IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図1
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図2
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図3
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図4
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図5
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図6
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図7
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図8
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図9
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図10
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図11
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図12
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図13
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図14
  • 特許-炭化珪素エピタキシャル基板 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】炭化珪素エピタキシャル基板
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
C30B29/36 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020186400
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076126
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎薗 太郎
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501809(JP,A)
【文献】特開2015-160750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板と、
前記第1主面に接する第1炭化珪素エピタキシャル層とを備えた炭化珪素エピタキシャル基板であって、
前記第1炭化珪素エピタキシャル層は、前記第1主面に接する第3主面と、前記第3主面と反対側の第4主面とを含み、
前記第4主面を、1辺の長さが10mmである複数の正方領域に区分した場合、前記複数の正方領域は、前記複数の正方領域の最外周に位置する複数の外周領域と、前記複数の外周領域に囲まれた複数の中央領域とにより構成されており、
前記炭化珪素エピタキシャル基板の局所厚みばらつきが1μm以上である前記複数の外周領域の数は、5個以下であり、
前記第2主面の直径は、150mm以上であり、
前記複数の外周領域におけるLTVの平均値は、前記複数の中央領域におけるLTVの平均値の3倍よりも小さい、炭化珪素エピタキシャル基板。
【請求項2】
前記炭化珪素エピタキシャル基板の全体厚みばらつきは、8μm以下である、請求項1に記載の炭化珪素エピタキシャル基板。
【請求項3】
前記複数の外周領域において、前記炭化珪素エピタキシャル基板の局所厚みばらつきの平均値は、0.6μm以下である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素エピタキシャル基板。
【請求項4】
前記第1炭化珪素エピタキシャル層の厚みは、15μm以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素エピタキシャル基板。
【請求項5】
前記炭化珪素基板は、前記第1主面および前記第2主面の各々に連なる外周側面を有し、
前記外周側面に接する第2炭化珪素エピタキシャル層をさらに備え、
前記第2炭化珪素エピタキシャル層は、前記第1主面と前記外周側面との境界に接し、かつ前記第2主面と前記外周側面との境界から離れている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素エピタキシャル基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素エピタキシャル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-33068号公報(特許文献1)には、炭化珪素単結晶基板の裏面に保護膜を形成する工程が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-33068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する際、キャリアガスである水素ガスが炭化珪素基板の裏面に回り込むことで、炭化珪素基板の裏面の外周部のエッチングが行われる。炭化珪素基板の裏面の外周部がエッチングされると、炭化珪素基板の外周部の厚みが、炭化珪素基板の中央部の厚みよりも小さくなる。炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する前に、炭化珪素基板の裏面に保護膜を形成することで、炭化珪素基板の裏面がエッチングされることをある程度抑制することができる。
【0005】
しかしながら、上記の方法を用いて炭化珪素基板上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する場合には、水素ガスが炭化珪素基板の外周部において裏面とカーボンキャップとの間に入り込み、炭化珪素基板の裏面の外周部がエッチングされる。従って、上記の方法を用いて製造した炭化珪素エピタキシャル基板を使用する場合には、露光不良が発生することがある。
