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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/20 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020128882
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025800
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】今枝 寛雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知範
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 達夫
(72)【発明者】
【氏名】福江 修平
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-177041(JP,A)
【文献】特開2010-231008(JP,A)
【文献】特開2012-008394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラを有する第1定着部材と、
前記第1定着部材との間でシートを挟む第2定着部材であって、無端状のベルトと、前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟んでニップ部を形成する第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材と、第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材を前記定着部材とは反対側から支持する1つのホルダと、を有する第2定着部材と、
前記第1定着部材または前記第2定着部材を加熱するヒータと、
前記第2定着部材前記第1定着部材に対して近接・離間する方向である所定方向であって、直線に沿った所定方向、前記ホルダを移動可能に支持するガイドと、
前記第2定着部材を前記第1定着部材に付勢するバネと、
前記第2定着部材を前記所定方向に移動させるカムと、
前記第1定着部材の軸方向において前記第1定着部材の端部を支持するフレームと、
制御部と、を備え、
前記第1ニップ形成部材は、直方体状のゴムであり、
前記第2ニップ形成部材は、前記第1ニップ形成部材よりも硬い直方体状のゴムであり、前記シートの搬送方向において、前記第1ニップ形成部材に対して下流側に間隔を空けて配置され、
前記第1ニップ形成部材の前記第1定着部材側の面である第1先端面は、前記所定方向において、前記第2ニップ形成部材の前記第1定着部材側の面である第2先端面よりも前記第1定着部材の近くに位置し、
前記フレームは、前記ガイドとしての溝であって、前記所定方向に延びる溝を有し、
前記制御部は、
前記第2定着部材を、前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材の両方が前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む位置に位置させて印刷を行う第1印刷処理と、
前記第2定着部材を、前記第1ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、かつ、前記第2ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟まない位置に位置させて印刷を行う第2印刷処理と、を実行可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1ニップ形成部材の前記搬送方向における上流側の面は、前記ホルダに接触し、
前記第2ニップ形成部材の前記搬送方向における下流側の面は、前記ホルダに接触することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、シートの種類が封筒である場合、前記第2印刷処理を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1印刷処理では、前記バネの付勢力が前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材に加わり、
前記第2印刷処理では、前記バネの付勢力が前記前記第1ニップ形成部材に加わらないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
回動可能なアームであって、前記バネによって付勢されることで前記第2定着部材を前記第1定着部材に押圧するアームをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記カムは、
前記アームに接触しない状態で、前記第2定着部材を、前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材の両方と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む位置に位置させ、
前記アームに接触した状態で、前記第2定着部材を、前記第1ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、かつ、前記第2ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟まない位置に位置させることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1印刷処理を実行するとき、前記カムを前記アームに接触しない状態とし、
前記第2印刷処理を実行するとき、前記カムを前記アームに接触した状態とすることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニップ幅を変更可能な定着装置を備えた画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、加熱ローラと、無端状のベルトと、加熱ローラとの間でベルトを挟む剛性部材および弾性部材と、剛性部材を支持する第1支持板と、弾性部材を支持する第2支持板と、各支持板を支持するアームと、アームを介して剛性部材および弾性部材を加熱ローラに付勢する第1バネと、アームの位置を切り替えるカムと、を備えるものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、第1支持板がアームに固定され、第2支持板がアームに移動可能に支持されている。また、第2支持板とアームの間には、第2支持板を加熱ローラに向けて付勢する第2バネが設けられている。
【0003】
そして、封筒以外の用紙を印刷する場合には、カムをアームと接触させないことで、剛性部材および弾性部材を加熱ローラに圧接させてニップ部を形成する。また、封筒を印刷する場合には、カムによってアームを加熱ローラから離間する方向に押圧することで、剛性部材を加熱ローラから離間させる一方、第2バネの付勢力で第2支持板を加熱ローラに向けて付勢して、弾性部材のみを剛性部材に対して相対的に移動させる。これにより、弾性部材のみが加熱ローラに圧接されて、ニップ部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-8394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、剛性部材と弾性部材を相対的に移動させる機構が必要であるため、構造が複雑化していた。
【0006】
そこで、本発明は、2つの部材(ニップ形成部材)で形成したニップ部で印刷するモードと、1つの部材のみで形成したニップ部で印刷するモードの切替を、簡易な構造で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、ローラを有する第1定着部材と、前記第1定着部材との間でシートを挟む第2定着部材と、前記第1定着部材または前記第2定着部材を加熱するヒータと、前記第2定着部材を前記第1定着部材に対して近接・離間する方向である所定方向に移動可能に支持するガイドと、前記第2定着部材を前記第1定着部材に付勢するバネと、前記第2定着部材を前記所定方向に移動させるカムと、制御部と、を備える。
前記第2定着部材は、無端状のベルトと、前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟んでニップ部を形成する第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材と、第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材を支持する1つのホルダと、を有する。
