インク(I-1)~(I-6)の各々について、以下の方法により、記録媒体に対する浸透性と、非印字部のヨレの発生の有無とを評価した。評価結果を下記表5に示す。
【0099】
(浸透性)
記録媒体に対する浸透性の評価は、温度25℃かつ湿度60%RHの環境下で行った。評価機としては、インクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作機、600dpi)を使用した。評価機は、ノズル(開口部の孔径:10μm)を有するピエゾ方式のラインヘッドを備えていた。評価機のラインヘッドに、評価対象(詳しくは、インク(I-1)~(I-6)の何れか)をセットした。続いて、評価機を用いてA4の普通紙(Mondi社製「Color Copy(登録商標)」、坪量90g/m2)に、10本の縦線(副走査方向に沿った線)を形成した。この際、各縦線の線幅は、1ドット(インク1滴分)に設定した。ラインヘッドの個々のノズルから吐出されるインクの1ドット当たりの体積(1滴当たりの体積)は、11pLに設定した。次に、10本の縦線が形成された普通紙を15時間乾燥させた。次に、光学顕微鏡(株式会社ニコン製「MM-800」)を用いて上述の10本の縦線の線幅を判定した。詳しくは、上述の光学顕微鏡に付属のアプリケーションソフトにより、上述の10本の縦線の線幅の平均値(平均線幅)を測定した。インクの記録媒体に対する浸透性は、平均線幅が75μm以上である場合を良好(A)と判定し、平均線幅が75μm未満である場合を不良(B)と判定した。
【0100】
(非印字部のヨレ)
非印字部のヨレの発生の有無の評価は、インクノズルの乾燥の影響を抑えるため、常温高湿環境下(温度25℃かつ湿度80%RHの環境下)で行った。上述の評価機について、ラインヘッドからのインクのパージと、ラインヘッドのワイプとを行った(パージワイプ処理)。パージワイプ処理から1分後、評価機を用いてA4の光沢紙(セイコーエプソン株式会社製「スーパーファイン紙」)に、1本の横線(主走査方向に沿った線)を形成した。この際、横線の線幅は、1ドット(インク1滴分)に設定した。ラインヘッドの個々のノズルから吐出されるインクの1ドット当たりの体積(1滴当たりの体積)は、11pLに設定した。次に、光学顕微鏡(株式会社ニコン製「MM-800」)を用いて上述の横線のずれ量を判定した。詳しくは、上述の光学顕微鏡に付属のアプリケーションソフトにより、上述の横線を構成する各ドットの副走査方向の最大距離(ずれ量)を測定した。ずれ量が大きいほど、非印字部でヨレが発生したことによって上述の横線に歪みが発生したことを示す。非印字部のヨレの発生の有無は、ずれ量が20μm以下である場合を良好(A)と判定し、ずれ量が20μm超である場合を不良(B)と判定した。
【0101】
【表5】
【0102】
表5に示すように、インク(I-2)~(I-4)及び(I-6)は、高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量が7000以上12500以下であった。インク(I-2)~(I-4)及び(I-6)は、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部のヨレの発生を抑制できた。
【0103】
一方、インク(I-1)は、高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量が7000未満であった。インク(I-1)は、高分子ノニオン界面活性剤の界面活性能が高すぎるため、静的表面張力が低下し、非印字部のヨレの発生を抑制できなかった。また、インク(I-5)は、高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量が12500超であった。インク(I-5)は、高分子ノニオン界面活性剤の界面活性能が低すぎるため、初期動的表面張力が低下せず、記録媒体に対する浸透性が不良であった。また、インク(I-5)は、非印字部のヨレの発生を抑制できなかった。
【0104】
<検討2:水溶性有機溶媒のLogP>
次いで、水溶性有機溶媒のオクタノール/水分配係数(LogP)について検討した。まず、攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標)BL-600」)を装備したフラスコにイオン交換水を投入した。上述の攪拌機で内容物を攪拌(攪拌速度:400rpm)しながら、顔料分散液(D-1)と、2-ピロリドンと、高分子ノニオン界面活性剤(S-3)と、浸透剤としての1,2-オクタンジオールと、下記表6に示す水溶性有機溶媒と、グリセリンとを、この順番で投入した。各原料の投入量の割合は、下記表7に示す通りとした。これにより、インク(I-7)~(I-8)を調製した。下記表6には、水溶性有機溶媒のオクタノール/水分配係数(LogP)を併せて示す。下記表6には、参考のため、インク(I-3)で用いた水溶性有機溶媒のオクタノール/水分配係数(LogP)を併せて示す。
