(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】コミュニケーションシステム
(51)【国際特許分類】
H04M 1/00 20060101AFI20240827BHJP
G08C 15/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H04M1/00 U
G08C15/06 H
(21)【出願番号】P 2020144068
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菅田 光留
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2019/049356(JP,A1)
【文献】特開2014-044599(JP,A)
【文献】特開2021-013141(JP,A)
【文献】特許第5160818(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
G08C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、個別の時刻を示す時計を有し、利用者に関するセンシング情報及び前記センシング情報が検出された時点での個別の時刻である情報検出時刻を検出する複数のセンサ端末と、
基準時刻を保有し、前記複数のセンサ端末と通信可能な管理端末と、
前記複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析する関係性分析部と、を備え、
前記利用者間の関係性は、前記複数のセンサ端末の各々の利用者の発話の内容、及び、会話における各々の利用者の発話頻度の差の少なくとも1つから推定される人間関係であり、
前記センシング情報は、前記利用者の発話を含む周囲の音の情報及び前記利用者の発話を含む周囲の音の音圧情報の少なくとも1つを含み、
前記複数のセンサ端末は、それぞれ、前記情報検出時刻と前記センシング情報との組を前記管理端末に送信しつつ、前記送信がされた時点での前記個別の時刻である送信個別時刻を送信し、
前記管理端末は、前記複数のセンサ端末の各々から前記センシング情報、前記情報検出時刻、及び前記送信個別時刻の組み合わせを複数取得し、前記複数取得した時点の各々の基準時刻である取得基準時刻を取得し、
前記管理端末は、前記送信個別時刻、及び前記取得基準時刻に基づいて第1の回帰直線を導出した後、前記組み合わせを再び取得し、
前記管理端末は、前記再び取得した前記組み合わせの前記送信個別時刻と、前記再び取得した時点での前記基準時刻における前記第1の回帰直線に相当する時刻との時間差が閾値を超えた場合、
所定数の前記組み合わせをさらに取得し、前記さらに取得した所定数の前記組み合わせの前記送信個別時刻、及び前記取得基準時刻に基づいて第2の回帰直線を導出し、前記第2の回帰直線を用いて前記再び取得した前記情報検出時刻を補正し、
前記時間差が閾値以下である場合、前記第1の回帰直線を用いて前記再び取得した前記情報検出時刻を補正
し、
前記関係性分析部は、前記センシング情報及び補正された前記情報検出時刻を用いて前記関係性を分析する、
コミュニケーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコミュニケーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コミュニケーションの記録を取得し、分析するためのコミュニケーションシステムが知られている。例えば、特許文献1に開示のコミュニケーションシステムは、複数のセンサ端末(端末)と、これらとデータ通信可能な管理端末(基地局)と、演算部(アプリケーションサーバ)とを備える。演算部は、管理端末が複数のセンサ端末から取得したセンシング情報を用いて各センサ端末の利用者間の関係を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、以下の課題を発見した。
基地局がセンサ端末の計測した時刻を受信した際に、センサ端末の時刻をその都度正しい時刻に逐次的に補正したいニーズがある。しかし、例えば、センサ端末の電源スイッチが一度オフ(OFF)にされ、その後再度オン(ON)された場合、センサ端末の計測した時刻がリセットされる。そのため、回帰直線を用いてセンサ端末の時刻を良好な精度で補正することができないことがあった。
【0005】
本発明は、センサ端末の時刻を良好な精度で補正することができるコミュニケーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコミュニケーションシステムは、
