(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】マルチコア光ファイバおよびマルチコア光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G02B6/02 461
(21)【出願番号】P 2020146945
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中西 哲也
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0257040(US,A1)
【文献】中国実用新案第207910785(CN,U)
【文献】特開2018-021999(JP,A)
【文献】米国特許第09151887(US,B2)
【文献】特開2019-152866(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024808(WO,A1)
【文献】特開2015-215564(JP,A)
【文献】特開2016-057297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02,6/44
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿ってそれぞれ延びる12個のコアまたは16個のコアで構成されるコア群と、
前記コア群の各コアを覆っている共通クラッドと、
前記共通クラッドの外周上に設けられた樹脂被覆と、
を備えたマルチコア光ファイバであって、
前記中心軸に直交する当該マルチコア光ファイバの断面上において、前記コア群に含まれるコアは、任意のコアに対して隣接関係にあるコア同士の間に隣接関係が成立しないように配置され、
前記断面上において、前記中心軸と交差する前記共通クラッドの中心を通るとともに前記コア群に含まれるいずれのコアとも交差しない軸を対称軸として、前記コア群に含まれるコアは線対称の位置に配置され、
前記断面上で定義される前記樹脂被覆の外径は、250μm±15μmであり、
前記断面上で定義される前記共通クラッドの直径CD[μm]は、195μm以下の公称値CD
nominal[μm]を基準としたCD
nominal±1μmであり、
波長1310nmにおけるモードフィールド径MFD[μm]は、8.2μm以上9.2μm以下の所定の値を基準とした±0.4μmの範囲に収まり、
22mファイバ長で測定されるケーブルカットオフ波長λ
cc[nm]は、1260nm以下または1360nm以下であり、
前記コア群に含まれるコアそれぞれの零分散波長は、1312nm以上1340nm以下の所定の値を基準とした±12nmの範囲に収まり、
前記零分散波長における分散スロープは、0.092ps/(nm
2・km)以下であり、
前記樹脂被覆および前記共通クラッドの界面から前記コア群に含まれるコアそれぞれの中心までの距離のうち、最短距離d
coat[μm]が、以下の式(1):
【数1】
を満たし、
当該マルチコア光ファイバは、以下の第1条件または第2条件を満たす構造を有するとともに以下の第3条件から第6条件のうちいずれかの条件を満たす光学特性を有し、
前記第1条件は、前記コア群に含まれるコアそれぞれが前記共通クラッドに直接接触することにより定義され、
前記第2条件は、前記コア群に含まれるコアそれぞれに対応する光学クラッドが前記コア群に含まれるコアと前記共通クラッドの間にそれぞれ配置され、かつ、前記光学クラッドそれぞれが前記共通クラッドに対して-0.1%以上0.1%以下の比屈折率差Δ2を有することで定義され、
前記第3条件は、前記コア群が前記12個のコアを含み、前記12個のコアそれぞれについて、波長1360nmにおいて隣接関係にあるコアからのファイバ長10km相当の
、並行伝搬の総クロストークが-6.8dB以下であり、隣接関係になるコア間の中心間隔Λが以下の式(2):
【数2】
を満たすとともに、当該マルチコア光ファイバが以下の式(3):
【数3】
を満たすことにより定義され、
前記第4条件は、前記コア群が前記12個のコアを含み、前記12個のコアそれぞれについて、波長1360nmにおいて隣接関係にあるコアからのファイバ長10km相当の
、並行伝搬の総クロストークが-16.8dB以下であり、隣接関係にあるコア間の中心間隔Λが以下の式(4):
【数4】
を満たすとともに、当該マルチコア光ファイバが以下の式(5):
【数5】
を満たすことにより定義され、
前記第5条件は、前記16個のコアを含み、前記16個のコアそれぞれについて、波長1360nmにおいて隣接関係にあるコアからのファイバ長10km相当の
、並行伝搬の総クロストークが-6.8dB以下であり、隣接関係にあるコア間の中心間隔Λが以下の式(6):
【数6】
を満たすとともに、当該マルチコア光ファイバが以下の式(7):
【数7】
を満たすことにより定義され、
前記第6条件は、前記コア群が前記16個のコアを含み、前記16個のコアそれぞれについて、波長1360nmにおいて隣接関係にあるコアからのファイバ長10km相当の
、並行伝搬の総クロストークが-16.8dB以下であり、隣接関係にあるコア間の中心間隔Λが以下の式(8):
【数8】
を満たすとともに、当該マルチコア光ファイバが以下の式(9):
【数9】
を満たすことにより定義される、
マルチコア光ファイバ。
【請求項2】
前記コア群は、前記12個のコアを含み、
前記12個のコアそれぞれは、前記断面上において、その中心から前記共通クラッドの中心までの距離が設計上最短となるよう配置されるべき4つのコアで構成される内周コア群、および、前記4つのコアと隣接関係にあり、その中心から前記共通クラッドの中心までの距離が設計上最短とならないよう配置されるべき8つのコアで構成される外周コア群のいずれかに属し、前記内周コア群に属するいずれかのコアへの隣接関係にあるコアからの
、並行伝搬の総クロストークが、波長1360nmにおいて、ファイバ長10km相当で-6.8dB以下であり、
前記モードフィールド径MFD[μm]が、波長1310nmにおいて8.6μm±0.4μmであり、
前記ケーブルカットオフ波長λ
cc[nm]が、1260nm以下であり、
当該マルチコア光ファイバは、以下の式(10)から式(14)のうちいずれかの式:
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
を満たしている、
請求項1に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項3】
前記コア群は、前記12個のコアを含み、
前記12個のコアそれぞれは、前記断面上において、その中心から前記共通クラッドの中心までの距離が設計上最短となるよう配置されるべき4つのコアで構成される内周コア群、および、前記4つのコアと隣接関係にあり、その中心から前記共通クラッドの中心までの距離が設計上最短とならないよう配置されるべき8つのコアで構成される外周コア群のいずれかに属し、前記内周コア群に属するいずれかのコアへの隣接関係にあるコアからの
、並行伝搬の総クロストークが、波長1360nmにおいて、ファイバ長10km相当で-16.8dB以下であり、
前記モードフィールド径MFD[μm]が、波長1310nmにおいて8.2μm±0.4μmであり、
前記ケーブルカットオフ波長λ
cc[nm]が、1260nm以下であり、
当該マルチコア光ファイバは、以下の式(15)から式(19)のうちいずれかの式:
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
を満たしている、
請求項1に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項4】
前記コア群は、前記12個のコアを含み、
前記12個のコアそれぞれは、前記断面上において、その中心から前記共通クラッドの中心までの距離が設計上最短となるよう配置されるべき4つのコアで構成される内周コア群、および、前記4つのコアと隣接関係にあり、その中心から前記共通クラッドの中心までの距離が設計上最短とならないよう配置されるべき8つのコアで構成される外周コア群のいずれかに属し、前記内周コア群に属するいずれかのコアへの隣接関係にあるコアからの
、並行伝搬の総クロストークが、波長1360nmにおいて、ファイバ長10km相当で-16.8dB以下であり、
前記モードフィールド径MFDが、波長1310nmにおいて8.6μm±0.4μmであり、
前記ケーブルカットオフ波長λ
cc[nm]が、1360nm以下であり、
当該マルチコア光ファイバは、以下の式(20)から式(24)のうちいずれかの式:
【数20】
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
を満たしている、
請求項1に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項5】
前記中心間隔Λの公称値Λ
nominal[μm]に対して前記中心間隔Λは、以下の式(25):
【数25】
の範囲に収まり、
前記公称値Λ
nominalは、
前記第3条件または前記第5条件を満たした状態で以下の式(26):
【数26】
を満たすか、または、
前記第4条件または前記第6条件を満たした状態で以下の式(27):
【数27】
を満たしている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項6】
波長1550nmにおいて隣接関係にあるコアからのファイバ長10km相当の
、対向伝搬の総クロストークが-15dB以上である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のマルチコア光ファイバを含む複数のマルチコア光ファイバを有するマルチコア光ファイバケーブル。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のマルチコア光ファイバを含む複数のマルチコア光ファイバを間欠的に接着したマルチコア光ファイバリボンを内蔵するマルチコア光ファイバケーブル。
【請求項9】
前記マルチコア光ファイバリボンを、螺旋状に捩じられた状態で内蔵する
請求項8に記載のマルチコア光ファイバケーブル。
【請求項10】
ファイバ長手方向に沿った曲げ半径の平均が0.03m以上0.14m以下または0.14m以上0.3m以下の前記マルチコア光ファイバを含む、
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のマルチコア光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチコア光ファイバ(以下、「MCF」と記す)およびマルチコア光ファイバケーブル(以下、「MCFケーブル」と記す)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、大容量光伝送路としてMCFが盛んに研究されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、125μmのクラッド外径を有するトレンチアシスト型4コアファイバが開示されている。トレンチの深さは約-0.7%以下、モードフィールド径(以下、「MFD」と記す)は波長1310nmにおいて8.4μm以上8.6μm以下、ケーブルカットオフ波長は1171nm以上1195nm以下、零分散波長は1317nm以上1319nm以下、零分散波長での波長分散スロープは0.090ps/(nm2・km)以上0.091ps/(nm2・km)以下である。また、伝送損失は、波長1310nmにおいて0.33dB/km以上0.35dB/km以下、波長1550nmにおいて0.19dB/km以上0.21dB/km以下である。コア間クロストーク(以下、クロストークを「XT」と記す)は波長1625nmにおいて-43dB/kmである。
【0004】
非特許文献2には、125μmのクラッド外径を有するトレンチ無し2コアファイバが開示されている。MFDは波長1310nmにおいて8.1μm、波長1550nmにおいて9.14μmである。5.8km伝搬時のコア間XTは波長1310nmにおいて-79.3dB、波長1490nmにおいて-48.3dB、波長1550nmにおいて-42.5dBである。.カットオフ波長は1160nmである。
【0005】
非特許文献3にも、125μmのクラッド外径を有するトレンチ無し4コアファイバが開示されている。MFDは波長1310nmにおいて8.6μm以上8.8μm以下であり、波長1550nmにおいて9.6μm以上9.8μm以下である。ケーブルカットオフ波長は1234nm以上1244nm以下である。零分散波長は1318nm以上1322nm以下であり、零分散波長での波長分散スロープは0.088ps/(nm2・km)以上0.089ps/(nm2・km)である。伝送損失は、波長1310nmにおいて0.328dB/km以上0.330dB/km以下、波長1550nmにおいて0.188dB/km以上0.193dB/km以下、波長1625nmにおいて0.233dB/km以上0.245dB/km以下である。コア間XTは、1360nm波長帯(Oバンド)において-56dB/km以下、1565nm波長帯(Cバンド)において-30dB/km以下である。
【0006】
非特許文献4には、147μmのクラッド外径を有するとともにコアが正方格子状に配置された12コアファイバと、145μmのクラッドを有するとともにコアが六方格子状に配置された12コアファイバが開示されている。いずれのファイバもトレンチ無しの構造を有する。MFDは波長1310nmにおいて5.4μm、波長1550nmにおいて6.1μmである。カットオフ波長は1.26μm、零分散波長は1.41μm、波長1565nmにおける被覆への漏洩損は0.01dB/2km、波長1565nmにおけるコア間XTは-30dB/2kmである。
【0007】
さらに、非特許文献5には、間欠接着リボン型の超高密度光ファイバケーブルとして、12ファイバリボンの例が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Takashi Matsui, et al.,“Design of 125 μmcladding multi-core fiber with full-band compatibility to conventionalsingle-mode fiber,” Eur. Conf. Opt. Commun. (ECOC) 2015, インターネット<URL:https://doi.org/10.1109/ECOC.2015.7341966>.
