(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】紙製トレー
(51)【国際特許分類】
B65D 5/28 20060101AFI20240827BHJP
B65D 5/56 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65D5/28
B65D5/56 A
(21)【出願番号】P 2020180364
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
(72)【発明者】
【氏名】猪又 暢之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260621(JP,A)
【文献】特開2013-010527(JP,A)
【文献】特開2009-292537(JP,A)
【文献】特開2017-202866(JP,A)
【文献】特開2019-038574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/28
B65D 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製のブランクスからなる紙製トレーであって、
紙製のブランクスは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とからなり、
紙製トレーは、底面、側面板、および縁片によって構成され、
側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレーを形成しており、
縁片は、側面板の上端に連続して、かつ底面に平行にトレーの周囲を囲んでフランジを形成しており、
前記ブランクスを構成する、前記台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板
との間が切除されており、かつ縁片と、隣接する縁片との間が切除されており、
前記熱可塑性樹脂層は、台紙を切除した部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、
底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板との間をシールされ接続され、
同様に、縁片と、隣接する縁片との間も、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、シールされ接続されて、トレーが形成されており、
前記底面が正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状を有しており、引き伸ばされていない4辺に連接した側面板をコーナー板とすると共にこのコーナー板に連続した縁片をコーナー縁片とし、前記底面の他の辺に連接した側面板を主側面板とすると共にこの主側面板に連続した縁片を主縁片としたとき、主側面板がコーナー板に重ねられると共に主縁片がコーナー縁片に重ねられるように折り込まれており、かつ、主縁片の側端面同士が突き合わされて両者が重ならずに配置され、
前記コーナー板の底辺の長さをC、このコーナー板の先端とこのコーナー板に隣接する主縁片との距離をf、台紙の厚さをtとした時、f>C/2+2tであり、
前記台紙が遮光性を有することを特徴とする紙製トレー。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層が、ポリエチレン樹脂系、ポリプロピレン樹脂系、ポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系のうち、1または複数の樹脂からなることを特徴とする
請求項1に記載の紙製トレー。
【請求項3】
前記台紙が黒色又は暗色の顔料を配合して抄紙して構成されていることを特徴とする
請求項1または2に記載の紙製トレー。
【請求項4】
前記台紙がその層構成中に遮光層を有しており、この遮光層が光吸収性の層から成ることを特徴とする
請求項1~3のいずれかに記載の紙製トレー。
【請求項5】
前記台紙がその層構成中に遮光層を有しており、この遮光層が光反射性の層から成ることを特徴とする
請求項1~3のいずれかにに記載の紙製トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙製トレーに関するものである。特に板紙を基材としたブランクスを用いて形成され、例えばアイスクリームなどの冷凍食品や粉末物を収納することが可能な紙製トレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙製トレーは、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売りの場面で、例えば食品の包装材料として使用されている。その形態はさまざまであるが、紙を基材としていることから、価格面でのメリットのほか、環境適合型の包装材料として、広く使われている。
