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特許7543826樹脂組成物、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20240827BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20240827BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20240827BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/42
C08G59/62
H05K1/03 610L
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020171474
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022063109
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-30
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/196604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
H05K 1/00- 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1000以上の重量平均分子量(Mw)を有し、かつ、350g/eq.以上のエポキシ当量を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と
を含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物が、(A)成分以外のエポキシ樹脂を含まないか又は含み、
(B)成分が、(B-1)活性エステル系硬化剤と、(B-2)活性エステル系硬化剤以外の硬化剤とを含み、
(B-2)成分が、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤を含み、
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、5質量%以上50質量%以下であり、(A)成分以外のエポキシ樹脂の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、質量%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が、下記式(A1):
【化1】
[式(A1)中、Ar1は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基であり、Raは、それぞれ独立して、水素原子、エポキシ基を含有する1価の基又は炭素数1~12のアルキル基であり、少なくとも1個のRaが、エポキシ基を含有する1価の基であり、少なくとも1個のRaが、炭素数1~12のアルキル基であり、Rb及びRcは、それぞれ独立して、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基であり、Rdは、水素原子、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基であり、R1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基であり、nは、2~50の整数であり、mbは、0~6の整数であり、mcは、0~5の整数である。]
で表される化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、下記式(A2):
【化2】
[式(A2)中、Ra及びnは、それぞれ、式(A1)中のRa及びnと同じである。]
で表される化合物を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
nが4以上であり、少なくとも2個のRaが炭素数1~6のアルキル基である、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B-2)成分の含有量が、(B-1)成分の含有量よりも少ない、請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(B-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、3~40質量%である、請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、3~50質量%である、請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに(C)無機充填材を含む、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに(C)無機充填材を含み、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上である、請求項1~6の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
硬化物のガラス転移温度が145℃超である、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
硬化物の誘電正接の値が0.005未満である、請求項1~10の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項1~11の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項14】
請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
【請求項15】
支持体と、当該支持体上に設けられた請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
【請求項16】
請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を備えるプリント配線板。
【請求項17】
請求項16に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層プリント配線板に用いる樹脂材料として、ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物と、無機充填材と、硬化剤とを含む樹脂材料が知られている。このような樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-055890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、低粗度であると共に導体に対する密着性(以下、「導体密着性」)が良好な硬化物をもたらす新規な樹脂組成物;並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成を有する樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)1000以上の重量平均分子量(Mw)を有し、かつ、350g/eq.以上のエポキシ当量を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と
を含み、(B)硬化剤が、(B-1)活性エステル系硬化剤を含む、樹脂組成物。
[2] (A)成分が、下記式(A1):
【化1】
・・・(A1)
[式(A1)中、Ar1は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基であり、Raは、それぞれ独立して、水素原子、エポキシ基を含有する1価の基又は炭素数1~12のアルキル基であり、少なくとも1個のRaが、エポキシ基を含有する1価の基であり、少なくとも1個のRaが、炭素数1~12のアルキル基であり、Rb及びRcは、それぞれ独立して、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基であり、Rdは、水素原子、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基であり、R1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基であり、nは、2~50の整数であり、mbは、0~6の整数であり、mcは、0~5の整数である。]
で表される化合物を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (A)成分が、下記式(A2):
【化2】
・・・(A2)
[式(A2)中、Ra及びnは、それぞれ、式(A1)中のRa及びnと同じである。]
で表される化合物を含む、[2]に記載の樹脂組成物。
[4] nが4以上であり、少なくとも2個のRaが炭素数1~6のアルキル基である、[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5] (B)成分が、(B-2)活性エステル系硬化剤以外の硬化剤を含む、[1]~[4]の何れかに記載の樹脂組成物。
[6] (B-2)成分の含有量が、(B-1)成分の含有量よりも少ない、[5]に記載の樹脂組成物。
