(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】画像解析装置、画像解析方法、及び画像解析プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240827BHJP
G06T 7/90 20170101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G06T7/90 D
(21)【出願番号】P 2020170963
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 慧
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040818(JP,A)
【文献】特開2004-206498(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056980(WO,A1)
【文献】米国特許第6496599(US,B1)
【文献】国際公開第2015/097089(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0204833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06V 10/00 - G06V 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象を撮像した複数の波長の分光画像を取得する分光画像取得部と、
各前記分光画像における対象範囲を取得する範囲取得部と、
前記対象範囲の中の各画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各画素の多変量解析を実施する解析部と、
前記対象範囲の中の各画素に対する前記多変量解析の解析結果を含む解析画像を生成する解析画像生成部と、
を備え
、
前記解析部は、各前記画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各前記画素の特徴を示す少なくとも3つの指標値を算出し、
前記解析画像生成部は、各前記指標値に対応した座標軸により構成された3軸座標系に、各前記画素に対する前記解析結果を示すプロット点をプロットした前記解析画像を生成する、ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の画像解析装置において、
前記解析部は、前記対象範囲の中の各前記画素に対する前記解析結果に基づいて、さらに、各前記画素を複数のグループに分類し、
前記解析画像生成部は、分類された前記グループ毎に、前記プロット点を異なる表示形態で表示させる、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の画像解析装置において、
前記解析画像生成部は、異なる前記グループの境界を示す境界画像を表示した前記解析画像を生成する、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の画像解析装置において、
前記多変量解析による前記解析結果に基づいて、前記対象範囲における特徴を判定する特徴判定部を備え、
前記解析画像生成部は、前記解析結果及び前記特徴を含む前記解析画像を生成する、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の画像解析装置において、
前記測定対象のカラー画像を取得するカラー画像取得部を備え、
前記解析画像生成部は、前記対象範囲が表示された前記カラー画像を含む前記解析画像を生成する、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の画像解析装置において、
前記解析部は、各前記画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各前記画素の特徴を示す複数の指標値を算出し、
前記解析画像生成部は、各前記指標値に対応した座標軸により構成された座標系に、各前記画素に対する前記解析結果を示すプロット点をプロットした前記解析画像を生成し、
前記解析画像を表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部に表示した前記解析画像に対して、ユーザーによる所定の前記プロット点を選択する旨の操作を受け付けた場合に、選択された前記プロット点を選択点として取得す
る選択取得部と、をさらに備え、
前記表示制御部は、前記カラー画像の中の前記選択点に対応する画素を、対応画素として表示させる、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項7】
コンピューターにより、測定対象を撮像した複数の波長の分光画像を解析する画像解析方法であって、
前記コンピューターは、分光画像取得部、範囲取得部、解析部、及び解析画像生成部として機能し、
前記分光画像取得部が、前記測定対象を撮像した複数の前記波長の前記分光画像を取得する画像取得ステップと、
前記範囲取得部が、各前記分光画像における対象範囲を取得する範囲取得ステップと、
前記解析部が、前記対象範囲の中の各画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各画素の多変量解析を実施する解析ステップと、
前記解析画像生成部が、前記対象範囲の中の各画素に対する前記多変量解析の解析結果を含む解析画像を生成する解析画像生成ステップと、
を実施
し、
前記解析ステップにおいて、前記解析部は、各前記画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各前記画素の特徴を示す少なくとも3つの指標値を算出し、
前記解析画像生成ステップにおいて、前記解析画像生成部は、各前記指標値に対応した座標軸により構成された3軸座標系に、各前記画素に対する前記解析結果を示すプロット点をプロットした前記解析画像を生成する、ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項8】
コンピューターにより読み取り実行可能なプログラムであって、前記コンピューターを請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の画像解析装置として機能させる、
