(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20240827BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B3/12
(21)【出願番号】P 2020148564
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】馬場 大輔
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526543(JP,A)
【文献】特開2000-287925(JP,A)
【文献】特開昭61-041429(JP,A)
【文献】特開2020-006172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に照明光を照射する照射光学系と、前記照明光の眼底からの戻り光を受光する撮像素子を含む受光光学系と、を備える撮影光学系を備え、前記撮像素子からの受光信号に基づいて眼底の正面画像である眼底画像を取得する眼底撮影装置であって、
前記撮影光学系は、
眼底上における撮影領域をスリット状に形成するためのスリット開口と遮光部とを備えるスリット形成部と、前記スリット開口の長辺が前記照明光および前記戻り光のうち少なくともずれかの光束を横切る方向に、前記スリット形成部を
回転移動させる駆動部と、
切換機構と、
を有し、
前記スリット形成部は、幅が異なる2種類の前記スリット開口が交互に配置されたスリット板と、前記2種類のスリット開口のうち一方を選択的に開放するマスクと、が光軸に沿って重ねて配置されており、
前記駆動部は、前記スリット形成部における回転移動の移動方向を逆転可能であり、
前記切換機構は、前記移動方向の正逆に応じて前記スリット板と前記マスクとの位置関係を変更して、前記スリット形成部における前記遮光部と前記スリット開口との面積比をメカニカルに切換えるために、前記移動方向の正逆が切換わった際に、前記スリット板と前記マスクとに対する前記駆動部からの動力伝達を、前記スリット板と前記マスクとの間で所定移動量分遅らせる遅延発生機構を有する、眼底撮影装置。
【請求項2】
前記スリット開口における前記面積比は、第1の面積比と、前記第1の面積比よりも前記スリット開口の割合が高い第2の面積比と、の間で切換可能であり、
前記
移動方向を制御して、前記第1の面積比での走査に基づく第1眼底画像を撮影画像として取得する第1撮影モードと、前記第2の面積比での走査に基づく第2眼底画像を撮影画像として取得する第2撮影モードと、の少なくとも2つの間で、撮影モードを切換える制御手段を、更に備える請求項
1記載の眼底撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、撮影モードに応じて少なくとも前記照明光の波長を変更することで、前記第1撮影モードにおいて、前記第1眼底画像として眼底のカラー画像を取得し、前記第2撮影モードにおいて、前記第2眼底画像として眼底の蛍光画像を取得する、請求項2記載の眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼底の正面画像を得るための眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼底の正面画像を撮影する眼底撮影装置が、眼科分野において広く利用されている。眼底撮影装置としては、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡の他、次のような装置が挙げられる。例えば、特許文献1には、光路中に配置されるスリットを駆動することで、眼底上でスリット状の照明光を走査すると共に、眼底において照明されたスリット状の領域の像を、走査に従って2次元的な撮像面に逐次投影させることで、眼底の正面画像を得る装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、眼底の正面画像の撮影には、カラー撮影および蛍光撮影等の種々の撮影方法が利用されている。本発明者による検討の結果、上記のようなスリット状の照明光を走査する装置では、単一の幅のスリットでは、各々の撮影方法で好適に撮影することが難しいものと考えられる。
【0005】
本開示は、従来技術の問題点の少なくとも1つに鑑みてなされたものであり、明るく良好な眼底画像を撮影しやすい眼底撮影装置を提供すること、を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る眼底撮影装置は、被検眼の眼底に照明光を照射する照射光学系と、前記照明光の眼底からの戻り光を受光する撮像素子を含む受光光学系と、を備える撮影光学系を備え、前記撮像素子からの受光信号に基づいて眼底の正面画像である眼底画像を取得する眼底撮影装置であって、前記撮影光学系は、眼底上における撮影領域をスリット状に形成するためのスリット開口と遮光部とを備えるスリット形成部と、前記スリット開口の長辺が前記照明光および前記戻り光のうち少なくともずれかの光束を横切る方向に、前記スリット形成部を回転移動させる駆動部と、切換機構と、を有し、前記スリット形成部は、幅が異なる2種類の前記スリット開口が交互に配置されたスリット板と、前記2種類のスリット開口のうち一方を選択的に開放するマスクと、が光軸に沿って重ねて配置されており、前記駆動部は、前記スリット形成部における回転移動の移動方向を逆転可能であり、前記切換機構は、前記移動方向の正逆に応じて前記スリット板と前記マスクとの位置関係を変更して、前記スリット形成部における前記遮光部と前記スリット開口との面積比をメカニカルに切換えるために、前記移動方向の正逆が切換わった際に、前記スリット板と前記マスクとに対する前記駆動部からの動力伝達を、前記スリット板と前記マスクとの間で所定移動量分遅らせる遅延発生機構を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、明るく良好な眼底画像を撮影しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】1つの実施例に係る装置の外観構成を示した図である。