前記第1ニップ形成部材の前記第1定着部材側の面である第1先端面は、前記所定方向において、前記第2ニップ形成部材の前記第1定着部材側の面である第2先端面よりも前記第1定着部材の近くに位置する。
前記制御部は、前記第2定着部材を、前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材の両方が前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む位置に位置させて印刷を行う第1印刷処理と、前記第2定着部材を、前記第1ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、かつ、前記第2ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟まない位置に位置させて印刷を行う第2印刷処理と、を実行可能である。
【0008】
この構成によれば、所定方向において2つのニップ形成部材の先端面の第1定着部材に対する位置を異なる位置としたので、第2定着部材を所定方向に移動するだけで、2つのニップ形成部材で形成したニップ部で印刷するモードと、1つのニップ形成部材のみで形成したニップ部で印刷するモードを切り替えることができる。そのため、2つのモードの切替を、簡易な構造で実現することができる。
【0009】
また、前記画像形成装置は、前記第1印刷処理では、前記バネの付勢力が前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材に加わり、前記第2印刷処理では、前記バネの付勢力が前記前記第1ニップ形成部材に加わらないように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記画像形成装置は、前記第1定着部材の軸方向において前記第1定着部材の端部を支持するフレームをさらに備え、前記フレームは、前記ガイドとしての溝であって、前記所定方向に延びる溝を有していてもよい。
【0011】
この構成によれば、所定方向および軸方向に直交する方向における第1定着部材と第2定着部材との位置関係が維持された状態で、第2定着部材を移動させることができる。
【0012】
また、前記画像形成装置は、回動可能なアームであって、前記バネによって付勢されることで前記第2定着部材を前記第1定着部材に押圧するアームをさらに備えていてもよい。
【0013】
この構成によれば、回動するアームで第2定着部材を押圧しても、第2定着部材はガイドに沿って移動するので、アームの回動方向が第2定着部材の移動方向に影響を与えるのを抑えることができる。
【0014】
また、前記カムは、前記アームに接触しない状態で、前記第2定着部材を、前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材の両方と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む位置に位置させ、前記アームに接触した状態で、前記第2定着部材を、前記第1ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、かつ、前記第2ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟まない位置に位置させるように構成されていてもよい。
【0015】
また、前記制御部は、前記第1印刷処理を実行するとき、前記カムを前記アームに接触しない状態とし、前記第2印刷処理を実行するとき、前記カムを前記アームに接触した状態としてもよい。
【0016】
また、前記シートの搬送方向において、前記第1ニップ形成部材は、前記第2ニップ形成部材の上流に位置していてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1印刷処理および第2印刷処理の両方において、ニップ部の入り口側でシートへのトナー像の定着を行うことができるので、トナー像の乱れを抑制することができる。
【0018】
また、前記第1ニップ形成部材は、前記第2ニップ形成部材よりも柔らかくてもよい。
【0019】
この構成によれば、2つのニップ形成部材のうち固い方の第2ニップ形成部材でシートを圧接することで、シート上の現像剤像に光沢を出すことができる。また、柔らかい方の第1ニップ形成部材のみでシートを圧接することで、シートの種類が封筒であっても、封筒上に現像剤像を良好に定着させることができる。
【0020】
また、前記シートの搬送方向において、前記第1ニップ形成部材は、前記第2ニップ形成部材から離れていてもよい。
【0021】
この構成によれば、各ニップ形成部材が変形したときに互いに接触するのを抑制することができるので、各ニップ形成部材同士の接触によりニップ部の形状やニップ圧に影響が出るのを抑制することができる。
【0022】
また、本発明に係る画像形成装置の制御方法の制御対象となる画像形成装置は、定着装置を有する。定着装置は、第1定着部材と、前記第1定着部材との間でシートを挟む第2定着部材と、前記第1定着部材または前記第2定着部材を加熱するヒータと、前記第1定着部材と前記第2定着部材の一方の定着部材を他方の定着部材に対して近接・離間する方向である所定方向に移動可能に支持するガイドと、前記一方の定着部材を前記他方の定着部材に付勢するバネと、前記一方の定着部材を前記所定方向に移動させるカムと、を備える。
前記第2定着部材は、無端状のベルトと、前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟んでニップ部を形成する第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材と、第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材を支持する1つのホルダと、を有する。
前記第1ニップ形成部材の前記第1定着部材側の面である第1先端面は、前記第2ニップ形成部材の前記第1定着部材側の面である第2先端面よりも前記第1定着部材の近くに位置する。
前記制御方法では、前記一方の定着部材を、前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材の両方が前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む位置に位置させて印刷を行う第1印刷処理と、前記一方の定着部材を、前記第1ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、かつ、前記第2ニップ形成部材と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟まない位置に位置させて印刷を行う第2印刷処理と、を実行する。
【0023】
この制御方法によれば、所定方向において2つのニップ形成部材の先端面の第1定着部材に対する位置を異なる位置としたので、第2定着部材を所定方向に移動するだけで、2つのニップ形成部材で形成したニップ部で印刷するモードと、1つのニップ形成部材のみで形成したニップ部で印刷するモードを切り替えることができる。そのため、2つのモードの切替を、簡易な構造で実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、2つのニップ形成部材で形成したニップ部で印刷するモードと、1つのニップ形成部材のみで形成したニップ部で印刷するモードの切替を、簡易な構造で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタを示す断面図である。
図2】定着装置を示す断面図である。
図3】ベルトの内側に配置される各部材を示す分解斜視図である。
図4】圧力変更機構を示す斜視図である。
図5】ニップ圧が第1ニップ圧であるときの、圧力変更機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
図6】ニップ圧が第2ニップ圧であるときの、圧力変更機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
図7】ニップ圧が第3ニップ圧であるときの、圧力変更機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
図8】カムフォロアとネジの関係を示す図(a)と、カムフォロア、第2バネおよびアーム本体を一部破断させて示す斜視図(b)である。
