(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】アルカリニオブ酸系膜形成用組成物およびそれを含有する液組成物
(51)【国際特許分類】
H10N 30/853 20230101AFI20240827BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H10N30/853
C09D1/00
(21)【出願番号】P 2020113187
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】板子 典史
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-213664(JP,A)
【文献】特開2019-220638(JP,A)
【文献】特開2003-083855(JP,A)
【文献】特開2012-169467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/853
C09D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフテン酸アルカリ金属塩と、ニオブペンタエトキシドとを含み、前記ナフテン酸アルカリ金属塩が、酸価が120~250mgKOH/gであるナフテン酸のアルカリ金属塩である
、アルカリニオブ酸系膜形成用組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載のアルカリニオブ酸系膜形成用組成物100質量部に対し、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、およびエステル系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒50~2000質量部を含むことを特徴とする、アルカリニオブ酸系膜形成用液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリニオブ酸系膜形成用組成物およびそれを含有する液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料は電気エネルギーと機械エネルギーを変換できる材料であり、センサーやアクチュエーターなどの微小電気機械システム(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)に搭載され、幅広く利用されている。圧電材料としてはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が性能の高さから古くから用いられてきたが、人体や環境に負荷の大きい鉛を含むために代替材料の開発が望まれている。
【0003】
PZT代替の非鉛材料として最も注目されているものにアルカリニオブ酸系ペロブスカイトがある。これはABO3の化学式を持つペロブスカイト型結晶において、Aサイトにリチウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオン、Bサイトにニオブイオンが配置するものであり、代表的なものに(Na0.5K0.5)NbO3(NKN)やリチウムイオンをドープしたLNKNがある。
【0004】
アルカリニオブ酸系ペロブスカイトの形成方法としては、各金属材料を含むアルカリニオブ酸系膜形成用塗布液を基板に塗布し、焼成して酸化物を生成する湿式法が挙げられる。
【0005】
特許文献1ではナトリウム、カリウムおよびニオブをそれぞれ含む金属アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などの金属錯体混合物と、シリコーンオイル、およびこれらを溶解または分散させる溶媒とを用いている。
【0006】
特許文献2ではCnH2n+1COOH(4≦n≦8)で示されるカルボン酸のカリウム塩およびナトリウム塩と、ニオブのアルコキシドまたは前記カルボン酸金属塩と、主溶媒として前記カルボン酸を用いている。
【0007】
これらの材料は焼成によりNKN膜が得られるが、有機物の完全除去や結晶成長などを目的としてアニーリングを行う際に、高温での保持時間が数時間に及ぶ場合があり、焼成膜にクラックを生じることがあった。また、低級カルボン酸は揮発性や反応性が比較的高く、基板等の材料や装置を腐食する虞があり、汎用的な溶剤に対する溶解性が高い膜形成材料で、高温に長時間保持されても焼成膜にクラックを生じないような膜形成材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-169467号公報
【文献】特開2019-220638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、様々な溶剤を用いることができ、クラックの少ない膜が形成できるアルカリニオブ酸系膜形成用組成物および膜形成用液組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、ナフテン酸アルカリ金属塩と有機ニオブ化合物とを用いることで、安全性の高い様々な溶剤に溶解し、クラックの少ない膜が形成できる膜形成用組成物および膜形成用液組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1] ナフテン酸アルカリ金属塩と、ニオブアルコキシドまたはカルボン酸ニオブ塩とを含むことを特徴とする、アルカリニオブ酸系膜形成用組成物。