[7] (B-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、3~50質量%である、[1]~[6]の何れかに記載の樹脂組成物。
[8] (A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、5~70質量%である、[1]~[7]の何れかに記載の樹脂組成物。
[9] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、3~70質量%である、[1]~[8]の何れかに記載の樹脂組成物。
[10] さらに(C)無機充填材を含む、[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[11] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上である、[10]に記載の樹脂組成物。
[12] 硬化物のガラス転移温度が145℃超である[1]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物。
[13] 硬化物の誘電正接の値が0.005未満である、[1]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物。
[14] プリント配線板の絶縁層用である、[1]~[13]の何れかに記載の樹脂組成物。
[15] [1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[16] [1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
[17] 支持体と、当該支持体上に設けられた[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
[18] [1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を備えるプリント配線板。
[19] [18]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低粗度であると共に導体密着性が良好な硬化物をもたらす新規な樹脂組成物;並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供することができる。
【0008】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0009】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)1000以上の重量平均分子量(Mw)を有し、かつ、350g/eq.以上のエポキシ当量を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(以下、「特定エポキシ樹脂」ともいう)と、(B)硬化剤とを含み、(B)硬化剤が、(B-1)活性エステル系硬化剤を含むことを特徴とする。
【0010】
特定エポキシ樹脂と活性エステル系硬化剤を含む本発明の樹脂組成物は、低粗度であると共に導体密着性が良好な硬化物をもたらす。さらには、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電特性、耐熱性、HAST耐性といった特性においても優れる。したがって、本発明の樹脂組成物は、優れた特性を有する硬化物(絶縁層)の提供を実現するものであり、昨今のプリント配線板及び半導体装置における高機能化の要求に著しく寄与するものである。
【0011】
-(A)特定エポキシ樹脂-
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、特定エポキシ樹脂を含む。特定エポキシ樹脂は、重量平均分子量(Mw)及びエポキシ当量が特定の範囲にあるナフトールアラルキル型エポキシ樹脂である。特定エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0012】
-重量平均分子量(Mw)-
特定エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000以上である。本発明の所期の効果を高める観点から、特定エポキシ樹脂のMwは、好ましくは1100以上、より好ましくは1200以上、さらに好ましくは1300以上又は1400以上である。特定エポキシ樹脂のMwは、その上限は特に限定されないが、通常200000以下であり、150000以下、100000以下又は50000以下とし得る。樹脂組成物の取り扱い性を向上させる観点からは、特定エポキシ樹脂のMwは、好ましくは15000以下であり、10000以下、5000以下又は4000以下とし得る。特定エポキシ樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。特定エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特定エポキシ樹脂を含む市販品に含まれる低分子量成分を除去することによっても調整することができる。
【0013】
-エポキシ当量-
特定エポキシ樹脂のエポキシ当量は、350g/eq.以上である。本発明の所期の効果を高める観点から、特定エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは352g/eq.以上、より好ましくは354g/eq.以上、さらに好ましくは355g/eq.以上又は356g/eq.以上である。特定エポキシ樹脂のエポキシ当量は、その上限は特に限定されないが、通常1000g/eq.以下であり、800g/eq.以下、700g/eq.以下又は500g/eq.以下とし得る。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む化合物の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0014】
本発明の所期の効果を得る観点から、重量平均分子量(Mw)とエポキシ当量の両方が上記の範囲を満たすことが重要である。重量平均分子量(Mw)とエポキシ当量の何れか一方のみが上記の範囲を満たしたとしても本発明の効果は得られない。したがって、特定エポキシ樹脂は、1000以上の重量平均分子量(Mw)を有し、かつ、350g/eq.以上のエポキシ当量を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂である。このように、本発明の樹脂組成物に含まれる特定エポキシ樹脂は、分子量が比較的大きくかつエポキシ当量の下限値が規定されていることを特徴とする。
【0015】
以下、特定エポキシ樹脂の分子構造等について説明する。
【0016】
特定エポキシ樹脂は、分子中に、ナフトールアラルキル構造を1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、さらに好ましくは4つ以上含む。特定エポキシ樹脂が分子中に有するナフトールアラルキル構造の数は、特定エポキシ樹脂が上述した重量平均分子量(Mw)やエポキシ当量を満たす限りにおいて限定されない。
【0017】
特定エポキシ樹脂において、ナフトールアラルキル構造のナフトール水酸基は、その水素原子が、エポキシ基を含有する1価の基、及び、アルキル基からなる群から選択される置換基(以下、「置換基A」ともいう。)で置換されていることが好ましい。ここで、置換基Aとして用いられるエポキシ基を含有する1価の基としては、エポキシアルキル基(アルキル部の炭素数は好ましくは1~6、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1又は2)が挙げられ、中でもグリシジル基が好ましい。また、置換基Aとして用いられるアルキル基は、炭素数が好ましくは1~12、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3、特に好ましくは1(すなわちメチル基)である。置換基Aとして用いられるアルキル基は、置換されていてもよく、その置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0018】
特定エポキシ樹脂に含まれるナフトールアラルキル構造の数の合計を100%としたとき、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、90%以上のナフトール水酸基は、その水素原子が置換基Aで置換されており、全て(100%)のナフトール水酸基の水素原子が置換基Aで置換されていてもよい。ナフトール水酸基と置換基Aの存在当量比(ナフトール水酸基/置換基A)は、1以下が好ましく、0に近いことがより好ましく、さらに好ましくは0である。
【0019】
好適な一実施形態において、特定エポキシ樹脂に含まれる少なくとも1つのナフトールアラルキル構造のナフトール水酸基(の水素原子)がエポキシ基を含有する1価の基で置換されており、少なくとも1つ(好ましくは2つ以上)のナフトールアラルキル構造のナフトール水酸基(の水素原子)が置換されていてもよいアルキル基で置換されている。
【0020】
