IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7543747画像形成システム、画像形成装置及びプログラム
<>
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図1
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図2
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図3
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図4
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図5
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図6
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図7
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図8
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図9
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図10
  • 特許-画像形成システム、画像形成装置及びプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】画像形成システム、画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240827BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240827BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240827BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G21/00 386
G03G21/00 510
B41J29/38 204
B41J29/393 101
B65H7/02
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020122591
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019048
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 研司
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006628(JP,A)
【文献】特開2007-243347(JP,A)
【文献】特開2014-178574(JP,A)
【文献】特開2019-188627(JP,A)
【文献】特開2019-030986(JP,A)
【文献】特開2019-155656(JP,A)
【文献】特開2017-072698(JP,A)
【文献】特開2020-045241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0244566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
B41J 29/00
B65H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を形成する画像形成部を含む画像形成装置を備えた画像形成システムであって、
前記記録材の記録材情報を検出する第1検出部と、
前記記録材が収納される記録材収納部と、
前記記録材を搬送する搬送部と、
前記第1検出部で検出された前記記録材情報に基づいて抽出された一又は複数の前記記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件で前記記録材収納部から供給された前記記録材に前記画像が形成され、前記記録材が排出される過程で、前記記録材に関する情報を検出する第2検出部と、
前記記録材の種類の候補ごとに、前記画像形成条件でテスト印刷を実行し、前記記録材の種類の候補に応じた前記画像形成条件で前記搬送部に前記記録材を搬送させて、前記第2検出部が検出した、前記記録材が前記記録材収納部から所定位置に到達するまでの時間を、前記記録材に関する情報として取得し、前記テスト印刷の実行結果と、前記画像形成条件、及び前記記録材に関する情報に基づいて、前記記録材の種類の候補から一の前記記録材の種類を特定する制御部と、を備える
画像形成システム。
【請求項2】
前記第1検出部は、前記画像形成条件に依存せずに前記記録材を検出し、
前記第2検出部は、前記画像形成条件に応じて前記記録材に関する情報を検出する
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記記録材の種類の候補ごとに、前記記録材に前記画像を形成するときに不適となる条件を含まない画像形成条件により、前記搬送部又は前記画像形成部に前記テスト印刷を行わせる
請求項1又は2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記画像形成条件は、前記記録材の種類の候補に合わせて制御値が変更される、給紙エア風量、転写条件、定着条件、及びテスト画像のうちの少なくとも一つの条件を含む
請求項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記記録材の複数の種類の候補における因子ごとの差異に合わせて、前記条件を決定する
請求項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記画像形成条件で規定される範囲内の単一の条件で前記搬送部又は前記画像形成部に前記テスト印刷を行わせる
請求項又はに記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像形成条件で規定される範囲内の複数の条件で前記搬送部又は前記画像形成部に前記テスト印刷を行わせる
請求項又はに記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記記録材の種類の候補に応じた前記テスト画像を前記記録材に形成する指示を前記画像形成部に行い、
前記第2検出部は、前記テスト画像が形成された前記記録材に関する情報を出力し、
前記制御部は、前記テスト画像が形成された前記記録材に関する情報に基づいて、前記記録材の種類の候補から一の前記記録材の種類を特定する
請求項に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記画像形成装置は、前記搬送部、前記画像形成部、前記制御部、及び前記第2検出部を有し、
前記第1検出部は、前記画像形成装置外に設けられた用紙情報検出装置が有する
請求項のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記第1検出部は、前記記録材収納部から前記搬送部に前記記録材が供給される経路に設けられ、
前記画像形成装置は、前記第1検出部、前記記録材収納部、前記搬送部、前記画像形成部、前記制御部、及び前記第2検出部を有する
請求項のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記画像形成装置は、前記第1検出部、前記記録材収納部、前記搬送部、前記画像形成部、前記制御部、及び前記第2検出部を有し、
前記第1検出部は、前記画像形成部より上流側の前記搬送部に設けられる
請求項のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記第2検出部は、前記搬送部に設けられる
請求項のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項13】
前記画像形成装置の後段には、前記画像が形成された前記記録材に対して所定の検査を行う検査装置、又は前記画像が形成された前記記録材に後処理を行う後処理装置が設けられ、
前記制御部は、前記検査装置又は前記後処理装置が備える前記第2検出部が検出した前記記録材に関する情報を判定する
請求項のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記制御部は、前記搬送部又は前記画像形成部に本番印刷を行わせる間に、前記記録材の種類の候補から一の前記記録材の種類を特定する
請求項のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項15】
前記制御部は、特定した記録材の種類に対応する画像形成条件によって、ユーザーから投入されたジョブに対する本番印刷を実行する
請求項14のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項16】
前記制御部は、前記記録材の複数の種類の候補における、前記記録材の種類ごとに規定される画質特性値のばらつきが所定の範囲内であれば、前記制御部が特定した一の前記記録材で前記搬送部又は前記画像形成部にユーザーから投入されたジョブに対する本番印刷を行わせる
請求項のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項17】
