(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20240827BHJP
C08L 3/06 20060101ALI20240827BHJP
C08L 1/10 20060101ALI20240827BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L3/06
C08L1/10
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020110733
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八百 健二
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-502552(JP,A)
【文献】特開2004-189770(JP,A)
【文献】特開2005-179633(JP,A)
【文献】特開2005-162870(JP,A)
【文献】特開2004-149636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/04
C08L 3/06
C08L 1/10
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上1以下であ
り、
前記エステル化デンプン(B)が、炭素数2以上10以下の脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンであり、
前記脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンが、更に、炭素数11以上20以下の脂肪族カルボン酸(b-2)でエステル化されたエステル化デンプンである、樹脂組成物。
【請求項2】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上1以下であ
り、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)が、炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体であり、
前記炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体が、3-ヒドロキシ酪酸及び3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体である、樹脂組成物。
【請求項3】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上1以下であ
り、
セルロースアシレート(C)を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(A))が0.1以上1以下であり、
前記エステル化デンプン(B)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(B))が0.12以上0.55以下であり、
前記セルロースアシレート(C)が2種類以上のアシル基を含むセルロースアシレートである、樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)が、炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体である、請求項1
又は請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体が、3-ヒドロキシ酪酸及び3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体である、請求項
4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エステル化デンプン(B)が、炭素数2以上10以下の脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンである、請求項
2又は請求項
3に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンが、更に、炭素数11以上20以下の脂肪族カルボン酸(b-2)でエステル化されたエステル化デンプンである、請求項
6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)の含有量が、樹脂組成物100質量部に対して、30質量部以上90質量部以下である、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
セルロースアシレート(C)を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(A))が0.1以上1以下であり、
前記エステル化デンプン(B)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(B))が0.12以上0.55以下である請求項1
又は請求項
2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記セルロースアシレート(C)が2種類以上のアシル基を含むセルロースアシレートである、請求項
9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%以上であ
り、
前記エステル化デンプン(B)が、炭素数2以上10以下の脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンであり、
前記脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンが、更に、炭素数11以上20以下の脂肪族カルボン酸(b-2)でエステル化されたエステル化デンプンである、樹脂組成物。
【請求項12】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%以上であ
り、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)が、炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体であり、
前記炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体が、3-ヒドロキシ酪酸及び3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体である、樹脂組成物。
【請求項13】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%以上であ
り、
セルロースアシレート(C)を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(A))が0.1以上1以下であり、
前記エステル化デンプン(B)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(B))が0.12以上0.55以下であり、
前記セルロースアシレート(C)が2種類以上のアシル基を含むセルロースアシレートである、樹脂組成物。
