(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240827BHJP
H01L 25/04 20230101ALI20240827BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01L25/04 Z
(21)【出願番号】P 2020116732
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 康文
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/053129(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142863(WO,A1)
【文献】特開2017-174927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 25/04
H01L 25/18
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
回路パターンと、
前記半導体チップおよび前記回路パターンを電気的に接続する配線部と、
前記半導体チップ、前記回路パターンおよび前記配線部を封止する封止樹脂と
を備え、
前記配線部は、前記回路パターンと接続する回路パターン接続部と、
前記回路パターン接続部から延伸する延伸部と、
前記延伸部において前記回路パターン接続部から最も離れた端部に設けられ、前記延伸部から前記半導体チップに近づく方向に延伸する折り返し部と、
前記折り返し部から前記延伸部の下方に延伸して設けられ、前記半導体チップに接続されるチップ接続部と
を有し、
前記チップ接続部は、上面視において前記延伸部に重なっており、
前記封止樹脂は、前記チップ接続部と前記延伸部の間、および、前記延伸部上に設けられ
、
前記配線部の表面と裏面は同一の材料である
半導体モジュール。
【請求項2】
半導体チップと、
回路パターンと、
前記半導体チップおよび前記回路パターンを電気的に接続する配線部と、
前記半導体チップ、前記回路パターンおよび前記配線部を封止する封止樹脂と
を備え、
前記配線部は、前記回路パターンと接続する回路パターン接続部と、
前記回路パターン接続部から延伸する延伸部と、
前記延伸部において前記回路パターン接続部から最も離れた端部に設けられ、前記延伸部から前記半導体チップに近づく方向に延伸する折り返し部と、
前記折り返し部から前記延伸部の下方に延伸して設けられ、前記半導体チップに接続されるチップ接続部と
を有し、
前記チップ接続部は、上面視において前記延伸部に重なっており、
前記封止樹脂は、前記チップ接続部と前記延伸部の間、および、前記延伸部上に設けられ、
前記半導体チップと前記チップ接続部は第1接合層を介して接続され、
前記回路パターンと前記回路パターン接続部は第2接合層を介して接続される
半導体モジュール。
【請求項3】
半導体チップと、
回路パターンと、
前記半導体チップおよび前記回路パターンを電気的に接続する配線部と、
前記半導体チップ、前記回路パターンおよび前記配線部を封止する封止樹脂と
を備え、
前記配線部は、前記回路パターンと接続する回路パターン接続部と、
前記回路パターン接続部から延伸する延伸部と、
前記延伸部において前記回路パターン接続部から最も離れた端部に設けられ、前記延伸部から前記半導体チップに近づく方向に延伸する折り返し部と、
前記折り返し部から前記延伸部の下方に延伸して設けられ、前記半導体チップに接続されるチップ接続部と
を有し、
前記チップ接続部は、上面視において前記延伸部に重なっており、
前記封止樹脂は、前記チップ接続部と前記延伸部の間、および、前記延伸部上に設けられ、
前記延伸部が開口を有し、
前記チップ接続部において前記折り返し部から最も離れた先端は、上面視において前記開口と重ならない位置に配置され、
前記開口は、上面視において、前記チップ接続部の前記先端よりも、前記折り返し部から離れて配置されている
半導体モジュール。
【請求項4】
半導体チップと、
回路パターンと、
前記半導体チップおよび前記回路パターンを電気的に接続する配線部と、
前記半導体チップ、前記回路パターンおよび前記配線部を封止する封止樹脂と
を備え、
前記配線部は、前記回路パターンと接続する回路パターン接続部と、
前記回路パターン接続部から延伸する延伸部と、
前記延伸部において前記回路パターン接続部から最も離れた端部に設けられ、前記延伸部から前記半導体チップに近づく方向に延伸する折り返し部と、
前記折り返し部から前記延伸部の下方に延伸して設けられ、前記半導体チップに接続されるチップ接続部と
を有し、
前記チップ接続部は、上面視において前記延伸部に重なっており、
前記封止樹脂は、前記チップ接続部と前記延伸部の間、および、前記延伸部上に設けられ、
前記回路パターン接続部は、前記延伸部に覆われない位置に設けられ、
上面視における前記チップ接続部において前記折り返し部から最も離れた先端の角部の曲率半径は、上面視における前記回路パターン接続部において前記延伸部から最も離れた先端の角部の曲率半径より大きい
半導体モジュール。
【請求項5】
前記延伸部は、上面視において複数の辺を有し、
前記折り返し部は、前記延伸部の前記複数の辺のうち、前記回路パターン接続部から最も離れた辺に設けられ、
前記延伸部は、前記折り返し部が設けられた辺と垂直な第1方向における長さが、当該辺と平行な第2方向における長さよりも長い
請求項
1から4のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記半導体チップには、前記チップ接続部が1対1に接続される
請求項
