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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240827BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240827BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 318
G03G21/16
G03G21/00 370
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020158279
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052094
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 宏明
(72)【発明者】
【氏名】大谷 秀之
(72)【発明者】
【氏名】安井 和哉
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-091175(JP,A)
【文献】特開平08-160770(JP,A)
【文献】特開2007-304502(JP,A)
【文献】特開2000-181313(JP,A)
【文献】特開2018-097316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロールに巻き架けられて循環移動し、予め定められた像形成位置において像が形成されて該像を保持し、予め定められた転写位置において該像を被転写体に転写させるベルトと、
前記ベルト内部で、前記複数のロールの少なくとも1つの被清掃ロールに接して該被清掃ロール上の異物を掻き取る、該被清掃ロールに対する接触状態の変更が可能な第1清掃部とを有し、
前記被清掃ロールは、前記ベルトに張力を付し、前記第1清掃部に対する相対的な位置を変える第1モードと第2モードとを有し、
前記第1モードが、前記ベルト上にカラー像を保持させるモードであり、前記第2モードが前記ベルト上にモノクロ像を保持させるモードであり、
前記被清掃ロールの前記第1清掃部に対する相対位置が変わることで、前記第1清掃部の該被清掃ロールに対する当接角が前記第1モードと前記第2モードとで変わること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1清掃部が、前記被清掃ロールに押し当てるフイルム状の部材を備え該被清掃ロールに該部材を押し当てて該被清掃ロール上の異物を掻き取ることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルト上に前記被転写体上に転写させる像を保持させることなく前記ベルトを循環移動させる清掃モードを有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ベルトの回転方向について前記転写位置よりも下流側であって前記像形成位置よりも上流側において、前記被清掃ロールとの間に該ベルトを挟むようにして、該ベルトの、前記被清掃ロールに接するうら面とは逆向きのおもて面に接する第2清掃部を有することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1モードと前記第2モードの稼働の比率を測定する測定部を有し、
予め定められた第1の比率を越えて前記第1モードでの稼働の比率が高いときは、前記被清掃ロールを前記第2モードにおける該被清掃ロールの位置に移動させて、前記ベルト上に前記被転写体上に転写させる像を保持させることなく前記ベルトを循環移動させる清掃モードを実行することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1モードと前記第2モードの稼働の比率を測定する測定部を有し、
予め定められた第2の比率を越えて前記第2モードでの稼働の比率が高いときは、前記被清掃ロールを前記第1モードにおける該被清掃ロールの位置に移動させて、前記ベルト上に前記被転写体上に転写させる像を保持させることなく前記ベルトを循環移動させる清掃モードを実行することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト回転装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルト上に像を形成し、その像を用紙等の被転写体に転写するタイプの画像形成装置が知られている。