図9】制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、本体筐体2と、当該本体筐体2の内部に配置された供給部3、画像形成部4、定着装置8、搬送部9および制御部100とを備えている。
【0027】
本体筐体2は、上面に排出トレイ21を有している。
【0028】
供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、シートSを収容する供給トレイ31と、供給トレイ31内のシートSを画像形成部4に供給する供給機構32とを備えている。
【0029】
画像形成部4は、シートSにトナー像を転写して画像を形成する機能を有し、露光装置5と、4つのプロセスカートリッジ6と、転写ユニット7とを備えている。
【0030】
露光装置5は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しない光源やポリゴンミラーなどを備えている。露光装置5は、光ビームを感光体ドラム61の表面で高速走査することで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0031】
プロセスカートリッジ6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、現像ローラ63とを備えている。4つのプロセスカートリッジ6内には、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナーが収容されている。
【0032】
転写ユニット7は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを備えている。搬送ベルト73は、無端状のベルトであり、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に張設されている。搬送ベルト73の内側には、転写ローラ74が対応する感光体ドラム61との間で搬送ベルト73を挟持するように配置されている。
【0033】
帯電器62は、感光体ドラム61の表面を帯電する。その後、露光装置5は、感光体ドラム61の表面を露光して、感光体ドラム61の表面に静電潜像を形成する。
【0034】
現像ローラ63は、感光体ドラム61上に形成された静電潜像にトナーを供給する。これにより、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、搬送ベルト73によってシートSが、感光体ドラム61と転写ローラ74の間に搬送されると、感光体ドラム61上のトナー像がシートSに転写される。
【0035】
定着装置8は、シートSにトナー像を熱定着させる装置である。定着装置8の詳細については後述する。
【0036】
搬送部9は、定着装置8から排出されたシートSを本体筐体2外または再び画像形成部4に向けて搬送するように構成されている。搬送部9は、第1搬送経路91と、第2搬送経路92と、再搬送経路93と、第1搬送ローラ94と、第2搬送ローラ95と、第1スイッチバックローラSR1と、第2スイッチバックローラSR2と、複数の再搬送ローラ96と、回動可能な第1フラッパFL1および第2フラッパFL2とを備えている。
【0037】
第1搬送経路91は、定着装置8から排出されたシートを排出トレイ21に向けて案内する経路である。第2搬送経路92は、定着装置8から排出されたシートを、第1搬送経路91とは異なるルートで排出トレイ21に向けて案内する経路である。再搬送経路93は、後述する第1スイッチバックローラSR1等により本体筐体2内に引き込まれたシートSを、画像形成部4の上流側の供給機構32に案内する経路である。再搬送ローラ96は、再搬送経路93内のシートSを供給機構32に向けて搬送するローラであり、再搬送経路93に設けられている。
【0038】
第1搬送ローラ94は、定着装置8に設けられている。第1搬送ローラ94は、トナー像が熱定着されたシートSを、第2フラッパFL2に向けて搬送する。
【0039】
第2搬送ローラ95、第1スイッチバックローラSR1および第2スイッチバックローラSR2は、正逆回転可能なローラである。第2搬送ローラ95、第1スイッチバックローラSR1および第2スイッチバックローラSR2は、正回転時に本体筐体2の外、詳しくは排出トレイ21に向けてシートSを搬送し、逆回転時に本体筐体2内にシートSを引き込む。
【0040】
第2搬送ローラ95および第1スイッチバックローラSR1は、第1搬送経路91に設けられている。第1スイッチバックローラSR1は、第2搬送ローラ95よりも排出トレイ21の近くに配置されている。第2スイッチバックローラSR2は、第2搬送経路92に設けられている。
【0041】
搬送部9では、第1フラッパFL1と第2フラッパFL2の位置が適宜切り替えられることで、シートSを定着装置8から第1搬送経路91または第2搬送経路92に向けて搬送したり、シートSを第1搬送経路91または第2搬送経路92から再搬送経路93に搬送することが可能となっている。
【0042】
図2に示すように、定着装置8は、第1定着部材81と、第1定着部材81との間でシートSを挟む第2定着部材82とを備えている。第1定着部材81は、ヒータ110と、ローラ120とを有している。
【0043】
ヒータ110は、ハロゲンランプであり、通電によって発光するとともに発熱し、輻射熱によってローラ120を加熱する。ヒータ110は、ローラ120の回転軸線に沿ってローラ120の内側を通るように配置されている。ここで、ローラ120の回転軸線に沿う方向は、第1定着部材81の軸方向であり、以下、単に「軸方向」とも称する。
【0044】
ローラ120は、筒状のローラであり、ヒータ110によって加熱される。ローラ120は、金属などからなる素管121と、素管121の外周面を覆う弾性層122とを有している。弾性層122は、シリコンゴムなどのゴムからなる。なお、本実施形態において、ローラ120は、軸方向両端の外径が軸方向中央の外径よりも大きくなっており、軸方向の中央から両端に向かうにつれて外径が徐々に大きくなるコンケーブ形状を有している。但し、ローラ120の形状はこれに限定されない。ローラ120は、例えば、軸方向における外径が均一な円筒状のローラであってもよい。また、ローラ120は、その外径が軸方向の中央から両端に近づくにつれ徐々に小さくなるクラウン形状のローラであってもよい。
【0045】
ローラ120の軸方向における両端部は、後述するフレームFL、詳しくはサイドフレーム83(図4参照)に回転可能に支持されており、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が入力されることで図2の反時計回りに回転駆動する。
【0046】
第2定着部材82は、第1定着部材81に対して近接・離間する方向である所定方向に直線的に移動可能となっている。所定方向は、軸方向に直交している。第2定着部材82は、後述する圧力変更機構300(図4参照)によって第1定着部材81に向けて付勢されている。
【0047】
また、第2定着部材82は、無端状のベルト130と、ニップ形成部材Nと、ホルダ140と、ステイ200と、ベルトガイドGと、摺動シート150とを有している。
【0048】
ベルト130は、長尺筒状の部材であり、可撓性を有している。図示は省略するが、ベルト130は、金属や樹脂などからなる基材と、基材の外周面を覆う離型層とを有している。ベルト130は、ローラ120が回転したときにローラ120またはシートSとの摩擦によって図2の時計回りに従動回転する。ベルト130の内周面には、グリスなどの潤滑剤が付けられている。ベルト130の内側には、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150が配置されている。
【0049】
つまり、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150は、ベルト130に覆われている。図3に示すように、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150は、軸方向の寸法が、軸方向に直交する各方向における寸法よりも大きい。
【0050】
図2および図3に示すように、ニップ形成部材Nは、ローラ120との間でベルト130を挟んでニップ部NPを形成する部材である。ニップ形成部材Nは、第1ニップ形成部材N1と、第2ニップ形成部材N2とを備えている。
【0051】
第1ニップ形成部材N1は、第1パッドP1と、第1固定板B1とを有している。