1から5のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記延伸部が開口を有する
請求項
1、2または4のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記チップ接続部において前記折り返し部から最も離れた先端は、上面視において前記開口と重ならない位置に配置されている
請求項
7に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記開口は、上面視において、前記チップ接続部の前記先端と前記折り返し部の間の領域に設けられる
請求項
8に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
上面視において、前記開口と前記チップ接続部の前記先端の距離が10mm以上である
請求項
3、8または9のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項11】
上面視において、前記チップ接続部において前記折り返し部から最も離れた先端から前記封止樹脂の端部までの距離は、前記折り返し部から前記封止樹脂の端部までの距離よりも大きい
請求項1から
10のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項12】
前記チップ接続部の少なくとも一部の領域は、粗化されている
請求項1から11のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項13】
前記配線部は、板状の部分を有するリードフレームである
請求項1から12のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項14】
前記チップ接続部において前記折り返し部から最も離れた先端は、上面視において、前記延伸部と重なっている
請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項15】
前記延伸部は、
上面視において複数の辺を有する第1延伸部と、
上面視において複数の辺を有し、前記第1延伸部よりも前記折り返し部の側に配置された第2延伸部と
を有し、
前記折り返し部は、前記第2延伸部の前記複数の辺のうち、前記回路パターン接続部から最も離れた辺に設けられ、
前記折り返し部が設けられた辺と平行な方向において、前記第1延伸部と前記第2延伸部の端部の位置が異なる
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項16】
前記延伸部は、
第1延伸部と、
前記第1延伸部よりも前記折り返し部の側に配置された第2延伸部と
を有し、
前記第1延伸部と前記第2延伸部は、それぞれ前記開口を有する
請求項7に記載の半導体モジュール。
【請求項17】
前記チップ接続部において前記折り返し部から最も離れた先端の少なくとも一部は、粗化されている
請求項12に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと回路パターンを接続するための配線部(例えば、リードフレーム)と、配線部を保護する封止樹脂とを備える半導体モジュールが知られている。(例えば、特許文献1)。
特許文献1 特開2010-10330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体モジュールは、配線部に起因した封止樹脂の亀裂が少ないことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体モジュールを提供する。半導体モジュールは、半導体チップを備えてよい。半導体モジュールは、回路パターンを備えてよい。半導体モジュールは、配線部を備えてよい。配線部は、半導体チップおよび回路パターンを電気的に接続してよい。半導体モジュールは、封止樹脂を備えてよい。封止樹脂は、半導体チップ、回路パターンおよび配線部を封止してよい。配線部は、回路パターン接続部を有してよい。回路パターン接続部は、回路パターンと接続してよい。配線部は、回路パターン延伸部を有してよい。延伸部は、回路パターン接続部から延伸してよい。配線部は、折り返し部を有してよい。折り返し部は、延伸部において回路パターン接続部から最も離れた端部に設けられてよい。折り返し部は、延伸部から半導体チップに近づく方向に延伸してよい。配線部は、チップ接続部を有してよい。チップ接続部は、折り返し部から延伸部の下方に延伸して設けられてよい。チップ接続部は、半導体チップに接続されてよい。チップ接続部は、上面視において延伸部に重なっていてよい。封止樹脂は、チップ接続部と延伸部の間、および、延伸部上に設けられていてよい。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体モジュール100の一例を示す図である。
【
図2】絶縁回路基板160に形成される回路の一例を示す図である。
【
図5】上面視におけるリードフレーム50の一例を示す図である。
【
図6】上面視におけるリードフレーム50の他の例を示す図である。
【
図7】上面視におけるリードフレーム50の他の例を示す図である。
【
図9】半導体モジュール100のリードフレーム50の他の例を示す図である。
【
図11】リードフレーム50の他の例を示す図である。
【
図13】上面視におけるリードフレーム50の他の例を示す図である。
【
図14】半導体モジュール100のリードフレーム50の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、1つの図面において、同一の機能、構成を有する要素については、代表して符合を付し、その他については符合を省略する場合がある。