【0006】
本開示の目的は、露光不良の発生を抑制可能な炭化珪素エピタキシャル基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板は、炭化珪素基板と、第1炭化珪素エピタキシャル層とを備えている。炭化珪素基板は、第1主面と、第1主面と反対側の第2主面とを有している。第1炭化珪素エピタキシャル層は、第1主面に接している。第1炭化珪素エピタキシャル層は、第1主面に接する第3主面と、第3主面と反対側の第4主面とを含む。第4主面を、1辺の長さが10mmである複数の正方領域に区分した場合、複数の正方領域は、複数の正方領域の最外周に位置する複数の外周領域と、複数の外周領域に囲まれた複数の中央領域とにより構成されている。炭化珪素エピタキシャル基板の局所厚みばらつきが1μm以上である複数の外周領域の数は、5個以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、露光不良の発生を抑制可能な炭化珪素エピタキシャル基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の構成を示す平面模式図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面模式図である。
図3図3は、TTVの定義を示す断面模式図である。
図4図4は、LTVの測定領域を示す平面模式図である。
図5図5は、LTVの定義を示す断面模式図である。
図6図6は、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の構成を示す断面模式図である。
図7図7は、炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置の構成を示す一部断面模式図である。
図8図8は、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図9図9は、炭化珪素基板を準備する工程を示す断面模式図である。
図10図10は、炭化珪素基板の裏面および外周側面にカーボン層を形成した状態を示す断面模式図である。
図11図11は、炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程を示す断面模式図である。
図12図12は、炭化珪素基板の裏面および外周側面にカーボン層を形成した状態の変形例を示す断面模式図である。
図13図13は、炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程の変形例を示す断面模式図である。
図14図14は、サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板の正方領域(外周領域および中央領域)におけるLTVの値を示すマップである。
図15図15は、サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板の正方領域(外周領域および中央領域)におけるLTVの値を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、炭化珪素基板40と、第1炭化珪素エピタキシャル層10とを備えている。炭化珪素基板40は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有している。第1炭化珪素エピタキシャル層10は、第1主面1に接している。第1炭化珪素エピタキシャル層10は、第1主面1に接する第3主面3と、第3主面3と反対側の第4主面4とを含む。第4主面4を、1辺の長さが10mmである複数の正方領域50に区分した場合、複数の正方領域50は、複数の正方領域50の最外周に位置する複数の外周領域5と、複数の外周領域5に囲まれた複数の中央領域6とにより構成されている。炭化珪素エピタキシャル基板100の局所厚みばらつきが1μm以上である複数の外周領域5の数は、5個以下である。
【0012】
(2)上記(1)に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、炭化珪素エピタキシャル基板100の全体厚みばらつきは、8μm以下であってもよい。
【0013】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、複数の外周領域5において、炭化珪素エピタキシャル基板100の局所厚みばらつきの平均値は、0.6μm以下であってもよい。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みは、15μm以上であってもよい。
【0015】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、炭化珪素基板40は、第1主面1および第2主面2の各々に連なる外周側面9を有していてもよい。炭化珪素エピタキシャル基板100は、外周側面9に接する第2炭化珪素エピタキシャル層20をさらに備えていてもよい。第2炭化珪素エピタキシャル層20は、第1主面1と外周側面9との境界に接し、かつ第2主面2と外周側面9との境界から離れていてもよい。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて、本開示の実施形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”-”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
【0016】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の構成を示す平面模式図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面模式図である。
【0017】
図1に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、第4主面4と、外周側面9とを有している。第4主面4は、第1方向101および第2方向102の各々に沿って拡がっている。第1方向101は、たとえば<11-20>方向である。第2方向102は、たとえば<1-100>方向である。
【0018】