特定エポキシ樹脂において、ナフトールアラルキル構造のナフトール部を構成するナフタレン環は、水酸基(ナフトール水酸基)や、該水酸基の水素原子が置換基Aで置換された1価の基に加えて、該水酸基等以外の位置に、さらに置換基(以下、「置換基B」ともいう。)を有していてもよいし、有していなくてもよい。斯かる置換基Bとしては、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基等が挙げられる。置換基Bとして用いられるアルキル基やアリール基は、置換されていてもよく、それらの置換基(以下、「置換基C」ともいう。)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0021】
特定エポキシ樹脂において、ナフトールアラルキル構造のアラルキル部は、アリーレン基と2つのアルキレン基とが直接結合してなる。アリーレン基は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基であることが好ましい。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、1-ナフチレン基、2-ナフチレン基等が挙げられる。アリーレン基が有していてもよい置換基は、上記の置換基Bが好適である。アルキレン基としては、炭素数1~12のアルキレン基が好ましい。斯かるアルキレン基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。アルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、上記の置換基Cが好適である。
【0022】
上記ナフトールアラルキル構造のナフトール部について、ナフトール水酸基やその水素原子が置換基Aで置換された1価の基は、ナフタレン環のα位(すなわち、1位、4位、5位又は8位)にあることが好ましい。ナフタレン環がさらに有していてもよい置換基Bは、α位にあるナフトール水酸基やその水素原子が置換基Aで置換された1価の基に対してナフタレン環上の相対的な任意の位置にある。
【0023】
特定エポキシ樹脂、すなわち(A)成分は、上述した重量平均分子量(Mw)及びエポキシ当量の範囲を満たす限りにおいて特に限定されるものではないが、好ましくは、
下記式(A1):
【化3】
・・・(A1)
[式(A1)中、Ar1は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基であり、Raは、それぞれ独立して、水素原子、エポキシ基を含有する1価の基又は炭素数1~6のアルキル基であり、少なくとも1個のRaが、エポキシ基を含有する1価の基であり、少なくとも1個のRaが、炭素数1~12のアルキル基であり、Rb及びRcは、それぞれ独立して、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基であり、Rdは、水素原子、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基であり、R1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基であり、nは、2~50の整数であり、mbは、0~6の整数であり、mcは、0~5の整数である。]
で表される化合物を含む。
【0024】
式(A1)において、Ar1は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基である。炭素数6~20のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、1-ナフチレン基、2-ナフチレン基等が挙げられる。アリーレン基の炭素数は、好ましくは6~14であり、より好ましくは6~10であり、典型的には6(すなわちフェニレン基)である。
【0025】
アリーレン基が有していてもよい置換基は、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~10のアリール基であり、このうち、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0026】
式(A1)において、Raは、それぞれ独立して、水素原子、エポキシ基を含有する1価の基又は炭素数1~12のアルキル基である。ただし、式(A1)において、少なくとも1個のRaが、エポキシ基を含有する1価の基であり、かつ、少なくとも1個のRaが、炭素数1~12のアルキル基である。ここで、Raがエポキシ基を含有する1価の基である場合、斯かる1価の基としては、エポキシアルキル基(アルキル部の炭素数は好ましくは1~6、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1又は2)が挙げられ、中でもグリシジル基が好ましい。Raがアルキル基である場合、その炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1(すなわちメチル基)である。Raがアルキル基である場合、置換されていてもよく、その置換基としては、上記の置換基Cが好適である。式(A1)で表される化合物に含まれる繰り返し単位(ナフトールアラルキル構造)の数n+1を100%としたとき、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、90%以上の数のナフトール水酸基は、その水素原子が置換基Raで置換されており、全て(100%)の数のナフトール水酸基の水素原子が置換基Raで置換されていてもよい。ナフトール水酸基と置換基Raの存在当量比(ナフトール水酸基/置換基Ra)は、1以下が好ましく、0に近いことがより好ましく、さらに好ましくは0である。
【0027】
式(A1)において、Rb及びRcは、それぞれ独立して、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基である。Rb又はRcがエポキシ基を含有する1価の基である場合、斯かる1価の基としては、エポキシアルキルオキシ基(アルキル部の炭素数は好ましくは1~6、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1又は2)が挙げられ、中でもグリシジルオキシ基が好ましい。Rb又はRcがアルキル基である場合、その炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1(すなわちメチル基)である。Rb又はRcがアリール基である場合、その炭素数は、好ましくは6~10(例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基)、より好ましくは6である。Rb及びRcは、好ましくは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。Rb又はRcがアルキル基やアリール基である場合、置換されていてもよく、それらの置換基は、1つであっても複数であってもよく、それぞれ独立して、上記の置換基Cが好適である。なお、Rb及びRcは、ナフタレン環と直接に結合する置換基を意味する。
【0028】
式(A1)において、Rdは、水素原子、エポキシ基を含有する1価の基、炭素数1~12のアルキル基、アリル基又は炭素数6~10のアリール基である。好ましくは、Rdは、Rbが示す基のいずれかと同じであるか又は水素原子である。また、Rdは、好ましくは、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。Rdアルキル基やアリール基である場合、置換されていてもよく、その置換基は、1つであっても複数であってもよく、上記の置換基Cが好適である。なお、Rdは、ナフタレン環と直接に結合する置換基を意味する。
【0029】
式(A1)において、R1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。複数のR1がいずれも水素原子であることが好ましい。R1がアルキル基である場合、その炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1である。2つのR1は結合する炭素原子とともに、炭素数1~3のアルキレン基を構成していることが好ましく、この場合の具体例は、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-のいずれかである。R1がアルキル基である場合、置換されていてもよく、その置換基は、1つであっても複数であってもよく、それぞれ独立して、上記の置換基Cが好適である。
【0030】
式(A1)において、nは、2~50の整数である。nは、(A)成分全体としてみた場合に上述した重量平均分子量(Mw)の範囲を満たす限りにおいて限定されないが、耐熱性に優れる硬化物をもたらす観点からは、好ましくは2以上の整数であり、より好ましくは3以上の整数であり、さらに好ましくは4以上の整数である。一実施形態において、nが4以上であり、式(A1)において少なくとも2個のRaが炭素数1~6のアルキル基である。
【0031】
式(A1)において、mbは、0~6の整数である。mbは、好ましくは0~3の整数である。式(A1)において、mcは、0~5の整数である。mcは、好ましくは0~2の整数である。mbとmcの和は、好ましくは7以下又は6以下であり、より好ましくは0~5の範囲内にあり、さらに好ましくは0~4の範囲内にある。一実施形態において、mb及びmcの双方が0であり、かつ、Rdが水素原子である。
【0032】
より好ましくは、(A)成分は、下記式(A2):
【化4】
・・・(A2)
