(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20240827BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240827BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B53/04 B
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2020152349
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 成宏
(72)【発明者】
【氏名】端 智裕
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-023070(JP,A)
【文献】特開2007-275552(JP,A)
【文献】特開昭60-241466(JP,A)
【文献】特開平10-033728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00 - 53/14
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部と、ソール部と、打撃フェース部とを有するゴルフクラブヘッドであって、
ヘッド本体と、前記ヘッド本体に固定された固定部材とを有しており、
前記ヘッド本体が、第1の比重を有する第1材料で形成されており、
前記固定部材が、第2の比重を有する第2材料で形成されており、
前記ヘッド本体が、前記ヘッドの外部と前記中空部との間を貫通する本体開口部を有しており、
前記固定部材が、前記ヘッドの内面及び外面を構成しつつ、前記本体開口部の内側に配置されており、
前記固定部材が、外周縁部と、前記外周縁部の内側の内側領域とを有しており、
前記外周縁部の少なくとも一部が、前記本体開口部の内周縁部に接合されて、接合部を形成しており、
前記本体開口部の前記内周縁部が、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された第1係合部を有しており、
前記固定部材の前記外周縁部が、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された第2係合部を有しており、
前記第1係合部と前記第2係合部との間で凹凸嵌合が形成されることで、前記内周縁部と前記外周縁部とが接合されており、
前記内側領域の内面が、前記接合部の最内端よりもヘッド外方に位置
しており、
前記固定部材が、フェース側にいくにつれて肉厚が大きくなる肉厚変化部を有しており、前記固定部材の内面に設けられた内面凹部が、前記肉厚変化部を形成しているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
中空部と、ソール部と、打撃フェース部とを有するゴルフクラブヘッドであって、
ヘッド本体と、前記ヘッド本体に固定された固定部材とを有しており、
前記ヘッド本体が、第1の比重を有する第1材料で形成されており、
前記固定部材が、第2の比重を有する第2材料で形成されており、
前記ヘッド本体が、前記ヘッドの外部と前記中空部との間を貫通する本体開口部を有しており、
前記固定部材が、前記ヘッドの内面及び外面を構成しつつ、前記本体開口部の内側に配置されており、
前記固定部材が、外周縁部と、前記外周縁部の内側の内側領域とを有しており、
前記外周縁部の少なくとも一部が、前記本体開口部の内周縁部に接合されて、接合部を形成しており、
前記本体開口部の前記内周縁部が、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された第1係合部を有しており、
前記固定部材の前記外周縁部が、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された第2係合部を有しており、
前記第1係合部と前記第2係合部との間で凹凸嵌合が形成されることで、前記内周縁部と前記外周縁部とが接合されており、
前記内側領域の内面が、前記接合部の最内端よりもヘッド外方に位置
しており、
前記固定部材の内面に設けられた内面凹部の中心が、前記固定部材の内面の中心よりもバック側に位置するゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記内面凹部の内側が前記内側領域であり、
前記内面凹部の外側が前記外周縁部である請求項1
又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記本体開口部が前記ヘッドの前記ソール部に設けられており、
前記固定部材の内面が前記ソール部の内面を構成しており、
前記固定部材の外面が前記ソール部の外面を構成しており、
前記内側領域の内面が、前記接合部の上端よりも下方に位置する請求項1
から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記固定部材が、前記ヘッド本体に、鋳ぐるみによって固定されている請求項1から
4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記固定部材の外面の縁部に溝形成部が形成され、前記溝形成部と、隣接する前記本体開口部の前記内周縁部との組み合わせにより、溝が形成されている請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記第2の比重が、前記第1の比重よりも大きい請求項1から
6のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第1材料がチタン合金であり、前記第2材料がタングステンを含む合金である請求項1から
7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記固定部材の内面に、前記外周縁部からヘッド内方に突出する内方延在部が設けられている請求項1から8のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記固定部材の外面に、前記ヘッド本体の隣接外面よりもヘッド外方に突出する外方延在部が設けられている請求項1から9のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記固定部材の外面に、外面凹部が設けられている請求項1から10のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製のヘッド本体に、ヘッド本体とは異なる金属からなる金属体が固定されたゴルフクラブヘッドが知られている。特開昭60-241466号公報は、ヘッド本体の打球部内のみに、ヘッド本体と融点が異なり且つヘッド本体よりも比重の大きい異種金属体を鋳ぐるみ成形により固定したヘッドを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッド本体とは材質が異なる部材をヘッド本体に取り付けることで、ヘッドの重心位置等の設計自由度が高まる。その一方で、材質の相違に起因して、ヘッド本体に対するこの部材の接合強度は低下しやすい。