前記テスト印刷は、前記画像を前記記録材に形成せずに前記記録材を前記搬送部に搬送させる動作を含む
請求項1~1のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項18】
記録材に画像を形成する画像形成部を含む画像形成装置を備えた画像形成システムであって、
前記記録材の記録材情報を検出する第1検出部と、
前記記録材が収納される記録材収納部と、
前記記録材を搬送する搬送部と、
前記第1検出部で検出された前記記録材情報に基づいて抽出された一又は複数の前記記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件でテスト印刷を実行し、前記テスト印刷の実行結果に基づいて、前記記録材の種類の候補から一の前記記録材の種類を特定する制御部と、を備え、
前記テスト印刷は、前記画像を前記記録材に形成せずに前記記録材を前記搬送部に搬送させる動作を含む
画像形成システム。
【請求項19】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
前記記録材が収納される記録材収納部と、
前記記録材を搬送する搬送部と、
前記記録材の記録材情報を検出する第1検出部で検出された前記記録材情報に基づいて抽出された一又は複数の前記記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件で前記記録材収納部から供給された前記記録材に前記画像が形成され、前記記録材が排出される過程で、前記記録材に関する情報を検出する第2検出部と、
前記記録材の種類の候補ごとに、前記画像形成条件でテスト印刷を実行し、前記記録材の種類の候補に応じた前記画像形成条件で搬送部に前記記録材を搬送させて、前記第2検出部が検出した、前記記録材が前記記録材収納部から所定位置に到達するまでの時間を、前記記録材に関する情報として取得し、前記テスト印刷の実行結果と、前記画像形成条件、及び前記記録材に関する情報に基づいて、前記記録材の種類の候補から一の前記記録材の種類を特定する制御部と、を備える
画像形成装置。
【請求項20】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
前記記録材が収納される記録材収納部と、
前記記録材を搬送する搬送部と、
前記記録材の記録材情報を検出する第1検出部で検出された前記記録材情報に基づいて抽出された一又は複数の前記記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件で、前記画像を前記記録材に形成せずに前記記録材を前記搬送部に搬送させる動作を含むテスト印刷を実行し、前記テスト印刷の実行結果に基づいて、前記記録材の種類の候補から一の前記記録材の種類を特定する制御部と、を備える
画像形成装置。
【請求項21】
記録材に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置のコンピューターが実行するプログラムであって、
前記記録材の記録材情報を検出する第1検出部から前記記録材情報が入力するステップと、
記第1検出部で検出された前記記録材情報に基づいて抽出された一又は複数の前記記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件で、前記記録材の種類の候補ごとにテスト印刷を実行するステップと、
前記画像形成条件で、前記記録材が収納される記録材収納部から供給された前記記録材に前記画像が形成され、前記記録材が排出される過程で、前記記録材に関する情報を第2検出部が検出するステップと、
前記記録材の種類の候補に応じた前記画像形成条件で搬送部に前記記録材を搬送させて、前記第2検出部が検出した、前記記録材が前記記録材収納部から所定位置に到達するまでの時間を、前記記録材に関する情報として取得するステップと、
前記テスト印刷の実行結果と、前記画像形成条件、及び前記記録材に関する情報に基づいて、前記記録材の種類の候補から一の前記記録材の種類を特定するステップと、を
画像形成装置のコンピューターに実行させるためのプログラム。
【請求項22】
記録材に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置のコンピューターが実行するプログラムであって、
前記記録材の記録材情報を検出する第1検出部から前記記録材情報が入力するステップと、
前記第1検出部で検出された前記記録材情報に基づいて抽出された一又は複数の前記記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件で、前記画像を前記記録材に形成せずに前記記録材を搬送部に搬送させる動作を含むテスト印刷を実行するステップと、
前記テスト印刷の実行結果に基づいて、前記記録材の種類の候補から一の前記記録材の種類を特定するステップと、を
画像形成装置のコンピューターに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙種に応じて印刷の諸条件(「印刷条件」と呼ぶ)を変更する必要があり、誤った印刷条件を画像形成装置に設定すると、紙詰まりや画像不良が発生することがあった。昨今の印刷市場では多様な紙種の用紙が使われており、ユーザーが画像形成装置にセットした紙種を把握できない状況が増えてきた。そのため、用紙の特性を測定・検出可能なメディアセンサーにより画像形成装置で使用される用紙の紙種を自動的に検出するメディアセンサーを持つ画像形成システムが提供されるようになった。
【0003】
例えば、特許文献1には、メディアセンサーにより自動検知した紙種に基づき、用紙の種類を予想し、予想された種類に基づき画像形成条件を決定して用紙上に画像形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-200397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、メディアセンサーの検知結果で検知された用紙特性が予め登録された用紙種類の用紙特性と完全に合致するとは限らない。検知された用紙特性に近い用紙特性の用紙種類が複数存在する場合もある。特許文献1に開示された技術はさらに過去の履歴も用いて用紙の種類を予想して1つの用紙種類を特定するが、メディアセンサーの検知結果で検知された用紙特性と完全に合致するとは限らない。
【0006】
すなわち、実際にメディアセンサーで検知可能な限られた特性からでは1つの用紙種類に絞り込めず複数の用紙種類が候補となってしまう場合がある。このように用紙の種類が絞り込めない場合、実際にセットされた用紙に対して最適な画像形成条件を決定することが困難となる。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、メディアセンサーで用紙の種類を絞り込めない場合であっても用紙の種類を正確に特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した画像形成システムは、記録材に画像を形成する画像形成部を含む画像形成装置を備えており、記録材の記録材情報を検出する第1検出部と、記録材が収納される記録材収納部と、記録材を搬送する搬送部と、第1検出部で検出された記録材情報に基づいて抽出された一又は複数の記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件で記録材収納部から供給された記録材に画像が形成され、記録材が排出される過程で、記録材に関する情報を検出する第2検出部と、記録材の種類の候補ごとに、画像形成条件でテスト印刷を実行し、記録材の種類の候補に応じた画像形成条件で搬送部に記録材を搬送させて、第2検出部が検出した、記録材が記録材収納部から所定位置に到達するまでの時間を、記録材に関する情報として取得し、テスト印刷の実行結果と、画像形成条件、及び記録材に関する情報に基づいて、記録材の種類の候補から一の記録材の種類を特定する制御部と、を備える。
また、画像形成システムは、記録材に画像を形成する画像形成部を含む画像形成装置を備えており、記録材の記録材情報を検出する第1検出部と、記録材が収納される記録材収納部と、記録材を搬送する搬送部と、第1検出部で検出された記録材情報に基づいて抽出された一又は複数の記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件でテスト印刷を実行し、テスト印刷の実行結果に基づいて、記録材の種類の候補から一の記録材の種類を特定する制御部と、を備え、テスト印刷は、画像を記録材に形成せずに記録材を搬送部に搬送させる動作を含む。