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
(表面張力の測定)
インク(I-7)~(I-8)の各々について、「検討1」に記載の方法と同様の方法により、表面寿命50ミリ秒での動的表面張力(γ50ms)と、表面寿命1000ミリ秒での動的表面張力(γeq)とを測定した。測定結果を下記表8に示す。
【0108】
[評価2]
インク(I-7)~(I-8)の各々について、「検討1」に記載の方法と同様の方法により、記録媒体に対する浸透性と、非印字部のヨレの発生の有無とを評価した。評価結果を下記表8に示す。下記表8には、参考のため、インク(I-3)の表面張力の測定結果及び評価結果を併せて示す。
【0109】
【表8】
【0110】
表8に示すように、インク(I-3)及び(I-7)~(I-8)は、オクタノール/水分配係数(LogP)が-0.5以上0.1以下である特定水溶性有機溶媒を含有していた。インク(I-3)及び(I-7)~(I-8)は、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部のヨレの発生を抑制できた。
【0111】
<検討3:特定水溶性有機溶媒の含有割合>
攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標)BL-600」)を装備したフラスコにイオン交換水を投入した。上述の攪拌機で内容物を攪拌(攪拌速度:400rpm)しながら、顔料分散液(D-1)と、2-ピロリドンと、高分子ノニオン界面活性剤(S-3)と、浸透剤としての1,2-オクタンジオールと、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(MPD)と、グリセリンとを、この順番で投入した。3-メチル-1,5-ペンタンジオール以外の各原料の投入量の割合は、下記表9に示す通りとした。3-メチル-1,5-ペンタンジオールの投入量の割合は、下記表10に示す量とした。これにより、インク(I-9)~(I-12)を調製した。
【0112】
【表9】
【0113】
(表面張力の測定)
インク(I-9)~(I-12)の各々について、「検討1」に記載の方法と同様の方法により、表面寿命50ミリ秒での動的表面張力(γ50ms)と、表面寿命1000ミリ秒での動的表面張力(γeq)とを測定した。測定結果を下記表10に示す。
【0114】
[評価3]
インク(I-9)~(I-12)の各々について、「検討1」に記載の方法と同様の方法により、記録媒体に対する浸透性と、非印字部のヨレの発生の有無とを評価した。評価結果を下記表10に示す。
【0115】
【表10】
【0116】
表10に示すように、インク(I-9)~(I-12)は、特定水溶性有機溶媒の含有割合が15.0質量%以上30.0質量%以下であった。インク(I-9)~(I-12)は、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部のヨレの発生を抑制できた。
【0117】
<検討4:顔料分散樹脂の酸価>
次いで、顔料分散樹脂の酸価について検討した。以下の点を変更した以外は、顔料分散液(D-1)の調製と同様の方法により、顔料分散液(D-2)~(D-6)を調製した。顔料分散液(D-2)~(D-6)の調製では、顔料分散樹脂として、下記表11に示す繰り返し単位、質量平均分子量及び酸価を有する顔料分散樹脂(R-2)~(R-6)の何れかを用いた。
【0118】
【表11】
【0119】
[インク(I-13)~(I-17)の調製]
攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標)BL-600」)を装備したフラスコにイオン交換水を投入した。上述の攪拌機で内容物を攪拌(攪拌速度:400rpm)しながら、顔料分散液と、2-ピロリドンと、高分子ノニオン界面活性剤(S-3)と、浸透剤としての1,2-オクタンジオールと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、グリセリンとを、この順番で投入した。各原料の投入量の割合は、下記表12に示す通りとした。顔料分散液の種類は、下記表13に示す通りとした。これにより、インク(I-13)~(I-17)を調製した。
【0120】
【表12】