【0005】
本開示の目的の一つは、設計自由度が高く、ヘッド本体に対する固定部材の接合強度に優れたゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、ゴルフクラブヘッドは、中空部と、ソール部と、打撃フェース部とを有する。このヘッドは、ヘッド本体と、前記ヘッド本体に固定された固定部材とを有している。前記ヘッド本体が、第1の比重を有する第1材料で形成されている。前記固定部材が、第2の比重を有する第2材料で形成されている。前記ヘッド本体が、前記ヘッドの外部と前記中空部との間を貫通する本体開口部を有している。前記固定部材が、前記ヘッドの内面及び外面を構成しつつ、前記本体開口部の内側に配置されている。前記固定部材が、外周縁部と、前記外周縁部の内側の内側領域とを有している。前記外周縁部の少なくとも一部が、前記本体開口部の内周縁部に接合されて、接合部を形成している。前記本体開口部の前記内周縁部が、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された第1係合部を有している。前記固定部材の前記外周縁部が、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された第2係合部を有している。前記第1係合部と前記第2係合部との間で凹凸嵌合が形成されることで、前記内周縁部と前記外周縁部とが接合されている。前記内側領域の内面が、前記接合部の最内端よりもヘッド外方に位置する。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面として、設計自由度が高く、ヘッド本体に対する固定部材の接合強度に優れたゴルフクラブヘッドが提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態のゴルフクラブヘッドの平面図である。
【
図5】
図5は、
図3における固定部材付近が拡大された拡大断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態のヘッドにおける固定部材付近の拡大断面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態のヘッドにおける固定部材付近の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態のヘッドにおける固定部材付近の拡大断面図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態のヘッドにおける固定部材付近の拡大断面図である。
【
図10】
図10は、第6実施形態のヘッドにおける固定部材付近の拡大断面図である。
【
図11】
図11は、第7実施形態のヘッドにおける固定部材付近の拡大断面図である。
【
図12】
図12は、第8実施形態のヘッドにおける固定部材付近の拡大断面図である。
【
図13】
図13(a)は第1実施形態に係る固定部材をヘッドの内側から見た平面図であり、
図13(b)は第9実施形態に係る固定部材をヘッドの内側から見た平面図であり、
図13(c)は第10実施形態に係る固定部材をヘッドの内側から見た平面図であり、
図13(d)は第11実施形態に係る固定部材をヘッドの内側から見た平面図である。
【
図14】
図14は、トウ-ヒール方向及びフェース-バック方向を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。
【0010】
本願では、基準状態、基準垂直面、トウ-ヒール方向、フェース-バック方向、上下方向、フェースセンター及び平面視が定義される。
【0011】
所定のライ角及びリアルロフト角で水平面HP上にヘッドが載置された状態が、基準状態とされる。
図14が示すように、この基準状態では、水平面HPに対して垂直な平面VPに、ホーゼル孔の中心線Zが含まれている。前記平面VPが、基準垂直面とされる。所定のライ角及びリアルロフト角は、例えば製品カタログに掲載されている。
【0012】
本願においてトウ-ヒール方向とは、前記基準垂直面VPと前記水平面HPとの交線NLの方向である(
図14参照)。
【0013】
本願においてフェース-バック方向とは、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記水平面HPに対して平行な方向である。
【0014】
本願において上下方向とは、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記フェース-バック方向に対して垂直な方向である。換言すれば、本願において上下方向とは、前記水平面HPに対して垂直な方向である。本願における「上方」及び「下方」は、この上下方向に基づいて判断される。
【0015】
本願において、フェースセンターは次のように決定される。まず、上下方向およびトウ-ヒール方向において、フェース面の概ね中央付近の任意の点Prが選択される。次に、この点Prを通り、当該点Prにおけるフェース面の法線方向に沿って延び、かつトウ-ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面とフェース面との交線を引き、その中点Pxが決定される。次に、この中点Pxを通り、当該点Pxにおけるフェース面の法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面とフェース面との交線を引き、その中点Pyが決定される。次に、この中点Pyを通り、当該点Pyにおけるフェース面の法線方向に沿って延び、かつトウ-ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面とフェース面との交線を引き、その中点Pxが新たに決定される。次に、この新たな中点Pxを通り、当該点Pxにおけるフェース面の法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面とフェース面との交線を引き、その中点Pyが新たに決定される。この工程を繰り返して、Px及びPyが順次決定される。この工程の繰り返しの中で、新たな中点Pyとその直前の中点Pyとの間の距離が最初に0.5mm以下となったときの当該新たな位置Py(最後の位置Py)が、フェースセンターである。
【0016】
本願において平面視とは、上記水平面HPに平行な平面への投影図(垂直投影図)を意味する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のゴルフクラブヘッド2の平面図であり、
図2はヘッド2の底面図であり、
図3は
図2のA-A線に沿った断面図であり、
図4は
図2のB-B線に沿った断面図である。
