(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】推奨ドア案内装置及び推奨ドア案内方法
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20240827BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240827BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20240827BHJP
【FI】
B60J5/00 Z
G08G1/16 C
E05F15/73
B60J5/00 K
(21)【出願番号】P 2020188275
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大泉 透
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175207(JP,A)
【文献】特開2012-033075(JP,A)
【文献】特開2017-162075(JP,A)
【文献】特開2017-047739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00- 5/14
G08G 1/00- 1/16
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載されたドアの周囲に存在する他車両を検出するセンサと、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記センサによって検出された前記他車両が可動状態にあるか否かを判定し、
前記可動状態にあるか否かの判定結果に基づいて前記ドアを開けることに関する推奨度を算出し、
前記他車両が可動状態にないと判定された場合は前記他車両が可動状態にあると判定された場合と比較して前記推奨度が高くなるように前記推奨度を算出し、
前記他車両の車内に乗員が存在するか否かを検出し、
前記自車両の左右で隣接して駐車している他車両の両方の車内に前記乗員が存在する場合、前記他車両の両方とも可動状態にあると判定し、前記自車両の中心から一方の他車両の乗員の位置までの距離及び他方の他車両の乗員の位置までの距離を算出し、前記距離が長い場合は短い場合と比較して前記推奨度が高くなるように前記推奨度を算出し、
前記推奨度に関する情報を出力する
ことを特徴とする推奨ドア案内装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記他車両の車内に前記乗員が存在する場合に前記他車両が可動状態にあると判定し、
一方で前記他車両の車内に前記乗員が存在しない場合に前記他車両が可動状態にないと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項3】
前記自車両に搭載されたカメラをさらに備え、
前記コントローラは、前記カメラによって前記他車両の車内を撮像した撮像画像に基づいて前記他車両の車内に前記乗員が存在するか否かを検出する
ことを特徴とする請求項2に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項4】
前記自車両に搭載されたマイクをさらに備え、
前記コントローラは、
前記マイクに入力された音データに基づいて前記他車両の動力源が稼働しているか否かを検出し、
前記動力源が稼働している場合に前記他車両が可動状態にあると判定し、一方で前記動力源が稼働していない場合に前記他車両が可動状態にないと判定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項5】
前記自車両に搭載されたマイクをさらに備え、
前記コントローラは、
前記マイクにエンジンを搭載した車両の排気音を模した電子的な音が入力された場合に前記他車両が可動状態にあると判定し、一方で前記マイクに前記排気音を模した電子的な音が入力されない場合に前記他車両が可動状態にないと判定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記他車両に設置された電源スイッチがオンになっているか否かに関する情報をクラウドサーバから取得し、
前記電源スイッチがオンになっていることを示す情報を取得した場合に前記他車両が可動状態にあると判定し、一方で前記電源スイッチがオフになっていることを示す情報を取得した場合に前記他車両が可動状態にないと判定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項7】
前記ドアは第1ドア及び第2ドアを含み、
前記コントローラは、
前記第1ドアに係る推奨度、及び前記第2ドアに係る推奨度を算出し、
前記第1ドア及び前記第2ドアのうち、前記推奨度が高い方を推奨ドアとして決定し、
決定された前記推奨ドアを案内する情報を出力する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項8】