【0009】
本明細書においては半導体チップの深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体モジュールの実装時における方向に限定されない。
【0010】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。本明細書では、半導体チップの上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体チップの上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0011】
本明細書では、Z軸方向から見ることを上面視と称する。つまり、上面視による図は、各部材の位置をXY面に投影した図である。
【0012】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0013】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体モジュール100の一例を示す図である。半導体モジュール100は、インバータ等の電力変換装置として機能してよい。半導体モジュール100は、1つ以上の絶縁回路基板160を備える。本明細書では、1つ以上の絶縁回路基板160が設けられる面における直交軸をX軸およびY軸とし、XY面と垂直な軸をZ軸とする。
図1においては、XY面における各部材の配置例を示している。
【0014】
本例の半導体モジュール100は、3相インバータ回路のU相、V相、W相のアームを構成する回路が形成される3つの絶縁回路基板160を備えている。絶縁回路基板160には、回路パターン26、半導体チップ40および開口48を有するリードフレーム50が設けられている。絶縁回路基板160には、1つ以上の半導体チップ40が載置される。半導体チップ40は、樹脂パッケージ14により保護される。本例の樹脂パッケージ14は、絶縁回路基板160を囲む樹脂ケース10、および、樹脂ケース10に充填される封止樹脂12を含む。
【0015】
半導体チップ40は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードおよびこれらを組み合わせたRC(Reverse Conducting)-IGBT、並びにMOSトランジスタ等を含んでよい。
【0016】
樹脂ケース10は、絶縁回路基板160を収容する空間94を囲むように設けられる。1つ以上の端子86が、樹脂ケース10から露出して設けられてよい。端子86は、端子接続部198を介して、絶縁回路基板160と電気的に接続される。また、樹脂ケース10には、冷却装置等を固定するねじ等の締結部材が挿入される貫通孔84が設けられてよい。
【0017】
本例において、樹脂ケース10は、射出成形により形成可能な熱硬化型樹脂、または、UV成形により形成可能な紫外線硬化型樹脂等の樹脂、等の樹脂により成形される。当該樹脂は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂およびアクリル樹脂等から選択される1又は複数の高分子材料を含んでよい。
【0018】
本例において、封止樹脂12は、樹脂ケース10の内部に設けられる。封止樹脂12は、例えばエポキシ樹脂やシリコーンゲルであるが、これに限定されない。封止樹脂12により、絶縁回路基板160を保護できる。
【0019】
図2は、絶縁回路基板160に形成される回路の一例を示す図である。
図2では、代表して1つの相のアームを構成する絶縁回路基板160を例示するが、その他の絶縁回路基板160も同様の構成である。絶縁回路基板160は、絶縁基板20を有してよい。本例の絶縁回路基板160は、絶縁基板20のいずれか一方の面に回路パターン26を設け、他方の面に放熱板22(
図3参照)を設けたものである。絶縁基板20は、窒化ケイ素セラミックスまたは窒化アルミニウムセラミックス等で形成されてよい。回路パターン26および放熱板22は、銅板またはアルミ板、あるいはこれらの材料にめっきを施した板であってよい。回路パターン26および放熱板22は、絶縁基板20に直接接合してよく、ろう材等を介して絶縁基板20に接合してもよい。
【0020】
本例の半導体チップ40は、絶縁基板20の上面に設けられた回路パターン26にはんだ等の接合層30(
図3参照)を介して接合されている。なお、
図2において、接合層30は、省略されている。また、半導体チップ40の上面がはんだ等の接合層32(
図3参照)を介して配線部と接続される。本例の配線部は、リードフレーム50である。
【0021】
リードフレーム50は、半導体チップ40をはんだ等の接合層34(
図3参照)を介して回路パターン26に接続する。なお、
図2において、接合層34は、省略されている。リードフレーム50は、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成された部材である。リードフレーム50は、ニッケル等により表面の少なくとも一部がメッキされていてもよい。また、リードフレーム50は、樹脂等により表面の少なくとも一部がコーティングされていてもよい。リードフレーム50は、板状の部分を有してよい。板状とは、対向して配置された2つの主面の面積が、他の面の面積よりも大きい形状を指す。リードフレーム50は、少なくとも、半導体チップ40と接続する部分が板状であってよい。リードフレーム50は、1枚の金属板を折り曲げることで、形成されてよい。リードフレーム50は、銅板をプレスによって加工することにより、形成されてよい。リードフレーム50は、抜き打ち加工によって形成されてよい。また、本例のリードフレーム50は、X軸方向の長さX1がY軸方向の長さY3より大きく構成されてよい。