【0018】
ヘッド2は、打撃フェース部4、クラウン部6、ソール部8及びホーゼル部10を有する。ホーゼル部10はホーゼル孔12を有する。
【0019】
ヘッド2は、ウッド型ヘッドである。ヘッド2は、フェアウェイウッド用ヘッドである。ヘッド2として、フェアウェイウッド用ヘッド、ハイブリッドヘッド、ドライバーヘッド及びアイアンヘッドが例示される。
【0020】
図3及び
図4が示すように、ヘッド2は、中空部k1を有する。ヘッド2は、中空ゴルフクラブヘッドである。
【0021】
打撃フェース部4は、フェース外面4aとフェース内面4bとを有する。フェース外面4aは、ヘッド2の外面2aを構成している。フェース外面4aは、フェース面とも称される。フェース外面4aは、フェースセンターFcを有する。フェース内面4bは、ヘッド2の内面2bを構成している。フェース内面4bは、中空部k1に面している。クラウン部6は、クラウン外面6aとクラウン内面6bとを有する。クラウン外面6aは、ヘッド2の外面2aを構成している。クラウン内面6bは、ヘッド2の内面2bを構成している。クラウン内面6bは、中空部k1に面している。ソール部8は、ソール外面8aとソール内面8bとを有する。ソール外面8aは、ヘッド2の外面2aを構成している。ソール内面8bは、ヘッド2の内面2bを構成している。ソール内面8bは、中空部k1に面している。
【0022】
ヘッド2は、ヘッド本体m1と、固定部材f1とを有する。ヘッド本体m1は、打撃フェース部4の全体を構成している。ヘッド本体m1は、クラウン部6の全体を構成している。ヘッド本体m1は、ソール部8の一部を構成している。ソール部8は、ヘッド本体m1と固定部材f1とで構成されている。ヘッド本体m1は、ホーゼル部10の全体を構成している。
【0023】
ヘッド本体m1は、開口部p1を有する。開口部p1は、本体開口部とも称される。本体開口部p1は、ソール部8に設けられている。本体開口部p1は、ヘッド本体m1を貫通する貫通孔を形成している。本体開口部p1は、ヘッド2の外面2aからヘッド2の内面2bまで貫通する貫通孔を形成している。本体開口部p1は、ヘッド2の外部から中空部k1まで貫通する貫通孔を形成している。本体開口部p1は、ソール部8を貫通する貫通孔を形成している。本体開口部p1は、ソール外面8aからソール内面8bまで貫通する貫通孔を形成している。
【0024】
固定部材f1は、ヘッド本体m1に固定されている。固定部材f1はヘッド本体m1に溶接されていない。固定部材f1はヘッド本体m1に接着されていない。固定部材f1の固定方法は後述される。固定部材f1は、本体開口部p1の内側に配置されている。固定部材f1は、本体開口部p1の内側に固定されている。固定部材f1は、本体開口部p1の貫通孔を塞いでいる。固定部材f1は、ヘッド本体m1とは別個に成形されている。固定部材f1の重心は、フェースセンターFcよりもヒール側に位置する。
【0025】
固定部材f1の外面20は、ヘッド2の外面2aを構成している。固定部材f1の外面20は、ソール外面8aを構成している。固定部材f1の内面22は、ヘッド2の内面2bを構成している。固定部材f1の内面22は、ソール内面8bを構成している。固定部材f1の内面22は、中空部k1に面している。固定部材f1がソール部8に配置された本実施形態では、固定部材f1の内面22は固定部材f1の上面であり、固定部材f1の外面20は固定部材f1の下面である。
【0026】
図5は、
図3の一部が拡大された断面図である。
図5は、固定部材f1近傍の拡大断面図である。
【0027】
固定部材f1の内面22は、凹部24を有する。この凹部24は、内面凹部とも称される。内面凹部24は、底面24aを有する。
【0028】
固定部材f1は、外周縁部26と、内側領域28とを有する。内側領域28は、外周縁部26の内側の領域である。固定部材f1が内面凹部24を有する場合、この内面凹部24により、外周縁部26と内側領域28との境界b1が画定されうる。
図5では、この境界b1が2点鎖線で示されている。境界b1は、上下方向に沿った仮想の仕切り面である。内面凹部24よりも外側の部分が、外周縁部26である。
【0029】
外周縁部26は、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された係合部E2を有する。外周縁部26の係合部E2は、第2係合部とも称され、後述される第1係合部と区別される。本実施形態では、第2係合部E2は、1つの凸部である。
図2において破線で示されているように、第2係合部E2は、固定部材f1の外周縁部26の全周に亘って連続して設けられている。
【0030】
第2係合部E2は、固定部材f1の側面29に設けられている。第2係合部E2は、固定部材f1の厚み方向における中間位置に配置されている。第2係合部E2は、ソール部8の厚み方向における中間位置に配置されている。ソール部8の厚み方向は、上下方向である。第2係合部E2は、ソール外面8aから離れている。第2係合部E2は、ソール外面8aよりも上方に位置する。第2係合部E2は、固定部材f1の外面20から離れている。第2係合部E2は、外面20よりもヘッド内方に位置する。第2係合部E2は、ソール内面8bから離れている。第2係合部E2は、ソール内面8bよりも下方に位置する。第2係合部E2は、固定部材f1の内面22から離れている。第2係合部E2は、内面22よりもヘッド外方に位置する。
【0031】
ヘッド本体m1の本体開口部p1は、内周縁部30を有する。内周縁部30は、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された係合部E1を有している。内周縁部30の係合部E1は、第1係合部とも称される。本実施形態では、第1係合部E1は、1つの凹部である。
図2において破線で示されているように、第1係合部E1は、内周縁部30の全周に亘って連続して設けられている。
【0032】
第1係合部E1と第2係合部E2との間で、凹凸嵌合が形成されている。凹凸嵌合は、凸部が凹部に嵌合して形成されている。この凹凸嵌合が形成されることで、外周縁部26と内周縁部30とが接合されている。本実施形態のように、第2係合部E2が凸部であるとき、第1係合部E1は凹部である。第2係合部E2が凹部であるときは、第1係合部E1は凸部とされる。凸部が凹部に嵌まり込むことで、凹凸嵌合が形成されている。
【0033】
第1係合部E1と第2係合部E2との凹凸嵌合は、鋳ぐるみにより形成されている。固定部材f1は、ヘッド本体m1に、鋳ぐるみによって固定されている。固定部材f1は、ヘッド本体m1に、鋳ぐるみによって一体化されている。固定部材f1をヘッド本体m1で鋳ぐるむことで、第1係合部E1と第2係合部E2との凹凸嵌合が形成されている。なお、凹凸嵌合の形成方法は鋳ぐるみに限定されない。鋳ぐるみ以外の方法として、例えば圧入が挙げられる。また後述の通り、固定部材の材質は金属でなくてもよく、様々な方法で凹凸嵌合が形成されうる。
【0034】