【0003】
このタイプの画像形成装置で発生することのある画像欠陥の1つとして、中間転写ベルトの走行方向や用紙搬送方向等のプロセス方向に交わる幅方向に濃度の濃い点が2つ並んで現れる、いわゆるホチキスマークと呼ばれる画像欠陥がある。
【0004】
この画像欠陥は、中間転写ベルトを支えるロールに異物が付着して、その異物が付着した部分だけ中間転写ベルトが持ち上げられ、このため、その持ち上げられた両側がクリーニング不良となることが原因である。
【0005】
ここで、特許文献1には、中間転写ベルトを駆動する駆動ローラの外周面に弾性シートを押し当ててその駆動ローラの外周面に付着した異物であるトナー等を掻き取るクリーニング手段を備えることが提案されている。特許文献1には、このクリーニング手段を設けたことで、トナー等の付着によるベルトと駆動ローラ間の摩擦係数低下を防止し、ベルト斜行補正に必要な摩擦力を安定して得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-097316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
中間転写ベルトを支えるロールに付着するのは常に同一種類の異物とは限らない。 装置を構成している樹脂部品の微小な破片など様々な異物がロールに付着することがある。いずれの異物が付着した場合も、上記のホチキスマークを発生させる要因となる。
【0008】
ここで、弾性シートをロールに押し当ててそこに付着した異物を除去する構成の場合、弾性シートとロールとの接触状態、例えば当接角等が問題となる。すなわち、接触状態によっては、ある種の異物はロール上から除去されるが別の異物は除去されにくいという現象がある。
【0009】
本発明は、複数種類の異物を除去することが可能なベルト回転装置およびそのベルト回転装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様は、
複数のロールに巻き架けられて循環移動するベルトと、
前記ベルトの内側で、前記複数のロールのうちの少なくとも1つの被清掃ロールに接して該被清掃ロール上の異物を掻き取る、該被清掃ロールに対する接触状態の変更が可能な第1清掃部とを有することを特徴とするベルト回転装置である。
【0011】
態様は、
複数のロールに巻き架けられて循環移動し、予め定められた像形成位置において像が形成されて該像を保持し、予め定められた転写位置において該像を被転写体に転写させるベルトと、
前記ベルト内部で、前記複数のロールの少なくとも1つの被清掃ロールに接して該被清掃ロール上の異物を掻き取る、該被清掃ロールに対する接触状態の変更が可能な第1清掃部とを有することを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
態様は、前記第1清掃部が、前記被清掃ロールに押し当てるフイルム状の部材を備え該被清掃ロールに該部材を押し当てて該被清掃ロール上の異物を掻き取ることを特徴とする態様に記載の画像形成装置である。
【0013】
態様は、前記ベルト上に前記被転写体上に転写させる像を保持させることなく前記ベルトを循環移動させる清掃モードを有することを特徴とする態様または態様に記載の画像形成装置である。
【0014】
態様は、前記ベルトの回転方向について前記転写位置よりも下流側であって前記像形成位置よりも上流側において、前記被清掃ロールとの間に該ベルトを挟むようにして、該ベルトの、前記被清掃ロールに接するうら面とは逆向きのおもて面に接する第2清掃部を有することを特徴とする態様から態様のうちのいずれか1態様に記載の画像形成装置である。
【0015】
態様は、
前記被清掃ロールが、前記第1清掃部に対する相対的な位置を変える第1モードと第2モードとを有し、
前記第1清掃部が、前記被清掃ロールの前記清掃部に対する相対位置が変わることで、該被清掃ロールに対する当接角が前記第1モードと前記第2モードとで変わることを特徴とする態様から態様のうちのいずれか1態様に記載の画像形成装置である。
【0016】
態様は、前記第1モードが、前記ベルト上にカラー像を保持させるモードであり、前記第2モードが前記ベルト上にモノクロ像を保持させるモードであり、前記被清掃ロールが、前記ベルトに張力を付与し、前記第1モードと前記第2モードとで位置を変えるロールであることを特徴とする態様に記載の画像形成装置である。
【0017】
態様は、
前記第1モードと前記第2モードの稼働の比率を測定する測定部を有し、