【
図2】実施例の撮影ユニットに収容される光学系を示した図である。
【
図3】実施例に係る装置の制御系を示したブロック図である。
【
図4】
図2の光学系において、走査部として適用可能なオプティカルチョッパーを示した図である。
【
図5】実施例に係るスリット形成部の一部であるスリット板を示した図である。
【
図6】実施例に係るスリット形成部の一部であるマスクを示した図である。
【
図7】スリット板とマスクとが連結した状態であって、反時計回りに回転した状態を示している。
【
図8】スリット板とマスクとが連結した状態であって、時計回りに回転した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「概要」
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る眼底撮影装置の実施形態を説明する。眼底撮影装置は、眼底画像を撮影する。なお、本開示では、眼底の正面画像を「眼底画像」と称する。
【0010】
眼底撮影装置(
図1参照)は、撮影光学系(例えば、
図2参照)を少なくとも有する。また、本実施形態の眼底撮影装置は、追加的に、制御部(例えば、
図3参照)を有していてもよい。
【0011】
<撮影光学系>
撮影光学系は、照射光学系と、受光光学系と、を含む。照射光学系は、被検眼の眼底に照明光を照射する。受光光学系は、少なくとも撮像素子を有する。また、受光光学系は、照明光の眼底からの戻り光を、撮像素子によって受光する。眼底撮影装置は、撮像素子からの受光信号に基づいて眼底の正面画像である眼底画像を取得する。
【0012】
照射光学系と受光光学系とは、少なくとも対物光学系(例えば、対物レンズ)を共用する。その他、照射光学系と受光光学系とは、光路結合部を共用していてもよい。光路結合部は、照明光の投光光路と眼底反射光の受光光路とを、結合および分離する。この場合、光路結合部によって形成される投光光路と受光光路との共通光路上に、対物光学系は配置される。
【0013】
撮像素子は、照明領域からの戻り光を受光する。本実施形態では、照明光に対する眼底反射光、および、眼底からの蛍光、を、まとめて「戻り光」と称する。本実施形態において、撮像素子は、眼底共役位置に配置された2次元受光素子であってもよい。
【0014】
撮像素子は、例えば、CMOS、および、2次元CCDであってもよい。撮像素子は、照明領域からの戻り光を受光する。撮像素子からの信号は、画像処理部へ入力される。画像処理部では、撮像素子からの信号に基づいて被検眼の眼底画像が取得(生成)される。
【0015】
なお、以下の説明において、眼底撮影装置によって取得される眼底画像は、撮影画像と、観察画像とに大別される。撮影画像は、レリーズ信号に基づいて撮影(キャプチャー)される眼底画像である。撮影画像の典型例は、静止画である。観察画像は、装置の撮影条件を調整する際に眼底を観察するために利用される動画である。例えば、フォーカスおよびアライメント等の条件を調整する際に利用される。また、観察画像は、赤外光によって取得される。
【0016】
本実施形態において、撮影光学系は、走査型の光学系である。撮影光学系は、スリット形成部と、駆動部と、切換機構と、を含む。
【0017】
スリット形成部は、眼底上における撮影領域をスリット状に形成するためのスリット開口と遮光部とを有する。スリット形成部には、駆動部からの駆動力が伝達される。駆動部は、スリット開口の長辺が光軸を横切る方向にスリット形成部を移動させる。これにより、スリット状の撮影領域が眼底に対して走査(スキャン)される。
【0018】
追加的に、撮影光学系は、光源、および、バリアフィルタ、のうち少なくとも1つを有していてもよい。光源は、照明光を出射する。照明光は、例えば、可視光であってもよいし、赤外光であってもよい。また、波長毎に複数の光源を有していてもよい。
【0019】
<スリット形成部>
スリット形成部は、照明光および戻り光のうち少なくとも何れかの光路上に配置され、これによって、眼底上にスリット状の撮影領域を形成する。スリット形成部のスリット開口は、例えば、眼底と共役な位置に配置される。なお、スリット形成部は、照明光の光路(つまり、照射光学系の光路)と戻り光の光路(つまり、受光光学系の光路)とのそれぞれに配置されることが好ましい。照明光の光路と戻り光の光路とのそれぞれにスリット形成部が配置されることで、アーチファクトの原因となる迷光が撮像され難くなる。
【0020】
なお、本開示において「共役」とは、必ずしも完全な共役関係に限定されるものではなく、「略共役」を含むものとする。即ち、各部の技術意義との関係で許容される範囲で、完全な共役位置からズレて配置される場合についても、本開示における「共役」に含まれる。
【0021】
スリット形成部の一具体例として、オプティカルチョッパー(例えば、