このように、外周縁部26の少なくとも一部が、本体開口部p1の内周縁部30に接合されている。本実施形態では、外周縁部26の全体が、本体開口部p1の内周縁部30に接合されている。この接合により、接合部32が形成されている。
【0035】
接合部32は、最内端32aを有する。最内端32aは、接合部32において最もヘッド内方に位置する部分である。本実施形態では、最内端32aは、接合部32の上端である。
【0036】
固定部材f1は、溝形成部34を有している。溝形成部34は、固定部材f1の外面20に形成されている。溝形成部34は、外面20の縁部に形成されている。溝形成部34は、隣接する内周縁部30との組み合わせにより、溝36を形成している。この溝36に、充填材を入れることができる。この充填材により、固定部材f1とヘッド本体m1との境界の美観性を高めることができる。この充填材は、塗料とされうる。この塗料により、固定部材f1の存在を目立たせたり、ヘッドのデザイン性を向上させたりすることができる。溝形成部34をヘッド本体m1側ではなく固定部材f1側に設けることで、ヘッド本体m1の強度低下が防止されうる。
【0037】
ヘッド本体m1の材料は、固定部材f1の材料とは相違する。ヘッド本体m1は、第1の比重を有する第1材料で形成されている。固定部材f1は、第2の比重を有する第2材料で形成されている。第1の比重は、第2の比重とは相違する。第1材料は、第2材料とは相違する。
【0038】
本実施形態では、固定部材f1が重量体である。本実施形態では、第2の比重が、第1の比重よりも大きい。比重が大きい固定部材f1がソール部8に設けられることで、ヘッド2の重心を低くすることができる。
【0039】
ヘッド2では、内側領域28の内面は、内面凹部24の底面24aである。
図5が示すように、この底面24aは、外周縁部26の最内端26aよりもヘッド外側に位置する。この底面24aは、接合部32の最内端32aよりもヘッド外側に位置する。
【0040】
固定部材f1がソール部8に配置されている場合、外周縁部26の最内端26aは、外周縁部26の上端である。これに対して、固定部材f1がクラウン部6に配置されている場合、外周縁部の最内端は、外周縁部の下端である。また、固定部材f1がソール部8に配置されている場合、「ヘッド外方」とは、下方を意味する。これに対して、固定部材f1がクラウン部6に配置されている場合、「ヘッド外方」とは、上方を意味する。ヘッド2では、内側領域28の内面24aは、外周縁部26の上端26aよりも下方に位置する。
【0041】
固定部材f1がソール部8に配置されている場合、接合部32の最内端32aは、接合部32の上端である。これに対して、固定部材f1がクラウン部6に配置されている場合、接合部の最内端は、接合部の下端である。ヘッド2では、内側領域28の内面24aは、接合部32の上端32aよりも下方に位置する。
【0042】
図6は、第2実施形態のヘッドにおける、固定部材f2近傍の断面図である。このヘッドは、ヘッド本体m2と固定部材f2とを有する。第2実施形態では、外周縁部26の第2係合部E2が凹部であり、内周縁部30の第1係合部E1が凸部である。この点を除き、第2実施形態のヘッドは、第1実施形態のヘッド2と同じである。このように、第1係合部E1と第2係合部E2との凹凸嵌合では、ヘッド本体m2側の第1係合部E1が凸部であり、固定部材f2側の第2係合部E2が凹部であってもよい。
【0043】
図7は、第3実施形態のヘッドにおける、固定部材f3近傍の断面図である。このヘッドは、ヘッド本体m3と固定部材f3とを有する。
【0044】
固定部材f3の内面22は、内面凹部24を有する。内面凹部24は、底面24aを有する。固定部材f3は、外周縁部26と、内側領域28とを有する。外周縁部26は、凸部で構成された第2係合部E2を有する。第2係合部E2は、固定部材f3の側面29に設けられている。
【0045】
ヘッド本体m3の本体開口部p3は、内周縁部30を有する。内周縁部30は、凹部で構成された第1係合部E1を有している。第1係合部E1と第2係合部E2との間で、凹凸嵌合が形成されている。この凹凸嵌合が形成されることで、外周縁部26と内周縁部30とが接合されている。
【0046】
固定部材f3の内面に、内方延在部40が設けられている。内方延在部40は、外周縁部26に設けられている。ヘッド本体m3の内面は、固定部材f3(内方延在部40)に隣接する隣接内面42を有する。内方延在部40は、隣接内面42よりもヘッド内方に突出している。固定部材f1がソール部8に配置されている場合、「ヘッド内方」とは、上方を意味する。本実施形態では、内方延在部40は、隣接内面42よりも上方に突出している。内方延在部40の存在を除き、第3実施形態のヘッドは、第1実施形態のヘッド2と同じである。内方延在部40は、ヘッドの重心位置の設計自由度を高める。
【0047】
図8は、第4実施形態のヘッドにおける、固定部材f4近傍の断面図である。このヘッドは、ヘッド本体m4と固定部材f4とを有する。
【0048】
固定部材f4の内面22は、内面凹部24を有する。内面凹部24は、底面24aを有する。固定部材f4は、外周縁部26と、内側領域28とを有する。外周縁部26は、凸部で構成された第2係合部E2を有する。第2係合部E2は、固定部材f4の側面29に設けられている。
【0049】
ヘッド本体m4の本体開口部p4は、内周縁部30を有する。内周縁部30は、凹部で構成された第1係合部E1を有している。第1係合部E1と第2係合部E2との間で、凹凸嵌合が形成されている。この凹凸嵌合が形成されることで、外周縁部26と内周縁部30とが接合されている。
【0050】
固定部材f4の外面に、外方延在部44が設けられている。外方延在部44は、外周縁部26及び内側領域28に亘って形成されている。外方延在部44は、外周縁部26のみに形成されていてもよい。外方延在部44は、内側領域28のみに形成されていてもよい。ヘッド本体m4の外面は、固定部材f4(外方延在部44)に隣接する隣接外面46を有する。外方延在部44は、隣接外面46よりもヘッド外方に突出している。固定部材f4がソール部8に配置されている場合、「ヘッド外方」とは、下方を意味する。本実施形態では、外方延在部44は、隣接外面46よりも下方に突出している。外方延在部44の存在を除き、第4実施形態のヘッドは、第1実施形態のヘッド2と同じである。外方延在部44は、ヘッドの重心位置の設計自由度を高める。
【0051】
図9は、第5実施形態のヘッドにおける、固定部材f5近傍の断面図である。このヘッドは、ヘッド本体m5と固定部材f5とを有する。
【0052】
固定部材f5の内面22は、内面凹部24を有する。内面凹部24は、底面24aを有する。固定部材f5は、外周縁部26と、内側領域28とを有する。外周縁部26は、凸部で構成された第2係合部E2を有する。第2係合部E2は、固定部材f5の側面29に設けられている。
【0053】