【文献】Ying Geng, et al., “High-speed, bi-directional, dual-core fibertransmission system for high-density, short-reach optical interconnects,” Proc.of SPIE, Vol.9390 939009-1 (March 9, 2015).
【文献】T. Matsui et al., “Step-index profile multi-core fibre with standard125-μm cladding to full-band application,”in Eur. Conf. Opt. Commun. (ECOC)(2019), インターネット<URL:https://doi.org/10.1049/cp.2019.0751>.
【文献】Yusuke Sasaki, et al., “High Density Multicore Fibers EmployingSmall MFD Cores for Datacenters,” OECC2018 P2-07, Technical Digest July 02-06,2018.
【文献】Fumiaki Sato, et al., “Characteristics of Ultra-High-Fiber-Count andHigh-Density Optical Cables with Pliable Ribbons,” Proceedings of the 66thIWCS Conference (2017), p.304-311.
【文献】R. J. Black and C. Pask, J. Opt. Soc. Am. A, JOSAA 1(11), p.1129-1131,1984.
【文献】T. Matsui et al., in Eur. Conf. Opt. Commun. (ECOC2017), p. W.1.B.2.
【文献】T. Hayashi et al., in Int. Wire Cable Symp. (IWCS) (2018), p. P-6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、従来のMCFは、汎用シングルモードファイバ(以下、シングルモードファイバを「SMF」と記す)に比べて、量産性が著しく悪く、製造コストが高い。これは、XT低減、コア数増大、クラッド外径の縮小、および各コアにおけるMFDの拡大を同時に実現するため、上記非特許文献1の様に各コアの周囲にクラッドとの比屈折率差の大きい低屈折率のトレンチ層を設ける必要があるためである。
【0010】
また、従来のMCFは、融着接続の施工に時間がかかる(作業コストの増加)。従来のファイバリボンケーブルでは、上記非特許文献1のように、1枚のファイバリボンに12本以上16本以下のファイバが内蔵されており、それらを一括で接続できる。一方、MCFは回転調心が必要なためファイバごとに融着作業が必要になる。ただし、上記非特許文献1から上記非特許文献3のようにMCF1本当たりのコア数が2以上4以下では12本以上16本以下のファイバが内蔵されたファイバリボンの融着と比べ、回転調心による時間増加を無視しても3倍から8倍の時間がかかる。
【0011】
さらに、従来のMCFでは接続損失が著しく悪化する。「太すぎない」クラッドに多くのコアを内蔵するためには、上記非特許文献4のように汎用SMFに比べて大幅なMFDの縮小が必要となる。上記非特許文献4に記載のファイバにおけるMFDは波長1310nmにおいて5.4μm(1310nm)での軸ずれ起因の接続損失は,MFD公称値が8.6μmの汎用SMFでの軸ずれ起因接続損失に比べて2.54倍も劣化する(例えば、接続損失0.5dB以下だった接続が接続損失1.27dB以下に劣化し、接続損失0.35dB以下だった接続が接続損失0.89dB以下に劣化する)。
【0012】
量産性に関しても、従来のMCFは極めて低い。上記非特許文献1、上記非特許文献3、および上記非特許文献4では各コアの屈折率分布の公差が十分に考慮されていないため、製造歩留まりが悪化するからである。
【0013】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、量産性に優れ、接続コストおよび伝送損失の増加を抑制するための構造を備えたマルチコア光ファイバおよびマルチコア光ファイバケーブルを提供することを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示のMCFは、上述の課題を解決するため、コア群と、共通クラッドと、樹脂被覆と、を備える。コア群は、中心軸に沿ってそれぞれ延びる12個のコアまたは16個のコアで構成される。共通クラッドは、コア群の各コアを覆っている。樹脂被覆は、共通クラッドの外周上に設けられている。また、中心軸に直交する当該MCFの断面上において、コア群に含まれるコアは、任意のコアに対して隣接関係にあるコア同士の間に隣接関係が成立しないように配置されている。また、該断面上において、中心軸と交差する共通クラッドの中心を通るとともにコア群に含まれるいずれのコアとも交差しない軸を対称軸として、コア群に含まれるコアは線対称の位置に配置されている。該断面上で定義される樹脂被覆の外径は、250μm±15μmであり、該断面上で定義される共通クラッドの直径CD[μm]は、195μm以下の公称値CDnominal[μm]を基準としたCDnominal±1μmである。波長1310nmにおけるMFDは、8.2μm以上9.2μm以下の値を基準とした±0.4μmの範囲に収まる。22mファイバ長で測定されるケーブルカットオフ波長λcc[nm]は、1260nm以下または1360nm以下である。コア群に含まれるコアそれぞれの零分散波長は、1312nm以上1340nm以下の所定の値を基準とした±12nmの範囲に収まる。零分散波長における分散スロープは、0.092ps/(nm2・km)以下である。さらに、当該MCFでは、樹脂被覆および共通クラッドの界面からコア群に含まれるコアそれぞれの中心までの最短距離dcoat[μm]、構造、および光学特性が所定の条件が満たしている。
【発明の効果】
【0015】
本開示のMCFおよびMCFケーブルによれば、量産性が改善されるとともに接続コストおよび伝送損失の増加が効果的に抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示のMCFケーブル(本開示のMCFを含む)の種々の構造を示す図である。
【
図2】本開示のMCFにおける種々のコア配置を示す図である。
【
図3】本明細書で使用される主な用語を説明するための図である。
【
図4】本開示のMCFに適用可能な各コア周辺の屈折率プロファイルを示す図である。
【
図5】12個のコアが正方格子を構成するよう配置されたMCF(以下、「12コアMCF」と記す)において、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図6】12コアMCFにおいて、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図7】12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図8】12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加え、また、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となるΛに1μmのマージンを加えた場合の、CDとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図9】10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)、あるいは、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XT(通常の同方向伝搬時のXT)が-20dB(=-20dB/10km)となる条件下において、12コアMCFの場合と16個のコアが正方格子を構成するよう配置されたMCF(以下、「16コアMCF」と記す)の場合について、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加えるとともにΛに1μmのマージンを加えた場合のCDとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図10】12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加え、また10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となるΛに1μmのマージンを加えた場合のCDとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図11】10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)、あるいは、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となる条件化において、12コアMCFの場合と16コアMCFの場合について、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加えるとともにΛに1μmのマージンを加えた場合のCDとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容をそれぞれ個別に列挙して説明する。
【0018】
(1) 本開示のMCFは、その一態様として、コア群と、共通クラッドと、樹脂被覆と、を備える。コア群は、中心軸に沿ってそれぞれ延びる12個のコアまたは16個のコアで構成される。なお、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCF、および、16個のコアが正方格子を構成するよう配置された16コアMCFの双方の場合に言及するときは、単に「本開示のMCF」と記す。共通クラッドは、コア群の各コアを覆っている。樹脂被覆は、共通クラッドの外周上に設けられている。また、中心軸に直交する当該MCFの断面上において、コア群に含まれるコアは、任意のコアに対して隣接関係にあるコア同士の間に隣接関係が成立しないように配置されている。また、該断面上において、中心軸と交差する共通クラッドの中心を通るとともにコア群に含まれるいずれのコアとも交差しない軸を対称軸として、コア群に含まれるコアは線対称の位置に配置されている。該断面上で定義される樹脂被覆の外径は、250μm±15μmであり、該断面上で定義される共通クラッドの直径CD[μm]は、195μm以下の公称値CDnominal[μm]を基準としたCDnominal±1μmである。波長1310nmにおけるMFD[μm]は、8.2μm以上9.2μm以下の所定の値を基準とした±0.4μmの範囲に収まる。22mファイバ長で測定されるケーブルカットオフ波長λcc[nm]は、1260nm以下または1360nm以下である。コア群に含まれるコアそれぞれの零分散波長は、1312nm以上1340nm以下の所定の値を基準とした±12nmの範囲に収まる。零分散波長における分散スロープは、0.092ps/(nm2・km)以下である。
【0019】
さらに、当該MCFにおいて、樹脂被覆および共通クラッドの界面からコア群に含まれるコアそれぞれの中心までの距離のうち、最短距離d
coat[μm]は、以下の式(1):
【数1】
を満たしている。また、当該MCFは、以下の第1条件または第2条件を満たす構造を有するとともに以下の第3条件から第6条件のうちいずれかの条件を満たす光学特性を有する。
【0020】
特に、上記第1条件は、コア群に含まれるコアそれぞれが共通クラッドに直接接触することにより定義される。上記第2条件は、コア群に含まれるコアそれぞれに対応する光学クラッドがコア群に含まれるコアと共通クラッドの間にそれぞれ配置され、かつ、光学クラッドそれぞれが前記共通クラッドに対して-0.1%以上0.1%以下の比屈折率差Δ2を有することで定義される。
【0021】
一方、上記第3条件は、コア群が12個のコアを含み、該12個のコアそれぞれについて、波長1360nmにおいて隣接関係にあるコアからの総XT(総クロストーク)が-6.8dB/10km以下であり、隣接関係になるコア間の中心間隔Λが以下の式(2):
【数2】
を満たすとともに、当該MCFが以下の式(3):
【数3】
を満たすことにより定義される。
【0022】