なお、上記の画像形成システムは本発明の一態様であり、本発明の一側面を反映した画像形成装置及びプログラムについても、上記の画像形成システムと同様に構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メディアセンサーで用紙の種類を絞り込めない場合であっても、一又は複数の記録材の種類の候補に応じて設定された画像形成条件でテスト印刷を実行し、テスト印刷の実行結果に基づいて、記録材の種類の候補から一の記録材の種類を正確に特定することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る画像形成システムの概要構成図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る制御基板のハードウェア構成例を示す制御ブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の内部処理の例を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るメディアセンサーの設置場所の例を示す図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る操作画面の表示例を示す図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る全体制御部が用紙種類を特定する処理の例を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施の形態に係る許容制御条件テーブルの構成例を示す図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る紙種候補ごとの紙質、坪量及びサイズの例を示す図である。
図9】本発明の一実施の形態に係るセンサー検知値テーブルの例を示す説明図である。
図10】本発明の一実施の形態に係るテスト印刷における所定の条件と、目的との対応関係を示す図である。
図11】本発明の一実施の形態の変形例に係る紙種候補と、印刷条件の許容範囲及び最高濃度(画質特性値)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
[一実施の形態]
<画像形成システムの構成>
始めに、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る画像形成システムの構成例について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像形成システム1の概要構成図である。なお、図1には、本発明の説明に必要と考える要素又はその関連要素を記載しており、本発明の画像形成システムは図1に示す例に限定されない。
【0013】
画像形成システム1は、画像形成装置2、画像検査装置4及びメディアセンサー5を備える。メディアセンサー5は、画像形成装置2が備える給紙トレイ20に用紙Shがセットされる前に、ユーザーが用紙Shの用紙情報を検出させ、用紙Shをセットする給紙トレイ20を選択するために用いられる装置である。このため、メディアセンサー5は、画像形成装置2外に設置される。メディアセンサー5は、用紙Shの厚み、平滑度、剛度、及び坪量のうちの少なくとも一つ以上の用紙情報を測定可能である。このメディアセンサー5は、用紙Shの用紙情報を検出する用紙情報検出装置の一例として用いられる。
【0014】
始めに、画像形成装置2の内部構成例について説明する。
画像形成装置2は、静電気を用いて画像の形成を行う電子写真方式によって用紙に画像を形成する画像形成装置の一例である。画像形成装置2は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を重ね合わせるタンデム形式によって、用紙Sh上にカラー画像を形成する。画像形成装置2内には複数のセンサーが設置されており、搬送中の用紙Shの挙動や電気抵抗値や比熱等を測定可能である画像形成装置2には、LAN(Local Area Network)を介して、ユーザーによって操作されるPC(Personal Computer)70等の情報処理装置が接続されている。そして、PC70からLANを介して画像形成装置2にジョブが投入される。画像形成装置2は、投入されたジョブに従って、画像形成処理等の各種の処理を行う。
【0015】
この画像形成装置2は、自動原稿給送装置(ADF:Auto Document Feeder)12を有する画像入力部11、操作表示部13を備える。また、画像形成装置2は、給紙トレイ20及び画像形成部30を有するプリンター部10を備える。
【0016】
画像入力部11は、ADF12の原稿台にある原稿から画像を光学的に読み取り、読み取った画像をA/D変換して画像データを生成する。なお、画像入力部11は、プラテンガラス上で原稿から画像を読み込むこともできる。
【0017】
操作表示部13は、液晶パネル等からなる表示部、及び、タッチセンサ等からなる操作部で構成される。表示部及び操作部は、例えばタッチパネルとして一体に形成される。操作表示部13は、操作部に入力されたユーザーからの操作内容を表す操作信号を生成し、該操作信号を全体制御部60(後述する図3を参照)に供給する。また、操作表示部13は、全体制御部60から供給される表示信号に基づいて、表示部に、ユーザーによる操作内容や設定情報等を表示する。なお、操作部をマウスやタブレットなどで構成し、表示部とは別体で構成することも可能である。
【0018】
給紙トレイ20は、画像形成部30で画像形成(印刷)が行われる用紙Shを収納する容器である。用紙Shは、記録材の一例である。給紙トレイ20は、紙種や坪量等が異なる用紙Shを収納可能である記録材収納部の一例として用いられる。画像形成装置2は、記録材の一例である樹脂製のシートにも画像を形成することが可能である。図1に示すように、それぞれの給紙トレイ20が識別可能となるように“1”~“2”の給紙トレイ番号が割り振られている。このため、後の説明では、給紙トレイ番号に合わせて、給紙トレイ20を「給紙トレイ1」、「給紙トレイ2」のように呼ぶことがある。また、給紙トレイ1,2を区別しないときには、「給紙トレイ」とだけ呼ぶことがある。
【0019】
なお、本実施形態では、2つの給紙トレイ20を設けた例を挙げたが、給紙トレイ20の個数は1つであってもよく、3個以上であってもよい。また、画像形成装置2に大容量給紙装置を接続し、大容量給紙装置が備える給紙トレイから画像形成装置2に用紙Shを給紙するように構成してもよい。この場合、大容量給紙装置が備える給紙トレイにも一意に識別可能な給紙トレイ番号が付与される。
【0020】
画像形成装置2には、給紙トレイ20から給紙された用紙Shを画像検査装置4まで搬送する搬送路22が設けられる。搬送路22には、用紙Shを搬送するための複数の搬送ローラが設けられている。このため、搬送路22は、用紙Shを搬送する搬送部の一例として用いられる。搬送路22には、用紙Shの到着タイミングを検出するタイミングセンサー21が設けられる。タイミングセンサー21は、例えば、給紙トレイ20から用紙Shが送り出されてから、タイミングセンサー21が用紙Shを検出可能な位置まで用紙Shの先端が到達するまでの時間(「用紙到達時間」と呼ぶ)を計測する。用紙到達時間は、用紙Shの坪量によって変動する。
【0021】
定着部37の下流側では、搬送路22が伸長して画像検査装置4の搬送路41に接続されている。また、搬送路22は、定着部37の下流側で分岐する。分岐した搬送路22の一端には、プリンター部10の上流側の搬送路22に合流する反転搬送路23が接続されている。反転搬送路23には、用紙Shを反転させる反転部24が設けられている。反転部24で反転された用紙Shは、反転搬送路23を通して搬送路22の上流側に返される。また、経路の切り替えによって反転した用紙Shが、定着部37の下流側の搬送路22に戻された後、画像検査装置4に搬送されることもある。
【0022】
画像形成部30は、用紙Shに画像を形成する。このため、画像形成部30は、Y、M、C及びKの各色のトナー画像を形成するための、4つの画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kを備える。画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kは、中間転写ベルト34に画像を1次転写する作像部の一例として用いられる。画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kを区別しない場合、画像形成ユニット31と総称する。画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kはそれぞれ、帯電部、露光部(いずれも不図示)、像担持体としての感光体ドラム32Y,32M,32C,32K、及び、現像部33Y,33M,33C,33Kを備える。
【0023】
現像部33Y,33M,33C,33Kは、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kの各表面(外周部)に、画像に応じた光を照射することにより、各感光ドラムの周上に静電潜像を形成させる。そして、現像部33Y,33M,33C,33Kは、該静電潜像にトナーを付着させることにより、感光体ドラム32Y,32M,32C,32K上にトナー画像を形成する。
【0024】
また、画像形成部30は、中間転写ベルト34、2次転写部35、2次転写電流センサー36、定着部37及び定着温度センサー38を備える。中間転写ベルト34は、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kに形成された画像が1次転写されるベルトである。2次転写部35は、中間転写ベルト34上に1次転写された各色のトナー画像を、搬送路22を搬送された用紙Shに2次転写するローラである。
【0025】