ヘッド本体m5の本体開口部p5は、内周縁部30を有する。内周縁部30は、凹部で構成された第1係合部E1を有している。第1係合部E1と第2係合部E2との間で、凹凸嵌合が形成されている。この凹凸嵌合が形成されることで、外周縁部26と内周縁部30とが接合されている。
【0054】
固定部材f5の外面に、外方延在部48が設けられている。外方延在部48は、内側領域28(のみ)に形成されている。外方延在部48は、外周縁部26には形成されていない。ヘッド本体m5の外面は、固定部材f5に隣接する隣接外面50を有する。外方延在部48は、隣接外面50よりもヘッド外方に突出している。外方延在部48は、隣接外面50よりも下方に突出している。外方延在部48の存在を除き、第5実施形態のヘッドは、第1実施形態のヘッド2と同じである。外方延在部48は、ヘッドの重心位置の設計自由度を高める。
【0055】
図10は、第6実施形態のヘッドにおける、固定部材f6近傍の断面図である。このヘッドは、ヘッド本体m6と固定部材f6とを有する。
【0056】
固定部材f6の内面22は、内面凹部24を有する。内面凹部24は、底面24aを有する。固定部材f6は、外周縁部26と、内側領域28とを有する。外周縁部26は、凸部で構成された第2係合部E2を有する。第2係合部E2は、固定部材f6の側面29に設けられている。
【0057】
ヘッド本体m6の本体開口部p6は、内周縁部30を有する。内周縁部30は、凹部で構成された第1係合部E1を有している。第1係合部E1と第2係合部E2との間で、凹凸嵌合が形成されている。この凹凸嵌合が形成されることで、外周縁部26と内周縁部30とが接合されている。
【0058】
固定部材f6の外面20は、凹部52を有する。この凹部52は、外面凹部とも称される。外面凹部52は、底面52aを有する。外面凹部52は、内側領域28に設けられている。外面凹部52は、外周縁部26及び内側領域28に亘って設けられてもよい。底面52aは、内側領域28の外面である。内側領域28の外面52aは、外周縁部26の下端26bよりも上方に位置する。内側領域28の外面52aは、接合部32の下端32bよりも上方に位置する。外面凹部52の存在を除き、第6実施形態のヘッドは、第1実施形態のヘッド2と同じである。外面凹部52は、ヘッドの重心位置の設計自由度を高める。
【0059】
図11は、第7実施形態のヘッドにおける、固定部材f7近傍の断面図である。このヘッドは、ヘッド本体m7と固定部材f7とを有する。
【0060】
固定部材f7の内面22は、内面凹部24を有する。内面凹部24は、底面24aを有する。固定部材f7は、外周縁部26と、内側領域28とを有する。外周縁部26は、凸部で構成された第2係合部E2を有する。第2係合部E2は、固定部材f7の側面29に設けられている。
【0061】
ヘッド本体m7の本体開口部p7は、内周縁部30を有する。内周縁部30は、凹部で構成された第1係合部E1を有している。第1係合部E1と第2係合部E2との間で、凹凸嵌合が形成されている。この凹凸嵌合が形成されることで、外周縁部26と内周縁部30とが接合されている。
【0062】
内面凹部24の底面24aは、凹部54を有する。凹部54は、内面凹部24の底面24aに設けられた内面凹部である。この内面凹部54は、底面54aを有する。底面54aは、底面24aよりもヘッド外方に位置する。底面54aは、底面24aよりも下方に位置する。内面凹部54の底面54aは、凹部56を有する。凹部56は、内面凹部54の中に設けられた内面凹部である。この内面凹部56は、底面56aを有する。底面56aは、底面54aよりもヘッド外方に位置する。底面56aは、底面54aよりも下方に位置する。内面凹部54及び内面凹部56の存在を除き、第7実施形態のヘッドは、第1実施形態のヘッド2と同じである。
【0063】
このように、内面凹部は、複数であってもよい。固定部材f7のように、複数の内面凹部は、ある内面凹部が他の内面凹部の内側に配置される形で設けられてもよい。また、複数の内面凹部は、互いに独立して異なる位置に設けられてもよい。複数の内面凹部により、固定部材の重量配分が細かく変更されうる。よって、ヘッドの重心を細かく調整することができる。
【0064】
図12は、第8実施形態のヘッドにおける、固定部材f8近傍の断面図である。このヘッドは、ヘッド本体m8と固定部材f8とを有する。
【0065】
固定部材f8の内面22は、内面凹部24を有する。内面凹部24は、底面24aを有する。固定部材f8は、外周縁部26と、内側領域28とを有する。内側領域28は、外周縁部26の内側の領域である。前述の通り、固定部材f8が内面凹部24を有する場合、この内面凹部24により、外周縁部26と内側領域28との境界b1が画定されうる。
図12では、この境界b1が2点鎖線で示されている。内面凹部24よりも外側の部分が、外周縁部26である。
【0066】
外周縁部26は、凸部で構成された第2係合部E2を有する。第2係合部E2は、固定部材f3の側面29に設けられている。本実施形態では、外周縁部26は、側面29と第2係合部E2とで構成されている。
【0067】
ヘッド本体m8の本体開口部p8は、内周縁部30を有する。内周縁部30は、凹部で構成された第1係合部E1を有している。第1係合部E1と第2係合部E2との間で、凹凸嵌合が形成されている。この凹凸嵌合が形成されることで、外周縁部26と内周縁部30とが接合されている。
【0068】
内面凹部24は、フェース側にいくにつれて浅くなっている。固定部材f8は、フェース側にいくにつれて肉厚t1が大きくなる肉厚変化部60を有している。内面凹部24が、肉厚変化部60を形成している。肉厚t1は、上下方向に沿って測定される。
【0069】
以上に示された実施形態は、以下の作用効果を奏する。
【0070】
固定部材と本体開口部とが凹凸嵌合によって機械的に接合されているため、接合強度を高くすることができる。固定部材の材料とヘッド本体の材料とがいずれも金属であっても、両者の溶接性が悪い場合がある。この場合でも、前記凹凸嵌合により、固定部材とヘッド本体との接合が可能となる。
【0071】
上述した各実施形態では、固定部材がソール部8に配置されている。内面凹部24の内面24aが、外周縁部26の上端26aよりも下方に位置している。このため、固定部材が比重の大きな重量体である場合、当該重量体をヘッドの下方に配置することが可能となり、ヘッドの低重心化を図ることができる。
【0072】
固定部材がソール部8に配置された場合、内面凹部24により、ヘッドの重心を低くすることができる。固定部材がクラウン部6に配置された場合、内面凹部24により、ヘッドの重心を高くすることができる。固定部材の位置に関わらず、内面凹部24により、固定部材の重心をヘッド外方に寄せることができ、ヘッドの重心周りの慣性モーメントが増加しうる。後述される
図13(a)から(e)に示されるように、内面凹部24の位置により、ヘッドの重心位置を調整することができる。
【0073】