上記第4条件は、コア群が12個のコアを含み、12個のコアそれぞれについて、波長1360nmにおいて隣接関係にあるコアからの総XTが-16.8dB/10km以下であり、隣接関係にあるコア間の中心間隔Λが以下の式(4):
【数4】
を満たすとともに、当該MCFが以下の式(5):
【数5】
を満たすことにより定義される。
【0023】
上記第5条件は、16個のコアを含み、前記16個のコアそれぞれについて、波長1360nmにおいて隣接関係にあるコアからの総XTが-6.8dB/10km以下であり、隣接関係にあるコア間の中心間隔Λが以下の式(6):
【数6】
を満たすとともに、当該MCFが以下の式(7):
【数7】
を満たすことにより定義される。
【0024】
上記第6条件は、コア群が前記16個のコアを含み、16個のコアそれぞれについて、波長1360nmにおいて隣接関係にあるコアからの総XTが-16.8dB/10km以下であり、隣接関係にあるコア間の中心間隔Λが以下の式(8):
【数8】
を満たすとともに、当該MCFが以下の式(9):
【数9】
を満たすことにより定義される。
【0025】
上述のように、当該MCFは、12個のコアまたは16個のコアで構成されるコア群を含む。この構造は、1回の融着当たり12ファイバリボンと同等以上のコア数の接続を可能にする。また、当該MCFの断面上で定義される樹脂被覆の外径は250μm±15μmである。この場合、汎用SMFと同等の被覆径が実現され得る。また、当該MCFの断面上で定義される共通クラッドの直径CD[μm]は195μm以下の公称値CDnominal[μm]を基準としたCDnominal±1μmである。これにより、共通クラッドであるガラスクラッドが傷つく可能性を抑えた状態での実績のある被覆厚が実現され得る。
【0026】
波長1310nmにおけるMFDは、8.2μm以上9.2μm以下の所定の値を基準とした±0.4μmの範囲に収まる。この場合、接続損失の増加が効果的に抑制され得る。22mファイバ長で測定されるケーブルカットオフ波長λcc[nm]は、1260nm以下または1360nm以下である。コア群に含まれるコアそれぞれの零分散波長は、1312nm以上1340nm以下の所定の値を基準とした±12nmの範囲に収まる。零分散波長における分散スロープは、0.092ps/(nm2・km)以下である。
【0027】
当該MCFが上記第1条件または上記第2条件を満たす構造を有することにより(共通クラッドに対する比屈折率差が小さいトレンチ層を備えてもよいが、実質的にトレンチ層を含まない)、量産性に優れたファイバ構造が得られる。また、当該MCFのコア群が12個のコアを含む場合には上記第3条件を満たすことにより、また、当該MCFのコア群が16個のコアを含む場合には上記第5条件を満たすことにより、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の所定のコアへの対向伝搬XTの総量が-20dB(-20dB/10km)に抑えられる。一方、当該MCFのコア群が12個のコアを含む場合には上記第4条件を満たすことにより、また、当該MCFのコア群が16個のコアを含む場合には上記第6条件を満たすことにより、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の所定のコアへの対向伝搬XTの総量が-40dB(-40dB/10km)に抑えられる。なお、波長1550nmにおいては、隣接関係にあるコアからのファイバ長10km相当の総クロストークは-15dB以上であってもよい。
【0028】
(2) 本開示の一態様として、当該MCFにおけるコア群が12個のコアを含む構成において、該12個のコアそれぞれは、樹脂被覆および共通クラッドの界面からその中心までの距離が設計上で最短となるよう配置されるべき最外周コアで構成される外周コア群、および、該最外周コアにより取り囲まれたコアで構成される内周コア群のいずれかに属し、内周コア群に属するいずれかのコアへの総XTは、波長1360nmにおいて-6.8dB/10km以下であるのが好ましい。MFD[μm]は、波長1310nmにおいて8.6μm±0.4μmであるのが好ましい。ケーブルカットオフ波長λ
cc[nm]は、1260nm以下であるのが好ましい。さらに、当該MCFは、以下の式(10)から式(14)のうちいずれかの式:
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
を満たすのが好ましい。この構成により、量産性に優れ、かつ、接続コストおよび伝送損失の増加の効果的な抑制可能なMCFが得られる。
【0029】
(3) 本開示の一態様として、当該MCFのコア群が12個のコアを含む構成において、該12個のコアそれぞれは、樹脂被覆および共通クラッドの界面からその中心までの距離が設計上で最短となるよう配置されるべき最外周コアで構成される外周コア群、および、該最外周コアにより取り囲まれたコアで構成される内周コア群のいずれかに属し、内周コア群に属するいずれかのコアへの総XTが、波長1360nmにおいて-16.8dB/10km以下であるのが好ましい。MFD[μm]は、波長1310nmにおいて8.2μm±0.4μmであるのが好ましい。ケーブルカットオフ波長λ
cc[nm]は、1260nm以下であるのが好ましい。さらに、当該MCFは、以下の式(15)から式(19)のうちいずれかの式:
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
を満たすのが好ましい。この構成により、量産性に優れ、かつ、接続コストおよび伝送損失の増加の効果的な抑制可能なMCFが得られる。
【0030】
(4) 本開示の一態様として、MFDは、波長1310nmにおいて8.6μm±0.4μmであるのが好ましい。当該MCFのコア群に含まれるコアそれぞれは、樹脂被覆および共通クラッドの界面からその中心までの距離が設計上で最短となるよう配置されるべき最外周コアおよび隣接関係にある最外周コア同士の中心を結ぶ直線上に位置するコアで構成される外周コア群、および、該外周コア群に属するコアにより取り囲まれたコアで構成される内周コア群のいずれかに属し、内周コア群に属するいずれかのコアへの総XTは、波長1360nmにおいて-16.8dB/10km以下であるのが好ましい。ケーブルカットオフ波長λ
cc[nm]は、1360nm以下であるのが好ましい。さらに、当該MCFは、以下の式(20)から式(24)のうちいずれかの式:
【数20】
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
を満たすのが好ましい。このような構成においても、量産性に優れ、かつ、接続コストおよび伝送損失の増加の効果的な抑制可能なMCFが得られる。
【0031】
(5) 本開示のMCFケーブルは、上述のような構造を有するMCF(本開示のMCF)を含む複数のMCFを含むのが好ましい。この構成により、量産性に優れ、かつ、接続コストおよび伝送損失の増加の効果的な抑制可能なMCFケーブルが得られる。なお、当該MCFケーブルは、複数のMCFを間欠的に接着したマルチコア光ファイバリボンを内蔵してもよい。また、当該MCFケーブルは、ファイバ長手方向に沿った曲げ半径の平均が0.03m以上0.14m以下または0.14m以上0.3m以下のマルチコア光ファイバを含んでもよい。
【0032】
以上、この[本開示の実施形態の説明]の欄に列挙された各態様は、残りの全ての態様のそれぞれに対して、または、これら残りの態様の全ての組み合わせに対して適用可能である。
【0033】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示に係るマルチコア光ファイバ(MCF)およびマルチコア光ファイバケーブル(MCFケーブル)の具体例を、以下に添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、これら例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図されている。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
図1は、本開示のMCFケーブル(本開示のMCFを含む)の種々の構造を示す図である。
【0035】
構造(A)を有するMCFケーブル1Aは、当該MCFケーブル1Aの長手方向に沿って延びるMCF収納空間を含む外被300と、複数のMCF100(本開示のMCF)と、を備える。外皮300は、MCF収納空間に沿って延びる2本の抗張力線(tension member)400A、400Bが埋め込まれている。MCF100それぞれは、その外周面が樹脂被覆により覆われたガラスファイバ200を含む。
【0036】
一方、構造(B)を有するMCFケーブル1Bは、当該MCFケーブル1Bの長手方向に沿って延びるMCF収納空間を含む外皮500と、MCF収納空間を複数に分割するスロッテッドコア600と、複数のMCF100(本開示のMCF)と、を備える。外被500内には、MCF収納空間を複数に分割するスロッテッドコア600(slotted core)が収納されている。スロッテッドコア600は、当該MCFケーブル1Bの長手方向に沿って延びる抗張力線700が埋め込まれている。複数のMCF100は、スロッテッドコア600により分割されたいずれかの空間内に収納される。
【0037】
図2は、本開示のMCFにおける種々のコア配置を示す図である。特に、
図2上段には、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCF100A(本開示のMCF100)の断面図が示されており、下段には、16個のコアが正方格子を構成するよう配置された16コアMCF100B(本開示のMCF100)の断面図が示されている。
【0038】
上段に示された12コアMCF100A(100)の断面図の断面は、当該12コアMCF100Aの長手方向に沿って延びた中心軸と直交する断面である。この12コアMCF100Aは、ガラスファイバ200Aと、該ガラスファイバ200Aの外周に設けられた樹脂被覆130と、を備える。ガラスファイバ200Aは、12個のコアと、各コアを覆う共通クラッド120と、を備え、当該ガラスファイバ200Aの外周面と共通クラッド120の外周面は一致している。12個のコアそれぞれは、所定方向に沿って光を伝搬するための第1コア110a、および、第1コア110aとは逆方向に光を伝搬する第2コア110bのいずれかである。
【0039】
上段に示されたコア配置において、12個のコア(第1コア110aと第2コア110bを含む)それぞれは、樹脂被覆130および共通クラッド120の界面からその中心までの距離が設計上で最短(
図2の上段において、OCT(=d
coat)で示された距離)となるよう配置されるべき最外周コア(
図2の上段の例では8個のコア)で構成される外周コア群、および、該最外周コアにより取り囲まれたコアで構成される内周コア群のいずれかに属する。すなわち、
図2の上段に示された例において、内周コア群は、共通クラッド120の中心AX1を取り囲む最小正方格子を構成する4つのコア(2個の第1コア110aと2個の第2コア110b)を含む。
【0040】
一方、下段に示された16コアMCF100B(100)の断面図は、当該16コアMCF100Bの長手方向に沿って延びた中心軸と直交する断面である。この16コアMCF100Bは、ガラスファイバ200Bと、該ガラスファイバ200Bの外周に設けられた樹脂被覆130と、を備える。ガラスファイバ200Bは、16個のコアと、各コアを覆う共通クラッド120と、を備え、当該ガラスファイバ200Bの外周面と共通クラッド120の外周面は一致している。16個のコアそれぞれは、所定方向に沿って光を伝搬するための第1コア110a、および、第1コア110aとは逆方向に光を伝搬する第2コア110bのいずれかである。
【0041】
下段に示されたコア配置において、16個のコア(第1コア110aと第2コア110bを含む)それぞれは、樹脂被覆130および共通クラッド120の界面からその中心までの距離が設計上で最短(
図2の下段において、OCT(=d
coat)で示された距離)となるよう配置されるべき最外周コア(
図2の下段の例では4個のコア)および隣接関係にある最外周コア同士の中心を結ぶ直線上に位置するコア(
図2の下段の例では8個のコア)で構成される外周コア群、および、該外周コア群に属するコアにより取り囲まれたコアで構成される内周コア群のいずれかに属する。
図2の下段に示された例においても、内周コア群は、共通クラッド120の中心AX2を取り囲む最小正方格子を構成する4つのコア(2個の第1コア110aと2個の第2コア110b)を含む。なお、この
図2の下段の例(16個のコアで構成されるコア配列)で説明され外周コア群の定義を
図2の上段に示された例(12個のコアで構成されるコア配列)では、最外周コアの数は8個であり、最外周コア同士の中心を結ぶ直線上に位置するコアは存在しない。