ことを特徴とする画像解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置、画像解析方法、及び画像解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を分光カメラで撮像し、撮像により得られた分光画像を解析する画像解析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の画像解析装置(測定装置)は、16バンドの分光画像を撮像可能な光センサー部を備える。この測定装置では、光センサー部により、例えば赤(R)、青(B)、及び緑(G)に対応した3バンドの分光画像を撮像してこれらの画像を合成してリアルタイム画像を生成して表示部に表示させる。そして、ユーザーによりリアルタイム画像の一部が指定されると、指定位置を含む例えば10×10の範囲を測色領域として設定し、その測色領域のみの16バンドの分光画像を撮像する。そして、測色結果により得られた測色領域の分光画像の全画素の平均光量値を波長毎に算出し、スペクトルデータとして出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、測定結果として、測色領域がどのような色であるかを示すスペクトルデータを出力しているが、その中間データが出力されない。つまり、測色領域における各画素の測定値や、各画素でのスペクトルデータが出力されておらず、ユーザーは、出力されたスペクトルデータが正しいか否かを判断することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一態様の画像解析装置は、測定対象を撮像した複数の波長の分光画像を取得する分光画像取得部と、各前記分光画像における対象範囲を取得する範囲取得部と、前記対象範囲の中の各画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各画素の多変量解析を実施する解析部と、前記対象範囲の中の各画素に対する前記多変量解析の解析結果を含む解析画像を生成する解析画像生成部と、を備える。
【0006】
本開示の第二態様にかかる画像解析方法は、コンピューターにより、測定対象を撮像した複数の波長の分光画像を解析する画像解析方法であって、前記コンピューターは、分光画像取得部、範囲取得部、解析部、及び解析画像生成部として機能し、前記分光画像取得部が、前記測定対象を撮像した複数の前記波長の前記分光画像を取得する分光画像取得ステップと、前記範囲取得部が、各前記分光画像における対象範囲を取得する範囲取得ステップと、前記解析部が、前記対象範囲の中の各画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各画素の多変量解析を実施する解析ステップと、前記解析画像生成部が、前記対象範囲の中の各画素に対する前記多変量解析の解析結果を含む解析画像を生成する解析画像生成ステップと、を実施する。
【0007】
本開示の第三態様の画像解析プログラムは、コンピューターにより読み取り実行可能なプログラムであって、前記コンピューターを請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像解析装置として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示にかかる一実施形態の解析システムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】本実施形態の端末制御部の機能構成を示す図。
【
図3】本実施形態の解析システムにおける画像解析方法を示すフローチャート。
【
図7】本実施形態のディスプレイに表示される解析画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示にかかる一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の解析システム1の概略構成を示すブロック図である。
解析システム1は、測定装置2と端末装置3とを備え、これらが相互に通信可能に構成され、本開示の画像解析装置を構成する。
この解析システム1では、測定装置2が、測定対象Xからの測定対象光(入射光)を撮像して撮像画像を端末装置3に出力する。これにより、端末装置3に接続されたディスプレイ31(表示部)に測定対象Xのカラー画像が表示される。また、ユーザーが端末装置3を操作して、ディスプレイ31に表示されたカラー画像において、測定を実施したい範囲を指定することで、端末装置3は、指定された範囲を対象範囲として設定する。そして、測定装置2により、測定対象Xに対する複数の波長に対する分光画像が撮像される。端末装置3は、撮像された複数の波長の分光画像に基づいて、対象範囲の画像解析を行い、その解析結果と、解析結果により得られた対象範囲における特徴をディスプレイ31に出力する。
【0010】
ここで、本開示における画像解析は、複数の分光画像の各画素の諧調値に基づいて、画素毎の成分を解析する処理である。解析される成分は、測定対象Xの特徴を判定する際の指標値であり、判定する特徴によって異なる。例えば、測定対象Xの対象範囲における色の特徴を判定する場合、対象範囲の各画素の色成分の指標値を解析する。色成分の指標値としては、RGB値、L*a*b*値、xyz値等の表色系パラメーターを例示できる。また、測定対象Xの素材を特徴として判定する場合、測定対象Xの対象範囲に含まれる成分を指標値として解析する。例えば、料理等に用いられた食材を特徴として判定する場合、対象範囲に含まれる各栄養素や水分量等を指標値として解析する。
前者のように色を判定する場合では、複数の分光画像として、可視光域における複数の分光波長の分光画像を取得すればよく、物体の素材や物性等を判定する場合では、紫外域や赤外域における複数の分光波長の分光画像を取得する。
本実施形態では、一例として、解析システム1が、測定対象の色を判定する解析処理をするものとして、以下に各構成を詳細に説明する。
【0011】
[測定装置2の構成]
測定装置2は、
図1に示すように、分光撮像部21と、カラー撮像部22と、光源23と、通信部24と、測定制御部25と、を備えている。
分光撮像部21は、測定対象Xからの測定対象光の分光画像を撮像する。この分光撮像部21は、入射光学系211と、分光素子212と、結像光学系213と、撮像素子214とを備える。
入射光学系211は、測定対象Xからの測定光を、分光素子212に導く。この入射光学系211は、例えば像側テレセントリック光学系を構成する複数のレンズにより構成され、測定光の主光線を平行にして分光素子212に入射させる。
【0012】
分光素子212は、測定光から所定の波長の光を分光して撮像素子214に向かって出射させる。分光素子212としては、所定波長の光を分光し、かつ、分光する波長(分光波長)を変更可能な素子であれば、特に限定されない。例えば、本実施形態では、分光素子212として、ファブリーペローエタロンを用いる。このファブリーペローエタロンは、互いに対向する一対の反射膜と、反射膜の間のギャップの寸法を変更するギャップ変更部とを備える素子である。このようなファブリーペローエタロンでは、ギャップ変更部により、一対の反射膜の間のギャップの寸法を変化させることで、測定光から、当該ギャップに応じた波長の光を透過させることができる。
なお、分光素子212としては、その他、AOTF(Acousto-Optic Tunable Filter)や、LCTF(Liquid crystal tunable filter)等を用いてもよい。
【0013】