通常、固定部材の材料とヘッド本体の材料との間で比重の差が大きい場合、溶接性が悪くなる。しかし、凹凸嵌合により、比重差が大きくても、接合が可能となる。このため例えば、固定部材を重量体とし、この重量体の重量を大きくして、効果的にヘッドを低重心とすることができる。また、固定部材を軽量とすることができ、例えば、創出された余剰重量をヘッドの他の部位に配置することができる。固定部材の比重とヘッド本体の比重との差を大きくすることで、ヘッドの設計自由度を高めることができる。
【0074】
上述した各実施形態では、固定部材がソール部8の一部を置換している。固定部材の外面20がソール外面8a(ヘッド2の外面2a)を構成し、且つ、固定部材の内面22がソール内面8b(ヘッド2の内面2b)を構成している。固定部材は、ヘッド本体でバックアップされていない。固定部材は、ソール部8を貫通している。固定部材は、ソール部8の厚み方向の全部を占めている。ソール部8(ヘッド2の外面2a及び内面2bを構成する壁部)の一部は、固定部材のみで構成されている。この構造により、ヘッド本体と固定部材の比重差に起因する効果が更に高まる。すなわち、固定部材が重量体とされる場合には、固定部材が配置される領域の重量を大きくすることができ、重量体がソール部8に配置される場合にはヘッドの低重心効果が高まる。また、固定部材が軽量部材とされる場合には、固定部材が配置される領域の重量を小さくすることができ、この重量低減により余剰重量を大きくすることができる。
【0075】
図13(a)は、第1実施形態に係る固定部材f1の平面図である。
図13(a)は、固定部材f1を上側(中空部k1側)から見た平面図である。前述の通り、固定部材f1の第2係合部E2は、外周縁部26の全周に亘って延在している。
【0076】
図13(b)は、第9実施形態に係る固定部材f9の平面図である。固定部材f9には、4つの第2係合部E2が設けられている。換言すれば、第2係合部E2は4箇所に分散している。第2係合部E21は、外周縁部26のトウ側の側面29に設けられている。第2係合部E22は、外周縁部26のヒール側の側面29に設けられている。第2係合部E23は、外周縁部26のフェース側の側面29に設けられている。第2係合部E24は、外周縁部26のバック側の側面29に設けられている。ヘッド本体側には、第2係合部E21~24のそれぞれに対応した第1係合部が設けられる。以上に説明した点以外は、固定部材f9は第1実施形態の固定部材f1と同じである。固定部材f9の場合、外周縁部26の一部に第2係合部E2が設けられている。よって、固定部材f9では、外周縁部26の一部が内周縁部30に接合される。
【0077】
図13(c)は、第10実施形態に係る固定部材f10の平面図である。固定部材f10の内面凹部24は、フェース側に偏在している。内面凹部24の中心C1は、固定部材f10の内面22の中心C2と一致していない。内面凹部24の中心C1は、内面22の中心C2よりもフェース側に位置する。この構成により、固定部材f10の重心をバック側に寄せることができ、ヘッドの重心位置を深く(バック側に)することができる。なお、内面凹部24の中心C1は、平面視における内面凹部24の輪郭線の図心である。内面22の中心C2は、平面視における内面22の輪郭線の図心である。
【0078】
図13(d)は、第11実施形態に係る固定部材f11の平面図である。固定部材f11の内面凹部24は、バック側に偏在している。内面凹部24の中心C1は、固定部材f11の内面22の中心C2と一致していない。内面凹部24の中心C1は、内面22の中心C2よりもバック側に位置する。この構成により、固定部材f11の重心をフェース側に寄せることができ、ヘッドの重心位置を浅く(フェース側に)することができる。
【0079】
上述の通り、ヘッド2では、固定部材f1は、鋳ぐるみによってヘッド本体m1に固定されている。固定部材f1は、ヘッド本体m1とは別個に成形される。固定部材f1の成形方法は限定されず、焼結、鍛造、鋳造、プレス等が挙げられる。ヘッド本体m1の製造方法は限定されず、鍛造、鋳造、プレス等が挙げられる。固定部材f1を鋳ぐるみで固定する場合、ヘッド本体m1は鋳造で成形される。この場合、好ましくは、ヘッド本体m1は、ロストワックス鋳造(ロストワックス精密鋳造)で成形される。
【0080】
ロストワックス鋳造において固定部材f1を鋳ぐるむ場合、ワックス金型に固定部材f1をインサートしてワックス成形を行い、固定部材f1が組み込まれたワックスモデルが作成される。その後は通常の工程を行うことで、固定部材f1が鋳ぐるみで固定されたヘッドが成形される。
【0081】
鋳ぐるみによる接合は、接合部における形状の自由度が高い。鋳ぐるみを用いることで、凹凸嵌合における凹部及び凸部の形状の自由度が高まり、深い凹部及び高い凸部であっても凹凸嵌合が形成されうる。鋳ぐるみは、凹凸嵌合における強固な接合を可能とする。
【0082】
なお、固定部材f1の材料が樹脂である場合、ヘッド本体m1を金型にインサートして樹脂を射出成形することもできる。この場合も、凹凸嵌合における凹部及び凸部の形状の自由度は高い。
【0083】
前述の通り、ヘッド本体は、第1の比重を有する第1材料で形成されている。固定部材は、第2の比重を有する第2材料で形成されている。
【0084】
第1材料は限定されず、金属、非金属及びそれらの組み合わせが例示される。金属として、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金及びマグネシウム合金が例示される。非金属として、繊維強化樹脂が例示される。強度の観点から、好ましい繊維強化樹脂として、炭素繊維強化樹脂が挙げられる。上記実施形態のヘッド本体m1では、第1材料はチタン合金である。
【0085】
第2材料は限定されず、金属、非金属及びそれらの組み合わせが例示される。金属として、タングステンを含む合金、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金及びマグネシウム合金が例示される。タングステン合金として、タングステン粉にニッケル、鉄、及び/又は銅を加えて焼結した合金が例示され、例えばタングステンニッケル合金が挙げられる。非金属として樹脂が例示される。好ましい樹脂として、繊維強化樹脂が挙げられる。強度の観点から、好ましい繊維強化樹脂として、炭素繊維強化樹脂が挙げられる。上記実施形態の固定部材f1では、第2材料はタングステンを含む合金である。固定部材f1では、タングステンを含む合金として、タングステンニッケル合金が用いられている。
【0086】
ヘッド本体の比重(第1の比重)がS1とされ、固定部材の比重(第2の比重)がS2とされる。固定部材を重量体として用いる場合、差(S2-S1)は、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、7以上がより好ましい。比重差が大きく、溶接性が悪い場合であっても、上記構造により接合が可能である。利用可能な第1材料及び第2材料を考慮すると、差(S2-S1)は、15以下が好ましく、14以下がより好ましく、13以下がより好ましい。固定部材を軽量部材として用いる場合、差(S1-S2)は、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上がより好ましい。比重差が大きく、溶接性が悪い場合であっても、上記構造により接合が可能である。利用可能な第1材料及び第2材料を考慮すると、差(S1-S2)は、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がより好ましい。
