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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240827BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240827BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/81
A61K8/34
A61Q19/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020171704
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063430
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】内之宮 友美
(72)【発明者】
【氏名】松藤 孝志
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227400(JP,A)
【文献】特開2009-149624(JP,A)
【文献】特開2006-219432(JP,A)
【文献】Cream (Record ID: 7523645),Mintel GNPD [online], 2020.04, [検索日:2024.07.12], Internet <URL:https://www.gnpd.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有することを特徴とする皮膚化粧料。
(A)炭素数3~6の2~4価の多価アルコール:1~40質量%
(B)クワから得られる抽出物:0.0001~0.03質量%
(C)下記の式(I)で表される構成単位と下記の式(II)で表される構成単位とを含み、両構成単位のモル比(I/II)が90/10~30/70である(メタ)アクリル系共重合体:0.00025~0.5質量%
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R2は-(CH-を表し、nは1~4の整数である。*は他の構成単位との結合部位を表す。)
【化2】
(式中、R3は水素原子またはメチル基を表し、L1はフェニレン、シクロヘキシレン、-C(=O)-O-、-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-、または-O-C(=O)-O-を表し、L2は炭素数10~22の直鎖または分岐アルキル基を表す。*は他の構成単位との結合部位を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿効果に優れ、べたつきを感じ難く、シワの改善効果があり、パウダーを肌に重ね付けた場合でも粉浮きがし難い皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
美しい肌を保つためには皮膚に一定の水分保持力が必要不可欠であるが、加齢や紫外線の影響により、真皮層のコラーゲンやエラスチンなどが変性するとともに水分保持力が低下して、シワが目立つようになる。このような症状を緩和・改善するためにスキンケア化粧料による保湿が必要となる。保湿を行うためのスキンケア化粧料には、様々な保湿剤が配合されるが、水分保持力の高い保湿成分として、多価アルコール類やヒアルロン酸、その類縁体が知られている。しかし、ヒアルロン酸を高配合したスキンケア化粧料を使用すると、べたつきを感じるという問題点があった。
【0003】
これまでに、保湿効果を有しつつ、べたつき感を抑えるために、リン脂質誘導体、加水分解ヒアルロン酸、ビルベリー抽出物、非イオン性界面活性剤、および特定の共重合体を含有してなる皮膚用化粧料(特許文献1)、特定のアルギニン誘導体、および水溶性高分子化合物を含有する皮膚化粧料(特許文献2)などが提案されている。しかし、これら化粧料ではシワ改善に関する効果はまだ十分なものではなかった。
【0004】
また、加齢とともに乾燥が進みシワが増えると、メイクアップを施す場合、特にパウダーファンデーションやフェイスパウダー等のパウダーを使用した場合に密着感が足りず、よれて目立ってしまい、粉っぽい仕上がりになってしまうことがある。特に、時間の経過とともに皮脂の分泌や擦れによって崩れた化粧を直す際に、すでに塗布してあるメイクアップの上からパウダーを重ね付けた場合に、この粉っぽさが際立つ傾向にある。
【0005】
そこで、シワの改善を目的として、特許文献3には、特定のホスホリルコリン誘導体、サーファクチンナトリウム、および多価アルコールを配合したスキンケア用化粧料が開示されている。この化粧料は、保湿効果に優れながら、べたつき感を抑え、パウダー塗布後の粉っぽさの抑制効果はあるが、シワ改善効果が不十分であり、パウダーを重ね付けた際の粉っぽさについては改善の余地があった。また、特許文献4には、シワ抑制効果等を目的として、ワレモコウ抽出液から得られる成分、多価アルコール、ヒアルロン酸、および特定の重合体を含有する皮膚化粧料が提案されているが、パウダーを重ね付けた際の粉浮きについては改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-149624号公報
【文献】特開2012-012311号公報
【文献】特開2018-199634号公報
