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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】固体粒子用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/10 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
C11D1/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020178229
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069189
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100109542
【弁理士】
【氏名又は名称】田伏 英治
(72)【発明者】
【氏名】江塚 博紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博也
(72)【発明者】
【氏名】松崎 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 文隆
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-033274(JP,A)
【文献】特開平08-034993(JP,A)
【文献】特開平11-140035(JP,A)
【文献】特開2012-201741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
C09K 23/00-23/56
H01L 21/304
B08B 3/00-3/14
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C08G 65/00-67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表されるポリエーテルエステル化合物を含有する固体粒子用洗浄剤。
【化1】
(1)
(式(1)中、
EOはオキシエチレン基であり、aはEOで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数である。
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基であり、bはAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数である。
aは1~40、bは0~10であり、aとbは、0.5≦a/(a+b)≦1の関係を満たす。
複素環中の炭素原子は一部酸素原子で置き換えられていてもよい。
mは1~2である。
RCOOMは、炭素数4~8の二塩基酸の残基である。
Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種硬質材料表面等の固体表面に付着した固体粒子を洗浄するための洗浄剤、並びに当該洗浄剤を用いる固体粒子の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の日常生活において、表面に付着した汚れの洗浄は必要不可欠な作業であり、対象とする汚れに応じて、種々の汚れに適した洗浄剤が開発されている。汚れの中でも、固体粒子の除去については泥や砂塵等に加え、花粉や微小粒子状物質(PM2.5)といった微小粒子に対する洗浄剤も開発されている。
固体粒子の中でも、特に工業用途で用いられている微粒子は加工資材としても重要な材料であるが、とりわけ近年の電子部品における高機能化には製造工程に用いる材料の微小化が不可欠とされている。しかし、それらは花粉等の天然系の微粒子とは異なり、粒径分布や粒子表面がコントロールされている。
例えば、磁気フィルム基板の表面平坦化に使用される無機砥粒ならびに砥粒屑は、より平滑な表面加工を目的とした砥粒の微小化により、表面粗さの低減が求められている。また、カーボンブラックを始めとする有機顔料は、分散媒である樹脂との相溶性や導電性、発色性の観点から粒子径をより微小化することにより物性が制御されている。
これらの材料微細化が求められる一方で、固体粒子の比表面積に由来する固体表面への付着力は向上しており、除去性は悪くなることが知られている。微細化による除去性の悪化は、製造工程中の砥粒の除去工程のみならず、製造装置に付着して固化した砥粒残留物の除去においても一層困難となっている。中でも、スラリーを始めとする固体粒子が溶媒を含んだ湿式状態での付着物は各種分散媒を使用することで除去可能な場合が多い一方で、装置表面上で固化した微粒子の付着物においては、微粒子間の付着力が強く、溶媒における再分散および除去が困難となる。また電子部品製造においては、製造部品に使用されている基板への腐食性や、樹脂材料への浸透性を考慮して材料に応じた溶媒選定が必要であると同時に、これらの付着残渣は電子部品の不良率増加および生産性低下の一因ともなりうることから、洗浄に対する関心が高まっている。
【0003】
上述の課題に対して、微小な残渣を除去することを目的として、より洗浄効果の高い組成物が提案されている。
例えば特許文献1では、固体表面上から砥粒や研磨屑などの微粒子を除去するための洗浄剤が提供されている。本文献では洗浄成分としてフラボノイド化合物、高分子型界面活性剤、キレート剤を併用する水系の洗浄剤が提案されている。また、特許文献2においては、ヒドロキシカルボン酸骨格を有する塩および配位子数が10以下および11以上の有機ホスホン酸塩、ノニオン界面活性剤を併用する水系の洗浄剤組成物が提案されている。