第1パッドP1は、直方体状の部材である。第1パッドP1は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第1パッドP1は、ローラ120との間でベルト130を挟んで上流ニップ部NP1を形成する。
【0052】
なお、以下の説明では、上流ニップ部NP1および後で詳述するニップ部NPにおけるベルト130の移動方向を単に「移動方向」という。なお、本実施形態において、移動方向は、ローラ120の外周面に沿った方向であるが、この方向は、おおよそ所定方向と軸方向に直交する方向に沿った方向であるため、所定方向と軸方向に直交する方向として図示することとする。なお、移動方向は、ニップ部NPでのシートSの搬送方向と同じ方向である。また、以下の説明では、移動方向の上流、下流を、単に「上流、下流」とも称する。
【0053】
第1パッドP1は、第1固定板B1のローラ120側の面に固定されている。第1パッドP1は、第1固定板B1の上流端よりも移動方向の上流側に僅かに突出している。これにより、第1パッドP1はホルダ140と上流側で接触する。
【0054】
第1固定板B1は、第1パッドP1よりも硬い部材、例えば金属などからなる。第1固定板B1は、軸方向における長さが第1パッドP1よりも長い。そして、第1固定板B1の軸方向の各端部B11,B12は、軸方向において、第1パッドP1の各端部よりも外側に位置している。
【0055】
第2ニップ形成部材N2は、第1ニップ形成部材N1に対して移動方向の下流側に間隔を空けて配置されている。つまり、第2ニップ形成部材N2は、移動方向において、第1ニップ形成部材N1から離れている。第2ニップ形成部材N2は、第2パッドP2と、第2固定板B2とを有している。
【0056】
第2パッドP2は、直方体状の部材である。第2パッドP2は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第2パッドP2は、ローラ120との間でベルト130を挟んで下流ニップ部NP2を形成する。第2パッドP2は、移動方向において、第1パッドP1から離れている。
【0057】
このため、上流ニップ部NP1と下流ニップ部NP2との間には、第2定着部材82からの圧力が直接作用しない中間ニップ部NP3が存在する。この中間ニップ部NP3では、ベルト130はローラ120に接触するものの、ローラ120との間でベルト130を挟む部材が存在しないため、圧力はほとんど加わらない。従って、シートSは、ローラ120によって加熱されつつ、ほぼ加圧されることなく中間ニップ部NP3を通過する。本実施形態では、上流ニップ部NP1の上流端から下流ニップ部NP2の下流端までの領域、即ち、ベルト130の外周面とローラ120とが接触する全ての領域をニップ部NPと称する。つまり、本実施形態では、ニップ部NPは、第1パッドP1および第2パッドP2からの押圧力が加わらない部分を含む。
【0058】
第2パッドP2は、第2固定板B2のローラ120側の面に固定されている。第2パッドP2は、第2固定板B2の下流端よりも移動方向の下流側に僅かに突出している。これにより、第2パッドP2はホルダ140と下流側で接触する。図7に示すように、所定方向において、第2パッドP2の寸法は、第1パッドP1の寸法よりも小さい。
【0059】
図3に示すように、第2固定板B2は、第2パッドP2よりも硬い部材、例えば金属などからなる。第2固定板B2は、軸方向における長さが第2パッドP2よりも長い。そして、第2固定板B2の軸方向の各端部B21,B22は、軸方向において、第2パッドP2の各端部よりも外側に位置している。所定方向において、第2固定板B2の寸法は、第1固定板B1と同じである。
【0060】
なお、第1パッドP1の硬さは、ローラ120の弾性層122の硬さよりも大きい。また、第2パッドP2の硬さは、第1パッドP1の硬さよりも大きい。つまり、第1パッドP1は、第2パッドP2よりも柔らかい。
【0061】
ここで、硬さとは、ISO7619-1に規定されているデュロメータ硬さのことである。デュロメータ硬さは,規定した条件下で試験片に規定の押針を押し込んだときの押針の押込み深さから得られる値である。例えば、弾性層122のデュロメータ硬さが5の場合、第1パッドP1のデュロメータ硬さは6~10、第2パッドP2のデュロメータ硬さは70~90であることが好ましい。
【0062】
なお、シリコンゴムの硬さは、製造時に添加する添加物(シリカ系充填剤やカーボン系充填剤)の比率を変えることで調整することができる。具体的には、添加物の比率を大きくすると、ゴムの硬さが大きくなる。また、シリコン系のオイルを添加することで、硬さを小さくすることもできる。ゴムの製法としては、液状射出成型や押出成型を採用することができる。一般的には、低硬度ゴムは、液状射出成型が適しており、高硬度ゴムは、押出成形が適している。
【0063】
第1ニップ形成部材N1および第2ニップ形成部材N2は、バネSPによって、互いに離れる方向に付勢されている。バネSPは、トーションバネであり、コイル部がホルダ140に支持され、一端部と他端部が、それぞれ第1ニップ形成部材N1と第2ニップ形成部材N2に接触している。バネSPは、ホルダ140の軸方向の一端側と他端側に配置されている。
【0064】
ホルダ140は、ニップ形成部材Nを保持する部材である。つまり、第1ニップ形成部材N1と第2ニップ形成部材N2は、1つのホルダ140によって支持されている。ホルダ140は、耐熱性を有する樹脂などからなる。ホルダ140は、ホルダ本体141と、2つの係合部142,143とを有している。
【0065】
ホルダ本体141は、ニップ形成部材Nを保持する部位である。ホルダ本体141の大部分は、軸方向において、ベルト130の範囲内に配置されている。ホルダ本体141は、ステイ200(後述する第1ステイ210および第2ステイ220)で支持されている。
【0066】
図2に示すように、ホルダ本体141は、第1ニップ形成部材N1の第1定着部材81とは反対の面を支持する第1支持面141Aと、第2ニップ形成部材N2の第1定着部材81とは反対の面を支持する第2支持面141Bとを有する。第1支持面141Aと第2支持面141Bは、所定方向において同じ位置に位置する。
【0067】
これにより、図7に示すように、第1ニップ形成部材N1が第2ニップ形成部材N2よりも第1定着部材81側に突出する。言い換えると、第1ニップ形成部材N1の第1定着部材81側の面である第1先端面N11は、所定方向において、第2ニップ形成部材N2の第1定着部材81側の面である第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。詳しくは、各ニップ形成部材N1,N2が第1定着部材81に圧接されていない状態において、第1先端面N11は第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。
【0068】
ここで、図7の状態は、第1ニップ形成部材N1の第1先端面N11の一部のみが第1定着部材81に圧接された状態であり、第1先端面N11の他部と第2先端面N21には圧力は、加わっていない。そのため、第1先端面N11の他部と第2先端面N21の位置は、各ニップ形成部材N1,N2が第1定着部材81に圧接されていない状態のときと同じ位置となる。つまり、第1先端面N11の他部は、第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。言い換えると、所定方向において、第1先端面N11の圧力が加わっていない部分と第1定着部材81の外周面との最短距離D1は、圧力が加わっていない第2先端面N21と第1定着部材81の外周面との最短距離D2よりも小さい。
【0069】
図3に示すように、各係合部142,143は、ホルダ本体141の軸方向の各端部から延出している。各係合部142,143は、軸方向において、ベルト130の範囲外に配置されている。各係合部142,143は、後述する第1ステイ210の軸方向の各端部に係合する。
【0070】
ステイ200は、ホルダ140に対してニップ形成部材Nと反対側に位置してホルダ140を支持する部材である。ステイ200は、第1ステイ210と、第2ステイ220とを備えている。
【0071】
第1ステイ210は、ホルダ140のホルダ本体141を支持する部材である。第1ステイ210は、金属などからなる。第1ステイ210は、ベース部211と、ヘミング曲げ部HBとを有している。
【0072】
ベース部211は、ホルダ140側の一端部に、ホルダ140のホルダ本体141に接触する接触面Ftを有している。接触面Ftは、所定方向と垂直な平面である。ベース部211は、ヘミング曲げ部HBに対して移動方向の下流側に配置される下流壁として構成されている。ベース部211は、移動方向の下流側に位置する下流面Faと、移動方向の上流側に位置する上流面Fbとを有している。