結像光学系213は、例えば、複数のレンズにより構成され、分光素子212を透過した分光波長の光を撮像素子214に結像させる。
撮像素子214は、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサーや、CCD(Charge-Coupled Device)センサーにより構成され、入射光学系211、分光素子212、及び結像光学系213を透過した所定の分光波長の光を受光して、分光画像を出力する。
【0014】
カラー撮像部22は、測定対象Xのカラー画像を撮像する通常のRGBカメラである。
すなわち、カラー撮像部22は、図示は省略するが、測定光が入射する入射光学系、測定光をCCDやCMOS等により構成される撮像素子に結像させる結像光学系、及び撮像素子を備え、撮像素子には、例えばベイヤー配列で配置されたRGBカラーフィルターが配置されている。これにより、カラー撮像部22により、R(赤色)、G(緑色)、及びB(青色)の各色の諧調値を画素値として含むカラー画像が撮像される。
なお、本実施形態では、カラー撮像部22が設けられる例を示すがこれに限定されない。例えば、分光撮像部21により、赤色波長域における1つの波長(例えば、680nm)の分光画像、緑色波長域における1つの波長(例えば、550nm)の分光画像、及び青色波長域における1つの波長(例えば、400nm)の分光画像を撮像する。そして、これらの3つの分光画像を合成することで、カラー画像が合成されてもよい。このような合成画像を用いる場合、カラー撮像部22の構成を不要にできる。
【0015】
光源23は、測定対象Xに向けて光を出射し、測定装置2は、測定対象Xで反射された画像光を測定光として測定、つまり撮像する。
光源23は、分光撮像部21で撮像される分光画像の波長域に対して、均一な光を出射する。例えば、本実施形態の解析システム1は、測定対象Xの色を解析する。この場合、分光撮像部21は、例えば400nmから700nmの可視光域において、所定の波長間隔で、分光素子212により分光する光の波長を切り替え、それぞれの波長の分光画像を撮像する。したがって、光源23としては、可視光域の各波長の光量が略均一となる白色光源を用いることが好ましい。また、解析システム1として、近赤外域を用いた分析処理を行う場合は、近赤外域の各波長に対する分光画像を撮像する必要があるので、光源23として、近赤外域の各波長に対して略均一な光量を有する光源を用いることが好ましい。
【0016】
通信部24は、端末装置3や他の外部装置との通信を行う。通信部24の通信方式は特に限定されず、例えば有線による通信を用いてもよく、無線LAN等による無線による通信を用いてもよい。
【0017】
測定制御部25は、測定装置2を制御するための各種機能を備えている。具体的には、測定制御部25は、記憶部251、分光制御部252、カラー撮像制御部253、及び光源制御部254として機能する。これらの各機能構成は、回路基板に設けられたCPU等の演算回路、メモリーなどの記憶回路、各種ドライバー回路の組み合わせにより構成される。
【0018】
記憶部251は、測定装置2を制御するための各種プログラムや、各種データが記憶されている。例えば、各種データとして、例えば、分光素子212を制御するための、駆動テーブルが記録される。分光素子212として、上記のように、ファブリーペローエタロンを用い、一対の反射膜の間のギャップを静電アクチュエーターにより制御する場合では、分光波長と静電アクチュエーターに印加する電圧値との関係を駆動テーブルに記録する。また、各種データとして、測定対象Xを測定する際の測定波長に関する情報、例えば、測定開始波長、波長の変更間隔、及び測定終了波長等が記録されていてもよい。また、記憶部251には、分光撮像部21やカラー撮像部22で撮像された分光画像やカラー画像が記録される。
【0019】
分光制御部252は、記憶部251に記憶されている駆動テーブルに基づいて、分光素子212を制御し、分光素子212から所望の分光波長の光を分光させる。また、分光制御部252は、分光撮像部21の撮像素子214を制御し、分光画像を撮像する。
【0020】
カラー撮像制御部253は、カラー撮像部22を制御し、カラー画像を撮像する。
光源制御部254は、例えばユーザーの指示に基づいて、光源23の点灯及び消灯を制御する。
【0021】
[端末装置3の構成]
端末装置3は、
図1に示すように、ディスプレイ31と、入力部32と、端末通信部33と、端末記憶部34と、端末制御部35と、をハードウェア構成として備えるコンピューターである。
ディスプレイ31は、本開示の表示部であり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の各種表示装置を用いることができる。なお、本実施形態では、端末装置3にディスプレイ31が含まれる例を示すが、ディスプレイ31が、端末装置3とは別体に構成され、端末装置3と通信可能に接続される構成としてもよい。
入力部32は、ユーザーによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を端末制御部35に出力する。入力部32としては、ディスプレイ31と一体的に構成されたタッチパネルであってもよく、マウスやキーボード等の各種入力装置を用いてもよい。
端末通信部33は、測定装置2や他の外部装置との通信を行う。端末通信部33は、通信方式は特に限定されず、有線通信であってもよく、無線通信であってもよい。
【0022】
端末記憶部34は、端末制御部35により実施される演算処理で用いる各種データや各種プログラムが記録される。具体的には、端末記憶部34は、測定装置2から得られた複数の分光波長に対する分光画像やカラー画像、解析処理によって生成された解析画像、解析システム1を制御するための画像解析プログラム等を記憶する。
【0023】
端末制御部35は、端末記憶部34に記録された各種プログラムを読み込み実行することで、各種機能を実行して、端末装置3及び解析システム1を制御する。
図2は、端末制御部35の機能構成を示す図である。
端末制御部35は、端末記憶部34に記録された画像解析プログラムを読み込み実行することで、
図2に示すように、表示制御部351、分光画像取得部352、カラー画像取得部353、範囲取得部354、解析部355、特徴判定部356、解析画像生成部357、及び選択取得部358等として機能する。
【0024】
表示制御部351は、ディスプレイ31への画像表示を制御する。ディスプレイ31に表示させる画像としては、例えば、測定装置2のカラー撮像部22により撮像されたカラー画像や、解析画像生成部357により生成された解析画像、特徴判定部356により判定される測定対象Xの特徴等が挙げられる。また、その他、解析システム1を操作するための操作画面や、測定装置2の動作状況等をユーザーに通知するための通知情報等を表示してもよい。
【0025】
分光画像取得部352は、測定装置2に対して分光画像の撮像指令を出力する。これにより、測定装置2の分光撮像部21は、複数の分光波長に対する分光画像を撮像し、端末装置3に出力する。そして、分光画像取得部352は、測定装置2から出力された分光画像を取得し、端末記憶部34に記憶する。