定着部37は、2次転写部35の用紙搬送方向の下流側に配置されて、画像形成部30から供給されるカラーのトナー画像が形成された用紙Shに対して、定着処理を施す。定着部37は、搬送された用紙Shを加熱及び加圧することにより用紙Shの表面側に、画像形成部30により転写された画像を定着する。定着部37により画像が定着した用紙Shは、搬送路22によって画像検査装置4に搬送される。又は、画像が定着した用紙Shは、反転搬送路23を通して反転部24により表裏が反転された後、プリンター部10の上流側で搬送路22に返される。表裏反転された用紙Shは、プリンター部10によって裏面への画像形成が行われる。その後、定着部37によって定着処理が施された用紙Shは、画像検査装置4に搬送される。
【0026】
2次転写電流センサー36は、2次転写部35が、用紙Shにトナー画像を転写する際に通電する2次転写電流を測定する。2次転写電流は、用紙Shの厚みによって変動する。
定着温度センサー38は、定着部37が用紙Shにトナー画像を定着する際の定着温度を測定する。定着温度は、用紙Shの坪量差によって変動する。
2次転写電流センサー36及び定着温度センサー38は、用紙Shに関する情報として物性値を測定する物性値センサーの一例として用いられる。物性値センサーとしては、他の物性値を測定するセンサー(例えば、画像形成装置2内の温度及び湿度等を測定するセンサー)が含まれてもよい。
【0027】
次に、画像検査装置4の構成例について説明する。
画像検査装置4は、画像形成装置2の後段に設置され、画像形成装置2から搬送された用紙Shに対して所定の検査を行う。画像検査装置4で行われる所定の検査としては、例えば、用紙Shに形成(印刷)された画像の品質を検査したり、画像が正しい位置に形成されたかを検査したりするものがある。用紙Shに形成された画像に対する処理、すなわち画像検査装置4による画像の検査は、主に画像検査装置4に取付けられた画像処理装置40によって行われる。
【0028】
画像検査装置4は、画像形成装置2から搬送されてきた用紙Shを搬送する搬送路41,42,43、切替部44、読取部45a,45b、測色計46、搬送路41上を搬送された用紙Shが排紙される排紙トレイ47,48を有する。
【0029】
読取部45a,45bは、それぞれイメージセンサー等の画像入力装置の一例である。読取部45a,45bは、用紙Shに定着されたテスト画像、本番画像の濃度を測定する。濃度は、用紙Shの種類によって変動する。読取部45a,45bは、例えば、用紙Shの表面に光を投射し、用紙Shからの反射光を画像データとして取り込む。このように読取部45a,45bが用紙Shの画像データを取り込むことを「読取る」と呼ぶ。読取部45aは、搬送路41を搬送される用紙Shを搬送路41の下方から読取り、読取部45bは、搬送路41を搬送される用紙Shを搬送路41の上方から読取る。以降の説明では、読取部45a,45bを区別しないため、「読取部45」と総称する。そして、読取部45は、取り込んだ画像データを画像処理装置40に出力する。
【0030】
測色計46は、搬送路41を搬送される用紙Shの上面に形成された画像を読み取り、読み取って得た画像情報に基づいて、該画像の色濃度(反射濃度)を測定する色濃度測定装置の一例である。測色計46は、例えば、光の波長ごとの反射光の強度(スペクトル)を計測可能な測色器であり、測定した色の濃度(反射濃度)や、L*a*b*値などを出力する。
【0031】
画像検査装置4は、搬送路41に接続される搬送路42,43を備える。
搬送路42は、搬送路41の途中から分岐する経路であり、画像処理装置40により検査された用紙Shを、排紙トレイ47(排紙部の一例)に排紙する。排紙トレイ47には、画像処理装置40によって画像が正常と判定された用紙Sh(「正常用紙」とも呼ぶ)が排紙される。
【0032】
搬送路43についても、搬送路41の途中から分岐する経路であり、画像処理装置40により検査された用紙Shを、排紙トレイ48(排紙部の一例)に排紙する。排紙トレイ48には、画像処理装置40によって画像が異常と判定された用紙Sh(「異常用紙」とも呼ぶ)が排紙される。
【0033】
切替部44は、搬送路42,43のいずれかに用紙Shが搬送されるよう、用紙Shの搬送方向を切替える。なお、画像検査装置4に一つの排紙トレイ47しかない場合、正常用紙と異常用紙が混在して排紙される。この場合、正常用紙と異常用紙は、それぞれ排紙される方向に直交する方向に少しずらして排紙される。
【0034】
画像検査装置4に搬送される用紙Shは、両面又は片面に画像が形成された印刷物である。画像検査装置4は、画像形成装置2が用紙Shの両面又は片面に形成した画像を読取り、画像処理装置40が所定の検査を行う。
【0035】
本実施の形態では、画像形成装置2外に設置されたメディアセンサー5が、用紙Shの用紙情報を検出する第1検出部51を有する。一方で、画像形成システム1に構成される、メディアセンサー5以外のセンサーや装置を「第2検出部」と総称する。第2検出部は、画像形成装置2又は画像検査装置4の内部に設置される。第2検出部として、例えば、タイミングセンサー21、2次転写電流センサー36、定着温度センサー38、及び読取部45a,45bの少なくともいずれか一つが用いられる。第2検出部は、所定の印刷条件(画像形成条件の一例)で給紙トレイから供給された用紙Shに画像が形成され、用紙Shが排出される過程で、用紙Shに関する情報を検出する。
【0036】
本実施の形態では、画像形成装置2が用紙Shの両面に画像を形成可能であるため、画像処理装置40が用紙Shの両面を検査する例を挙げた。しかし、画像処理装置40は、用紙Shの片面だけに画像を形成可能な画像形成装置から搬送された用紙Shの片面だけを検査するように構成してもよい。
【0037】
また、画像形成装置2の後段には、画像検査装置4に代えて画像が形成された用紙Shに後処理を行う後処理装置が設けられてもよい。または、画像形成装置2の後段に、画像検査装置4及び後処理装置が設けられてもよい。そして、全体制御部60は、検査装置又は後処理装置が備える第2検出部が検出した用紙Shに関する情報を判定することができる。このように全体制御部60は、画像検査装置4及び後処理装置の少なくとも一つに設けられるセンサーを第2検出部として用いて得た結果により、複数の紙種候補から一の紙種(用紙Shの種類)を正確に特定することができる。その後、全体制御部60は、特定した用紙Shの種類に対応する印刷条件によって、ユーザーから投入されたジョブに対する本番印刷を実行する。
【0038】
<画像形成装置の制御基板の構成例>
次に、図2を参照して、画像形成装置2に設けられた制御基板15の概要について説明する。
図2は、制御基板15のハードウェア構成例を示す制御ブロック図である。
【0039】
画像形成装置2内に設けられる制御基板15は、CPU(Central Processing Unit)16、ROM(Read Only Memory)17及びRAM(Random Access Memory)18を備える。CPU16、ROM17及びRAM18は、不図示のバスにそれぞれ接続されている。制御基板15は、画像形成装置2及び画像検査装置4の電気負荷19の制御、メディアセンサー5の制御、PC70との通信を行う。PC70は、用紙Shを給紙するための給紙要求を制御基板15に送信する。
【0040】
CPU16は、本実施の形態に係る各機能を実現する制御プログラムのプログラムコードをROM17から読み出してRAM18にロードし、本実施の形態に係る各種の制御を実行する。CPU16に代えてMPU(Micro Processing Unit)を用いてもよい。
【0041】
ROM17は、CPU16が読み出す制御プログラムの他に、後述する紙種候補に対する制御条件テーブル等を格納する。また、ROM17には、OS(Operating System)、各種のパラメーターの他に、制御基板15を機能させるためのプログラムが記録されている。ROM17は、制御基板15によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記憶媒体の一例として用いられる。なお、ROM17と共に、不揮発性ストレージが用いられ、CPU16は、不揮発性ストレージに格納されたプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。また、不揮発性ストレージには、メディアセンサー5が検出した複数の紙種候補、及び第2検出部の検出結果により特定された紙種が記録されてもよい。不揮発性ストレージしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は不揮発性のメモリ等が用いられる。
【0042】
RAM18は、制御プログラムを実行するためのデータを一時的に保存するために用いられる。RAM18には、CPU16の演算処理の途中で発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメーター等がCPU16によって適宜読み出される。
【0043】
上述したようにメディアセンサー5は、用紙Shの用紙情報を検出する第1検出部51を備える。第1検出部51は、用紙Shから検出した用紙情報を制御基板15に出力し、用紙情報がRAM18に一時保存される。
【0044】
電気負荷19は、図1に示した用紙Shに画像を印刷するための負荷の集まりと、紙の特性を検知するためのセンサーとで構成される。負荷としては、用紙搬送に用いられる各種のモーター、及び画像形成に用いられるレーザー装置等がある。また、負荷としては、帯電、現像、転写において、画像形成部30に高電圧を加える高圧デバイスがある。また、負荷としては、定着部37を所定の定着温度まで加熱する定着ヒーターがある。また、センサーとしては、タイミングセンサー21、2次転写電流センサー36、定着温度センサー38及びイメージセンサー(画像検査装置4の読取部45a,45b)が含まれる。