予め定められた第1の比率を越えて前記第1モードでの稼働の比率が高いときは、前記被清掃ロールを前記第2モードにおける該被清掃ロールの位置に移動させて、前記清掃モードを実行することを特徴とする態様または態様に記載の画像形成装置である。
【0018】
態様は、
前記第1モードと前記第2モードの稼働の比率を測定する測定部を有し、
予め定められた第2の比率を越えて前記第2モードでの稼働の比率が高いときは、前記被清掃ロールを前記第1モードにおける該被清掃ロールの位置に移動させて、前記清掃モードを実行することを特徴とする態様から態様のうちのいずれか1態様に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
態様のベルト回転装置および態様の画像形成装置によれば、第1清掃部の接触状態を変えることによって、異なる種類の異物を除去することができる。
【0020】
態様の画像形成装置によれば、簡易な構造の第1清掃部となる。
【0021】
態様の画像形成装置によれば、清掃モードを設けない場合と比べ、ロール上の異物を確実に除去することができる。
【0022】
態様の画像形成装置によれば、第1清掃部の接触状態が変化しない場合と比べ、第2清掃部によりベルトのおもて面をまんべんなく清掃することができる。
【0023】
態様および態様の画像形成装置によれば、モード切替えによる被清掃ロールの位置の変化を利用することによって新たな移動機構を付加することなく当接角を変えることができる。
【0024】
態様の画像形成装置によれば、第1モードのままで清掃モードに入るよりも、第2モードで効率的に除去される異物の除去が進む。
【0025】
態様の画像形成装置によれば、第2モードのままで清掃モードに入るよりも、第1モードで効率的に除去される異物の除去が進む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態としての画像形成装置の主要部を示した模式図である。
図2】中間転写ベルトの内側にクリーニング装置が配備されていないか、あるいは配備されていてもその作用が不十分な場合に生じるおそれのある画像欠陥の説明図である。
図3】本実施形態の画像形成装置におけるモード切替えを示した図である。
図4】テンションロール近傍を、図3よりも拡大して示した図である。
図5】テンションロールに付着した異物を除去するクリーニング装置による、異物の除去性能を示した図である。
図6】クリーニング装置のブレードの接触状態によりトナーと樹脂の除去性能に違いが生まれることの説明図である。
図7】本実施形態における清掃モード実施のタイミング決定シーケンスを示した図である。
図8】本発明の第2実施形態としての画像形成装置の主要部を示した模式図(A)、および中間転写ベルト内側のクリーニング装置の模式図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1実施形態としての画像形成装置の主要部を示した模式図である。この画像形成装置には、本発明の第1実施形態としてのベルト回転装置が備えられている。この画像形成装置10は、一例として、トナーを用いた静電転写方式の画像形成装置である。
【0029】
この画像形成装置10には中間転写ベルト20が備えられている。この中間転写ベルト20は、駆動ロール31、テンションロール32を含む複数のロール31~34に巻き架けられ、駆動ロール31の駆動により矢印Aの向きに循環移動する。テンションロール32は、不図示のバネ部材により押されていて、中間転写ベルト20に張力を付与するロールである。
【0030】
また、この中間転写ベルト20の内側には、4つの1次転写ロール41Y,41M,41C,41Kが備えられている。ここで、1次転写ロール41Y,41M,41C,41Kの符号41Y,41M,41C,41KのうちのY,M,C,Kはトナーの色に対応している。トナーの色を区別する必要がないときは、色を区別する符号を省略して、1次転写ロール41と表現することがある。トナーの色に対応して配備された他の要素に関しても同様である。
【0031】
中間転写ロール20を間に挟んで4つの1次転写ロール41の各々に対向する位置には、各画像形成エンジン40が備えられている。各画像形成エンジン40には、各像保持体42が備えられている。各像保持体42には、不図示の要素により、各色のトナー像が形成される。そして、各像保持体42上のトナー像は、各1次転写ロール41の作用により、中間転写ベルト20上に、中間転写ベルト20の矢印Aの向きへの循環移動に同期して順次に重なるように転写される。この1次転写ロール41が配置された位置は、本発明にいう像形成位置の一例に相当する。この、順次に重なるように転写されたトナー像は、中間転写ベルト20の循環移動にしたがって2次転写位置T2に搬送される。
