IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液体吐出ヘッド 図1
  • 特許-液体吐出ヘッド 図2
  • 特許-液体吐出ヘッド 図3
  • 特許-液体吐出ヘッド 図4
  • 特許-液体吐出ヘッド 図5
  • 特許-液体吐出ヘッド 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240827BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 605
B41J2/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020111206
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010559
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061543(WO,A1)
【文献】特開2019-166670(JP,A)
【文献】特表2011-520671(JP,A)
【文献】特開2016-030367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0009565(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体にノズルから吐出するための吐出圧力を付与する圧力室と、
前記ノズルが平面視で重なるように配置され、前記圧力室と前記ノズルとを連通させるディセンダと、
前記ディセンダに接続された1又は複数の帰還絞り路と、
前記帰還絞り路に連通し、前記ノズルから吐出されなかった液体が集められる帰還マニホールドと、を備え、
前記ディセンダは、その深さ方向に直交する断面が長軸と短軸とを有する非正円状であると共に前記帰還絞り路が前記短軸の一端側および他端側のうち少なくとも一方に接続された部分を有し、
前記1又は複数の帰還絞り路は、前記ディセンダの前記短軸の一端から前記帰還マニホールドに向かって直線的に延在する、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記非正円状は長円形状である、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記非正円状は前記長軸と前記短軸とを互いに直交する対角線とする菱形状である、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記帰還絞り路は前記帰還マニホールドの延在方向に対して垂直に延在するよう形成されている、請求項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ディセンダは、前記深さ方向の上側に前記断面が前記非正円状に形成された第1部分を有し、前記深さ方向の下側に前記断面が正円状に形成された第2部分を有している、請求項1乃至の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、供給マニホールド(同文献ではインク供給路と記載)、個別供給路、および帰還マニホールド(同文献では循環共通流路と記載)を備えた液体吐出ヘッドが開示されている。上記個別供給路は供給マニホールドと圧力室とを連通させる。また、圧力室の下流側にディセンダ(同文献ではノズル連通路と記載)が設けられ、当該ディセンダの下流端にノズルが接続されている。このディセンダは平面視で四角形状に形成されており、当該ディセンダの中央にノズルが配置されている。
【0003】
このような構成の液体吐出ヘッドにおいて、ディセンダと帰還マニホールドとを連通させる1又は複数の帰還絞り路(同文献では循環個別流路と記載)が設けられている。ノズルから吐出されなかった液体は上記帰還絞り路を介して帰還マニホールドに流入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-188837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノズルから気泡が侵入した場合に、従来の液体吐出ヘッドにおいては当該ノズルと帰還絞り路との間隔が大きいため、上記気泡を帰還絞り路に排出し難い問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、ノズルから侵入した気泡を帰還絞り路に排出し易い液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドは、液体にノズルから吐出するための吐出圧力を付与する圧力室と、前記ノズルが平面視で重なるように配置され、前記圧力室と前記ノズルとを連通させるディセンダと、前記ディセンダに接続された1又は複数の帰還絞り路と、前記帰還絞り路に連通し、前記ノズルから吐出されなかった液体が集められる帰還マニホールドと、を備え、前記ディセンダは、その深さ方向に直交する断面が長軸と短軸とを有する非正円状であると共に前記帰還絞り路が前記短軸の一端側および他端側のうち少なくとも一方に接続された部分を有しているものである。