【0045】
<画像形成装置の内部処理の例>
図3は、画像形成装置2の内部処理の例を示すブロック図である。図中に示す実線の矢印は通信線の経路を表し、破線の矢印は画像信号の経路を表し、一点鎖線の矢印は、データの入出力(I/O)又はアナログ信号の経路を表す。
【0046】
画像形成装置2には、LANを介してPC70が接続される他、例えば、インターネットを介して遠隔管理センター80が接続される。画像形成装置2は、操作表示部13、PC70又は遠隔管理センター80からの指示により、印刷動作等を開始する。
【0047】
画像形成装置2は、図1で説明した各機能部の他に、全体制御部60、画像処理制御部61、画像情報蓄積部62及び印刷制御部63を備える。そして、図2に示した制御基板15を、主要な機能ごとに制御基板15a,15bに分ける。操作表示部13、全体制御部60、画像処理制御部61及び画像情報蓄積部62の各機能は、画像処理に関わる制御基板15aにより実現される。また、印刷制御部63、画像形成部30、2次転写部35、定着部37、及び搬送路22の各機能は、用紙Shへの画像形成に関わる制御基板15bにより実現される。
【0048】
制御部の一例として用いられる全体制御部60は、操作表示部13、PC70又は遠隔管理センター80からの指示を受けると、ビットマップ展開した画像信号を画像処理制御部61に出力する。画像処理制御部61は、全体制御部60から入力した画像信号に対して所定の画像処理を施し、画像情報蓄積部62に画像処理後の画像情報を蓄積する。そして、画像処理制御部61は、印刷実行のタイミングで画像情報蓄積部62から読み出した画像情報の画像信号を画像形成ユニット31に出力する。
【0049】
ここで、全体制御部60は、第1検出部51で検出された用紙情報に基づいて、一又は複数の用紙Shの種類の候補を抽出する。そして、全体制御部60は、用紙情報に基づいて抽出された用紙Shの種類の候補に応じて設定された画像形成条件でテスト印刷を実行し、テスト印刷の実行結果に基づいて、用紙の種類の候補から一の用紙の種類を特定する。このテスト印刷では、例えば、画像形成部30により用紙Shに画像が形成される処理の他、2次転写部35にて2次転写電流が通電される処理、搬送路22を用紙Shが搬送される処理、画像検査装置4により用紙Shが読み取られる処理が行われる。
【0050】
例えば、ユーザーが、用紙Shに行われたテスト印刷の実行結果を確認した後、操作表示部13から一の用紙Shの種類を入力することで、全体制御部60が用紙Shの種類を特定することができる。
【0051】
また、全体制御部60は、複数の用紙Shの種類の候補から一の用紙Shの種類を自動的に特定することができる。そこで、第1検出部51は、印刷条件に依存せずに用紙Shの用紙情報を検出する。つまり、全体制御部60で印刷条件が決定される前に、第1検出部51は、用紙情報を検出する。
【0052】
その後、全体制御部60は、第1検出部51が検出した用紙情報に基づいて抽出した紙種候補に合わせて印刷条件を決定する。このため、第2検出部は、全体制御部60により決定された印刷条件に応じて用紙Shに関する情報を検出する。そして、全体制御部60は、印刷条件、及び、第2検出部が検出した用紙Shに関する情報に基づいて、用紙Shの種類の候補から一の用紙Shの種類を特定することができる。このように第1検出部51を用いた用紙情報の粗い検出方法と、第2検出部を用いた用紙Shに関する情報の詳細な検出方法の2段階とすることで、全体制御部60は、複数の紙種候補から一つの紙種を正確に絞り込むことができる。本実施の形態に係る紙種とは、例えば、用紙Shの種類を一意に特定する用紙番号等である。
【0053】
このため、全体制御部60は、印刷制御部63に対して、1回の印刷毎に印刷指令を出力する。印刷制御部63は、入力した印刷指令に従って、画像形成部30、2次転写部35、定着部37及び搬送路22等の負荷を制御して、搬送路22に用紙Shを搬送させたり、画像形成部30、2次転写部35、定着部37に用紙Shへの作像処理等を含む印刷動作を行わせたりする。
【0054】
この際、印刷条件が不適であれば、用紙Shにジャムが発生したり、用紙Shが定着ローラに貼り付いたりするようなトラブルが発生するおそれがある。そこで、全体制御部60は、複数の用紙Shの種類の候補ごとに、用紙Shに画像を形成するときに不適となる条件を含まない印刷条件により、搬送路22又は画像形成部30にテスト印刷を行わせる。用紙Shに画像を形成するときに不適となる条件とは、例えば、後述する図7に示す許容制御条件において、定着温度限界値で規定される範囲の下限未満又は上限以上となるような定着温度である。このように全体制御部60が、不適となる条件を含まない印刷条件とすることで、複数の紙種候補から一つの紙種を決定する際における、画像形成装置2のトラブルを防ぐことができる。
【0055】
遠隔管理センター80は、管理対象である画像形成装置2のトナー残量、動作状況、画像形成装置2で使用された用紙Shの用紙情報等を管理する。また、遠隔管理センター80は、上述したように画像形成装置2に対して印刷指示を行う他に、画像形成装置2から用紙情報に応じた最適な印刷条件を取得し、管理する。このため、遠隔管理センター80は、管理データベース81を備える。
【0056】
遠隔管理センター80は、他の画像形成装置2に設置されたメディアセンサー5が用紙Shの用紙情報を検出すると、この用紙情報を画像形成装置2から取得し、管理データベース81に用紙情報を保存する。遠隔管理センター80は、管理データベース81に保存した用紙情報と、印刷条件との関係に基づいて、他の画像形成装置2のメディアセンサー5で検出された用紙情報に応じた印刷条件を他の画像形成装置2に通知してもよい。この通知により、他の画像形成装置2においても、用紙情報に応じた最適な印刷条件で画像形成動作を行うことが可能となる。
【0057】
<メディアセンサーの設置場所>
図4は、メディアセンサーの設置場所の例を示す図である。メディアセンサーの設置場所として、以下の(1)~(3)の例が想定される。なお、図4では、画像検査装置4の記載を省略する。
【0058】
設置場所(1)は、図1に示したようにメディアセンサー5を画像形成装置2の外部に設置した例を表す。第1検出部51は、画像形成装置2外に設けられたメディアセンサー5が有する。上述したように画像形成装置2は、搬送路22、画像形成部30(図1を参照)、全体制御部60(図3を参照)及び第2検出部を有する。
【0059】
ユーザーは、画像形成装置2の外部に設置されたメディアセンサー5に用紙Shを手動でセットし、メディアセンサー5に用紙Shの用紙情報を検出させる。設置場所(1)に示す構成とした場合、メディアセンサー5が1個で足りるので、画像形成システム1の構築コストを下げることができる。
【0060】
設置場所(2)は、メディアセンサー5Aを画像形成装置2の内部に設置した例である。メディアセンサー5Aが有する第1検出部51は、給紙トレイ20から搬送路22に用紙Shが供給される経路に設けられる。つまり、メディアセンサー5Aは、給紙トレイ20ごとに設けられる。
【0061】
給紙トレイ20に用紙Shが収納されると、メディアセンサー5Aが用紙Shの用紙情報を自動的に検出する。つまり、ユーザーが、メディアセンサー5Aに用紙Shを検出させる作業を行わなくても、メディアセンサー5Aが用紙情報を検出することが可能である。その後、全体制御部60は、メディアセンサー5Aが検出した用紙情報に基づいて、印刷条件を変更し、用紙Shの紙種を特定する。設置場所(2)では、各給紙トレイ20にメディアセンサー5Aが設けられるので、ユーザーが各メディアセンサーに用紙Shの用紙情報を検出させる作業が不要となり、ユーザーの利便性が向上する。
【0062】
設置場所(3)についても、メディアセンサー5Bを画像形成装置2の内部に設置した例である。メディアセンサー5Bが有する第1検出部51は、画像形成部30より上流側の搬送路22に設けられる。そして、メディアセンサー5Bは、給紙トレイ20から給紙され、搬送路22を搬送されている途中の用紙Shの用紙情報を自動的に検出する。
【0063】
設置場所(3)の場合、複数の給紙トレイ20を備える画像形成装置2であっても、1個のメディアセンサー5Bだけを使えばよいので、画像形成システム1の構築コストを下げることができる。また、後述するように、テスト印刷で設定される複数のテスト印刷条件で搬送路22が搬送する用紙Shについて、メディアセンサー5Bがテスト印刷条件ごとに用紙情報を検出した結果に基づいて、全体制御部60が紙種を特定することが可能となる。
【0064】
第2検出部としては、本実施の形態に係る用紙Shの紙種を特定する特別なセンサーを用いるのでなく、別用途である既存のセンサーを流用してよい。また、設置場所(2)、(3)では、第2検出部が搬送路22に設けられる。このため、画像形成システム1に第2検出部を設けるための構築コストを下げることができる。
【0065】
<従来のテスト印刷の課題>
ここで、従来行われていた、用紙Shの紙種を特定するためのテスト印刷の課題について説明する。
メディアセンサー5は、用紙Shを静止させた状態で用紙Shの紙種を判別可能である。ただし、メディアセンサー5が紙種を検知する精度が低いと、紙種を一つに絞ることが困難であった。
【0066】