第4主面4は、{0001}面または{0001}面に対して傾斜した平面である。具体的には、第4主面4は、たとえば(0001)面または(0001)面に対して8°以下の角度だけ傾斜した面である。第4主面4は、(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下の角度だけ傾斜した面であってもよい。第4主面4が{0001}面に対して傾斜している場合、{0001}面に対する第4主面4の傾斜方向(オフ方向)は、たとえば<11-20>方向である。{0001}面に対する傾斜角(オフ角)は、2°以上であることが好ましい。
【0019】
図1に示されるように、外周側面9は、オリエンテーションフラット部7と、円弧状部8とを有している。円弧状部8は、オリエンテーションフラット部7に連なっている。図1に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向から見て、オリエンテーションフラット部7は、第1方向101に沿って延在している。第2主面2の最大径(直径W1)は、たとえば150mmである。直径W1は、200mmでもよいし、250mmでもよい。直径W1の上限は、特に限定されないが、たとえば300mmであってもよい。つまり、直径W1は150mm以上300mm以下であってもよい。第2主面2に対して垂直な方向に見て、直径W1は、外周側面9上の異なる2点間の最長直線距離である。
【0020】
図2に示す断面は、第2主面2に対して垂直な方向に見て、かつオリエンテーションフラット部7を垂直に二等分する断面である。図2に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、炭化珪素基板40と、第1炭化珪素エピタキシャル層10とを有している。炭化珪素基板40は、第1主面1と、第2主面2と、外周側面9とを有している。第2主面2は、第1主面1と反対側にある。外周側面9は、第1主面1および第2主面2の各々に連なっている。
【0021】
図2に示されるように、第1炭化珪素エピタキシャル層10は、第1主面1に接している。第1炭化珪素エピタキシャル層10は、第3主面3と、第4主面4とを有している。第4主面4は、第3主面3の反対側にある。第3主面3は、第1主面1に接している。第4主面4は、炭化珪素エピタキシャル基板100の表面である。第2主面2は、炭化珪素エピタキシャル基板100の裏面である。
【0022】
炭化珪素基板40および第1炭化珪素エピタキシャル層10の各々は、たとえば炭化珪素単結晶により構成されている。具体的には、炭化珪素基板40および第1炭化珪素エピタキシャル層10の各々は、たとえばポリタイプ4Hの炭化珪素から構成されていてもよい。炭化珪素基板40の厚みは、たとえば200μm以上500μm以下である。
【0023】
炭化珪素基板40および第1炭化珪素エピタキシャル層10の各々は、キャリアを含んでいる。炭化珪素基板40および第1炭化珪素エピタキシャル層10の各々は、たとえばn型不純物としての窒素(N)を含んでいる。炭化珪素基板40および第1炭化珪素エピタキシャル層10の各々の導電型は、たとえばn型(第1導電型)である。第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みは、たとえば15μm以上である。第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みの下限は、特に限定されないが、たとえば20μm以上であってもよいし、25μm以上であってもよい。第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みの上限は、特に限定されないが、たとえば100μm以下であってもよいし、50μm以下であってもよい。
【0024】
次に、第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みの測定方法について説明する。
【0025】
第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みは、たとえばFTIR(Fourier Transform InfraRed spectrometer)を用いて測定することができる。測定装置は、たとえば島津製作所製フーリエ変換赤外分光光度計(IRPrestige-21)である。FTIRによる炭化珪素層エピタキシャル層の厚みの測定は、炭化珪素層エピタキシャル層と炭化珪素基板40とのキャリア濃度差により生じる光学定数差を利用して求められる。測定波数範囲は、たとえば3400cm-1から2400cm-1までの範囲である。波数間隔は、たとえば4cm-1程度である。
【0026】
具体的には、赤外光を照射して、第1炭化珪素エピタキシャル層10の第4主面4からの反射と、第1炭化珪素エピタキシャル層10と炭化珪素基板40との界面からの反射による干渉を計測することにより、第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みが計測される。
【0027】
次に、全体厚みばらつき(TTV:Total Thickness Variation)について説明する。図3は、TTVの定義を示す断面模式図である。
【0028】
TTV=|T1-T2| ・・・(数1)
TTVは、たとえば以下の手順で測定される。まず、平坦な吸着面に炭化珪素エピタキシャル基板100の第2主面2が全面吸着される。次に、第4主面4の全体画像が光学的に取得される。図3および数1に示されるように、TTVとは、平坦な吸着面に第2主面2を全面吸着させた状態で、第2主面2から第4主面4の最高点(第1最高点11)までの高さ(第1高さT1)から、第2主面2から第4主面4の最低点(第1最低点12)までの高さ(第2高さT2)を差し引いた値である。言い換えれば、TTVは、第2主面2に対して垂直な方向において、第4主面4と第2主面2との最長距離から、第4主面4と第2主面2との最短距離を差し引いた値である。つまり、TTVは、第1最高点11を通りかつ第2主面2と平行な平面(第1平面L1)と、第1最低点12を通りかつ第2主面2と平行な平面(第2平面L2)との距離である。
【0029】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100のTTVは、たとえば8μm以下である。TTVの上限は、特に限定されないが、たとえば5μm以下であってもよいし、3μm以下であってもよい。TTVの下限は、特に限定されないが、たとえば0.5μm以上であってもよいし、1μm以上であってもよい。
