(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車載部品の支持構造
(51)【国際特許分類】
B62J 11/00 20200101AFI20240827BHJP
B62J 6/027 20200101ALI20240827BHJP
【FI】
B62J11/00
B62J6/027
(21)【出願番号】P 2020171155
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】石井 樹
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-273082(JP,A)
【文献】特開2016-117349(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180941(WO,A1)
【文献】特開2016-179792(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2189360(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第108860423(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 11/00
B62J 6/02ー 6/027
B62J 17/02
B62J 17/086
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの前方に車載部品を支持する車載部品の支持構造であって、
前記車体フレームの前部に取り付けられた第1のブレースと、
前記第1のブレースの前部に取り付けられた第2のブレースと、を備え、
前記第2のブレースに前記車載部品が取り付けられ、当該第2のブレースが前記第1のブレースよりも軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成され
、
前記第2のブレースが、左右方向に広がった前壁部と、前記前壁部の上縁から後方に延びる上壁部と、前記前壁部の側縁から後方に延びる側壁部と、を有し、
前記車載部品が左右方向中央から左右方向外側に向かって後方に延びたランプであり、
前記前壁部には、前記ランプの左右両側が取り付けられる一対の両側前壁部と、前記ランプの中央が取り付けられる中央前壁部と、が形成され、
前記中央前壁部が前記一対の両側前壁部よりも前方に突出していることを特徴とする車載部品の支持構造。
【請求項2】
車体フレームの前方に車載部品を支持する車載部品の支持構造であって、
前記車体フレームの前部に取り付けられた第1のブレースと、
前記第1のブレースの前部に取り付けられた第2のブレースと、を備え、
前記第2のブレースに前記車載部品が取り付けられ、当該第2のブレースが前記第1のブレースよりも軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成され
、
前記第2のブレースが、左右方向に広がった前壁部と、前記前壁部の上縁から後方に延びる上壁部と、前記前壁部の側縁から後方に延びる側壁部と、前記上壁部の左右両側から上方に延びる一対の延出部と、を有し、
前記一対の延出部が前記第1のブレースに取り付けられ、前記一対の延出部の間に前記車載部品の設置スペースが形成されていることを特徴とする車載部品の支持構造。
【請求項3】
前記第2のブレースが、前記前壁部の下縁から後方に延びる底壁部を有することを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の車載部品の支持構造。
【請求項4】
前記中央前壁部が筒状に形成されていることを特徴とする
請求項1に記載の車載部品の支持構造。
【請求項5】
前記中央前壁部が背面側を開放した有底筒状に形成され、前記中央前壁部の前面に前記ランプの中央が取り付けられることを特徴とする
請求項1又は請求項4に記載の車載部品の支持構造。
【請求項6】
前記車載部品が通信機器であることを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の車載部品の支持構造。
【請求項7】
前記車載部品が物体検知器であることを特徴とする請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の車載部品の支持構造。
【請求項8】
前記第1のブレースが金属材料で形成され、前記第2のブレースが樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1から