【0008】
本発明に従えば、ディセンダがその断面が非正円状に形成された部分を有し、帰還絞り路が当該部分の短軸の一端側および他端側のうち少なくとも一方に接続されているため、四角形状のディセンダに接続された帰還絞り路を有する従来の液体吐出ヘッドに比べて、ノズルと帰還絞り路との間隔を小さくすることができる。これによって、ノズルから侵入した気泡が、ディセンダを通流する液体から圧力を付与された後すぐに帰還絞り路に排出され易くなる。それにより、気泡の排出性が従来よりも向上する。また、帰還絞り路が短軸の一端側および他端側のうち少なくとも一方に接続されるので、長軸の方向に延在する領域をディセンダに形成することができる。そのため、ノズルまでの流路抵抗を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルから侵入した気泡を帰還絞り路に排出し易い液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置の外観を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の液体吐出ヘッドの部分的平面図である。
図3】第1実施形態の液体吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
図4】第1実施形態のディセンダおよび帰還絞り路を示す平面図である。
図5】第2実施形態のディセンダおよび帰還絞り路を示す平面図である。
図6】第3実施形態のディセンダを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図面を参照して説明する。以下に説明する液体吐出ヘッドは本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態に係る液体吐出ヘッド100を備える液体吐出装置200は、例えばインク等の液体を吐出するものである。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の液体吐出装置200は、ヘッド装着部201と、ヘッド装着部201上に設けられたハウジング202とを備えている。ヘッド装着部201には、後述する液体吐出ヘッド100が装着される。
【0014】
ハウジング202はサブハウジング203,204を有している。サブハウジング203とサブハウジング204とは、これらのサブハウジング203,204の上部が支持構造体205に接続されていることで互いに向かい合って固定されている。サブハウジング203,204は例えば厚みが薄く箱状に形成されている。
【0015】
サブハウジング204は、その上部に液体入口207を有し、その下部に液体出口208を有している。液体入口207から流入された液体は、サブハウジング204で濾過された後、液体出口208からヘッド装着部201内の流路(液体吐出ヘッド100に繋がる流路)に送出される。
【0016】
一方、サブハウジング203は、その上部に液体出口206を有し、その下部に液体入口209を有している。ヘッド装着部201内の流路から送出される液体は液体入口209からサブハウジング203内に入る。そして、液体はサブハウジング203で濾過された後、液体出口206と液体入口207との間に設けられた図略のポンプの圧力によって液体出口206から液体入口207に戻ることで循環されるようになっている。
【0017】
続いて、本実施形態の液体吐出ヘッド100の構成について、部分的平面図および断面図を参照しながら説明する。
【0018】
図2は本実施形態の液体吐出ヘッド100の部分的平面図である。液体吐出ヘッド100は、図2に示すように、液体流路として供給マニホールド41、連通孔42、供給絞り路47、圧力室43、ディセンダ44、ノズル31、帰還絞り路45、および帰還マニホールド46を備えている。
【0019】
供給マニホールド41と帰還マニホールド46とは幅方向(本明細書においてこの幅方向を左右方向とも言う。この場合、帰還マニホールド46の側を左側とし、供給マニホールド41の側を右側とする。)に互いに離間して配置される。供給マニホールド41および帰還マニホールド46はそれぞれ配列方向(本明細書においてこの配列方向を前後方向とも言う。)に延在する。また、圧力室43は配列方向に沿って並設されている。したがって、各圧力室43に対応して設けられるノズル31も配列方向に沿って並設されている。詳細な説明は後でするが、供給マニホールド41からの液体は連通孔42、供給絞り路47、圧力室43、ディセンダ44を介してノズル31より吐出されるようになっている。また、本実施形態では1つのディセンダ44に対して2つの帰還絞り路45が接続されている。なお、図2では10個の圧力室43が図示されているが当該圧力室43の数はこれに限定されるものではない。
【0020】
図3は本実施形態の液体吐出ヘッド100の構成を示す断面図である。図3に示すように、液体吐出ヘッド100は、圧電素子56、絶縁膜52、振動板51、流路形成体40、およびノズルプレート30を備えている。なお、ノズルプレート30、流路形成体40、振動板51、絶縁膜52、および圧電素子56の順で積層されている。