【0121】
(表面張力の測定)
インク(I-13)~(I-17)の各々について、「検討1」に記載の方法と同様の方法により、表面寿命50ミリ秒での動的表面張力(γ50ms)と、表面寿命1000ミリ秒での動的表面張力(γeq)とを測定した。測定結果を下記表13に示す。
【0122】
[評価4]
インク(I-13)~(I-17)の各々について、「検討1」に記載の方法と同様の方法により、記録媒体に対する浸透性と、非印字部のヨレの発生の有無とを評価した。評価結果を下記表13に示す。
【0123】
【表13】
【0124】
表13に示すように、インク(I-14)~(I-16)は、顔料分散樹脂の酸価が55mgKOH/g以上97mgKOH/g以下であった。インク(I-14)~(I-16)は、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部のヨレの発生を抑制できた。
【0125】
一方、インク(I-13)は、顔料分散樹脂の酸価が55mgKOH/g未満であった。インク(I-13)は、酸価が過度に低い顔料分散樹脂(水和力が過度に低い顔料分散樹脂)を用いたため、静的表面張力が低下し、非印字部のヨレの発生を抑制できなかった。また、インク(I-17)は、顔料分散樹脂の酸価が97mgKOH/g超であったインク(I-17)は、酸価が過度に高い顔料分散樹脂(水和力が過度に高い顔料分散樹脂)を用いたため、初期動的表面張力が低下せず、記録媒体に対する浸透性が不良であった。
【0126】
<検討5:顔料の種類>
次いで、インクの顔料を変更した場合にどのような影響があるかを検討した。以下の点を変更した以外は、顔料分散液(D-1)の調製と同様の方法により、顔料分散液(D-7)を調製した。顔料分散液(D-7)の調製では、顔料として、カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)を用いた。
【0127】
[インク(I-18)の調製]
攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標)BL-600」)を装備したフラスコにイオン交換水を投入した。上述の攪拌機で内容物を攪拌(攪拌速度:400rpm)しながら、顔料分散液(D-7)と、2-ピロリドンと、高分子ノニオン界面活性剤(S-3)と、浸透剤としての1,2-オクタンジオールと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、グリセリンとを、この順番で投入した。各原料の投入量の割合は、下記表14に示す通りとした。
【0128】
【表14】
【0129】
(表面張力の測定)
インク(I-18)について、「検討1」に記載の方法と同様の方法により、表面寿命50ミリ秒での動的表面張力(γ50ms)と、表面寿命1000ミリ秒での動的表面張力(γeq)とを測定した。測定結果を下記表15に示す。
【0130】
[評価5]
インク(I-18)について、「検討1」に記載の方法と同様の方法により、記録媒体に対する浸透性と、非印字部のヨレの発生の有無とを評価した。評価結果を下記表15に示す。
【0131】
【表15】
【0132】
表15に示すように、顔料としてカーボンブラックを用いたインク(I-18)は、顔料としてピグメントブルー15:3を用いたインク(I-2)~(I-4)及び(I-6)等と同様に、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部のヨレの発生を抑制できた。
【0133】
以上をまとめると、顔料と、顔料分散樹脂と、水溶性有機溶媒と、高分子ノニオン界面活性剤とを含有し、顔料分散樹脂の酸価が55mgKOH/g以上97mgKOH/g以下であり、高分子ノニオン界面活性剤の質量平均分子量が7000以上12500以下であるインクは、記録媒体に対する浸透性に優れ、かつ非印字部のヨレの発生を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のインク及びインクジェット記録装置は、画像を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0135】
1 搬送部
2 給紙トレイ
3 給紙ローラー
4 給紙従動ローラー
5 搬送ベルト
6 ベルト駆動ローラー
7 ベルト従動ローラー
8 排出ローラー
9 排出従動ローラー
10 排紙トレイ
11 ラインヘッド
11C 第1ラインヘッド
11M 第2ラインヘッド
11Y 第3ラインヘッド
11K 第4ラインヘッド
100 インクジェット記録装置
N1 第1ノズル列
N2 第2ノズル列
P 記録用紙
図1
図2