【0032】
一方、不図示の用紙トレイから用紙Pが取り出されて、矢印Z1の向きに、転写ベルト20上のトナー像が2次転写位置T2に搬送されるタイミングで2次転写位置T2に搬送されるように、搬送される。そして、2次転写位置T2において、中間転写ベルト20上のトナー像が用紙P上に転写される。この2次転写位置T2は、本発明にいう転写位置の一例に相当する。
【0033】
トナー像の転写を受けた用紙Pは、矢印Z2の向きに進んで定着器50による加熱および加圧を受け、これにより用紙P上のトナー像がその用紙P上に定着される。そして、定着トナー像からなる画像が形成された用紙Pはさらに矢印Z3の向きに進んで、この画像形成装置10の外に排出される。
【0034】
また、中間転写ベルト20上の、転写後の残存トナーは、中間転写ベルト20の循環移動にしたがって矢印Aの向きに進み、中間転写ベルト20を挟んでテンションロール32に押し当てられているクリーニングブレード61を備えたクリーニング装置60により、中間転写ベルト20上から除去される。
【0035】
また、この画像形成装置10には、もう1つのクリーニング装置70が備えられている。このクリーニング装置70は、中間転写ベルト20の内側に配備され、中間転写ベルト20を介さずにテンションロール32に直接に接触して、そのテンションロール32に付着した異物を掻き取るクリーニング装置である。このクリーニング装置70についての詳細説明は後に譲る。
【0036】
この、中間転写ベルト20の内側に配置されたクリーニング装置70は、本発明にいう第1清掃部の一例に相当し、中間転写ベルト20の外側に配置されたクリーニング装置60は、本発明にいう第2清掃部の一例に相当する。また、テンションロール32は、本発明にいう被清掃ロールの一例に相当する。
【0037】
この図1に示す画像形成装置10には、さらにコントローラ90が備えられている。この画像形成装置10では、このコントローラ90の制御のもとで、上記の一連の動作が実行される。また、このコントローラ90は本発明にいう測定部の一例に相当する。この測定部としての役割については、後述する。
【0038】
図2は、中間転写ベルトの内側にクリーニング装置が配備されていないか、あるいは配備されていてもその作用が不十分な場合に生じるおそれのある画像欠陥の説明図である。ここで、図2(A)は、クリーニングブレードを通過した後の中間転写ベルトの表面を表している。また、図2(B)は、中間転写ベルトの、クリーニングブレードが押し当てられている部分の断面図である。
【0039】
ここでは、テンションロール32に、トナー塊などの異物80が付着している。すると、中間転写ベルト20の、異物80に乗り上げた部分が異物80に押されて撓み、その両側に下に凸の窪み20Aが生じる。この異物両側の窪み20Aにはクリーニングブレード61が当たりにくく、その部分の残存トナー81が中間転写ベルト20上に残ったままとなるおそれがある。中間転写ベルト20上に残存トナー81が残ったままだと、その残存トナー81は、その次に形成されたトナー像と一緒に用紙上に転写され、用紙上に図2(A)に示すような、いわゆるホチキスマークと呼ばれる画像欠陥が発生するおそれがある。本実施形態の画像形成装置10は、この種の画像欠陥を抑える特徴を有している。
【0040】
図3は、本実施形態の画像形成装置におけるモード切替えを示した図である。
【0041】
図3(A)は、用紙上にカラー画像を形成するカラーモードを示した図である。図1は、このカラーモードにおける各部材の配置位置を示した図であり、この図3(A)では、各部材は、図1と同じ配置位置にある。
【0042】
一方、図3(B)は、用紙上にモノクロ画像を形成するモノクロモードを示した図である。ここでは、4つの1次転写ロール41Y,41M,41C,41Kのうちの、黒色のトナー像に関する1次転写ロール41Kのみが中間転写ベルト20に接し、黒色以外の色のトナー像に関する3つの1次転写ロール41Y,41M,41Cは、中間転写ベルト20から離れた位置に移動している。また、これら3つの1次転写ロール41Y,41M,41Cを中間転写ベルト20から離すための機械的な構造上、テンションロール32およびクリーニングブレード61が、カラーモードの時と比べ距離dだけ移動している。この距離dは、例えば1~2mm程度である。ただし、中間転写ベルト20の内側に配置されたクリーニング装置70の位置は、カラーモードの時と同じである。本実施形態におけるカラーモードおよびモノクロモードは、それぞれ、本発明にいう第1モードおよび第2モードの各一例に相当する。