【0021】
ノズルプレート30には平面視で例えば正円状のノズル31が設けられている。ノズル31はノズルプレート30を積層方向(本明細書においてこの積層方向を上下方向とも言う。この場合、ノズルプレート30の側を下側とし、圧電素子56の側を上側とする。)に貫通し形成されている。なお、ノズル31は1枚のノズルプレート30で形成されているが、2枚以上のプレートで形成してもよい。
【0022】
次いで、流路形成体40は複数のプレートの積層体で形成される。なお、図3においては流路形成体40における複数層の図示を省略している。流路形成体40の各プレートには、大小様々な孔および溝が形成されている。流路形成体40の各プレートに形成された孔および溝が組み合わされて、供給マニホールド41、連通孔42、供給絞り路47、圧力室43、ディセンダ44、帰還絞り路45、および帰還マニホールド46が液体流路として形成されている。
【0023】
供給マニホールド41と帰還マニホールド46とは、流路形成体40の幅方向において互いに離間した状態で、それぞれ幅方向に直交する方向である配列方向に延在している。
【0024】
供給マニホールド41にはノズル31により吐出するための液体が供給される。なお、液体は図略の供給統合流路から供給マニホールド41に供給される。また、図3では供給マニホールド41の断面積を帰還マニホールド46の断面積よりも大きくしているが、これに限らず、供給マニホールド41の断面積と帰還マニホールド46の断面積とを略等しくしてもよい。この場合、供給マニホールド41および帰還マニホールド46は互いに等しいサイズおよび形状を有してもよい。
【0025】
連通孔42は供給マニホールド41の上方に形成されている。連通孔42の幅は供給マニホールド41の幅よりも小さい。この連通孔42の上流端は供給マニホールド41の上面に接続されている。
【0026】
供給絞り路47は連通孔42よりも上方に形成されている。供給絞り路47は幅方向に延在している。供給絞り路47は連通孔42の左方に延在している。この供給絞り路47の上流端は連通孔42の下流端に接続されている。また、供給絞り路47の前後方向(配列方向)の長さは圧力室43の同方向の長さよりも短く絞られている。これは、圧電素子56の変形によって供給絞り路47から供給マニホールド41に液体が逆流しないように流路抵抗を高くする必要があるためである。
【0027】
圧力室43はノズル31から吐出するための吐出圧力を液体に付与する。圧力室43は供給絞り路47の左方に形成されている。この圧力室43の上流端は供給絞り路47の下流端に接続されている。
【0028】
ディセンダ44はその上流端から下流端にかけて積層方向に延在するように形成されている。ディセンダ44の上流端は圧力室43の下流端に接続されている。また、ディセンダ44の下流端はノズル31に接続されている。これにより、ディセンダ44は圧力室43とノズル31とを連通させている。本実施形態において、ディセンダ29の断面積は、積層方向に一定であってもよいし、変化してもよい。ディセンダ29の断面積が積層方向に変化する態様の場合、積層方向の上部から下部に近付くほどその断面積が徐々に小さくなってもよい。
【0029】
ノズル31は平面視でディセンダ44と重なるように配置されている。すなわち、ノズル31は積層方向においてディセンダ44に重なるように配置されている。ノズル31は、圧力室43により吐出圧力が付与された液体を吐出する。なお、図3ではノズル31から侵入した気泡をAbで示している。
【0030】
本実施形態においては、ディセンダ44には複数の帰還絞り路45が接続されている。詳細については後で述べるが、2つの帰還絞り路45がディセンダ44に接続されている。このような帰還絞り路45は幅方向に延在する部分を有している。帰還絞り路45の上流端はディセンダ44の下流端に接続され、当該帰還絞り路45の下流端は帰還マニホールド46の側面に接続されている。これにより、帰還絞り路45はディセンダ44と帰還マニホールド46とを連通させている。
【0031】
帰還マニホールド46には、ノズル31から吐出されなかった液体が集められる。なお、帰還マニホールド46の液体は図略の帰還統合流路に流れるようになっている。
【0032】
振動板51は、流路形成体40の上に積層されており、圧力室43の上端を覆っている。
【0033】
圧電素子56は、絶縁膜52を介して振動板51の上方に配置されている。圧電素子56は、共通電極53、圧電層54および個別電極55を含む。共通電極53、圧電層54および個別電極55はこの順で積層されている。
【0034】
共通電極53は、絶縁膜52を介して振動板51の全面を覆っている。圧電層54は、圧力室43ごとに設けられ、当該圧力室43に重なるように共通電極53上に配置されている。個別電極55は、圧力室43ごとに設けられ、圧電層54上に配置されている。1つの個別電極55、共通電極53および両電極で挟まれた部分の圧電層54(活性部)により、1つの圧電素子56が構成されている。
【0035】