図4参照)が挙げられる。オプティカルチョッパーにおいて、スリット形成部は、1つの円周上に複数のスリット開口と遮光部とが交互に並んで配置される回転体である。オプティカルチョッパーにおいて、回転体は駆動部によって回転駆動される。これによって、複数のスリット開口が連続的に照明光または戻り光の光路に対して横断される。回転体の形状は、例えば、ディスク状であってもよいし、円筒状であってもよい。円筒状の回転体においては、円筒側面に複数のスリットが形成される。なお、回転体は、一定速度で駆動されてもよい。代替的に、スリット形成部および駆動部は、スリット開口を往復駆動する構成でもよい。また、光束通過位置を変更できるメカシャッターであってもよい。
【0022】
<切換機構>
切換機構は、スリット開口と遮光部との面積比を、スリット形成部に作用してメカニカルに切換える。面積比は、スリット開口の幅を切換えることで、変更されてもよい。また、スリット開口の数を変更することで変更されてもよい。なお、本開示において、「幅」は、「縦長なものの、短い方の端から端までの長さ」を意味する。つまり、スリット開口の短辺の長さである。
【0023】
例えば、切換機構は、移動方向の正逆に応じてスリット板とマスクとの位置関係を変更し、これにより面積比を切換えてもよい。この場合、駆動部は、スリット形成部の移動方向を逆転可能であってもよい。
【0024】
このような構成の一例を説明する。スリット形成部には、スリット板と、マスクとが光軸に沿って重ねて配置されていてもよい。マスクは、スリット板に形成される開口を、部分的に又は選択的に遮光する。この場合、光路に配置されたスリット板とマスクとを介して光が通過する領域が、スリット形成部におけるスリット開口として形成される。例えば、上記のオプティカルチョッパーの例では、スリット開口が形成された回転体が、ここでいうスリット板とマスクとによって形成される。移動方向の正逆に応じて切換機構がスリット形成部に作用することで、スリット板と、マスクとの位置関係が切替わる。その結果、スリット開口と遮光部との面積比が、移動方向の正逆に応じて変更される。このとき、面積比は、第1の面積比と、第1の面積比よりもスリット開口の割合が高い第2の面積比と、の間で切換えられる。
【0025】
このとき、切換機構は、遅延発生機構であってもよい。すなわち、遅延発生機構である切換機構は、移動方向の正逆が切替わった際に、スリット板とマスクとに対する駆動部からの動力伝達を、スリット板とマスクとの間で所定移動量分遅らせてもよい。例えば、正方向にスリット形成部を移動させる場合には、スリット板とマスクとの一方に対して他方が所定移動量だけ逆方向にズレて配置され、逆方向にスリット形成部を移動させる場合には、スリット板とマスクとの一方に対して他方が所定移動量だけ正方向にズレて配置される。このとき、遅延発生機構である切換機構は、スリット形成部を停止状態から移動させるときの、又は、移動方向を逆転させるときの勢いを利用して、スリット板とマスクとの位置関係を切替える。切換のために駆動部以外のアクチュエータが不要であり、光軸に沿って重ねて配置されたスリット板とマスクとの位置関係が切替わるだけという簡単な構成で、スリット開口と遮光部との面積比を切換できる。
【0026】
なお、駆動部からの動力がスリット板とマスクとの各々に対して直接伝達される場合には、遅延発生機構は、スリット板とマスクとのうち一方と駆動部との間に設けられる。また、駆動部からの動力が、スリット板とマスクとのうち一方のみに対して直接伝達され、他方に対しては一方を介して間接的に伝達される場合には、遅延発生機構は、スリット板とマスクとの間に設けられてもよい。スリット形成部をオプティカルチョッパーへ適用した具体例については、実施例を参照されたい。
【0027】
なお、切換機構は、必ずしも上記に限定されない。例えば、スリット開口と遮光部との面積比が互いに異なる2以上のスリット形成部を装置が有している場合に、切換機構は、いずれか1つのスリット形成部を、択一的に光路上に配置する機構であってもよい。この場合は、2以上のスリット形成部のそれぞれに対して個別に駆動部が設けられていてもよく、対となるスリット形成部および駆動部を一体的に動かすことで、スリット形成部を、択一的に光路上に配置してもよい。
【0028】
また、スリット形成部において、スリット板とマスクとが光軸に沿って重ねて配置されている構成において、切換機構は、スリット板とマスクとの位置関係を、駆動部とは別体のアクチュエータからの動力をスリット板とマスクの一方へ伝達することで変更してもよい。
【0029】
<制御部>
制御部は、眼底撮影装置における各部の制御処理と、演算処理とを行う処理装置(プロセッサ)である。例えば、制御部は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。
【0030】
<撮影モードの切換>
本実施形態において、制御部は、駆動部の駆動方向を制御して、撮影モードを、第1撮影モードと第2撮影モードとの間で切換る。第1撮影モードでは、第1の面積比での走査に基づく第1眼底画像を撮影画像として取得する。第2撮影モードでは、第2の面積比での走査に基づく第2眼底画像を撮影画像として取得する。
【0031】
第1撮影モードでは、第2撮影モードと比べて、スリット開口と遮光部との面積比がスリット開口の割合がより低い第1の面積比であるので、対物レンズ等の反射によるアーチファクトが生じ難くなる。一方、第2撮影モードでは、第1撮影モードと比べて、スリット開口の割合がより高いので、光量に関して投受光の効率が良くなる。
【0032】
本実施形態において、制御部は、撮影モードに応じて少なくとも照明光の波長を変更する。これにより、第1撮影モードにおいて、第1眼底画像として眼底のカラー画像を取得し、第2撮影モードにおいて、第2眼底画像として眼底の蛍光画像を取得してもよい。第2撮影モードにおいて、制御部は、更に、戻り光の光路上に、バリアフィルタを挿入してもよい。バリアフィルタは、眼底反射光を遮光し、眼底からの蛍光を撮像素子側へ通過させる分光特性を有する。対物レンズ等の反射についても、バリアフィルタによって遮光される。