【0022】
回路パターン26は、半導体チップ40またはリードフレーム50と電気的に接続されることで、信号または電力を伝送する。回路パターン26は、複数の島状領域27A,27B,27Cを含んで構成されてよい。また、回路パターン26の1つの島状領域27(
図2では島状領域27A,27B)に、半導体チップ40が複数配置されてよい。また、1つの島状領域27に配置された複数の半導体チップ40が、リードフレーム50により、共通の島状領域27に接続されてよい。
図2の例では、島状領域27AにおいてY軸方向に並んだ2つの半導体チップ40が、2つのリードフレーム50によって共通の島状領域27Bに並列に接続されている。また、島状領域27BにおいてY軸方向に並んだ2つの半導体チップ40が、2つのリードフレーム50によって共通の島状領域27Cに並列に接続されている。当該2つのリードフレーム50において、同一の島状領域27に接続される接続部分のY軸方向の距離Y1が、2つの半導体チップ40のY軸方向の距離Y2より小さくてよい。これにより、離れて配置された2つの半導体チップ40を通る電流の経路長の差異を低減できる。
【0023】
本例の半導体チップ40は、上面および下面に電極(例えば、エミッタ電極とコレクタ電極)が形成された縦型のチップである。半導体チップ40は、下面に形成された電極により回路パターン26と接続され、上面に形成された電極によりリードフレーム50と接続される。なお、半導体チップ40は縦型のチップに限定されない。半導体チップ40は、回路パターン26と接続される電極を上面に有していてもよい。この場合、回路パターン26と当該電極は、ワイヤ等により接続されてよい。
【0024】
端子接続部198は、回路パターン26と、
図1に示した端子86とを接続する。端子接続部198は、金属で形成された板または棒状の部材であってよく、ワイヤ状の部材であってもよい。これにより、半導体チップ40と端子86とが電気的に接続される。
【0025】
図3は、
図2のA-A断面図である。
図3は、XZ面に対して各部材を投影した場合の、各部材の配置例を示している。当該断面において、半導体モジュール100は、絶縁基板20、放熱板22、接合層23、冷却部16、回路パターン26、接合層30、32、34、半導体チップ40、リードフレーム50および封止樹脂12を備える。当該断面において回路パターン26は、島状領域27Aと、島状領域27Bとを有する。
【0026】
放熱板22は、絶縁基板20の下面に重なって設けられてよい。接合層23は、放熱板22を冷却部16に接合する。接合層23は、はんだ等である。冷却部16は、内部に水等の冷媒を含む。冷却部16は、放熱板22等を介して、半導体チップ40を冷却する。冷却部16は、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料で形成されてよい。冷却部16は、天板および天板に対向する底板を有してよい。冷却部16は、天板と底板の間に、放熱面積を増大させるべく複数のフィンが形成されていてもよい。
【0027】
回路パターン26は、絶縁基板20の上面に配置されている。回路パターン26は、銅等の放熱板22と同一の材料で形成されてよく、異なる材料で形成されてもよい。半導体チップ40は、回路パターン26の島状領域27Aの上面に、接合層30により接続されている。接合層30は、はんだ等の導電材料により、半導体チップ40を接合する。
【0028】
リードフレーム50は、半導体チップ40と、回路パターン26の島状領域27Bとを接続する。本例のリードフレーム50は、回路パターン接続部56、延伸部51、折り返し部52およびチップ接続部53を有する。チップ接続部53は、半導体チップ40の上面に接合層32により接合される部分である。
【0029】
回路パターン接続部56は、回路パターン26の島状領域27Bの上面に、接合層34により接合される部分である。チップ接続部53および回路パターン接続部56は、XY面とほぼ平行な板状の部分であってよい。なお、ほぼ平行とは、例えば角度が10度以下の状態を指す。本例では、チップ接続部53の面積が、回路パターン接続部56の面積より大きく構成される。チップ接続部53の面積、回路パターン接続部56の面積は、例えば、半導体チップ40や回路パターン26に接続される板状の部分の上面の面積としてよい。
【0030】
延伸部51は、回路パターン接続部56から折り返し部52まで延伸して設けられる。延伸部51は、回路パターン26等の導電部材から離れて配置されている。本例の延伸部51は、回路パターン26等の上方に配置されており、回路パターン接続部56から折り返し部52まで、回路パターン26等を跨ぐように設けられている。
【0031】
本例のリードフレーム50は、延伸部51-1、延伸部51-2、延伸部51-3を有する。延伸部51-3は、回路パターン接続部56に接続され、且つ、XY面と平行でない板状の部分である。例えば、延伸部51-3は、XY面に対し角度が45度以上となるように形成されてよい。本例の延伸部51-3は、XY面と垂直な部分を含んでいる。
【0032】
延伸部51-1は、延伸部51-3から折り返し部52に近づく方向に延伸する。本例の延伸部51-1は、XY面とほぼ平行な板状の部材である。延伸部51-2は、延伸部51-1から折り返し部52まで延伸している。本例の延伸部51-2は、XY面とほぼ平行な板状の部材である。延伸部51-1および延伸部51-2は、
図5に示すように、Y軸方向における位置が異なる部材であってよい。また、