【請求項14】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上1以下である樹脂組成物
を含有する、粒状体である樹脂成形体。
【請求項15】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%以上である樹脂組成物
を含有する、粒状体である樹脂成形体。
【請求項16】
請求項1~
請求項13のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
【請求項17】
粒状体である請求項
16に記載の樹脂成形体。
【請求項18】
体積平均粒径が3μm以上100μm以下である、請求項
14~請求項17のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項19】
大径側粒度分布指標GSDvが1.50以下である、請求項
14~請求項18のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「A成分として、生分解性樹脂の澱粉誘導体と、B成分として、エステル化天然樹脂、グラフト化天然樹脂の中から選ばれる1又は2以上の成分と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「ポリヒドロキシアルカン酸を含む生分解性プラスチックであって、ポリヒドロキシアルカン酸分解酵素を生産する微生物の胞子または該酵素を生産する好熱菌の少なくとも1つ含有することを特徴とする、生分解性プラスチック。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-073501号公報
【文献】特開2013-209587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、エステル化デンプン(B)と、を含む樹脂組成物において、前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1未満若しくは1超過、又は、液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%未満である場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1> ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上1以下である樹脂組成物。
<2> 前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)が、炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体である、前記<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体が、3-ヒドロキシ酪酸及び3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体である、前記<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記エステル化デンプン(B)が、炭素数2以上10以下の脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンである、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> 前記脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンが、更に、炭素数11以上20以下の脂肪族カルボン酸(b-2)でエステル化されたエステル化デンプンである、前記<4>に記載の樹脂組成物。
<6> 前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)の含有量が、樹脂組成物100質量部に対して、30質量部以上90質量部以下である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> セルロースアシレート(C)を含み、
前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(A))が0.1以上1以下であり、
前記エステル化デンプン(B)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(B))が0.12以上0.55以下である前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> 前記セルロースアシレート(C)が2種類以上のアシル基を含むセルロースアシレートである、前記<7>に記載の樹脂組成物。
<9> ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、
エステル化デンプン(B)と、を含み、
液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%以上である樹脂組成物。
<10> 前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
<11> 粒状体である前記<10>に記載の樹脂成形体。
<12> 体積平均粒径が3μm以上100μm以下である、前記<11>に記載の樹脂成形体。
<13> 大径側粒度分布指標GSDvが1.50以下である、前記<11>又は<12>に記載の樹脂成形体。
【発明の効果】
【0007】
<1>に係る発明によれば、ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、エステル化デンプン(B)と、を含む樹脂組成物において、前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1未満若しくは1超過である場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0008】
<2>に係る発明によれば、前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)が、ポリ(2-ヒドロキシ-n-オクタン酸)である場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0009】
<3>に係る発明によれば、前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)が、ポリヒドロキシブチレートである場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0010】
<4>に係る発明によれば、前記エステル化デンプン(B)が、10超過の脂肪族カルボン酸のみでエステル化されたエステル化デンプンである場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0011】
<5>に係る発明によれば、前記脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンが、更に、炭素数20超過の脂肪族カルボン酸でエステル化されたエステル化デンプンである場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0012】