例えば、紙種によって、給紙トレイ20から用紙Shの搬送を開始し、画像形成装置2内の所定位置に到達するまでの時間が異なるので、画像形成装置2に用紙Shを通紙して時間を測る必要がある。また、紙種によって転写電流値が変動するので、用紙Shに画像を転写して転写電流値を測る必要がある。また、用紙Shの紙種によって用紙Shに印刷された画像の階調性が異なるので、テストパッチを印刷して読取部45a,45bで画像の階調性を測る必要がある。
【0067】
そこで、画像形成装置2や画像検査装置4内にある各種センサーで用紙Shの特性を追加検知することで紙種を検知する精度を高めることが可能と考えられる。この場合、実際に画像形成装置2内に用紙Shを通紙して画像形成動作を実施することが必要である。
【0068】
ところで、メディアセンサー5が用紙Shの紙種を検知する前は、紙種が特定されていないので画像形成装置2がテスト印刷することは困難である。また、全く紙種の目途がついていない、すなわちメディアセンサー5(第1検出部51)が用紙Shの紙種を検知していない場合、例えば、以下の理由(1)、(2)に示すようにテスト印刷が困難であった。
【0069】
(1)用紙Shを給紙するために吹き付けるエアの適切な風量が不明であれば、用紙Shの紙詰まりが発生してしまう。用紙Shの紙詰まりを発生させないためには、給紙時間を著しく低下させなければならない。
(2)適切な定着温度が不明であれば、用紙Shが定着部37のローラに巻き付くことがある。しかし、用紙Shの巻き付き防止のために定着温度を下げると、トナーが溶けないので用紙Shにテスト画像を印刷できない。
【0070】
そこで、これらの課題を解決すべく、全体制御部60は、メディアセンサー5が検知した紙種から一又は複数の紙種候補を抽出し、この紙種候補に応じて、テスト印刷時における制御値や制御対象等の印刷条件を変更する。そして、全体制御部60は、第2検出部による検出結果を含むテスト印刷の結果に基づいて、複数の紙種候補から一つの紙種を特定する。その後、全体制御部60は、特定した紙種に応じた印刷条件でユーザーから投入されたジョブに対する印刷を本番印刷として実行する。
【0071】
以下に、本実施の形態に係る紙種を特定するために必要な処理について説明する。なお、本実施の形態に係るテスト印刷とは、テスト画像を用紙Shに形成する動作に限らず、テスト画像を用紙Shに形成せずに用紙Shを搬送路22に搬送させるだけの動作も含む。
【0072】
<操作画面の表示例>
次に、操作表示部13に表示される操作画面について説明する。
図5は、操作画面W1の表示例を示す図である。
【0073】
例えば、給紙トレイ1が開かれ、用紙Shがセットされた後、給紙トレイ1が閉じられると、図5に示す操作画面W1が操作表示部13に表示される。例えば、今回、ユーザーが給紙トレイ1を開閉するより前に、用紙サイズがA3、紙種が普通紙、坪量が55gの用紙情報が給紙トレイ1に設定済みであったとする。また、給紙トレイ2には、既に用紙サイズがA4、紙種が塗工紙、坪量が150gの用紙情報が設定済みであったとする。
【0074】
ただし、今回の処理で給紙トレイ1が開閉されると、全体制御部60は、給紙トレイ1にセットされた用紙Shの紙種が、前回までに給紙トレイ1にセットされた用紙Shと同じ紙種であるか、それとも異なる紙種であるかが分からなくなる。そして、今回、ユーザーが給紙トレイ1にセットした用紙Shの紙種が、前回までに給紙トレイ1にセットされた用紙Shと異なる紙種であれば、給紙トレイ1には新たに紙種を設定しなければ印刷不良が生じてしまう。
【0075】
そこで、操作画面W1には、「トレイ1に紙が充填されました。自動紙種検知しますか?」というメッセージが表示される。例えば、ユーザーは、操作画面W1に表示された給紙トレイ1に設定される用紙情報を確認し、用紙情報に誤りがなければ、操作表示部13に設けられる印刷ボタン(不図示)を押して印刷開始を指示することができる。一方、ユーザーは、用紙情報が誤っているため、正しい用紙情報を給紙トレイ1に再設定する必要があれば、操作画面W1に表示されたYESボタンを押す。
【0076】
この操作により、ユーザーは、自動紙種検知の実行指示を入力可能である。自動紙種検知の実行指示が入力されると、図6以降で説明する、全体制御部60が用紙種類を特定する処理が開始される。その結果、給紙トレイ1にセットされた用紙Shの紙種が特定され、給紙トレイ1に正しい用紙情報が設定されるようになる。
【0077】
例えば、図4の説明図(1)に示した、画像形成装置2外に第1検出部51を含むメディアセンサー5が設けられた例では、メディアセンサー5に用紙Shがセットされたことで、第1検出部51が検出した用紙情報に基づいて、全体制御部60が一又は複数の紙種候補を抽出する。このため、図5に示す操作画面W1に、抽出された紙種候補が表示されてもよく、ユーザーが紙種候補から紙種を選択することで、給紙トレイにセットされた用紙Shの紙種が特定されてもよい。また、ユーザーが、操作画面W1から紙種を選択しなくても、操作画面W1内のYESボタンを押すことで、画像形成装置2内を用紙Shが搬送されて、第2検出部が、用紙Shに関する情報を検出し、全体制御部60が用紙Shの紙種を特定してもよい。
【0078】
また、図4の説明図(2)に示した給紙トレイに第1検出部51を含むメディアセンサー5Aが設けられた構成では、例えば、用紙Shがセットされた給紙トレイが閉じられたタイミングで、メディアセンサー5Aの第1検出部51が用紙情報を検出し、全体制御部60が一又は複数の紙種候補を抽出する。この際、抽出された紙種候補が操作画面W1に表示されてもよく、ユーザーが紙種候補から紙種を選択することで、給紙トレイにセットされた用紙Shの紙種が特定されてもよい。一方、抽出された紙種候補が操作画面W1に表示されなくても、ユーザーが、操作画面W1内のYESボタンを押すことで、再び用紙Shが画像形成装置2内を搬送されて、第2検出部が、用紙Shに関する情報を検出し、全体制御部60が用紙Shの紙種を特定してもよい。
【0079】
また、図4の説明図(3)に示した給紙トレイに第1検出部51を含むメディアセンサー5Bが設けられた構成においても、例えば、用紙Shがセットされた給紙トレイが閉じられたタイミングで、画像形成装置2内を用紙Shが搬送され、搬送路22に設けられたメディアセンサー5Bの第1検出部51が用紙情報を検出し、全体制御部60が一又は複数の紙種候補を抽出する。この際、抽出された紙種候補が操作画面W1に表示されてもよく、ユーザーが紙種候補から紙種を選択することで、給紙トレイにセットされた用紙Shの紙種が特定されてもよい。一方、抽出された紙種候補が操作画面W1に表示されなくても、ユーザーが、操作画面W1内のYESボタンを押すことで、再び用紙Shが画像形成装置2内を搬送されて、第2検出部が、用紙Shに関する情報を検出し、全体制御部60が用紙Shの紙種を特定してもよい。
【0080】
次に、画像形成システム1で行われる処理について説明する。
図6は、全体制御部60が用紙種類を特定する処理の例を示すフローチャートである。
【0081】
始めに、ユーザーは、画像形成装置2外(オフライン)に設置されたメディアセンサー5に用紙Shをセットして、操作表示部13を通じて、メディアセンサー5に用紙Shの用紙情報(紙厚、坪量、平滑度等)の検出を指示する(S1)。メディアセンサー5は、セットされた用紙Shの用紙情報を検出し、全体制御部60に用紙Shの用紙情報を出力する。
【0082】
なお、図4の説明図(2)、(3)に示したメディアセンサー5A,4Bが画像形成装置2の内部にある構成では、ステップS1の処理が、給紙トレイから搬送路22に用紙Shを1枚給紙する過程で、メディアセンサー5A,4Bが用紙情報を検出する処理に置き換えられる。
【0083】
次に、全体制御部60は、ROM17に内蔵する公知の紙種判別用プログラムを読み出して実行し、メディアセンサー5が出力した用紙情報に基づいて、用紙Shの第1段階の紙種候補を抽出する(S2)。第1段階の紙種候補として、一又は複数の紙種候補が抽出される。次に、全体制御部60は、第1段階の紙種候補が1種類であるか否かを判断する(S3)。
【0084】
第1段階の紙種候補が1種類である場合(S3のYES)、ユーザー又は全体制御部60は、この紙種候補を用紙Shの紙種として特定する(S4)。そして、全体制御部60は、決定した紙種で、RAM18に登録される紙種登録情報を更新して、本処理を終了する。この際、ユーザーが操作表示部13を用いて、紙種候補が特定された用紙Shを収納する給紙トレイ20を指定すると、紙種登録情報が更新される。なお、紙種登録情報の更新は、全体制御部60が自動的に行うことも可能である。
【0085】
一方、第1段階の紙種候補が1種類でない、すなわち複数種類である場合(S3のNO)、ユーザーは給紙トレイ20に用紙Shをセットし、操作表示部13から紙種絞り込みを指示する。この指示は、例えば、図5に示した操作画面W1のYESボタンをユーザーが押すことで行われる。
【0086】
紙種の絞り込みが指示されると、全体制御部60は、紙種候補に応じた所定の条件でテスト印刷を実行する(S5)。ここで、全体制御部60は、印刷条件で規定される範囲内の単一の条件で搬送路22又は画像形成部30にテスト印刷を行わせて、短時間で紙種候補から一の紙種を絞ることができる。また、全体制御部60は、印刷条件で規定される範囲内の複数の条件で搬送路22又は画像形成部30にテスト印刷を行わせて、紙質が似ている複数の紙種候補から一の紙種を絞ることもできる。印刷条件は、紙種候補に合わせて制御値が変更される、給紙エア風量、転写条件、定着条件、及びテスト画像のうちの少なくとも一つの条件を含む。ただし、印刷条件には、用紙Shに画像を形成するときに不適となる条件を含まないものとする。