図6に示すように、上面視において直線形状を有する延伸部51-1が、延伸部51-3から折り返し部52まで設けられていてもよい。本明細書では、リードフレーム50に含まれる複数の延伸部51(例えば、延伸部51-1、延伸部51-2、延伸部51-3)をまとめて、延伸部51と称する。
【0033】
折り返し部52は、延伸部51において回路パターン接続部56から最も離れた端部59に設けられている。
図3の例では、折り返し部52は、延伸部51-2のX軸方向における端部に設けられている。折り返し部52は、延伸部51から半導体チップ40に近づく方向に延伸している。つまり折り返し部52は、延伸部51の端部59から下方に延伸している。本例の折り返し部52は、XY面と平行でない部分を含む板状の部材である。折り返し部52は、XY面と垂直な部分を含んでよい。折り返し部52は、XZ面において湾曲した部分を有してもよい。
【0034】
チップ接続部53は、折り返し部52から延伸部51の下方に延伸して設けられている。本例のチップ接続部53は、半導体チップ40に接合された板状の部分である。チップ接続部53の少なくとも一部は、上面視において延伸部51に重なっている。また、チップ接続部53は、少なくとも一部または全体が延伸部51に覆われていてもよい。
【0035】
封止樹脂12は、半導体チップ40、リードフレーム50および回路パターン26が露出しないように、樹脂ケース10の空間94に充填されてよい。封止樹脂12は、半導体チップ40、リードフレーム50および回路パターン26を封止してよい。封止樹脂12は、チップ接続部53と延伸部51の間にも設けられている。つまり、チップ接続部53と延伸部51は、Z軸方向において空間を有して配置されており、当該空間に封止樹脂12が充填される。また、封止樹脂12は、延伸部51上にも設けられている。本例の延伸部51には、延伸部51の下方に封止樹脂12を注入するための開口48(
図1、
図2参照)が設けられている。延伸部51には、複数の開口48が設けられてよい。
【0036】
図4は、
図3に示した領域Bの拡大図である。領域Bは、リードフレーム50の延伸部51の一部、折り返し部52およびチップ接続部53を含む。
図4では封止樹脂12を省略している。延伸部51、折り返し部52、チップ接続部53および回路パターン接続部56は、それぞれ同一の材料により形成されてよい。本例では、チップ接続部53において、折り返し部52から最も離れた箇所を先端38とする。先端38は、上面視において、折り返し部52から最も離れた箇所であってよい。先端38は、折り返し部52からの距離が最大となる点であってよく、当該点が集合した辺または面であってもよい。
【0037】
本例のチップ接続部53は、下面62、上面64、先端面66および側面68を有する。先端面66は、チップ接続部53の表面のうち、折り返し部52から最も離れた面である。先端面66は、XY面と平行でない面である。先端面66は、YZ面と平行な部分を含んでよい。先端面66の少なくとも一部が先端38である。先端面66の全体が先端38であってもよい。
【0038】
下面62は、チップ接続部53の表面のうち、半導体チップ40と向かい合う、すなわち、半導体チップ40に接続される面である。上面64は、チップ接続部53の表面のうち、下面62とは逆側の面である。また、側面68は、下面62と上面64との間の先端面66以外の面である。
【0039】
半導体モジュール100においては、半導体チップ40が発熱源となる。半導体チップ40に接続するチップ接続部53は、温度変化により膨張収縮を繰り返す。封止樹脂12も温度変化により膨張収縮を繰り返すため、チップ接続部53すなわちリードフレーム50と封止樹脂12の線膨張係数を合わせることが望ましい。しかしながら、線膨張係数を一致させたとしても、温度分布や収縮速度の違いにより、熱応力を完全に防止することは困難である。さらに、半導体チップ40が発熱源であることから、チップ接続部53は回路パターン接続部56に比べて、繰り返し熱応力にさらされるリスクが高い。加えて、本例では、チップ接続部53の面積が、回路パターン接続部56の面積より大きく構成されている。この点でも、チップ接続部53は、熱応力にさらされた際のリスクが回路パターン接続部56よりも高い。
【0040】
このような熱応力が繰り返し発生することにより、先端38または先端面66が起点となって、封止樹脂12に亀裂24が発生する場合がある。特に先端38または先端面66が、リードフレーム50の表面が交差する角を構成している場合、亀裂24が発生しやすくなる。亀裂24が大きくなると、リードフレーム50等の保護性能が低下する。例えば亀裂24が封止樹脂12の表面まで進展すると、亀裂24が外部に露出するので、亀裂24から水分等が入り込む場合がある。また、亀裂24の進展の途中にワイヤ配線等が存在すると、ワイヤ配線が断線する原因となる。亀裂24は、概ねZ軸正方向に進展するが、
図4に示すように、Z軸に対して傾斜して進展する場合もある。
【0041】
本例において、先端38は、上面視において延伸部51に覆われている。つまり、先端38から上方に向かう方向には、延伸部51が設けられている。したがって、亀裂24が生じた場合においても、亀裂24の進展がリードフレーム50によって阻止される。よって、リードフレーム50に起因した封止樹脂12の亀裂を少なくし、半導体モジュール100の故障の可能性を低減することができる。また、先端38と延伸部51の間には、ワイヤ配線は設けられていない。したがって、先端38と延伸部51の間に亀裂24が進展しても、ワイヤ配線が断線することはない。
【0042】
図1および
図2に示すように、半導体チップ40とチップ接続部53は、1対1に設けられてよい。1つの半導体チップ40に複数のチップ接続部53を接続すると、先端38の個数が増大して、亀裂24の起点数が増大してしまう。1つの半導体チップ40に、1つのチップ接続部53を接続することで、亀裂24の起点数の増大を抑制できる。これに対して、一つの島状領域27には、複数の回路パターン接続部56が接続されてよい。
