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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】推奨ドア案内装置及び推奨ドア案内方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240827BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20240827BHJP
【FI】
B60J5/00 Z
E05F15/73
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020188273
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077415
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大泉 透
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/109925(WO,A1)
【文献】特開2009-190560(JP,A)
【文献】特開2018-167699(JP,A)
【文献】特開2007-049219(JP,A)
【文献】特開2019-040539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0208537(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101712298(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
E05F 15/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたドアの周囲に存在する物体を検出するセンサと、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記ドアが前記センサによって検出された前記物体と干渉した場合における前記ドアに対する傷害度を推定し、
推定された前記傷害度に基づいて前記ドアを開けることに関する推奨度を算出し、
前記傷害度が低い場合は前記傷害度が高い場合と比較して前記推奨度が高くなるように前記推奨度を算出し、
前記推奨度に関する情報を出力し、
前記物体がエネルギーを吸収する物体である場合、前記物体がエネルギーを吸収しない物体である場合と比較して前記傷害度が小さくなるように前記傷害度を推定する
ことを特徴とする推奨ドア案内装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ドアから所定範囲内において前記物体が検出された場合、前記傷害度を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ドアと前記物体との距離が短いほど前記傷害度が大きくなるように前記傷害度を推定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項4】
前記センサはカメラであり、
前記カメラは前記ドアの周囲を撮像し、
前記コントローラは、前記カメラによって撮像された撮像画像に基づいて前記傷害度を推定する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記撮像画像から前記物体の硬度または表面材質を算出し、前記硬度または表面材質に基づいて前記傷害度を推定する
ことを特徴とする請求項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項6】
前記ドアは第1ドア及び第2ドアを含み、
前記コントローラは、
前記第1ドアに係る推奨度、及び前記第2ドアに係る推奨度を算出し、
前記第1ドア及び前記第2ドアのうち、前記推奨度が高い方を推奨ドアとして決定し、
決定された前記推奨ドアを案内する情報を出力する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項7】
前記第1ドア及び前記第2ドアのうち、一方は前記車両の右側の後部座席ドアであり、他方は前記車両の左側の後部座席ドアである
ことを特徴とする請求項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項8】
前記硬度または前記表面材質に関するデータベースを有する記憶装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記撮像画像と前記データベースとを照らし合わせ前記硬度または前記表面材質を算出する
ことを特徴とする請求項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項9】
前記硬度または前記表面材質に関するデータベースはクラウドサーバに格納されており、
前記コントローラは前記撮像画像を前記クラウドサーバに送信し、前記クラウドサーバにて算出された前記硬度または前記表面材質に関する情報を取得する
ことを特徴とする請求項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項10】
前記情報の出力には、音声による出力、車内に設置されたディスプレイへの出力、前記ドアに設置されたライトを点灯させること、の少なくともいずれか1つが含まれる