【0026】
カラー画像取得部353は、測定装置2に対してカラー画像の撮像指令を出力する。これにより、測定装置2のカラー撮像部22は、測定対象Xのカラー画像を撮像し、端末装置3に出力する。そして、カラー画像取得部353は、測定装置2から出力された分光画像を取得する。本実施形態では、取得されたカラー画像は、表示制御部351によって、リアルタイム画像として、ディスプレイ31に表示される。つまり、ユーザーによる停止指令が入力されるまで、カラー撮像部22は、測定対象Xの画像を所定のサンプリング周波数で継続して撮像して、ディスプレイ31に表示されるリアルタイム画像を更新する。
【0027】
範囲取得部354は、測定対象Xの解析を行う範囲(対象範囲)を取得する。具体的には、範囲取得部354は、ディスプレイ31に表示された測定対象Xのカラー画像に対し、ユーザーにより所望の対象範囲が指定されることで、当該カラー画像に対応する分光画像の対象範囲として取得する。対象範囲の指定は、例えば、ユーザーが指定した点を中心とした所定範囲であってもよく、ユーザーが例えばドラッグ操作によって自由に設定した範囲であってもよい。
【0028】
解析部355は、複数の分光波長の分光画像において、範囲取得部354により取得された対象範囲を特定し、各分光画像の対象範囲内の画素の諧調値に基づいて、解析処理を実施する。
具体的には、解析部355は、スペクトル解析部355A、指標算出部355B、分類部355C、境界設定部355Dとして機能する。
スペクトル解析部355Aは、各分光画像の対象範囲における各画素の諧調値に基づいて、画素毎の分光スペクトルを算出する。
指標算出部355Bは、算出された分光スペクトルに基づいて、測定対象Xの対象範囲における特徴を判定するための指標値を解析する。具体的には、指標算出部355Bは、画素毎に指標値を算出する。上記のように、各画素に対する分光スペクトル、つまり、各分光波長に対する諧調値が求められているので、指標算出部355Bは、これらの各分光波長に対する諧調値を変数として、多変量解析処理を実施する。多変量解析処理としては、特に限定されず、例えば、主成分分析、コレスポンデンス分析等の各種分析法を用いることができる。また、ユーザーにより分析方法が指定されてもよい。
測定装置2により、16バンドの分光波長に対する分光画像を測定する場合、各画素に関して、16個の諧調値が変数パラメーターとして取得される。スペクトル解析部355A及び指標算出部355Bは、これらの16個の変数パラメーターを多変量解析して、分光スペクトル及び指標値を算出する。
【0029】
分類部355Cは、対象範囲において、指標値が類似する画素解析データを関連付けて同一グループとして分類する。グループの分類としては、例えば、ユーザーが指定した分類数で、各画素解析データを分類してもよく、指標算出部355Bによる解析結果をクラスタリングすることで、自動で所定数のグループに画素解析データを分類してもよい。
境界設定部355Dは、分類部355Cにより分類された各グループの間の境界を設定する。詳細は後述するが、本実施形態では、3つの指標値に基づいて、各指標値を軸とした3軸座標系の解析画像を生成する。境界設定部355Dは、画素解析データに対応する点を解析画像の3軸座標系にプロットした際に、各グループを隔てる境界を設定する。境界は、平面であってもよく、湾曲面であってもよい。
【0030】
特徴判定部356は、各画素解析データの指標値に基づいて、対象範囲における当該画素解析データに対応する画素における測定対象Xの特徴を判定する。例えば、本実施形態では、対象範囲の各画素が何色であるかを判定する。
また、特徴判定部356は、対象範囲全体の特徴を判定してもよい。つまり、対象範囲に含まれる画素毎の特徴から、同一特長を有する画素群に含まれる画素数をカウントし、画素数が最も多い画素群の特徴を対象範囲の特徴として判定する。同一特徴を有する画素群としては、分類部において同一グループに分類された画素の集まりとしてもよい。
【0031】
解析画像生成部357は、解析部355による多変量解析により得られた、各画素解析データを、3軸座標系上にプロットした解析画像を生成する。この際、解析画像生成部357は、特徴判定部356により特定された特徴を解析画像に表してもよい。例えば、特徴判定部356により「赤」と判定された場合は、各プロット点を赤点として表示し、「青」と判定された場合は、各プロット点を青点として表示する。
【0032】
選択取得部358は、ユーザーにより、ディスプレイ31に表示された解析画像において、所定のプロット点が選択された場合に、当該プロット点を取得する。
【0033】
[解析システムの動作]
図3は、本実施形態の解析システム1における画像解析方法を示すフローチャートである。
本実施形態の解析システム1では、測定対象Xの画像解析にあたり、ユーザーは、まず、測定したい測定対象Xの画像を撮像する旨の入力操作を行う。これにより、端末装置3から測定装置2に、カラー画像の撮像処理を指令する指令信号を出力する。
これにより、測定装置2のカラー撮像部22は、測定対象Xのカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像を端末装置3に出力する。また、端末装置3は、測定装置2からカラー画像が撮像されると、当該カラー画像をディスプレイ31に表示させる(ステップS1)。なお、本実施形態では、測定装置2に設けられたカラー撮像部22によりカラー画像が撮像される例を示すが、分光撮像部21で撮像した分光画像を合成することでカラー画像を生成してもよい。
また、端末装置3は、ディスプレイ31に、対象範囲を指定する旨の案内情報を表示させる。ユーザーが、カラー画像に対して、対象範囲を指定する旨の入力操作を行うことで、範囲取得部354は、カラー画像において、設定入力された対象範囲を取得する(ステップS2:範囲取得ステップ)。対象範囲は、上述したように、ユーザーが指定した点に対して所定の距離内の範囲であってもよく、ユーザーがドラッグ操作等により指定した範囲であってもよい。また、複数の対象範囲が指定されてもよい。
【0034】
この後、端末装置3は、分光撮像処理を実施する旨の分光撮像指令を測定装置2に出力する。これにより、測定装置2の分光撮像部21は、所定の測定波長域に対して、予め設定された分光波長の分光画像を撮像する(ステップS3:分光画像取得ステップ)。例えば、本実施形態では、測定対象Xの色を判定するために、700nmから400nmの可視光域を測定波長域として、20nm間隔の16バンドの分光画像を撮像する。
具体的には、分光撮像指令を受信した測定制御部25の分光制御部252は、記憶部251から駆動テーブルを読み出し、700nmから400nmの20nm間隔の各波長に対応した駆動電圧を、順次、分光素子212のギャップ変更部に印加する。これにより、分光素子212を透過した、700nmから400nmの20nm間隔の各分光波長の画像光が、順次、撮像素子214で撮像される。