【0073】
ヘミング曲げ部HBは、ヘミング加工により曲げられた部分である。ヘミング曲げ部HBは、ベース部211の他端部から屈曲してベース部211の一端部に向けて延びている。ヘミング曲げ部HBは、ベース部211から屈曲する屈曲部212と、屈曲部212からホルダ本体141側に延出する上流壁213とを有している。上流壁213は、下流壁であるベース部211の移動方向の上流側に配置されている。上流壁213は、ベース部211と平行に配置されている。上流壁213は、第1ステイ210の板厚よりも小さな間隔を空けてベース部211と移動方向で対面している。
【0074】
ヘミング曲げ部HBは、軸方向における長さがベース部211よりも短い。ベース部211の軸方向の各端部は、軸方向において、ヘミング曲げ部HBの各端部よりも外側に位置している。
【0075】
ベース部211は、軸方向の両端部に、後述する圧力変更機構300(図4参照)から力を受ける荷重入力部211Aをそれぞれ有している。荷重入力部211Aは、所定方向においてニップ形成部材Nとは反対側に開口する凹部であり、所定方向においてベース部211のニップ形成部材Nとは反対側の端部に形成されている。
【0076】
荷重入力部211Aには、樹脂などからなる緩衝部材BFが取り付けられている。緩衝部材BFは、金属製のベース部211と、後述する金属製のアーム310(図4参照)とが擦れ合うのを抑制するための部材である。緩衝部材BFは、荷重入力部211Aに嵌合する嵌合部BF1と、ベース部211の軸方向の端部に対して移動方向の上流側と下流側に配置される一対の脚部BF2とを有している。
【0077】
第2ステイ220は、ホルダ140のホルダ本体141を支持する部材である。第2ステイ220は、金属などからなる。第2ステイ220は、移動方向において、第1ステイ210の上流側に配置されている。第2ステイ220は、第1ステイ210の上流壁213と平行に配置されるベース部221と、ベース部221のニップ形成部材Nとは反対側の端部から第1ステイ210に向けて延びる延出部222とを有している。
【0078】
ベース部221は、軸方向の長さが延出部222および第1ステイ210のヘミング曲げ部HBよりも長い。ベース部221の軸方向の各端部は、軸方向において、延出部222およびヘミング曲げ部HBの各端部よりも外側に位置している。そして、第1ステイ210のベース部211の軸方向の各端部と、第2ステイ220のベース部221の軸方向の各端部は、連結部材CMによって連結されている。つまり、連結部材CMは、軸方向において、ヘミング曲げ部HBと異なる位置でベース部211に連結されている。
【0079】
ベルトガイドGは、ベルト130の内周面131をガイドする部材である。ベルトガイドGは、耐熱性を有する樹脂などからなる。ベルトガイドGは、上流ガイドG1と、下流ガイドG2とを有している。
【0080】
摺動シート150は、各パッドP1,P2とベルト130との摩擦抵抗を低減するための矩形のシートである。摺動シート150は、ニップ部NPにおいて、ベルト130の内周面131と各パッドP1,P2との間で挟まれている。摺動シート150は、弾性変形可能な材料からなる。なお、摺動シート150の材料は、どのようなものであってもよいが、本実施形態では、ポリイミドを含有した樹脂シートを採用している。
【0081】
図2に示すように、上流ガイドG1、下流ガイドG2および第1ステイ210は、ネジSCによって共締めされている。詳しくは、上流ガイドG1は、下流側に向けて突出するボスG13を有し、下流ガイドG2は、ネジSCの頭部と接触する固定部分G22を有する。
【0082】
ボスG13は、上流ガイドG1を下流ガイドG2とともに第1ステイ210に固定するためのボスである。ボスG13は、図3に示す摺動シート150、第2ステイ220および第1ステイ210の上流壁213に形成された孔Hc1,Hc2,Hc3を通って、第1ステイ210のベース部211に接触している。ネジSCは、固定部分G22に形成された、図3に示す孔Hc5と第1ステイ210のベース部211に形成された、図示せぬ孔を通って、ボス13の先端に締結されている。
【0083】
図4に示すように、定着装置8は、フレームFLと、圧力変更機構300とをさらに備えている。フレームFLは、第1定着部材81および第2定着部材82を支持するフレームであり、金属などからなる。フレームFLは、第1定着部材81および第2定着部材82に対して軸方向の両側に配置されるサイドフレーム83およびブラケット84と、各サイドフレーム83に接続される接続フレーム85とを備えている。
【0084】
サイドフレーム83は、第1定着部材81および第2定着部材82を支持するフレームである。サイドフレーム83は、後述する第1バネ320の一端部と係合するバネ係合部83Aを有している。
【0085】
ブラケット84は、第2定着部材82を所定方向に移動可能に支持する部材であり、サイドフレーム83に固定されている。詳しくは、軸方向の両側に配置されるブラケット84は、ホルダ140の係合部142,143を所定方向に移動可能に支持する第1長孔84Aを有している。第1長孔84Aは、所定方向に延びる長孔である。
【0086】
ここで、第1長孔84Aは、ガイドとしての溝に相当する。係合部142,143は、軸方向の両側の第1長孔84Aに挿入され、第2定着部材82は所定方向に移動可能に支持される。なお、ガイドとしての溝としては、底付きの溝であってもよい。
【0087】
圧力変更機構300は、ニップ部NPのニップ圧を変更する機構である。圧力変更機構300は、アーム310と、バネの一例としての第1バネ320と、第2バネ330と、カム340とを備えている。アーム310、第1バネ320、第2バネ330およびカム340は、フレームFLの軸方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。
【0088】
アーム310は、緩衝部材BFを介して第1ステイ210を第1定着部材81に向けて押圧するための部材である。アーム310は、第2定着部材82を支持するとともに、サイドフレーム83に回動可能に支持されている。
【0089】
アーム310は、アーム本体311と、カムフォロア350とを有している。アーム本体311は、金属などからなるL形状の板状部材である。
【0090】
サイドフレーム83は、アーム本体311を回動可能に支持するボス83Xを有している。アーム本体311は、サイドフレーム83のボス83Xに回動可能に支持される一端部311Aと、第1バネ320が連結される他端部311Bと、第2定着部材82を支持する係合穴311Cとを有している。係合穴311Cは、一端部311Aと他端部311Bの間に配置され、緩衝部材BFと係合している。
【0091】
また、アーム本体311は、カム340に向けて延びるガイド突起312をさらに有している。ガイド突起312は、他端部311Bから係合穴311Cに向かう方向において、他端部311Bと係合穴311Cの間に配置されている。
【0092】
カムフォロア350は、アーム本体311のガイド突起312に対して移動可能に取り付けられており、カム340に接触可能となっている。カムフォロア350は、樹脂などからなり、ガイド突起312に嵌合される筒状部351と、筒状部351の一端に設けられる接触部352と、筒状部351の他端に設けられるフランジ部353とを有している。
【0093】
筒状部351は、ガイド突起312によって、当該ガイド突起312の延びる方向に移動可能に支持されている。接触部352は、筒状部351のカム340側の端部の開口を塞ぐ壁であり、カム340とガイド突起312の先端の間に配置されている。フランジ部353は、筒状部351の他端から、カムフォロア350の移動方向に直交する方向に突出している。
【0094】
そして、筒状部351とアーム本体311の間には、第2バネ330が配置されている。これにより、アーム本体311は、第1バネ320によって付勢されるとともに、第2バネ330によって付勢可能となっている。
【0095】
第1バネ320は、第2定着部材82に対して第1付勢力を付与するバネである。詳しくは、第1バネ320は、アーム本体311を介して第2定着部材82に対して第1付勢力を付与している。
【0096】
より詳しくは、第1バネ320は、アーム本体311、緩衝部材BF、第1ステイ210およびホルダ140を介して、第1パッドP1および第2パッドP2をローラ120に向けて付勢している。第1バネ320は、金属などからなる引張コイルバネであり、一端がサイドフレーム83のバネ係合部83Aに連結され、他端がアーム本体311の他端部311Bに連結されている。
【0097】