<6>に係る発明によれば、前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)の含有量が、樹脂組成物100質量部に対して、30質量部未満又は90質量部超過である場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0013】
<7>に係る発明によれば、セルロースアシレート(C)を含まない場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
また、セルロースアシレート(C)を含み、前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(A))が0.1未満若しくは1超過である、又は、前記エステル化デンプン(B)と前記セルロースアシレート(C)との質量比((C)/(B))が0.12未満若しくは0.55超過である場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0014】
<8>に係る発明によれば、前記セルロースアシレート(C)が1種類のアシル基を含むセルロースアシレートである場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0015】
<9>に係る発明によれば、ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、エステル化デンプン(B)と、を含む樹脂組成物において、液温40℃のメチルエチルケトンに対する樹脂組成物の溶解度が30質量%未満である場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が提供される。
【0016】
<10>~<13>に係る発明によれば、ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、エステル化デンプン(B)と、を含み、前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1未満若しくは1超過、又は、液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%未満である樹脂組成物を含有する場合と比較して、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物を含有する樹脂成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0019】
<樹脂組成物>
(第一実施形態)
第一実施形態に係る樹脂組成物は、ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、エステル化デンプン(B)と、を含み、前記ポリヒドロキシアルカン酸(A)と前記エステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上1以下である。
【0020】
ここで、近年、海洋プラスチックゴミに代表される環境汚染及び生体系破壊が生じており、バイオ由来且つ生分解性を有する樹脂成形体が求められている。生分解速度が速い樹脂として、ポリヒドロキシアルカン酸が知られており、特に生分解速度が要求される食品包装などの用途で、ポリヒドロキシアルカン酸を含有する樹脂組成物が盛んに使われている。
しかしながら、機械強度又は耐久性を必要とする樹脂成形体においては、ポリヒドロキシアルカン酸を含有する樹脂組成物の使用が困難であった。機械強度又は耐久性を必要とする樹脂成形体への用途に適用するためには、ポリヒドロキシアルカン酸の化学構造の修飾をすることが好ましい。ただし、ポリヒドロキシアルカン酸は有機溶剤に対する溶解性が低いため、化学構造の修飾が困難である。また、ポリヒドロキシアルカン酸は有機溶剤に対する溶解性が低いため、粒状の樹脂成形体を製造することも困難である。同様の理由で、コーティングなどの用途への、ポリヒドロキシアルカン酸を含有する樹脂組成物の使用は困難である。そのため、有機溶剤に可溶なポリヒドロキシアルカン酸を含有する樹脂組成物の提供が求められている。
【0021】
第一実施形態に係る樹脂組成物は、上記構成により、有機溶剤への溶解性が向上する。その理由は、次の通り推測される。
【0022】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)及びエステル化デンプン(B)は、共にエステル基を有する化合物であるため、親和性が高い。そのため、ポリヒドロキシアルカン酸(A)及びエステル化デンプン(B)は、均一に近い状態で混合する。
また、ポリヒドロキシアルカン酸(A)とエステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))を0.1以上1以下とすることで、共に主鎖が柔軟で変形しやすいポリヒドロキシアルカン酸(A)及びエステル化デンプン(B)がらせん状に巻きつく構造をとる。そして、前記らせん状構造の表面はエステル化デンプン(B)である割合が高い。エステル化デンプン(B)は有機溶剤への溶解性が高いため、前記らせん状構造の表面がエステル化デンプン(B)で覆われることで、前記らせん状構造の有機溶剤への溶解性が向上する。
ここで、前記質量比((B)/(A))が0.1以上であると、前記らせん構造の表面を覆うエステル化デンプン(B)の割合が高くなる。また、前記質量比((B)/(A))が1以下であると、エステル化デンプン(B)同士の親和性が低下し、前記らせん状構造を取りやすい。よって、前記質量比((B)/(A))は0.1以上1以下とする。
【0023】
以上のことから、第一実施形態に係る樹脂組成物は、有機溶剤への溶解性が向上する。
【0024】
(第二実施形態)
第一実施形態に係る樹脂組成物は、ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、エステル化デンプン(B)と、を含み、液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%以上である。
【0025】
第二実施形態に係る樹脂組成物は、上記構成により、有機溶剤への溶解性が向上する。その理由は、次の通り推測される。
【0026】
前述の通り、ポリヒドロキシアルカン酸(A)とエステル化デンプン(B)とを含有する樹脂組成物は、有機溶剤への溶解性が向上する。また、第二実施形態に係る樹脂組成物は液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%以上である。これは、第二実施形態に係る樹脂組成物は、有機溶剤への溶解性が高いことを示す。
なお、前記溶解度を30質量%以上とすることで、ポリヒドロキシアルカン酸(A)とエステル化デンプン(B)との質量比((B)/(A))が0.1以上1以下の範囲内となりやすい。
【0027】
そのため、第二実施形態に係る樹脂組成物は、有機溶剤への溶解性が向上する。
【0028】
以下、第一及び第二実施形態に係る樹脂組成物のいずれにも該当する樹脂組成物(以下「本実施形態に係る樹脂組成物」とも称する)について詳細に説明する。ただし、本発明の樹脂組成物の一例は、第一及び第二実施形態に係る樹脂組成物のいずれか一方に該当する樹脂組成物であればよい。