なお、ステップS3では、ステップS1で撮像されたカラー画像全体に対応した分光画像を撮像してもよく、ステップS1で撮像されたカラー画像のうち、ステップS2で指定された対象範囲の分光画像のみを撮像してもよい。対象範囲の分光画像を撮像する場合では、端末記憶部34の容量圧迫を抑制でき、かつ迅速な分光画像の撮像が可能となる。
【0035】
この後、端末装置3は、測定装置2から各分光波長の分光画像を受信すると、解析部355による解析ステップを実施する。
具体的には、スペクトル解析部355Aは、各分光画像の対象範囲の各画素の諧調値に基づいて、画素毎の分光スペクトル、つまり、各分光波長に対する光強度を算出する(ステップS4)。
そして、指標算出部355Bは、算出された分光スペクトルに基づき、多変量解析処理を実施し、指標値または特徴ベクトルを算出する(ステップS5)。なお、処理にもよるが、多変量解析処理に必要なパラメーター群は、既知の複数の分光画像に基づいて予め決定されていてもよい。
指標値は、上述したように、測定対象Xの解析対象項目によって選択できる。例えば、本実施形態では、対象範囲の色を判定するために、指標値としてRGB値を算出する。ここでは、色の判定に用いる指標値として、RGB値を例示するが、xyz値であってもよく、L*a*b*値であってもよい。また、本実施形態では、色の判定を例示するが、上述したように、測定対象Xの素材や物性等の特徴を判定する場合では、測定対象Xに含まれる各種成分の組成量、例えば、第一成分、第二成分、第三成分の各成分量を指標値として解析してもよい。
これらの指標値は、対象範囲内の各画素のそれぞれに対して算出され、画素解析データとして端末記憶部34に記録される。例えば、対象範囲に画素Aと画素Bとが含まれ、画素Aに対して色判定の指標値であるRGB値として、r=rA、g=gA、b=bAが算出され、画素Bに対して、r=rB、g=gB、b=bBが算出された場合、画素Aに対する画素解析データDA(rA,gA,bA)及び、画素Bに対する画素解析データDB(rB,gB,bB)がそれぞれ算出されて、画素位置を示す位置情報と関連付けられて、端末記憶部34に記憶される。
【0036】
次に、解析部355の分類部355Cは、対象範囲内の各画素の画素解析データまたは特徴ベクトルが同一系統に分類されるか否かを判定する(ステップS6)。つまり、対象範囲が、同じ特徴の構成を含む範囲であるか否かを判定する。例えば、本実施形態では、対象範囲が同一系統色であるか否かを判定する。
ステップS6においてNoと判定される場合、分類部355Cは、画素解析データを複数のグループに分類する(ステップS7)。
例えば、本実施形態では、赤系統、青系統、緑系統といった複数の同一系統色同士の色グループに分類する。この場合、分類部355Cは、例えば、各画素の画素解析データについて、色基準データからの距離(例えば、マハラノビス距離やユークリッド距離等)を算出し、距離が最も離れた複数の画素解析データを基準データとする。そして、各画素解析データについて、各基準データのうち、距離が最小となる基準データを特定し、特定した基準データのグループに当該画素解析データを分類する。
なお、基準データは、予め設定されていてもよい。例えば、本実施形態では、赤色についての赤基準データ、緑色についての緑基準データ、青色についての青基準データを設定しておいて、各基準データからの各画素解析データまでの距離に基づいて、各画素解析データを分類してもよい。
【0037】
この後、境界設定部355Dは、分類された各グループにおける境界を設定する(ステップS8)。例えば、境界設定部355Dは、各グループにおいて、他のグループと最も距離が近い画素解析データ同士を結ぶ線分の中点を通る境界面であり、各グループを隔てる面を形成する。境界面は、前記中点を通る前記線分に垂直な平面であってもよく、前記中点を通る湾曲面であってもよい。
【0038】
ステップS8の後、及びステップS6でYESと判定された場合、特徴判定部356は、各画素解析データに基づいて、対象範囲における特徴を判定する(ステップS9)。
ステップS6でYESと判定されている場合、つまり、対象範囲のすべての画素解析データが、所定の距離内であって、グループに分類されていない場合、画素特徴データの平均、または、画素特徴データの代表値(例えば基準データ)に基づいて、測定対象の対象範囲における特徴を判定する。
また、ステップS6でNOと判定されている場合、ステップS7及びステップS8により、画素解析データが、複数のグループに分類されている。この場合、特徴判定部356は、各グループの画素特徴データに基づいて、それぞれのグループに対する特徴を判定する。例えば、グループに属する画素解析データの平均、または、グループに属する画素解析データの代表値(例えば基準データ)に基づいて、当該グループに対する特徴を判定する。
【0039】
この後、解析画像生成部357は、各画素特徴データを、解析された指標値に基づいて、3軸座標系にプロットした解析画像を生成する(ステップS10:解析画像生成ステップ)。
図4から
図6は、解析画像の一例を示す図である。
図4は、ステップS2において、単一の対象範囲が指定された場合で、対象範囲内の各画素解析データがグループに分類されない場合の解析画像である。
図5は、ステップS2において、2つの対象範囲が指定された場合で、対象範囲内の各画素解析データがグループに分類されない場合の解析画像である。
図6は、ステップS2において、単一の対象範囲が指定された場合で、対象範囲内の各画素解析データが2つのグループに分類されない場合の解析画像である。
【0040】
図4及び
図6のように、対象範囲が1つである場合、解析画像生成部357は、各指標値の値を軸とした3軸座標系グラフ51に、多変量解析の解析結果である画素解析データをプロットしたプロット点52を表示させた解析画像50を生成する。
例えば、本実施形態では、主成分分析により分光スペクトルからR,G,Bを解析する。この場合、
図4に示すように、R、G、Bを軸とした3軸座標系グラフ51に対し、各画素解析データがプロットされる。また、
図4~6に示すように、解析画像50に、解析手法や、解析により得られる解析成分を表示させてもよい。
なお、測定対象Xの素材や物性を特徴として判定する場合では、4つ以上の指標値が算出される場合がある。例えば、料理等に含まれる食材を判定する場合では、指標値として、水分、糖質、脂質、タンパク質、鉄分等の複数の成分量が指標値として算出される。この場合、例えばユーザーにより指定された3つの指標値に基づいた3軸座標系が生成されてもよく、対象範囲に含まれる成分量毎の合計を算出し、合計が大きい上位3つの成分を3軸座標系に表す指標値として特定してもよい。
【0041】
また、解析画像生成部357は、ステップS1で撮像されたカラー画像53を併せて表示させた解析画像50を生成することが好ましい。この場合、ユーザーにより指定された対象範囲54をカラー画像53に重ね合わせる。また、解析画像生成部357は、解析画像50に、特徴判定部356により判定された特徴を表示させる。例えば、本実施形態では、特徴判定部356により判定された測定対象Xの色により、画素解析データのプロット点52を表示させる。これにより、ユーザーは、測定対象Xの対象範囲54の色を、3軸座標系グラフ51のプロット点52により認識できる。なお、特徴判定部356による判定結果は、カラー画像53の対象範囲54に重畳して表示してもよい。