【文献】特開2014-001165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、保湿効果に優れ、べたつきを感じ難く、シワの改善効果があり、パウダーを肌に重ね付けた場合でも粉浮きがし難い皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねたところ、所定の多価アルコールと、クワから得られる抽出物、および特定の共重合体を組み合わせて皮膚化粧料に含有させることにより、保湿効果に優れ、べたつきを感じ難く、シワの改善効果があり、パウダーを肌に重ね付けした場合でも粉浮きがし難いことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の皮膚化粧料は以下のとおりである。
【0009】
以下の成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有することを特徴とする皮膚化粧料。
(A)炭素数3~6の2~4価の多価アルコール:1~40質量%
(B)クワから得られる抽出物:0.0001~0.03質量%
(C)下記の式(I)で表される構成単位と下記の式(II)で表される構成単位とを含み、両構成単位のモル比(I/II)が90/10~30/70である(メタ)アクリル系共重合体:0.00025~0.5質量%
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R2は-(CH-を表し、nは1~4の整数である。*は他の構成単位との結合部位を表す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R3は水素原子またはメチル基を表し、L1はフェニレン、シクロヘキシレン、-C(=O)-O-、-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-、または-O-C(=O)-O-を表し、L2は炭素数10~22の直鎖または分岐アルキル基を表す。*は他の構成単位との結合部位を表す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の皮膚化粧料は、保湿効果に優れ、べたつきを感じにくく、シワの改善効果があり、パウダーを肌に重ね付けた場合でも粉浮きがし難いという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
また、濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
さらに、「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルまたはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートをそれぞれ表す。
【0016】
本発明の皮膚化粧料は、(A)炭素数3~6の2~4価の多価アルコール、(B)クワから得られる抽出物、および(C)所定の(メタ)アクリル系共重合体を含有する。以下、各成分について説明する。
【0017】
〔成分(A):炭素数3~6の2~4価の多価アルコール〕
成分(A)は、炭素数が3~6であり、かつ価数が2~4価の多価アルコールである。かかる多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ヘキシレングリコール、イソプレングリコールが挙げられる。これらの中で好ましくは、グリセリン、ペンチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングルコール、1,3-プロパンジオール、ジグリセリンであり、グリセリンがより好ましい。成分(A)として、上記多価アルコールから選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
成分(A)の配合量は、皮膚化粧料の合計質量を100質量%としたとき、1~40質量%であり、好ましくは5~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。成分(A)の配合量が上記範囲内であると、保湿効果、べたつき感のなさ、シワ改善効果の点で好適となる。
【0019】
〔成分(B):クワから得られる抽出物〕
成分(B)はクワから得られる抽出物である。本発明で用いられる「クワ」とは、クワ科クワ属(Morus)に属する植物を意味し、例えば、マグワ(Morus alba L.)、シマグワ(M
. australis Poir)、ヤマグワ(M. bombycis Koidz.)、ログワ(M. latifolia(Bur.)Poir.
)、モウコグワ(M. mongolica(Bur.)Schneid.)、クロミグワ(M. nigraL.)、アカミグワ(M
. rubra L.)などが挙げられる。なかでもマグワ(M. alba L.)が好ましい。
【0020】
本発明において抽出に用いられるクワの使用部位は特に限定されないが、根皮を好適に使用することができる。根皮としては、例えば、周皮を含む根皮、周皮、周皮を取り除いた根皮(ソウハクヒ)等が挙げられ、特に制限はないが、周皮を含む根皮が好ましい。
【0021】
本発明において、クワの抽出に用いられる溶媒は、極性溶媒であり、例えば、水および親水性有機溶媒が挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類;低級アルコール、多価アルコール等のアルコール類などが挙げられる。中でも安全性および抽出効率の良さというの観点から、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましく、水、エタノール、1,3-ブチレングリコールがより好ましい。