【0029】
本明細書において、ポリヒドロキシアルカン酸(A)、エステル化デンプン(B)、及び、セルロースアシレート(C)をそれぞれ、成分(A)、成分(B)、及び、成分(C)ともいう。
【0030】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物について詳細に説明する。
【0031】
(ポリヒドロキシアルカン酸(A):成分(A))
ポリヒドロキシアルカン酸(A)は、ヒドロキシアルカン酸の重合体である。
ポリヒドロキシアルカン酸(A)としては、例えば、一般式(PHA)で表される構造単位を有する化合物が挙げられる。
なお、一般式(PHA)で表される構造単位を有する化合物おいて、高分子鎖の末端(主鎖の末端)は、両端ともがカルボキシル基であってもよいし、片末端のみがカルボキシル基でもう一方の末端が他の基(例えば水酸基)であってもよい。
【0032】
【0033】
一般式(PHA)中、RPHA1は、炭素数1以上10以下のアルキレン基を表す。nは、2以上の整数を表す。
【0034】
一般式(PHA)中、RPHA1が表すアルキレン基としては、炭素数2以上6以下のアルキレン基が好ましい。RPHA1が表すアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、分岐状が好ましい。
【0035】
ここで、一般式(PHA)中、RPHA1がアルキレン基を表すとは、1)RPHA1が同じアルキレン基を表す[O-RPHA1-C(=O)-]構造を有すること、2)RPHA1が異なるアルキレン基(RPHA1が炭素数又は分岐が異なるアルキレン基)を表す複数の[O-RPHA1-C(=O)-]構造(即ち、[O-RPHA1A-C(=O)-][O-RPHA1B-C(=O)-]構造)を有することを示している。
つまり、ポリヒドロキシアルカン酸(A)は、1種のヒドロキシアルカン酸の単独重合体であってもよいし、2種以上のヒドロキシアルカン酸の共重合体であってもよい。
【0036】
一般式(PHA)中、nの上限は特に限定されないが、例えば、20000以下が挙げられる。nの範囲は、500以上10000以下が好ましく、1000以上8000以下がより好ましい。
【0037】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)としては、ヒドロキシアルカン酸(乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、2-ヒドロキシヘキサン酸、2-ヒドロキシイソヘキサン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオン酸、2-ヒドロキシ-n-オクタン酸等)の単独重合体、又はこれら2種以上のヒドロキシアルカン酸の共重合体が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、ポリヒドロキシアルカン酸(A)は、有機溶剤への溶解性向上の観点から、炭素数3以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体であることが好ましく、炭素数4以上6以下のヒドロキシアルカン酸の重合体であることがより好ましく、炭素数4のヒドロキシアルカン酸と炭素数6のヒドロキシアルカン酸との共重合体であることが更に好ましい。
なお、ヒドロキシアルカン酸の炭素数はカルボキシル基の炭素も含む数である。
【0039】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)は、有機溶剤への溶解性向上の観点から、乳酸の単独重合体、3-ヒドロキシ酪酸の単独重合体、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシヘキサン酸との共重合体であることが好ましく、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシヘキサン酸との共重合体であることがより好ましい。
【0040】
ポリヒドロキシアルカン酸(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0041】
(エステル化デンプン(B):成分(B))
本実施形態においてエステル化デンプン(B)としては、カルボン酸でエステル化されたエステル化デンプン、リン酸でエステル化されたエステル化デンプン等が挙げられ、カルボン酸でエステル化されたエステル化デンプンが好ましい。
カルボン酸でエステル化されたエステル化デンプンは、デンプンの水酸基の少なくとも一部がエステル基に置換された構造を有する。
【0042】
本明細書において、カルボン酸は、カルボン酸非無水物又はカルボン酸無水物のいずれでもよい。
カルボン酸非無水物とは、下記にて説明するカルボン酸そのものを指す。
カルボン酸無水物とは、下記にて説明するカルボン酸を2分子脱水縮合させた化合物を指す。ここで、カルボン酸無水物を構成する2分子のカルボン酸は、同種のカルボン酸であることが好ましい。
【0043】
カルボン酸は、脂肪族カルボン酸でもよく、芳香族カルボン酸でもよい。
ここで、脂肪族カルボン酸とは、カルボキシル基に飽和脂肪族基(アルキル基)又は不飽和脂肪族基(アルケニル基、アルキニル基)が結合した化合物である。前記飽和脂肪族基又は前記不飽和脂肪族基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
芳香族カルボン酸とは、カルボキシル基に芳香族基が結合した化合物である。
【0044】
エステル化デンプン(B)としては、脂肪族カルボン酸でエステル化されたエステル化デンプンが好ましい。
【0045】
エステル化デンプン(B)は、有機溶剤への溶解性向上の観点から、炭素数2以上10以下の脂肪族カルボン酸(b-1)でエステル化されたエステル化デンプンであることが好ましい。
脂肪族カルボン酸(b-1)の炭素数は、有機溶剤への溶解性向上の観点から、炭素数2以上9以下であることがより好ましく、炭素数3以上8以下であることが更に好ましい。
なお、脂肪族カルボン酸の炭素数はカルボキシル基の炭素も含む数である。以下、同様とする。
【0046】
脂肪族カルボン酸(b-1)としては、具体的には、酢酸(炭素数2)、プロピオン酸(炭素数3)、ブタン酸(炭素数4)、ペンタン酸(炭素数5)、ヘキサン酸(炭素数6)、ヘプタン酸(炭素数7)、オクタン酸(炭素数8)、ノナン酸(炭素数9)、デカン酸(炭素数10);これらのカルボン酸の脱水縮合物;等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸(b-1)としては、有機溶剤への溶解性向上の観点から、酢酸、プロピオン酸、無水酢酸及び無水プロピオン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
脂肪族カルボン酸(b-1)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0048】
エステル化デンプン(B)は、有機溶剤への溶解性向上の観点から、前記脂肪族カルボン酸(b-1)と共に、炭素数11以上20以下の脂肪族カルボン酸(b-2)でエステル化されたエステル化デンプンであることが好ましい。