【0042】
ステップS2において、複数の対象範囲54が指定された場合では、解析画像生成部357は、
図5のように、カラー画像53に、ユーザーにより指定された各対象範囲54A,54Bを表示させる。ここでは、一方の対象範囲54を第一対象範囲54Aとし、他方の対象範囲を第二対象範囲54Bとして説明する。
解析画像生成部357は、3軸座標系グラフ51に対して、第一対象範囲54Aに対応した第一画素解析データの第一プロット点52Aと、第二対象範囲54Bに対応した第二画素解析データの第二プロット点52Bとを表示させる。この際、第一プロット点52Aと、第二プロット点52Bとは、それぞれ異なる表示形態とすることが好ましい。例えば、第一プロット点52Aを「丸型」の点により表示し、第二プロット点52Bを「四角型」の点により表示する。また、特徴判定部356による第一画素解析データを用いた特徴の判定結果と、第二画素解析データを用いた特徴の判定結果とがそれぞれ異なる場合、各特徴に応じて、第一プロット点52Aと、第二プロット点52Bとを表示してもよい。例えば、第一対象範囲54Aが赤色と判定され、第二対象範囲54Bが青色と判定される場合、第一プロット点52Aを赤色で表示し、第二プロット点52Bを青色で表示してもよい。この際、第一対象範囲54Aを第一プロット点52Aと同一色の枠で表示し、第二対象範囲54Bを第二プロット点52Bと同一色の枠で表示する等、各プロット点がどの対象範囲に対応するものであるかを示すことがより好ましい。
【0043】
ステップS2において、単一の対象範囲54が指定され、かつ、当該対象範囲に属する画素解析データが複数のグループに分類される場合、解析画像生成部357は、
図6のように、3軸座標系グラフ51に、各グループに対応するプロット点52をそれぞれ異なる表示形態で表示させる。例えば、
図6の例は、画素解析データが2つのグループに分類される例であり、一方のグループに属する第三プロット点52C、他方のグループに属する第四プロット点52Dが表示される。また、解析画像生成部357は、境界設定部355Dにより設定された境界画像55を、3軸座標系グラフ51に表示させる。
さらに、解析画像生成部357は、カラー画像53の対象範囲54を、第三プロット点52Cに対応する画素と、第四プロット点52Dに対応する画素とを異なる表示形態で明示してもよい。例えば、
図6において、特徴判定部356により第三プロット点52Cのグループに対して色の特徴が赤色と判定され、第四プロット点52Dのグループに対して色の特徴が青色と判定される場合、各画素を各色の代表色に置き換える。すなわち、カラー画像53に対象範囲54の第三プロット点52Cに対応する画素を、所定値以上の高輝度の赤色系代表色(例えばR=255,G=0,B=0)で表示させる。同様に、対象範囲54の第四プロット点52Dに対応する画素を、所定値以上の高輝度の青色系代表色(例えばR=0,G=0,B=255)で表示させる。
【0044】
ステップS10の後、表示制御部351は、生成された
図4から
図6に示すような解析画像50をディスプレイ31に表示させる(ステップS11)。
また、選択取得部358は、ユーザーの入力操作によって、3軸座標系グラフ51における所定のプロット点52が選択されたか否かを判定する(ステップS12)。
ステップS12でYesと判定された場合、選択取得部358は、選択されたプロット点52を選択点として取得する。そして、表示制御部351は、選択点に対応する画素を対応画素56として表示させる(ステップS13)。
図7は、ステップS13における処理の後にディスプレイに表示された解析画像50の一例を示す図である。例えば、解析画像50に対して、プロット点52の1つを選択点52Eとして選択した場合、表示制御部351は、
図7に示すように、選択点52Eに対応する対象範囲54内の画素を対応画素56として表示させる。対応画素56は、選択されたプロット点52に対応する画素を、視覚的に明示させた画素であり、例えば、該当画素を点滅表示したり、周囲の画素に対して所定値以上異なる輝度値で表示させたりする。
【0045】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の解析システム1は、測定装置2と端末装置3とを備え、端末装置3の端末制御部35は、端末記憶部34に記憶された画像解析プログラムを読み込み実行することで、分光画像取得部352、範囲取得部354、解析部355、及び解析画像生成部357として機能する。分光画像取得部352は、測定対象Xを撮像した複数の分光波長の分光画像を取得する。範囲取得部354は、各分光画像における対象範囲54を取得する。解析部355は、対象範囲54の中の各画素の分光波長毎の諧調値に基づいて、各画素の多変量解析を実施する。解析画像生成部357は、対象範囲54の中の各画素に対する多変量解析の解析結果を含む解析画像を生成する。
このような解析システム1では、解析画像生成部357により生成された解析画像を表示することで、ユーザーに、単に対象範囲54の特徴を表示するのみならず、対象範囲において、どのような解析結果によって特徴判定が実施されたかを示すことができる。つまり、測定対象Xの特徴を判定する場合、単に最終的な特徴判定結果を表示するだけでは、ユーザーは、その判定された特徴が正しいか否かを判断することができない。これに対して、本実施形態のように、特徴を判定するための中間データである解析結果の解析画像50として表示させることで、ユーザーは、判定された特徴がどのような解析結果に基づいたものであるかを確認することができ、特徴判定の可否を判断することができる。
【0046】
本実施形態では、解析部355は、指標算出部355Bとして機能し、各画素の分光波長毎の諧調値に基づいて、各画素の特徴を示す複数の指標値を算出する。そして、解析画像生成部357は、各指標値に対応した座標軸により構成された3軸座標系グラフ51に、各画素に対する解析結果(画素解析データ)を示すプロット点52をプロットした解析画像50を生成する。
このように、多変量解析の解析結果により算出された指標値を座標上で表示させることで、ユーザーは容易に解析結果を確認でき、特徴の判定結果の良否を判断することができる。つまり、3軸座標系において、プロット点52が離散している場合、特徴判定部356により対象範囲54の特徴が判定されたとしても、その信用度は低く、逆に、プロット点52の互いの距離が近接している場合は、特徴判定部356により判定された特徴の信用度が高いと判断できる。
【0047】
本実施形態では、解析部355は、分類部355Cとして機能し、対象範囲54の中の各画素に対する画素解析データに基づいて、さらに、各画素解析データを複数のグループに分類する。そして、解析画像生成部357は、分類されたグループ毎に、プロット点52を異なる表示形態で表示させる。