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項11】
車両に搭載されたドアの周囲に存在する物体を検出し、
前記ドアが検出された前記物体と干渉した場合における前記ドアに対する傷害度を推定し、
推定された前記傷害度に基づいて前記ドアを開けることに関する推奨度を算出し、
前記傷害度が低い場合は前記傷害度が高い場合と比較して前記推奨度が高くなるように前記推奨度を算出し、
前記推奨度に関する情報を出力し、
前記物体がエネルギーを吸収する物体である場合、前記物体がエネルギーを吸収しない物体である場合と比較して前記傷害度が小さくなるように前記傷害度を推定する
ことを特徴とする推奨ドア案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推奨ドア案内装置及び推奨ドア案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車した際に周囲の障害物によってドアの開閉を安全に行うことができない場合がある。そこで特許文献1に記載された発明はドアと障害物との距離を用いてドアの開閉を安全に行うことができる位置を案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-190560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両のサイズ、駐車スペースのサイズなどによっては必ずしも適切な位置を案内できない場合がある。この場合、障害物の特性を考慮して降車時にダメージがないドア、あるいはダメージが少ないドアを案内することが求められる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、降車時にダメージがないドア、あるいはダメージが少ないドアを案内することができる推奨ドア案内装置及び推奨ドア案内方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る推奨ドア案内装置は、ドアがセンサによって検出された物体と干渉した場合におけるドアに対する傷害度を推定し、推定された傷害度に基づいてドアを開けることに関する推奨度を算出し、傷害度が低い場合は傷害度が高い場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出し、推奨度に関する情報を出力し、物体がエネルギーを吸収する物体である場合、物体がエネルギーを吸収しない物体である場合と比較して傷害度が小さくなるように傷害度を推定する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、降車時にダメージがないドア、あるいはダメージが少ないドアを案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る推奨ドア案内装置1の構成図である。
図2図2は、後部座席ドアを説明する図である。
図3図3は、傷害度の一例を説明する表である。
図4図4は、傷害度の他の例を説明する表である。
図5図5は、推奨ドア案内装置1の一動作例を説明するフローチャートである。
図6図6は、後部座席ドアと物体との距離を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して推奨ドア案内装置1の構成例を説明する。図1に示すように、推奨ドア案内装置1は、カメラ10と、コントローラ20と、記憶装置11と、スピーカ12と、ディスプレイ13と、ライト14を備える。
【0011】
推奨ドア案内装置1は自動運転機能を有する車両に搭載されてもよく、自動運転機能を有しない車両に搭載されてもよい。また、推奨ドア案内装置1は自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両に搭載されてもよい。
【0012】
カメラ10は自車両の前方、側方、後方、サイドミラーなどに複数設置される。カメラ10は、CCD(charge-coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)などのセンサを有する。カメラ10は自車両の周囲に存在する物体を検出する。自車両の周囲とは通常であれば自車両を囲む所定範囲を意味するが、本実施形態では自車両の周囲とは後部座席のドアの周囲を意味するものとして用いられる。後部座席のドアは通常両サイドで一対のものとして車両に搭載されているため、自車両の周囲とはより詳しくは後部座席の両方のドアの周囲を意味する。図2に示すように右側の後部座席ドアは符号30で示される。同様に左側の後部座席ドアは符号31で示される。以下では特に断らない限り「後部座席の両方のドア」を両サイドドアと呼ぶ。つまり両サイドドアとは、後部座席ドア30及び後部座席ドア31を意味する。本実施形態において両サイドドアにはスイングドア、あるいはガルウィングドアが採用され、スライドドアは採用されない。両サイドドアの周囲に関し、その範囲は特に限定されないが、例えば、両サイドドアをクローズ状態からフルオープン状態にするまでにドアが通る軌跡の範囲でもよく、より簡易的にはフルオープン状態の幅の範囲でもよく、半オープン状態の幅の範囲でもよい。
【0013】