それぞれ、個別の時刻を示す時計を有し、利用者に関するセンシング情報及び前記センシング情報が検出された時点での個別の時刻である情報検出時刻を検出する複数のセンサ端末と、
基準時刻を保有し、前記複数のセンサ端末と通信可能な管理端末と、
前記複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析する関係性分析部と、を備え、
前記複数のセンサ端末は、それぞれ、前記情報検出時刻と前記センシング情報との組を前記管理端末に送信しつつ、前記送信がされた時点での前記個別の時刻である送信個別時刻を送信し、
前記管理端末は、前記複数のセンサ端末の各々から前記センシング情報、前記情報検出時刻、及び前記送信個別時刻の組み合わせを複数取得し、前記複数取得した時点の各々の基準時刻である取得基準時刻を取得し、
前記管理端末は、前記送信個別時刻、及び前記取得基準時刻に基づいて第1の回帰直線を導出した後、前記組み合わせを再び取得し、
前記管理端末は、前記再び取得した前記組み合わせの前記送信個別時刻と、前記再び取得した時点での前記基準時刻における前記第1の回帰直線に相当する時刻との時間差が閾値を超えた場合、前記再び取得した前記組み合わせの前記送信個別時刻、及び前記取得基準時刻に基づいて第2の回帰直線を導出し、前記第2の回帰直線を用いて前記再び取得した前記情報検出時刻を補正し、
前記時間差が閾値以下である場合、前記第1の回帰直線を用いて前記再び取得した前記情報検出時刻を補正する。
【0007】
このような構成によれば、センサ端末の電源スイッチのオンオフに応じて回帰直線を逐次的に導出する。このような回帰直線を用いて、情報検出時刻を補正するため、センサ端末の時刻を良好な精度で補正するができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、センサ端末の時刻を良好な精度で補正することができるコミュニケーションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムを示す概略図である。
【
図2】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムの管理端末の詳細な構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムのセンサ端末の詳細な構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムにおける、複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析する処理の流れを示すシーケンスチャートである。
【
図5】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムのセンサ端末の時刻対応マップの作成方法の一例について説明する図である。
【
図6】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムにおける、逐次時刻補正方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムのセンサ端末の時刻対応マップの作成方法の一例の詳細について説明する図である。
【
図8】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムのセンサ端末の時刻対応マップの作成方法の一例の詳細について説明する図である。
【
図9】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムのセンサ端末の時刻対応マップの作成方法の一例の詳細について説明する図である。
【
図10】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムにおける、逐次時刻補正方法の流れを概略的に示す図である。
【
図11】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムにおける、逐次時刻補正方法の流れを概略的に示す図である。
【
図12】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムにおける、逐次時刻補正方法の流れを概略的に示す図である。
【
図13】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムにおける、逐次時刻補正方法の流れを概略的に示す図である。
【
図14】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムにおける、逐次時刻補正方法を示すフローチャートの一例である。
【