これにより、対象範囲内にそれぞれ異なる特徴を有する部分が複数ある場合でも、各特徴に対応したグループを設定し、
図6のように、グループ毎に異なる表示形態でプロット点52C,52Dを表示させることができる。したがって、ユーザーは、このような解析画像50を確認することで、特徴判定部356により判定された複数の特徴に対応する各画素解析データを容易に確認することができ、各特徴判定の良否を適正に判断できる。
【0048】
本実施形態では、解析画像生成部357は、異なるグループの境界を示す境界画像55を表示した解析画像50を生成する。
すなわち、解析部355は、境界設定部355Dとしても機能し、分類部355Cで各画素対象データが、複数のグループに分類された場合に、各グループ間の境界を設定する。そして、解析画像生成部357は、設定された境界に対応した境界画像55を3軸座標系グラフ51に表示させる。
これにより、ユーザーは、対象範囲54から複数の特徴が判定された場合に、どのような閾値で画素解析データを分類したかを容易に確認することができる。
【0049】
本実施形態では、端末装置3の端末制御部35は、特徴判定部356として機能する。この特徴判定部356は、解析部355による多変量解析による解析結果に基づいて、対象範囲54における特徴を判定する。そして、解析画像生成部357は、解析部355による解析結果、及び特徴判定部356により判定された特徴を含む解析画像50を生成する。例えば、本実施形態では、対象範囲54に対して判定された色で、各プロット点52を表示させることで、対象範囲の特徴を含む解析画像50としている。
これにより、ユーザーは、対象範囲54の各画素に対する多変量解析の結果である画素対象データに対応するプロット点52と、多変量解析結果により判定された対象範囲の特徴とを解析画像50により確認することができる。
【0050】
本実施形態では、端末装置3の端末制御部35は、カラー画像取得部353としても機能し、カラー画像取得部353は、測定対象Xのカラー画像を取得する。そして、解析画像生成部357は、3軸座標系グラフ51と、対象範囲54が表示されたカラー画像53とを含む解析画像を生成する。
これにより、ユーザーは、3軸座標系グラフ51の各プロット点52が、カラー画像53のどの対象範囲54に対応したデータであるかを容易に認識することができる。
【0051】
本実施形態では、端末装置3の端末制御部35は、表示制御部351及び選択取得部358として機能する。表示制御部351は、解析画像50をディスプレイ31に表示させる。選択取得部358は、ディスプレイ31に表示した解析画像50に対して、ユーザーによる所定のプロット点52を選択する旨の操作を受け付けた場合に、選択されたプロット点52を選択点52Eとして取得する。そして、表示制御部351は、カラー画像53の中の選択点52Eに対応する画素を対応画素56として表示させる。
これにより、ユーザーは、3軸座標系グラフ51に表示されているプロット点52が、カラー画像53におけるどの画素に対応するデータであるかを個別に知ることができる。
【0052】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
(変形例1)
上記実施形態では、カラー撮像部22が所定周期で継続してカラー画像を撮像し、リアルタイム画像として、ディスプレイ31に表示するカラー画像を撮像された画像で更新し続ける例を示したが、これに限定されない。
例えば、カラー撮像部22によるカラー画像の撮像と、分光撮像部21による複数の分光波長に対する分光画像の撮像とを同時に実施し、これらの画像が端末記憶部34または記憶部251に記録されてもよい。この場合、ユーザーは任意のタイミングで、端末記憶部34に記憶された画像を読み出して、ディスプレイ31に表示させることができ、表示されたカラー画像から対象範囲54を指定することができる。また、カラー画像の撮像時に、分光画像も撮像されているので、範囲取得部354により対象範囲54の取得の後に、分光画像を撮像する必要がなく、端末記憶部34または記憶部251からカラー画像に対応する分光画像を読み出して、上記実施形態と同様の解析処理を行えばよい。
【0053】
(変形例2)
上記実施形態において、ユーザーにより対象範囲54が複数設定された場合に、解析画像生成部357が、3軸座標系グラフ51に、
図5に示すように、第一プロット点52A及び第二プロット点52Bを表示させる旨を説明した。この際、解析画像生成部357は、
図6に示すように、第一プロット点52Aのグループと、第二プロット点52Bのグループとの間に、境界画像55を表示させてもよい。
つまり、境界設定部355Dが、第一対象範囲54Aに属する各第一画素解析データと、第二対象範囲54Bに属する各第二画素解析データとに基づいて境界を設定し、解析画像生成部357が設定された境界を3軸座標系グラフ51上に表示させてもよい。
【0054】
(変形例3)
上記実施形態では、選択取得部358は、3軸座標系グラフ51のいずれかのプロット点52を選択点52Eとして取得したが、これに限定されない。例えば、選択取得部358は、カラー画像53の対象範囲54内において、ユーザーにより指定された画素を選択点として取得してもよい。この場合、表示制御部351は、選択点に対応する画素解析データを端末記憶部34から読み出し、3軸座標系グラフ51における対応するプロット点52を、対象プロット点として視覚的に明示するように表示してもよい。
【0055】
(変形例4)
上記実施形態において、対象範囲54が複数指定された場合で、各対象範囲54に含まれる画素解析データが複数のグループに分類される場合、
図5に示すように、グループ毎に3軸座標系グラフ51に表示するプロット点52を異なる表示形態としてもよい。つまり、対象範囲毎、グループ毎でそれぞれ異なる表示形態でプロット点52を表示させてもよい。
【0056】
(変形例5)
上記実施形態では、特徴判定部356による特徴の判定処理を実施したが、特徴判定部356が設けられない構成としてもよい。この場合、解析画像50には、測定対象Xの特徴が表示されず、ユーザー自身が解析結果に基づいて測定対象Xの対象範囲54における特徴を判断することになる。この際、上記のように、解析画像50に対象範囲54の各画素の解析結果が表示されるため、ユーザーは、容易に対象範囲における特徴を判断することができる。
【0057】
(変形例6)
上記実施形態では、解析画像50に、3つの指標値に対応した3軸座標系グラフ51が含まれる例を示したが、これに限定されない。例えば、2つの指標値に対応した2軸座標系グラフが含まれてもよく、4軸以上の座標系を用いた解析画像50が表示されてもよい。また、各画素解析データの指標値が、それぞれ数値としてテキストや表形式で表示されていてもよい。
さらに、解析画像として、撮像対象となる測定対象Xのカラー画像が表示される例を示したが、カラー画像が表示されない解析画像であってもよい。
【0058】
[発明のまとめ]