【0003】
また、内容物によってさまざまな形態が可能であり、ブランクスとして紙基材の表面に熱可塑性樹脂層を設けて耐水性を付与し、また紙製トレーの立体の形成に熱可塑性樹脂層のシールを行うこともでき、さらに蓋材をシールしてトレー全体を密封することも行われている。
【0004】
しかしながら、紙を基材とした平面のブランクスから組み立てて作る紙製トレーにおいては、プラスチックを基材としたトレーとは異なり、組み立て時にブランクス同士が重なる部分がある。
【0005】
この部分は厚さが厚くなって、その周囲との間に段差を生じる。そして、シールして紙製トレーを密封しようとする際には、この段差部分がシールの欠陥になるおそれがあり、密封性には問題があるのが実情であった。特に液体の内容物などにおいては、包装材料において重大欠陥とされる漏れの問題を引き起こす恐れがあるとして改善が求められてきた。
【0006】
例えば特許文献1には、縁辺を設けた方形のトレー用ブランクスとして、縁辺の4隅に舌片を設けて2方向の縁辺を接合するブランクスが提案されているが、この場合には舌片の接合部分に段差ができることが避けられず、この段差による隙間部分によって密封性の欠如が内容物の漏れを引き起こす恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この問題を解決して、縁片から形成されるフランジの接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することを課題として、出願人は特願2020-59941号及び特願2020-165616号を特許出願した。
【0009】
本発明は、これら特願2020-59941号及び特願2020-165616号に記載の発明の改良に係るもので、縁片から形成されるフランジの接合部分の段差がなく、密封性のよいことに加えて、光によって劣化する内容物を収容した場合にも、遮光性の蓋材を被せることによってその内容物を光から守ることができる紙製トレーを供給することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、紙製のブランクスからなる紙製トレーであって、
紙製のブランクスは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された
熱可塑性樹脂層とからなり、
紙製トレーは、底面、側面板、および縁片によって構成され、
側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレーを形成しており、
縁片は、側面板の上端に連続して、かつ底面に平行にトレーの周囲を囲んでフランジを
形成しており、
前記ブランクスを構成する、前記台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間が切除されており、かつ縁片と、隣接する縁片との間が切除されており、
前記熱可塑性樹脂層は、台紙を切除した部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、
底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板との間をシールされ接続され、
同様に、縁片と、隣接する縁片との間も、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、シールされ接続されて、トレーが形成されており、
前記底面が正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状を有しており、引き伸ばされていない4辺に連接した側面板をコーナー板とすると共にこのコーナー板に連続した縁片をコーナー縁片とし、前記底面の他の辺に連接した側面板を主側面板とすると共にこの主側面板に連続した縁片を主縁片としたとき、主側面板がコーナー板に重ねられると共に主縁片がコーナー縁片に重ねられるように折り込まれており、かつ、主縁片の側端面同士が突き合わされて両者が重ならずに配置され、
前記コーナー板の底辺の長さをC、このコーナー板の先端とこのコーナー板に隣接する主縁片との距離をf、台紙の厚さをtとした時、f>C/2+2tであり、
前記台紙が遮光性を有することを特徴とする紙製トレーである。
【0013】
次に、請求項2に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂層が、ポリエチレン樹脂系、ポリプロピレン樹脂系、ポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系のうち、1または複数の樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の紙製トレーである。
【0014】