本実施形態においてカメラ10によって検出される物体は、他車両、二輪車、壁、電柱、ポール、道路標識、ガードレール、木、草、三角コーンなどである。カメラ10には画像処理用のセンサが搭載されており、所定の画像処理によって物体の属性が検出される。物体の属性とはその物体がどのような物体なのかを示すものであり、その物体が車両であれば属性は車両となる。所定の画像処理は特に限定されないが例えばパターンマッチングが用いられる。記憶装置11にはパターンマッチングに用いられるデータベースが予め格納されており、このデータベースを参照することにより物体の属性が検出される。なお画像処理用のセンサは必ずしもカメラ10に搭載される必要はない。画像処理用のセンサはコントローラ20に搭載されてもよい。カメラ10によって検出された物体に関する情報はコントローラ20に出力される。なお物体を検出する方法はカメラに限定されない。例えばレーダ、ソナーなどが用いられてもよい。
【0014】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路などを有する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ20には、推奨ドア案内装置1として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ20は推奨ドア案内装置1が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって推奨ドア案内装置1が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ20は、複数の情報処理回路として、降車意図判断部21と、傷害度推定部22と、推奨度算出部23と、案内出力部24を備える。
【0015】
降車意図判断部21は、乗員の降車意図を判断する。降車意図とは乗員が自車両から降りる意思があることを意味する。降車意図判断部21は、ドライバによって所定の操作が実行された場合に乗員の降車意図があると判断する。所定の操作には一例として、ギアをパーキングに入れる、パーキングブレーキをかける、イグニッションスイッチをオフにする、などが含まれる。あるいは、自車両の位置が駐車場に存在する場合に上述の操作が実行されたとき、降車意図判断部21は乗員の降車意図があると判断してもよい。なお、自車両の位置が駐車場に存在するか否かについて、降車意図判断部21は地図情報を参照することにより判断できる。このような地図情報は例えばカーナビゲーション装置(不図示)に格納される。なお、自動運転機能による自動駐車が実行された場合、一連の自動駐車処理が完了したとき、降車意図判断部21は乗員の降車意図があると判断してもよい。
【0016】
乗員が降車するシーンは、駐車後に限定されない。一時的に停車して降車する場合もある。よって降車意図判断部21は一時的な停車が検知された場合に乗員の降車意図があると判断してもよい。一時的な停車には、車速がゼロかつハザードランプがオンであるとき、自車両が白線を縦にまたいだ状態で車速がゼロのとき、自車両の位置がロータリーに存在する場合に車速がゼロかつハザードランプがオンであるとき、などが含まれる。自車両が白線を縦にまたいだ状態とは例えば自車両が路肩に存在する状態である。
【0017】
傷害度推定部22は、後部座席ドアがカメラ10によって検出された物体と干渉した場合における後部座席ドアに対する傷害度を推定する。
【0018】
推奨度算出部23は、傷害度推定部22によって推定された傷害度に基づいて、後部座席ドアを開けることに関する推奨度を算出し、推奨度が高い方のドアを推奨ドアとして決定する。本実施形態において推奨度が高い方のドアが降車時にダメージがないドア、あるいはダメージが少ないドアを意味する。
【0019】
案内出力部24は、推奨ドアを乗員に向けて案内する。案内方法の一例として、案内出力部24はスピーカ12から音声を出力する。音声として例えば「右側のドアから降りてください」、「右側のドアが出やすいです」などが挙げられる。あるいは案内出力部24はディスプレイ13に推奨ドアを示す情報を表示してもよい。ディスプレイ13として、ナビゲーション装置のディスプレイ、メータのディスプレイなどが含まれる。あるいは案内出力部24は両サイドドアのそれぞれに設置されたライト14を点灯させてもよい。推奨ドアが右側の後部座席ドアであるとき、案内出力部24は右側の後部座席ドアに設置されたライト14を点灯すればよい。あるいは案内出力部24は推奨ドアを自動的に開けてもよい。
【0020】
次に図3を参照して傷害度について説明する。本実施形態において傷害度とはカメラ10によって検出された物体に後部座席ドアが干渉した場合における後部座席ドアが受けるダメージと定義される。後部座席ドアと干渉する物体が固いほど傷害度は大きくなる一方で、後部座席ドアと干渉する物体が柔らかいほど傷害度は小さくなる。
【0021】
図3に示すように後部座席ドアと干渉する物体が存在しない場合、当然ながら傷害度(初期値)はゼロである。ここで初期値とは、後部座席ドアと物体との距離を考慮しない傷害度として定義される。まずはこの初期値としての傷害度について説明する。後部座席ドアと干渉する物体が三角コーンである場合も傷害度はゼロである。三角コーンのようにエネルギーを吸収する物体であれば後部座席ドアが受けるダメージはゼロ、もしくはゼロをみなせるほど小さいからである。後部座席ドアと干渉する物体が草である場合、傷害度は2である。本実施形態において傷害度は0~10で規格化した数値として表され、数値が大きいほど後部座席ドアが受けるダメージが大きいことを示す。