個別電極55は図略のドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、図略の制御部から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極55に印加する。これに対して、共通電極53は常にグランド電位に保持されている。
【0036】
このような構成において、圧電層54の活性部は駆動信号に応じて2つの電極53,55と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板51が協働して変形し、圧力室43の容積を増減する方向に変化する。これによって、液体をノズル31から吐出させる吐出圧力が圧力室43に付与されるようになっている。
【0037】
以上のような構成を有する液体吐出ヘッド100においては、液体は図略の供給統合流路から供給マニホールド41に流入する。次いで、液体は供給マニホールド41から連通孔42および供給絞り路47を介して圧力室43に流入する。そして、液体は、ディセンダ44を上流端から下流端へ向かって流れ、ノズル31に流入する。ここで、圧電素子56によって圧力室43に吐出圧力が付与されると、液体はノズル31から吐出される。一方、ノズル31から吐出されなかった液体は、各帰還絞り路45を介して帰還マニホールド46に流入する。その後、液体は帰還マニホールド46から図略の帰還統合流路に流入するようになっている。
【0038】
続いて、本実施形態におけるディセンダ44および当該ディセンダ44に接続された帰還絞り路45の形状について、図面を参照しつつ説明する。
【0039】
図4は本実施形態におけるディセンダ44および帰還絞り路45を示す平面図である。なお、図4は液体の流路のみを示し、当該流路を形成する部位の図示は省略されている。後記の図5および図6についても同様とする。
【0040】
図4に示すように、本実施形態のディセンダ44は、その深さ方向に直交する断面が長軸L1と短軸L2とを有する非正円状に形成されている。具体的には、ディセンダ44は長円形状(トラック形状とも呼ぶことがある)に形成されている。なお、長軸L1は例えば100~200μmであり、短軸L2は例えば50~100μmである。
【0041】
ノズル31は、平面視でディセンダ44の内側に位置するよう配置される。ノズル31は、平面視でその中心がディセンダ44の長軸L1と短軸L2との交点に一致するように配置されている。この場合、本実施形態では、ノズル31の直径はディセンダ44の短軸L2の長さよりも短くなっている。
【0042】
ディセンダ44の短軸L2の一端側(配列方向の前側)および他端側(配列方向の後側)に、それぞれ上述の帰還絞り路45が接続されている。本実施形態において、各帰還絞り路45は、配列方向に沿って直線状に形成された部分45aと、当該部分45aの下流端に接続されると共に幅方向の帰還マニホールド46側に向かって屈曲した部分45bとを有している。
【0043】
上述の通り、帰還絞り路45がディセンダ44の短軸L2の一端側および他端側に接続されているので、当該ノズル31と当該ディセンダ44に接続された各帰還絞り路45との距離を従来よりも短くすることができる。このような構成により、ノズル31から侵入した気泡Abが、ディセンダ44を通流する液体から圧力を付与された後すぐに各帰還絞り路45に排出され易くなっている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の液体吐出ヘッド100によれば、ノズル31が平面視でその中心が長円形状のディセンダ44の長軸L1と短軸L2との交点に一致するように配置される。そして、帰還絞り路45がディセンダ44の短軸L2の一端側および他端側に接続されている。このような構成により、四角形状のディセンダに接続された帰還絞り路を有する従来の液体吐出ヘッドに比べて、ノズル31と各帰還絞り路45との間隔を小さくすることができる。これによって、ノズル31から侵入した気泡Abが、ディセンダ44を通流する液体から圧力を付与された後すぐに各帰還絞り路45に排出され易くなる。それにより、気泡Abの排出性が従来よりも向上する。また、当該ディセンダ44は、長軸L1の方向に延在する。そのため、圧力室43からノズル31までの流路抵抗を小さくすることができ、圧電素子56の変形による吐出圧力を効率よくノズル31に伝えることができる。
【0045】
また、本実施形態では、帰還絞り路45が屈曲した部分45bを有するように構成したので、帰還マニホールド46に向かって直線状に延在する帰還絞り路に比べて流路抵抗を大きくすることができ、圧電素子56の変形による吐出圧力を帰還絞り路45に大きく逃がすことなく効率よくノズル31に伝えることができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態におけるディセンダ44Aおよび帰還絞り路45Aについて説明する。
【0047】
図5に示すように、第2実施形態のディセンダ44Aは、その深さ方向に直交する断面が長軸L1と短軸L2とを有する非正円状に形成されている。具体的には、ディセンダ44Aは長軸L1と短軸L2とを互いに直交する対角線とする菱形状に形成されている。
【0048】