[式(A2)中、Ra及びnは、それぞれ、式(A1)中のRa及びnと同じである。]
で表される化合物を含む。一実施形態において、nが4以上であり、式(A2)において少なくとも2個のRaが炭素数1~6のアルキル基である。
【0033】
特定エポキシ樹脂は、例えば公知の方法に準じて製造することが可能である。例えば、特開平08-073570号公報等に記載されている方法によってフェノール性水酸基を有する材料としてナフトールを用いてナフトールアラルキル樹脂を製造し、さらに必要に応じて、ナフタレン環上の水酸基の一部を特許第4465257公報に記載の方法にしたがってアルコキシ化し、又は、重量平均分子量が1000以上のナフトールアラルキル樹脂の市販品(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製「SN-4110V」)を用い、残った水酸基の一部又は全部をグリシジル化し、必要に応じて精製を行うことによって製造することができる。特定エポキシ樹脂として、上記式(A1)又は上記式(A2)で表される化合物を含む市販品を用いてもよい。そのような市販品としては、日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100V」(メトキシ基含有ナフトールアラルキル樹脂、エポキシ当量:360g/eq.、重量均分子量(Mw):1600)が挙げられる。
【0034】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下又は50質量%以下である。したがって、好適な一実施形態において、(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、5~70質量%である。
【0035】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは7.5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下又は75質量%以下である。樹脂組成物中の樹脂成分とは、樹脂組成物中の不揮発成分のうち(C)無機充填材を除いた成分を表す。
【0036】
-(B)硬化剤-
本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、硬化剤を含み、硬化剤は、少なくとも(B-1)活性エステル系硬化剤を含む。(B)硬化剤は、通常、(A)成分及び(A)成分以外のエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有し得る。硬化剤は、活性エステル系硬化剤に加えて、(B-2)活性エステル系硬化剤以外の硬化剤を含んでいてもよい。
【0037】
--(B-1)活性エステル系硬化剤--
本発明の樹脂組成物は、(B-1)活性エステル系硬化剤を含有する。通常、(B-1)活性エステル系硬化剤は、(B)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有し得る。(B-1)活性エステル系硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(B-1)活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応性官能基として反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性に優れる硬化物をもたらす観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0039】
具体的には、(B-1)活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、及びナフタレン型活性エステル系硬化剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0040】
(B-1)活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」、(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」(DIC社製)、;りん含有活性エステル系硬化剤として、「EXB9401」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0041】
(B-1)活性エステル系硬化剤の反応性官能基の当量は、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~450g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。反応性官能基の当量は、反応性官能基1当量あたりの化合物の質量である。
【0042】
樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、誘電特性に優れる硬化物をもたらす観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、上限は、硬化対象のエポキシ樹脂が有するエポキシ基の合計数に依存するが、例えば50質量%以下、40質量%以下又は30質量%以下とし得る。したがって、好適な一実施形態において、(B-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、3~50質量%である。
【0043】
(B-1)成分の(A)成分に対する質量比((B-1)成分/(A)成分)の百分率は、官能基の合計数に依存するが、例えば、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上、75質量%以下、70質量%以下又は65質量%以下とし得る。
【0044】
(B-1)成分の(B)成分に対する質量比((B-1)成分/(B)成分)の百分率は、誘電特性に優れる硬化物をもたらす観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、上限は、100質量%であり、例えば98質量%以下、96質量%以下又は94質量%以下とし得る。
【0045】
--(B-2)活性エステル系硬化剤以外の硬化剤--
(B-2)活性エステル系硬化剤以外の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、(B-2)成分は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤のいずれか1種類以上を含むことが好ましく、フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤のいずれか1種類以上を含むことがより好ましく、フェノール系硬化剤を含むことが特に好ましい。(B-2)成分は、1種類を単独で用いてもよく、又は2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0046】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0047】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0048】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0049】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0050】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0051】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」等が挙げられる。
【0052】
樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、誘電特性に優れる硬化物をもたらす観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、下限は、0質量%(すなわち不含)であり、特に限定されるものではないが、2質量%以上、4質量%以上又は6質量%以上とし得る。(B-2)成分の含有量が、(B-1)成分の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0053】
(B)成分が有する反応性官能基の合計数Nの、(A)成分が有するエポキシ基の合計数Nに対する比(N:N)の値は、特定の範囲にあることが好ましい。(B)成分が有する反応性官能基とは、通常、エポキシ基と反応し得る基を指し、加熱等によりエポキシ基と反応し得る基を生じる基を包含する。よって、反応性官能基には、(B-1)成分が有する活性エステル基が包含される。前記の比(N:N)の値は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.4以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、特に好ましくは80以下である。「合計数N」とは、樹脂組成物中に存在する(B)成分の不揮発成分の質量を、反応性官能基の当量で除した値を、全て合計した値である。前記の比(N:N)の値が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。したがって、好適な一実施形態において、(B)成分が有する反応性官能基の合計数の、(A)成分が有するエポキシ基の合計数に対する比の値が、0.2~100である。