次に、請求項3に記載の発明は、前記台紙が黒色又は暗色の顔料を配合して抄紙して構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製トレーである。
【0015】
次に、請求項4に記載の発明は、前記台紙がその層構成中に遮光層を有しており、この遮光層が光吸収性の層から成ることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紙製トレーである。
【0016】
次に、請求項5に記載の発明は、前記台紙がその層構成中に遮光層を有しており、この遮光層が光反射性の層から成ることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紙製トレーである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、縁片から形成されるフランジの接合部分の段差がなく、密封性のよい
紙製トレーを供給することが可能である。
【0018】
本発明は、紙製のブランクスからなる紙製トレーであって、紙製トレーは、底面、側面板、および縁片によって構成され、側面板は底面を囲んで立ち上がり、トレーを形成していることによって、より環境適合型の紙製トレーであり、耐水性に優れ、また平面のブランクスからのトレーの形成が容易に可能である。
【0019】
また本発明においては、縁片は側面板の上端に連続して、かつ底面に平行にトレーの周囲を囲んでフランジを形成して紙製トレーの周囲を囲んでいることによって、またフランジにはブランクスの重なりによる段差がないことから、蓋材のシールが容易に可能で、より密封性に優れる紙製トレーとすることが可能である。
【0020】
すなわち、ブランクスを構成する台紙は、トレーの角部において、側面板と隣接する側面板との間が、側面板を立ち上げた際に重ならないよう切除してあり、また縁片と隣接する縁片との間も、縁片全体を形成した際に重ならないよう切除してあることによって、ブランクスを紙製トレーに組み立て立体に形成する際には、ブランクス同士が重なる部分をなくすことが可能である。
【0021】
熱可塑性樹脂層は、台紙を切除した部分を含んで台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、底面を囲んで立ち上がる側面板は台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と隣接する側面板との間をシールされ接続され、同様に、縁片と隣接する縁片との間も台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によってシールされ接続されて、トレーが形成されていることによって、ブランクス同士が重なることなく紙製トレーの組み立てが可能であり、重なりがないことによって平坦さが得られ、したがって紙製トレーに蓋材をつけてフランジ部分とシールして密封する場合においても密封性の良い紙製トレーとすることができる。
【0022】
しかも、ブランクスを構成する台紙は、その層構成中に遮光性の層を含んでいるから、光によって劣化する内容物を収容した場合にも、遮光性の蓋材を被せることによってその内容物を光から守ることができる。
【0023】
また特に請求項2に記載の発明によれば、熱可塑性樹脂層が、ポリエチレン樹脂系、ポリプロピレン樹脂系、ポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系のうち、1または複数からなることによって、紙製トレー組み立ての際のシーラントとしてより適性を持ち、かつ紙製トレーの用途に応じたシーラントの設計が可能である。特にポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレートを選択する場合には、より耐熱性に優れた紙製トレーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様の説明用斜視模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る紙製トレーを構成するブランクの一実施態様の台紙部分に係り、
図2(a)はその説明用平面展開模式図、
図2(b)は説明用断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様の角部において、側面板を立ち上げて紙トレーを形成した際に、台紙の側面板と隣接する側面板と重ならないように、これら側面板と隣接する側面板との間の台紙を切除してあり、また紙トレーを形成した際に、縁片と隣接する縁片とが重ならないように、これら縁片と隣接する縁片との間の台紙を切除してあることを説明するための台紙の平面展開模式図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様において、台紙の窓抜き部分を説明するための平面模式図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様において、台紙の窓抜き部分を含めて熱可塑性樹脂を設けた状態のブランクスを説明するための平面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様において、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面に熱可塑性樹脂を設けた後、打ち抜きが完了してブランクスが完成した状態を説明するための平面展開模式図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る紙製トレーの第2の実施態様の平面模式図である。