[2] [1]に記載のアルカリニオブ酸系膜形成用組成物100質量部に対し、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、およびエステル系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒50~2000質量部を含むことを特徴とする、アルカリニオブ酸系膜形成用液組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は、様々な溶剤を用いて緻密な膜が得られるため、非鉛圧電材料であるアルカリニオブ酸系ペロブスカイト薄膜の形成用材料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例2で作製した焼成膜の表面の電子顕微鏡写真である(左:20分焼成、右:120分焼成)。
【
図2】比較例1で作製した焼成膜の表面の電子顕微鏡写真である(左:20分焼成、右:120分焼成)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、さらに詳細を説明する。
【0015】
(ナフテン酸アルカリ金属塩)
本発明では、ナフテン酸アルカリ金属塩が用いられる。本発明で用いられるナフテン酸は特に限定されない。
【0016】
ナフテン酸の酸価が高いとカルボン酸の量が多くなり、金属含有量を高くすることができる。また酸価が低いとナフテン酸アルカリ金属塩の極性が低くなるために、溶剤溶解性が高くなる。この観点から、ナフテン酸の酸価は120~250mgKOH/gであることが好ましく、130~240mgKOH/gであることがより好ましく、145~220mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0017】
ナフテン酸アルカリ金属塩は、熱分解温度以上に加熱することで、金属酸化物を形成する。この加熱時に、より高温において発熱反応を起こすことで、残留有機物の熱分解が促進される。この観点から、本発明で用いられるナフテン酸アルカリ金属塩は、例えば空気下での燃焼において500~600℃に熱分解温度があることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる、ナフテン酸と塩を形成するアルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。すなわち、ナフテン酸アルカリ金属塩としては、ナフテン酸リチウム、ナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸カリウムなどが挙げられる。
【0019】
本発明で用いられるナフテン酸のアルカリ金属塩は単独あるいは2種類以上のものを併用してもよい。好適なナフテン酸アルカリ金属塩としては、ナフテン酸ナトリウムおよびナフテン酸カリウムの組合せ、ナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、およびナフテン酸リチウムの組合せが挙げられる。
【0020】
ナフテン酸アルカリ金属塩の製造方法は、ナフテン酸にアルカリ金属またはアルカリ金属水酸化物を反応させる方法などが挙げられるが、いずれの方法でも差し支えない。ナフテン酸アルカリ金属塩の製造は水溶液中で行ってもよく、有機溶剤中で行ってもよく、または無溶媒で行ってもよい。例えば、ナフテン酸とアルカリ金属水酸化物の水溶液との混合物を加熱しながら撹拌し、水分を除去することにより、ナフテン酸アルカリ金属塩を製造することができる。
【0021】
(有機ニオブ化合物)
本発明で用いられる有機ニオブ化合物は、ニオブアルコキシドまたはカルボン酸ニオブ塩である。カルボン酸ニオブ塩におけるカルボン酸は、ナフテン酸アルカリ金属塩で用いたナフテン酸と同一でもよく、異なっていてもよく、単独で、または2種類以上のものを併用してもよい。ニオブアルコキシドとしては、ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタメトキシド、ニオブペンタプロポキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタブトキシド、ニオブペンタイソブトキシドなどが挙げられる。カルボン酸ニオブ塩としては、炭素数2~10のカルボン酸のニオブ塩、例えば、酢酸ニオブ、プロピオン酸ニオブ、ブタン酸ニオブ、ヘキサン酸ニオブ、ヘプタン酸ニオブ、オクタン酸ニオブ、2-エチルヘキサン酸ニオブ、ノナン酸ニオブ、イソノナン酸ニオブ、デカン酸ニオブ、ネオデカン酸ニオブなどが挙げられる。本発明で用いられる有機ニオブ化合物としては、ニオブアルコキシドが好ましい。その中でも、ニオブペンタエトキシドが特に好ましい。
【0022】
(溶媒)
本発明で用いられる溶媒は炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、およびエステル系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒であることが好ましい。本発明で用いられる溶媒は単独あるいは2種類以上のものを併用してもよい。炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、ミネラルスピリットなどが挙げられる。アルコール系溶剤としては、テルピネオール、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。エーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる溶媒は特に限定されないが、水酸基などの極性基を有するものがナフテン酸アルカリ金属塩の溶解性が高くなるために好ましい。本発明で用いられる溶媒としては、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、およびエーテル系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒がより好ましく、アルコール系溶剤およびエーテル系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒がさらに好ましい。具体的には、例えば、トルエン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤、テルピネオール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶剤等が例示できる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0024】