本発明においては、前記抽出溶媒は1種を選択して単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。溶媒での抽出処理は、クワ100質量部に対して、例えば抽出溶媒が水である場合には、通常100~2000質量部、好ましくは200~1000質量部で抽出することができる。同様に、抽出溶媒が低級アルコールである場合には、通常100~5000質量部、好ましくは500~2000質量部で抽出することができる。
【0022】
抽出温度は、使用する抽出溶媒の種類に応じて適宜決定される。例えば抽出溶媒が水である場合には、抽出温度は通常20℃~120℃程度であり、抽出溶媒が低級アルコールである場合には、通常30℃~80℃程度である。
抽出方法としては一般的な方法が採用され、例えば、未乾燥のクワあるいは乾燥させたクワの各部位に抽出溶媒を加えて浸漬し、場合により撹拌等を行なった後、ろ過することで抽出物を得ることができる。クワを乾燥させる方法としては、例えば、風乾、温乾、凍結乾燥などが挙げられる。クワは抽出効率の観点から適当に細切したものでもよい。
抽出時間(浸漬時間)は、通常1時間以上であり、3時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましい。抽出時間の上限は、抽出効率の観点から、通常10時間以下であり、8時間以下が好ましい。
抽出する回数は特に限定されないが、前記量の水または親水性有機溶媒によって1回抽出を行なうことが好ましい。
【0023】
得られた抽出物は、そのまま用いてもよく、あるいは溶媒留去により濃縮し、必要に応じて、カラムクロマトグラフィーや溶媒分画等の処理により精製し、さらに乾燥等を行って用いてもよい。
この抽出物は、取扱い易くするために、水;グリセリン、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールで希釈したものを用いることができる。
この抽出物は、市販のものを用いても良い。市販品の例としては、「ソウハクヒエキス(日油株式会社製)」が挙げられる。この製品は、マグワの周皮を取り除いた根皮(ソウハクヒ)から、抽出溶媒としてエタノールを使用して、抽出・乾燥して調製したエキスである。
【0024】
成分(B)の配合量は、皮膚化粧料の合計質量を100質量%としたとき、0.0001~0.03質量%であり、好ましくは0.0005~0.02質量%であり、より好ましくは0.001~0.01質量%である。成分(B)の配合量が上記範囲内であると、べたつきを感じ難く、シワの改善効果があり、パウダーを肌に重ね付けた場合でも粉浮きがし難い点で好適となる。
なお、成分(B)の配合量は、抽出物または抽出エキスの量である。
【0025】
〔成分(C):(メタ)アクリル系共重合体〕
成分(C)は下記の式(I)で表される構成単位と下記の式(II)で表される構成単位とを含む(メタ)アクリル系共重合体である。
【0026】
【化1】
【0027】
式(I)において、R1は水素原子またはメチル基を表し、当該共重合体の安定性の点からメチル基が好ましい。R2は-(CHn-を表し、nは1~4の整数である。すなわち、R2は、-(CH)-、-(CH-、-(CH3-、-(CH4-のいずれかであり、入手のし易さから-(CH-が好ましい。
【0028】
式(I)の構成単位を形成する単量体の具体例としては、例えば、グリセロール-1-メタクリロイルオキシエチレンウレタン、グリセロール-1-メタクリロイルオキシプロピレンウレタン等が挙げられる。合成のし易さから、グリセロール-1-メタクリロイルオキシエチレンウレタンが好ましい。
【0029】
式(I)の構成単位を形成する単量体は公知の方法で合成することができる。具体的方法としては、例えば、環状ケタールと(メタ)アクリロイルオキシアルキレンイソシアネートとをウレタン化反応させた後、ウレタン化反応用触媒の存在下に、水含有溶媒中で加水開環反応させる方法等が挙げられる。
【0030】
【化2】
【0031】
式(II)において、R3は水素原子またはメチル基を表し、当該共重合体の安定性の点から、メチル基が好ましい。L1はフェニレン、シクロヘキシレン、-C(=O)-O-、-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-、または-O-C(=O)-O-を表し、中でも、-O-が好ましい。L2は炭素数10~22、好ましくは15~20の直鎖または分岐アルキル基を表す。L2としては、例えば、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0032】
式(II)の構成単位を形成する単量体の具体例としては、例えば、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、ステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
成分(C)における式(I)の構成単位と式(II)の構成単位とのモル比(I/II)は90/10~30/70である。この範囲に収まらずに、式(I)の構成単位の割合が多いと、べたつき感が強くなることがあり、式(II)の構成単位の割合が多いと、水への溶解性が低下して安定な組成物が得られ難くなることがある。以上の点から、当該モル比(I/II)は80/20~40/60が好ましく、より好ましくは70/30~50/50である。