【0043】
図4は、テンションロール近傍を、図3よりも拡大して示した図である。ここで、図4(A),(B)は、それぞれ、図3(A),(B)に対応している。すなわち、図4(A)には、カラーモードの時の部材の配置が示されていて、図4(B)には、モノクロモードの時の部材の配置が示されている。
【0044】
この図4には、中間転写ベルト20の内側に配置されたクリーニング装置70が示されている。このクリーニング装置70は、ハウジング71の先端にブレード72が固定された構造を有する。このブレード72は、一例として、本実施形態ではPETフイルムが採用されている、このブレード72は、その先端縁72a側がテンションロール32に接触している。また、ハウジング71は、支持部材73に固定されている。支持部材73は、テンションロール32の回転軸方向、すなわち中間転写ベルト20の幅方向両側が中間転写ベルト20からはみ出る長さを有し、その中間転写ベルト20からはみ出た両側が、この画像形成装置10のフレーム(不図示)に固定されている。
【0045】
図4(A)のカラーモードと図4(B)のモノクロモードとを比べると、図3を参照して説明した通り、テンションロール32は、図4(B)のモノクロモードの方が支持部材73から離れた位置に移動している。このため、クリーニング装置70のブレード72は、図4(A)のカラーモードの方が強く押し曲げられ、図4(B)のモノクロモードの方が押し曲げられ方が弱くなっている。すなわち、カラーモードとモノクロモードとでは、ブレード72の接触状態が変化している。
【0046】
図5は、テンションロールに付着した異物を除去するクリーニング装置による、異物の除去性能を示した図である。横軸は、カラーモードとモノクロモードとの間のモード比率、縦軸はテンションロール付着高さ(μm)を示している。テンションロール付着高さ(μm)は低いほうが好ましく、ここでは、30μm以下を目標としている。
【0047】
ここでは、トナー塊や樹脂破片が多数付着し、ホチキスマークが確認されるテンションロールを実験に用いた。実験前に調べたところ、ホチキスマークを発生させるおそれのある、60μm~80μmの高さの異物が多数確認された。そして、画像密度5%での100枚のプリントを1ジョブとし、モード比率を変更しながら、合計1000ジョブ、プリントした。グラフAは、その条件での実験終了後に、テンションロールに付着したまま残存しているトナー塊の最大高さを示し、グラフbは、その条件での実験終了後に、テンションロールに付着したまま残存している樹脂破片の最大高さを示している。この最大高さが低いほど、除去性能が高いことを意味している。
【0048】
この図5に示す通り、カラーモードの比率が高いほど、樹脂破片の除去性能が高く、モノクロモードの比率が高いほど、トナーの除去性能が高くなっている。
【0049】
図6は、クリーニング装置のブレードの接触状態によりトナーと樹脂の除去性能に違いが生まれることの説明図である。この図6には、接触角θおよび食い込み量dの定義に関する図解も示されている。
【0050】
図6(A)は、ブレード72の先端721がテンションロール32に接触している状態を示している。接触角θは、この先端721における、テンションロール32への接線とブレード72への接線との間の角度をいう。
【0051】
また、食い込み量dは、図6(A)に破線で示すように、ブレード72がテンションロール32に抵抗なく食い込んだと仮定した場合の、テンションロール32の表面とブレード72の先端721との間の、テンションロール32の半径方向の長さをいう。
【0052】
図6(B)は、カラーモードにおける模式図である。カラーモードの時は、モノクロモードの時と比べテンションロール32が支持部材73(図4参照)に近づいている。このため、ブレード72がテンションロール32により強く押され、図6(A)に示した定義における当接角θが小さくなる。これを食い込み量dで表現すると、図6(B)に示したカラーモードの時は、食い込み量dが大きくなる。この場合は、樹脂片の異物80aの除去に有利に作用する。すなわち、樹脂片の異物80aはひと固まりになっていて、少しずつ削れる性質のものではない。このため、その異物80aをテンションロール32から引きはがすように当接角θを小さくする(食い込み量dを大きくする)のが有利である。
【0053】