【0033】
このように、眼底のカラー画像を撮影する際には、スリット開口と遮光部との面積比がスリット開口の割合がより低い第1の面積比であることで、対物レンズ等の反射によるアーチファクトを抑制できる。また、眼底の蛍光画像を撮影する際には、スリット開口と遮光部との面積比がスリット開口の割合がより高い第2の面積比であることで、励起光および蛍光の投受光を効率良く行い、輝度の高い蛍光画像が得られやすくなる。
「実施例」
次に、
図1~
図9を参照して、実施例を説明する。
【0034】
実施例に係る眼底撮影装置1(以下、単に、「撮影装置1」と省略する)は、被検眼の眼底上で照明光をスリット状に形成し、眼底上でスリット状に形成された領域を走査し、照明光の眼底反射光を受光することで、眼底の正面画像を撮影する。
【0035】
<装置の外観>
図1を参照して、撮影装置1の外観構成を説明する。撮影装置1は、撮影ユニット3を有する。撮影ユニット3は、
図2で示す光学系を主に備える。撮影装置1は、基台7、駆動部8、顔支持ユニット9、および、顔撮影カメラ110を有し、これらを用いて、被検眼Eと撮影ユニット3との位置関係を調整する。
【0036】
駆動部8は、基台7に対して左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向であり、換言すれば、作動距離方向)に移動できる。また、駆動部8は、更に、撮影ユニット3を、駆動部8上で被検眼Eに対して3次元方向に移動させる。駆動部8には、予め定められた各可動方向に駆動部8または撮影ユニット3を移動させるためのアクチュエータを有しており、制御部80からの制御信号に基づいて駆動される。顔支持ユニット9は、被検者の顔を支持する。顔支持ユニット9は基台7に固定されている。
【0037】
顔撮影カメラ110は、撮影ユニット3に対する位置関係が一定となるように、筐体6に固定されている。顔撮影カメラ110は、被検者の顔を撮影する。制御部100は、撮影された顔画像から被検眼Eの位置を特定し、駆動部8を駆動制御することで、特定した被検眼Eの位置に対して撮影ユニット3を位置合わせする。なお、制御系の詳細構成については、
図3を参照して後述する。
【0038】
また、撮影装置1は、モニタ120を更に有している。モニタ120には、眼底観察像、眼底撮影像、前眼部観察像等が表示される。
【0039】
<実施例の光学系>
図2を参照して、撮影装置1の光学系を説明する。撮影装置1は、撮影光学系(眼底撮影光学系)10と、前眼部観察光学系40と、を有している。これらの光学系は、撮影ユニット3に設けられている。
【0040】
図2において、被検眼の瞳と共役な位置には撮影光軸上に『△』を、眼底共役位置には撮影光軸上に『×』を付して、それぞれ示す。
【0041】
撮影光学系10は、照射光学系10aと、受光光学系10bと、を有する。実施例において、照射光学系10aは、光源ユニット11、レンズ13、スリット形成部15a、レンズ17a,17、ミラー18、穴開きミラー20、および、対物レンズ22を有する。受光光学系10bは、対物レンズ22、穴開きミラー20、レンズ25a,25b、スリット形成部15b、および、撮像素子28を有する。なお、穴開きミラー20は、照射光学系10aと受光光学系10bとの光路を結合する光路結合部である。穴開きミラー20は、光源からの照明光を、被検眼E側へ反射し、被検眼Eからの眼底反射光のうち、開口を通過した一部を、撮像素子側へ通過させる。穴開きミラー20以外の種々のビームスプリッターを用いることができる。例えば、穴開きミラー20に代えて、穴開きミラー20と透光部と反射部が逆転したミラーが光路結合部として用いられてもよい。但し、この場合、ミラーの反射側に受光光学系10bの独立光路が置かれ、ミラーの透過側に照射光学系10aの独立光路が置かれる。また、穴開きミラー、および、その代替手段としてのミラーは、それぞれ、ハーフミラーと遮光部との組み合わせに、更に置き換えることができる。
【0042】
本実施例において、光源ユニット11は、波長帯が異なる複数種類の光源を有している。例えば、光源ユニット11は、可視光源11a,11bと、赤外光源11c,11dとを有する。波長域が同じである2つの光源は、瞳共役面上において、撮影光軸Lから離れて配置される。2つの光源は、
図2における走査方向であるX方向に沿って並べられており、撮影光軸Lに関して軸対称に配置される。
図2に示すように、2つの光源の外周形状は、走査方向に比べて、走査方向と交差する方向が長い矩形形状であってもよい。
【0043】
なお、
図2において、可視光源として、符号11a,11bで示した2つが示されているが、波長毎に複数の可視光源が、各光源11a,11bに含まれている。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に対応する光源が、可視光源11a,11bにそれぞれ含まれていてもよい。これにより、本実施例では、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のうちいずれかが、任意の組み合わせで照射され得る。例えば、カラー眼底画像を撮影する場合は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色が照射されてもよい。また、蛍光撮影の一種である自発蛍光撮影を行う場合は、G(緑)またはB(青)の波長の光が照射されてもよい。