図15】実施の形態1に係るコミュニケーションシステムのセンサ端末の時刻対応マップの作成方法の別の一例の詳細について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
[実施の形態1]
図1~
図3を参照して実施の形態1について説明する。
【0012】
図1は、実施の形態1に係るコミュニケーションシステム1を示す概略図である。コミュニケーションシステム1は、複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析するためのものである。コミュニケーションシステム1は、管理端末10と、複数のセンサ端末20a~20eと、を含む。管理端末10と複数のセンサ端末20a~20eは、Bluetooth(登録商標)等の無線通信規格に準拠した無線通信により、相互にデータ通信を行うことができる。なお、複数のセンサ端末20a~20eの間で、当該無線通信により、相互にデータ通信を行うことができるようにしてもよい。
【0013】
管理端末10は、基準時刻を保有し、複数のセンサ端末20a~20eと通信可能に構成されている。管理端末10の具体例としては、無線通信機能を有するPCやタブレット型端末装置、ノートPC、スマートフォン等の種々の装置が挙げられる。
【0014】
複数のセンサ端末20a~20eは、それぞれ、個別の時刻(以下、「個別時刻」と呼ぶ)を示す時計を有する。また、複数のセンサ端末20a~20eは、それぞれ、利用者に関するセンシング情報及びセンシング情報が検出された時刻である情報検出時刻を検出する。ここで、センシング情報は、例えば、利用者の発話を含む周囲の音の情報、利用者の発話を含む周囲の音の音圧情報である。また、センシング情報は、利用者の動き(動作)に関する情報であってもよい。複数のセンサ端末20a~20eは、管理端末10との通信を確立する前からセンシング情報及び情報検出時刻の検出を開始するようにしてもよい。複数のセンサ端末20a~20eは、それぞれ、検出するセンシング情報に応じて、マイクや加速度センサを備えてもよい。複数のセンサ端末20a~20eの具体例としては、無線通信機能を有するウェアラブル端末装置等の種々の可搬型装置が挙げられる。当該可搬型装置は、例えば、バッジ形状を有する。なお、
図1には、説明の便宜上、5つの複数のセンサ端末20a~20eのみが示されているが、任意の数のセンサ端末を使用することができる。複数のセンサ端末20a~20eは、それぞれ、センシング情報を格納するメモリを含む。当該メモリは、揮発性でも不揮発性でもよい。ただし不揮発性メモリを使用する場合、センサ端末20a~20eの電源がオン(ON)した後、初期化時にメモリに格納されているセンシング情報をクリアする等し、未送信データが管理端末10側に送信されないようにするとよい。再起動前データが管理端末10に送信された場合、時刻補正が狂うからである。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る管理端末10の詳細な構成を示すブロック図である。管理端末10は、制御部100と、無線通信インタフェース110と、無線通信部120と、記憶装置130と、を備える。
【0016】
制御部100は、管理端末10が備える電子回路及び装置を制御するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置である。制御部100は、種々のプログラムをRAM(Random Access Memory)(図示せず)に展開して実行する。制御部100は、プログラムモジュールである、通信制御部101と、関係性分析部102と、演算処理部103と、を含む。
【0017】
通信制御部101は、複数のセンサ端末20a~20eとの間の無線通信を制御するプログラムモジュールである。通信制御部101は、複数のセンサ端末20a~20eとの間で無線通信を確立する。また、通信制御部101は、複数のセンサ端末20a~20eからセンシング情報及び情報検出時刻を取得すると、これらの情報を記憶装置130に保存する。
【0018】
演算処理部103は、基準時刻取得部103aと、ズレ算出部103bと、時刻補正部103cとを含む。基準時刻取得部103aは、基準時刻としての正確な時刻を保有している。すなわち、基準時刻取得部103aは、例えばインターネットにリアルタイムでアクセスして標準時などの正確な時刻を取得し、取得した正確な時刻を基準時刻として保有する。
【0019】