また、図6(C)は、モノクロモードにおける模式図である。モノクロモードの時は、カラーモードの時と比べテンションロール32が支持部材73(図4参照)から離れている。このため、ブレード72の、テンションロール32による押され方が弱く、図6(B)に示す当接角θが大きくなる。食い込み量dで表現すると、図6(C)に示すモノクロモードの時は、食い込み量dが小さくなる。この場合は、トナーの異物80bの除去に有利に作用する。すなわち、ブレード72が大きな当接角θで当接することにより、異物80bのトナーが徐々に削れていく。
【0054】
この例に示すように、当接角等の接触状態を変更することによって異なる種類の異物を除去することができる。
【0055】
図7は、本実施形態における清掃モード実施のタイミング決定シーケンスを示した図である。
【0056】
図6に示すように、カラーモードとモノクロモードとの双方のモードを使い分けることによって異なる種類の異物を除去することができる。しかしながら、このことは、画像形成装置10をほとんど一方のモードのみで使用している場合には、一方の異物しか除去することができないことを意味している。そこで、本実施形態では、この図7に示すように、モードの比率を測定し、一方のモードの比率が高い場合に清掃モードに移行することとしている。
【0057】
ここでは先ず、画像が例えば100枚形成されるたびに、過去の規定枚数(例えば1000枚)の画像形成におけるカラーモードとモノクロモードとの比率が測定される(ステップS1)。そして、カラーモードが既定の比率(例えば80%)を越えて過多であったときは(ステップS2)、モノクロモードに移行して(ステップS3)、予め定められた時間、清掃モードである空運転が実行される(ステップS3)。ここで、空運転とは、用紙を搬送せず、また、用紙に転写するトナー像を形成せずに、中間転写ベルト20を循環移動させることをいう。
【0058】
そして、空運転が一旦実行されると、ステップS1における比率測定対象となる過去の蓄積枚数がゼロにリセットされる(ステップS5)。過去の蓄積枚数がリセットされると、ステップS1で次に比率が測定されるのは、今後、規定枚数(1000枚)の画像が形成された後になる。
【0059】
また、ステップS1において、カラーモードが既定の比率(例えば80%)よりも低かったときは、次に、モノクロモードが既定の比率(例えば80%)を越えて過多であったか否かが判定される(ステップS6)。そして、モノクロモードが既定の比率(例えば80%)を越えて過多であったときは、カラーモードに移行して(ステップS7)、予め定められた時間、清掃モードである空運転が実行される(ステップS8)。この場合も、空運転を実行した後、ステップS1における比率測定対象となる過去の蓄積枚数がゼロにリセットされる(ステップS9)。
【0060】
ステップS6において、モノクロモードが既定の比率(例えば80%)よりも低かったときは、何もしないまま、ステップS1に戻る。このときは、ステップS1では、次に100枚の画像が形成された後、再び比率が測定される。
【0061】
この図7に示したシーケンスは図1に示したコントローラ90内で実行される。したがって、このコントローラ90の、ステップS1で行われる測定の機能が、本発明にいう測定部の一例に相当する。
【0062】
図8は、本発明の第2実施形態としての画像形成装置の主要部を示した模式図(A)、および中間転写ベルト内側のクリーニング装置の模式図(B)である。この画像形成装置には、本発明の第2実施形態としてのベルト回転装置が備えられている。この画像形成装置110は、インクジェット方式の画像形成装置である。
【0063】
この画像形成装置110には中間転写ベルト120が備えられている。この中間転写ベルト120は、駆動ロール131、テンションロール132、および転写ロール133に巻き架けられ、駆動ロール131の駆動により矢印Bの向きに循環移動する。テンションロール132は、不図示のバネ部材により押されていて、中間転写ベルト120に張力を付与するロールである。転写ロール133については、後述する。
【0064】
また、この中間転写ベルト20の上方には、中間転写ベルト120上にインクジェット方式で画像を形成する4つのノズル141Y,141M,141C,141Kが備えられている。ここで、ノズル141Y,141M,141C,141Kの符号141Y,141M,141C,141KのうちのY,M,C,Kはインクの色に対応している。インクの色を区別する必要がないときは、色を区別する符号を省略して、ノズル141と表現することがある。
【0065】