【0030】
次に、局所厚みばらつき(LTV:Local Thickness Variation)について説明する。図4は、LTVの測定領域を示す平面模式図である。
【0031】
図4に示されるように、第4主面4は、1辺の長さW2が10mmである複数の正方領域50に区分される。具体的には、第4主面4の直径が150mmの場合、たとえば第4主面4に外接する150mm×150mmの正方形を想定する。150mm×150mmの正方形は、10mm×10mmの正方領域(15×15=225個)に区分される。第4主面4に対して垂直な方向に見て、外周側面9に囲まれている正方領域50の数は、145個である。第4主面4に対して垂直な方向に見て、外周側面9と交差する正方領域は、一部が欠けており完全な正方領域とはならないため、第4主面4を構成する正方領域50とはみなさない。
【0032】
複数の正方領域50は、複数の外周領域5と、複数の中央領域6とにより構成される。複数の外周領域5は、複数の正方領域50の最外周に位置している。別の観点から言えば、複数の外周領域5の各々は、外周側面9と交差している正方領域50に接する正方領域50である。図4において、ハッチングが付されている領域が、複数の外周領域5である。複数の中央領域6は、複数の外周領域5に囲まれている。別の観点から言えば、複数の中央領域6の各々は、外周側面9と交差している正方領域50から離間している正方領域50である。なお、第4主面4に垂直な方向に見て、複数の正方領域50の各々一辺は、オリエンテーションフラット部7の延在方向に平行である。
【0033】
図4に示されるように、第4主面4の直径が150mmの場合、第4主面4は、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分される。145個の正方領域50の各々において、LTVが測定される。外周領域5の数は、36個である。中央領域6の数は、109個である。
【0034】
次に、LTVの定義について説明する。図5は、LTVの定義を示す断面模式図である。
【0035】
LTV=|T4-T3| ・・・(数2)
LTVは、たとえば以下の手順で測定される。まず、平坦な吸着面に炭化珪素エピタキシャル基板100の第2主面2が全面吸着される。次に、正方領域50の画像が光学的に取得される。図5および数2に示されるように、LTVとは、平坦な吸着面に第2主面2を全面吸着させた状態で、第2主面2から第4主面4の最高点(第2最高点14)までの高さ(第4高さT4)から、第2主面2から第4主面4の最低点(第2最低点13)までの高さ(第3高さT3)を差し引いた値である。言い換えれば、LTVは、第2主面2に対して垂直な方向において、第4主面4と第2主面2との最長距離から、第4主面4と第2主面2との最短距離を差し引いた値である。つまり、LTVは、第2最高点14を通りかつ第2主面2と平行な平面(第4平面L4)と、第2最低点13を通りかつ第2主面2と平行な平面(第3平面L3)との距離である。
【0036】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、炭化珪素エピタキシャル基板100の局所厚みばらつき(LTV)が1μm以上である複数の外周領域5の数は、5個以下である。別の観点から言えば、たとえば、第4主面4の直径が150mmの場合、LTVが1μm未満である複数の外周領域5の数は、31個以上である。LTVが1μm以上である複数の外周領域5の数は、LTVが1μm未満である複数の外周領域5の数よりも少ない。
【0037】
LTVが1μm以上である複数の外周領域5の数の上限は、特に限定されないが、たとえば4個以下であってもよいし、3個以下であってもよい。LTVが1μm以上である複数の外周領域5の数の下限は、特に限定されないが、たとえば0個であってもよいし、1個以上であってもよい。LTVが1.3μm以上である複数の外周領域5の数は、特に限定されないが、たとえば4個以下であってもよいし、3個以下であってもよい。
【0038】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、複数の外周領域5において、炭化珪素エピタキシャル基板100の局所厚みばらつき(LTV)の平均値は、0.6μm以下であってもよい。複数の外周領域5において、LTVの平均値の上限は、特に限定されないが、たとえば0.55μm以下であってもよいし、0.5μm以下であってもよい。複数の外周領域5において、LTVの平均値の下限は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上であってもよいし、0.2μm以上であってもよい。
【0039】
複数の外周領域5におけるLTVの平均値は、複数の中央領域6におけるLTVの平均値よりも大きい。複数の外周領域5におけるLTVの平均値は、複数の中央領域6におけるLTVの平均値の3倍よりも小さくてもよいし、複数の中央領域6におけるLTVの平均値の2倍よりも小さくてもよい。
【0040】
なお、TTVおよびLTVは、たとえばCorning Tropel社製の「Tropel FlatMaster(登録商標)」を用いることにより測定可能である。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の構成について説明する。第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、主に外周側面9に接する第2炭化珪素エピタキシャル層20を有している点において、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100と異なっており、その他の構成は、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100と同様である。以下、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100と異なる構成を中心に説明する。
【0042】
図6は、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の構成を示す断面模式図である。図6に示されるように、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、第1炭化珪素エピタキシャル層10と、第2炭化珪素エピタキシャル層20と、第3炭化珪素エピタキシャル層30とを有している。第1炭化珪素エピタキシャル層10は、第1主面1において炭化珪素基板40に接している。第2炭化珪素エピタキシャル層20は、外周側面9において炭化珪素基板40に接している。