ズレ算出部103bは、複数のセンサ端末20a~20eからそれぞれ送信されてきた個別時刻と基準時刻とのズレをそれぞれ算出する。なお、センサ端末の個別時刻と基準時刻とのズレの算出には、時刻対応マップを作成することを含む。時刻対応マップは、センサ端末の個別時刻と基準時刻との関係を示すマップである。また、ズレ算出部103bは、このセンサ端末の個別時刻と基準時刻とから回帰直線を求める。時刻対応マップ及び回帰直線の詳細については後述する。ズレ算出部103bは、さらに、算出したズレを、対応するセンサ端末20a~20eと関連付けして記憶装置130に記憶させる。なお、ズレ算出部103bは、個別時刻が送信されてくる毎にズレの算出を行い、時刻記憶部130bに記憶されたズレをリアルタイムで更新するようにしてもよい。また、ズレ算出部103bは、複数のセンサ端末20a~20eの少なくとも1つとの通信が切断され、その後通信が復旧した時、通信が切断されたセンサ端末におけるズレを更新するようにしてもよい。
【0020】
時刻補正部103cは、複数のセンサ端末20a~20eの各々からセンシング情報及び情報検出時刻を取得し、複数のセンサ端末20a~20eの各々から取得された情報検出時刻を対応するセンサ端末のズレに基づいて補正する。
【0021】
関係性分析部104は、センシング情報及び補正された情報検出時刻を用いて、複数のセンサ端末20a~20eの各々の利用者間の関係性を分析する。利用者間の関係性とは、例えば、複数のセンサ端末20a~20eの利用者の発話の内容、会話における各利用者の発話頻度の差などから推定される人間関係である。
【0022】
無線通信インタフェース110は、複数のセンサ端末20a~20eとの間の無線データ通信を制御するインタフェースである。無線通信インタフェース110は、2.4GHz等の帯域の電波を用いて無線データ通信を行うことができる。
【0023】
無線通信部120は、無線通信インタフェース110を介したデータの送受信を行う電子回路である。無線通信部120は、送受信回路を備える。送受信回路は、複数のセンサ端末20a~20eから無線通信インタフェース110を介して種々のデータを受信すると、これらのデータを制御部100に提供する。
【0024】
記憶装置130は、種々のデータやプログラムが保存される記憶装置である。記憶装置130は、情報記憶部130aと、時刻記憶部130bと、回帰直線記憶部130cと、時刻補正対象記憶部130dとを備えている。情報記憶部130aは、複数のセンサ端末20a~20eからそれぞれ取得した、センシング情報及び情報検出時刻を記憶する。時刻記憶部130bは、ズレ算出部103bにおいて算出されたズレを、対応するセンサ端末20a~20eと関連付けして記憶する。情報記憶部130aに記憶された情報検出時刻は、ズレ算出部103bにおいて算出されたズレに基づいて情報検出時刻が補正された後、補正後の情報検出時刻に更新される。回帰直線記憶部130cは、ズレ算出部103bにおいて算出された回帰直線を記憶する。時刻補正対象記憶部130dは、補正対象である情報検出時刻と、センシング情報とを記憶する。
【0025】
図3は、センサ端末20aの詳細な構成を示すブロック図である。以下、
図3を参照してセンサ端末20aの構成について説明する。なお、センサ端末20b~20eは、センサ端末20aと同一の構成を有するため、説明を省略する。
【0026】
センサ端末20aは、制御部200と、無線通信インタフェース210と、無線通信部220と、センシング情報検出部240と、時刻計測部250と、記憶装置260と、を備える。
【0027】
制御部200は、センサ端末20aが備える電子回路及び装置を制御するマイクロコンピュータ等の演算装置である。制御部200は、データテーブル処理部202と、情報提供部203と、を備える。
【0028】
データテーブル処理部202は、記憶装置260に構築されるデータテーブルを処理するプログラムモジュールである。データテーブル処理部202は、センシング情報と、当該センシング情報が検出された情報検出時刻とを関連付けして情報テーブルに保存する。
【0029】
情報提供部203は、無線通信により、個別時刻を管理端末10に提供すると共に、センシング情報及び情報検出時刻を管理端末10に提供するプログラムモジュールである。情報提供部203は、これらの情報を定期的に管理端末10に送信する。
【0030】
無線通信インタフェース210は、管理端末10との間の無線データ通信を制御する装置である。無線通信インタフェース210は、2.4GHz等の帯域の電波を用いて無線データ通信を行うことができる。
【0031】
無線通信部220は、無線通信インタフェース210を介したデータの送受信を行う電子回路である。無線通信部220は、制御部200の制御下で、無線通信インタフェース210を介して種々のデータを管理端末10に送信することができる。
【0032】