脂肪族カルボン酸(b-2)の炭素数は、有機溶剤への溶解性向上の観点から、炭素数12以上19以下であることがより好ましく、炭素数13以上18以下であることが更に好ましい。
【0049】
ここで、脂肪族カルボン酸(b-1)と、脂肪族カルボン酸(b-2)と、の炭素数の差((b-2)-(b-1))は、1以上18以下が好ましく、3以上17以下がより好ましく、5以上16以下であることが更に好ましい。
【0050】
脂肪族カルボン酸(b-2)としては、具体的には、ドデカン酸(別名ラウリン酸、炭素数12)、テトラデカン酸(別名ミリスチン酸、炭素数14)、ヘキサデカン酸(別名パルミチン酸、炭素数16)、オクタデカン酸(別名ステアリン酸、炭素数18)等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸(b-2)としては、有機溶剤への溶解性向上の観点から、オクタデカン酸及びオクタデカン酸無水物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0051】
脂肪族カルボン酸(b-2)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0052】
エステル化デンプン(B)のエステル化度は、ポリヒドロキシアルカン酸(A)に対する親和性の観点から、1.0以上3.0以下が好ましく、1.2以上2.7以下がより好ましく、1.3以上2.3以下が更に好ましい。
【0053】
エステル化デンプン(B)の重量平均重合度は、ポリヒドロキシアルカン酸(A)に対する親和性の観点から、15以上1500以下が好ましく、30以上1000以下がより好ましく、40以上200以下が更に好ましく、45以上160以下が更に好ましい。
【0054】
エステル化デンプン(B)のエステル化度とは、デンプンが有するヒドロキシ基がエステル基に置換されている程度を示す指標である。つまり、エステル化度は、エステル化デンプン(B)のエステル化の程度を示す指標となる。具体的には、エステル化度は、デンプンのD-グルコピラノース単位に3個あるヒドロキシ基がエステル基に置換された置換個数の分子内平均を意味する。エステル化度は、1H-NMR(JMN-ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、デンプン由来水素とエステル基由来水素とのピークの積分比から求める。
【0055】
エステル化デンプン(B)の重量平均重合度は、以下の手順で重量平均分子量(Mw)から求める。
まず、エステル化デンプン(B)の重量平均分子量(Mw)を、テトラヒドロフランを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC-8320GPC、カラム:TSKgelα-M)にてポリスチレン換算で測定する。
次いで、エステル化デンプン(B)の構成単位分子量で除算することで、エステル化デンプン(B)の重合度を求める。
【0056】
エステル化デンプン(B)としては、具体的には、コーンポールCP-3CL-L(日本コーンスターチ社製)、コーンポールCPR-ML(日本コーンスターチ社製)等が挙げられる。
【0057】
エステル化デンプン(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(セルロースアシレート(C):成分(C))
本実施形態に係る樹脂組成物は、更にセルロースアシレート(C)を含有することが好ましい。
樹脂組成物中にセルロースアシレート(C)を含有することで、ポリヒドロキシアルカン酸(A)と、エステル化デンプン(B)と、の相溶性が向上する。それにより、ポリヒドロキシアルカン酸(A)及びエステル化デンプン(B)のらせん状構造をより形成しやすくなる。そのため樹脂組成物中にセルロースアシレート(C)を含有することで、樹脂組成物の有機溶剤への溶解性が向上する。
【0059】
セルロースアシレート(C)は、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくも一部がアシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。アシル基とは、-CO-RAC(RACは、水素原子又は炭化水素基を表す。)の構造を有する基である。
【0060】
セルロースアシレート(C)は、例えば、下記の一般式(CA)で表されるセルロース誘導体である。
【0061】
【0062】
一般式(CA)中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立に、水素原子又はアシル基を表し、nは2以上の整数を表す。ただし、n個のA1、n個のA2及びn個のA3のうちの少なくとも一部はアシル基を表す。分子中にn個あるA1は、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、分子中にn個あるA2及びn個あるA3もそれぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。
【0063】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0064】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
【0065】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、炭素数1以上6以下のアシル基が好ましい。すなわち、セルロースアシレート(C)としては、アシル基の炭素数が1以上6以下であるセルロースアシレート(C)が好ましい。アシル基の炭素数が1以上6以下であるセルロースアシレート(C)は、炭素数7以上のアシル基を有するセルロースアシレート(C)に比べ、有機溶剤への溶解性が高い樹脂組成物が得られやすい。
【0066】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、酸素原子、窒素原子などで置換された基でもよいが、無置換であることが好ましい。
【0067】
A1、A2及びA3が表すアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。これらの中でもアシル基としては、有機溶剤への溶解性向上の観点から、炭素数2以上4以下のアシル基がより好ましい。
【0068】
A1、A2及びA3が表すアシル基としては、有機溶剤への溶解性向上の観点から、2種類以上のアシル基が含まれることが好ましい。
【0069】
セルロースアシレート(C)としては、セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等が挙げられる。
【0070】
セルロースアシレート(C)としては、有機溶剤への溶解性向上の観点から、セルロースジアセテート(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)の少なくとも1種がより好ましい。
【0071】
セルロースアシレート(C)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
セルロースアシレート(C)の重量平均重合度は、樹脂成形体の成形性、樹脂成形体の耐衝撃性又は樹脂成形体が靱性に優れる観点から、200以上1000以下が好ましく、500以上1000以下がより好ましく、600以上1000以下が更に好ましい。