【0022】
後部座席ドアと干渉する物体が木である場合、傷害度は3である。後部座席ドアと干渉する物体がガードレールである場合、傷害度は3である。後部座席ドアと干渉する物体が電柱、ポール、道路標識である場合、傷害度は6である。後部座席ドアと干渉する物体が壁である場合、傷害度は8である。後部座席ドアと干渉する物体が二輪車である場合、傷害度は9である。後部座席ドアと干渉する物体が車両である場合、傷害度は10である。
【0023】
上述した傷害度は後部座席ドアと物体との距離を考慮していない。後部座席ドアと物体との距離を考慮する場合、距離に応じて傷害度は変わる。図3に示すように後部座席ドアと物体との距離が長いほど、同じ物体で比較した場合傷害度は小さくなる。同様に後部座席ドアと物体との距離が短いほど、同じ物体で比較した場合傷害度は大きくなる。ただし物体の属性によっては距離の長短に関係なく傷害度が決定される物体もある。
【0024】
図3に示す例では物体の属性による傷害度を説明したが、傷害度の決定において物体の属性は必須ではない。例えば物体の硬度あるいは表面材質を検出することによって傷害度が決定されてもよい。この方法によれば図4に示すように物体の硬度あるいは表面材質によって傷害度は0~10で規格化した数値として表される。
【0025】
傷害度は実際に後部座席ドアが物体に干渉した場合を想定した数値である。このような数値は実験、シミュレーションを通じて取得される。
【0026】
次に、図5のフローチャートを参照して、推奨ドア案内装置1の一動作例を説明する。
【0027】
ステップS101において降車意図判断部21は上述した方法によって乗員が自車両から降りる意思があるか否かを判断する。乗員が自車両から降りる意思があると判断された場合(ステップS101でYES)、処理はステップS103に進む。一方乗員が自車両から降りる意思がないと判断された場合(ステップS101でNO)、処理は待機する。
【0028】
ステップS103においてカメラ10は両サイドドアの周囲を撮像する。撮像された画像に対して所定の画像処理が行われる。両サイドドアの周囲、あるいはどちらか一方の後部座席ドアの周囲で障害物が検出された場合(ステップS105でYES)、処理はステップS109に進む。一方、右側の後部座席ドア30、及び左側の後部座席ドア31のどちらのドアにおいても障害物が検出されない場合(ステップS105でNO)、処理はステップS107に進む。ステップS107では案内出力部24は推奨ドアに関する案内を行わない。左右どちらの後部座席ドアを開けても干渉する障害物がないため、どちらの後部座席ドアを開けても違いはなく、案内が不要だからである。
【0029】
ステップS109において画像処理によって障害物の属性が判定される。障害物の属性とは上述したようにその障害物が車両であるのか三角コーンであるのかを意味する。その後処理はステップS111に進み、傷害度推定部22は後部座席ドアが障害物と干渉した場合に後部座席ドアが受けるダメージを意味する傷害度を推定する。
【0030】
ステップS113において推奨度算出部23はステップS111で推定された傷害度に基づいて推奨度を算出する。ここで算出された推奨度が等しくない場合の一例を説明する。つまりステップS115でNOの場合の一例を説明する。右側の後部座席ドア30の周囲で電柱が検出され、左側の後部座席ドア31の周囲で他車両が検出されたと仮定する。この場合、右側の後部座席ドア30に対する傷害度は6となり、左側の後部座席ドア31に対する傷害度は10となる。推奨度算出部23は傷害度が低い場合は傷害度が高い場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出する。よってこの場合、右側の後部座席ドア30の推奨度が左側の後部座席ドア31の推奨度より高くなるように算出される。その結果、推奨度が高い方のドア、すなわち右側の後部座席ドア30が推奨ドアとして決定される。この決定に基づいて案内出力部24は例えば「右側のドアから降りてください」とスピーカ12を介して乗員に推奨ドアを案内する(ステップS117)。
【0031】
次に算出された推奨度が等しい場合の一例を説明する。つまりステップS115でYESの場合の一例を説明する。右側の後部座席ドア30の周囲で電柱が検出され、左側の後部座席ドア31の周囲でも電柱が検出されたと仮定する。この場合、右側の後部座席ドア30に対する傷害度は6となり、左側の後部座席ドア31に対する傷害度も6となる。どちらの傷害度も同じであるため推奨度も同じになる。よって推奨ドアは決定されない。この場合案内出力部24は乗員に対し注意を喚起する、あるいは案内をしない(ステップS119)。
【0032】
図5のフローチャートでは複数の後部座席ドアにおいて推奨度を算出し、比較する例を説明したが、これに限定されない。一つの後部座席ドアにおいて推奨度を算出してもよい。つまり片側の後部座席ドアにおいて周囲にガードレールが存在する場合は、周囲に車両が存在する場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度が算出されてもよい。
【0033】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る推奨ドア案内装置1によれば、以下の作用効果が得られる。