請求項7のいずれか1項に記載の車載部品の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載部品の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載部品の支持構造として、車体フレームに取り付けられた金属製のブレースによって各種車載部品を支持するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の金属製のブレースは車体フレームのヘッドパイプから前方に延びており、ブレースの延在方向の途中に第1のブラケットが溶接され、ブレースの先端に第2のブラケットが溶接されている。第1のブラケットには車載部品としてヘッドランプ等がフロントカウルから露出した状態で取り付けられており、第2のブラケットには車載部品として計器類等がフロントカウルの内側に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車載部品の支持構造では、車載部品の取付位置等によっては金属製のブレースの前後長が大きくなって重量が増加する。また、エンジンの振動が車体フレームからブレースを介して車載部品に伝わり易くなるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ブレースを軽量化すると共に車載部品の振動を抑えることができる車載部品の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の車載部品の支持構造は、車体フレームの前方に車載部品を支持する車載部品の支持構造であって、前記車体フレームの前部に取り付けられた第1のブレースと、前記第1のブレースの前部に取り付けられた第2のブレースと、を備え、前記第2のブレースに前記車載部品が取り付けられ、当該第2のブレースが前記第1のブレースよりも軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成され、前記第2のブレースが、左右方向に広がった前壁部と、前記前壁部の上縁から後方に延びる上壁部と、前記前壁部の側縁から後方に延びる側壁部と、を有し、前記車載部品が左右方向中央から左右方向外側に向かって後方に延びたランプであり、前記前壁部には、前記ランプの左右両側が取り付けられる一対の両側前壁部と、前記ランプの中央が取り付けられる中央前壁部と、が形成され、前記中央前壁部が前記一対の両側前壁部よりも前方に突出していることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の車載部品の支持構造によれば、車体フレームの前部に近い第1のブレースよりも、車体フレームの前部から遠い第2のブレースが軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成されている。よって、第1、第2のブレースの前後長が十分に確保されても、第1、第2のブレースの合計重量が過剰に増加することがない。また、車体フレームの振動が第1のブレースに伝わっても、この振動が第2のブレースによって減衰されることで車載部品の振動が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施例のカウルブレース周辺の斜視図である。
【
図3】本実施例の第1のブレースを前方から見た斜視図である。
【
図4】本実施例の第1のブレースを後方から見た斜視図である。
【
図5】本実施例の第2のブレースを前方から見た斜視図である。
【
図6】本実施例の第2のブレースを後方から見た斜視図である。
【
図7】本実施例の車載部品を取り付けたカウルブレースの上面図である。
【
図8】本実施例の車載部品を取り付けたカウルブレースの下面図である。
【
図9】本実施例のカウルブレース周辺の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の車載部品の支持構造は、第1のブレースと第2のブレースによって車体フレームの前方に車載部品を支持している。第1のブレースが車体フレームの前部に取り付けられ、第2のブレースが第1のブレースの前部に取り付けられており、第2のブレースに車載部品が取り付けられている。車体フレームの前部に近い第1のブレースよりも、車体フレームの前部から遠い第2のブレースが軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成されている。よって、第1、第2のブレースの前後長が十分に確保されても、第1、第2のブレースの合計重量が過剰に増加することがない。また、車体フレームの振動が第1のブレースに伝わっても、この振動が第2のブレースによって減衰されることで車載部品の振動が抑えられる。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。
図1は、本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン16や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ11(