本発明における膜形成用液組成物は、膜形成用組成物100質量部に対して前記溶媒を50~2000質量部含むことが好ましく、100~1500質量部がより好ましい。
【0025】
溶媒量が膜形成用組成物100質量部に対して50質量部よりも低いと沈殿を生じる恐れがあり、2000質量部よりも高いと金属含有量が低下し、得られる焼成膜が薄くなって生産性が低下する。
【0026】
(膜形成用液組成物)
本発明の膜形成用液組成物は、アルカリニオブ酸系ペロブスカイト膜を形成するための焼成用液として好適である。
【0027】
アルカリニオブ酸系ペロブスカイトにおける金属モル比は、本発明のナフテン酸アルカリ金属塩と有機ニオブ化合物(ニオブアルコキシドまたはカルボン酸ニオブ塩)の組成により調整することができる。
【0028】
アルカリニオブ酸系ペロブスカイト膜の形成方法としては、熱分解温度以上に加熱させる焼成法や、高湿度高圧下で強制的に加水分解させる水熱合成法などが挙げられる。
【0029】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の溶剤や添加剤を併用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0031】
(製造例1)
フラスコにナフテン酸(大和油脂工業製NY-145、酸価145mgKOH/g)を10.0gと48%水酸化ナトリウム水溶液2.2gを加え、130℃に加熱しながら攪拌し、水分を除去してナフテン酸ナトリウムを10.6g得た。
【0032】
(製造例2)
製造例1と同様の方法で、ナフテン酸(大和油脂工業製NY-180、酸価180mgKOH/g)と48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてナフテン酸ナトリウムを得た。
【0033】
(製造例3)
製造例1と同様の方法で、ナフテン酸(大和油脂工業製NY-220、酸価220mgKOH/g)と48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてナフテン酸ナトリウムを得た。
【0034】
(製造例4)
製造例1と同様の方法で、ナフテン酸(大和油脂工業製NY-145、酸価145mgKOH/g)と48%水酸化カリウム水溶液を用いてナフテン酸カリウムを得た。
【0035】
(製造例5)
製造例1と同様の方法で、ナフテン酸(大和油脂工業製NY-180、酸価180mgKOH/g)と48%水酸化カリウム水溶液を用いてナフテン酸カリウムを得た。
【0036】
(製造例6)
製造例1と同様の方法で、ナフテン酸(大和油脂工業製NY-220、酸価220mgKOH/g)と48%水酸化カリウム水溶液を用いてナフテン酸カリウムを得た。
【0037】
(製造例7)
製造例1と同様の方法で、ナフテン酸(大和油脂工業製NY-145、酸価145mgKOH/g)と10%水酸化リチウム水溶液を用いてナフテン酸リチウムを得た。
【0038】
(製造例8)
製造例1と同様の方法で、ナフテン酸(大和油脂工業製NY-180、酸価180mgKOH/g)と10%水酸化リチウム水溶液を用いてナフテン酸リチウムを得た。
【0039】
(製造例9)
製造例1と同様の方法で、ナフテン酸(大和油脂工業製NY-220、酸価220mgKOH/g)と10%水酸化リチウム水溶液を用いてナフテン酸リチウムを得た。
【0040】
(製造例10)
製造例1と同様の方法で、オクタン酸(日油製NAA-82、酸価390mgKOH/g)と48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてオクタン酸ナトリウムを得た。
【0041】
(製造例11)
製造例1と同様の方法で、オクタン酸(日油製NAA-82、酸価390mgKOH/g)と48%水酸化カリウム水溶液を用いてオクタン酸カリウムを得た。
【0042】
(製造例12)
製造例1と同様の方法で、2-エチルヘキサン酸(東京化成工業製、酸価390mgKOH/g)と48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて2-エチルヘキサン酸ナトリウムを得た。
【0043】
(製造例13)
製造例1と同様の方法で、2-エチルヘキサン酸(東京化成工業製、酸価390mgKOH/g)と48%水酸化カリウム水溶液を用いて2-エチルヘキサン酸カリウムを得た。
【0044】
(製造例14)
製造例1と同様の方法で、イソステアリン酸(東京化成工業製、酸価197mgKOH/g)と48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてイソステアリン酸ナトリウムを得た。
【0045】
(製造例15)
製造例1と同様の方法で、イソステアリン酸(東京化成工業製、酸価197mgKOH/g)と48%水酸化カリウム水溶液を用いてイソステアリン酸カリウムを得た。
【0046】