第2バネ330は、第2定着部材82に対して第1付勢力とは逆向きの第2付勢力を付与可能なバネである。詳しくは、第2バネ330は、アーム本体311を介して第2定着部材82に対して第2付勢力を付与可能となっている。第2バネ330は、金属などからなる圧縮コイルバネであり、圧縮コイルバネで囲まれる空間内にガイド突起312が挿入された状態で、筒状部351とアーム本体311の間に配置されている。
【0098】
カム340は、カムフォロア350を介してアーム310を押圧することで、第2定着部材82を所定方向に移動させる部材である。また、カム340は、第2バネ330の伸縮状態を、第2付勢力が第2定着部材82に対して付与されない第1伸縮状態と、第2付勢力が第2定着部材82に対して付与される第2伸縮状態と、第2伸縮状態よりも変形した第3伸縮状態とに変更可能とする機能も有する。カム340は、図5(a)に示す第1カム位置と、図6(a)に示す第2カム位置と、図7(a)に示す第3カム位置との間で回動可能となるように、サイドフレーム83に支持されている。
【0099】
カム340は、樹脂などからなり、第1部位341と、第2部位342と、第3部位343とを有している。第1部位341、第2部位342および第3部位343は、カム340の外周面上に位置している。
【0100】
第1部位341は、カム340が第1カム位置に位置するときに、カムフォロア350に最も近い部位である。図5(a)に示すように、カム340が第1カム位置に位置するときに、第1部位341は、カムフォロア350から離れている。
【0101】
第2部位342は、カム340が第2カム位置に位置するときに、カムフォロア350に接触する部位である。より詳しくは、第2部位342は、図6(a)に示すように、カム340が第1カム位置から図示時計回りに約90度回動した際にカムフォロア350と接触する部位である。第2部位342からカム340の回動中心までの距離は、第1部位341からカム340の回動中心までの距離よりも大きい。
【0102】
第3部位343は、カム340が第3カム位置に位置するときに、カムフォロア350に接触する部位である。より詳しくは、第3部位343は、図7(a)に示すように、カム340が第1カム位置から図示時計回りに約270度回動した部位、言い換えると、第2カム位置から図示時計回りに約180度回動した際に、カムフォロア350と接触する部位である。第3部位343からカム340の回動中心までの距離は、第2部位342からカム340の回動中心までの距離よりも大きい。
【0103】
カム340が第1カム位置に位置するときには、カム340がカムフォロア350から離れていることにより、第2バネ330の伸縮状態は第1伸縮状態となる。このようにカム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、アーム本体311は、図5(a)に示す第1姿勢となっている。
【0104】
詳しくは、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、カム340がカムフォロア350から離れているため、第2バネ330の第2付勢力は、アーム本体311を介して第2定着部材82に付与されず、第1バネ320の第1付勢力のみがアーム本体311を介して第2定着部材82の各パッドP1,P2に付与されている。このように第1バネ320によって第2定着部材82に対して第1付勢力が付与され、且つ、第2バネ330によって第2定着部材82に対して第2付勢力が付与されていないときには、ニップ圧は、第1ニップ圧となる。
【0105】
なお、本実施形態では、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、第2バネ330は、変形した状態でカムフォロア350とアーム本体311の間に配置されている。つまり、本実施形態では、第2バネ330は、第1伸縮状態において、自然長でなく、自然長から変形した状態となっている。なお、第1伸縮状態において第2バネ330が変形した状態であっても、カム340がカムフォロア350から離れていることで、第2バネ330の第2付勢力は第2定着部材82に対して付与されない
【0106】
カム340は、図5(a)に示す第1カム位置から図6(a)に示す第2カム位置に回動すると、カムフォロア350と接触して、カムフォロア350をアーム本体311に対して所定量移動させる。これにより、カム340が第2カム位置に位置するときには、第2バネ330の伸縮状態は、第1伸縮状態よりも変形した第2伸縮状態となる。
【0107】
カム340が第2カム位置に位置するときには、カム340でカムフォロア350が支持されるため、第2バネ330の第2付勢力がアーム本体311を介して第2定着部材82に第1付勢力とは逆向きに付与される。そのため、第1バネ320によって第2定着部材82に対して第1付勢力が付与され、且つ、第2バネ330によって第2定着部材82に対して第2付勢力が付与されているときには、ニップ圧が第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧となる。
【0108】
なお、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第2伸縮状態にしているときには、アーム本体311は、前述した第1姿勢のままとなっている。ここで、第2パッドP2は、ローラ120に対して押し付けられている状態、即ち、第2パッドP2に対して荷重が加わっている状態では、その荷重の大小に関わらず、ほぼ変形しない。そして、第2パッドP2がほぼ変形しないため、第2パッドP2を支持するステイ200、さらにはステイ200を支持するアーム310の姿勢も、荷重の大小によらずほぼ一定に保たれる。また、第1パッドP1の位置は、第2パッドP2の位置で決まるため、第2パッドP2がほぼ変形せず、その位置も変形しない状態では、第1パッドP1の位置も変わらない。従って、強ニップ(第1ニップ圧)と弱ニップ(第2ニップ圧)では、どちらの場合でも全ニップ幅(上流ニップ部NP1の入口から下流ニップ部NP2の出口までの長さ)は変わらず、アーム310の姿勢もほぼ一定に保たれる。
なお、第2パッドP2が変形しない理由は、第2パッドP2の硬度が第1パッドP1およびローラ120の弾性層122の硬度よりも十分に高いためである。より詳しくは、第2パッドP2は、下流ニップ部NP2で要求される最大ニップ圧(強ニップ時の下流ニップ圧)から最小ニップ圧(弱ニップ時の下流ニップ圧)までの範囲に収まるニップ圧ではほぼ変形しない程度の硬度を有しているためである。
言い換えると、下流ニップで要求される最大ニップ圧と最小ニップ圧は、第2パッドP2がほぼ変形しない程度の大きさに設定されている。
ここで、「第2パッドP2がほぼ変形しない」とは第2パッドP2によって形成される下流ニップ部NP2のニップ幅(ベルト移動方向のニップの長さ及び位置)の変形量が、画質や用紙の搬送に影響を及ぼさない程度に、第2パッドP2が変形することを含む(下流ニップ幅の変形量がゼロではない)。
【0109】
このように第2バネ330の伸縮状態が第1伸縮状態および第2伸縮状態のいずれの状態であっても、アーム本体311の姿勢が第1姿勢となるため、図5(b)および図6(b)に示すように、ニップ圧が第1ニップ圧であるときと第2ニップ圧であるときの両方の状態において、第1パッドP1および第2パッドP2は、ローラ120との間でベルト130を挟んでいる。詳しくは、各状態において、ローラ120に対する第2定着部材82の位置が略同じ位置であるため、各状態でのニップ部NPの幅(移動方向の長さ)が略同じ大きさとなっている。
【0110】
カム340は、図6(a)に示す第2カム位置から図7(a)に示す第3カム位置に回動する場合には、カムフォロア350をアーム本体311に対してさらに移動させた後、カムフォロア350を介してアーム本体311を押圧する。これにより、第2バネ330の伸縮状態が第2伸縮状態よりも変形した第3伸縮状態となるとともに、アーム本体311が第1姿勢から当該第1姿勢と異なる第2姿勢に回動する。
【0111】
詳しくは、カム340を第2カム位置から第3カム位置に回動させていく過程における最初の段階では、カムフォロア350の接触部352がガイド突起312の先端に近づくように、カムフォロア350がアーム本体311に対して移動する。接触部352がガイド突起312の先端に接触すると、第2バネ330の伸縮状態が第3伸縮状態となる。このようにカム340が第2バネ330の伸縮状態を第3伸縮状態にしているときには、カムフォロア350の一部である接触部352がカム340とガイド突起312の間に挟まれる。言い換えると、接触部352はカム340に接触するとともに、ガイド突起312とも接触する。その後、カム340をさらに回動させると、カム340が接触部352を介してガイド突起312を押圧するので、アーム本体311が第1バネ320の付勢力に抗して第1姿勢から第2姿勢に回動する。