【0054】
(B)成分の(A)成分に対する質量比((B)成分/(A)成分)の百分率は、官能基の合計数に依存するが、例えば、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上、100質量%以下、90質量%以下又は80質量%以下とし得る。
【0055】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、上限は、硬化対象のエポキシ樹脂が有するエポキシ基の合計数に依存するが、例えば70質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下とし得る。したがって、好適な一実施形態において、(B-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、3~70質量%である。
【0056】
-(C)無機充填材-
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、無機充填材をさらに含んでもよい。また、樹脂組成物が(C)成分を含むことで、耐熱性(例えば、ガラス転移温度)に優れる硬化物をもたらすことができる。
【0057】
(C)成分としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(C)成分の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0059】
(C)成分の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.7μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。(C)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0060】
(C)成分の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、3m/g以上又は5m/g以上である。該比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m/g以下、より好ましくは80m/g以下、さらに好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。(C)成分の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM-1210」)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0061】
(C)成分は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(C)成分の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、酸無水物系シランカップリング剤等のシランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の非シランカップリング-アルコキシシラン化合物;シラザン化合物等が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0063】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、好ましくは0.2~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
【0064】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。(C)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0065】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、本発明の所期の効果を高める観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上又は55質量%以上である。(C)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではなく、(A)成分及び(B)成分の含有量に応じて定まる。したがって、好適な一実施形態において、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上である。
【0066】
-(D)熱可塑性樹脂-
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として、熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。
【0067】
(D)成分の例としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、(D)成分は、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリカーボネート樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、フェノキシ樹脂から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
【0068】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0069】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0070】
ポリイミド樹脂は、イミド構造を有する樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミン化合物と酸無水物とのイミド化反応により得ることができる。ポリイミド樹脂は市販品を用いてよく、例えば、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0071】
ポリカーボネート樹脂は、カーボネート構造を有する樹脂である。このような樹脂としては、以下に述べる反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、及びエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
【0072】
ポリカーボネート樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、「FPC2136」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0073】
(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、機械特性により一層優れる硬化物を得る観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、さらに好ましくは10000以上である。該Mwの上限は、特に限定されないが、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。(D)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0074】
樹脂組成物が(D)成分を含む場合、樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、機械特性により一層優れる硬化物を得る観点からは、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。(D)成分の含有量の上限は、本発明の効果を過度に阻害しない限り特に限定されないが、例えば、60質量%以下、50質量%以下又は45質量%以下とし得る。一実施形態において、(D)成分の含有量は、(A)成分の含有量及び(B)成分の含有量の合計よりも少ない。
【0075】
-(E)硬化促進剤-
本発明の樹脂組成物は、(E)成分として、硬化促進剤をさらに含んでもよい。(E)樹脂組成物が硬化促進剤を含有していることにより、硬化時間等を効率的に調整することができる。(E)成分としての硬化促進剤としては、アミン系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、その典型例は、アミン系硬化促進剤及び過酸化物系硬化促進剤である。
【0076】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7,4-ジメチルアミノピリジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。アミン系硬化促進剤の市販品としては、例えば、和光純薬社製「DMAP」等が挙げられる。
【0077】
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0078】
過酸化物系硬化促進剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチル(登録商標)C」、「パーブチル(登録商標)A」、「パーブチル(登録商標)P」、「パーブチル(登録商標)L」、「パーブチル(登録商標)O」、「パーブチル(登録商標)ND」、「パーブチル(登録商標)Z」、「パーヘキシル(登録商標)D」、「パークミル(登録商標)P」、「パークミル(登録商標)D」等が挙げられる。