【0042】
なお、上段の12コアMCF100Aおよび下段の16コアMCF100Bの何れの場合も、全ての隣接コア間で中心間隔Λが等しい図となっているが、Λの公称値Λnominalから所定の範囲内のばらつきがあってもよい。これにより製造トレランスを大きくすることが可能になる。
【0043】
図3は、本明細書で使用される主な用語(隣接関係、コア周辺の断面構造、並行伝搬と並行伝搬XT(クロストーク)、および対向伝搬および対向伝搬XT(クロストーク))を説明するための図である。
【0044】
(隣接関係)
本明細書において、コア間の隣接関係は、MCFの断面上に配置された12コアまたは16個のコアのうち1個の特定コアに着目したとき、該特定コアに対して最小中心間隔および該最小中心間隔との差が2μm以下のコアを、該特定コアに対して隣接関係にあるコアと定義する。すなわち、
図3に示されたように、コア111(110a)を特定コアに設定した場合、該コア111と隣接関係にあるコアは、コア112(110b)とコア113(110b)である。なお、上述の12コアMCF100Aおよび16コアMCF100Bの双方とも、正方格子を構成するようコアが配置されるため、
図3に示されたように、コア112(110b)とコア113(110b)の間では、隣接関係は成立しない。ただし、コア114(110a)は、コア112(110b)とコア113(110b)の双方に対して隣接関係を有する。
【0045】
(コア周辺の断面構造)
12コアMCF100Aおよび16コアMCF100Bの双方において、各コア(第1コア110aまたは第2コア110b)周辺の断面構造は、第1コア110aまたは第2コア110bの外周を共通クラッド120が取り囲んでいる。共通クラッド120は、第1コア110aまたは第2コア110bに直接接触するよう設けられてもよいが、共通クラッド120と、第1コア110aまたは第2コア110bと、の間に光学クラッド121が設けられてもよい。また、光学クラッド121と共通クラッド120との間に小さな比屈折率差Δ3を有するトレンチ層122が設けられてもよい。なお、光学クラッド121は、各コアに対して用意され、共通クラッド120の屈折率に対して-0.1%以上0.1%以下の比屈折率差Δ2を有する。また、トレンチ層122が設けられる場合、該トレンチ層122は、共通クラッドの屈折率に対して-0.4%以上0%未満の比屈折率差Δ3を有するのが好ましい。
【0046】
(並行伝搬および並行伝搬XT)
図3に示された例では、隣接関係が成立している3本のコア(いずれも同一方向に光を伝搬させる第1コア110a)が示されている。すなわち、左側コアと中央のコアとの間で隣接関係が成立するとともに、中央のコアと右側コアとの間で隣接関係が成立している。すなわち、隣接関係の成立したコアそれぞれが、同一方向に光を伝搬する状態を「並行伝搬」と記す。この場合、同一方向に光を伝搬させる隣接コア間で通常のコア間XT(並行伝搬XT)が発生する。
【0047】
(対向伝搬および対向伝搬XT)
一方、対向伝搬は、隣接関係が成立している2本のコアで互いに異なる方向に光を伝搬する。すなわち、
図3の例では、左側のコアと中央のコアには隣接関係が成立しているが、左側のコアは、第1コア110aとして機能し、中央のコアは、第1コア110aとは異なる方向に光を伝搬させる第2コア110bとして機能する。これら左側コアと中央のコアとの間で発生する通常のXTは通信品質へ影響しにくい。同様に、中央のコアに対して隣接関係が成立している右側のコアは、第1コア110aとして機能し、これら右側のコアと中央のコアとの間で発生する通常のXTは通信品質へ影響しにくい。このように、隣接関係が成立しているコアそれぞれが異なる方向に光を伝搬する状態を「対向伝搬」と記す。ただし、左側のコアと右側のコア(いずれも第1コア110aとして機能する)との間では、中央のコア(第2コア110bとして機能する)を介してXTが通信品質に影響する。このように、隣接関係が成立しかつ逆方向へ光を伝搬するコアを介して、同一方向へ光を伝搬するコア間のXTを「対向伝搬XT」と記す。
【0048】
なお、以下の説明では
図3に示された「並行伝搬」および「対向伝搬」の例を参照ながら説明するが、ファイバ長L1での隣接関係が成立しているコア(以下、「隣接コア」と記す)間のXT(並行伝搬XT:XT
co)をXT
co(L1)とすると、XTをデシベル値で表す場合、以下の式(25):
【数25】
と表せ、距離10倍でXTは10dB増える。
【0049】
XTをデシベル値で表す場合、例えば、
図3に示された対向伝搬の例において、中央のコアを介して右側のコアから左側のコアへのXT(対向伝搬XT:XT
counter)は、左側のコアと中央のコアとの間、および、中央のコアと右側のコアとの間の並行伝搬XT:XT
coを用いて、以下の式(26):
【数26】
と表すことができる。
【0050】
ファイバ長L1での対向伝搬XTを、XT
counter(L1)とすると、XTをデシベル値で表す場合、ファイバ長L2での対向伝搬XTは、以下の式(27):
【数27】
と表せ、距離10倍でXT
counterが20dB増える。
【0051】
所定のコアへの隣接コアからのXT
coの合計XT
co,totは、所定のコアの隣接コアの数をNとすると、以下の式(28):
【数28】
となる。上記式(28)は隣接コア間のXT
coが均一であることを前提としている。隣接コア間のXT
coの差異が無視できない場合は、所定のコアへのN個の隣接コアからのうちコアnからのXT
coのをXT
co,nとすると合計XT
co,totは、以下の式(28a):
【数28a】
となる。
【0052】
所定のコアへの対向伝搬XTの合計XT
counter,totは、所定のコアも「隣接コアの隣接コア(
図3に示された対向伝搬の例では、所定のコアを左側のコアとすると、右側のコアに相当)」の数をMとすると、以下の式(29):
【数29】
となりそうだが、そうはならず、所定のコア(左側のコア)のN個の隣接コア(中央のコア)のうちのコアnに対しての隣接コア(所定のコアを含む)の数をK
nとすると、XT
counter,totは、以下の式(30):
【数30】
となることを、発明者らは発見した。そのため、16コアMCFでは、中心付近に位置する4個のコア(内周コア群)のいずれかへのXT
counter,totは、以下の式(31):
【数31】
と表すことができ、12コアMCFでは、内周コア群に属する4個のコアのいずれかへのXT
counter,totは、以下の式(32):
【数32】
と表すことができる。
【0053】
このことから、12コアMCFで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTを-20dB(=-20dB/10km)以下にするためには、ファイバ長L(km)換算での隣接コア間の並行伝搬XT(XT
co)は、以下の式(33):
【数33】
であることが好ましく、また、内周コア群に属する4個のコアのいずれかへの隣接関係のある4個のコアからの並行伝搬XTの和は、以下の式(34):
【数34】
であることが好ましい。
【0054】
12コアMCFで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTを-40dB(=-40dB/10km)以下にするには、ファイバ長L(km)換算での隣接コア間の並行伝搬XT(XT
co)は、以下の式(35):
【数35】
であることが好ましく、また、内周コア群に属する4個のコアのいずれかへの隣接関係のある4個のコアからの並行伝搬XTの和は、以下の式(36):
【数36】
であるのが好ましい。
【0055】
一方、16コアMCFで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTを-20dB(=-20dB/10km)以下にするためには、ファイバ長L(km)換算での隣接コア間の並行伝搬XT(XT
co)は、以下の式(37):
【数37】
であることが好ましく、また、内周コア群に属する4個のコアのいずれかへの隣接関係のある4個のコアからの並行伝搬XTの和は、以下の式(38):
【数38】
であることが好ましい。
【0056】
16コアMCFで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTを-40dB(=-40dB/10km)以下にするには、ファイバ長L(km)換算での隣接コア間の並行伝搬XT(XT
co)は、以下の式(39):
【数39】
であることが好ましく、また、内周コア群に属する4個のコアのいずれかへの隣接関係のある4個のコアからの並行伝搬XTの和は、以下の式(40):
【数40】
であることが好ましい。
【0057】
続いて、本開示のMCFに適用可能なプロファイル構造について説明する。
図4は、本開示のMCFに適用可能な各コア周辺の屈折率プロファイルを示す図である。なお、特別の断りがない場合、「比屈折率差Δ」は共通クラッドの屈折率に対する比屈折率差を意味するものとする(したがって、純シリカガラスの屈折率に対する比屈折率差ではい)。
【0058】
本開示のMCFにおけるコア構造に関し、コアの屈折率プロファイルやそれに伴う光学特性については、用途に応じて適正な構造を選択することができ、例えば、
図4に示されたパターン(1)からパターン(K)の屈折率プロファイルが適用可能である。なお、
図4において、Δは、共通クラッドの屈折率を基準とした比屈折率差であり、rは、各コア中心からの動径(radius)であり、各コア中心・Δ=0%を原点Oとする局所座標系で示している。構造はコア間で一致していてもよく、また、異なっていてもよい。
【0059】
図4に示されたパターン(A)はステップ型の屈折率プロファイル、パターン(B)はリング型の屈折率プロファイル、パターン(C)は2重ステップ型の屈折率プロファイル、パターン(D)はグレーデッド型の屈折率プロファイル、パターン(E)は裾だれ型の屈折率プロファイルであり、これらは、本開示のMCFにおけるコア構造に適用可能である。さらに、コアの周囲にDepressed型の屈折率プロファイルが設けられたパターン(F)およびパターン(H)、コアの周囲にRaised型の屈折率プロファイルが設けられたパターン(G)、パターン(I)およびパターン(J)、コアの周囲にMatched型の屈折率プロファイルが設けられたパターン(E)についても、コア構造に適用可能である。
【0060】
パターン(A)のステップ型の屈折率プロファイル以外の屈折率プロファイルにはESI(Equivalent-step-index)近似を用いて,ステップ型で近似した場合のコア半径aやコアのΔ(Δ1)を求めることができる(上記非特許文献6)。
上記非特許文献6は、コアとクラッドの境界が明瞭な場合には容易に適用できるが、パターン(E)の裾だれ型の屈折率プロファイルのように,コアとクラッド(共通クラッド120または光学クラッド121)の境界が不明瞭な場合への適用は難しく、例えばパターン(E)におけるbをコアの半径と見做して上記非特許文献6の手法をそのまま適用するとESI近似が上手くいかない。このような場合、屈折率プロファイルの傾き(∂Δ/∂r)が最も絶対値の大きな負の値とるrにおけるΔの2/5のΔをとるrをコア半径aと見做し、上記非特許文献6を適用することが好ましい。このときクラッド(共通クラッド120または光学クラッド121)の屈折率はrが、以下の式(41)で示された、aからbまでの範囲のΔの単純平均:
【数41】
あるいは、以下の式(42)で示されたrによる重みづけ平均:
【数42】
で求めた値を用いて、上記非特許文献6に基づいた計算でaやΔ1(第1および第2コア110a、110bの最大比屈折率差)を求めることができる。Δ2(光学クラッド121の比屈折率差)は,-0.10%以上0.10%以下であることが好ましい。製造性が大幅に向上するからである。
【0061】
光学クラッド121の周囲に該光学クラッド121および共通クラッド120よりも低い屈折率を有するトレンチ層122が設けられてもよい(
図4のパターン(K))。ただし、共通クラッド120の屈折率を基準としたトレンチ層122の比屈折率差Δ3が-0.5%以下である場合、製造性が大きく劣化するため、Δ3≧-0.4%であることが好ましく、Δ3≧-0.3%であることがより好ましく、Δ3≧-0.2%であることがさらに好ましい。なお、製造性の観点からはトレンチ層がない方がより好ましい。
【0062】