【0043】
図5は、上面視におけるリードフレーム50の一例を示す図である。本例のリードフレーム50は、回路パターン接続部56、延伸部51-3、延伸部51-1、延伸部51-2、折り返し部52およびチップ接続部53を有する。
【0044】
延伸部51-1および延伸部51-2のそれぞれは、上面視においてX軸方向とほぼ平行な辺71と、Y軸方向とほぼ平行な辺72を有している。また、延伸部51-3、延伸部51-1、延伸部51-2は、Y軸方向にずれて配置されてよい。つまり、それぞれの延伸部51のY軸方向における端部の位置が異なっていてよい。
【0045】
折り返し部52は、延伸部51の複数の辺のうち、回路パターン接続部56から最も離れた辺に設けられてよい。
図5の例では、折り返し部52は、延伸部51-2の辺71に設けられている。折り返し部52は、辺71の全体に渡って設けられてよい。
【0046】
チップ接続部53は、延伸部51-2に重なっている。
図5においては、チップ接続部53を斜線のハッチングで示している。チップ接続部53は、全体が延伸部51-2に覆われていることが好ましい。チップ接続部53のY軸方向の幅Y5は、延伸部51-2のY軸方向の幅Y4と同一であってよく、小さくてもよい。本例のチップ接続部53は、延伸部51-1と重なる位置には設けられていない。
【0047】
延伸部51-2、折り返し部52およびチップ接続部53は、Y軸方向の幅が均一な帯状の板を折り返して形成してよい。折り返されるとは、折り返し部52のX軸方向における2つの先端が同じ方向を向いていることであってよい。
図4の例では、折り返し部52の2つの先端は、X軸負方向を向いている。折り返し部52は、円弧を描くように折り返されてよい。また、折り返し部52は、直角に折り返されてもよい。
【0048】
延伸部51のX軸方向(第1方向)の長さをX2とし、Y軸方向(第2方向)の幅をY6とする。延伸部51のX軸方向の長さX2は、延伸部51の各点のうち、X軸方向において最も離れた2点の距離である。また、延伸部51のY軸方向の長さY6は、延伸部51の各点のうち、Y軸方向において最も離れた2点の距離である。
【0049】
延伸部51は、X軸方向の長さX2が、Y軸方向の幅Y6より大きくてよい。延伸部51は、X軸方向に長手を有してよい。これにより、リードフレーム50では、先端面66の上方にて、先端面66と垂直な方向に長手を有する延伸部51が配置されることとなる。このため、亀裂24の進展をより効果的に防ぐことができる。また、一般には、リードフレーム50、延伸部51の長手に位置する面の方が、温度分布や収縮速度の違いにより高い熱応力が発生する。このため、リードフレーム50、延伸部51の長手側に折り返し部52を設けて対策を施すことで、耐久性の高い半導体モジュール100を実現することができる。なお、本例のように、Z軸方向に延び、封止樹脂12で拘束され動きにくい延伸部51-3を含む場合には、この延伸部51-3を起点として長手、短手を判断してよい。
【0050】
図6は、上面視におけるリードフレーム50の他の例を示す図である。本例のリードフレーム50は、延伸部51のY軸方向の幅が一定である。つまり、延伸部51は、回路パターン接続部56から、折り返し部52まで直線状に設けられている。
図1から
図5において説明した延伸部51-1、延伸部51-2が一体に形成されており、これらが延伸部51-3に接続されている。他の構造は、
図1から
図5において説明した例と同様である。本例のリードフレーム50によっても、亀裂24の進展を抑制できる。
【0051】
図7は、上面視におけるリードフレーム50の他の例を示す図である。
図7のリードフレーム50は、延伸部51-2において少なくとも一つの開口46を有する点で
図1から
図6におけるリードフレーム50と異なる。開口46以外の構成は、
図1から
図6において説明したいずれかのリードフレーム50と同一であってよい。
【0052】
図8は、
図7におけるC-C断面を示す図である。リードフレーム50が延伸部51-2において開口46を有することにより、延伸部51の下方に封止樹脂12を導入することが容易となる。したがって、封止樹脂12内の空胞等が少なくなり、封止樹脂12の封止性能が向上する。
【0053】
開口46は、上面視において、先端38と重なっていなくてよい。開口46が、先端38と重なる場合、先端38から発生した亀裂が開口46を通って進展しやすくなる。開口46が、上面視において、先端38と重ならないようにすることにより、亀裂が延伸部51を越えて進展することを抑制できる。
図8の例では、開口46は、X軸方向において、先端38と折り返し部52の間の領域に設けられている。
【0054】
X軸方向において、開口46と先端38は離れていることが好ましい。開口46と先端38が離れていることで、亀裂が傾斜して進展した場合においても、亀裂が開口46を通過することを抑制できる。X軸方向における開口46と先端38の距離D1は、10mm以上であってよい。X軸方向における開口46と先端38の距離D1とは、先端38と開口46のX軸方向の最短距離である。距離D1は、20mm以上であってよく、30mm以上であってもよい。
【0055】
図9は、半導体モジュール100のリードフレーム50の他の例を示す図である。
図9のリードフレーム50は、開口46が、先端38よりも、折り返し部52から離れて配置されている点で
図8のリードフレーム50と異なる。開口46以外の構成は、
図8のリードフレーム50と同一であってよい。
【0056】
図8の例と同様に、