このように微粒子に対応可能な水系洗浄剤が提供されている一方で、いずれの洗浄剤においても界面活性剤のみでは洗浄力が不十分であり、微粒子に対する洗浄力向上の観点からキレート剤が併用されていることから、微粒子の洗浄により有効な界面活性剤が求められている。さらに、洗浄時に使用する各種溶媒に可溶であるとともに、使用後の環境負荷低減や洗浄装置を用いた断続的な使用の観点から、洗浄剤自体が低泡性であることが好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-197429号公報
【文献】特開2012-201741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、各種溶媒に可溶であり、微粒子を含む汚れに対する洗浄性に優れた洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するポリエーテルと二塩基酸からなるポリエーテルエステル化合物が、各種の溶媒中で固体表面(好ましくは、硬質材料表面)に付着した固体粒子を効果的に溶媒中へと剥離させることができ、かつ当該固体粒子を安定分散させて硬質材料表面への再付着を防止することができ、よって、個体粒子を効率良く除去できることを見出した。従って、当該「ポリエーテルエステル化合物」を洗浄剤として用いることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記の[1]である。
[1]下記の式(1)で表されるポリエーテルエステル化合物を含有する固体粒子用洗浄剤。
【0007】
【化1】

【0008】
(1)
(式(1)中、
EOはオキシエチレン基であり、aはEOで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数である。
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基であり、bはAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数である。
aは1~40、bは0~10であり、aとbは、0.5≦a/(a+b)≦1の関係を満たす。
複素環中の炭素原子は一部酸素原子で置き換えられていてもよい。
mは1~2である。
RCOOMは、炭素数4~8の二塩基酸の残基である。
Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムである。)
【0009】
本発明の実施態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。
[2]硬質材料表面の固体粒子の洗浄用である、上記[1]に記載の洗浄剤。
[3]上記[1]に記載の洗浄剤を固体粒子に接触させることを含む、固体粒子の洗浄方法。
[4]固体粒子の洗浄のための、上記[1]に記載の洗浄剤の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明の固体粒子用洗浄剤は、有機粉体あるいは無機粉体などの微粒子を含有する除去対象に対して使用した場合、付着状態によらず簡便に除去可能な洗浄剤である。さらに、本洗浄剤は使用用途に応じた溶媒選定が可能であり、使用環境が制限され難い。また低泡性にも優れることから、環境負荷の低減及び装置内での断続的な使用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の固体粒子用洗浄剤の実施形態について順次説明する。
【0012】
本発明は、下記の式(1)で表されるポリエーテルと二塩基酸からなるポリエーテルエステル化合物を含有する固体粒子用洗浄剤に関する。なお、式(1)で示されるポリエーテルと二塩基酸からなるエステル化合物を以下では単に「ポリエーテルエステル系界面活性剤」とも言う。
【0013】
【化2】
【0014】
(1)
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基(オキシプロピレン基、オキシブチレン基等、好ましくは、オキシプロピレン基)であり、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよい。
EOで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数をa、AOで示される炭素数3~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数をbとすると、aは1~40、bは0~10である。好ましくはaが1~25、bが0~10であり、さらに好ましくはaが1~15、bが0~5である。
EOとAOの付加形式は、付加の順序に特に制限はなく、ランダム状であっても、ブロック状であってもよい。なお、洗浄性の観点からは、ブロック状が好ましく、EOが複素環部分に結合する付加形式が好ましい。
【0015】
オキシエチレン基の平均付加モル数aと、炭素数3~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数bは、0.5≦a/(a+b)≦1の関係を満たす。