センシング情報検出部240は、センシング情報を検出する装置である。センシング情報が利用者の発話を含む周囲の音の情報や利用者の発話を含む周囲の音の音圧情報である場合、センシング情報検出部240はマイクを有している。センシング情報が利用者の動きである場合、センシング情報検出部240は加速度センサを有している。センシング情報検出部240は、検出したセンシング情報をデータテーブル処理部202に提供する。
【0033】
時刻計測部250(例えば、時計とも称する。)は、現在時刻を計測する電子回路である。ここでいう現在時刻は、複数のセンサ端末ごとの個別時刻である。時刻計測部250は、データテーブル処理部202及び情報提供部203の要求に応じて個別時刻を提供する。情報提供部203は、時刻計測部250から提供された個別時刻を管理端末10に提供する。
【0034】
記憶装置260は、センシング情報及び情報検出時刻等のデータや種々のプログラムが保存される記憶装置である。
【0035】
(利用者間の関係性を分析する処理)
次に、複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析する処理の流れについて説明する。
図4は、複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析する処理の流れを示すシーケンスチャートである。
図4に示すように、複数のセンサ端末20a~20eにおいて、電源スイッチがオンされるとともにセンシング情報及び情報検出時刻の検出を開始する(ステップS101)。続いて、センシング情報及び情報検出時刻を検出する(ステップS102)。なお、それぞれのセンサ端末20a~20eでは、センシング情報の検出を開始した後、センシング情報の検出が周期的に繰り返して行われる。
【0036】
ステップS102に続いて、管理端末10が複数のセンサ端末20a~20eとの通信接続を確立する(ステップS103)。続いて、複数のセンサ端末20a~20eから管理端末10に個別時刻を送信する(ステップS104)。続いて、複数のセンサ端末20a~20eから管理端末10に、センシング情報に情報検出時刻が紐付けされたデータ(データテーブル)を送信する(ステップS105)。続いて、管理端末10が複数のセンサ端末20a~20eとの通信接続を切断する(ステップS106)。なお、ステップS102からステップS106までの処理は周期的に繰り返して行われるようにしてもよい。
【0037】
ステップS106に続いて、複数のセンサ端末20a~20eからそれぞれ送信されてきた個別時刻と基準時刻とのズレをそれぞれ算出する(ステップS107)。続いて、複数のセンサ端末20a~20eの各々から取得された情報検出時刻を対応するセンサ端末のズレに基づいて補正する(ステップS108)。続いて、センシング情報及び補正された情報検出時刻を用いて利用者間の関係性を分析する(ステップS109)。なお、ステップS102からステップS108までの処理は複数回繰り返して行われるようにしてもよい。
【0038】
図4のステップS107における、個別時刻と基準時刻のズレの算出は、個別時刻と基準時刻の対応が示された時刻対応マップの作成により行ってもよい。
図5は、センサ端末20aの時刻対応マップの作成方法の一例について説明する図である。なお、センサ端末20b~20eの時刻対応マップの作成方法は、センサ端末20aと同一であるため、説明を省略する。
【0039】
センサ端末20aの個別時刻と対応する基準時刻のデータが5組得られているとする。
図5に示すように、これらのデータを、横軸を基準時刻、縦軸をセンサ端末20aの個別時刻とするグラフにプロットする。そして、センサ端末20aの個別時刻と対応する基準時刻の組に対して最小二乗法を用いて、最も二乗誤差が少なくなる直線を求める。この求めた直線は、例えば、回帰直線であり、回帰直線記憶部130cに記憶する。このように作成された時刻対応マップを用いて、センサ端末20aの情報検出時刻を補正する。これにより、通信遅延による個別時刻と対応する基準時刻のズレのばらつきを抑制することができる。
【0040】
(詳細)
次に、
図6を参照して、上記した複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析する処理の流れの詳細について説明する。この一例は、センサ端末20aのステップS101からステップS108までの処理は繰り返して行われる例である。センサ端末20b~20eの処理も、センサ端末20aの処理と同一であるため、説明を省略する。
【0041】
この一例では、ステップST1に先立って、ステップS101からステップS108までの処理を複数回行った後、再びステップS101からステップS106までの処理をすでに行ったことを前提としている。
【0042】