前記第1ドア及び前記第2ドアのうち、一方は前記自車両の右側の後部座席ドアであり、他方は前記自車両の左側の後部座席ドアである
ことを特徴とする請求項7に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項9】
前記情報の出力には、音声による出力、車内に設置されたディスプレイへの出力、前記ドアに設置されたライトを点灯させること、の少なくともいずれか1つが含まれる
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の推奨ドア案内装置。
【請求項10】
自車両に搭載されたドアの周囲に存在する他車両を検出し、
検出された前記他車両が可動状態にあるか否かを判定し、
前記可動状態にあるか否かの判定結果に基づいて前記ドアを開けることに関する推奨度を算出し、
前記他車両が可動状態にないと判定された場合は前記他車両が可動状態にあると判定された場合と比較して前記推奨度が高くなるように前記推奨度を算出し、
前記他車両の車内に乗員が存在するか否かを検出し、
前記自車両の左右で隣接して駐車している他車両の両方の車内に前記乗員が存在する場合、前記他車両の両方とも可動状態にあると判定し、前記自車両の中心から一方の他車両の乗員の位置までの距離及び他方の他車両の乗員の位置までの距離を算出し、前記距離が長い場合は短い場合と比較して前記推奨度が高くなるように前記推奨度を算出し、
前記推奨度に関する情報を出力する
ことを特徴とする推奨ドア案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推奨ドア案内装置及び推奨ドア案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車した際に周囲の障害物によってドアの開閉を安全に行うことができない場合がある。そこで特許文献1に記載された発明はドアと障害物との距離を用いてドアの開閉を安全に行うことができる位置を案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両を駐車場に駐車させた際、両隣に駐車車両が存在する場合がある。このとき、隣の車両に乗車している乗員がドアを開けて降車するタイミングと自身がドアを開けて降車するタイミングが一致すると、ドア同士が干渉するおそれがある。しかしながら特許文献1に記載された発明はこの点を考慮しておらず改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、安全に開閉できるドアを案内することができる推奨ドア案内装置及び推奨ドア案内方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る推奨ドア案内装置は、センサによって検出された他車両が可動状態にあるか否かを判定し、可動状態にあるか否かの判定結果に基づいてドアを開けることに関する推奨度を算出し、他車両が可動状態にないと判定された場合は他車両が可動状態にあると判定された場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出し、他車両の車内に乗員が存在するか否かを検出し、自車両の左右で隣接して駐車している他車両の両方の車内に乗員が存在する場合、他車両の両方とも可動状態にあると判定し、自車両の中心から一方の他車両の乗員の位置までの距離及び他方の他車両の乗員の位置までの距離を算出し、距離が長い場合は短い場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出し、推奨度に関する情報を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全に開閉できるドアを案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る推奨ドア案内装置1の構成図である。
【
図3】
図3は、可動状態を判定する方法の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、推奨ドア案内装置1の一動作例を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、可動状態を判定する方法の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して推奨ドア案内装置1の構成例を説明する。
図1に示すように、推奨ドア案内装置1は、カメラ10と、マイク11と、コントローラ20と、スピーカ12と、ディスプレイ13と、ライト14を備える。
【0011】
推奨ドア案内装置1は自動運転機能を有する車両に搭載されてもよく、自動運転機能を有しない車両に搭載されてもよい。また、推奨ドア案内装置1は自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両に搭載されてもよい。
【0012】