図2参照)から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム(不図示)とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン16の後部が支持され、一対のダウンフレームによってエンジン16の前部が支持されている。エンジン16が車体フレーム10に支持されることで、車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はエンジン16の上方に位置するタンクレール13になっており、タンクレール13によって燃料タンク17が支持されている。メインフレーム12の後側部分はエンジン16の後方に位置するボディフレーム14になっており、ボディフレーム14の上下方向の略中間位置にスイングアーム18が揺動可能に支持されている。ボディフレーム14の上部からは、シートレール(不図示)とバックステー(不図示)が後方に向かって延びている。シートレール上には、燃料タンク17の後方においてライダーシート21及びピリオンシート22が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプ11には、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク23が操舵可能に支持されている。フロントフォーク23の下部には前輪26が回転可能に支持されており、前輪26の上部はフロントフェンダ27に覆われている。スイングアーム18はボディフレーム14から後方に向かって延びている。スイングアーム18の後端には後輪28が回転可能に支持され、後輪28の上方はリアフェンダ29に覆われている。後輪28にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン16が連結されており、変速機構を介してエンジン16からの動力が後輪28に伝達されている。
【0014】
車体フレーム10にはカウルブレース40(
図2参照)が取り付けられており、カウルブレース40に支持された各種カバーに鞍乗型車両1が覆われている。例えば、車両前部の前面側はフロントカウル31に覆われており、車両前部の側面側は一対のサイドカウル32に覆われている。また、カウルブレース40によってポジションランプ81と一対のヘッドランプ91が支持されている。フロントカウル31の中央にポジションランプ81が露出されており、ポジションランプ81を挟んで車両の左右両側に一対のヘッドランプ91が露出されている。カウルブレース40にはランプ以外の各種車載部品も支持されている。
【0015】
ところで、一般的な鞍乗型車両ではヘッドパイプから前方にカウルブレースが延びており、車両前側でカウルブレースにランプ等の複数の車載部品が支持されている。これら複数の車載部品の荷重に対する強度を確保するように、通常はカウルブレースに鉄やアルミニウム等の金属材料が用いられている。また、ランプの小型化等に伴ってランプの取付位置からヘッドパイプまでのカウルブレースの前後長が大きくなる。このため、カウルブレースに対して十分な前後長が確保されると、金属製のカウルブレースの重量が過剰に増加するおそれがあった。
【0016】
また、カウルブレースが振動減衰率の低い金属材料によって形成されている。このため、エンジンの振動がヘッドパイプからカウルブレースに伝わり、カウルブレースに支持された車載部品が振動するという不具合もあった。この場合、金属材料よりも軽量かつ振動減衰率の高い樹脂材料によってカウルブレースを形成することも考えられるが、カウルブレースに作用する荷重に対して十分な強度を得ることが必要となる。特に、カウルブレースの基端側には大きなモーメント荷重が作用するため、樹脂製のカウルブレースであっても必要な強度を持たせるために大型になり、重量がかさんでしまう場合がある。
【0017】
そこで、本実施例では、強度が高い金属製の第1のブレース41と軽量かつ振動減衰率の高い樹脂製の第2のブレース61とを組み合わせてカウルブレース40が形成されている(
図2参照)。カウルブレース40の基端側に金属製の第1のブレース41が用いられることで、カウルブレース40に作用する荷重に対して十分な強度を得ることができる。また、カウルブレース40の先端側に樹脂製の第2のブレース61が用いられることで、カウルブレース40の前後長を大きくしても重量の増加が抑えられると共に、第2のブレース61に支持された車載部品の振動が抑えられている。
【0018】
以下、
図2から
図6を参照して、車載部品の支持構造としてのカウルブレースについて説明する。
図2は、本実施例のカウルブレース周辺の斜視図である。
図3は、本実施例の第1のブレースを前方から見た斜視図である。