これらのノズル141からは中間転写ベルト120上にインクが吐出され、各ノズル141により、中間転写ベルト120の矢印Bの向きへの循環移動に同期して順次に重なるように中間転写ベル1ト20上に画像が形成される。このノズル141が配備された位置は、本発明にいう像形成位置の一例に相当する。この、順次に重なるように転写されたインク像Sは、中間転写ベルト120の循環移動にしたがって転写位置Tに搬送される。
【0066】
一方、不図示の用紙トレイから用紙Pが取り出されて、中間転写ベルト120上のインク像Sが転写位置Tに搬送されるタイミングで転写位置Tに搬送されるように、矢印Z4の向きに搬送される。そして、転写位置Tにおいて、中間転写ベルト120上のトナー像が用紙P上に転写される。この転写位置Tは、本発明にいう転写位置の一例に相当する。
【0067】
インク像の転写を受けた用紙Pは、そのまま矢印Z4の向きに進んで、この画像形成装置110の外に排出される。その間に、用紙P上のインク像が乾燥し、その用紙P上に定着される。
【0068】
また、中間転写ベルト120上の、転写後の残存インクは、中間転写ベルト120の循環移動にしたがって矢印Bの向きに進み、中間転写ベルト120を挟んでテンションロール132に押し当てられているクリーニングブレード161を備えたクリーニング装置160により、中間転写ベルト120上から除去される。
【0069】
また、この画像形成装置110には、もう1つのクリーニング装置170が備えられている。このクリーニング装置170は、中間転写ベルト120の内側に配備され、中間転写ベルト120を介さずにテンションロール132に直接に接触して、そのテンションロール132に付着した異物を掻き取るクリーニング装置である。
【0070】
このクリーニング装置170は、ハウジング171の先端にブレード172が固定された構造を有する。このブレード172は、一例として、本実施形態ではPETフイルムが採用されている、このブレード172は、その先端縁172a側がテンションロール132に接触している。また、ハウジング171は、ソレノイド174を介して支持部材173に固定されている。この支持部材173は、テンションロール132の回転軸方向、すなわち中間転写ベルト120の幅方向両側が中間転写ベルト120からはみ出る長さを有し、その中間転写ベルト120からはみ出た両側が、この画像形成装置110のフレーム(不図示)に固定されている。
【0071】
このクリーニング装置170は、ソレノイド173の動作により、位置X1と位置X2とに移動する。この移動により、ブレード172の、テンションロール132への接触状態が変化する。
【0072】
このインクジェット方式の画像生成装置110の場合も、その装置の内部空間にインクの塊や樹脂破片といった複数種類の異物が散乱し、その一部がテンションロール132に付着することがある。クリーニング装置170は、その位置を位置X1とい位置X2とに変化させることができ、これにより、前述の第1実施形態の画像形成装置10の場合と同様、テンションロール132に付着した複数種類の異物を効率よく取り除くことができる。
【0073】
以上では、中間転写ベルト20,120を備えた静電転写方式およびインクジェット方式の画像形成装置10、110を例に挙げて説明したが、本発明は、複数のロールに巻き架けられて循環移動し、予め定められた像形成位置において像が形成されてその像を保持し、予め定められた転写位置においてその像を被転写体に転写させるベルトを備えた画像形成装置に広く適用することができる。
【0074】
また、本発明は、画像形成装置に限らず、複数のロールに巻き架けられて循環移動するベルトを備えたベルト回転装置あるいはそのベルト回転装置を備えた広範な装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10、110 画像形成装置
20、120 中間転写ベルト
20A 窪み
31 駆動ロール
32 テンションロール
33,34 ロール
40Y,40M,40C,40K 画像形成エンジン
41Y,41M,41C,41K 1次転写ロール
42Y,42M,42C,42K 像保持体
50 定着器
60,160 クリーニング装置
61、161 クリーニングブレード
70,170 クリーニング装置
71,171 ハウジング
72,172 ブレード
73,173 支持部材
174 ソレノイド
80 異物
81 残存トナー
図1
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