【0079】
樹脂組成物が(E)成分を含む場合、(E)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0080】
-その他成分-
本発明において、樹脂組成物は、本発明の所期の効果を過度に阻害しない量で、さらに、(A)成分の特定エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含んでもよい。
【0081】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とがある。本発明の樹脂シート用の樹脂組成物は、液状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでもよい。
【0083】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0084】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0085】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む化合物の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0086】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0087】
樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、1質量%以上又は1.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下又は3質量%以下である。
【0088】
樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0089】
樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
本発明において、樹脂組成物は、例えば、任意の調製容器に(A)成分及び(B-1)成分、また、必要に応じて(B-2)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(A)成分以外のエポキシ樹脂、その他の添加剤や有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0091】
先述のとおり、(A)成分及び(B-1)成分を組み合わせて含む本発明の樹脂組成物は、低粗度であると共に導体密着性が良好な硬化物をもたらす新規な樹脂組成物を実現する。また、本発明の樹脂組成物は、低粗度及び導体密着性をはじめ、誘電特性、耐熱性、HAST耐性といった特性に優れる硬化物を実現することも可能である。
【0092】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、導体密着性が良好であるという特徴を呈する。例えば、後述する<導体密着性の評価>欄に記載の方法で測定しためっきピール強度は、0.40kgf/cm以上、0.42kgf/cm以上、又は0.44kgf/cm以上となり得る。上限は、樹脂組成物の組成等に応じておのずと定まる。
【0093】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、低粗度であるという特徴を呈する。例えば、後述する<低粗度性の評価>欄に記載の方法で測定した算術平均粗さ(Ra)は、150nm未満、100nm以下、80nm以下、60nm以下となり得る。下限は、樹脂組成物の組成等に応じておのずと定まる。
【0094】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電特性に優れるという特徴を呈する傾向にある。例えば、後述する<誘電特性の評価>欄に記載の方法で測定した誘電正接(Df)の値は、0.0050未満、0.0045以下、又は0.0042以下となり得る。したがって、好適な一実施形態では、硬化物の誘電正接の値が0.005未満である樹脂組成物が提供される。
【0095】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、耐熱性に優れるという特徴を呈する傾向にある。例えば、後述する<耐熱性の評価>欄に記載の方法で測定したガラス転移温度(TMA法)は、145℃超、145℃以上、150℃以上、155℃以上又は157℃以上となり得る。上限は、樹脂組成物の組成等に応じておのずと定まる。したがって、好適な一実施形態では、硬化物のガラス転移温度が145℃超である樹脂組成物が提供される。より好適な一実施形態では、硬化物の誘電正接の値が0.005未満であり、かつ、硬化物のガラス転移温度が145℃超である樹脂組成物が提供される。
【0096】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、HAST耐性に優れるという特徴を呈する傾向にある。例えば、後述する<HAST耐性の評価>欄に記載の方法で測定したHAST耐性前後の銅箔ピール強度の差(P-P)は、0.50kgf/cm未満、0.45kgf/cm以下又は0.42kgf/cm以下であり得る。例えば、後述する<HAST耐性の評価>欄に記載の方法で測定したHAST耐性後の銅箔ピール強度Pは、0.10kgf/cm以上、0.15kgf/cm以上、0.20kgf/cm以上又は0.25kgf/cm以上であり得る。
【0097】
本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶層間縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性の良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、その上に導体層(再配線層を含む)が設けられる絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はさらに、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
【0098】
[樹脂シート]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0099】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0100】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物の層(以下、単に「樹脂組成物層」という。)とを含んでなり、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0101】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0102】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0103】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0104】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0105】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0106】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0107】
支持体としてはまた、薄い金属箔に剥離が可能な支持基材を張り合わせた支持基材付き金属箔を用いてよい。一実施形態において、支持基材付き金属箔は、支持基材と、該支持基材上に設けられた剥離層と、該剥離層上に設けられた金属箔とを含む。支持体として支持基材付き金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、金属箔上に設けられる。
【0108】
支持基材付き金属箔において、支持基材の材質は、特に限定されないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、銅合金箔等が挙げられる。支持基材として、銅箔を用いる場合、電解銅箔、圧延銅箔であってよい。また、剥離層は、支持基材から金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。
【0109】
支持基材付き金属箔において、金属箔の材質としては、例えば、銅箔、銅合金箔が好ましい。
【0110】
支持基材付き金属箔において、支持基材の厚さは、特に限定されないが、10μm~150μmの範囲が好ましく、10μm~100μmの範囲がより好ましい。また、金属箔の厚さは、例えば、0.1μm~10μmの範囲としてよい。