【
図8】
図8は、
図7に示した紙製トレーに使用するブランクシートの平面模式図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した紙製トレーに使用するブランクシートのコーナー部分の拡大図であり、コーナー板の底辺の長さC、コーナー板の先端とフランジ部の先端との距離fの説明図である。
【
図10】
図10は、本発明に係る紙製トレーの第3の実施態様に使用するブランクシートのコーナー部分の拡大図である。
【
図11】
図11は、
図10に示したブランクシートをトレー型紙容器に成型した状態のコーナー部分を示した拡大平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0026】
図1は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様の説明用斜視模式図である。
【0027】
本発明は、紙製のブランクス40から形成される紙製トレー100である。
図1の一実施態様の斜視模式図に示すように、底板1を有して周囲は側面板2に囲まれ、側面板2の上端には、側面板2に連続して底面1に平行な縁片3が形成されている。
【0028】
なお、この例において、底面1は正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状を有しており、このため、
図1では、引き伸ばされていない4辺に連接した側面板2と底面の他の辺に連接した側面板2とを区別して、引き伸ばされていない4辺に連接した側面板2を「コーナー板」と呼び、符号2
2を付している。一方、他の辺に連接した側面板22を「主側面板」と呼び、符号2
1を付している。また、コーナー板2
2に連続した縁片3を「コーナー縁片」と呼んで符号3
2を付し、主側面板2
1に連続した縁片3を「主縁片」と呼んで符号3
1を付している。以下の説明でも同様である。
【0029】
ところで、縁片3は紙製トレー100の周囲を取り囲んで、フランジ4を形成している。したがって、
図1から見て取れるように、フランジ4は8角形であり、8枚の縁片3から構成されている。これら8枚の縁片3のうち、4枚が主縁片3
1であり、残る4枚がコーナー縁片3
2である。そして、これら主縁片3
1とコーナー縁片3
2とは周方向に交互に並んでおり、主縁片3
1の側端面とコーナー縁片3
2の側端面とが突き合わされて、両者の間に隙間や段差がないように構成されている。そして、このため、フランジ4は全周に亘って平坦であり、また、面一である。
【0030】
また、
図1に示す例においては、前述のように底板1は8角形であるから、側面板2も8枚である。これら8枚の側面板2のうち、4枚が主側面板2
1であり、残る4枚がコーナー板2
2である。そして、これら主側面板2
1とコーナー板2
2とは周方向に交互に並んでいる。なお、主縁片3
1は主側面板2
1に連接しており、コーナー縁片3
2はーナー板2
2に連接している。
【0031】
そして、
図1に示すように、側面板2を立てて、立体に形成された紙製トレー100は、内容物を収納可能な8角形の容器として用いることができる。
【0032】
本発明において、紙製のブランクス40は、台紙20と、その表裏両面またはトレー100の内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層30とからなるものであって、紙製トレー100の立体の形成においては、熱可塑性樹脂層30をシール、密着させて行うことができる。またブランクス40が、その表裏両面またはトレー100の内側となる面を熱可塑性樹脂層30で被覆されていることにより、紙製トレー100に優れた耐水性を付与することが可能である。
【0033】
また、紙製トレー100のフランジ4として形成された縁片3は、この部分に蓋材をシールして、紙製トレー100全体を密封することができる。前述のようにそのフランジ4は全周に亘って面一で平坦であるから、隙間なく蓋材をシールすることが可能である。
【0034】
この紙製トレー100は、紙を基材とした材料構成であることによって、環境対応型の包装材料として優れており、必要に応じて密封性も備えることが可能であって、利便性の高い紙製トレー100として幅広く使用することが可能である。