コアおよびクラッド(光学クラッド121または共通クラッド120)の材料に関しては、シリカガラスを主成分とするガラス製であることが、低い伝送損失と高い機械信頼性を実現できるため好ましい。コアにはGeが添加されていることにより,コアとクラッドの屈折率差が生じていることが好ましい。または、クラッドにFを添加することにより、コアとクラッドの屈折率差が生じていることが好ましい。コアおよび光学クラッドに微量のFが添加されることにより、製造性良くDepressed型のプロファイルを実現できるため好ましい。コアやクラッドにClが添加されていてもよい。これによりOH基を抑制できるとともにOH基に起因した吸収損失を抑制することが可能になる。コアやクラッドに微量のPが含まれてもよい。これにより一部のガラス合成プロセスにおける製造性を高めることが可能になる。
【0063】
図2に示された断面構造を有する本開示のMCFは、樹脂被覆130を有し、該樹脂被覆130直径は250±15μmであることが好ましい。これにより、既存のケーブル化設備などに大きな変更を加えることなく本開示のMCFのケーブル化が可能になる。
【0064】
なお、典型的な汎用SMFにおいて、クラッド直径(ガラスファイバ200の直径)の公称値CDnominalは125μmであり、樹脂被覆130の直径の公称値(直径公称値)は245μm以上250μm程度であるが、被覆細径型SMFにおいては、樹脂被覆の直径公称値が180μm、190μm、200μmのものもみられる。このとき、樹脂被覆130の厚みの公称値(被覆厚公称値)は、それぞれ27.5μm、32.5μm、37.5μmである。樹脂被覆130の厚みが薄くなると、砂やほこりなどが被覆表面を傷つけた場合に傷がガラス製のクラッドまで達することで光ファイバの強度が弱くなることがあるため、十分な被覆厚公称値が望まれる。
【0065】
本開示のMCFにおいて、樹脂被覆130の直径公称値が250μmで被覆厚公称値が27.5μm以上を実現するためには、クラッド直径の公称値CDnominalは195μm以下であることが好ましい。
【0066】
また、樹脂被覆130の直径公称値が245μmで被覆厚公称値が27.5μm以上を実現するためには、CDnominalは190μm以下であることがさらに好ましい。樹脂被覆130の直径公称値が50μmで被覆厚公称値が32.5μm以上を実現するためには、CDnominalは185μm以下であることが好ましい。樹脂被覆130の直径公称値が245μmで被覆厚公称値が32.5μm以上を実現するためには、CDnominalは180μm以下であることが好ましい。樹脂被覆130の直径公称値が250μmで被覆厚公称値が37.5μm以上を実現するためには、CDnominalは175μm以下であることが好ましい。さらに、樹脂被覆130の直径公称値が245μmで被覆厚公称値が37.5μm以上を実現するためには、CDnominalは170μm以下であることが好ましい。それぞれの場合において、被覆厚のトレランスは±15μm以下であることが好ましく、±10μm以下であることがより好ましい。
【0067】
本開示のMCFは、少なくとも12個のコアを備えることが好ましい。これにより、MCFをファイバ1本ずつ回転調心した後に融着を行うとしても、超多コアケーブルを接続する際に12ファイバリボンを多数内蔵するケーブルにおけるリボン融着(12ファイバ一括融着)に比べて、融着1回当たりの接続コア数を同等にすることができる。
【0068】
本開示のMCFは、16個のコアを備えてもよい。この場合、当該MCFをファイバ1本ずつ回転調心した後に融着を行うとしても、超多コアケーブルを接続する際に、16ファイバリボンを多数内蔵するケーブルにおけるリボン融着(16ファイバ一括融着)に比べて、融着1回当たりの接続コア数を同等にすることができる。
【0069】
本開示のMCFは、いずれのコアに対する隣接コア同士も、該コア同士間では隣接関係を満たさないコア構造を有することが望まれる。これにより、特定のコアについての隣接コア間で異なる伝搬方向に信号を伝送する双方向通信において、対向伝搬XTを低減することができる。ここで、所定のコア(特定コア)の隣接コアとは、上述のように、該特定コアへの並行伝搬XT(同じ方向に光を伝搬する場合の通常のXT)の影響が大きいコアであり、具体的には、特定コアに対して最短中心間隔となる位置のコア、および、該最短中心間隔と同等(差異が2μm以下)の中心間隔となる位置のコアである。
【0070】
本開示のMCFにおける各コアは、波長1310nmにおいて8.6μm以上9.2μm以下の値を基準として±0.4μmの範囲に収まるMFDを有するのが好ましい。この場合、ITU-T G.652に規定される汎用SMFのうち、特にMFDの公称値MFDnominalが小さく(MFDnominal ≒ 8.6μm、かつ、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMF同士の接続損失と比較して、本開示のMCF同士の軸ずれに起因する接続損失(所定の軸ずれを与えた場合)を同等以下に抑えることが可能になる。
【0071】
本開示のMCFにおける各コアは、波長1310nmにおいて8.6μm±0.4μmのMFDを有するのが好ましい。これにより、ITU-T G.652に規定される汎用SMFのうち、MFDの公称値が小さく、かつ、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFと本開示のMCFとの接続に関し、コア中心軸ずれ(軸ずれ)に起因する接続損失(所定の軸ずれを与えた場合)を同等にすることが可能になる。
【0072】
本開示のMCFにおける各コアは、波長1310nmにおいて8.2μm以上8.6μm以下の値を基準として±0.4μmの範囲に収まるMFDを有するのが好ましい。これにより、ITU-T G.652に規定される汎用SMFのうち、特にMFDnominalが小さく(MFDnominal ≒ 8.6μm、かつ、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFに対して、本開示のMCFの軸ずれに起因する接続損失(所定の軸ずれを与えた場合)を10%以下の上昇に抑えることが可能になる。このことは、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFの接続損失が0.15dBとなる軸ずれの場合、本開示のMCFの接続損失は0.15dB以上0.165dB以下となり、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFの接続損失が0.25dBとなる軸ずれの場合、本開示のMCFの接続損失は0.25dB以上0.275dB以下となり,曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFの接続損失が0.50dBとなる軸ずれの場合、本開示のMCFの接続損失は0.50dB以上0.55dB以下となり、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFの接続損失が0.75dBとなる軸ずれの場合、本開示のMCFの接続損失は0.75dB以上0.825dB以下となることを意味する。このとき、MFDnominalが小さい方がコアへの光の閉じ込めを強めることができ、コア間XTおよび樹脂被覆への漏洩損失などを抑えることができるので好ましい。
【0073】
本開示のMCFは、1300nm以上1324nm以下の零分散波長を有するのが好ましい。これにより、Oバンドでの伝送後の信号波形の歪みを汎用SMFと同程度に抑制することが可能になる。
【0074】
本開示のMCFは、1312nm以上1340nmの所定の値を基準として±12nmの範囲に収まる零分散波長を有するのが好ましい。これにより、Oバンドでの伝送後の信号波形の歪みを汎用SMFよりも抑制することが可能になる(上記非特許文献7参照)。
【0075】
本開示のMCFは、使用波長帯において、いずれかのコアへの隣接コアからのXTの総和が10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-20dB(=-20dB/10km)以下であることが好ましい。隣接コア以外からのXTは十分低く無視できるので、これにより、コヒーレント検波を行う場合にも十分な信号対雑音比を実現できる。
【0076】
本開示のMCFは、使用波長帯において、いずれかのコアへの隣接コアからのXTの総和が10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-40dB(=-40dB/10km))以下であることが好ましい。隣接コア以外からのXTは十分低く無視できるので、これにより、強度変調直接検波を行う場合にも十分な信号対雑音比を実現できる。
【0077】
本開示のMCFは、使用波長帯において、いずれかのコアへの隣接コアからのXTの総和(並行伝搬XT)が10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-6.8dB(=-6.8dB/10km)以下であることが好ましい。これにより、正方格子を構成するよう12個以上16個以下のコアが配置されたコア配置において、全ての隣接コアのペアに関して隣接コア同士での信号伝搬方向を逆にする双方向通信を行う場合に、問題となる上述のいずれかのコアへの対向伝搬XT(
図3の例のように、逆方向に光を伝搬する隣接コアを介して到達するXTの総和)を10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-20dB(=-20dB/10km)以下に抑制することが可能になる。
【0078】
本開示のMCFは、使用波長帯において、並行伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-16.8dB(=-16.8dB/10km)以下であることが好ましい。これにより、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-40dB(=-40dB/10km)以下に抑制することが可能になる。
【0079】
以下の説明では、
図4のパターン(E)、パターン(H)およびパターン(J)の屈折率プロファイルのコア有するとともに、aが3μm以上5μm以下、Δ1-Δ2が0.3%以上0.6%以下、Δ2が-0.1%以上0.1%以下、b/aが2以上5以下であるMCFについての検討結果について示す。
【0080】
所定の零分散波長とMFDを有するコアの構造は、有限要素法などを用いて基底モードの電界分布と実効屈折率の波長依存性を計算することにより、当業者に設計可能である。例えば、零分散波長λ
0[μm]となるaと(Δ1-Δ2)の関係は、3μm≦a≦5μm、0.3%≦(Δ1-Δ2)≦0.6%の範囲において、以下の式(43):
【数43】
となる。そのため、零分散波長λ
0[μm]がλ
0nominal±12nmとなるためには、aと(Δ1-Δ2)の関係は、以下の式(44)および式(45):
【数44】
【数45】
の両式を満たすことが好ましい。
【0081】
また、波長1310nmでのMFD[μm]に対するaと(Δ1-Δ2)の関係は、3μm≦a≦5μm、0.3%≦(Δ1-Δ2)≦0.6%の範囲において、以下の式(46):
【数46】
となる。そのため、MFD[μm]がMFD
nominal±0.4μmとなるためには、aと(Δ1-Δ2)の関係は、以下の式(47)および式(48):
【数47】
【数48】
の両式を満たすことが好ましい。
【0082】
b/aとΔ2は、λccが1260nm以下あるいは1360nm以下になり、かつ、零分散スロープが0.092ps/(nm2・km)となるように設定されればよい。このためには、Δ2が-0.1%以上0.0%以下、b/aが2以上4以下の範囲であることが好ましい。
【0083】
次に、隣接コア間の好ましい中心間隔Λについて説明する。
図5は、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCFにおいて、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。なお、MFD/λ
ccは無次元量であり、MFDとλ
ccの単位は揃えて求められる。16個のコアが正方格子を構成するよう配置された16コアMCFについてもほぼ同じ結果が得られるので、
図5と以下の議論は16コアMCFにも適用可能である。ここで、ファイバ曲げ半径の平均値Rは0.14mであり、Rが0.14m以下であれば、より低いXTを実現することができる。なお、λ
ccは、ITU-T G.650.1(03/2018)のFigure 12の構成(ケーブル化していないファイバ)で測定を行ったケーブルカットオフ波長のことである。また、コア構造のトレランスを大きくする場合、隣接コア間での実効屈折率差がばらつきを持ち、上記非特許文献8の様にファイバの曲げ半径がより大きな場合(Rが0.14m以上0.3m以下の場合)にも低いXTを実現できる。
【0084】