【0111】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0112】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0113】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0115】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0116】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0117】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
【0118】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0119】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0120】
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができる。
【0121】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む。
【0122】
プリント配線板は、例えば、上記の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0123】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0124】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスしてもよく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスしてもよい。
【0125】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0126】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0127】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0128】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。なお、支持体として、金属箔を使用した場合、支持体を剥離することなく、該金属箔を用いて導体層を形成してよい。また、支持体として、支持基材付き金属箔を使用した場合、支持基材(と剥離層)を剥離すればよい。そして、金属箔を用いて導体層を形成することができる。
【0129】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0130】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~250℃、より好ましくは150℃~240℃、さらに好ましくは180℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~240分間、より好ましくは10分間~150分間、さらに好ましくは15分間~120分間とすることができる。
【0131】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0132】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0133】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0134】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0135】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0136】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0137】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0138】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0139】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0140】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0141】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0142】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0143】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0144】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0145】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0146】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0147】
あるいは、樹脂シートの支持体として、金属箔や、支持基材付き金属箔を使用した場合、該金属箔を用いて導体層を形成してよいことは先述のとおりである。
【0148】
また、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージを製造するに際して、再配線層を形成するための絶縁層を形成するための樹脂組成物(再配線層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。樹脂組成物(樹脂シート)を使用して半導体チップパッケージを製造する技術は、当分野において広く知られており、本発明の樹脂組成物や樹脂シートは、何れの方法・技術にも適用可能である。
【0149】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板又は半導体パッケージを用いて製造することができる。
【0150】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0151】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0152】
-実施例1及び2並びに比較例1及び2-
以下、(A)成分及び(B)成分から選択された成分を含む樹脂組成物の態様について、実施例及び比較例を例示的に示す。
【0153】
[実施例1]
(1) 樹脂組成物の調製
(B-1)成分としての活性エステル系硬化剤b1a(DIC社製「HPC-8000L-65TM」(ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤)、不揮発成分:65質量%、官能基当量:281g/eq.)40部、(B-2)成分としての活性エステル系硬化剤以外の硬化剤b2(DIC社製「LA-3018-50P」(トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤)、官能基当量(水酸基当量):151g/eq.、不揮発成分:50質量%(2-メトキシプロパノール溶液))5部、(D)成分としての熱可塑性樹脂d(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」(フェノキシ樹脂)、不揮発成分:30質量%(シクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液))5部、(A)成分としてのナフトールアラルキル型エポキシ樹脂a1(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-4100V」(ナフトールアラルキル樹脂)、エポキシ当量:360g/eq.、重量均分子量(Mw):1600)50部、(C)成分としての無機充填材c(信越化学工業社製アミン系シランカップリング剤「KBM573」で表面処理されたアドマテックス社製の球形シリカ「SO-C2」(平均粒径:0.5μm、比表面積:5.8m/g))210部、(E)成分としての硬化促進剤e(和光純薬社製「DMAP」(4-ジメチルアミノピリジン;アミン系硬化促進剤))0.1部を、ミキサーを用いて均一に分散した。これにより、(A)~(E)成分を含有する樹脂組成物(不揮発成分:93.6質量%)を得た。
【0154】
(2) 樹脂シートの作製
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートAを得た。
(3) 評価
樹脂シートAを用いて後述する評価を行った。
【0155】
[実施例2]
1)(B-1)成分としての活性エステル系硬化剤b1a40部に代えて、活性エステル系硬化剤b1b(DIC社製「HPC-8150-62T」(ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤)、不揮発成分:62質量%(トルエン溶液)、官能基当量:233g/eq.)35部を用い、かつ、2)(C)成分としての無機充填材cの配合量を210部から200部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートAを作製し、かつ、樹脂シートAを用いて評価を行った。
【0156】
[比較例1]