【0044】
光源からの光は、レンズ13を通過して、スリット形成部15aに照射される。本実施例において、スリット形成部15aは、Y方向に沿って細長く形成された透光部(開口)を持つ。これにより、眼底共役面において、照明光がスリット状に形成される(眼底上でスリット状に照明された領域を、符号Bとして図示する)。
【0045】
図2において、スリット形成部15aは、透光部が撮影光軸LをX方向に横切るようにして、駆動部15cによって変位される。これにより、本実施例における照明光の走査が実現される。なお、本実施例では、受光系側でも、スリット形成部15bによる走査が行われる。本実施例では、投光側と受光側のスリット形成部15a,15bは、1つの駆動部(ドライバ)によって、連動して駆動される。
【0046】
照射光学系10aでは、各光源の像が、レンズ13から対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、瞳共役面上で結像される。つまり、瞳共役面上において、走査方向に関して分離した位置に、2つの光源の像が形成される。このようにして、本実施例では、瞳共役面上における2つの投光領域P1,P2(本実施例における射出瞳)は、2つの光源の像として形成される。
【0047】
また、スリット形成部15aを通過したスリット状の光は、レンズ17aから対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、眼底Er上に結像する。これにより、眼底Er上で照明光がスリット状に形成される。照明光は、眼底Er上で反射され、瞳孔Epから取り出される。
【0048】
ここで、穴開きミラー20の開口は、被検眼の瞳と共役なので、眼底画像の撮影に利用される眼底反射光は、被検眼の瞳上において穴開きミラー開口の像(瞳像)を通過する一部に制限される。このように、被検眼の瞳上における開口の像が、本実施例における受光領域R(本実施例における入射瞳)となる。受光領域Rは、2つの投光領域P1,P2に挟まれて形成される。また、各像の結像倍率、開口の径、2つの光源の配置間隔が適宜設定された結果として、受光領域Rと、2つの投光領域P1,P2とは、瞳上において互いに重ならないように形成される。つまり、射出瞳と入射瞳とが分離されている。その結果、フレアーの発生が良好に軽減される。
【0049】
対物レンズ22および穴開きミラー20の開口を通過した眼底反射光は、レンズ25a,25bを介して、眼底共役位置に、眼底Erのスリット状領域を結像する。このとき、結像の位置にスリット形成部15bの透光部が配置されていることで、有害光が除去される。
【0050】
撮像素子28は、眼底共役位置に配置されている。本実施例では、スリット形成部15bと撮像素子28の間にリレー系27が設けられており、これにより、スリット形成部15bと撮像素子28との双方が、眼底共役位置で配置される。その結果、有害光の除去と、結像との両方が、良好に行われる。これに代えて、撮像素子28とスリット形成部15bとの間のリレー系27を省略し、両者を近接配置してもよい。本実施例では、撮像素子28として、2次元的な受光面を持つデバイスが用いられている。例えば、CMOS、二次元CCD等であってもよい。撮像素子28には、スリット形成部15bの透光部で結像した、眼底Erのスリット状領域の像が投影される。撮像素子28は、赤外光および可視光の両方に感度を持つ。
【0051】
本実施例では、スリット状の照明光が眼底Er上で走査されるに従って、撮像素子28の走査線毎に、眼底Er上の走査位置の像(スリット状の像)が順次投影される。このように、撮像素子には、時分割で走査範囲の全体像が投影される。結果として、走査範囲の全体像として、眼底Erの正面画像が撮像される。
【0052】
撮影光学系10は、視度補正部を有している。本実施例では、照射光学系10aの独立光路、受光光学系10bの独立光路、のそれぞれに視度補正部(視度補正光学系17,25)が設けられている。以下では、便宜上、照射側の視度補正光学系を照射側視度補正光学系17と称し、受光側の視度補正光学系を受光側視度補正光学系25と称する。本実施例の照射側視度補正光学系17は、レンズ17a,レンズ17bおよび駆動部17c(
図3参照)を含む。また、本実施例の受光側視度補正光学系25は、レンズ25a、レンズ25b、および、駆動部25c(
図3参照)を含む。照射側視度補正光学系17においてはレンズ17aとレンズ17bとの間隔が、受光側視度補正光学系25においては、レンズ25aとレンズ25bとの間隔が変更される。これにより照射光学系10aと受光光学系10bとの各々において視度補正が行われる。
【0053】
<スプリット指標投影光学系>
図2に示すように、更に、撮影光学系10は、フォーカス指標投影光学系の1例として、スプリット指標投影光学系50を有する。スプリット指標投影光学系50は、2つのスプリット指標を眼底に投影する。スプリット指標は、フォーカス状態の検出に利用される。また、本実施例では、フォーカス状態の検出結果から、被検眼Eの屈折度数が取得される。
【0054】
スプリット指標投影光学系50は、例えば、光源51(赤外光源)と、指標板52と、偏角プリズム53とを少なくとも有していてもよい。本実施例において、指標板52は、受光光学系50における撮像面と対応する位置へ配置されている。同様に、各々のスリット形成部15a,15bとも対応する位置へ配置される。詳細には、照射側および受光側の視度補正量が0Dである場合に、正視眼(0D眼)の眼底と略共役な位置に、視標板52は配置される。偏角プリズム53は、指標板52よりも被検眼側において、指標板52に近接して配置される。