図9の例においても、開口46は、上面視において、先端38と重なっていない。このような構成でも、亀裂が延伸部51を越えて進展することを防ぐことができる。X軸方向における開口46と先端38の距離D1は、10mm以上であってよい。距離D1は、20mm以上であってよく、30mm以上であってもよい。
【0057】
図10は、開口46の形状の他の例を示す図である。本例の開口46は、X軸方向における長さが、Y軸方向における幅よりも大きい。つまり開口46は、X軸方向に長手を有する。例えば開口46は、上面視において楕円または長円である。この場合、楕円または長円の長軸が長手方向である。開口46は長方形であってよく、他の形状であってもよい。
【0058】
本例の先端38は、上面視においてY軸方向に延伸している。このため、先端38から生じる亀裂は、Y軸方向にある程度の長さを有する場合がある。これに対して、開口46が、Y軸方向と直交するX軸方向に長手を有することで、先端38で生じた亀裂が、開口46を通過しにくくなる。このため、亀裂が延伸部51を越えて進展することを抑制できる。また、開口46をX軸方向に長く形成することで、開口46の面積を確保して、封止樹脂12の注入を容易にできる。
【0059】
また、
図10の例では複数の開口46がY軸方向に並んでいる。他の例では、複数の開口46がX軸方向に並んでいてもよい。この場合、それぞれの開口46は、X軸方向に長手を有さなくてもよい。
【0060】
開口48は、開口46と同一の形状を有してよく、異なる形状を有していてもよい。開口48のY軸方向の幅は、開口46のY軸方向の幅よりも大きくてよい。
【0061】
図11は、リードフレーム50の他の例を示す図である。本例のリードフレーム50は、表面の少なくとも一部において粗化された粗面領域61を有する。
図11においては、粗面領域61が設けられた表面を、破線で示している。本例のリードフレーム50は、チップ接続部53に粗面領域61を有する。粗化とは、表面に微細な凹凸形状を形成することである。粗化を実施することで、リードフレーム50と封止樹脂12の密着性を高めることができる。
【0062】
粗面領域61の算術平均粗さは、1-10μmであってよい。粗面領域61の算術平均粗さは、3-5μmであってよい。
【0063】
粗面領域61は、チップ接続部53に設けられてよい。上述したように、半導体モジュール100においては、半導体チップ40からの発熱が比較的に大きい。このため、半導体チップ40に接続されるチップ接続部53に応力がかかりやすい。リードフレーム50に応力がかかると、リードフレーム50と封止樹脂12とが剥離しやすくなる。リードフレーム50と封止樹脂12とが剥離すると、亀裂が進展しやすくなる。
【0064】
これに対して、チップ接続部53に粗面領域61を設けることで、リードフレーム50と封止樹脂12との間の接触面積を増大できるので、封止樹脂12の剥離を抑制できる。また、局所的に粗面領域61を設けることで、リードフレーム50の製造コストを低減しやすくなる。
【0065】
粗面領域61は、先端面66の少なくとも一部に設けられることが好ましい。先端面66、とりわけ、リードフレーム50の表面が交差する角では、封止樹脂12との剥離が発生しやすいためである。先端面66に粗面領域61を設けることで、リードフレーム50と封止樹脂12との剥離を効果的に抑制できる。粗面領域61は、先端面66の半分以上にわたって設けられてよく、先端面66の全体に設けられていてもよい。先端面66の一部に粗面領域61を設ける場合、先端面66のうち、下面62と接する部分に粗面領域61を設けることが好ましい。下面62と接する部分は、はんだ等の接合層32と接触する可能性がある部分であり、はんだ等の接合層32は樹脂剥離の起点を生じる可能性があるためである。当該部分に粗面領域61を設けることで、封止樹脂12の剥離を効果的に抑制できる。
【0066】
粗面領域61は、上面64の少なくとも一部に設けられてよい。上面64に粗面領域61を設けることで、リードフレーム50と封止樹脂12との剥離を更に抑制できる。粗面領域61は、上面64の半分以上にわたって設けられてよく、上面64の全体に設けられていてもよい。上面64の一部に粗面領域61を設ける場合、上面64のうち、先端面66と接する部分に粗面領域61を設けることが好ましい。
【0067】
粗面領域61は、側面68の少なくとも一部に設けられてよい。側面68に粗面領域61を設けることで、リードフレーム50と封止樹脂12との剥離を更に抑制できる。粗面領域61は、側面68の半分以上にわたって設けられてよく、側面68の全体に設けられていてもよい。側面68の一部に粗面領域61を設ける場合、側面68のうち、先端面66と接する部分に粗面領域61を設けてよい。また、側面68のうち、下面62と接する部分に粗面領域61を設けてよい。粗面領域61は、折り返し部52、延伸部51および回路パターン接続部56の少なくとも一つにも設けられてよい。
【0068】
図12は、封止樹脂12の端部13を示す図である。端部13は、上面視における、封止樹脂12の端部である。チップ接続部53の先端38と、端部13とのX軸方向における最短距離をL2とする。また、折り返し部52と、端部13とのX軸方向における最短距離をL1とする。距離L2は、距離L1より大きくてよい。このような構成により、亀裂24の起点となりやすい先端38または先端面66を、封止樹脂12の端部13から離すことができる。これにより、亀裂24が、封止樹脂12の端部13に達することを抑制できる。また、先端38と端部13との間に、折り返し部52が存在するので、亀裂24が端部13に達するのを更に抑制できる。
【0069】
なお、
図1および