【0087】
固定部材を重量体として用いる場合、第2の比重S2が大きくされる。第2の比重S2を大きくする場合、第2材料として、タングステンを含む合金が例示される。第2の比重S2を第1の比重S1よりも大きくする場合、第2の比重S2は、10以上が好ましく、11以上がより好ましく、12以上がより好ましい。材料入手の容易性及び成形コストを考慮すると、第2の比重S2は、20以下が好ましく、19以下がより好ましく、18以下がより好ましい。
【0088】
固定部材f1を軽くしたい場合、第2の比重S2が小さくされる。この場合の第2材料として、アルミニウム合金、マグネシウム合金及び繊維強化樹脂が挙げられる。第2の比重S2を第1の比重S1よりも小さくする場合、第2の比重S2は、4.5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がより好ましい。固定部材f1の強度を考慮すると、第2の比重S2は、1以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上がより好ましい。
【0089】
ヘッド本体に適した強度を有する材質を考慮すると、第1の比重S1は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がより好ましい。第1の比重S1が過大であると、ヘッドの設計自由度が低下する。この観点から、第1の比重S1は、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がより好ましい。
【0090】
上述の通り、固定部材f1とヘッド本体m1との溶接性が悪い場合であっても、上記構造により、固定部材f1をヘッド本体m1に接合することができる。固定部材f1の材料選択の自由度の観点から、第1材料(ヘッド本体m1)と第2材料(固定部材f1)とが金属である場合、第1材料と第2材料との溶接性は悪いのが好ましい。
【0091】
溶接性の悪さは、金属組成から判断されうる。以下の(A)、(B)、(C)及び(D)からなる群から選ばれる1以上が充足される場合、溶接性が悪くなりやすい。
(A)第1材料において重量比率が最大である成分と、第2材料において重量比率が最大である成分とが相違している。
(B)第1材料と第2材料とに共通して含まれる少なくとも1の共通成分が存在するとき、第1材料における共通成分の比率Rc1(重量%)が、30重量%以下、更には20重量%以下、更には10質量%以下、更には5重量%以下、更には3重量%以下、更には1重量%以下である。共通成分が2以上存在するとき、比率Rc1は、各成分の比率の合計である。
(C)第1材料と第2材料とに共通して含まれる少なくとも1の共通成分が存在するとき、第2材料における共通成分の比率Rc2(重量%)が、30重量%以下、更には20重量%以下、更には10質量%以下、更には5重量%以下、更には3重量%以下、更には1重量%以下である。共通成分が2以上存在するとき、比率Rc2は、各成分の比率の合計である。
(D)第1材料と第2材料とに共通して含まれる共通成分が存在しない。
【0092】
図5において両矢印t2で示されているのは、外周縁部26における接合部32の厚みである。
図5において両矢印t3で示されているのは、内側領域28の厚みである。厚みt2及び厚みt3は、上下方向に沿って測定される。
【0093】
外周縁部26における接合部32の厚みt2は、内側領域28の厚みt3よりも大きい。このため、固定部材が重量体とされる場合には、ヘッド本体と固定部材との接合強度を確保しつつ、内側領域28をより下方(ヘッド外方)の配置することができる。よって、固定部材がソール部8に設けられる場合には、ヘッドの低重心化を図ることができる。
【0094】
固定部材が軽量部材とされる場合、厚みt2を厚みt3よりも大きくすることで、ヘッド本体と固定部材との接合強度を確保しつつ、内側領域28をより軽量とすることができる。固定部材が配置される領域の重量低減効果を高めることで、余剰重量が大きくなり、ヘッドの重心設計の自由度が向上する。
【0095】
凹凸嵌合による接合強度を高める観点から、厚みt2は、3.0mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく、4.0mm以上がより好ましい。厚みt2が過大であると、内周縁部30が重くなり、ヘッドの重心設計の自由度が低下する。この観点から、厚みt2は、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下がより好ましい。
【0096】
内面凹部24による上記効果を高める観点から、比(t3/t2)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下がより好ましい。固定部材自体の強度を高める観点から、比(t3/t2)は、0.4以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上がより好ましい。
【0097】
固定部材の強度の観点から、固定部材の肉厚t1は、2.0mm以上が好ましく、2.5mm以上がより好ましく、3.0mm以上がより好ましい。肉厚t1が過大であると、固定部材がヘッド内方に拡大し、内面凹部の効果が低下しうる。この観点から、肉厚t1は、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下がより好ましい。
【0098】
図3の実施形態では、ヘッド2のヘッド本体m1は、本体開口部p1の内周縁部30と、本体開口部p1よりもバック側に位置するバック側薄肉部62と、本体開口部p1よりもフェース側に位置するフェース側薄肉部64とを有する。バック側薄肉部62の厚みt4は、上記厚みt2よりも小さい。バック側薄肉部62の厚みt4は、上記厚みt3よりも小さい。厚みt4は、ソール部8における最小厚みである。フェース側薄肉部64の厚みt5は、上記厚みt2よりも小さい。フェース側薄肉部64の厚みt5は、上記厚みt3よりも小さい。厚みt5は、ソール部8における最小厚みである。厚みt4及び厚みt5は、上下方向に沿って測定される。
【0099】
図5において両矢印t6で示されるのは、内周縁部30における接合部32の厚みである。本実施形態では、厚みt6は、上記厚みt2に等しい。厚みt6は、バック側薄肉部62の厚みt4よりも大きい。厚みt6は、フェース側薄肉部64の厚みt5よりも大きい。厚みt6が大きくされることで、鋳ぐるみにおいて接合部32での湯流れが良好となる。よって、低い不良率で凹凸嵌合を形成することができる。厚みt6は、上下方向に沿って測定される。