図4は、本実施例の第1のブレースを後方から見た斜視図である。
図5は、本実施例の第2のブレースを前方から見た斜視図である。
図6は、本実施例の第2のブレースを後方から見た斜視図である。
【0019】
図2に示すように、カウルブレース40は、フロントカウル31(
図1参照)の内側で、車体フレーム10の前方に車載部品を支持している。カウルブレース40は、ヘッドパイプ11に取り付けられた金属製の第1のブレース41と、第1のブレース41の前部に取り付けられた樹脂製の第2のブレース61とを備えている。第1のブレース41は、金属ブラケットや金属パイプ等から成り、カウルブレース40の基端側の骨格を形成している。第2のブレース61は背面側を開口した箱状に形成されており、第2のブレース61の外面には各種車載部品が取り付けられている。
【0020】
例えば、第2のブレース61の前面には中央から左右方向外側に向かって斜め上方に延びる正面視V字状のポジションランプ81が取り付けられ、このポジションランプ81の下方に一対のヘッドランプ91が取り付けられている。第2のブレース61において、ポジションランプ81の後方にETC(Electronic Toll Collection)アンテナ97が取り付けられている。また、第2のブレース61において、ETCアンテナ97の後方にLIN(Local Interconnect Network)コントローラ98が取り付けられ、LINコントローラ98の上方にリレー99a、99bが取り付けられている。これら車載部品の取付箇所の詳細については後述する。
【0021】
図3及び
図4に示すように、第1のブレース41は前方に向かって開いた骨組み構造を有している。第1のブレース41の後側の枠状フレーム42は、左右方向で対向した一対の枠板43と、一対の枠板43の前縁を連結した前板44と、一対の枠板43の下縁を連結した下板45とを有している。一対の枠板43の後枠はヘッドパイプ11を挟み込む挟持板になっている。一対の枠板43の上縁にはT字ブラケット46が固定されており、T字ブラケット46の前後に長い縦板によって一対の枠板43の上面が覆われている。T字ブラケット46の先端側は左右に長い横板になっており、T字ブラケット46の横板を介して一対の枠板43の前部にU字状のアッパアーム47が固定されている。
【0022】
T字ブラケット46の横板からアッパアーム47が延出し、アッパアーム47の延出部分は前方に向かって左右方向に広がるように湾曲している。アッパアーム47の両端にはフロントカウル31(
図1参照)用の一対の取付ブラケット51aが固定されている。アッパアーム47の一対の取付ブラケット51a付近は逆U字状のブリッジ48を介して連結されている。ブリッジ48の背面側にはメータユニット(不図示)用の一対の取付ブラケット51bが所定間隔を空けて固定され、ブリッジ48の前面側には第2のブレース61用の一対の取付ブラケット51cが所定間隔を空けて固定されている。
【0023】
枠状フレーム42の下板45から前方に向かってロアアーム49が延びており、ロアアーム49の先端には第2のブレース61用の取付ブラケット51dが固定されている。取付ブラケット51dには左右方向に長い取付面が形成されている。枠状フレーム42の下板45には、ロアアーム49の下面を支える側面視三角形状の補強ブラケット52が固定されている。また、第1のブレース41の前板44及び下板45にはレクチファイヤ100(
図9参照)用の支持部53a、53bが設けられている。第1のブレース41のアッパアーム47とロアアーム49の間はレクチファイヤ100の設置スペースとして利用される。
【0024】
図5及び
図6に示すように、第2のブレース61は、前後抜きの型を用いて、第1のブレース41(
図4参照)よりも軽量かつ振動減衰率の高い樹脂材料で成形されている。第2のブレース61は、左右方向に広がった前壁部62と、前壁部62の上縁から後方に延びる上壁部63と、前壁部62の側縁から後方に延びる一対の側壁部64と、前壁部62の下縁から後方に延びる底壁部65とで背面を開口した箱状に形成されている。第2のブレース61が軽量化されると共に第2のブレース61の剛性が向上される。また、第2のブレース61の背面側に周辺部品や配線の設置スペースが確保される。
【0025】
前壁部62は、左右両側に位置する一対の両側前壁部66と、一対の両側前壁部66よりも前方に突出した中央前壁部67とを有している。一対の両側前壁部66の上半部はポジションランプ81(
図2参照)の両端側の取付面になっており、これら上半部の取付面にはポジションランプ81用の取付穴68aが形成されている。一対の両側前壁部66の下半部は一対のヘッドランプ91(
図2参照)の取付面になっており、これら下半部の取付面にはヘッドランプ91用の取付穴68bが形成されている。一対の両側前壁部66の下半部は中央前壁部67よりも下方に突出している。
【0026】