【0112】
これにより、アーム本体311が第2姿勢であるときには、第2定着部材82は、アーム本体311が第1姿勢であるときの位置(図6(b)の位置)よりもローラ120から離れた位置(図7(b)の位置)に配置される。このように第2定着部材82のローラ120に対する位置が変わることで、アーム本体311が第2姿勢であるときには、図7(b)に示すように、ニップ部NPの幅が第1姿勢のときよりも小さくなるとともに、ニップ圧が第2ニップ圧よりも小さな第3ニップ圧となる。つまり、カム340によってアーム310の姿勢が変わるため、ニップ圧及びニップ幅が変わるようになっている。詳しくは、アーム310が第2姿勢であるときには、第1パッドP1とローラ120との間でのみベルト130が挟まれ、第2パッドP2とローラ120との間ではベルト130が挟まないようになっている。これにより、アーム310が第2姿勢であるときには、上流ニップ圧と上流ニップ幅が小さくなり、下流ニップ圧は無くなる。
【0113】
図8に示すように、アーム310は、ネジ360をさらに備えている。ネジ360は、金属などからなる段付きのネジであり、カムフォロア350がカム340に近づく方向に移動するのを規制している。ネジ360は、ネジ溝が外周面に切られたネジ軸部361と、ネジ軸部361よりも大径となる大径部362と、大径部362よりも大径となる頭部363とを有している。大径部362は、ネジ軸部361と頭部363の間に配置されている。ネジ360は、大径部362がアーム本体311の一方の面に接触するように、アーム本体311に締結される。
【0114】
一方、カムフォロア350は、フランジ部353からネジ360に向けて延びる延出部354をさらに有している。延出部354は、大径部362と係合する長孔354Aを有し、アーム本体311の一方の面に沿ってスライド可能となっている。
【0115】
長孔354Aは、ガイド突起312が延びる方向に長い長孔である。そして、長孔354Aのネジ360側の端部に大径部362が係合することで、ネジ360によって、カムフォロア350がカム340に近づく方向に移動することが規制される。
【0116】
延出部354は、ネジ360の頭部363とアーム本体311との間に挟まれている。これにより、カムフォロア350が、アーム本体311から外れることなく、アーム本体311で移動可能に支持される。
【0117】
制御部100は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えている。制御部100は、印刷するシートSの種類に応じて、第1印刷処理の一例としての強ニップ処理と、中ニップ処理と、第2印刷処理の一例としての弱ニップ処理とを選択して実行可能となっている。
【0118】
制御部100は、シートSの種類が例えば普通紙などの第1厚さのシートである場合、強ニップ処理を実行する。強ニップ処理は、ニップ圧を、最も高い第1ニップ圧とする処理である。制御部100は、強ニップ処理において、第2定着部材82を、第1ニップ形成部材N1および第2ニップ形成部材N2の両方が第1定着部材81との間でベルト130を挟む位置に位置させて印刷を行う。言い換えると、制御部100は、強ニップ処理において、第1定着部材81および第2定着部材82の状態を、第1ニップ形成部材N1および第2ニップ形成部材N2の両方が第1定着部材81との間でベルト130を挟んだ状態である第1状態とする。
【0119】
具体的に、制御部100は、強ニップ処理において、カム340を、図5(a)に示す第1カム位置に位置させる。第1カム位置に位置するカム340は、アーム310のカムフォロア350に接触しない状態で、第2定着部材82を、第1ニップ形成部材N1および第2ニップ形成部材N2の両方と第1定着部材81との間でベルト130を挟む位置に位置させる。このようにカム340がアーム310と接触しないことで、強ニップ処理では、第1バネ320の付勢力が第1ニップ形成部材N1および第2ニップ形成部材N2に加わっている。強ニップ処理では、第1パッドP1よりも硬さの大きい第2パッドP2を強くニップすることで、例えばカラー印刷において光沢を大きくするなどの効果が得られる。
【0120】
制御部100は、シートSの種類が例えば厚紙などの第1厚さよりも厚い第2厚さのシートである場合、中ニップ処理を実行する。中ニップ処理は、ニップ圧を、第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とする処理である。制御部100は、中ニップ処理において、カム340を、図6(a)に示す第2カム位置に位置させる。
【0121】
カム340を第1カム位置から第2カム位置へ回動させると、アーム310の姿勢は強ニップ処理時と同じ第1姿勢に維持されたまま、カムフォロア350がカム340で押圧されてアーム本体311に近づく。これにより、第2バネ330が強ニップ処理のときよりも縮んだ状態となる。そのため、中ニップ処理では、第2定着部材82の位置は強ニップ処理のときと同じであるが、第2バネ330の付勢力は第1バネ320とは反対向きにアーム310に作用することで、ニップ圧が第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧となる。
【0122】
制御部100は、シートSの種類が例えば封筒などの第2厚さよりも厚い第3厚さのシートである場合、弱ニップ処理を実行する。弱ニップ処理は、ニップ圧を、第2ニップ圧よりも小さい第3ニップ圧とする処理である。制御部100は、弱ニップ処理において、第2定着部材82を、第1ニップ形成部材N1と第1定着部材81との間でベルト130を挟み、かつ、第2ニップ形成部材N2と第1定着部材81との間でベルト130を挟まない位置に位置させて印刷を行う。言い換えると、制御部100は、弱ニップ処理において、第1定着部材81および第2定着部材82の状態を、第1ニップ形成部材N1と第1定着部材81との間でベルト130を挟み、かつ、第2ニップ形成部材N2と第1定着部材81との間でベルト130を挟まない状態である第2状態とする。
【0123】
具体的に、制御部100は、弱ニップ処理において、カム340を、図7(a)に示す第3カム位置に位置させる。第3カム位置に位置するカム340は、アーム310のカムフォロア350に接触した状態で、第2定着部材82を、第1ニップ形成部材N1と第1定着部材81との間でベルト130を挟み、かつ、第2ニップ形成部材N2と第1定着部材81との間でベルト130を挟まない位置に位置させる。
【0124】
詳しくは、カム340がカムフォロア350を介してアーム本体311を第1バネ320の付勢力に抗して押圧することで、アーム310が第2姿勢となり、第2定着部材82が、強ニップ処理または中ニップ処理のときよりも第1定着部材81から離れる。これにより、第1ニップ形成部材N1のみが第1定着部材81に圧接された状態となる。
【0125】
弱ニップ処理では、カムフォロア350の接触部352とアーム本体311とが接触しているため、アーム310の第1定着部材81側への移動がカム340で規制された状態となる。これにより、弱ニップ処理では、第1バネ320の付勢力が第1ニップ形成部材N1に加わらない。弱ニップ処理では、第1パッドP1よりも硬さの大きい第2パッドP2をニップしないことで、例えば封筒などの二重の部分のあるシートにおいて、表面と裏面との搬送速度差が生じにくくし、定着時の画像の劣化を抑制するなどの効果が得られる。
【0126】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。
図9に示すように、制御部100は、まず、印刷指令があるか否かを判定する(S1)。ステップS1において印刷指令がないと判定した場合には(No)、制御部100は、本処理を終了する。
【0127】
ステップS1において印刷指令があると判定した場合には(Yes)、制御部100は、シートSの種類が普通紙であるか否かを判定する(S2)。制御部100は、一例としてユーザによってシートSの種類が普通紙であると指定された場合に、シートSを普通紙であると判定する。ステップS2において普通紙であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、カム340を第1カム位置に位置させて(S3)、印刷を行う(S4)。つまり、制御部100は、シートSの種類が普通紙である場合には、第1ニップ形成部材N1および第2ニップ形成部材N2の両方と第1定着部材81との間でベルト130を挟み、かつ、第1バネ320の付勢力のみが各ニップ形成部材N1,N2に加わった強ニップ処理を実行する。制御部100は、ステップS4の後、本処理を終了する。