波長1360nmで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTを-20dB以下にするためには、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccが、少なくとも以下の式(49)または式(50):
【数49】
【数50】
を満たす(
図5に示された下側の点線から上の領域)。さらに、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccは、以下の式(51)または式(52):
【数51】
【数52】
を満たすことが好ましい(
図5に示された上側の点線よりも上の領域)。
【0085】
各コアの位置が設計中心からばらつくことを許容するためには、Λは、上記式(49)から式(52)に示されたの範囲から1μmのマージンを取ることが好ましい。よって、Λは、当該Λの公称値をΛ
nominalとすると、少なくとも以下の式(53):
【数53】
を満たす。さらに、Λは、以下の式(54):
【数54】
を満たすΛ
nominalに対して、以下の式(55):
【数55】
を満たすのが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.9μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(49)または式(51)を満たさなくなる確率は、1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(56):
【数56】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(49)または式(51)を満たさなくなる確率は、0.1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(57):
【数57】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(49)または式(51)を満たさなくなる確率は、0.001%以下に抑えられる。
【0086】
12コアMCFおよび16コアMCFの双方において、波長1360nmで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTが-20dBとなるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係について、同様の検討を行うと、12コアMCFの場合も16コアMCFの場合も全く同じ結果となる。すなわち、波長1360nmでの10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTを-20dB以下とするためには、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccは、少なくとも、以下の式(58)または式(59):
【数58】
【数59】
を満たす。さらに、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccは、以下の式(60)または式(61):
【数60】
【数61】
を満たすことが好ましい。
【0087】
各コアの位置が設計中心からばらつくことを許容するためには、Λが、上記式(58)から式(61)の範囲から1μmのマージンを取ることが好ましい。よって、Λは、Λの公称値をΛ
nominalとすると、少なくとも以下の式(62):
【数62】
を満たす。さらに、Λは、以下の式(63):
【数63】
を満たすΛ
nominalに対して、以下の式(64):
【数64】
を満たすのが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.9μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(58)または式(60)を満たさなくなる確率は、1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(65):
【数65】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(58)または式(60)を満たさなくなる確率は、0.1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(66):
【数66】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(58)または式(60)を満たさなくなる確率は、0.001%以下に抑えられる。
【0088】
図6は、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCFにおいて、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。なお、16コアMCFにおいてもほぼ同じ結果が得られるので、
図6と以下の議論は16コアMCFにも適用可能である。
【0089】
波長1360nmで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTが-40dB以下とするためには、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccは、以下の式(67)または式(68):
【数67】
【数68】
を満たす(
図6に示された下側の点線から上の領域)。さらに、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccは、以下の式(69)または式(70):
【数69】
【数70】
を満たすことが好ましい(
図6に示された上側の点線から上の領域)。
【0090】
各コアの位置が設計中心からばらつくことを許容するためには、Λは、上記式(67)から式(70)の範囲から少なくとも1μmのマージンを取ることが好ましい。よって、Λの公称値Λ
nominalとすると、少なくともΛは以下の式(71):
【数71】
を満たす。さらに、Λは、以下の式(72):
【数72】
を満たすΛ
nominalに対して、以下の式(73):
【数73】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.9μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(67)または式(69)を満たさなくなる確率は、1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(74):
【数74】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(67)または式(69)を満たさなくなる確率は、0.1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(75):
【数75】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(67)または式(69)を満たさなくなる確率は、0.001%以下に抑えられる。
【0091】
12コアMCFおよび16コアMCFにおいて、波長1360nmで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTが-40dBとなるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係について同様の検討を行うと、12コアMCFの場合も16コアMCFの場合も全く同じ結果となり、波長1360nmで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTを-40dB以下とするためには、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccは、少なくとも以下の式(76)または式(77):
【数76】
【数77】
を満たす(
図6に示された下側の点線から上の領域)。さらに、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccは、以下の式(78)または式(79):
【数78】
【数79】
を満たすことが好ましい(
図6に示された上側の点線から上の領域)。
【0092】
各コアの位置が設計中心からばらつくことを許容するためには、Λは、上記式(76)から式(79)の範囲から少なくとも1μmのマージンを取ることが好ましい。よって、Λは、Λの公称値Λ
nominalとすると、少なくとも以下の式(80):
【数80】
を満たす。さらに、Λは、以下の式(81):
【数81】
を満たすΛ
nominalに対して、以下の式(82):
【数82】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.9μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(76)または式(78)を満たさなくなる確率は、1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(83):
【数83】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(76)または式(78)を満たさなくなる確率は、0.1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(84):
【数84】
を満たすことが好ましい。このとき、コアの位置は、それぞれが独立に、設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(76)または式(78)を満たさなくなる確率は、0.001%以下に抑えられる。
【0093】
次に、好ましいd
coat(樹脂被覆とクラッド界面からコア中心までの最短距離)について説明する。
図7は、12個のコアが正方格子を構成するよう配置されたMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【0094】
波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/kmとするためには、d
coatとMFD/λ
ccは、以下の式(85)または式(86):
【数85】
【数86】
を満たす(
図7に示された下側の点線から上の領域)。さらに、d
coatとMFD/λ
ccは、以下の式(87)または式(88):
【数87】
【数88】
を満たすことが好ましい(
図7に示された上側の点線から上の領域)。
【0095】
最外周コアのdcoat(すなわちdcoatの最小値)は、一般に外周クラッド厚(OCT)と呼ばれるが、本開示のdcoatは各コアについて規定できる値として定義すされる。
【0096】
各コアの位置が設計中心からばらつき、かつ、クラッド直径が設計中心からばらつくことを許容するためには、d
coatは、上記式(85)から式(88)の範囲から少なくとも1μmのマージンを取ることが好ましい。よって、d
coatは、d
coatの公称値d
coat,
nominalとすると、少なくとも以下の式(89):
【数89】
を満たす。さらに、クラッド直径の公称値CD
nominalは、以下の式(90):
【数90】
を満たすよう設定されるのが好ましい。このとき、以下の式(91)および式(92):
【数91】
【数92】
の両式が満たされるのが好ましく、d
coatが式(85)または式(87)を満たさなくなる確率は、1%以下に抑えられる。さらに、以下の式(93)および式(94):
【数93】
【数94】
の両式が満たされるのが好ましい。このとき、d
coatが式(85)または式(87)を満たさなくなる確率は、0.1%以下に抑えられる。さらに、以下の式(95)および式(96):
【数95】
【数96】
の両式が満たされるのが好ましい。このとき、d
coatが式(85)または式(87)を満たさなくなる確率は、0.001%以下に抑えられる。
【0097】
次に、許容できる最小CD
nominalについて説明する。
図8は、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加え、また、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となるΛに1μmのマージンを加えた場合の、CDとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【0098】
コア位置とクラッド直径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(97)または式(98):