【0034】
推奨ドア案内装置1は、自車両に搭載されたドアの周囲に存在する物体を検出するセンサと、コントローラ20とを備える。コントローラ20はドアがセンサによって検出された物体と干渉した場合におけるドアに対する傷害度を推定し、推定された傷害度に基づいてドアを開けることに関する推奨度を算出する。コントローラ20は傷害度が低い場合は傷害度が高い場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出し、推奨度に関する情報を出力する。これにより降車時にダメージがないドア、あるいはダメージが少ないドアを案内することができる。
【0035】
またコントローラ20は、物体がエネルギーを吸収する物体である場合、物体がエネルギーを吸収しない物体である場合と比較して傷害度が小さくなるように傷害度を推定する。エネルギーを吸収する物体とは開くドアとの接触によって変形または移動することでドアの運動エネルギーを吸収又は低減する物体であって、例えば弾性を有するポール、三角コーンである。エネルギーを吸収しない物体とはその構成材料として衝撃吸収材などが用いられていない物体であって、例えば電柱、壁などである。このように推定された傷害度を用いることにより降車時にダメージがないドア、あるいはダメージが少ないドアを案内することができる。
【0036】
センサの一例はカメラ10である。カメラ10はドアの周囲を撮像する。コントローラ20は、カメラ10によって撮像された撮像画像に基づいて傷害度を推定する。具体的にはコントローラ20は撮像画像に対して所定の画像処理(パターンマッチング)を行い、物体の属性が検出して図3の表を参照して傷害度を推定する。これにより精度よく傷害度が推定される。
【0037】
またコントローラ20は、撮像画像から物体の硬度または表面材質を算出し、硬度または表面材質に基づいて傷害度を推定してもよい。これにより精度よく傷害度が推定される。
【0038】
ドアは第1ドア及び第2ドアを含む。コントローラ20は第1ドアに係る推奨度、及び第2ドアに係る推奨度を算出し、第1ドア及び第2ドアのうち、推奨度が高い方を推奨ドアとして決定する。そしてコントローラ20は決定された推奨ドアを案内する情報を出力する。これにより降車時にダメージがないドア、あるいはダメージが少ないドアを案内することができる。
【0039】
第1ドア及び第2ドアのうち、一方は車両の右側の後部座席ドア30であり、他方は車両の左側の後部座席ドア31である。
【0040】
推奨ドア案内装置1は硬度または表面材質に関するデータベースを有する記憶装置11をさらに備える。コントローラ20は撮像画像とデータベースとを照らし合わせ硬度または表面材質を算出する(図4参照)。これにより精度よく硬度または表面材質が推定される。
【0041】
なお硬度または表面材質に関するデータベースはクラウドサーバに格納されていてもよい。この場合、コントローラ20は撮像画像をクラウドサーバに送信し、クラウドサーバにて算出された硬度または表面材質に関する情報を取得する。この方法であれば車両がデータベースを保持する必要がなくなり、コスト低減に寄与する。
【0042】
情報の出力には、スピーカ12を介した音声による出力、車内に設置されたディスプレイ13への出力、後部座席ドアに設置されたライト14を点灯させること、の少なくともいずれか1つが含まれる。これにより乗員は降車時にダメージがないドア、あるいはダメージが少ないドアを把握することが可能となる。なお上記3つの出力はすべて行われてもよい。
【0043】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0044】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0045】
例えばコントローラ20は、後部座席ドアから所定範囲内において物体が検出された場合のみ、傷害度を推定してもよい。図6に示すように後部座席ドアから物体までの距離をLとする。図6に示すように距離Lが所定距離L1より大きい場合とは、後部座席ドアから所定範囲内において物体が検出されない場合を意味する。この場合、コントローラ20は傷害度を推定しない。その理由はこの状況では後部座席ドアが受けるダメージはゼロだからである。
【0046】
図6に示すように距離Lが所定距離L1以下の場合とは、後部座席ドアから所定範囲内において物体が検出された場合を意味する。この場合のみコントローラ20は傷害度を推定してもよい。
【0047】
またコントローラ20は、後部座席ドアと物体との距離が短いほど傷害度が大きくなるように傷害度を推定してもよい(図3参照)。これにより精度よく傷害度が推定される。
【0048】
またコントローラ20は推奨ドアが決定されたとき、推奨ドアのロックを解除し、非推奨ドアのロックを解除しない、というロック制御を行ってもよい。またコントローラ20は非推奨ドアの開角度を制限してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 推奨ドア案内装置
10 カメラ
11 記憶装置
12 スピーカ
13 ディスプレイ
14 ライト
20 コントローラ
21 降車意図判断部
22 傷害度推定部
23 推奨度算出部
24 案内出力部
30、31 後部座席ドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6