図2に示したように、半導体モジュール100が複数のリードフレーム50を備える場合、X軸方向において最も端に配置されたリードフレーム50が、
図12に示した構成を備えることが好ましい。また、X軸方向において両端に配置されたリードフレーム50の先端38は、最も近い樹脂ケース10の側壁とは逆側を向いていることが好ましい。
【0070】
図13は、上面視におけるリードフレーム50の他の例を示す図である。
図13のリードフレーム50は、先端38の角部19および先端44の角部29が曲面を有する点で
図5のリードフレーム50と異なる。先端44は、回路パターン接続部56において、延伸部51から最も離れた箇所をとする。角部19および角部29は、先端38および先端44のそれぞれの角である。
図13の例では、先端38は2つの角部19を有し、先端44は2つの角部29を有する。リードフレーム50のそれ以外の構成は、
図5のリードフレーム50と同一であってよい。先端38の角部19および先端44の角部29の曲面は、抜き打ち加工によって得られた角を切削することにより形成されてよい。
【0071】
先端38の角部19が曲面を有することにより、先端38の角部19が角になっている場合に比べ、応力が集中することを防ぐことできる。また、先端44の角部29が曲面を有することにより、先端44の角部29が角になっている場合に比べ、応力が集中することを防ぐことできる。したがって、リードフレーム50に起因した封止樹脂12の剥離を更に少なくすることができる。
【0072】
先端38の全体が、折り返し部52から離れる方向に凸の曲面であってよい。先端38は、XY面において円弧状であってよい。また、先端44の全体が、延伸部51から離れる方向に凸の曲面であってよい。先端44は、XY面において円弧状であってよい。
【0073】
先端38の角部19の曲率半径R1は、先端44の角部29の曲率半径R2より大きくてよい。また、先端38の角部19は曲面を有し、先端44の角部29は曲面を有さなくてよい。この場合、先端44を加工せずに、リードフレーム50を容易に形成できる。また、
図13では、先端38の2つの角部19がそれぞれ同一の曲率半径R1を有する例を示したが、角部19の曲率半径は異なっていてもよい。また、同様に角部29の曲率半径は異なっていてもよい。
【0074】
図14は、半導体モジュール100のリードフレーム50の他の例を示す図である。本例においては、回路パターン接続部56の面のうち、延伸部51から最も離れた面を先端面70とする。先端面70は、回路パターン接続部56において、延伸部51から最も離れた点である先端44を含む。先端面70以外の構造は、
図1から
図13において説明したリードフレーム50と同様である。また、
図14において、延伸部51の一部を省略している。なお、
図4と同様に
図14において封止樹脂12は、省略されている。
【0075】
延伸部51-3は、X軸負方向における延伸部51-1の先端に設けられる。つまり、延伸部51-3は、X軸負方向における延伸部51-1の先端と接続している。延伸部51-3の2つの先端は、異なる方向を向いていてよい。
図14の例では、延伸部51-3のX軸正方向の先端はX軸正方向を向いており、延伸部51-3のX軸負方向の先端はX軸負方向を向いている。延伸部51-3は、XZ面において円弧を描くように延伸してよい。つまり、延伸部51-3は、延伸部51-1および回路パターン接続部56との接続部分に角を有さないように延伸してよい。また、延伸部51-3は、延伸部51-1および回路パターン接続部56との接続部分が角を有してもよい。
【0076】
回路パターン接続部56は、延伸部51-3の先端に設けられる。回路パターン接続部56は、接合層34により島状領域27Bに接合される。また、封止樹脂12は、回路パターン接続部56上に設けられていてよい。回路パターン接続部56の上面視における面積は、チップ接続部53の上面視における面積より小さくてよい。回路パターン接続部56の上面視における面積は、チップ接続部53の上面視における面積と同じであってもよい。回路パターン接続部56の上面視における面積は、チップ接続部53の上面視における面積より大きくてもよい。
【0077】
本例の先端面70は、X軸負方向における回路パターン接続部56の先端の面である。先端面70は角を有してよい。
【0078】
本例において、先端面70は、折り返し部と接続していないため、上面視において延伸部51に覆われていない。つまり、先端面70から上方に向かう方向には、延伸部51が設けられていない。しかし、先端面70は、先端面66と比べ、応力集中が発生しにくく、亀裂が生じにくい。したがって、先端面70を延伸部51で覆わない構成とすることで、リードフレーム50を容易に形成でき、且つ、亀裂24の進展を抑制できる。回路パターン接続部56は、延伸部51に覆われない位置に設けられていてよい。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0080】
10・・樹脂ケース、12・・封止樹脂、13・・端部、14・・樹脂パッケージ、16・・冷却部、19・・角部、20・・絶縁基板、22・・放熱板、23・・接合層、24・・亀裂、26・・回路パターン、27・・島状領域、29・・角部、30・・接合層、32・・接合層、34・・接合層、38・・先端、40・・半導体チップ、44・・先端、46・・開口、48・・開口、50・・リードフレーム、51・・延伸部、52・・折り返し部、53・・チップ接続部、56・・回路パターン接続部、59・・端部、61・・粗面領域、62・・下面、64・・上面、66・・先端面、68・・側面、70・・先端面、71・・辺、72・・辺、84・・貫通孔、86・・端子、94・・空間、100・・半導体モジュール、160・・絶縁回路基板、198・・端子接続部