【数97】
【数98】
を満たす(
図8に示された下側の点線から上の領域)。さらに、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(99)または式(100):
【数99】
【数100】
を満たすことが好ましい(
図8に示された上側の点線から上の領域)。なお、
図8において、縦軸をy、横軸をxとするとき、上側の点線はy=13.15x+64.88(x=7.606×10
-2y-4.935)で与えられ、下側の点線はy=13.15x+54.25(x=7.606×10
-2y-4.126)で与えられる。
【0099】
図9は、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となり、かつ、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XT(通常の同方向伝搬時のXT)が-20dB(=-20dB/10km)となる条件下において、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCFの場合と16個のコアが正方格子を構成するよう配置された16コアMCFの場合について、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加えるとともにΛに1μmのマージンを加えた場合のCDとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。なお、
図9において、記号「○」は、隣接コア間で並行伝搬させる16コアMCFにおける関係、記号「□」は、隣接コア間で対向伝搬させる16コアMCFにおける関係、記号「●(
図9では斜線表示)」は、隣接コア間で並行伝搬させる12コアMCFにおける関係、記号「■(
図9では斜線表示)」は、隣接コア間で対向伝搬させる12コアMCFにおける関係をそれぞれ示している。
【0100】
図9から分かるように、並行伝搬ではなく、対向伝搬で本開示のMCFを用いた方がCDを10μm強だけ縮小できることから好ましく、16コアMCFよりも12コアMCFの方が35μmだけCDを縮小できることから好ましい。
【0101】
なお、
図9では破線は記載されていないが、
図8の場合と同様に、16コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、並行伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(101)または式(102):
【数101】
【数102】
を満たす。さらに、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(103)または式(104):
【数103】
【数104】
を満たすことが好ましい。対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(105)または式(106):
【数105】
【数106】
を満たす。さらに、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(107)または式(108):
【数107】
【数108】
を満たすことが好ましい。
【0102】
12コアMCFにおいて、並行伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(109)または式(110):
【数109】
【数110】
を満たす。さらに、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(111)または式(112):
【数111】
【数112】
を満たすことが好ましい。
【0103】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、16コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、並行伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、MFD/λccは、上記CDnominalの数値が列挙された順に、7.17以下、6.88以下、6.59以下、6.30以下、6.01以下、または5.72以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、6.41以下、6.13以下、5.84以下、5.55以下、5.26以下、4.97以下であることが好ましい。
【0104】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、16コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、8.02以下、7.70以下、7.38以下、7.07以下、6.75以下、6.43以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、7.18以下、6.86以下、6.54以下、6.22以下、5.91以下、5.59以下であることが好ましい。
【0105】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、12コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、9.66以下、9.32以下、8.97以下、8.62以下、8.27以下、7.93以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、8.94以下、8.59以下、8.24以下、7.89以下、7.55以下、7.20以下であることが好ましい。
【0106】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、12コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、10.71以下、10.33以下、9.94以下、9.56以下、9.18以下、8.80以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、9.90以下、9.52以下、9.14以下、8.76以下、8.38以下、8.00以下であることが更に好ましい。
【0107】
図10は、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加え、また10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となるΛに1μmのマージンを加えた場合のCDとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【0108】
コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(113)または式(114):
【数113】
【数114】
を満たす(
図10に示された下側の点線から上の領域)。さらに、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(115)または式(116):
【数115】
【数116】
を満たすことが好ましい(
図10に示された上側の点線から上の領域)。なお、
図10において、縦軸をy、横軸をxとするとき、上側の点線はy=14.07x+66.07(x=7.105×10
-2y-4.694)で与えられ、下側の点線はy=14.07x+55.59(x=7.105×10
-2y-3.950)で与えられる。
【0109】
図11は、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となり、かつ、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XT(通常の同方向伝搬時のXT)が-40dB(=-40dB/10km)となる条件化において、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCFの場合と16個のコアが正方格子を構成するよう配置された16コアMCFの場合について、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加えるとともにΛに1μmのマージンを加えた場合のCDとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。なお、
図11において、記号「○」は、隣接コア間で並行伝搬させる16コアMCFにおける関係、記号「□」は、隣接コア間で対向伝搬させる16コアMCFにおける関係、記号「●(
図11では斜線表示)」は、隣接コア間で並行伝搬させる12コアMCFにおける関係、記号「■(
図11では斜線表示)」は、隣接コア間で対向伝搬させる12コアMCFにおける関係をそれぞれ示している。
【0110】
図11から分かるように、並行伝搬ではなく、対向伝搬で本開示のMCFを用いた方がCDを10μm強だけ縮小できることから好ましく、16コアMCFよりも12コアMCFの方が35μmだけCDを縮小できることから好ましい。
【0111】
なお、
図11では破線は記載されていないが、
図10の場合と同様に、16コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、並行伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(117)または式(118):
【数117】
【数118】
を満たす。さらに、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(119)または式(120):
【数119】
【数120】
を満たすことが好ましい。対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(121)または式(122):
【数121】
【数122】
を満たす。さらに、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(123)または式(124):
【数123】
【数124】
を満たすことが好ましい。
【0112】
12コアMCFにおいて、並行伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(125)または式(126):
【数125】
【数126】
を満たす。さらに、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係は、以下の式(127)または式(128):
【数127】
【数128】
を満たすことが好ましい。
【0113】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、16コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、並行伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、6.09以下、5.83以下、5.58以下、5.33以下、5.08以下、4.82以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、5.45以下、5.19以下、4.94以下、4.69以下、4.44以下、4.19以下であることが好ましい。
【0114】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、16コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、7.33以下、7.03以下、6.74以下、6.44以下、6.15以下、5.86以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、6.56以下、6.26以下、5.97以下、5.68以下、5.38以下、5.09以下であることが好ましい。
【0115】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、12コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、8.39以下、8.09以下、7.78以下、7.47以下、7.16以下、6.85以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、7.77以下、7.46以下、7.15以下、6.85以下、6.54以下、6.23以下であることが好ましい。