カメラ10は自車両の前方、側方、後方、サイドミラーなどに複数設置される。カメラ10は、CCD(charge-coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)などのセンサを有する。カメラ10は自車両の周囲に存在する物体を検出する。自車両の周囲とは通常であれば自車両を囲む所定範囲を意味するが、本実施形態では自車両の周囲とは後部座席のドアの周囲を意味するものとして用いられる。後部座席のドアは通常両サイドで一対のものとして車両に搭載されているため、自車両の周囲とはより詳しくは後部座席の両方のドアの周囲を意味する。
図2に示すように右側の後部座席ドアは符号30で示される。同様に左側の後部座席ドアは符号31で示される。以下では特に断らない限り「後部座席の両方のドア」を両サイドドアと呼ぶ。つまり両サイドドアとは、後部座席ドア30及び後部座席ドア31を意味する。本実施形態において両サイドドアにはスイングドア、あるいはガルウィングドアが採用され、スライドドアは採用されない。両サイドドアの周囲に関し、その範囲は特に限定されないが、例えば、両サイドドアをクローズ状態からフルオープン状態にするまでにドアが通る軌跡の範囲でもよく、より簡易的にはフルオープン状態の幅の範囲でもよく、半オープン状態の幅の範囲でもよい。
【0013】
本実施形態においてカメラ10によって検出される物体は、主に他車両である。カメラ10には画像処理用のセンサが搭載されており、所定の画像処理によって物体の属性が検出される。物体の属性とはその物体がどのような物体なのかを示すものであり、その物体が車両であれば属性は車両となる。所定の画像処理は特に限定されないが例えばパターンマッチングが用いられる。なお画像処理用のセンサは必ずしもカメラ10に搭載される必要はない。画像処理用のセンサはコントローラ20に搭載されてもよい。カメラ10によって検出された物体に関する情報はコントローラ20に出力される。なお物体を検出する方法はカメラに限定されない。例えばレーダ、ソナーなどが用いられてもよい。
【0014】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路などを有する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ20には、推奨ドア案内装置1として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ20は推奨ドア案内装置1が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって推奨ドア案内装置1が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ20は、複数の情報処理回路として、降車意図判断部21と、可動状態判定部22と、推奨度算出部23と、案内出力部24を備える。
【0015】
降車意図判断部21は、乗員の降車意図を判断する。降車意図とは乗員が自車両から降りる意思があることを意味する。降車意図判断部21は、ドライバによって所定の操作が実行された場合に乗員の降車意図があると判断する。所定の操作には一例として、ギアをパーキングに入れる、パーキングブレーキをかける、イグニッションスイッチをオフにする、などが含まれる。あるいは、自車両の位置が駐車場に存在する場合において上述の操作が実行されたとき、降車意図判断部21は乗員の降車意図があると判断してもよい。なお、自車両の位置が駐車場に存在するか否かについて、降車意図判断部21は地図情報を参照することにより判断できる。このような地図情報は例えばカーナビゲーション装置(不図示)に格納される。なお、自動運転機能による自動駐車が実行された場合、一連の自動駐車処理が完了したとき、降車意図判断部21は乗員の降車意図があると判断してもよい。
【0016】
乗員が降車するシーンは、駐車後に限定されない。一時的に停車して降車する場合もある。よって降車意図判断部21は一時的な停車が検知された場合に乗員の降車意図があると判断してもよい。一時的な停車には、車速がゼロかつハザードランプがオンであるとき、自車両が白線を縦にまたいだ状態で車速がゼロのとき、自車両の位置がロータリーに存在する場合に車速がゼロかつハザードランプがオンであるとき、などが含まれる。自車両が白線を縦にまたいだ状態とは例えば自車両が路肩に存在する状態である。
【0017】
可動状態判定部22は、自車両40の左右方向において自車両40に隣接して駐車しているそれぞれの駐車車両(他車両41,42)が可動状態にあるか否かを判定する。可動状態の詳細については後述する。
【0018】
推奨度算出部23は、可動状態判定部22によって判定された可動状態に基づいて、後部座席ドアを開けることに関する推奨度を算出し、推奨度が高い方のドアを推奨ドアとして決定する。本実施形態において推奨度が高い方のドアが降車時に安全に開閉できるドアを意味する。
【0019】