【0055】
指標板52は、例えば、スリット光を指標として形成する。偏角プリズム53は、視標板52を介した指標光束を分離し、スプリット指標を形成する。分離されたスプリット指標は、照射側視度補正光学系17から対物レンズ22までを介して、被検眼の眼底へ投影される。このため、スプリット指標は、眼底画像(例えば、眼底観察画像)に映り込む。
【0056】
指標板52が眼底共役位置からズレている場合は、眼底上で2つのスプリット指標は分離しており、指標板52が眼底共役位置に配置される場合は、2つのスプリット指標は一致される。共役関係は、偏角プリズム53と被検眼Erとの間に配置される照射側視度補正光学系17によって調整される。そこで、本実施例では、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを一致させつつデフォーカスが行われる。このとき、スプリット指標の分離状態が、フォーカス状態を示す。2つのスプリット指標が合致されるように、照射側および受光側の視度補正量が各々が調整されることによって、撮像面とスリット形成部15a,15bとの各々が、眼底と共役な位置関係となる。
【0057】
<オプティカルチョッパーの詳細説明>
上記のスリット形成部15a,15bおよび駆動部15c(
図3参照)として、本実施例では、
図4に示すようなオプティカルチョッパー150が用いられる。オプティカルチョッパー150は、外周に複数のスリット開口が形成されたホイール151持ち、ホイール151を回転させることで、高速にスリットをスキャンできる。ホイール151は、回転体の一例である。ホイール151が、
図2において示したスリット状部材15a,15bに相当する。また、本体部152に、駆動部15c(
図3参照)が含まれる。駆動部15cは、例えば、回転方向を正逆に切換可能なモータである。
【0058】
なお、
図2では、照射光学系10aの光源ユニット11からミラー18までと、受光光学系10bの穴開きミラー20から撮像素子28までとが、X方向に並列されているが、例えば、穴開きミラー20とミラー18との向きを、図示した状態から90°回転させ、両者をY方向に並列させることによって、オプティカルチョッパーを走査部として適用可能になる。この場合、ホイール151の上端と下端との2箇所で、照射光学系10aの光軸と受光光学系10bの光軸とをそれぞれ横切らせることで、1体のオプティカルチョッパー150で、投光系および受光系の走査を、容易に同期させることができる。
【0059】
本実施例において、
図5~
図8に示すように、ホイール151は、スリット板160とマスク165によって形成されている。両者は、互いの回転軸を一致させつつ、光軸方向に重ねて配置される。また、スリット板160とマスク165とのそれぞれには、駆動部15cからの動力が伝達されることで、回転軸の周りにそれぞれ回転される。
【0060】
図5に、スリット板160を示す。本実施例において、スリット板160には、幅が互いに異なる2種類のスリット開口161,162が、それぞれ同数で複数形成されており、交互に配置されている。本実施例では、それぞれ16コずつのスリット開口161,162が、一定間隔で配置される。
【0061】
図6に、マスク165を示す。マスク165は、スリット板160に形成される上記の2種類のスリット開口161,162のうち、一方を遮蔽し他方を開放するための部材である。本実施例では、マスク165をスリット板160と重ねたときの隣り合うスリット開口の間に遮光部が形成されるマスク165には、16個のスリット開口166が一定間隔で配置される。スリット開口166は、上記のスリット開口161,162のいずれよりも幅広に形成されている。
【0062】
本実施例において、スリット板160は、回転軸に対して直接連結されている。換言すれば、駆動部15cからの動力が遅延なく伝達される。また、マスク165は、スリット板160に対して所定移動量だけ回転方向に関してスライド自在に取り付けられている。
図5,
図6に示すように、スリット板160には、回転軸から一定距離離れた位置にピン163が配置されており、マスク165には、同様の位置に、連結穴167が形成されており、ピン163と連結穴167とを介して、スリット板160とマスク165とは、連結される(
図7,
図8参照)。連結穴167は、回転方向に延びた長孔である。円周方向における連結穴167の長さは、スリット板165において隣り合う2種類のスリット開口161,162の間隔(本実施例では1/32周分)と対応している。
【0063】
このように、ピン163と連結穴167とで互いが連結されていることで、マスク165は、スリット板160に対して、所定移動量分(本実施例では、約1/32周分)遅れて回転される。
【0064】
図7に示すように、駆動部15cがスリット板160を反時計回りに回転させると、ピン163が連結穴167の左側に接した状態でスリット板160とマスク165とが一体となって回転する。このときスリット開口161が露出され、スリット開口162が遮光される。
【0065】
一方、
図8に示すように、駆動部15cがスリット板160を時計回りに回転させると、ピン163が連結穴167の右側に接した状態でスリット板160とマスク165とが一体となって回転する。このようにして、駆動部15cがスリット板160を反時計回り/時計回りに切換えて駆動することで、幅が互いに異なる2種類のスリット開口161,162のうち一方を、選択的に露出させることができる。結果、スリット開口と遮光部との面積比を切換えできる。
【0066】