中央前壁部67は角錐台状の有底筒状に形成されている。中央前壁部67の前面はポジションランプ81の中央の取付面になっており、前面の取付面にはポジションランプ81用の取付穴68cが形成されている。中央前壁部67の上面は上面視矩形状に僅かに窪んでおり、僅かな窪みによってETCアンテナ97(
図2参照)の取付面69が形成されている。底壁部65の中央は上方に窪んで一対の両側前壁部66の下半部を下方に突出させており、中央の窪み70によって後述するヘッドランプコントローラ96(
図8参照)と底壁部65の干渉が回避されている。
【0027】
上壁部63の左右両側から一対の延出部71が上方に延びている。一対の延出部71の前面は凹状に湾曲しており、一対の延出部71の前面の上端側には第1のブレース41の一対の取付ブラケット51c(
図3参照)に対応したブレース取付部72aが形成されている。一対の延出部71の左右方向外側の側面は一対の側壁部64に連なっており、一対の延出部71の左右方向内側の側面は連結板73を介して互いに連結されている。一対の延出部71の間には、LINコントローラ98(
図2参照)及びリレー99a、99b(
図2参照)の設置スペースが形成されている。
【0028】
この場合、連結板73の下方において、一対の延出部71の車幅方向内側の側面から前方にLINコントローラ98用の一対の取付片74aが突出している。連結板73の前面側にLINコントローラ98の設置スペースが確保される。連結板73の上縁から上方にリレー99a、99b用の一対の取付片74b、74cが突出している。連結板73は前方に迫り出しており、連結板73の背面側にリレー99a、99bの設置スペースが確保される。上壁部63の中央は切り欠かれており、この切り欠き75を通じてETCアンテナ97及びLINコントローラ98の配線が第2のブレース61の背面側に引き込まれる。
【0029】
第2のブレース61の背面側には複数の隔壁によって仕切られている。各両側前壁部66の裏面側は第1の隔壁部76aによって上下に仕切られており、各両側前壁部66と中央前壁部67の裏面側は第2の隔壁部76bによって左右に仕切られている。第1、第2の隔壁部76a、76bによって第2のブレース61の剛性が向上されている。第1、第2の隔壁部76a、76bは底壁部65側で集合しており、第1、第2の隔壁部76a、76bの集合箇所には第1のブレース41の取付ブラケット51d(
図3参照)に対応した一対のブレース取付部72bが形成されている。
【0030】
このように、第2のブレース61にはアンダーカットがないため、シンプルな前後抜きの型によって第2のブレース61を容易に樹脂成形することができる。第2のブレース61の背面側が中空の箱状に形成されて軽量化が図られている。よって、第1のブレース41に第2のブレース61を取り付けてカウルブレース40の前後長を大きくしても、カウルブレース40全体の重量が過剰に増加することがない。さらに、第2のブレース61が振動減衰率の高い樹脂材料で形成されているため、第2のブレース61に取り付けられた車載部品の振動が効果的に抑えられている。
【0031】
図7から
図9を参照して、車載部品の取付状態について説明する。
図7は、本実施例の車載部品を取り付けたカウルブレースの上面図である。
図8は、本実施例の車載部品を取り付けたカウルブレースの下面図である。
図9は、本実施例のカウルブレース周辺の縦断面図である。
【0032】
図2、
図7、
図8に示すように、第1のブレース41の一対の取付ブラケット51cに第2のブレース61の一対のブレース取付部72aが位置合わせされ、ボルトによって一対の取付ブラケット51cとブレース取付部72aが固定されている。第1のブレース41の取付ブラケット51dに第2のブレース61の一対のブレース取付部72b(
図6参照)が位置合わせされ、ボルトによって取付ブラケット51dの両端と一対のブレース取付部72bが固定されている。金属製の第1のブレース41と樹脂製の第2のブレース61が連結されて、フロントカウル31及び車載部品を支持するカウルブレース40が形成されている。
【0033】
ポジションランプ81は、上面視にて左右方向中央から左右方向外側に向かって後方に延びている。ポジションランプ81は、ポジションランプケース82の前面の開口にレンズカバー83が装着されている。ポジションランプケース82には、ポジションランプ81をフロントカウル31に取り付けるための複数の取付ブラケット84が設けられている。ポジションランプケース82の背面側には、第2のブレース61の一対の両側前壁部66に対向する一対の取付面85aが形成されており、第2のブレース61の中央前壁部67に対向する取付面85bが形成されている。
【0034】
ポジションランプケース82の一対の取付面85aにはそれぞれネジ穴が形成されている。一対の両側前壁部66の取付穴68a(