案内出力部24は、推奨ドアを乗員に向けて案内する。案内方法の一例として、案内出力部24はスピーカ12から音声を出力する。音声として例えば「右側のドアから降りてください」、「右側のドアが出やすいです」などが挙げられる。あるいは案内出力部24はディスプレイ13に推奨ドアを示す情報を表示してもよい。ディスプレイ13として、ナビゲーション装置のディスプレイ、メータのディスプレイなどが含まれる。あるいは案内出力部24は両サイドドアのそれぞれに設置されたライト14を点灯させてもよい。推奨ドアが右側の後部座席ドア30であるとき、案内出力部24は右側の後部座席ドア30に設置されたライト14を点灯すればよい。あるいは案内出力部24は推奨ドアを自動的に開けてもよい。
【0020】
次に
図3を参照して可動状態の一例について説明する。
図3において、符号41は自車両40に対し右側で駐車している他車両を示す。符号42は自車両40に対し左側で駐車している他車両を示す。
【0021】
「可動状態にある」の定義の一つとして、他車両41(42)が発進可能な状態にあることが挙げられる。発進可能な状態とは例えば、エンジンがかかっている状態、あるいは運転席に乗員が座っている状態である。エンジンがかかっている状態を例に挙げると、可動状態判定部22はマイク11に入力された音を解析し、マイク11に入力された音がエンジン音であると解析した場合、他車両41(42)は可動状態にあると判定する。音の解析方法は周知の周波数解析などが用いられる。
【0022】
運転席に乗員が座っている状態を例に挙げると、可動状態判定部22はカメラ10によって撮像された画像を解析し、他車両41(42)の運転席で乗員が検出された場合、他車両41(42)は可動状態にあると判定する。画像処理も周知の技術によって実施される。本実施形態においてカメラ10は自車両40に隣接して駐車している他車両41(42)の車内を撮像できる位置に設置される。
【0023】
また「可動状態にある」の別の定義として、他車両41(42)の後部座席ドア32,33(34,35)が開閉可能な状態にあることが挙げられる。後部座席ドアが開閉可能な状態とは例えば、後部座席に乗員が座っている状態である。この場合、後部座席に座っている乗員が後部座席ドアを開けて降車する可能性がある。可動状態判定部22はカメラ10によって撮像された画像を解析し、他車両41(42)の後部座席で乗員が検出された場合、他車両41(42)は可動状態にあると判定する。
【0024】
すなわち「可動状態にある」とは、他車両41(42)の車内に乗員が存在する場合と定義されてもよい。
【0025】
図3に示す例では、他車両41の左側の後部座席に乗員50が座っている。カメラ10によって乗員50が検出されたことを示す信号を受信したとき、可動状態判定部22は他車両41は可動状態にあると判定する。
図3に示す例において他車両42のエンジンはかかっておらず、さらに他車両42の車内には乗員はいないものとする。また他車両41のエンジンもかかっていないものとする。実際のシーンではカメラ10、マイク11によってこのような状態が検出される。
図3に示す例において、可動状態判定部22は他車両41は可動状態にあると判定し、他車両42は可動状態にないと判定する。
【0026】
この判定に基づいて推奨度算出部23は右側の後部座席ドア30の推奨度、及び左側の後部座席ドア31の推奨度を算出する。具体的には、推奨度算出部23は他車両が可動状態にないと判定された場合、他車両が可動状態にあると判定された場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出する。よって
図3の場合、左側の後部座席ドア31の推奨度が右側の後部座席ドア30の推奨度より高くなるように算出される。その結果、推奨度が高い方のドア、すなわち左側の後部座席ドア31が推奨ドアとして決定される。この決定に基づいて案内出力部24は例えば「左側のドアから降りてください」とスピーカ12を介して乗員に推奨ドアを案内する。ここで本実施形態に係る方法を用いずに右側の後部座席ドア30を開けて降車する場合を考える。右側の後部座席ドア30を開けるタイミングが左側の後部座席ドア33が開くタイミングと同じになる可能性がある。この場合ドア同士が干渉するおそれがある。しかしながら本実施形態では推奨度が高い方のドア(左側の後部座席ドア31)を案内することにより、他車両41の後部座席ドア33と干渉する可能性がないドアを案内できる。すなわち安全に開閉できるドアを案内することができる。
【0027】
図3に示す例では「可動状態にある」場合として、後部座席に乗員50が座っている状態を説明したが、その他の例として、他車両41のエンジンはかかっているが、他車両42のエンジンはかかっていない場合を考える。なお他車両41,42の両方とも車内に乗員はいないものとする。このとき可動状態判定部22は他車両41は可動状態にあると判定し、他車両41は可動状態にないと判定する。推奨度及び推奨ドアについては上述と同じため説明を省略する。
【0028】
さらに他の例として、他車両41の運転席に乗員は座っているが、他車両42の運転席には乗員は座っていない場合を考える。なお他車両41,42の両方ともエンジンはかかっていないものとし、両方とも車内に他の乗員はいないものとする。このとき可動状態判定部22は他車両41は可動状態にあると判定し、他車両41は可動状態にないと判定する。推奨度及び推奨ドアについては上述と同じため説明を省略する。