なお、ホイール151の回転方向が逆転した際には、ピン163が連結穴167の左側または右側と数回にわたって接触と離反を繰り返すようにマスク165が不安定に回転する期間を経てから、スリット板160とマスク165とが完全に同期した状態で回転するようになる。同期までの時間を短縮するために、スリット板160とマスク165とが軽微に押し合うように付勢する図示なき付勢部材が更に設けられていてもよい。スリット板160とマスク165との間で生じる摩擦によって、回転方向が逆転してスリット板160とマスク165とが完全に同期して回転するまでの時間が短縮される。
【0067】
本実施例では、以上に示したように、一方向に回転している限りは光路を通過するスリット開口の幅が一定なので、例えば、一方向に回転している間にスリット開口の幅が変わってしまう場合と比べて、より効率的に眼底画像を撮影できる。すなわち、光量が不適切な走査が抑制されやすく、動画撮影などの連続撮影では、フレームレートを確保しやすい。あるいは、1枚当たりの撮影時間を短縮しやすくなるため、眼の動きによる歪みを抑制しやすい。
【0068】
<バリアフィルタ>
図2に戻って光学系の説明を続ける。撮影装置1は、バリアフィルタ61を更に有する。蛍光撮影時において、受光光学系10bでは、励起光に基づく眼底からの蛍光が、撮像素子28へ導かれる。バリアフィルタ61は、受光光学系の独立光路上に配置され得る。バリアフィルタ61は、励起光と同じ波長域の光を遮光し蛍光を通過させるような分光特性を持つ。一例として、本実施例では、自発蛍光撮影に適した分光特性をバリアフィルタ61は有している。例えば、励起光である緑または青色の光を遮光し、それよりも長波長側の光を、撮像素子28側に通過させる。これにより、自発蛍光が選択的に撮像素子28へ受光される。その結果、眼底の自発蛍光画像が良好に得られる。撮影装置1は、バリアフィルタ61を挿脱する駆動部61a有していてもよい。また、バリアフィルタの挿脱は、例えば、制御部100によって制御される。
【0069】
<前眼部観察光学系>
次いで、前眼部観察光学系40を説明する。前眼部観察光学系40は、対物レンズ22とダイクロイックミラー43と、を撮影光学系10と共用する。前眼部観察光学系40は、更に、光源41、ハーフミラー45、撮像素子47等を含む。撮像素子47は、二次元撮像素子であり、例えば瞳孔Epと光学的に共役な位置に配置される。前眼部観察光学系40は、赤外光で前眼部を照明し、前眼部の正面画像を撮影する。
【0070】
なお、
図2に示した前眼部観察光学系40は一例に過ぎず、他の光学系とは独立した光路で前眼部を撮像してもよい。
【0071】
<実施例の制御系>
次に、
図3を参照して、撮影装置1の制御系を説明する。本実施例では、制御部100によって、撮影装置1の各部の制御が行われる。また、便宜上、撮影装置1で得られた各種画像の画像処理についても、制御部100によって行われるものとする。換言すれば、本実施例では、制御部100が、画像処理部を兼用している。
【0072】
制御部100は、各部の制御処理と、演算処理とを行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。制御部100は、記憶部101と、バス等を介して電気的に接続されている。
【0073】
記憶部101には、各種の制御プログラムおよび固定データ等が格納される。また、記憶部101には、一時データ等が記憶されてもよい。
【0074】
撮影装置1による撮影画像は、記憶部101に記憶されていてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、外部の記憶装置(例えば、LANおよびWANで制御部100に接続される記憶装置)へ撮影画像が記憶されてもよい。
【0075】
また、制御部100は、駆動部8、光源11a~11d、撮像素子28、光源41、撮像素子47、光源51、入力インターフェイス110、およびモニタ120等の各部とも電気的に接続されている。
【0076】
また、制御部100は、入力インターフェイス110(操作入力部)から出力される操作信号に基づいて、上記の各部材を制御する。入力インターフェイス110は、検者の操作を受け付ける操作入力部である。例えば、マウスおよびキーボード等であってもよい。
【0077】
<動作説明>
次に、
図9のフローチャートを参照し、撮影動作について説明する。
【0078】
<アライメント>
撮影装置1は、被検者の顔が顔支持部9に対して配置され、顔検出カメラ110の撮影範囲に含まれることによって、自動的に撮影動作がスタートしてもよい。
【0079】
まず、顔検出カメラ110と前眼部観察光学系40とによる撮影が並行して行われるようになり、両者の撮影結果を用いたアライメント調整が実行される。
【0080】
詳細には、制御部100は、顔画像に含まれる左右眼の一方の位置を検出し、その位置情報に基づいて駆動部8を駆動させる。これにより、前眼部観察が可能な位置まで、撮影ユニット4の位置を調整する。
【0081】
次に、前眼部正面画像に基づいて、アライメント基準位置が設定され、設定されたアライメント基準位置へとアライメントが誘導される。本実施例では、前眼部正面画像に基づいて被検眼Eと撮影ユニット3との位置関係が、制御部100によって調整される。本実施例において、制御部100は撮像素子47からの信号に基づいて、前眼部観察像における瞳孔中心と、画像中心(本実施例では、撮影光軸Lの位置)とが略一致する位置関係を目標とする第1基準位置が、設定される。そして、第1基準位置からのアライメントずれを検出し、アライメントずれが解消される方向へと撮影ユニット4を上下左右方向へ移動させる。このとき、例えば、前眼部観察画像上における瞳孔中心と撮影光軸とのズレ量に基づいて第1基準位置とのアライメントずれが検出されてもよい。また、眼底撮影装置1が、例えば、角膜頂点にアライメント指標を投影するアライメント投影光学系を有している場合、アライメント指標と撮影光軸とのズレ量に基づいてアライメントずれが検出されてもよい。