まず、個別時刻と対応する基準時刻とを取得し、補正対象データを時刻補正対象記憶部130dに記憶する(ステップST1)。補正対象データは、具体的には、1回目のステップS101の開始時刻から、再び行ったステップS106までの、センサ端末20aから管理端末10に送信されたセンシング情報、情報検出時刻、基準時刻、及び個別時刻の組み合わせである。
【0043】
続いて、回帰直線記憶部130cに記憶されている回帰直線(第1の回帰直線)と、送信個別時刻との時間差D1が閾値を超過したか否かを判定する(ステップST2)。送信個別時刻は、再び行ったステップS104において管理端末10に送信された時点での個別時刻である。
【0044】
具体的には、
図7に示すように、複数の基準時刻においてそれぞれ取得された複数の個別時刻P1がある。第1の回帰直線L1は、複数の個別時刻P1とそれらに対応する貴人時刻との組から導出する。再び取得した送信個別時刻P2と、再び取得した時点での基準時刻である取得基準時刻T2における第1の回帰直線L1に相当する送信個別時刻P3とは時間差D1がある。時間差D1が閾値を超過したか閾値以下であるかを判定する。閾値は、幅広い範囲から選択することができ、例えば、10秒である。
【0045】
時間差D1が閾値を超過した場合(ステップST2:YES)、第2の回帰直線を導出し、回帰直線記憶部130cに記憶する(ステップST3)。第2の回帰直線は、第1の回帰直線の傾きと同じ傾きを有する。第2の回帰直線の起点は、再び行ったステップS104において管理端末10に送信された個別時刻である。なお、時間差D1が閾値を超過していることから、センサ端末20aは、個別時刻P1を送信した後、再起動したと推測される。言い換えると、センサ端末20aは、個別時刻P1を送信した後、その電源が一旦切れて(OFF)、再び入った(ON)と推測される。
【0046】
具体的には、
図8に示すように、第2の回帰直線L2は、第1の回帰直線L1の傾きと同じ傾きを有し、かつ、再び取得した送信個別時刻P2から延びる。
【0047】
一方、時間差D1が閾値以下である場合(ステップST2:NO)、第1の回帰直線L1を更新し、この更新した第1の回帰直線L1aを回帰直線記憶部130cに記憶する(ステップST4)。具体的には、個別時刻P1の各々と、個別時刻P1の各々に対応する基準時刻の各々との組と、送信個別時刻P2と送信個別時刻P2に対応する基準時刻との組に対して、最小二乗法を用いて、最も二乗誤差が少なくなる直線を算出する。これによって、第1の回帰直線L1を更新することができる。なお、ステップST4の実施例の詳細については、後述する。
【0048】
続いて、回帰直線記憶部130cに記憶された第1の回帰直線L1又は第2の回帰直線L2を用いて、時刻補正対象記憶部130dの補正対象データを補正する。その後、この補正された補正対象データを時刻記憶部130bに記憶する(ステップST5)。時刻補正対象記憶部130dの補正対象データの情報検出時刻を、第1の回帰直線L1又は第2の回帰直線L2に基づいて、基準時刻に変換する。
【0049】
最後に、補正対象データを時刻補正対象記憶部130dから消去(クリア)する(ステップST6)。
【0050】
以上より、本実施の形態に係るコミュニケーションシステム1は、センサ端末20aの再起動の有無に応じて、逐次的に回帰直線を使い分ける。このような回帰直線を用いて、センサ端末20aの情報検出時刻を基準時刻に補正することができる。すなわち、センサ端末20aの再起動があっても、センサ端末20aの情報検出時刻を良好な精度で補正することができる。
【0051】
また、コミュニケーションシステム1は、センシング情報及び補正された情報検出時刻を用いて利用者間の関係性を分析する。
【0052】
なお、個別時刻に対応する基準時刻は、管理端末10において当該個別時刻を受信した時点の基準時刻としている。よって、センサ端末20aから管理端末10に個別時刻を送信する際に通信遅延が生じると、個別時刻の基準時刻に対するズレが大きくなる。このため、上述の時刻対応マップの作成において、通信遅延が著しい状態で取得された個別時刻を含めると算出されるズレの精度が低下する。これに対し、例えば、以下のようなアルゴリズムによって、算出されるズレの精度を担保する。
(1)センサ端末20aが発する無線通信の電波強度が一定値以上の場合には、個別時刻と基準時刻の組を記録する。一方、センサ端末20aが発する無線通信の電波強度が一定値未満であれば、取得した個別時刻は破棄する。
(2)個別時刻と基準時刻との組が、回帰直線記憶部130cに記憶された回帰直線に対し、縦軸方向に例えば100msec以上離れていたら、通信遅延が大きいものとして、時刻補正には使用せずに破棄してもよい。ただし、前述の通り、閾値例えば10sec以上離れていたら、バッジに再起動がかかったものと判定する。