【0087】
そして、ステップS5で実行されるテスト印刷では、全体制御部60が、印刷条件で規定される範囲内の条件に応じて、電気負荷19、画像形成部30及び搬送路22の少なくとも一つの動作を変更する。例えば、全体制御部60は、定着温度を変動させたり、2次転写電流を増減したり、用紙Shの搬送速度を変動させたりする。
【0088】
そして、第2検出部がテスト印刷される用紙Shを検出する(S6)。第2検出部が検出した用紙Shの検出値が全体制御部60に出力される。
【0089】
全体制御部60は、テスト印刷中に第2検出部から入力した検出値に基づいて、用紙Shの紙種を、複数の紙種候補から1つの紙種に特定する(S7)。そして、全体制御部60は、テスト印刷した用紙Shが格納されていた給紙トレイ20に対して設定される紙種登録情報を更新し、RAM18に紙種登録情報を記憶させて、本処理を終了する。
【0090】
<テスト印刷条件の決め方>
次に、複数の紙種候補それぞれのNG条件を含まないテスト印刷条件の決め方について、図7を参照して説明する。
図7は、許容制御条件テーブルの構成例を示す図である。
【0091】
許容制御条件テーブルは、画像形成装置2で使用される用紙Shの紙種ごとに、用紙Shの坪量と、許容制御条件とが、ROM17に記憶されている。この許容制御条件テーブルは、用紙Shの紙質ごと、例えば、普通紙、コート紙ごとに設けられる。例えば、図7に示すテーブルが普通紙に対して設けられていれば、同様のテーブルがコート紙に対しても設けられる。
【0092】
図7に示す許容制御条件として、例えば、定着部37が用紙Shに画像を定着させるときの定着温度目標値(℃)及び定着温度限界値(℃)と、2次転写部35が用紙Shに画像を2次転写させるときの2次転写電流目標値(mA)及び2次転写電流限界値(mA)とがある。この他にも、許容制御条件として、例えば、給紙トレイ20から用紙Shを給紙する際、用紙Shに吹き付けて用紙Shの先端を浮かせるエアの給紙エア風量、搬送路22が用紙Shを搬送するときの用紙搬送速度等がある。
【0093】
2次検出部で検出可能な定着温度、2次転写電流、給紙エア風量、用紙搬送速度を因子と呼ぶ。因子ごとに限界値で示される許容範囲を超えると、用紙Shが紙詰まりしたり、用紙Shに形成され、定着された画像に不良が生じたりする。このため、全体制御部60は、2次検出部が検出する因子ごとに設定される許容範囲の下限値又は上限値を超えないようにテスト印刷時の印刷条件を変更する。
【0094】
メディアセンサー5が用紙Shを読み取った結果、図7に示す許容制御条件テーブルに示される、坪量が150~199gの範囲に含まれる紙種a、坪量が200~249gの範囲に含まれる紙種b、坪量が250~299gの範囲に含まれる紙種cの3種類の紙種が紙種候補として選ばれたとする。許容制御条件テーブルより、紙種aの定着温度限界値は160~170℃、紙種bの定着温度限界値は160~175℃、紙種cの定着温度限界値は170~185℃であることが分かる。
【0095】
ここで、紙種a,b,cにおける定着温度限界値を超える温度(190℃等)は、テスト印刷に合わない定着温度であり、テスト印刷に不適当である。このように用紙Shに画像を形成するときに不適となる、限界値を超える値を含む印刷条件を「NG条件」と呼ぶ。一方、全体制御部60は、複数の紙種候補を選んでも、どの紙種候補でも許容される定着温度があれば、その定着温度をテスト印刷で使用する。例えば、全体制御部60は、紙種a,b,cにおける定着温度限界値内の定着温度を170℃(図中に丸印で囲って示す)として、複数の紙種候補から一つの紙種を特定するテスト印刷を行う。
【0096】
図8は、紙種候補ごとの紙質、坪量及びサイズの例を示す図である。
3種類の紙種候補(紙種A,B,C)のそれぞれに対して、公知の技術により紙質、坪量及びサイズが判明する。ここで、図7に示した許容制御条件テーブルで選ばれた紙種a,b,cと、図8以降で説明する紙種A,B,Cとは異なるものである。
【0097】
図8に示す紙種候補Aの紙質は普通紙であるが、紙種候補B,Cの紙質はコート紙である。また、紙種候補A,Bの坪量は50~99gの範囲に含まれるが、紙種候補Cの坪量は100~149gの範囲に含まれる。また、紙種候補A,B,Cのサイズは、いずれも同じA3である。なお、図8には示されていないが、紙種候補A,B,Cの紙厚はいずれも同じであったとする。
【0098】
このように紙種候補A,B,Cは、紙質と坪量が異なっていた。そこで、以下の2種類のテスト印刷が2回行われる。
(1)1回目のテスト印刷
用紙Shの紙質の違いは、画質差として現れやすい。そこで、1回目のテスト印刷では、全体制御部60が、画像形成部30にテスト画像の印刷を指示する。そして、全体制御部60は、読取部45a,45bが用紙Shに印刷されたテスト画像を読み取った結果に基づいて、紙種候補Aと、紙種候補B,Cとを識別する。
【0099】
(2)2回目のテスト印刷
用紙Shの坪量の違いは、用紙Shの挙動差として現れやすい。そこで、2回目のテスト印刷では、全体制御部60が、給紙時に用紙Shに吹き付けるエアの給紙エア風量を固定した状態で通紙させる。そして、全体制御部60は、用紙Shの挙動、すなわちタイミングセンサー21が計測する用紙到達時間に基づいて、紙種候補A,Bと、紙種候補Cとを識別する。
【0100】
なお、全体制御部60が第1検出部51の検出結果から抽出した紙種候補が1種類又は2種類である場合、1回のテスト印刷だけで紙種を特定することができる。また、図8では、2種類のテスト印刷を行う例について説明した。しかし、紙種候補が3種類であっても、全体制御部60は、テスト印刷したテスト画像の読取りと、固定した給紙エア風量で通紙した用紙Shの用紙到達時間の計測とを同時に行わせ、1回のテスト印刷だけで紙種を特定してもよい。
【0101】
このように全体制御部60は、用紙Shの複数の種類の候補における因子(紙質、坪量、サイズ等)ごとの差異に合わせて、制御値を変更する条件を決定する。全体制御部60は、紙種ごとに差が生じやすい因子により制御条件を決定してテスト印刷を行うことで、複数の紙種候補から一の紙種を正確に絞ることができる。
【0102】
図8に示したように全体制御部60が、紙質又は坪量で紙種候補を分けることが可能であれば、テスト印刷時に用いる第2検出部を選択し、第2検出部が検知した値に基づいて、複数の紙種候補から紙種を特定することが可能となる。そこで、用紙Shの特性別に第2検出部として用いられる、各センサーの検知値を表すセンサー検知値テーブルの例について説明する。
【0103】
図9は、センサー検知値テーブルの例を示す説明図である。以下の説明図(1)~(3)に示す各センサー検知値テーブルは、ROM17に記憶される。また、説明図(4)は、用紙Shにテスト印刷されたテスト画像の例である。
【0104】
図9の説明図(1)は、紙質と画像濃度との関係を示すセンサー検知値テーブルの例を示す。紙質ごとに異なる画像濃度は、第2検出部として用いられる読取部45a,45bが検出する。図中に示される画像濃度は、用紙Shにテスト印刷されたテスト画像の最高濃度を表す。説明図(1)には、用紙Shの紙質の差により、画像濃度が異なることが示される。例えば、用紙Shの紙質が普通紙であれば画像濃度が“8”であり、用紙Shの紙質がコート紙であれば画像濃度が“9”~“10”である。そして、全体制御部60は、説明図(1)のセンサー検知値テーブルを参照し、画像濃度に対応する紙質を求める。
【0105】
図9の説明図(2)は、坪量と用紙到達時間との関係を示すセンサー検知値テーブルの例を示す。坪量ごとに異なる用紙到達時間は、第2検出部として用いられるタイミングセンサー21が検出する。坪量が多くなるほど、用紙到達時間が長くなる。ここでは、用紙Shの坪量の差異により、用紙到達時間が異なることが示される。例えば、坪量が50~99gでは用紙到達時間が150~154msであり、坪量が100~149gでは用紙到達時間が155~159msであり、坪量が150~199gでは用紙到達時間が160~164msである。
【0106】
そこで、全体制御部60は、用紙Shの種類の候補に応じた印刷条件で搬送路22に用紙Shを搬送させて、第2検出部が検出した、用紙Shが給紙トレイから所定位置に到達するまでの時間(用紙到達時間)を、用紙Shに関する情報として取得する。そして、全体制御部60は、説明図(2)のセンサー検知値テーブルを参照し、用紙到達時間に対応する坪量を求める。
【0107】
例えば、図8に示した例では、用紙Shの紙質と坪量に差があった。そこで、全体制御部60は、用紙Shの特性として、説明図(1)を参照して説明した読取部45a,45bで画像濃度を検知し、説明図(2)を参照して説明したタイミングセンサー21で用紙到達時間を検知する。
【0108】
図9の説明図(3)は、紙厚と2次転写電流との関係を示すセンサー検知値テーブルの例を示す。紙厚ごとに異なる2次転写電流の値は、第2検出部として用いられる2次転写電流センサー36が検出する。紙厚が厚くなるほど、2次転写電流の値が大きくなる。ここでは、用紙Shの紙厚の差異により、2次転写電流が異なることが示される。例えば、100μm以下の紙厚の用紙Shでは2次転写電流が150μA未満であり、101~250μmの紙厚の用紙Shでは2次転写電流が151~250μAであり、211~500μmの紙厚の用紙Shでは2次転写電流が171~190μAであり、511μm以上の紙厚の用紙Shでは2次転写電流が191μA以上である。そして、全体制御部60は、説明図(3)のセンサー検知値テーブルを参照し、2次転写電流に対応する紙厚を求める。