【0035】
また本発明においては、紙製トレー100であっても、従来その欠点とされてきた、立体の形成においてブランクス40の重なりをなくすことができる。特に縁片3で形成される、紙製トレー100の周囲を囲む、フランジ4部分の重なりをなくすことができ、平坦なものとすることが可能である。したがって、密封性において優れた紙製トレー100とすることができる。
【0036】
前述のように、この紙製トレー100の製造に利用するブランクス40は、台紙20と、その表裏両面またはトレー100の内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層30とからなるものである。
図2は、これら台紙20と熱可塑性樹脂層30のうち台紙部20に係り、
図2(a)はその台紙20の形状を説明するための説明用平面展開模式図、
図2(b)は台紙20の層構成をするための説明用断面図である。
【0037】
図2(a)に示す例の平面展開模式
図9に示すように、紙製トレー100の台紙20には底面1を中心にして、底面1を囲んで立ち上がる側面板2、側面板2には、側面板2の上端に連続して縁片3が設けられており、紙トレー100としたとき、この縁片3は底面1に平行なフランジを形成する。
【0038】
すなわち、この
図2(a)に示す実施態様においては、底板1は4辺形の4つの角部10を面取りした形状を有する。したがって底板1は8角形であって1面であり、側面板2はこの8角形の底板1を囲んで立ち上がっているから、この側面板2は8面となる。また縁片3は、各側面板2の上端に接続しており、同様に8面となる。
【0039】
また、
図2(a)において、底面1と側面板2との間の折り線5は谷折り、側面板2と縁片3との間の折り線6は山折りであって、紙製トレー100は
図2(a)の手前側に立ち上がって立体となる。
【0040】
この時、従来のブランクス40の平面展開図とは異なり、立体にしたときにブランクス40同士が重なる部分がないように、V字形に切除された部分11が設けてある。この切除された部分11は、紙製トレー100の角部10の台紙において、側面板2を立ち上げて紙製トレー100を形成した際に側面板2と隣接する側面板2とが重ならないように、これら側面板2と隣接する側面板2との間を切除してあり、また縁片3と隣接する縁片3との間も、紙製トレー100を形成した際に縁片3同士が重ならないよう切除してある。
【0041】
したがって、底面1と側面板2との間の折り線5を谷折りにして、側面板2を立ち上げ
る場合には、側面板2同士の間にある、V字形の切除された部分は閉じた状態となって、側面板2同士は連続した状態となる。
【0042】
また、側面板2と縁片3との間の折り線6を山折りにして、縁片3を底面1と平行な面にする場合には、縁片3同士もまた連続して、紙製トレー100の周囲を囲んだフランジ4となる。
【0043】
ちなみに、紙製トレー100が立体に形成された状態において、縁片3が紙製トレー100の周囲を囲んでかつ水平な面を構成しているので、蓋材を縁片3にシールして、紙製トレー100全体を密封することが可能である。
【0044】
なお、台紙20は遮光性を有することが必要である。台紙20が遮光性を有するため、光によって劣化する内容物を収容した場合にも、遮光性の蓋材を被せることによってその内容物を光から守ることができる。
【0045】
このような遮光性の台紙20は、例えば、黒色又は暗色の顔料を配合して抄紙した紙質層であってもよい。顔料としては、カーボンブラックが好適である。なお、このように黒色又は暗色の顔料を配合して抄紙した台紙20としては日本製紙クレシア(株)製「ゼブラC耐酸カップ原紙」を例示できる。
【0046】
また、
図2(b)に示すように、その層構成中に遮光層を含んでいるものであってもよい。
図2(b)に示す台紙20は、紙繊維によって構成された2層の紙質層20a,20cを、遮光層20bを介して積層することによって構成されている。
【0047】
遮光層20bは、入射光を吸収してその透過を防止する光吸収性を有するものであってもよいし、入射光を反射してその透過を防止する光反射性を有するものであってもよい。
【0048】
光吸収性の遮光層20bとしては、前述のように、黒色又は暗色の顔料を配合して抄紙したものを使用できる。また、黒色又は暗色の印刷層、あるいは、黒色又は暗色に着色されたプラスチックフィルムであってもよい。
【0049】
また、光反射性の遮光層20bとしては、金属箔あるいは金属蒸着膜を例示できる。例えば、プラスチックフィルムにアルミニウム蒸着膜を形成した蒸着フィルムを遮光層20bとして使用することが可能である。
【0050】
次に、