【0073】
セルロースアシレート(C)の重量平均重合度は、以下の手順で重量平均分子量(Mw)から求める。
まず、セルロースアシレート(C)の重量平均分子量(Mw)を、テトラヒドロフランを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC-8320GPC、カラム:TSKgelα-M)にてポリスチレン換算で測定する。
次いで、セルロースアシレート(C)の構成単位分子量で除算することで、セルロースアシレート(C)の重合度を求める。例えば、セルロースアシレートの置換基がアセチル基の場合、構成単位分子量は、置換度が2.4のとき263、置換度が2.9のとき284である。
【0074】
セルロースアシレート(C)の置換度は、有機溶剤への溶解性向上の観点から、1.5以上2.9以下が好ましく、置換度1.6以上2.8以下がより好ましく、1.7以上2.7以下が更に好ましく、1.8以上2.7以下が特に好ましい。
【0075】
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)において、アセチル基とプロピオニル基との置換度の比(アセチル基/プロピオニル基)は、0.01以上1以下が好ましく、0.05以上0.1以下がより好ましい。
【0076】
セルロースアセテートブチレート(CAB)において、アセチル基とブチリル基との置換度の比(アセチル基/ブチリル基)は、0.05以上3.5以下が好ましく、0.08以上3.0以下がより好ましい。
【0077】
セルロースアシレート(C)の置換度とは、セルロースが有するヒドロキシ基がアシル基により置換されている程度を示す指標である。つまり、置換度は、セルロースアシレート(C)のアシル化の程度を示す指標となる。具体的には、置換度は、セルロースアシレートのD-グルコピラノース単位に3個あるヒドロキシ基がアシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。置換度は、1H-NMR(JMN-ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素とアシル基由来水素とのピークの積分比から求める。
【0078】
(成分(A)~成分(C)の含有量又は質量比)
-成分(A)と成分(B)との質量比((B)/(A))-
成分(A)と成分(B)との質量比((B)/(A))は、0.1以上1以下とする。
【0079】
質量比((B)/(A))が、0.1以上であると、ポリヒドロキシアルカン酸(A)及びエステル化デンプン(B)が形成する、らせん構造の表面を覆うエステル化デンプン(B)の割合が高くなる。また、質量比((B)/(A))が1以下であると、エステル化デンプン(B)同士の親和性が低下し、前記らせん状構造を取りやすい。
以上のことから、質量比((B)/(A))を0.1以上1以下とすることで、樹脂組成物の有機溶剤への溶解性が向上する。
【0080】
有機溶剤への溶解性向上の観点から、質量比((B)/(A))は、0.2以上0.80以下が好ましく、0.3以上0.7以下がより好ましい。
【0081】
-成分(A)と成分(C)との質量比((C)/(A))-
樹脂組成物が、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、を含有する場合、有機溶剤への溶解性向上の観点から、質量比((C)/(A))は、0.1以上1以下であることが好ましく、0.1以上0.7以下がより好ましい。
【0082】
-成分(B)と成分(C)との質量比((C)/(B))-
樹脂組成物が、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、を含有する場合、有機溶剤への溶解性向上の観点から、質量比((C)/(B))は、0.12以上0.55以下であることが好ましく、0.15以上0.52以下がより好ましい。
【0083】
-成分(A)の含有量-
生分解速度の向上を図る観点から、成分(A)の合計量は、樹脂組成物100質量部に対して、30質量部以上90質量部以下であることが好ましく、35質量部以上85質量部以下であることがより好ましく、38質量部以上60質量部以下であることが更に好ましい。
【0084】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、酢酸放出を防ぐための受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、樹脂組成物全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0085】
本実施形態に係る樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)以外の他の樹脂を含有していてもよい。ただし、他の樹脂を含む場合、樹脂組成物の全量に対する他の樹脂の含有量は、5質量%以下がよく、1質量%未満であることが好ましい。他の樹脂は、含有しないこと(つまり0質量%)がより好ましい。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体;ジエン-芳香族アルケニル化合物共重合体;シアン化ビニル-ジエン-芳香族アルケニル化合物共重合体;芳香族アルケニル化合物-ジエン-シアン化ビニル-N-フェニルマレイミド共重合体;シアン化ビニル-(エチレン-ジエン-プロピレン(EPDM))-芳香族アルケニル化合物共重合体;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;などが挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
(溶解度)
本実施形態に係る樹脂組成物は、液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度が30質量%以上である。
前記溶解度が30質量%以上であると、樹脂組成物の有機溶剤への溶解性が向上する。
【0087】
有機溶剤への溶解性向上の観点から、液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。
ただし、粒子製造(造粒性)の観点から、上限は、例えば、80質量%以下であることが好ましい。
【0088】
前記溶解度がX質量%以上であるか否かは手順により判断される。なお、Xとは任意の数値を示す。
測定対象の樹脂組成物X質量部と、メチルエチルケトン(100-X)質量部と、をラボランスクリュー管瓶(アズワン社製、SV110)に入れた後、超音波洗浄機(アズワン社製、ASUM-20M)にて、発振周波数40kHzの超音波を24時間付与する。ラボランスクリュー管瓶中の溶液に、樹脂組成物に由来する固形成分が残存しない場合、測定対象の樹脂組成物は、液温40℃のメチルエチルケトンに対する溶解度がX質量%以上であると判断する。
【0089】
例えば、前記溶解度が30質量%以上であるか否かの判断には、樹脂組成物30部と、メチルエチルケトン70部とを用いて、上述の手順にて測定を行う。ラボランスクリュー管瓶中の溶液に、樹脂組成物に由来する固形成分が残存しない場合、測定対象の樹脂組成物は、前記溶解度が30質量%以上であると判断する。
【0090】