本開示の第一態様の画像解析装置は、測定対象を撮像した複数の波長の分光画像を取得する分光画像取得部と、各前記分光画像における対象範囲を取得する範囲取得部と、前記対象範囲の中の各画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各画素の多変量解析を実施する解析部と、前記対象範囲の中の各画素に対する前記多変量解析の解析結果を含む解析画像を生成する解析画像生成部と、を備える。
【0059】
これにより、解析画像生成部により生成された解析画像を表示することで、ユーザーに、対象範囲において、どのような解析結果が得られたかを示すことができる。つまり、測定対象の特徴を判定する場合に、単に最終的な特徴判定結果のみを表示するだけでは、ユーザーは、その判定された特徴が正しいか否かを判断することができない。これに対して、本態様では、特徴を判定するための中間データである解析結果を示す解析画像を得ることができるので、ユーザーは、当該解析結果に基づいて測定対象の特徴を判断することができる。
【0060】
本態様の画像解析装置において、前記解析部は、各前記画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各前記画素の特徴を示す複数の指標値を算出し、前記解析画像生成部は、各前記指標値に対応した座標軸により構成された座標系に、各前記画素に対する前記解析結果を示すプロット点をプロットした前記解析画像を生成することが好ましい。
このように、多変量解析の解析結果により算出された指標値を座標上で表示させることで、ユーザーは容易に解析結果を確認でき、これにより対象範囲における測定対象の特徴の判定が容易にできる。つまり、3軸座標系において、プロット点が離散している場合では、測定対象に様々な特徴が含まれると判断でき、逆に、プロット点の互いの距離が近接している場合は、測定対象の特徴が定まっていると判断できる。
【0061】
本態様の画像解析装置において、前記解析部は、前記対象範囲の中の各前記画素に対する前記解析結果に基づいて、さらに、各前記画素を複数のグループに分類し、前記解析画像生成部は、分類された前記グループ毎に、前記プロット点を異なる表示形態で表示させることが好ましい。
これにより、対象範囲内にそれぞれ異なる特徴を有する部分が複数ある場合でも、グループ毎に異なる表示形態でプロット点を表示させることができる。したがって、ユーザーは、このような解析画像を確認することで、測定対象の特徴が複数含まれることを容易に確認することができる。
【0062】
本態様の画像解析装置において、前記解析画像生成部は、異なる前記グループの境界を示す境界画像を表示した前記解析画像を生成する、ことが好ましい。
これにより、ユーザーは、対象範囲から複数の特徴が判定された場合に、どのような閾値で画素解析データを分類したかを容易に確認することができる。
【0063】
本態様の画像解析装置は、さらに、前記多変量解析による前記解析結果に基づいて、前記対象範囲における特徴を判定する特徴判定部を備え、前記解析画像生成部は、前記解析結果及び前記特徴を含む前記解析画像を生成する、ことが好ましい。
これにより、ユーザーは、対象範囲の各画素に対する多変量解析の結果とともに、多変量解析結果により判定された対象範囲の特徴を解析画像により確認することができる。よって、ユーザーは、解析結果に基づいて自ら対象範囲の特徴を判定する必要がない。また、多変量解析による解析結果が解析画像に表示されているので、当該解析結果に基づいて、特徴判定部により判定された特徴の判定結果が正しいか否かをユーザー自身が確認することができる。
【0064】
本態様の画像解析装置は、さらに、前記測定対象のカラー画像を取得するカラー画像取得部を備え、前記解析画像生成部は、前記対象範囲が表示された前記カラー画像を含む前記解析画像を生成する、ことが好ましい。
これにより、ユーザーは、解析画像に表示された解析結果を示す各プロット点が、カラー画像のどの対象範囲に対応したデータであるかを容易に認識することができる。
【0065】
本態様の画像解析装置において、前記解析部は、各前記画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各前記画素の特徴を示す複数の指標値を算出し、前記解析画像生成部は、各前記指標値に対応した座標軸により構成された座標系に、各前記画素に対する前記解析結果を示すプロット点をプロットした前記解析画像を生成し、当該画像解析装置は、前記解析画像を表示部に表示させる表示制御部と、前記表示部に表示した前記解析画像に対して、ユーザーによる所定の前記プロット点を選択する旨の操作を受け付けた場合に、選択された前記プロット点を選択点として取得する選択取得部と、をさらに備え、前記表示制御部は、前記カラー画像の中の前記選択点に対応する画素を、対応画素として表示させる、ことが好ましい。
これにより、ユーザーは、解析画像において座標系にプロットされたプロット点が、カラー画像におけるどの画素に対応するデータであるかを個別に知ることができる。
【0066】
本開示の第二態様にかかる画像解析方法は、コンピューターにより、測定対象を撮像した複数の波長の分光画像を解析する画像解析方法であって、前記コンピューターは、分光画像取得部、範囲取得部、解析部、及び解析画像生成部として機能し、前記分光画像取得部が、前記測定対象を撮像した複数の前記波長の前記分光画像を取得する分光画像取得ステップと、前記範囲取得部が、各前記分光画像における対象範囲を取得する範囲取得ステップと、前記解析部が、前記対象範囲の中の各画素の前記波長毎の諧調値に基づいて、各画素の多変量解析を実施する解析ステップと、前記解析画像生成部が、前記対象範囲の中の各画素に対する前記多変量解析の解析結果を含む解析画像を生成する解析画像生成ステップと、を実施する。
これにより、上記第一態様と同様、解析画像生成部により生成された解析画像を表示することで、ユーザーに、対象範囲において、どのような解析結果が得られたかを示すことができる。
【0067】
本開示の第三態様の画像解析プログラムは、コンピューターにより読み取り実行可能なプログラムであって、前記コンピューターを請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像解析装置として機能させる。
これにより、上記第一態様と同様、解析画像生成部により生成された解析画像を表示することで、ユーザーに、対象範囲において、どのような解析結果が得られたかを示すことができる。
【符号の説明】
【0068】
1…解析システム(画像解析装置)、2…測定装置、3…端末装置、21…分光撮像部、22…カラー撮像部、31…ディスプレイ(表示部)、34…端末記憶部、35…端末制御部、50…解析画像、51…3軸座標系グラフ、52,52A,52B,52C,52D…プロット点、52E…選択点、53…カラー画像、54.54A,54B…対象範囲、55…境界画像、56…対応画素、351…表示制御部、352…分光画像取得部、353…カラー画像取得部、354…範囲取得部、355…解析部、355A…スペクトル解析部、355B…指標算出部、355C…分類部、355D…境界設定部、356…特徴判定部、357…解析画像生成部、358…選択取得部、X…測定対象。