図5参照)にゴムブッシュ88aが装着され、ゴムブッシュ88aの内側に差し込まれたボルトが取付面85aのネジ穴に固定される。ポジションランプケース82の取付面85bには突起が形成されている。中央前壁部67の取付穴68c(
図5参照)にゴムブッシュ88cが装着され、ゴムブッシュ88cの内側に取付面85bの突起が差し込まれることで固定される。ゴムブッシュ88a、88cの一部が一対の両側前壁部66及び中央前壁部67の前面から突出しているため、ポジションランプケース82と第2のブレース61に隙間が形成されている。
【0035】
一対のヘッドランプ91は、ポジションランプ81の下方において左右方向外側に位置付けられている。各ヘッドランプ91は、ヘッドランプケース92の前面の開口にレンズカバー93が装着されている。一対のヘッドランプ91の下部は板状連結部94によって連結されている。板状連結部94は第2のブレース61の角錐台状の中央前壁部67の下方に位置しており、板状連結部94の下面中央には一対のヘッドランプ91を制御するヘッドランプコントローラ96が取り付けられている。ヘッドランプコントローラ96は第2のブレース61の底壁部65の窪み70に収容されている。
【0036】
板状連結部94の背面側には、第2のブレース61の一対の両側前壁部66に対向する一対の取付面95が形成されている。板状連結部94の一対の取付面95にはネジ穴が形成されている。一対の両側前壁部66の取付穴68b(
図5参照)にゴムブッシュ88bが装着され、ゴムブッシュ88bの内側に差し込まれたボルトが取付面95のネジ穴に固定される。ゴムブッシュ88bの一部が一対の両側前壁部66の前面から突出しているため、板状連結部94と第2のブレース61に隙間が形成されている。このように、第2のブレース61には、ゴムブッシュ88a-88cを介してポジションランプ81及び一対のヘッドランプ91が浮動支持されている。
【0037】
角錐台状の中央前壁部67の上面の取付面69には、路側アンテナと料金情報を送受信するETCアンテナ97が取り付けられている。ETCアンテナ97が第2のブレース61の先端側に取り付けられることで、鞍乗型車両1の走行方向の前側で料金情報を送受信してスムーズに料金ゲートを通過することができる。ETCアンテナ97の後方の一対の取付片74a(
図5参照)には、LIN通信を制御するLINコントローラ98が取り付けられている。ETCアンテナ97及びLINコントローラ98の配線は第2のブレース61の切り欠き75を通じて背面側に引き込まれている。
【0038】
LINコントローラ98の後方には連結板73が位置しており、連結板73上の一対の取付片74b、74c(
図5参照)にはリレー99a、99bが取り付けられている。リレー99a、99bの本体部分は連結板73の背面側に収容されている。このように、第2のブレース61には、ポジションランプ81、一対のヘッドランプ91、ヘッドランプコントローラ96、ETCアンテナ97、LINコントローラ98、リレー99a、99b等の車載部品が取り付けられている。よって、エンジン16の振動が第1のブレース41に伝わっても、第2のブレース61及びゴムブッシュ88a-88cによって振動が減衰されて車載部品の振動が抑えられる。
【0039】
特に、ポジションランプ81の取付箇所は、一対の両側前壁部66と中央前壁部67によって前後左右に分散されている。このため、ポジションランプ81が左右方向に長く形成されていても、3箇所の取付箇所によってポジションランプ81の振動が効果的に抑えられている。第2のブレース61の左右方向中央に、ヘッドランプコントローラ96、ETCアンテナ97、LINコントローラ98、リレー99a、99bの設置スペースが設けられている。これにより、車体の重量バランスが左右方向で均一に近づけられて操縦安定性が向上されている。
【0040】
さらに、第2のブレース61に複数の車載部品が取り付けられているため、第2のブレース61よりも車体フレーム10に近い第1のブレース41に作用する複数の車載部品の荷重(モーメント荷重)が大きくなる。第1のブレース41に金属材料が用いられることで、複数の車載部品の荷重に対する第1のブレース41の強度が十分に確保されている。第2のブレース61には金属材料よりも比重が小さな樹脂材料が用いられることで、カウルブレース40の前後長を十分に確保した状態で軽量化が図られる。さらに、第2のブレース61の設計自由度が向上されている。
【0041】
図9に示すように、第1のブレース41のアッパアーム47は枠状フレーム42から前方に向かって斜め上方に延び、第1のブレース41のロアアーム49は枠状フレーム42から前方に向かって斜め下方に延びている。アッパアーム47とロアアーム49の間で第2のブレース61の後方にはレクチファイヤ100用の設置スペースが確保されている。枠状フレーム42の支持部53a、53bには取付ブラケット51eを介してレクチファイヤ100が取り付けられている。レクチファイヤ100は、オルターネーター(不図示)で生成された交流電力を直流電力に整流している。