図3は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様の角部において、側面板2を立ち上げて紙トレー100を形成した際に、台紙20の側面板2と隣接する側面板2と重ならないように、これら側面板2と隣接する側面板2との間の台紙20を切除してあり、また紙トレー100を形成した際に、縁片3と隣接する縁片3とが重ならないように、これら縁片3と隣接する縁片3との間の台紙20を切除してあることを説明するための台紙20の平面展開模式図である。
【0051】
前述したように本発明においては、ブランクス40を形成する台紙20において、側面板2を立ち上げて紙トレー100を形成した際に側面板2同士が重ならないよう、側面板2と隣接する側面板2との間の台紙20を切除してあり、また縁片3と隣接する縁片3との間の台紙20も切除してある。
【0052】
図3に示す例においては、台紙20においては、切除された部分11は、互いに近い距離にある2箇所づつが、一つの窓抜き部12として打ち抜かれて、台紙20の4隅に、4箇所の窓抜き部12を形成している。
【0053】
なお、
図3では、窓部抜き部12の位置と側面板2や縁片3との位置関係がわかりやすいように、ブランクス40の平面展開図を破線で示している。
【0054】
図4は、本発明に係る紙製トレー100の一実施態様において、台紙20の窓抜き部分を説明するための平面模式図である。
【0055】
前述のように、
図3に示す窓抜き部12は、台紙20の4隅にあって4箇所である。切除された部分11を設けるための窓抜き部12と台紙20との関係は
図4に示すような位置関係である。
【0056】
本発明による紙製トレー100のためのブランクス40は、このように窓抜き部12を設けられた台紙20に対して、その表裏両面またはトレー100の内側となる面から熱可塑性樹脂層30を設けることによって得られる。すなわち、本発明においては、熱可塑性樹脂層30が、台紙20の窓抜き部12を含んで、台紙20の表裏またはトレー100の内側となる面から積層してある(
図5参照)。
【0057】
このようにして、台紙20と熱可塑性樹脂層30を積層した後、紙製トレー100のブランクス40を打ち抜きによって作成することによって、より正確にまた生産性良く、本発明による紙製トレー100のためのブランクス40を作成することが可能である。
【0058】
ブランクス40を作成するためには、この
図4に示す熱可塑性樹脂30の積層後の台紙20から、4隅の除去部分を分離、除去する。
【0059】
図6は、本発明に係る紙製トレー100の一実施態様において、台紙20の表裏両面またはトレー100の内側となる面に熱可塑性樹脂30を設けた後、打ち抜きが完了してブランクス40が完成した状態を説明するための平面展開模式図である。
【0060】
本発明による紙製トレー100のためのブランクス40において、台紙20は、
図2に示す平面展開
図9の通りに切断され、その表裏両面またはトレー100の内側となる面には熱可塑性樹脂層30が設けられている。
【0061】
熱可塑性樹脂層30は、台紙20の部分のほか、ブランクス40の台紙20同士が重なる部分がないように設けられた切除された部分11も覆っており、この部分は台紙20では窓抜き部12となっているが、表裏両面またはトレーの内側となる面の熱可塑性樹脂層30のみが積層された状態となっている。
【0062】
図6に示すブランクス40は、底面1を中心に有しており、底面1を囲んで立ち上がる側面板2には、側面板2の上端に連続して底面1に平行な縁片3が形成されている。
図6において、底面1と側面板2との間の折り線5は谷折り、側面板2と縁片3との間の折り線6は山折りであって、紙製トレー100は、
図6の手前側に立ち上がって立体となる。
【0063】
このとき、紙製トレー100の角部10において、台紙20を切除した部分の熱可塑性樹脂層30によって側面板2と隣接する側面板2との間をシールすることができ、同様に、台紙20を切除した部分の熱可塑性樹脂層30によって縁片3と隣接する縁片3との間もシールすることができる。こうして側面板2と隣接する側面板2との間及び縁片3と隣接する縁片3との間をシールすることによって紙製トレー100が形成される。このシールには、例えばヒートシールを用いることができる。
【0064】
熱可塑性樹脂層30は、熱可塑性樹脂層30同士が対向するように重ねて、加熱、加圧
してヒートシールすることによって互いを接着させ、互いに接着することを可能にする。
【0065】
熱可塑性樹脂層30の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0066】
熱可塑性樹脂層30の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、台紙20上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、台紙20の表裏両面または片面に熱可塑性樹脂層30を形成することも可能である。
【0067】