【0082】
また、制御部100は、瞳孔Epに前眼部観察画像のピントが合うように撮影ユニット4を前後方向へ移動させる。これにより、装置から被検眼までの距離が、所定の作動距離に調整される。
【0083】
このように、本実施例では、アライメント調整の結果として、被検眼と撮影ユニット4との位置関係が、被検眼の瞳上における受光領域Rの中心(つまり、撮影光軸)が瞳孔中心と一致するような位置(本実施例における第1基準位置)へと調整される。
【0084】
<眼底観察画像の取得および表示>
続いて、制御部100は、眼底観察画像の取得および表示を開始する。詳細には、制御部100は、光源11c,11dを同時に点灯させると共に、駆動部15cの駆動を開始させ、眼底Er上の所定の範囲で、スリット状の照明光が、繰り返し走査される。本実施例では、ホイール151を反時計回りに回転させることによって、第1スリット開口161を用いて、眼底観察画像は取得される。第1スリット開口161が光路を通過する毎に撮像素子28から出力される信号に基づいて、眼底観察画が随時生成される。制御部100は、眼底観察画像を、略リアルタイムな動画像として、モニタ120へ表示させる。
【0085】
<視度補正>
次に、眼底観察画像に基づいて、照射光学系および受光光学系におけるフォーカス状態が調整される。本実施例では、アライメント完了後、視度補正光学系を駆動してフォーカス調整が行われる。このとき、本実施例では、照射側視度補正光学系17と、受光側視度補正光学系25との、両方が駆動される。
【0086】
フォーカス調整処理において、制御部100は、まず、光源51を点灯することにより、眼底に対してスプリット指標の投影を開始する。制御部100は、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを一致させつつ補正量を変化させてデフォーカスを行う。また、制御部100は、補正量が変化する毎に、スプリット指標の分離状態を眼底観察画像から検出し、スプリット指標が合致するまで、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを調整する。このような調整の結果として、撮像面とスリット状部材15a,15bとの各々が、眼底と共役な位置関係となる。
【0087】
<撮影モードの選択および撮影>
続いて、制御部100は、撮影モードを選択し、撮影条件を撮影モードに応じて調整する。撮影モードは、例えば、検者からの指示に応じて選択される。制御部100は、通常撮影モードと、蛍光撮影モードと、の間で撮影モードを選択してもよい。通常撮影モードは、眼底反射光に基づく眼底画像を撮影するために設定される。蛍光撮影モードは、蛍光眼底画像を撮影するために設定される。
【0088】
本実施例において、制御部100は、光源11a,11bから出射される光に関し、少なくとも波長に関する条件を、撮影モードに応じて調整すると共に、受光光学系10bの光路に対するバリアフィルタ61の挿脱に関する条件を調整する。
【0089】
詳細には、通常撮影モードでは、光源11a,11bからR(赤)、G(緑)、B(青)の3色を同時に出射させて撮影を行う。また、受光光学系10bの光路に対してバリアフィルタ61を退避させる。更に、光路を第1エリアが通過する間の撮像素子28の露光に基づいて、眼底画像を生成する。眼底上において、スリット状の撮影領域の幅が比較的狭く設定されることにより、対物レンズ22等での反射によるアーチファクトが抑制された撮影画像を、撮影できる。
【0090】
また、本実施例の蛍光撮影モードでは、光源11a,11bからG(緑)の1色を出射させて撮影を行う。また、受光光学系10bの光路に対してバリアフィルタ61を挿入させる。バリアフィルタ61が挿入された結果、上述のアーチファクトを考慮する必要が無くなる。そこで、本実施例では、撮影トリガ信号に基づいてホイール151を時計回りに回転させることによって、第2スリット開口162を用いて、眼底蛍光画像を撮影する。つまり、通常撮影モードと比べて、スリット開口の幅を広くして、撮影が行われる。
【0091】
本実施例では、眼底蛍光画像を撮影する際には、それ以前(眼底観察画像を取得していた際)に対して、ホイール151の回転方向が逆転される。回転を逆転してから、所望の回転速度となるまでタイムラグがある。そこで、眼底蛍光画像を撮影する場合は、レリーズ信号が出力されてから十分な時間が経過した後に眼底蛍光画像がキャプチャーされる。
【0092】
なお、撮影の際、制御部100は、観察用の光源11c,11dからの発光を停止し、その後、撮影用の光源11a,11bを点灯させてもよい。この場合、光源11a,11bから照射される可視光に基づいて眼底の撮影画像が、撮影の結果として取得される。
【0093】
<変容例>
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示を実施するうえで、実施形態の内容を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 眼底撮影装置
10 撮影光学系
10a 照射光学系
10b 受光光学系
22 対物レンズ
100 制御部
150 オプティカルチョッパー
161,162 スリット開口
E 被検眼
Er 眼底