【0042】
一般的なカウルブレースは金属ブラケットや金属パイプ等を溶接して形成されるため、カウルブレースの形状が複雑になってブレース内にレクチファイヤの設置スペースを確保することができない。このため、一般的なカウルブレースではブレース外にレクチファイヤが取り付けられている。本実施例のカウルブレース40では第1のブレース41と第2のブレース61が前後に分かれているため、ブレース内に比較的広い設置スペースが確保されて、レクチファイヤ100のような大型な車載部品であってもブレースの中央に取り付けることができる。
【0043】
上記したように、第2のブレース61の底壁部65の左右方向中央が上方に窪んでおり、この底壁部65の窪み70が車体前後方向に延びている。底壁部65の窪み70に対して下方からオーバラップするように、フロントフォーク23にはロアブラケット24を覆うロアブラケットカバー25が取り付けられている。底壁部65の窪み70とロアブラケットカバー25に隙間Cが形成されており、隙間Cによってカウルブレース40の内側に走行風を取り込む導風路が形成されている。これにより、車体前側から流入した走行風が後方にスムーズに流れ易くなり、放熱性が高められてヘッドランプ91やレクチファイヤ100等による熱の籠りが緩和される。
【0044】
レクチファイヤ100は、ヘッドランプコントローラ96、LINコントローラ98、ETCアンテナ97、リレー99a、99bと同様に第2のブレース61の左右方向中央に位置している。一般的な金属ブラケットや金属パイプから成るブレースでは左右方向中央に設置スペースを確保するためにブレースが大型化して重量が大きくなる。しかしながら、本実施例のカウルブレース40が金属製の第1のブレース41と樹脂製の第2のブレース61が組み合わされているため、車載部品に合わせてブレース形状が設計されて、左右方向中央に各種車載部品の設置スペースが確保される。
【0045】
以上、本実施例によれば、車体フレーム10の前部に近い第1のブレース41よりも、車体フレーム10の前部から遠い第2のブレース61が軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成されている。よって、第1、第2のブレース41、61から成るカウルブレース40の前後長が十分に確保されても、カウルブレース40の合計重量が過剰に増加することがない。また、車体フレーム10の振動が第1のブレース41に伝わっても、この振動が第2のブレース61によって減衰されることで車載部品の振動が抑えられる。
【0046】
なお、本実施例では、車載部品として、ポジションランプ、ヘッドランプ、ヘッドランプコントローラ、ETCアンテナ、LINコントローラ、リレーを例示したが、車載部品は特に限定されない。例えば、車載部品が車両コントローラであってもよい。また、車載部品は電装部品に限定されず、車載部品はサイドミラーのステーでもよい。
【0047】
また、本実施例では、第2のブレースの前壁部にポジションランプが取り付けられたが、第2のブレースの前壁部にポジションランプが取り付けられない場合には、車体前方の物体を検知するレーダー等の物体検知器が取り付けられていてもよい。
【0048】
また、本実施例では、第1のブレースにレクチファイヤが取り付けられたが、第2のブレースの背面側にレクチファイヤが取り付けられてもよい。
【0049】
また、本実施例では、ポジションランプが左右方向に長く形成されているが、ポジションランプが左側と右側に分離されていてもよい。
【0050】
また、本実施例では、一対のヘッドランプが板状連結部を介して一体化されているが、一対のヘッドランプが分離されていてもよい。
【0051】
また、本実施例では、第1のブレースが金属材料で形成され、第2のブレースが樹脂材料で形成されたが、第2のブレースが前記第1のブレースよりも軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成されていればよい。したがって、第1のブレースは金属材料以外の材料で形成されてもよいし、第2のブレースは樹脂材料以外の材料で形成されてもよい。
【0052】
また、本実施例の車載部品の支持構造は、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0053】