なお、溶解度がY質量%以下であるか否かの判断は、上記溶解度がX質量%以上であるか否かを判断する手順を、樹脂組成物の質量部数を上げて繰り返し行うことによって行う。なお、Yとは任意の数値を示す。
そして、樹脂組成物に由来する固形成分が残存しない時の溶液濃度(質量%)の上限値を求め、その値を溶解度の上限値であるY質量%とする。
【0091】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法として、例えば、成分(A)と、成分(B)と、必要に応じて成分(C)と、必要に応じてその他の成分と、を混合し溶融混練する方法;成分(A)と、成分(B)と、必要に応じて成分(C)と、必要に応じてその他の成分と、を溶剤に溶解する方法;などが挙げられる。溶融混練の手段としては、特に制限されず、例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0092】
<樹脂成形体>
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
【0093】
ここで、プラスチックゴミの中でもマイクロビーズと呼ばれる粒状体(例えば、粒径1000μm以下の粒状体)は、各種のフィルターをすり抜けて海洋などの環境に流出し易く、レジ袋又はストローのような樹脂成形体よりも、早い生分解性が求められている。
そのため、生分解性を有する、本実施形態に係る樹脂成形体は、目的とする形状であればよいが、粒状体(以下、「樹脂粒子」とも称する)であることが好ましい。
【0094】
粒状体の体積平均粒径は、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上70μm以下がより好ましく、8μm以上60μm以下がさらに好ましい。
粒状体の粒径を3μm以上にすると、単位重量あたりの粒子の個数が多くなりすぎないため、生分解速度の低下が抑制される。一方、粒状体の粒径が100μm以下にすると、比表面積が高くなり、より生分解速度の向上が図られる。
そのため、粒状体の体積平均粒径は、上記範囲が好ましい。
【0095】
粒状体の大径側粒度分布指標GSDvは、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
【0096】
粒状体の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDvは、次の通り測定される。
LS粒度分布測定装置「Beckman Coulter LS13 320(ベックマンコールター社製)」により粒径を測定し、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を、体積平均粒径として求める。
一方、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を個数平均粒子径D50v、累積84%となる粒子径を個数粒子径D84vと定義する。そして、大径側個数粒度分布指標GSDvは、式GSDv=(D84v/D50v)1/2で算出する。
【0097】
粒状体の製造方法は、例えば、次の方法が挙げられる。
1)各成分を混練し、得られた混練物を粉砕、分級して、粒状体を得る混練粉砕法、
2)混練粉砕法にて得られた粒状体を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させ、粒状体を得る乾式製法
3)各成分の粒子分散液を混合し、分散液中の粒子を凝集、加熱融着させ、粒状体を得る凝集合一法
4)各成分を溶解した有機溶媒を水系溶媒に懸濁させて、各成分を含む粒状体を造粒する溶解懸濁法
【0098】
これらの中でも、上記範囲の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDvを有する粒状体を得る観点から、凝集合一法、溶解懸濁法等の湿式法がよい。
【0099】
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法は、形状の自由度が高い観点から、射出成形によって得られた射出成形体であってもよい。
【0100】
本実施形態に係る樹脂成形体を射出成形する際のシリンダ温度は、例えば160℃以上280℃以下であり、好ましくは180℃以上240℃以下である。本実施形態に係る樹脂成形体を射出成形する際の金型温度は、例えば40℃以上90℃以下であり、40℃以上60℃以下がより好ましい。
本実施形態に係る樹脂成形体の射出成形は、例えば、日精樹脂工業社製NEX500、日精樹脂工業社製NEX150、日精樹脂工業社製NEX7000、日精樹脂工業社製PNX40、住友機械社製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
【0101】
本実施形態に係る樹脂成形体は、他の成形方法によって得られた樹脂成形体であってもよい。他の成形方法としては、例えば、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
【0102】
本実施形態に係る樹脂成形体の用途としては、化粧品基材、ローリング剤、研磨剤、スクラブ剤、ディスプレイスペーサー、ビーズ成形用材料、光拡散粒子、樹脂強化剤、屈折率制御剤、生分解促進剤、肥料、吸水性粒子、トナー粒子の粒状体が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体は、その他、電子・電気機器、事務機器、家電製品、自動車内装材、玩具、容器などの用途に好適に用いられる。本実施形態に係る樹脂成形体の具体的な用途として、電子・電気機器又は家電製品の筐体;電子・電気機器又は家電製品の各種部品;自動車の内装部品;ブロック組み立て玩具;プラスチックモデルキット;CD-ROM又はDVDの収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などが挙げられる。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を挙げて、本実施形態に係る樹脂組成物及び樹脂成形体をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本実施形態に係る樹脂組成物及び樹脂成形体は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0104】
<各材料の準備>
次の材料を準備した。
【0105】
(成分(A))
・PHA1:カネカ「Aonilex131A」、ポリヒドロキシブチレートヘキサノエート
・PHA2:カネカ「Aonilex151X」、ポリヒドロキシブチレートヘキサノエート
・PHA3:モンサント「バイオポール#3」、ポリヒドロキシブチレート
・PHA4:ネイチャーワークス「Ingeo3001D」、ポリ乳酸
・PHA5:クレハ「Kuredux」、ポリグリコール酸
・PHA6:アルドリッチ「ポリ(2-ヒドロキシ-n-オクタン酸)」
【0106】
(成分(B))
・SE1:日本コーンスターチ「コーンポールCP-3CL-L」、酢酸及びステアリン酸でエステル化されたエステル化デンプン、酢酸によるエステル化度=1.6~1.9、ステアリン酸によるエステル化度=0.3
・SE2:以下の手順によりエステル化デンプンSE2を作製した。