【0043】
第3炭化珪素エピタキシャル層30は、第1炭化珪素エピタキシャル層10および第2炭化珪素エピタキシャル層20の各々に連なっている。第3炭化珪素エピタキシャル層30は、第1炭化珪素エピタキシャル層10と第2炭化珪素エピタキシャル層20との間に位置している。第3炭化珪素エピタキシャル層30は、第1炭化珪素エピタキシャル層10の外周側に位置している。第3炭化珪素エピタキシャル層30は、第1炭化珪素エピタキシャル層10を取り囲んでいる。第3炭化珪素エピタキシャル層30は、第2炭化珪素エピタキシャル層20上に配置されている。
【0044】
炭化珪素基板40は、第1境界41と、第2境界42とを有している。第1境界41は、第1主面1と外周側面9との境界である。第2境界42は、第2主面2と外周側面9との境界である。外周側面9は、第1側面31と、第2側面32とを有している。第2側面32は、第1側面31に連なっている。第1側面31は、第1境界41において第1主面1に連なっている。第2側面32は、第2境界42において第2主面2に連なっている。
【0045】
第2炭化珪素エピタキシャル層20は、第1側面31に接している。第2炭化珪素エピタキシャル層20は、第2側面32から離間している。第2炭化珪素エピタキシャル層20は、第1主面1と外周側面9との境界(第1境界41)に接し、かつ第2主面2と外周側面9との境界(第2境界42)から離れている。第1炭化珪素エピタキシャル層10および第3炭化珪素エピタキシャル層30の各々は、第1境界41に接している。第1炭化珪素エピタキシャル層10および第3炭化珪素エピタキシャル層30の各々は、第2境界42から離間している。
【0046】
(炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置)
次に、炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置の構成について説明する。図7は、炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置の構成を示す一部断面模式図である。図7に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200は、たとえばホットウォール方式の横型CVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。図7に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200は、反応室201と、ガス供給部235と、制御部245と、発熱体203、石英管204、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル(図示せず)とを主に有している。
【0047】
発熱体203は、たとえば筒状の形状を有しており、内部に反応室201を形成している。発熱体203は、たとえば黒鉛製である。発熱体203は、石英管204の内部に設けられている。断熱材は、発熱体203の外周を取り囲んでいる。誘導加熱コイルは、たとえば石英管204の外周面に沿って巻回されている。誘導加熱コイルは、外部電源(図示せず)により、交流電流が供給可能に構成されている。これにより、発熱体203が誘導加熱される。結果として、反応室201が発熱体203により加熱される。
【0048】
反応室201は、発熱体203の内壁面205に取り囲まれて形成された空間である。反応室201には、炭化珪素基板40を保持するサセプタ210が設けられる。サセプタ210は、炭化珪素により構成されている。炭化珪素基板40は、サセプタ210に載置される。サセプタ210は、ステージ202上に配置される。ステージ202は、回転軸209によって自転可能に支持されている。ステージ202が回転することで、サセプタ210が回転する。
【0049】
炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200は、ガス導入口207およびガス排気口208をさらに有している。ガス排気口208は、図示しない排気ポンプに接続されている。図7中の矢印は、ガスの流れを示している。ガスは、ガス導入口207から反応室201に導入され、ガス排気口208から排気される。反応室201内の圧力は、ガスの供給量と、ガスの排気量とのバランスによって調整される。
【0050】
ガス供給部235は、反応室201に、原料ガスとドーパントガスとキャリアガスとを含む混合ガスを供給可能に構成されている。具体的には、ガス供給部235は、たとえば第1ガス供給部231と、第2ガス供給部232と、第3ガス供給部233と、第4ガス供給部234とを含んでいる。
【0051】
第1ガス供給部231は、たとえば炭素原子を含む第1ガスを供給可能に構成されている。第1ガス供給部231は、たとえば第1ガスが充填されたガスボンベである。第1ガスは、たとえばプロパン(C38)ガスである。第1ガスは、たとえばメタン(CH4)ガス、エタン(C26)ガス、アセチレン(C22)ガス等であってもよい。
【0052】
第2ガス供給部232は、たとえばシランガスを含む第2ガスを供給可能に構成されている。第2ガス供給部232は、たとえば第2ガスが充填されたガスボンベである。第2ガスは、たとえばシラン(SiH4)ガスである。第2ガスは、シランガスと、シラン以外の他のガスとの混合ガスでもよい。
【0053】
第3ガス供給部233は、たとえば窒素原子を含む第3ガスを供給可能に構成されている。第3ガス供給部233は、たとえば第3ガスが充填されたガスボンベである。第3ガスは、ドーピングガスである。第3ガスは、たとえばアンモニアガスである。アンモニアガスは、三重結合を有する窒素ガスに比べて熱分解されやすい。
【0054】
第4ガス供給部234は、たとえば水素などの第4ガス(キャリアガス)を供給可能に構成されている。第4ガス供給部234は、たとえば水素が充填されたガスボンベである。
【0055】