この熱可塑性樹脂層30に、前述のポリエチレン樹脂系、ポリプロピレン樹脂系、のほか、ポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系のうち、1または複数を用いることが可能である。これらは紙製トレー100の用途や要求される品質に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0068】
特にポリエチレンテレフタレート樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系を用いる場合には、例えば電子レンジ加熱を伴う用途などにおいて、耐熱性の点で耐性を有する紙製トレー100となる。
【0069】
このようにして本発明によれば、紙製トレーにおいて、縁片から形成されるフランジの接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することが可能であり、また、台紙がその層構成中に遮光性の層を含んでいるから、光によって劣化する内容物を収容した場合にも、遮光性の蓋材を被せることによってその内容物を光から守ることができるその内容物を光から守ることができる。
【0070】
以上の例は、主縁片31の側端面とコーナー縁片32の側端面とを突き合わせて、両者の間に隙間や段差がないように構成したものであるが、主縁片31の側端面同士を突き合わせて、段差がないフランジ4を構成することもできる。
【0071】
図7はこのように主縁片3
1の側端面同士を突き合わせて、段差がないフランジ4を構成した紙製トレー200の平面模式図である。また、
図8はその紙製トレー200に使用するブランクシートの平面模式図である。
【0072】
この例では、コーナー板22は長方形状であるが、主側面板21は逆台形状を有している。そして、ブランクシートから紙製トレー200を組み立てる際には、このブランクシートを折り曲げて、主側面板21をコーナー板22に重ねると共に、主縁片31をコーナー縁片32に重ね、しかも、隣接する主縁片31の側端面同士を突き合わせてこれら主縁片31と主縁片31との間に段差ができないように構成する。こうして組み立てられた紙製トレー200のフランジ4も、全周に亘って平坦で、面一である。このため、隙間を生じることなく蓋材をシールできる。
【0073】
ところで、こうして組み立てられた紙製トレー200のフランジ4は段差のない平坦な面を構成するが、主縁片3
1と主縁片3
1との間に隙間を生じることがある。
図9は、ブランクシートのコーナー部分の拡大図であり、コーナー板2
2の底辺の長さC、コーナー
板2
2の先端とこのコーナー板2
2に隣接する主縁片3
1の先端との距離fの説明図である。fの値については、幾何学的には、f=C/2とすることにより主縁片3
1の側端面同士がぴったりと合って隙間が生じないはずであるが、実際には台紙20の厚さや、熱可塑性樹脂層30の厚さがあるため、f=C/2とすると、隙間が生じてしまうことが判明している。隙間が生じても、ある程度の範囲内であれば、ピンホールの発生を招くことはない。
【0074】
主縁片31同士の間に極端な隙間が生じると、蓋材をシールする際に、シール不良を招く結果となる。そこで、f>C/2とすることにより、成型時にコーナー板22上において主縁片31の側端面同士が重なることなく、また隙間も許容範囲内に収まり安全に成型できる。
【0075】
なお台紙20の厚さをtとした時、さらにf>C/2+2tとすることにより、隙間はより少なくなり、さらに安全性が増す。
【0076】
次に、
図10は、本発明に係る紙製トレーの第3の実施態様におけるブランクシートのコーナー部分の拡大図であり、切り欠き11xの説明図である。また
図11は、
図10に示したブランクシートを紙製トレー300に成型した状態を示した平面説明図である。
【0077】
この例では、主縁片31の両端部に切り欠き11xを台紙20に設けたものである。このようにすることにより、最も台紙20が重なり易い部分の台紙20を予め除去することになり、主縁片31同士の重なりが、より生じ難くなる効果を有する。なお、この切り欠き11xの内側には、コーナー縁片32が重ねられているから、この切り欠き11xから光が入射することはない。このため、紙製トレー300に遮光性の蓋材を被せることによってその内容物を光から守ることができる。
【0078】
なお、主縁片31の代わりに主側面板21に切り欠きを設けた場合も同様である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・底板
2・・・側面板 21・・・主側面板 22・・・コーナー板
3・・・縁片 31・・・主縁片 32・・・コーナー縁片
4・・・フランジ
5・・・折り線
6・・・折り線
10・・・角部
11・・・切除された部分
11x・・・切り欠き
12・・・窓抜き部
20・・・台紙
20a・・・紙質層
20b・・・遮光層
20c・・・紙質層
30・・・熱可塑性樹脂層
40・・・ブランクス
100・・・紙製トレー
200・・・紙製トレー
300・・・紙製トレー