【0109】
図9の説明図(4)は、用紙Shにテスト印刷されたテスト画像の例である。テスト画像は、用紙ShにY,M,C,Kの各色でベタ塗りしたパッチ画像が用いられる。全体制御部60は、用紙Shの種類の候補に応じたテスト画像を用紙Shに形成する指示を画像形成部30に行い、第2検出部は、テスト画像が形成された用紙Shに関する情報を全体制御部60に出力する。そして、全体制御部60が、テスト画像が形成された用紙Shに関する情報に基づいて、用紙Shの紙種候補から一の紙種を特定することができる。
【0110】
テスト印刷した結果、全体制御部60は、2次転写電流が157μAであり、画像濃度が“9”であれば、用紙Shの坪量が100~149g、紙質がコート紙と判定する。そこで、全体制御部60は、用紙Shの紙種を、図8に示した紙種候補Cと特定することができる。
【0111】
なお、テスト印刷する際には、目的に応じて印刷条件を変える必要がある。
そこで、テスト印刷する際の印刷条件について、図10を参照して説明する。
図10は、テスト印刷における所定の条件と、目的との対応関係を示す図である。
【0112】
例えば、全体制御部60が紙種を一つに絞りきれていなければ、複数の紙種候補に合わせて設定したテスト印刷の印刷条件では、テスト印刷時に様々なトラブルが発生することがある。トラブルの種類としては、給紙エア風量が適正でないことによる紙詰まり、転写条件が適正でないことによる転写ローラへの用紙Shの巻き付き等がある。また、定着条件(制御温度)が適正でないことにより、定着ローラのトナー汚れやブリスタ現象(例えば、画像形成面に生じる膨れ)が発生したり、定着ローラへの用紙Shの巻き付きが発生したりする。また、テスト画像が適正でないことによる定着ローラへの用紙Shの巻き付きが発生したりする。
【0113】
このようなトラブルを防ぐことを目的として、全体制御部60は、複数の紙種候補に見合った印刷条件を設定する必要がある。図10に示す関係により、例えば、トナー汚れの防止を目的とする場合、図7に示した条件に従って、適正な定着温度を限界範囲内で選択する必要があることが示される。また、紙詰まりや定着ローラへの用紙Shの巻き付きの発生を防止するために、給紙エア風量やテスト画像を適正にする必要があることが示される。しかし、図7の許容制御条件テーブルにて、坪量が50~99gの範囲に含まれる紙種、坪量が250~299gの範囲に含まれる紙種が抽出されると、定着温度の限界値が重ならない。この場合、実際には、用紙Shの坪量が50~99gであって、定着温度の限界値が150~160℃であるにも関わらず、坪量が250~299gの紙種候補に合わせて、定着温度の限界値が170~185℃でテスト印刷を行ってしまうと、用紙Shに著しいダメージを与えるおそれがある。
【0114】
そこで、例えば、定着温度が複数の紙種候補ごとに規定される限界範囲内に収まらない場合、全体制御部60は、1回ごとに異なる定着温度を設定して、複数回のテスト印刷を行う。そして、全体制御部60は、定着条件として定着温度を変更する場合、低い定着温度、高い定着温度の順に変更する。また、全体制御部60は、低い定着温度で用紙Shの紙種を特定できれば、高い定着温度でテスト印刷を行わなくてもよい。このように定着温度を変更してテスト印刷することで、適正でない高い定着温度でテスト印刷されたことで、用紙Shが定着ローラに巻き付いて、以降のテスト印刷が行えなくなるという事態を避けることができる。
【0115】
他にも、給紙エア風量が複数の紙種候補ごとに規定される限界範囲内に収まらない場合においても、全体制御部60は、1回ごとに異なる給紙エア風量(1回目は少ない給紙エア風量、2回目は多い給紙エア風量)を設定して、複数回のテスト印刷を行う。他の目的においても同様に、複数回のテスト印刷を行う。例えば、2次転写電流が複数の紙種候補ごとに規定される限界範囲内に収まらない場合においても、1回ごとに異なる2次転写電流(1回目は少ない2次転写電流、2回目は多い2次転写電流)を設定して、複数回のテスト印刷を行う。
【0116】
以上説明した一実施の形態に係る画像形成システム1では、第1のセンサーとして用いるメディアセンサー5が用紙Shから用紙情報を検出することで、全体制御部60が一又は複数の紙種候補を抽出する。そして、全体制御部60は、抽出した紙種候補に応じて印刷条件を変更して行われた処理の実行結果に基づいて、紙種候補から紙種を特定する。
【0117】
ここで、紙種候補によって、紙種の特性差が顕著に現れる第2検出部が異なる。そこで、全体制御部60は、第2検出部がテスト印刷で検出した用紙Shの検出値を用いて、複数の紙種候補から一つの紙種を正確に特定することができる。
【0118】
第2検出部は、画像形成装置2又は画像検査装置4内に複数種類が設けられており、既存のセンサーを第2検出部として用いることができる。また、既存のセンサーを第2検出部として用いるので、本実施の形態に係る画像形成システム1を構成する際に、新たなコストを生じさせなくてすむ。
【0119】
[変形例]
<本番印刷中に行うテスト印刷>
ここまで、本番印刷に先立って行われる、複数の紙種候補から一つの紙種を特定するテスト印刷について説明した。ただし、テスト印刷は、本番印刷中に行ってもよい。
図11は、紙種候補と、印刷条件の許容範囲及び最高濃度(画質特性値)との関係を示す図である。
【0120】
図11には、印刷条件の許容範囲として、定着温度許容範囲及び給紙エア風量許容範囲が示される。また、図11には、画質特性として、用紙Shに印刷された画像の最高濃度が示される。これらの紙種候補と、印刷条件の許容範囲及び画質特性との関係は、ROM17に記憶されており、全体制御部60がテスト印刷の制御を行う際に適宜読み出される。
【0121】
紙種候補D,E,Fごとに、定着温度許容範囲及び給紙エア風量許容範囲の各値は異なる。紙種によっては、印刷された画像が同じであっても、濃度が異なったり、同じになったりする。しかし、紙種候補D,E,Fの最高濃度の値は、いずれも“7”~“8”の同じ範囲に含まれる。
【0122】
ここで、紙種候補D,E,Fの定着温度許容範囲のいずれにも含まれる定着温度(例えば、170~175℃)があり、紙種候補D,E,Fの給紙エア風量許容範囲のいずれにも含まれる給紙エア風量(例えば、35~40%)がある。このため、テスト印刷において、定着温度許容範囲のいずれにも含まれる定着温度(例えば、170℃)、又は給紙エア風量許容範囲のいずれにも含まれる給紙エア風量(例えば、36%)であれば、ユーザーが画質の変化に気づきにくい。
【0123】
このように複数の紙種候補の印刷条件や画質が近似している場合、本番印刷中にテスト印刷も並行させることで、本番印刷中に紙種を特定することが可能となる。全体制御部60は、用紙Shの複数の種類の候補における、用紙Shの種類ごとに規定される画質特性値のばらつきが所定の範囲内であれば、全体制御部60が特定した一の用紙Shで搬送路22又は画像形成部30にユーザーから投入されたジョブに対する本番印刷を行わせる。図11に示したように、紙種候補が印刷条件の限界許容範囲内に収まり、かつ画質特性値が同じならば、本番印刷とテスト印刷を並行させる。そして、全体制御部60は、搬送路22又は画像形成部30に本番印刷を行わせる間に、用紙Shの種類の候補から一の用紙Shの種類を特定する。
【0124】
このように本番印刷中にテスト印刷も行えば、紙種を特定するための処理に要する時間を節約できる。また、テスト印刷した用紙Shも本番印刷したものと同じように扱えるので、用紙Shのロスを防ぐことができる。
【0125】
<他の変形例>
なお、第2検出部としては、用紙Shの光沢を検出する光沢検出センサーや、用紙Shの紙厚を検出する紙厚センサーを用いてもよい。
【0126】
また、図8図11には、紙種候補ごとに特性が規定される特性テーブルを用いて、用紙Shの特性から紙種を特定する例について示した。しかし、全体制御部60は、テスト印刷や本番印刷中に第2検出部が検出した検出結果を用紙情報と紐づけてRAM18に記憶させる。そして、全体制御部60は、次回のテスト印刷時に第2検出部が検出した検出結果がRAM18に記憶された検出結果に合致した場合に、用紙Shの用紙情報を特定してもよい。
【0127】
また、テスト印刷は、画像を用紙Shに形成せずに用紙Shを搬送路22に搬送させる動作を含むものとしてもよい。
また、画像形成装置2の外部にある情報処理装置が、メディアセンサー5の第1検出部51で検出された用紙情報から一又は複数の用紙Shの種類の候補を抽出してもよい。そして、この情報処理装置が抽出した一又は複数の用紙Shの種類の候補が、全体制御部60に出力されて、以降の処理で用いられてもよい。
【0128】
また、全体制御部60は、用紙情報のプロセス調整値を参考にして、テスト印刷で転写電流を下げるべきと判断した場合に、複数の紙種候補のうち、最も転写電流が低い調整値が紐づけられた紙種を選んでもよい。
【0129】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1…画像形成システム、2…画像形成装置、4…画像検査装置、5…メディアセンサー、13…操作表示部、15…制御基板、19…電気負荷、20…給紙トレイ、21…タイミングセンサー、22…搬送路、30…画像形成部、36…2次転写電流センサー、38…定着温度センサー、45…読取部、51…第1検出部、60…全体制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11