【0053】
(実施例1)
次に、
図9を参照して、ステップST4の実施例について説明する。
【0054】
図9に示す実施例では、4つの個別時刻P1と、1つの送信個別時刻P2と、個別時刻P1及び送信個別時刻P2の各々に対応する基準時刻の各々との組とがある。これらの組に対して、最小二乗法を用いて、最も二乗誤差が少なくなる直線を算出することによって、第1の回帰直線L1を更新し、第1の回帰直線L1aを導出することができる。
【0055】
なお、ステップST4では、第1の回帰直線L1aの代わり、別の導出方法で更新した第1の回帰直線L1b(図示略)を用いてもよい。例えば、第1の回帰直線L1が傾きapreと切片bpreとを有し、第1の回帰直線L1aが傾きaと切片bとを有し、第1の回帰直線L1aが傾きanewと切片bnewとを有する。以下の式1、2を用いて、第1の回帰直線L1bを導出することができる。
anew=0.9×apre+0.1×a (…式1)
bnew=0.9×bpre+0.1×b (…式2)
上記式1及び2では、第1の回帰直線L1の傾きapreと切片bpreとが第1の回帰直線L1aの傾きaと切片bとそれぞれ比較して重みづけが大きい。そのため、第1の回帰直線L1aが第1の回帰直線L1から大きく変化しても、補正前後の情報検出時刻が不連続になること回避する。第1の回帰直線L1の傾きapreと切片bpreとの係数が増大するにつれて、補正前後の情報検出時刻の変動が緩やかになる。
【0056】
また、以下の式3、4を用いて第1の回帰直線L1を更新してもよい。式3、4は、上記の式1、2の各々を上位概念化したものである。以下の式3、4では、入力xに対するローパスフィルタをLPF(x)とする。すなわち、上記の式1、2はそれぞれ式3、4の1次ローパスフィルタに相当する。
anew=LPF(a) (…式3)
bnew=LPF(b) (…式4)
【0057】
(実施例2)
次に、
図6、
図10~
図13を参照して、上記した複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析する処理の流れの一実施例について説明する。具体的には、本実施例では、
図6に示すステップST1~ST6を2回繰り返す。
【0058】
まず、1回目のステップST1~ST6について説明する。
【0059】
図10に示すように、送信個別時刻P2aと対応する基準時刻との組を取得する。個別時刻P1から送信個別時刻P2aまでの、複数のセンサ端末20aから送信された情報検出時刻DT1、センシング情報基準時刻、及び個別時刻の組み合わせを時刻補正対象記憶部130dに記憶する(ステップST1)。第1の回帰直線L1と、送信個別時刻P2aとの時間差D1が閾値を超過したか否かを判定する(ステップST2)。本実施例では、第1の回帰直線L1と、送信個別時刻P2aとの時間差D1が閾値以下である(ステップST2:NO)。
【0060】
図11に示すように、第1の回帰直線L1を更新し、この更新した第1の回帰直線L1aを回帰直線記憶部130cに記憶する(ステップST4)。ここでは、
図9に示す実施例と同じ導出方法を用いて、第1の回帰直線L1aを導出した。
【0061】
続いて、第1の回帰直線L1aを用いて、情報検出時刻DT1を補正して、時刻記憶部130bに記憶する(ステップST5)。情報検出時刻DT1を、第1の回帰直線L1aに基づいて、基準時刻に変換する。最後に、情報検出時刻DT1等を時刻補正対象記憶部130dから消去する(ステップST6)。
【0062】
次に、2回目のステップST1~ST6について説明する。
【0063】
図12に示すように、再び送信個別時刻P3aと基準時刻との組を再び取得する。送信個別時刻P2から送信個別時刻P3aまでの、複数のセンサ端末20aから送信された情報検出時刻DT2、センシング情報基準時刻、及び個別時刻の組み合わせを時刻補正対象記憶部130dに記憶する(ステップST1)。第1の回帰直線L1aと、送信個別時刻P3aとの時間差D1が閾値を超過したか否かを判定する(ステップST2)。本実施例では、第1の回帰直線L1aと、送信個別時刻P3aとの時間差D1が閾値を超過している(ステップST2:YES)。
【0064】
図13に示すように、第2の回帰直線L2を導出し、回帰直線記憶部130cに記憶する(ステップST3)。第2の回帰直線L2は、第1の回帰直線L1aの傾きと同じ傾きを有する。第2の回帰直線L2の起点は、送信個別時刻P3aである。
【0065】
続いて、第2の回帰直線L2を用いて、情報検出時刻DT2を補正して、時刻記憶部130bに記憶する(ステップST5)。情報検出時刻DT2を、第1の回帰直線L1aに基づいて、基準時刻に変換する。最後に、情報検出時刻DT2等を時刻補正対象記憶部130dから消去する(ステップST6)。