制御部245は、ガス供給部235から反応室201に供給される混合ガスの流量を制御可能に構成されている。具体的には、制御部245は、第1ガス流量制御部241と、第2ガス流量制御部242と、第3ガス流量制御部243と、第4ガス流量制御部244とを含んでいてもよい。各制御部は、たとえばMFC(Mass Flow Controller)であってもよい。制御部245は、ガス供給部235とガス導入口207との間に配置されている。
【0056】
(炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法)
次に、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法について説明する。図8は、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【0057】
まず、炭化珪素基板40を準備する工程(S10:図8)が実施される。たとえば昇華法により製造された炭化珪素単結晶からなるインゴットがワイヤーソーによりスライスされることにより、炭化珪素基板40が準備される。炭化珪素基板40は、たとえばポリタイプ4Hの炭化珪素から構成されている。
【0058】
図9は、炭化珪素基板40を準備する工程を示す断面模式図である。図9に示されるように、炭化珪素基板40は、第1主面1と、第2主面2と、外周側面9とを有している。第2主面2は、第1主面1の反対側にある。外周側面9は、第1主面1および第2主面2の各々に連なっている。
【0059】
次に、炭化珪素基板40の裏面および外周側面9にカーボン層を形成する工程(S20:図8)が実施される。具体的には、スピンコート法を用いて、炭化珪素基板40の第2主面2(裏面)にレジストを塗布する。レジストは、たとえば東京応化工業株式会社製のTHMR-iP5700を使用することができる。炭化珪素基板40の回転速度は、たとえば3000RPMである。以上のように、粘性が高いレジストを使用し、炭化珪素基板40の回転速度を低くする。これにより、第2主面2に塗布されたレジストが外周側面9に回り込む。レジストは、第2主面2および外周側面9の各々に接する。次に、レジストを高温で加熱する。これにより、レジストが炭化する。結果として、第2主面2および外周側面9の各々に接するカーボン層55が形成される。
【0060】
図10は、炭化珪素基板40の裏面および外周側面9にカーボン層55を形成した状態を示す断面模式図である。図10に示されるように、カーボン層55は、第1領域51と、第2領域52と、第3領域53とを有している。第1領域51は、第2主面2に接している。第2領域52は、外周側面9に接している。第3領域53は、第1領域51および第2領域52の各々に接している。第3領域53は、第1領域51と第2領域52との間に位置している。第3領域53は、第1領域51の外側に位置している。
【0061】
次に、炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程(S30:図8)が実施される。図11は、炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程を示す断面模式図である。図11に示されるように、サセプタ210には、基板配置部60が形成されている。基板配置部60は、サセプタ210に形成された凹部である。基板配置部60は、底面61と、内周面62とにより形成されている。底面61は、内周面62に連なっている。カーボン層55が基板配置部60の底面61においてサセプタ210に接するように、炭化珪素基板40が基板配置部60に載置される。
【0062】
次に、反応室201が減圧される。具体的には、反応室201の圧力が大気圧からたとえば1×10-6Pa程度に低減された後、炭化珪素基板40の昇温が開始される。昇温の途中において、第4ガス供給部234からキャリアガスである水素(H2)ガスが反応室201に導入される。
【0063】
次に、原料ガス、ドーパントガスおよびキャリアガスが、反応室201に供給される。具体的には、たとえばシランとプロパンとアンモニアと水素とを含む混合ガスが、反応室201に導入される。反応室201において、それぞれのガスが熱分解される。成長温度は、たとえば1550℃以上1750℃以下である。
【0064】
混合ガスのC/Si比が、たとえば0.8以上2.2以下程度となるように、シランおよびプロパンとの流量が調整される。反応室201の圧力は、たとえば6kPaである。反応室201に供給される第4ガス(水素ガス)の流量は、たとえば100slm以上150slm以下であってもよい。
【0065】
図11に示されるように、炭化珪素基板40の第1主面1上に第1炭化珪素エピタキシャル層10が形成される。炭化珪素基板40の外周側面9は、カーボン層55によって保護されている。この場合、炭化珪素基板40の外周側面9には、炭化珪素エピタキシャル層が形成されない。エピタキシャル成長が終了した後、カーボン層55を熱酸化することにより、カーボン層55が炭化珪素エピタキシャル基板100から除去される。以上により、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100が製造される(図1および図2参照)。
【0066】
次に、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法について説明する。第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法は、外周側面9の一部にカーボン層55が形成される点において、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法と異なっており、その他の点においては、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法と同様である。以下、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法と異なる点を中心に説明する。
【0067】
まず、炭化珪素基板40を準備する工程(S10:図8)が実施される。第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法における炭化珪素基板40を準備する工程(S10:図8)は、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法における炭化珪素基板40を準備する工程(S10:図8)と同じである。
【0068】