ポリエーテル部位(炭素数3~4のオキシアルキレン基およびオキシエチレン基から構成される部位)は、分散剤の構造中で、粉体に吸着した際に立体反発部位として作用する。a+bはオキシエチレン基の平均付加モル数と炭素数3~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数の和を表し、a+bが50を超えると、粘度が高くなり、扱い難くなる。この観点からは、a+bを50以下とするが、35以下が好ましく、20以下が更に好ましい。また、洗浄性の観点から、a+bは1以上とするが、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が更に好ましい。
a/(a+b)は、ポリエーテルエステル系界面活性剤におけるポリエーテル鎖の親水性が強いポリオキシエチレン基と親油性が強いポリ(炭素数3~4のオキシアルキレン)基(ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等)とのバランスを意味する。a/(a+b)が0.5未満では分散性が低下するおそれがある。また、洗浄性の観点で、a/(a+b)は0.5以上とするが、好ましくは0.6以上である。
高極性の溶媒に対する溶解性および乾式片に対する洗浄性の観点から、ポリエーテル部位はオキシエチレン基のみから成る場合(すなわち、b=0)が最も好ましい。
水溶性および洗浄性の観点から、複素環中の炭素原子は一部酸素原子で置き換えられている方が好ましく、1つの炭素原子が酸素原子に置換された複素環がより好ましい。
【0016】
mは1~2であり、好ましくはm=2である。
【0017】
RCOOMは、ポリエーテルと炭素数4~8の二塩基酸がエステル化反応した際の反応残基であり、好ましくはコハク酸、マレイン酸、フタル酸である。
【0018】
Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムである。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムなどが挙げられる。有機アンモニウムとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンに由来するアルカノールアンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミンに由来するアルキルアンモニウムが挙げられる。
Mは、好ましくは、水素原子あるいはアンモニウムまたはアルカノールアンモニウムであり、更に好ましくは、水素原子またはアルカノールアンモニウムであり、最も好ましくは、水素原子である。
【0019】
次に、「ポリエーテルエステル系界面活性剤」の製法について説明する。
【0020】
「ポリエーテルエステル系界面活性剤」は、ポリエーテルを製造する第一の工程と第一の工程で得られたポリエーテルと二塩基酸または二塩基酸無水物を反応させる第二の工程とから製造することができる。
【0021】
第一の工程に関して説明する。
活性水素を有する含窒素複素環化合物に、アルキレンオキサイドを目的とする構造に従って適宜付加させることによってポリエーテルを製造することができる。
アルキレンオキサイドの付加反応に使用する触媒としては、アルカリ触媒が挙げられ、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、アルコラート、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンを用いることができる。また、上記のアルカリ触媒の他に、三フッ化ホウ素や四塩化錫などのルイス酸触媒を用いることができる。触媒の使用量は付加反応終了後の質量に対して、0.01~5.0質量%が一般的である。
アルキレンオキサイドの付加反応は、例えばアルゴンや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、50~200℃、0.02~1.0MPaにて、アルキレンオキサイドを連続して加圧しながら添加することによって行うことができる。
【0022】
次に第二の工程に関して説明する。
第二の工程で使用される二塩基酸または二塩基酸無水物については、二塩基酸としてはコハク酸、マレイン酸、フタル酸が挙げられ、二塩基酸無水物としては無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸が挙げられる。好ましくは、二塩基酸無水物である。
第二の工程での反応比率は、複素環誘導ポリエーテルの水酸基のモル数を(H)、二塩基酸または二塩基酸無水物のモル数を(T)としたとき、0.7<(H)/(T)<1.2が好ましく、さらに好ましくは(H)/(T)=1である。
第二の工程では触媒を用いても良い。触媒としては、3級アミン化合物が挙げられ、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。
【0023】
第一の工程、第二の工程ともに無溶剤で行っても良いし、適当な脱水有機溶媒を使用しても良い。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により除去するか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。反応温度は60~150℃であり、好ましくは70~120℃であり、さらに好ましくは80~100℃である。
【0024】
本発明のポリエーテルエステル系界面活性剤は、アミンにて中和されていても良い。アミンとしては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミンなどのアルキルアミンや、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