【0034】
成分(C)の(メタ)アクリル系共重合体は、式(I)の構成単位および式(II)の構成単位以外に、他の構成単位を含むことができる。そのような他の構成単位を形成する単量体としては、例えば、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。成分(C)の(メタ)アクリル系共重合体が式(I)の構成単位および式(II)の構成単位以外の他の構成単位を含む場合、共重合体における他の構成単位の含有量は、式(I)の構成単位と式(II)の構成単位の合計量に対して、10モル%以下であることが好ましい。
【0035】
成分(C)の(メタ)アクリル系共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
【0036】
成分(C)の(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、肌を自然な仕上がりにする効果や配合し易さの点から、5千~10万であることが好ましく、より好ましくは1万~7万であり、さらにより好ましくは1万~3万である。Mwが低すぎると、保湿効果、べたつき感のなさ、シワ改善効果およびパウダーを肌に重ね付けた場合の粉浮きのし難さが十分発揮されないことがあり、Mwが高すぎると、べたつき感のなさおよびハンドリング性が低下することがあるので好ましくない。
なお、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリエチレングリコール換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、0.5質量%の臭化リチウムを含むメタノール/クロロホルム混合溶媒(6/4(体積比))を用いて試料溶液を調製し、標準ポリエチレングリコールの検量線を用いて算出することができる。
【0037】
成分(C)は、式(I)の構成単位となる単量体および式(II)の構成単位となる単量体を少なくとも含む単量体組成物を用いて、公知の方法により重合して調製することができる。例えば、上記の構成単位のモル比(I/II)を満たす単量体組成物を調製し、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気において溶液重合を行なうことにより調製することができる。
【0038】
成分(C)の(メタ)アクリル系共重合体は取扱い易くするために、グリセリンや1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールで希釈したものを用いることができ、市販のものを用いても良い。市販品の例としては、「セラキュート(Ceracute)(登録商標)-F(日油株式会社製)」「セラキュート(Ceracute)(登録商標)-L(日油株式会社製)」が挙げられる。
【0039】
成分(C)の配合量は、皮膚化粧料の合計質量を100質量%としたとき、0.00025~0.5質量%であり、好ましくは0.0025~0.25質量%であり、より好ましくは0.005~0.1質量%である。成分(C)の配合量が上記範囲内であると、べたつきを感じ難く、シワの改善効果があり、パウダーを肌に重ね付けた場合でも粉浮きがし難い点で好適となる。
【0040】
本発明の皮膚化粧料には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記の成分(A)~成分(C)以外の他の成分を含有させることができる。他の成分は化粧料に常用されるものであり、例えば、エタノールなどの低級アルコール、プロピレングリコールなどのジオール類、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤、油剤、糖類、界面活性剤、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、アルギニンなどのアミノ酸、色素、香料などが挙げられ、本発明の皮膚化粧料の性能を損なわない範囲でこれらを配合することができる。
本発明の皮膚化粧料は、成分(A)~成分(C)、および必要に応じて使用し得るその他の任意成分以外に、残部として精製水などの水を含有する。
本発明の皮膚化粧料中の水の含有量は、皮膚化粧料の合計質量を100質量%としたとき、好ましくは30~99質量%、より好ましくは35~90質量%、さらに好ましくは40~80質量%である。
【0041】
本発明の皮膚化粧料の剤型は、水を含有するものであれば特に限定されず、例えば、溶液、ジェル、乳液、クリーム、ローション、フォーム、ミスト等が挙げられる。
【実施例
【0042】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
なお、表1および以下に示す配合量および組成は特に断りのない限り質量%である。
【0043】
〔実施例1~7および比較例1~5〕
表1中の各成分を精製水に添加して混合し、均一として、実施例および比較例の皮膚化粧料を調製した。表1中の共通成分の組成を表2に示す。
実施例および比較例の皮膚化粧料の調製に使用した原料は以下のとおりである。
【0044】
成分(A)
グリセリン:「RG-S」(日油株式会社製)。組成:グリセリン 100%
1,3-ブチレングリコール:「1,3-ブチレングリコール-P」(KHネオケム株式会社製)。組成:1,3-ブチレングリコール 1 00%
1,3-プロパンジオール:「ZEMEA Select Propanediol」(DuPont Tate & Lyle Bio Products 社製)。組成:1,3-プロパンジオール 1 00%