次に、炭化珪素基板40の裏面および外周側面9にカーボン層55を形成する工程(S20:図8)が実施される。具体的には、スピンコート法を用いて、炭化珪素基板40の第2主面2(裏面)にレジストを塗布する。レジストの粘性または炭化珪素基板40の回転速度を変更することにより、炭化珪素基板40の外周側面9に流れ出すレジストの量を調整することができる。
【0069】
図12は、炭化珪素基板40の裏面および外周側面9にカーボン層55を形成した状態の変形例を示す断面模式図である。図12に示されるように、炭化珪素基板40の外周側面9は、第1側面31と、第2側面32とを有している。カーボン層55の第1領域51は、第2主面2に接している。カーボン層55の第2領域52は、第2側面32に接している。カーボン層55の第2領域52は、第1側面31から離間している。別の観点から言えば、炭化珪素基板40の第1側面31は、カーボン層55から露出している。カーボン層55は、炭化珪素基板40の第2境界42に接し、かつ第1境界41から離間している。
【0070】
図13は、炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程の変形例を示す断面模式図である。図13に示されるように、たとえばシランとプロパンとアンモニアと水素とを含む混合ガス熱分解されることにより、炭化珪素基板40上に、第1炭化珪素エピタキシャル層10と、第2炭化珪素エピタキシャル層20と、第3炭化珪素エピタキシャル層30とが形成される。第1炭化珪素エピタキシャル層10は、第1主面1において炭化珪素基板40に接している。第2炭化珪素エピタキシャル層20は、外周側面9の第1側面31において炭化珪素基板40に接している。第3炭化珪素エピタキシャル層30は、第1炭化珪素エピタキシャル層10および第2炭化珪素エピタキシャル層20の各々に連なっている。
【0071】
第2炭化珪素エピタキシャル層20は、第1主面1と外周側面9との境界(第1境界41)に接し、かつ第2主面2と外周側面9との境界(第2境界42)から離れている。炭化珪素基板40の外周側面9の第2側面32は、カーボン層55によって保護されている。この場合、炭化珪素基板40の外周側面9の第2側面32には、炭化珪素エピタキシャル層が形成されない。次に、カーボン層55が炭化珪素基板40から除去される。以上により、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100が製造される(図6参照)。
【0072】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0073】
炭化珪素基板40上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する際、キャリアガスである水素ガスが炭化珪素基板40の裏面(第2主面2)に回り込むことで、炭化珪素基板40の裏面の外周部のエッチングが行われる。炭化珪素基板40の裏面の外周部がエッチングされると、炭化珪素基板40の外周部の厚みが、炭化珪素基板40の中央部の厚みよりも小さくなる。炭化珪素基板40上に炭化珪素エピタキシャル層を形成する前に、炭化珪素基板40の裏面にカーボンキャップを形成することで、炭化珪素基板40の裏面がエッチングされることをある程度抑制することができる。しかしながら実際には、炭化珪素基板40の外周部において、水素ガスが炭化珪素基板40の裏面とカーボンキャップとの間に入り込み、炭化珪素基板40の裏面の外周部がエッチングされる。結果として、炭化珪素エピタキシャル基板100の外周領域5におけるLTVは大きくなっていた。
【0074】
炭化珪素エピタキシャル基板100を用いて炭化珪素半導体装置を作製する工程においては、通常、フォトリソグラフィ技術が使用される。たとえば炭化珪素エピタキシャル基板100上に設けられたフォトレジストにパターンを形成する際、ステッパーを用いて露光が行われる。炭化珪素エピタキシャル基板100において、LTVが大きい(具体的には1μm以上程度)外周領域5の数が多い場合には、露光不良が発生しやすくなる。
【0075】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、炭化珪素エピタキシャル基板100の局所厚みばらつき(LTV)が1μm以上である複数の外周領域5の数は、5個以下である。これにより、露光不良の発生を抑制することができる。本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、たとえば炭化珪素基板40の裏面および外周側面9の各々にカーボン層55を形成した状態で、炭化珪素基板40上に炭化珪素エピタキシャル層を形成することにより得ることができる。また炭化珪素基板40の裏面および外周側面9の各々をカーボン層55で保護することで、外周側面9に欠陥が発生することを抑制することができる。結果として、第1炭化珪素エピタキシャル層10に欠陥が混入することを抑制することができる。
【0076】
また本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、炭化珪素エピタキシャル基板100の全体厚みばらつきは、8μm以下であってもよい。これにより、露光不良の発生をさらに抑制することができる。
【0077】
さらに本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、複数の外周領域5において、炭化珪素エピタキシャル基板100の局所厚みばらつきの平均値は、0.6μm以下であってもよい。これにより、露光不良の発生をさらに抑制することができる。
【0078】
さらに本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みは、15μm以上であってもよい。炭化珪素エピタキシャル層の厚みを大きくするためには、エピタキシャル成長の時間を長くする必要があるため、炭化珪素基板40の裏面のエッチング量が大きくなる。そのため、第1炭化珪素エピタキシャル層10の厚みが大きくなると、外周領域5におけるLTVが大きくなる傾向がある。本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、炭化珪素エピタキシャル層の厚みが大きい場合であっても、露光不良の発生を抑制することができる。
【実施例
【0079】
(サンプル準備)