本発明の「ポリエーテルエステル系界面活性剤」は、その1種または数種を組み合わせて、原液、即ちそのままの形態で「本発明の固体粒子用洗浄剤」として使用することができる。
【0026】
また、本発明の「ポリエーテルエステル系界面活性剤」は、「本発明の固体粒子用洗浄剤」として、ハンドリング性の面から、その1種または数種を組み合わせて、水(必要により他の溶媒との混合溶媒)により希釈された希釈液の形態で使用することもできる。当該希釈液には、さらに一般の洗浄剤に配合される成分が配合されていてもよい。例えば、他の界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、防食材、増粘剤、着色剤などが配合されていてもよい(以下、「本発明の洗浄用組成物」という場合がある)。
ここで、希釈倍率は、使用される「ポリエーテルエステル系界面活性剤」、目的、用途等に応じて適宜決定され、例えば2~50倍、好ましくは5~30倍である。また、他の配合成分やその配合量は、使用される「ポリエーテルエステル系界面活性剤」、目的、用途等に応じて、当業者であれば適宜決定することができる。
本発明の洗浄用組成物においては、本発明の「ポリエーテルエステル系界面活性剤」の含有率は、その種類によっても異なるが、組成物の全重量に対して1~40質量%であり、好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。
【0027】
本発明の洗浄対象である「固体粒子」としては、表面に付着した固体粒子であれば特に限定はされないが、例えば、有機粉体あるいは無機粉体が挙げられる。
有機粉体としては、例えば、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾロン系、ペニレン系、フタロシアニン系、アントラピリジン系、およびジオキサジン系などの有機顔料が挙げられる。
無機粉体としては、金属粉体、2種類以上の金属または金属と非金属とからなる合金粉体、金属粉体または合金粉体を複合化した複合粉体、2種類以上の無機粉体または無機粉体と他の粉体とを混合した混合粉体が挙げられる。
その他、無機粉体として、ケイ酸化合物、炭酸化合物、硫酸化合物、水酸化化合物、酸化化合物、炭化化合物、窒化化合物、チタン酸化合物などの各粉体が挙げられる。
洗浄対象として好ましい粒子の大きさは、粒径が0.01~10μmであり、0.01~5μmの粒子がより好ましく、0.01~1μmの粒子がさらに好ましい。
【0028】
本発明のポリエーテルエステル系界面活性剤は、「両親媒性」であるが、ここで両親媒性とは、SP値(Fedors法等により算出される)が10以上の高極性溶媒にも、SP値が10未満の低極性溶媒にも溶解することを意味し、特に、SP値が5~25の溶媒(または混合溶媒)に良好に溶解する。
【0029】
本発明の固体粒子用洗浄剤は洗浄箇所を選ばず、疎水性表面や親水性表面のいずれにも優れた洗浄効果を示す。
本発明の固体粒子用洗浄剤の使用方法としては、本発明の洗浄剤を固体表面(例えば、金属、プラスチック、コンクリート等の硬質材料の表面)に付着した固体粒子に接触させることを含む態様であれば特に限定はされず、浸漬洗浄、超音波洗浄、ブラシ洗浄、スクラブ洗浄、噴流洗浄、スプレー洗浄、手拭き洗浄等各種の洗浄方法を特に限定なく、単独で又は組み合わせて用いることが可能であり、より具体的には、洗浄対象となる硬質材料等の固体表面に本発明の洗浄剤をスプレーで噴霧した後、布やスポンジで擦り洗いする方法や、布やスポンジに直接本発明の洗浄剤を染み込ませてから固体表面を擦り洗いする方法などで固体粒子を除去し、その後水で洗浄剤と除去した固体粒子を洗い流すか、乾いた布などで拭き取ればよい。また、洗浄対象物を本発明の洗浄剤を含む溶液中に浸漬した後、溶液を攪拌することによっても洗浄を行うことができる。
【実施例
【0030】
次に、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
表1に示すポリエーテルエステル系界面活性剤1~6を用いてポリエーテルエステル系洗浄剤を通常の方法により調製した。いずれの組成物においても水を用いて全量を100質量%に調整した。
【0032】
【表1】
【0033】
一方、比較例としてポリエーテルエステル系界面活性剤の代わりに、ポリカルボン酸系高分子(化合物7)、ポリオキシエチレン(重合度2)2-エチルヘキシルエーテル(化合物8)、直鎖アルキルベンゼン(炭素数10~16)スルホン酸(化合物9)、塩化ベンザルコニウム(化合物10)、ポリオキシエチレン(重合度6)イソデシルエーテル(化合物11)を用いた。なお、化合物7は、水溶性アリルポリエーテルと無水マレイン酸の共重合体であり、特開平1-109号公報の実施例1を参考に調製した。
【0034】
実施例及び比較例の洗浄剤を用いて下記のとおり評価を行った。その結果を表2に示す。
【0035】
(溶解性試験)
100mLスクリュー管に各化合物2.5gを秤量した後、溶媒47.5gを用いて20倍に希釈し、スターラーチップを用いて25℃で10分間撹拌した。攪拌後、1分間静置後の外観を目視により判定し、溶解性を評価した。希釈溶媒には、イオン交換水(sp値:23.4)、エタノール(sp値:12.7)、トルエン(sp値:8.8)を用いた。
<評価基準>
○:外観が均一液体である。
×:外観が不均一であり、白濁もしくは分層している。