【0116】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、12コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、9.91以下、9.55以下、9.19以下、8.84以下、8.48以下、8.13以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、9.16以下、8.80以下、8.45以下、8.09以下、7.74以下、7.38以下であることが好ましい。
【0117】
λccは、1260nm以下であることで、Oバンドでのシングルモード動作が担保できるので好ましい。このとき、MFD/λccを6.2以上とすることで、1260nm以下のλccと8.2μm±0.4μmのMFDを両立できるので好ましい。MFD/λccを6.5以上とすることで、1260nm以下のλccと8.6μm±0.4μmのMFDを両立できるのでさらに好ましい。
【0118】
また、λccは1360nm以下であることが好ましい。このとき、Oバンドで高次モードが22m以上伝搬するが、短距離での局所曲げや接続を繰り返さなければ、事実上のシングルモード動作が担保でき、かつ、基底モードをより強くコアへ閉じ込められるので好ましい。また、MFD/λccを6.0以上とすることで、1360nm以下のλccと8.6μm±0.4μmのMFDを両立できるのでさらに好ましい。
【0119】
これらの場合、MFD/λccは、上述のCDnominalから規定されるの上限と、MFDとλccの範囲から規定される下限の間の値をとることが好ましい。
【0120】
MFDの公称値をMFDnominalとしてトレランスを±0.4μm、零分散波長λ0の公称値をλ0nominalとしてトレランスを±12nmとるとき、MFD/λccの値は、MFDがMFDnominal-0.4μmで、かつ、λ0がλ0nominal-12nmのときに最小となり、MFDがMFDnominal+0.4μmで、かつ、λ0がλ0nominal+12nmのときに最大になる。このとき、「MFD/λccのトレランス」は、MFD/λccの上限値と下限値の差が少なくとも1.9以上とれるMCF構造であることが好ましく、2.5以上とれることがより好ましく、3.0以上とれることが最も好ましい。
【0121】
実際には、各コアの屈折率プロファイルのパラメータ(a、b、Δ1、Δ2、Δ3、あるいはaESI、Δ1ESI、Δ2ESIなど)は、公称値から独立かつランダムにばらつくわけではなく、各コアの屈折率プロファイルを測定してaESI、bを調整することができる。そのため、MFD/λccのトレランスを小さくすることは可能だが、それでもMFD/λccの上限値と下限値の差が1.0以上とれるMCF構造であることが好ましく、1.5以上とれる構造であることが更に好ましい。これにより、MCFの歩留まりを十分な製造性を持つレベルまで向上させることができる。
【0122】
1260nm以下のλccと8.2μm±0.4μmのMFDを両立させる場合、MFD/λccは6.2以上になるので、MFD/λccのトレランスを1.0以上、1.5以上、1.9以上、2.5以上、3.0以上持たせるためには、MFD/λccは上限値が、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、7.2以上、7.7以上、8.1以上、8.7以上、9.2以上を許容するMCF構造であることが好ましい。そのためには、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(97)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、149μm以上、156μm以上、161μm以上、169μm以上、175μm以上であることが好ましく、さらに式(99)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、、160μm以上、166μm以上、171μm以上、179μm以上、186μm以上であることが好ましい。このとき、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(113)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、157μm以上、164μm以上、170μm以上、178μm以上、185μm以上であることが好ましく、さらに式(115)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、167μm以上、174μm以上、173μm以上、182μm以上、189μm以上であることが好ましい。
【0123】
1260nm以下のλccと8.6μm±0.4μmのMFDを両立させる場合、MFD/λccは6.5以上になるので、MFD/λccのトレランスを1.0以上、1.5以上、1.9以上、2.5以上、3.0以上持たせるためには、MFD/λccの上限値が、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、7.5以上、8.0以上、8.4以上、9.0以上、9.5以上を許容するMCF構造であることが好ましい。そのためには、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(97)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、153μm以上、159μm以上、165μm以上、173μm以上、179μm以上であることが好ましく、さらに式(99)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、163μm以上、170μm以上、175μm以上、183μm以上、190μm以上であることが好ましい。このとき、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(113)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、161μm以上、168μm以上、174μm以上、182μm以上、189μm以上であることが好ましく、さらに式(115)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、172μm以上、179μm以上、184μm以上、193μm以上、199μm以上であることが好ましい。
【0124】
1360nm以下のλccと8.6μm±0.4μmのMFDを両立させる場合、MFD/λccは6.0以上になるので、MFD/λccのトレランスを少なくとも1.0、1.5、1.9、2.5、あるいは、3.0持たせるためには、MFD/λccの上限値が、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、少なくとも7.0、7.5、7.9、8.5、あるいは、9.0を許容するMCF構造であることが好ましい。そのためには、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(97)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、146μm以上、153μm以上、158μm以上、166μm以上、173μm以上であることが好ましく、さらに式(99)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、157μm以上、164μm以上、169μm以上、177μm以上、183μm以上であることが好ましい。このとき、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(113)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、154μm以上、161μm以上、167μm以上、175μm以上、182μm以上であることが好ましく、さらに式(115)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、165μm以上、170μm以上、176μm以上、184μm以上、191μm以上であることが好ましい。
【0125】
λccが1260nmを超え1360nm以下である場合、ITU-T G.650.1(03/2018)のFigure 12の構成(ケーブル化していないファイバ)でサンプルファイバ22m中の20mを曲げ半径140mm以上の曲げを加えて、前記20m区間の前後にそれぞれ半径40mmの曲げを1巻き加えて、全モードを均一に励振した場合に高次モードの強度をPh、基底モードの強度をPfとしたとき、10log10[Ph/(Pf+Ph)]=0.1dBとなる波長をλccとして測定するが、本開示のMCFに関しては、サンプルファイバ22m中の20m区間に加える曲げの半径を半径60mm以上100mm以下に代えて曲げを加えて測定したときのカットオフ波長(λccR)が1260nm以下であることが好ましい。これにより、ケーブル実装後のOバンドにおけるシングルモード動作が担保され得る。また、サンプルファイバの長さLsample[m]が22mを超え1000m以下の範囲で、Lsample-2[m]に曲げ半径140mm以上の曲げを加えて、前記Lsample-2[m]区間の前後にそれぞれ半径40mmの曲げを1巻き加えて、測定したカットオフ波長(λccL)が1260nm以下であることが好ましい。これによりケーブル長がLsample[m]のケーブルにおいて、Oバンドにおけるシングルモード動作が担保され得る。
【0126】
本開示のMCFの各コアは、波長1310nm以上1360nm以下における曲げ損失が、曲げ半径10mmで0.15dB/turn以下であることが好ましく、0.02dB/turn以下であることがより好ましい。これにより、本開示のMCFが間欠接着リボン型の超高密度ケーブルに実装された場合にもケーブル化後の損失増加を抑制することができる。
【0127】
本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、直線状に(少なくとも曲げ半径1m以上に)伸ばしたときに、ケーブル内に実装されたMCFの平均曲げ半径が0.14m以下であることが好ましく、0.10m以下であることがより好ましい。また、本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、ケーブル内に実装されたMCFの平均曲げ半径は0.14m以上0.3m以下であることも好ましい。これにより、XTを低減することができる。
【0128】
また、本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、ケーブル内に実装されたMCFの平均曲げ半径が0.03m以上であることが好ましく、0.06m以上であることがより好ましい。これにより、曲げ起因損失を低減することができる。
【0129】
さらに、本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、間欠接着リボン型ケーブルであることが好ましい。これにより、柔軟な間欠接着リボンを螺旋状にねじりながらケーブル内に実装することができ、MCFに小さな曲げ半径を付与しながらケーブル化することができるのでXTの低減が可能になる。
【0130】
本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、リボンスロット型ケーブルであり、スロット部材の中心に抗張力体を有することが好ましい。これにより、MCFの曲げ半径を制御しやすくなり、XTを低減することができる。また、スロット部材中心に抗張力体があることにより、どの向きにも向きにもケーブルを曲げやすく、ケーブル敷設作業を容易に行うことができる。
【0131】
本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、シース内部の空間にスロット部材を設けず、シース内部に抗張力体を有することが好ましい。これにより、シース内部の空間を有効活用することができ、MCFケーブルの断面積当たりのコア数を増やすことができる。
【符号の説明】
【0132】
1A、1B…MCFケーブル、100…MCF、100A…12コアMCF、100B…16コアMCF、110a…第1コア、110b…第2コア、111、112、113、114…コア、120…共通クラッド、130…樹脂被覆、200、200A、200B…ガラスファイバ、300、500…外皮、400A、400B、700…抗張力線、600…スロッテッドコア、AX1、AX2…共通クラッドの中心。