成分(B)
クワエキス:「ソウハクヒエキス」(日油株式会社製) 。組成:クワエキス 1 %、1,3-ブチレングリコール 79.2%、水 19.8%
成分(B)’
チョウジエキス:「チョウジ抽出液ET-50-D」(香栄興業株式会社製) 。組成:チョウジエキス 0.6%、エタノール 49.7%、水 49.7%
ヨクイニンエキス:「ヨクイニン抽出液」(香栄興業株式会社製) 。組成:ヨクイニンエキス 1%、1,3-ブチレングリコール 49.5%、水 49.5%
成分(C)’
共重合体1溶液:モル比(I/II)=60/40であり、重量平均分子量2万であるポリマー、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル) コポリマーの溶液。組成:(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー 5%、グリセリン 66.5%、1,3-ブチレングリコール 28.5%
共重合体2溶液:モル比(I/II)=60/40であり、重量平均分子量5万であるポリマー、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル) コポリマーの溶液。組成:(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー 5%、グリセリン 66.5%、1,3-ブチレングリコール 28.5%
【0045】
<評価基準>
30~60代の20名の女性をパネラーとし、下記のとおり、「保湿感」、「べたつき感のなさ」、「重ね塗りした際の粉浮き抑制効果」の3項目の官能評価を行った。
また、30~40代の目元の小ジワが気になる5名の女性パネラーとし、下記のとおり、「シワの改善効果」を評価した。
【0046】
(1)保湿感
洗顔後、実施例および比較例の各皮膚化粧料1gを全顔に塗布し、1時間後の保湿感について、下記の評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求めて、下記の判定基準で評価した。
<評価基準>
2点:手が肌に吸い付くようなもっちり感が感じられる。
1点:手が肌に吸い付くようなもっちり感がやや感じられる。
0点:手が肌に吸い付くようなもっちり感が感じられない。
<判定基準>
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上~34点以下
△:合計点が29点以下
【0047】
(2)べたつき感のなさ
洗顔後、実施例および比較例の各皮膚化粧料1gを全顔に塗布し、1時間後のべたつき感のなさについて、下記の評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求めて、下記の判定基準で評価した。
<評価基準>
2点:べたつきが感じられない。
1点:べたつきがあまり感じられない。
0点:べたつきが非常に感じられる。
<判定基準>
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上~34点以下
△:合計点が29点以下
【0048】
(3)シワの改善効果
洗顔後、室温20℃、湿度30%の部屋に10分間滞在し、目元の写真を撮影した。その後、4週間にわたり、実施例および比較例の各皮膚化粧料1gを朝と晩の1日2回全顔に塗布した。4週間経過後、同様に目元の写真撮影を行った。各皮膚化粧料を4週間使用する前後の目元の写真を用いて、抗シワ機能評価試験ガイドラインで定められたシワグレード標準を示す写真と比較して、両写真の小ジワのグレードを決定した。下記の評価基準により点数化した。パネラー5名の評価点の合計点を求めて、下記の判定基準で評価した。
<評価基準>
2点:1グレード以上の改善が認められた。
1点:0.5グレード以上0.9グレード以下の改善が認められた。
0点:改善が0.4グレード以下であった。
<判定基準>
◎:合計点が5点以上
○:合計点が3点以上~4点以下
△:合計点が2点以下
【0049】
(4)重ね塗りした際の粉浮き抑制効果
4週間にわたり、実施例および比較例の各皮膚化粧料1gを朝と晩の1日2回全顔に塗布した。4週間経過後、洗顔後に、実施例および比較例の各皮膚化粧料1gを全顔に塗布し、皮膚化粧料が肌になじんだところで、さらにパフに含ませたパウダーファンデーション(CO・OPソフトケアUVパウダーファンデーションC)約60mgを全顔に塗布した。この状態で、室温30℃、湿度60%に調整した部屋にて1時間滞在し、その後に油取り紙を使って余分な皮脂を取り除いた。さらに、上記パウダーファンデーション約30mgを全顔に重ね塗りした際の小鼻、口元または目周りの粉浮き(粉っぽさ)について下記の評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求めて、下記の判定基準で評価した。
<評価基準>
2点:粉浮きがみられない。
1点:粉浮きがわずかにみられる。
0点:粉浮きが顕著にみられる。
<判定基準>
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上~34点以下
△:合計点が29点以下
【0050】
【表1】
【0051】
*成分(A)の含有量は、製品中に含まれる有効成分の量にて示す。
*成分(B)の各含有量は、製品の配合量にて示す。括弧内の数字は、製品中に含まれる抽出物あるいは抽出エキスの量である。
*成分(C)の含有量は、製品の配合量にて示す。括弧内の数字は、製品中に含まれる共重合体の量である。