【0036】
(洗浄試験)
a)スラリーの調製
洗浄対象となる分散体組成物に関して、下記の通り調製した。
50mLスクリュー管に、酸化チタン(製品名:BTー01、堺化学工業株式会社製)24.0g、混合溶媒6.0g、及び分散剤(製品名:エスリームC-2093I、日油株式会社製)0.7gを秤量した。その後、自転公転型ミキサーを用いて2000rpm条件で10分間(5分間×2回)分散処理を行い、スラリー状の分散体組成物を得た。なお、混合溶媒としてはトルエン:エタノール=1:1(wt%)混合溶液を用いた。
b)湿式洗浄試験片の作成
SUS316板(縦×横×厚さ=50×15×1.5mm)の重量をあらかじめ記録した。その後、SUS316板に対して上記分散剤スラリーを約0.1g塗布した。塗布後のSUS316板の重量を再計量し、塗布したスラリー量を記録して洗浄試験片とした。
c)乾式洗浄試験片の作成
SUS316板(縦×横×厚さ=50×15×1.5mm)の重量をあらかじめ記録した。その後、SUS316板に対して上記分散剤スラリーを約0.1g塗布してホットプレート上にて60℃で約10分間乾燥させた。乾燥後のSUS316板の重量を再計量し、塗布したスラリー量を記録して洗浄試験片とした。
d)洗浄剤希釈液の調製
100mLビーカー中にて、各洗浄剤5.0gを秤量し、45.0gの水で10倍に希釈し、スターラーチップを用いて25℃で10分間撹拌した。得られた洗浄剤希釈液を用いて下記の洗浄試験を行なった。
e)洗浄試験
本試験では、上記洗浄試験片を用いて微粒子に対する洗浄試験を実施した。50mLスクリュー管中で上記の分散剤スラリーを塗布したSUS板を上記希釈液45.0gに対して浸漬し、25℃で10分間攪拌して洗浄した。その後、液から取り出した際のSUS板の汚れ落ちについて、洗浄試験片の重量変化から算出した。
なお、除去率の算出法および判定方法は以下のとおりである。
【0037】
【数1】
<評価基準>
◎:除去率が95%以上である。
〇:除去率が80%以上、95%未満である。
×:除去率が80%未満である。
【0038】
(泡立ち試験)
洗浄剤原液を100mLスクリュー管に10g秤量した。その後、蓋をして10秒間激しく上下に振とうした後に静置した。静置して30秒後の泡高さを測定し、低泡性を評価した。低泡性は下記基準に基づき評価した。
<評価基準>
○:泡高さが5mm以下
×:泡高さが5mmを超える
【0039】
【表2】
【0040】
本発明にかかるポリエーテルエステル系界面活性剤1~6を使用した実施例1~6においては、いずれも良好な溶解性、低泡性、洗浄性を示していることが分かる。
一方、比較例1~5の洗浄剤は溶解性、低泡性および洗浄性(特に、洗浄性)が大きく劣ること分かる。
従って、本発明の洗浄剤は、極めて優れた固体粒子に対する洗浄性を有するとともに、優れた溶解性と低泡性とを併せ持つものであることが明らかとなった。
【0041】
参考例:ポリエーテルエステル系界面活性剤1~6の合成
(合成例1:ポリエーテルエステル系界面活性剤1の合成)
攪拌機、圧力計、温度計、安全弁、ガス吹き込み管、排気管、冷却用コイル、および蒸気ジャケットを装備したステンレス製の5リットル容の耐圧容器に、テトラヒドロ-1,4-オキサジン(商品名:モルホリン、東京化成株式会社製)261g(3mol)を仕込み、系内を窒素ガスで置換した。攪拌下、140℃、0.05~0.5MPa(ゲージ圧)の条件で、別に用意した耐圧容器からエチレンオキサイド132g(3mol)を、ガス吹き込み管を通して、窒素ガスにより加圧しながら添加した。
添加が終了した後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた。40℃まで冷却した後、ナトリウムメトキシドを1.2g添加し、系内を窒素ガスで置換した。攪拌下、140℃まで昇温した後、0.05~0.5MPaの条件でエチレンオキサイド1850g(42mol)を、ガス吹き込み管を通して、窒素ガスにより加圧しながら添加した。添加が終了した後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた。その後、耐圧容器から反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH9~11とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、2100gのポリエーテルを得た。得られたポリエーテルの水酸基価は75であり、水酸基価から求められる分子量は748であった。
【0042】
次に攪拌装置、温度計、ガス吹き込み管を装備したガラス製の0.5リットル容の反応容器に、上記で得られたポリエーテル224g(0.3mol)および無水フタル酸(関東化学(株)製)45g(0.3mol)を仕込み、90℃で2時間反応させた。酸価の測定で95%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し、反応を終了した。これにより、ポリエーテルエステル系界面活性剤1(前記表1の化合物1)を得た。
【0043】
なお、合成例1におけるモルホリン、エチレンオキサイドを他の化合物に適宜変更し、合成例1に準じて操作を行うことによって、前記表1のポリエーテルエステル系界面活性剤2~6を合成した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、各種溶媒中に可溶な洗浄力に優れる界面活性剤を含有する固体粒子用洗浄剤が提供される。