製造例1~15で製造したカルボン酸アルカリ金属塩の熱分解温度については、30~600℃の温度範囲で、空気雰囲気下、10℃/分の昇温速度条件にて熱重量分析を行うことにより測定した。ベースライン接線と、急激に重量減少が収まっているチャート部分での変曲点の接線とが、交叉する温度(℃)を熱分解温度とした。結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
・カルボン酸アルカリ金属塩に対する溶剤の溶解必要量
製造例1~15で製造したカルボン酸アルカリ金属塩1.0gに対して、溶剤を0.5gずつ(最大で20.0gまで)加えて90℃で加熱攪拌し、室温に戻して、均一な溶液となるか確認した。均一な溶液が得られた溶剤量(g)を、カルボン酸アルカリ金属塩に対する溶剤の溶解必要量(倍)とした。20.0g加えても均一な溶液が得られない場合は、その溶剤には不溶であると判定した。
【0049】
(参考例1)
製造例1のナフテン酸ナトリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0050】
(参考例2)
製造例2のナフテン酸ナトリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0051】
(参考例3)
製造例3のナフテン酸ナトリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、1.0倍であった。
【0052】
(参考例4)
製造例4のナフテン酸カリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0053】
(参考例5)
製造例5のナフテン酸カリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0054】
(参考例6)
製造例6のナフテン酸カリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、1.0倍であった。
【0055】
(参考例7)
製造例7のナフテン酸リチウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0056】
(参考例8)
製造例8のナフテン酸リチウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、1.0倍であった。
【0057】
(参考例9)
製造例9のナフテン酸リチウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、1.0倍であった。
【0058】
(参考例10)
製造例10のオクタン酸ナトリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、20.0倍までに均一な溶液は得られなかった。
【0059】
(参考例11)
製造例11のオクタン酸カリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、20.0倍までに均一な溶液は得られなかった。
【0060】
(参考例12)
製造例12の2-エチルヘキサン酸ナトリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、1.0倍であった。
【0061】
(参考例13)
製造例13の2-エチルヘキサン酸カリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、1.0倍であった。
【0062】
(参考例14)
製造例14のイソステアリン酸ナトリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、20.0倍までに均一な溶液は得られなかった。
【0063】
(参考例15)
製造例15のイソステアリン酸カリウムに対するエチルセロソルブの溶解必要量を確認すると、20.0倍までに均一な溶液は得られなかった。
【0064】
(参考例16)
製造例1のナフテン酸ナトリウムに対するテルピネオールの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0065】
(参考例17)
製造例2のナフテン酸ナトリウムに対するテルピネオールの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0066】
(参考例18)
製造例3のナフテン酸ナトリウムに対するテルピネオールの溶解必要量を確認すると、5.0倍であった。
【0067】
(参考例19)
製造例1のナフテン酸ナトリウムに対するトルエンの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0068】
(参考例20)
製造例2のナフテン酸ナトリウムに対するトルエンの溶解必要量を確認すると、5.0倍であった。
【0069】
(参考例21)
製造例3のナフテン酸ナトリウムに対するトルエンの溶解必要量を確認すると、5.0倍であった。
【0070】
(参考例22)
製造例1のナフテン酸ナトリウムに対するミネラルスピリットの溶解必要量を確認すると、0.5倍であった。
【0071】
(参考例23)
製造例2のナフテン酸ナトリウムに対するミネラルスピリットの溶解必要量を確認すると、2.5倍であった。
【0072】
(参考例24)
製造例3のナフテン酸ナトリウムに対するミネラルスピリットの溶解必要量を確認すると、5.0倍であった。
【0073】
結果を表2に示す。製造例1~9で製造したナフテン酸アルカリ金属塩は、汎用的な溶剤に溶解し得ることが確認された。
【0074】
【0075】
・膜形成用液組成物の調製と焼成膜の作製
【0076】
(実施例1)