以上の通り、本実施例の車載部品の支持構造(カウルブレース40)は、車体フレーム(10)の前方に車載部品を支持する車載部品の支持構造であって、車体フレームの前部に取り付けられた第1のブレース(41)と、第1のブレースの前部に取り付けられた第2のブレース(61)と、を備え、第2のブレースに車載部品が取り付けられ、当該第2のブレースが第1のブレースよりも軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成されている。この構成によれば、車体フレームの前部に近い第1のブレースよりも、車体フレームの前部から遠い第2のブレースが軽量かつ振動減衰率の高い材料で形成されている。よって、第1、第2のブレースの前後長が十分に確保されても、第1、第2のブレースの合計重量が過剰に増加することがない。また、車体フレームの振動が第1のブレースに伝わっても、この振動が第2のブレースによって減衰されることで車載部品の振動が抑えられる。
【0054】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、第2のブレースが、左右方向に広がった前壁部(62)と、前壁部の上縁から後方に延びる上壁部(63)と、前壁部の側縁から後方に延びる側壁部(64)と、を有している。この構成によれば、前壁部、上壁部、側壁部によって第2のブレースの剛性が向上されると共に、第2のブレースの背面側に車載部品や配線の収容スペースが確保される。
【0055】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、第2のブレースが、前壁部の下縁から後方に延びる底壁部(65)を有している。この構成によれば、前壁部、上壁部、側壁部、底壁部によって第2のブレースの剛性がさらに向上される。
【0056】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、車載部品が左右方向中央から左右方向外側に向かって後方に延びたランプ(ポジションランプ81)であり、前壁部には、ランプの左右両側が取り付けられる一対の両側前壁部(66)と、ランプの中央が取り付けられる中央前壁部(67)と、が形成され、中央前壁部が一対の両側前壁部よりも前方に突出している。この構成によれば、一対の両側前壁部と中央前壁部によってランプの取付箇所が前後左右に分散される。ランプが左右方向に長く形成されても、3箇所の取付箇所によってランプの揺動が抑えられる。
【0057】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、中央前壁部が筒状に形成されている。この構成によれば、中央取付部が軽量化されると共に中央取付部の剛性が向上される。
【0058】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、中央前壁部が背面側を開放した有底筒状に形成され、中央前壁部の前面にランプの中央が取り付けられる。この構成によれば、中央取付部の剛性がさらに向上される。
【0059】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、第2のブレースが、上壁部の左右両側から上方に延びる一対の延出部(71)を有し、一対の延出部が第1のブレースに取り付けられ、一対の延出部の間に車載部品の設置スペースが形成されている。この構成によれば、車体の重量バランスが左右方向で均一に近づけられて操縦安定性が向上される。
【0060】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、車載部品が通信機器(ETCアンテナ97)である。この構成によれば、車体前側で外部機器と通信可能になると共に通信機器の振動が抑えられる。
【0061】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、車載部品が物体検知器である。この構成によれば、車体前方の物体が検知可能になると共に物体検知器の振動が抑えられる。
【0062】
また、本実施例の車載部品の支持構造において、第1のブレースが金属材料で形成され、第2のブレースが樹脂材料で形成されている。この構成によれば、第1のブレースに金属材料が用いられることで、第1のブレースに作用する荷重に対する強度が高められる。また、第2のブレースに樹脂材料が用いられることで、第2のブレースの設計自由度が向上されている。
【0063】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0064】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0065】
10 :車体フレーム
40 :カウルブレース(車載部品の支持構造)
41 :第1のブレース
61 :第2のブレース
62 :前壁部
63 :上壁部
64 :側壁部
65 :底壁部
66 :両側前壁部
67 :中央前壁部
71 :延出部
81 :ポジションランプ(車載部品、ランプ)
91 :ヘッドランプ(車載部品、ランプ)
96 :ヘッドランプコントローラ(車載部品)
97 :ETCアンテナ(車載部品、通信機器)
98 :LINコントローラ(車載部品)
99a、99b:リレー(車載部品)