【0052】
【表2】
【0053】
上記の各評価結果を表1に示した。各評価項目において、「◎」及び「○」と判定された場合を合格とした。
表1に示されるように、実施例1~7の皮膚化粧料は、いずれも、塗布後も持続する良好な保湿感を有し、かつべたつき感が少なく、シワを改善する効果、ならびにパウダーファンデーションを重ね塗りした際の粉浮きを抑制する効果が良好であった。特に、成分(A)~成分(C)をそれぞれより好ましい含有量にて含有する実施例1の皮膚化粧料では、すべての評価項目において「◎」の評価が得られた。
【0054】
これに対し、比較例1~5の皮膚化粧料では、すべての評価項目において合格と評価されたものは見られなかった。
すなわち、成分(A)を含有していない比較例1の皮膚化粧料では、塗布後の保湿感およびシワの改善効果が不十分であると評価された。
成分(B)を含有していない比較例2の皮膚化粧料では、保湿感とべたつき感のなさは良好であったが、シワの改善効果とパウダーファンデーションを重ね塗りした際の粉浮きを抑制する効果が不十分であると評価された。
成分(C)を含有していない比較例3の皮膚化粧料では、保湿感とべたつき感のなさは良好であったが、シワの改善効果とパウダーファンデーションを重ね塗りした際の粉浮きを抑制する効果が不十分であると評価された。
成分(B)をチョウジエキスに置き換えた比較例4の皮膚化粧料では、保湿感とべたつき感のなさは良好であったが、シワの改善効果とパウダーファンデーションを重ね塗りした際の粉浮きを抑制する効果が不十分であると評価された。
成分(B)をヨクイニンエキスに置き換えた比較例5の皮膚化粧料では、比較例4と同様に、保湿感とべたつきのなさは良好であったが、シワの改善効果とパウダーファンデーションを重ね塗りした際の粉浮きを抑制する効果が不十分であると評価された。
【0055】
次に、本発明の皮膚化粧料の製剤例を示す。なお、下記の製剤例におけるエキスの配合量は抽出エキスの配合量であり、重合体の配合量は固形分の配合量である。
[製剤例]ジェル状皮膚化粧料 (質量%)
1,3-ブチレングリコール:5
グリセリン:5
ペンチレングリコール:1
ポリエチレングリコール:1
ポリグリセリン:0.5
(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー(※1) :0.01
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体:0.01
加水分解コラーゲン:0.1
ヒアルロン酸ナトリウム:0.1
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム:0.1
水溶性コラーゲン:0.1
オリーブ油:1
ホホバ油:1
ジメチコン:1
ミリスチン酸オクチルドデシル:1
クワエキス(※2):0.01
ヨモギ葉エキス:0.01
シャクヤク根エキス:0.01
ユズ果実エキス:0.01
レモン果汁エキス:0.01
カルボマー:0.6
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー:0.16
水酸化カリウム:0.1
メチルグルセス-10:0.1
エチルヘキシルグリセリン:0.1
ポリクオタニウム-61:0.01
フェノキシエタノール:0.1
メチルパラベン:0.1
香料:適量
水:残量
※1:共重合体1
※2:商品名「ソウハクヒエキス」(日油株式会社製)
【0056】
[製剤例]乳液状皮膚化粧料 (質量%)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール:0.5
トコフェロール:0.1
ポリソルベート80:0.2
クエン酸:0.1
クエン酸ナトリウム:0.1
ステアリン酸グリセリル:0.5
ミツロウ:0.5
ベヘニルアルコール:2
ジグリセリン:5
グリセリン:5
ペンチレングリコール:1
DPG:1
パルミチン酸エチルへキシル:1
(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー(※1) :0.01
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体:0.01
ヒアルロン酸ナトリウム:0.0 1
加水分解コラーゲン:0.0 1
クズ根エキス:0.01
ハトムギ種子エキス:0.01
アルニカ花エキス:0.01
クワエキス(※2):0.01
センチフォリアバラ花エキス:0.01
ツバキ種子エキス:0.01
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム:0.01
水溶性コラーゲン:0.01
シア脂:1
オリーブ油:1
ホホバ油:1
ジメチコン:1
キサンタンガム:0.1
(アクリレート/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:0.2
水酸化カリウム:0.5
メチルグルセス-10:0.1
エチルヘキシルグリセリン:0.1
ポリクオタニウム-61:0.01
フェノキシエタノール:0.1
メチルパラベン:0.1
香料:適量
水:残量
※1:共重合体1
※2:商品名「ソウハクヒエキス」(日油株式会社製)
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の皮膚化粧料は、保湿効果に優れ、べたつきを感じ難く、シワの改善効果があり、パウダーを肌に重ね付けた場合でも粉浮きがし難いので、皮膚のうち特に顔面の肌に適用することが好ましい。