フラスコに製造例1で得たナフテン酸ナトリウムと、製造例4で得たナフテン酸カリウムと、ニオブペンタエトキシド(富士フイルム和光純薬製)を金属モル比Na:K:Nb=0.5:0.5:1.0となるように加え、これを膜形成組成物とした。次に、膜形成組成物100質量%に対して130質量%のエチルセロソルブを加えて液組成物を調製した。得られた液組成物は透明溶液であり、灰分は10.0%であった。
上記で得られた液組成物をSi基板に20μl滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行い、120℃10分乾燥した。そのあと電気炉にて600℃、空気雰囲気、昇温速度50℃/分、保持時間20分または120分で焼成を行った。
【0077】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、フラスコに製造例2で得たナフテン酸ナトリウムと、製造例5で得たナフテン酸カリウムと、ニオブペンタエトキシド(富士フイルム和光純薬製)から膜形成組成物を調製し、これに対してエチルセロソルブを160質量%用いて、液組成物を調製した。得られた液組成物は透明溶液であり、灰分は10.0%であった。
実施例1と同様の方法で焼成膜を作製した。
【0078】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、フラスコに製造例3で得たナフテン酸ナトリウムと、製造例6で得たナフテン酸カリウムと、ニオブペンタエトキシド(富士フイルム和光純薬製)から膜形成組成物を調製し、これに対してエチルセロソルブを190質量%用いて、液組成物を調製した。得られた液組成物は透明溶液であり、灰分は10.0%であった。
実施例1と同様の方法で焼成膜を作製した。
【0079】
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、フラスコに製造例2で得たナフテン酸ナトリウムと、製造例5で得たナフテン酸カリウムと、製造例8で得られたナフテン酸リチウムと、ニオブペンタエトキシド(富士フイルム和光純薬製)を金属モル比Li:Na:K:Nb=0.1:0.45:0.45:1.0となるように加えて膜形成組成物を調製し、これに対してエチルセロソルブを160質量%用いて、液組成物を調製した。得られた液組成物は透明溶液であり、灰分は10.0%であった。
実施例1と同様の方法で焼成膜を作製した。
【0080】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で、フラスコに製造例2で得たナフテン酸ナトリウムと、製造例5で得たナフテン酸カリウムと、ニオブペンタエトキシド(富士フイルム和光純薬製)から膜形成組成物を調製し、これに対してテルピネオールを160質量%用いて、液組成物を調製した。得られた液組成物は透明溶液であり、灰分は10.0%であった。
実施例1と同様の方法で焼成膜を作製した。
【0081】
(実施例6)
実施例1と同様の方法で、フラスコに製造例2で得たナフテン酸ナトリウムと、製造例5で得たナフテン酸カリウムと、ニオブペンタエトキシド(富士フイルム和光純薬製)から膜形成組成物を調製し、これに対してトルエンを160質量%用いて、液組成物を調製した。得られた液組成物は透明溶液であり、灰分は10.0%であった。
実施例1と同様の方法で焼成膜を作製した。
【0082】
(実施例7)
実施例1と同様の方法で、フラスコに製造例2で得たナフテン酸ナトリウムと、製造例5で得たナフテン酸カリウムと、ニオブペンタエトキシド(富士フイルム和光純薬製)から膜形成組成物を調製し、これに対してミネラルスピリットを160質量%用いて、液組成物を調製した。得られた液組成物は透明溶液であり、灰分は10.0%であった。
実施例1と同様の方法で焼成膜を作製した。
【0083】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、フラスコに製造例12で得た2-エチルヘキサン酸ナトリウムと、製造例13で得た2-エチルヘキサン酸カリウムと、ニオブペンタエトキシド(富士フイルム和光純薬製)から膜形成組成物を調製し、これに対してエチルセロソルブを250質量%用いて、液組成物を調製した。得られた液組成物は透明溶液であり、灰分は10.0%であった。
実施例1と同様の方法で焼成膜を作製した。
【0084】
(焼成膜の成膜評価)
走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM-IT300HR)を用いて、焼成膜の表面を500倍で観察し、256μm×192μmの視野におけるクラック(亀裂、傷)の個数を計測した。クラックが0個の場合に◎、1~3個の場合に〇、4個以上の場合に×と評価した。
【0085】
結果を表3に示す。実施例2で作製した焼成膜の表面の電子顕微鏡写真を
図1に示す(左:20分焼成、右:120分焼成)。比較例1で作製した焼成膜の表面の電子顕微鏡写真を
図2に示す(左:20分焼成、右:120分焼成)。2-エチルヘキサン酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、およびニオブペンタエトキシドから調製した比較例1の焼成膜では、120分焼成後、クラックの発生が確認された。これに対して、ナフテン酸アルカリ金属塩およびニオブペンタエトキシドから調製した実施例1~7の焼成膜では、クラックの発生が抑制されていることが確認された。
【0086】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の膜形成用組成物および膜形成用液組成物は、様々な溶剤を用いて緻密な膜が得られるため、非鉛圧電材料であるアルカリニオブ酸系ペロブスカイト薄膜の形成用材料として有用である。