【0128】
ステップS2において普通紙でないと判定した場合には(No)、制御部100は、シートSの種類が封筒であるか否かを判定する(S5)。制御部100は、一例としてユーザによってシートSの種類が封筒であると指定された場合に、シートSを封筒であると判定する。ステップS5において封筒であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、カム340を第3カム位置に位置させて(S6)、印刷を行う(S4)。つまり、制御部100は、シートSの種類が封筒である場合には、第1ニップ形成部材N1と第1定着部材81との間でのみベルト130を挟み、かつ、第1バネ320の付勢力が第1ニップ形成部材N1に加わらない弱ニップ処理を実行する。
【0129】
ステップS5において封筒でないと判定した場合には(No)、制御部100は、カム340を第2カム位置に位置させて(S7)、印刷を行う(S4)。つまり、制御部100は、シートSの種類が普通紙・封筒以外のシートである場合には、第1ニップ形成部材N1および第2ニップ形成部材N2の両方と第1定着部材81との間でベルト130を挟み、かつ、第1バネ320の付勢力が第2バネ330の付勢力で弱められて各ニップ形成部材N1,N2に加わった中ニップ処理を実行する。
【0130】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
所定方向において第1定着部材81に対する2つのニップ形成部材N1,N2の先端面N11,N21の位置を異なる位置としたので、第2定着部材82を所定方向に移動するだけで、2つのニップ形成部材N1,N2で形成したニップ部NPで印刷するモードと、1つの第1ニップ形成部材N1のみで形成したニップ部NPで印刷するモードを切り替えることができる。そのため、2つのモードの切替を、簡易な構造で実現することができる。
【0131】
フレームFLが第2定着部材82を所定方向に移動可能に支持する第1長孔84Aを有するので、回動するアーム310で第2定着部材82を押圧しても、所定方向および軸方向に直交する方向における第1定着部材81と第2定着部材82との位置関係が維持された状態で、第2定着部材82を移動させることができる。
【0132】
第2先端面N21よりも第1定着部材81に近い第1先端面N11を有する第1ニップ形成部材N1を、第2ニップ形成部材N2の搬送方向上流に位置させたので、第1印刷処理および第2印刷処理の両方において、ニップ部NPの入り口側でシートへのトナー像の定着を行うことができ、トナー像の乱れを抑制することができる。
【0133】
2つのニップ形成部材N1,N2のうち固い方の第2ニップ形成部材N2でシートSを圧接することで、シートS上の現像剤像に光沢を出すことができる。また、柔らかい方の第1ニップ形成部材N1のみでシートSを圧接することで、シートSの種類が封筒であっても、封筒上に現像剤像を良好に定着させることができる。
【0134】
第1ニップ形成部材N1と第2ニップ形成部材N2を搬送方向において離して配置したので、各ニップ形成部材N1,N2が変形したときに互いに接触するのを抑制することができる。そのため、各ニップ形成部材N1,N2同士の接触によりニップ部NPの形状やニップ圧に影響が出るのを抑制することができる。
【0135】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0136】
前記実施形態では、制御部100はシートSが封筒である場合に弱ニップ処理を実行するよう構成されていたが、シートSの種類によらず任意に強ニップ処理、中ニップ処理、弱ニップ処理を実行できるよう構成してもよい。また、シートの種類によらず特定の条件で強ニップ処理、中ニップ処理、弱ニップ処理を選択的に実行するよう構成してもよい。
【0137】
前記実施形態では、第2定着部材82を第1定着部材81に対して移動させる構成としたが、本発明はこれに限定されず、第1定着部材を第2定着部材に対して移動させてもよい。この場合、ガイドが第1定着部材を所定方向に移動可能に支持し、カムが第1定着部材を所定方向に移動させるように構成すればよい。
【0138】
前記実施形態では、各先端面N11,N21を所定方向で異なる位置に配置させたが、本発明はこれに限定されず、各先端面と第1定着部材の外周面との所定方向における各最短距離が異なるように各ニップ形成部材を配置すれば、各先端面は所定方向で同じ位置であってもよい。詳しくは、搬送方向において、第1ニップ形成部材を第2ニップ形成部材よりも第1定着部材の回転軸の近くに配置することで、第1先端面と第1定着部材の外周面との所定方向の最短距離を、第2先端面と第1定着部材の外周面との所定方向の最短距離よりも小さくすることができる。
【0139】
前記実施形態では、各ニップ形成部材N1,N2の所定方向における寸法を異なる寸法としたが、本発明はこれに限定されず、各ニップ形成部材の所定方向における寸法は同じであってもよい。この場合、例えば、ホルダの第1支持面を第2支持面よりも第1定着部材の近くに配置することで、各先端面と第1定着部材の外周面との所定方向における各最短距離を異ならせることができる。
【0140】
前記実施形態では、ヒータ110が第1定着部材81を加熱する構成としたが、本発明はこれに限定されず、ヒータは、第2定着部材を加熱してもよい。なお、ヒータは、どのようなヒータであってもよく、例えばカーボンヒータなどとすることができる。また、ヒータの数は、複数であってもよい。
【0141】
前記実施形態では、ニップ形成部材をパッドと固定板とで構成したが、本発明はこれに限定されず、ニップ形成部材は、例えばパッドのみで構成されていてもよい。
【0142】
前記実施形態では、第2バネ330とカムフォロア350を設けたが、本発明はこれに限定されず、第2バネとカムフォロアはなくてもよい。つまり、カムでアーム本体を直接押圧する構成としてもよい。
【0143】
前記実施形態では、第1バネを引張コイルバネとし、第2バネを圧縮コイルバネとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1バネを圧縮コイルバネとし、第2バネを引張コイルバネとしてもよい。
【0144】
前記実施形態では、第1バネ320および第2バネ330の付勢力をアーム310を介して第2定着部材82に付与したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1バネおよび第2バネの付勢力が第2定着部材に直接付与されてもよい。
【0145】
なお、第1バネおよび第2バネは、前述したコイルバネに限定されず、例えば、トーションバネ、板バネなどであってもよい。
【0146】
ヒータで第1定着部材または第2定着部材を加熱する方式としては、例えば、ヒータを第1定着部材の外部に配置し、第1定着部材の外周面を加熱する外部加熱方式や、IH(Induction Heating)方式でもよい。また、第2定着部材にヒータを設け、第2定着部材の外周面に接触する第1定着部材を間接的に加熱してもよい。また、第1定着部材と第2定着部材がそれぞれヒータを内蔵していてもよい。
【0147】
前記実施形態では、回動可能なカム340によって第2定着部材82を移動させたが、本発明はこれに限定されず、例えば、直線移動可能な直動カムによって第2定着部材を移動させてもよいし、エアシリンダのロッドを進退させて第2定着部材を移動させてもよい。
【0148】
前記実施形態では、第1パッドP1および第2パッドP2をゴムで構成したが、本発明はこれに限定されず、パッドは、例えば、加圧時においても弾性変形しない樹脂や金属などの硬質材料から構成されていてもよい。
【0149】
前記実施形態では、現像剤像形成部として、感光体ドラム61、帯電器62などを備える構成としたが、本発明はこれに限定されず、現像剤像形成部は、例えば、ベルト状の感光体、帯電ローラなどを備えていてもよい。
【0150】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0151】
1 画像形成装置
81 第1定着部材
82 第2定着部材
84A 第1長孔
100 制御部
110 ヒータ
120 ローラ
130 ベルト
140 ホルダ
320 第1バネ
340 カム
N1 第1ニップ形成部材
N2 第2ニップ形成部材
N11 第1先端面
N21 第2先端面
NP ニップ部
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9