【0066】
(別の一例)
次に、
図14を参照して、上記した複数のセンサ端末の各々の利用者間の関係性を分析する処理の流れの別の一例について説明する。本例は、ステップST21を備えることを除いて、
図6に示す処理の流れの一例と同じ構成を備える。
【0067】
まず、
図6に示す処理の流れと同様に、ステップST1、及びステップST2を実施する。
【0068】
時間差D1が閾値を超過した場合(ステップST2:YES)、個別時刻と対応する基準時刻との組合せを所定数受信したか否かを判定する(ステップST21)。時間差D1が閾値以下である場合(ステップST2:NO)、
図6に示す処理の流れと同様に、ステップST4~ステップST6を実施する。
【0069】
個別時刻と対応する基準時刻との組合せを所定数受信した場合(ステップST21:YES)、
図6に示す処理の流れと同様に、ステップST3、5、6を実施する。
【0070】
個別時刻と対応する基準時刻との組合せを所定数受信していない場合(ステップST21:NO)、ステップST1に戻り、再びステップST2に移行する。
【0071】
なお、第2の回帰直線L2は、
図8に示す方法とは、別の方法を用いて導出してもよい。
【0072】
例えば、
図15に示すように、
図8に示す方法と別の方法を用いて導出された第2の回帰直線L2aがある。第2の回帰直線L2aは、第1の回帰直線L1の傾きと同じ傾きを有する。送信個別時刻P3は、取得基準時刻T2以後、さらに行ったステップS104において管理端末10に送信された時点での個別時刻である。第2の回帰直線L2aは、送信個別時刻P2、P3のいずれか一方のうち、切片が大きくなる方を通過する。
図15に示す一例では、第2の回帰直線L2aが送信個別時刻P3を通過した場合、第2の回帰直線L2aの切片は、第2の回帰直線L2aが送信個別時刻P2を通過した場合のそれと比較して大きい。よって、
図15に示す一例では、第2の回帰直線L2aの起点は、送信個別時刻P3である。取得基準時刻T2以後、通信遅延が発生しても、送信個別時刻P3が送信個別時刻P2よりも通信遅延が小さい。そのため、第2の回帰直線L2aが送信個別時刻P3を通過すると場合、第2の回帰直線L2aは、通信遅延の影響が小さい。そのため、時刻を良好な精度で補正することができる。
【0073】
また、他の第2の回帰直線L2を導出する方法がある。取得基準時刻T2以後、個別時刻が複数回送信される場合がある。このような場合、この送信された複数の個別時刻の各々と、複数の個別時刻に対応する基準時刻の各々との組に対して最小二乗法を用いて、最も二乗誤差が少なくなる直線を求めて、回帰直線を導出してもよい。
【0074】
なお、上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに提供することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに提供されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0075】
本発明は上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態に係るコミュニケーションシステムでは、管理端末が関係性分析部を含む構成として説明したが、コミュニケーションシステムにおいて、関係性分析部が管理端末とは別の装置に含まれる構成であってもよい。また、本発明は、上記実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 コミュニケーションシステム
10 管理端末 20a-20e センサ端末
100 制御部 101 通信制御部
102 関係性分析部
103 演算処理部
103a 基準時刻取得部 103b ズレ算出部
103c 時刻補正部
104 関係性分析部
110 無線通信インタフェース 120 無線通信部
130 記憶装置
130a 情報記憶部 130b 時刻記憶部
130c 回帰直線記憶部 130d 時刻補正対象記憶部
200 制御部
202 データテーブル処理部 203 情報提供部
210 無線通信インタフェース 220 無線通信部
240 センシング情報検出部 250 時刻計測部
260 記憶装置
b、bnew、bpre 切片
D1 時間差 DT1、DT2 情報検出時刻
L1、L1a、L1b 第1の回帰直線 L2、L2a 第2の回帰直線
P1 個別時刻 P2、P2a、P3、P3a 送信個別時刻
T2、T3 取得基準時刻
S101-S109、ST1、ST2、ST21、ST3、ST4、ST5、ST6 ステップ