1)(A)成分としてのナフトールアラルキル型エポキシ樹脂a1に代えて、(A’)成分としてのナフトールアラルキル型エポキシ樹脂a’(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」(ナフトールアラルキル樹脂)、エポキシ当量:325g/eq.、重量均分子量(Mw):660)50部を用い、2)(B-1)成分としての活性エステル系硬化剤b1aの配合量を40部から45部に変更し、かつ、3)(C)成分としての無機充填材cの配合量を210部から220部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートAを作製し、かつ、樹脂シートAを用いて評価を行った。
【0157】
[比較例2]
1)(B-1)成分としての活性エステル系硬化剤b1a45部に代えて、活性エステル系硬化剤b1b40部を用い、かつ、2)(C)成分としての無機充填材cの配合量を220部から210部に変更した以外は、比較例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートAを作製し、かつ、樹脂シートAを用いて評価を行った。
【0158】
続いて、各種測定方法・評価方法について説明する。
【0159】
<誘電特性の評価-誘電正接(Df)の測定->
実施例及び比較例で得られた樹脂シートAを190℃のオーブンで90分硬化した。オーブンから取り出した樹脂シートAから支持体を剥がすことにより、樹脂組成物層の硬化物を得た。その硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価用硬化物とした。
【0160】
各評価用硬化物について、アジレントテクノロジーズ(AgilentTechnologies)社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、誘電正接の値(Df値)を測定した。2本の試験片にて測定を実施し、その平均を算出した。
【0161】
<耐熱性の評価-ガラス転移点(Tg)の測定->
実施例及び比較例で得られた樹脂シートAを190℃のオーブンで90分硬化し、更に支持体から剥がすことで硬化フィルムを得た。この硬化フィルムを長さ20mm、幅6mmに切り出し評価サンプルとした。各評価サンプルについてリガク社製TMA装置を用い25℃から250℃まで5℃/分の昇温速度でガラス転移温度(Tg)を測定した。同一の試験片について2回測定を行い、2回目の値を記録した。
【0162】
<低粗度性の評価-算術平均粗さ(Ra)の測定->
(1)内層基板の用意
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0163】
(2)樹脂シートAのラミネート
バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、樹脂シートAを内層基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0164】
(3)樹脂組成物層の熱硬化
その後、樹脂シートAがラミネートされた内層基板を、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層、内層基板及び絶縁層をこの順に有する硬化基板を得た。
【0165】
(4)粗化処理
硬化基板に、粗化処理としてのデスミア処理を行った。デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
【0166】
(湿式デスミア処理)
硬化基板を、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間浸漬した。次いで、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。
【0167】
(5)粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)の測定
粗化処理後の硬化基板(以下、「硬化基板B」ともいう)の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)を、非接触型表面粗さ計(ブルカー社製WYKO NT3300)を用いて、VSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めた。それぞれ10点の平均値を求めることにより測定した。
【0168】
<導体密着性の評価-めっきピール強度の測定->
(1)銅めっき導体層の形成
セミアディティブ法に従って、表面粗度の評価に際し得られた硬化基板Bの絶縁層の粗化面に導体層を形成した。すなわち、硬化基板Bを、PdClを含む無電解めっき液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成した。その後、硫酸銅電解めっきを行い、厚さ25μmの導体層を形成し、アニール処理を190℃にて60分間行った。得られた基板を「評価基板C」と称する。
【0169】
(2)めっきピール強度の測定
評価基板Cのめっきピール強度の測定は、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。具体的には、評価基板Cの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、剥離強度(めっきピール強度)を求めた。測定には、引っ張り試験機(TSE社製「AC-50C-SL」)を使用した。
【0170】
<HAST耐性の評価-HAST試験前後の銅めっきピール強度の測定->
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱業社製「3EC-III」(電界銅箔、35μm)の光沢面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、防錆処理(CL8300)を施した。この銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
【0171】
(2)銅箔の積層と絶縁層形成
試験例1と同様の方法で樹脂シートAがラミネートされた内層基板を用意した。その後、当該基板から、両面にある支持体を剥離し、双方の樹脂組成物層を露出させた。それらの樹脂組成物層上に、「3EC-III」のCZ銅箔の処理面を、試験例1の樹脂シートAのラミネートと同様の条件で、積層した。そして、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、サンプルを作製した。
【0172】
(3)銅箔引き剥がし強さ(下地密着性)の測定
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の一端を剥がしてつかみ具((株)TSE製「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm(N/cm)]をJIS C6481に準拠して測定した。
【0173】
<HAST耐性の評価-HAST試験前後の銅箔ピール強度の測定->
(1)サンプルの作製
電解銅箔(三井金属鉱業社製「3EC-III」、厚さ35μm)の光沢面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ-8101」)に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、次いで、防錆溶液(メック社製「CL8300」)を用いて防錆処理を施した。得られた銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
【0174】
内層回路基板として、内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を準備した。次いで、樹脂シートAを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。積層後、支持体を剥離した。露出した樹脂組成物層上に、CZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で、積層した。その後、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、CZ銅箔/絶縁層/内層回路基板/絶縁層/CZ銅箔の構造を有するサンプルを作製した。
【0175】
(2)高温高湿環境試験(HAST)前の銅箔ピール強度Pの測定
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の長さ方向にある一端を剥がしてつかみ具(TSE社製「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。こうして測定された荷重を、「銅箔ピール強度P」と称する。
【0176】
(3)高温高湿環境試験(HAST)後の銅箔ピール強度Pの測定
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みを入れ、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの条件で100時間の高温高湿環境試験を実施した。その後、銅箔の長さ方向にある一端を剥がしてつかみ具(TSE社製「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。こうして測定された荷重を、「銅箔ピール強度P」と称する。
【0177】
実施例1及び2並びに比較例1及び2の結果を表1に示す。
【0178】
【表1】