まず、サンプル1および2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100を準備した。第4主面4の最大径(直径W1)は、150mmである。サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、比較例である。サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、実施例である。サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板100を製造する工程においては、炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程の前に、炭化珪素基板40の裏面および外周側面9にカーボン層55を形成する工程は実施されなかった。一方、サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100を製造する工程においては、炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程の前に、炭化珪素基板40の裏面および外周側面9にカーボン層55を形成する工程が実施された(図10参照)。
【0080】
(測定方法)
Corning Tropel社製の「Tropel FlatMaster(登録商標)」を使用して、TTVおよびLTVを測定した。LTVの測定領域は、図4に示す領域とした。図4に示されるように、第4主面4は、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分された。145個の正方領域50の各々において、LTVが測定された。外周領域5の数は、36個である。中央領域6の数は、109個である。
【0081】
(測定結果)
図14は、サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の正方領域50(外周領域5および中央領域6)におけるLTVの値を示すマップである。図15は、サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の正方領域50(外周領域5および中央領域6)におけるLTVの値を示すマップである。図14および図15においては、正方領域50は、6つの範囲に分類されている。具体的には、145個の正方領域50は、LTVの値が1.3μm以上の領域と、LTVの値が1.0μm以上1.3μm未満の領域と、LTVの値が0.7μm以上1.0μm未満の領域と、LTVの値が0.5μm以上0.7μm未満の領域と、LTVの値が0.3μm以上0.5μm未満の領域と、LTVの値が0.3μm未満の領域とに分類されている。
【0082】
【表1】
【0083】
表1は、炭化珪素エピタキシャル基板100のTTVと、LTVが1μm以上である外周領域5の数(最大は36)と、外周領域5におけるLTVの平均値と、中央領域6におけるLTVの平均値とを示している。表1に示されるように、サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板100のTTVは、10.0μmであった。サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100のTTVは、2.1μmであった。サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板100において、LTVが1μm以上である外周領域5の数は、18であった。サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100において、LTVが1μm以上である外周領域5の数は、4であった。
【0084】
サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板100において、36個の外周領域5におけるLTVの平均値は、0.98μmであった。サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100において、36個の外周領域5におけるLTVの平均値は、0.50μmであった。サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板100において、109個の中央領域6におけるLTVの平均値は、0.31μmであった。サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100において、109個の中央領域6におけるLTVの平均値は、0.29μmであった。以上のように、サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、外周領域5におけるLTVを大幅に低減可能であることが確かめられた。
【0085】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 第1主面
2 第2主面
3 第3主面
4 第4主面
5 外周領域
6 中央領域
7 オリエンテーションフラット部
8 円弧状部
9 外周側面
10 第1炭化珪素エピタキシャル層
11 第1最高点
12 第1最低点
13 第2最低点
14 第2最高点
20 第2炭化珪素エピタキシャル層
30 第3炭化珪素エピタキシャル層
31 第1側面
32 第2側面
40 炭化珪素基板
41 第1境界
42 第2境界
50 正方領域
51 第1領域
52 第2領域
53 第3領域
55 カーボン層
60 基板配置部
61 底面
62 内周面
100 炭化珪素エピタキシャル基板
101 第1方向
102 第2方向
200 製造装置
201 反応室
202 ステージ
203 発熱体
204 石英管
205 内壁面
207 ガス導入口
208 ガス排気口
209 回転軸
210 サセプタ
231 第1ガス供給部
232 第2ガス供給部
233 第3ガス供給部
234 第4ガス供給部
235 ガス供給部
241 第1ガス流量制御部
242 第2ガス流量制御部
243 第3ガス流量制御部
244 第4ガス流量制御部
245 制御部
L1 第1平面
L2 第2平面
L3 第3平面
L4 第4平面
T1 第1高さ
T2 第2高さ
T3 第3高さ
T4 第4高さ
W1 直径
W2 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15