【0100】
固定部材の位置は限定されない。固定部材は、ソール部8に配置されてもよいし、クラウン部6に配置されてもよいし、打撃フェース部4に配置されてもよい。固定部材は、クラウン部6からソール部8にかけての領域に配置されてもよい。クラウン部6とソール部8との間にサイド部(スカート部)を有するヘッドでは、このサイド部(スカート部)に固定部材が配置されてもよい。
【0101】
図2は、ソール部8の平面視を示す。固定部材f1がソール部8に設けられる場合、ソール外面8aの面積に占める固定部材f1の面積は限定されない。固定部材f1に起因する上記効果を高める観点から、ソール外面8aの面積に対する固定部材f1の面積の割合は、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましく、9%以上がより好ましい。ヘッド2の強度を考慮すると、本体開口部p1が過大となるのは好ましくない。この観点から、ソール外面8aの面積に対する固定部材f1の面積の割合は、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、40%以下がより好ましい。この面積の割合は、平面視において決定される。
【0102】
ヘッド体積は限定されない。ヘッド体積が過大であると、内周縁部の厚みが制約される。内周縁部の設計自由度の観点からは、ヘッド体積は、300cc以下が好ましく、250cc以下がより好ましく、200cc以下がより好ましい。固定部材の位置の自由度の観点から、ヘッド体積は、70cc以上が好ましく、80cc以上がより好ましく、90cc以上がより好ましい。
【0103】
中空ヘッドのタイプは限定されず、ウッド型、ハイブリッド型、アイアン型及びパター型が例示される。
【0104】
ウッド型ヘッドとして、ドライバーヘッド及びフェアウェイウッド用ヘッドが挙げられる。
【0105】
ドライバーとは、1番ウッド(W#1)を意味する。ドライバーヘッドは、通常、曲面のフェース外面を有する。この曲面のフェース外面は、フェースバルジ及びフェースロールを有する。典型的には、ドライバーヘッドの体積は、300cc以上460cc以下である。典型的には、ドライバーヘッドのリアルロフトは、7度以上14度以下である。
【0106】
フェアウェイウッドとして、3番ウッド(W#3)、4番ウッド(W#4)、5番ウッド(W#5)、7番ウッド(W#7)、9番ウッド(W#9)、11番ウッド(W#11)及び13番ウッド(W#13)が例示される。フェアウェイウッド用ヘッドは、曲面のフェース外面を有する。このフェース外面は、フェースバルジ及びフェースロールを有する。典型的には、フェアウェイウッド用ヘッドの体積は、100cc以上300cc未満であり、より好ましくは、100cc以上200cc以下である。典型的には、フェアウェイウッド用ヘッドのリアルロフトは、14度より大きく33度以下である。
【0107】
ハイブリッド型ヘッドは、通常、曲面のフェース外面を有する。このフェース外面は、フェースバルジ及びフェースロールを有する。典型的には、ハイブリッド型ヘッドの体積は、100cc以上200cc以下であり、100cc以上150cc以下が好ましい。
【0108】
アイアン型ヘッドは、通常、平面のフェース外面を有する。アイアン型の中空ヘッドは、アイアン型のハイブリッドヘッドとも称される。
【0109】
内周縁部30の設計自由度の観点からは、フェアウェイウッド用ヘッド及びハイブリッド型ヘッドが好ましい。固定部材の位置の自由度の観点からは、ドライバーヘッド及びフェアウェイウッド用ヘッドが好ましい。
【0110】
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
中空部と、ソール部と、打撃フェース部とを有するゴルフクラブヘッドであって、
ヘッド本体と、前記ヘッド本体に固定された固定部材とを有しており、
前記ヘッド本体が、第1の比重を有する第1材料で形成されており、
前記固定部材が、第2の比重を有する第2材料で形成されており、
前記ヘッド本体が、前記ヘッドの外部と前記中空部との間を貫通する本体開口部を有しており、
前記固定部材が、前記ヘッドの内面及び外面を構成しつつ、前記本体開口部の内側に配置されており、
前記固定部材が、外周縁部と、前記外周縁部の内側の内側領域とを有しており、
前記外周縁部の少なくとも一部が、前記本体開口部の内周縁部に接合されて、接合部を形成しており、
前記本体開口部の前記内周縁部が、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された第1係合部を有しており、
前記固定部材の前記外周縁部が、少なくとも1つの凸部又は凹部で構成された第2係合部を有しており、
前記第1係合部と前記第2係合部との間で凹凸嵌合が形成されることで、前記内周縁部と前記外周縁部とが接合されており、
前記内側領域の内面が、前記接合部の最内端よりもヘッド外方に位置するゴルフクラブヘッド。
[付記2]
前記固定部材が、その内面に、内面凹部を有しており、
前記内面凹部の内側が前記内側領域であり、
前記内面凹部の外側が前記外周縁部である付記1に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記3]
前記本体開口部が前記ヘッドの前記ソール部に設けられており、
前記固定部材の内面が前記ソール部の内面を構成しており、
前記固定部材の外面が前記ソール部の外面を構成しており、
前記内側領域の内面が、前記接合部の上端よりも下方に位置する付記1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記4]
前記固定部材が、前記ヘッド本体に、鋳ぐるみによって固定されている付記1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記5]
前記第2の比重が、前記第1の比重よりも大きい付記1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記6]
前記第1材料がチタン合金であり、前記第2材料がタングステンを含む合金である付記1から5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【符号の説明】
【0111】
2・・・ゴルフクラブヘッド
4・・・打撃フェース部
4a・・・フェース外面
4b・・・フェース内面
6・・・クラウン部
6a・・・クラウン外面
6b・・・クラウン内面
8・・・ソール部
8a・・・ソール外面
8b・・・ソール内面
10・・・ホーゼル部
12・・・ホーゼル孔
20・・・固定部材の外面
22・・・固定部材の内面
24・・・内面凹部
26・・・外周縁部
28・・・内側領域
30・・・本体開口部の内周縁部
32・・・接合部
32a・・・接合部の最内端
m1~m8・・・ヘッド本体
p1~p8・・・本体開口部
f1~f11・・・固定部材
k1・・・中空部
E1・・・第1係合部
E2・・・第2係合部