デンプン「コーンスターチ(J-オイルミルズ社製、HS-7)」100g及びジメチルスルホキシド700mlを2L反応容器に入れ、80℃で4時間攪拌しデンプンを溶解させた。この溶液に、炭酸水素ナトリウム110gと、ジメチルスルホキシド75mLに溶解させたジメチルアミノピリジン5.3gとを加え、45℃になるまで攪拌後、無水プロピオン酸131gを1時間かけて滴下した。滴下後15分間攪拌し、反応液を純水3.2L中に2時間かけて滴下した。固形物を濾過後、再度純水3.2L中に投入し、洗浄した。この洗浄を4回行い、得られた固形物を60℃で72時間乾燥し、プロピオン酸でエステル化されたエステル化デンプンSE2(プロピオン酸によるエステル化度=1.4、重量平均重合度155)119gを得た。
・SE3:SE2における無水プロピオン酸を無水デカン酸に変えた以外は同様の手順によりエステル化デンプンSE3を作製した。(デカン酸によるエステル化度=1.35)
・SE4:SE2における無水プロピオン酸を無水ドデカン酸に変えた以外は同様の手順によりエステル化デンプンSE4を作製した。(ドデカン酸によるエステル化度1.35)
・SE5:SE2における無水プロピオン酸131gに加え無水ドデカン酸50gを滴下した以外は同様の手順によりエステル化デンプンSE5を作製した。(プロピオン酸によるエステル化度1.35、ドデカン酸によるエステル化度0.45)
・SE6:SE2における無水プロピオン酸131gに加え無水イコサン酸50gを滴下した以外は同様の手順によりエステル化デンプンSE6を作製した。(プロピオン酸によるエステル化度1.3、イコサン酸によるエステル化度0.3)
・SE7:SE2における無水プロピオン酸131gに加え無水ヘンイコサン酸50gを滴下した以外は同様の手順によりエステル化デンプンSE7を作製した。(プロピオン酸によるエステル化度1.3、ヘンイコサン酸によるエステル化度0.28)
【0107】
(成分(C))
・CA1:イーストマンケミカル「CAP482-20」、セルロースアセテートプロピオネート、重量平均重合度716、アセチル基置換度0.18、プロピオニル基置換度2.49。
・CA2:イーストマンケミカル「CAP381-20」、セルロースアセテートブチレート、重量平均重合度700、アセチル基置換度0.15、ブチリル基置換度1.74。
・CA3:ダイセル「L-20」、セルロースアセテート、重量平均重合度500、アセチル基置換度2.40。
【0108】
<実施例1-1~1-31、比較例1-1~1-9>
(樹脂ペレットRE1~RE31及び樹脂ペレットREC1~REC9の作製)
表1及び表2に示す仕込み組成比で、シリンダ温度を調製し、2軸混練装置(東芝機械社製、TEX41SS)にて混練を実施し、ペレット形状の樹脂RE1~RE31及び樹脂ペレットREC1~REC9(以下、樹脂ペレットRE1~RE31及び樹脂ペレットREC1~REC9と称する。)を作製した。
なお、表1及び表2中の「-」は該当する成分を含有しないこと、又は、成分(B)若しくは成分(C)を含有しないため該当する数値を算出していないことを示す。
表1及び表2中の成分(A)「質量部(対全体)」は、樹脂ペレット100質量部に対する成分(A)の含有量(質量部)を示す。
【0109】
(樹脂ペレット溶解性評価)
-溶液濃度30質量%の溶解性評価-
得られた樹脂ペレットのうち1種の樹脂ペレットを30g含んだラボランスクリュー管瓶(アズワン社製、SV110)を2つ用意した。そのうち一方のラボランスクリュー管瓶に酢酸エチルを70g加え、もう片方のラボランスクリュー管瓶にメチルエチルケトン70g加えた。超音波洗浄機(アズワン社製、ASUM-20M)にて、40℃、発振周波数40kHzの条件で24時間超音波振動を加えた。
その後、溶解したか不溶かを目視で判断した。具体的には、ラボランスクリュー管瓶中の溶液に、樹脂ペレットに由来する固形成分が残存しない場合、可溶と判断した。一方、当該溶液に、樹脂ペレットに由来する固形成分が残存する場合、不溶と判断した。
-溶液濃度50質量%の溶解性評価-
ラボランスクリュー管瓶に加える、樹脂ペレットの量、酢酸エチル及びメチルエチルケトンの量を50gに変えた以外は、溶液濃度30質量%の溶解性評価と同様の手順で、溶液濃度50質量%の溶解性評価を行った。
【0110】
<実施例2-1>
(樹脂粒子RPC1の作製)
樹脂ペレット(RE1)300質量部をメチルエチルケトン700質量部中に完全に溶解する。これを、炭酸カルシウム100質量部、カルボキシメチルセルロース4質量部、メチルエチルケトン200質量部を純水1100質量部に分散させた水系液体中に加え、3時間攪拌した。これに10質量部の水酸化ナトリウムを加え、80℃に加熱して3時間攪拌してメチルエチルケトンを除去する。残渣をろ過した後、固形分を凍結乾燥し、樹脂粒子RPC1を得た。
【0111】
<実施例2-2~2-37、比較例2-1~2-11>
(樹脂粒子RPC2~37及び樹脂粒子RPCC1~RPCC9の作製)
表3及び表4に準じて、樹脂ペレット、水系液体中への各成分量(炭酸カルシウム量、カルボキシメチルセルロース量、メチルエチルケトン量)、水系液体攪拌時間、水酸化ナトリウム添加量に変えた以外は、樹脂粒子RPC1と同様にして樹脂粒子RPC2~37及び樹脂粒子RPCC1~RPCC9を得た。
なお、比較例2-3~2-6については、樹脂ペレットがメチルエチルケトン中に完全に溶解せず、溶け残りが生じた。そのため、溶液中から溶け残った樹脂ペレットを取り除き、残った溶液を水系液体中に加えた以外は同様の手順で、樹脂粒子を作製した。
実施例において、樹脂粒子の歩留まりは平均87%であったのに対し、当該比較例の歩留まりは平均32%であった。
【0112】
(樹脂粒子RPCC10、C11の準備)
市販のセルロース系粒子、CELLULOBEADS D10(大東化成製)を樹脂粒子RPCC10、BELLOCEA(ダイセル製)を樹脂粒子RPCC11として準備した。
【0113】
(粒径、粒度分布)
既述の方法に従って、LS粒度分布測定装置 Beckman Coulter LS13 320(ベックマンコールター社製)を用いて、樹脂粒子の体積平均粒径と大径側粒度分布指標GSDvを測定した。
【0114】
(樹脂粒子溶解性評価)
-溶液濃度30質量%の溶解性評価-
得られた樹脂粒子のうち1種の樹脂粒子を3g含んだラボランスクリュー管瓶(アズワン社製、SV50)を2つ用意した。そのうち一方のラボランスクリュー管瓶に酢酸エチルを7g加え、もう片方のラボランスクリュー管瓶にメチルエチルケトン7g加えた。超音波洗浄機(アズワン社製、ASUM-20M)にて、40℃、発振周波数40kHzの条件で24時間超音波振動を加えた。
その後、溶解したか不溶かを目視で判断した。具体的には、ラボランスクリュー管瓶中の溶液に、樹脂粒子に由来する固形成分が残存しない場合、可溶と判断した。一方、当該溶液に、樹脂粒子に由来する固形成分が残存する場合、不溶と判断した。
-溶液濃度50質量%の溶解性評価-
ラボランスクリュー管瓶に加える、樹脂粒子の量、酢酸エチル及びメチルエチルケトンの量を5gに変えた以外は、溶液濃度30質量%の溶解性評価と同様の手順で、溶液濃度50質量%の溶解性評価を行った。
なお、表4中の「-」は樹脂粒子が得られなかったため、溶解性評価を行っていないことを示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
上記結果から、本実施例の樹脂組成物は、有機溶剤への溶解性が高いことがわかる。