ノズル31は、平面視で上記ディセンダ44Aの内側に位置するよう配置される。ノズル31は、平面視でその中心がディセンダ44の長軸L1と短軸L2との交点に一致するように配置されている。この場合、ノズル31の直径はディセンダ44Aの短軸L2の長さよりも短くなっている。
【0049】
ディセンダ44Aの短軸L2の一端側(配列方向の前側)および他端側(配列方向の後側)に、それぞれ帰還絞り路45Aが接続されている。本実施形態において、各帰還絞り路45Aは直線状に形成されている。また、各帰還絞り路45Aは、帰還マニホールド46の方へ向かって当該帰還マニホールド46の延在方向(つまり配列方向)に対して垂直に延在するように形成されている。また、ディセンダ44Aおよび各帰還絞り路45Aを含む個別流路の長さ(配列方向の長さ)Laは、例えば50~200μm程度である。
【0050】
上述の通り、帰還絞り路45がディセンダ44Aの短軸L2の一端側および他端側に接続されているので、当該ノズル31と当該ディセンダ44Aに接続された各帰還絞り路45Aとの距離を従来よりも短くすることができる。このような構成により、ノズル31から侵入した気泡Abが、ディセンダ44Aを通流する液体から圧力を付与された後すぐに各帰還絞り路45Aに排出され易くなっている。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、ノズル31が平面視でその中心が菱形状のディセンダ44Aの長軸L1と短軸L2との交点に一致するように配置される。そして、帰還絞り路45Aがディセンダ44Aの短軸L2の一端側および他端側に接続されている。このような構成により、正四角形状のディセンダに接続された帰還絞り路を有する従来の液体吐出ヘッドに比べて、ノズル31と各帰還絞り路45Aとの間隔を小さくすることができる。これによって、ノズル31から侵入した気泡Abが、ディセンダ44Aを通流する液体から圧力を付与された後すぐに各帰還絞り路45Aに排出され易くなる。それにより、気泡Abの排出性が従来よりも向上する。また、当該ディセンダ44Aが長軸L1の方向に延在する。そのため、圧力室43からノズル31までの流路抵抗を小さくすることができ、圧電素子56の変形による吐出圧力を効率よくノズル31に伝えることができる。
【0052】
また、本実施形態では、各帰還絞り路45Aが帰還マニホールド46の方へ向かって当該帰還マニホールド46の延在方向に対して垂直に延在するように直線状に形成されている。これにより、隣り合うディセンダ44A間の距離を短くすることができる。そのため、ノズル31の高密度化を図ることができる。
【0053】
<第3実施形態>
次に説明するようなディセンダを採用してもよい。以下、第3実施形態におけるディセンダ44Bについて説明する。
【0054】
図6に示すように、本実施形態のディセンダ44Bは、その深さ方向の上側に設けられて非正円状としての長円形状に形成された第1部分140と、深さ方向の下側に設けられて正円状に形成された第2部分141と、第1部分140と第2部分141とを繋ぐ中間部分142とを有している。この中間部分142は、ディセンダ44Bの深さ方向の上方から下方にかけて第1部分140の長軸L1の長さが最終的にその短軸L2の長さと同等となるよう徐変されることにより形成される。なお、帰還絞り路45は、ディセンダ44Bの第2部分141に接続され、上述の図4又は図5と同様の形状にしてもよい。
【0055】
以上の本実施形態のディセンダ44Bによれば、第1および第2実施形態と同じ様に気泡Abの排出性が従来よりも向上する。また、ディセンダ44Bの深さ方向の上方から下方にかけて流路抵抗を上げることが可能で、液体の吐出力を上げることができる。それにより、高い粘度を有する液体であっても吐出し易くなる。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0057】
上記実施形態では、ディセンダ44を非正円状として長円形状に形成することとしたが、これに限定されるものではなく、ディセンダ44を楕円状に形成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ディセンダ44の短軸L2の一端側(配列方向の前側)および他端側(配列方向の後側)にそれぞれ帰還絞り路45が接続される態様を採用したが、これに限らず、ディセンダ44の短軸L2の一端側および他端側の少なくとも一方に帰還絞り路45を接続してもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、ディセンダ44Bがその深さ方向の上側に第1部分140を有し、その深さ方向の下側に第2部分141を有することとしたが、これに限らず、深さ方向の上側に第2部分141を有し、その下側に第1部分140を有してもよい。この場合、下側に配置された第1部分140の短軸側に帰還絞り路が接続される。
【符号の説明】
【0060】
31 ノズル
43 圧力室
44,44A,44B ディセンダ
45,45A 帰還絞り路
45b 帰還絞り路の屈曲した部分
46 帰還マニホールド
100 液体吐出ヘッド
140 ディセンダの第1部分
141 ディセンダの第2部分
L1 長軸
L2 短軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6