【0029】
なおエンジンがかかっており、かつ車内に乗員が存在する場合も「可動状態にある」と判定されてもよい。
【0030】
可動状態を判定する際、他車両41,42の車速はゼロであることが前提である。他車両41のエンジンがかかっている状態とは単にエンジンだけかかっている状態と定義され、他車両41は停止している。
【0031】
次に、
図4のフローチャートを参照して、推奨ドア案内装置1の一動作例を説明する。
【0032】
ステップS101において降車意図判断部21は上述した方法によって乗員が自車両40から降りる意思があるか否かを判断する。乗員が自車両40から降りる意思があると判断された場合(ステップS101でYES)、処理はステップS103に進む。一方乗員が自車両40から降りる意思がないと判断された場合(ステップS101でNO)、処理は待機する。
【0033】
ステップS103においてカメラ10は両サイドドアの周囲を撮像する。撮像された画像に対して所定の画像処理が行われる。画像処理の結果、自車両40の左右方向において隣接して駐車している駐車車両(他車両41,42)が検出された場合(ステップS105でYES)、処理はステップS109に進む。一方、自車両40に隣接して駐車している駐車車両が検出されない場合(ステップS105でNO)、処理はステップS107に進む。なおステップS105でNOとは、自車両40の左右のどちらにも駐車車両が検出されない場合を意味する。
【0034】
ステップS107では案内出力部24は推奨ドアに関する案内を行わない。左右どちらの後部座席ドアを開けても安全上の問題はないからである。
【0035】
ステップS109においてカメラ10あるいはマイク11によって取得されたデータに基づいて、他車両が可動状態にあるか否かが判定される。他車両41,42のどちらとも可動状態にないと判定された場合(ステップS109でYES)、案内出力部24はドアを開けることに関し注意喚起を行う(ステップS115)。ここでいう注意喚起とは単にドアを開ける際に注意を促す一般的な案内である。なお案内出力部24は特別な案内を行わなくてもよい(ステップS115)。
【0036】
ステップS109でNOの場合は、2つのパターンが存在する。1つ目のパターンは他車両41,42のうち一方が可動状態にあると判定され他方が可動状態にないと判定された場合である。2つ目のパターンは他車両41,42のうち両方が可動状態にあると判定された場合である。まず1つの目パターンについて説明する。
【0037】
1つの目パターンは
図3で説明したように、他車両41の車内で乗員50が検出されたものの、他車両42の車内で誰も検出されなかった場合である。この場合他車両41は可動状態にあると判定され、他車両42は可動状態にないと判定される。この判定に基づいて推奨度算出部23は右側の後部座席ドア30の推奨度、及び左側の後部座席ドア31の推奨度を算出する(ステップS111)。具体的には、推奨度算出部23は他車両が可動状態にないと判定された場合に、他車両が可動状態にあると判定された場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出する。よってこの場合、左側の後部座席ドア31の推奨度が右側の後部座席ドア30の推奨度より高くなるように算出される。その結果、推奨度が高い方のドア、すなわち左側の後部座席ドア31が推奨ドアとして決定される。この決定に基づいて案内出力部24は例えば「左側のドアから降りてください」とスピーカ12を介して乗員に推奨ドアを案内する(ステップS113)。
【0038】
次に2つ目のパターンについて説明する。他車両41,42のうち両方が可動状態にあると判定された場合、どちらも可動状態にあるのだから可動状態に基づく推奨度は同じになる。そこでこの場合可動状態だけでなくさらに危険度の大きさを加味して推奨度が算出される。例えば、他車両41の運転席に乗員が座っており、エンジンもかかっていることが検出されたと仮定する。一方他車両42の運転席に乗員は座っているが、エンジンはかかっていないことが検出されたと仮定する。なお他車両41,42の両方とも車内に他の乗員はいないものとする。この場合、他車両41は他車両42と比較して発進する可能性が高いと考えられる。右側の後部座席ドア30を開けたとき、発進後の他車両41と干渉する可能性があるため右側の後部座席ドア30を開けることは左側の後部座席ドア31を開けることより危険度が大きいといえる。よってこの場合、左側の後部座席ドア31の推奨度が右側の後部座席ドア30の推奨度より高くなるように算出される。その結果、推奨度が高い方のドア、すなわち左側の後部座席ドア31が推奨ドアとして決定される。この決定に基づいて案内出力部24は例えば「左側のドアから降りてください」とスピーカ12を介して乗員に推奨ドアを案内する(ステップS113)。
【0039】
図4のフローチャートでは複数の後部座席ドアにおいて推奨度を算出し比較する例を説明したが、これに限定されない。一つの後部座席ドアにおいて推奨度を算出してもよい。つまり片方の後部座席ドアの側において、駐車している他車両の可動状態の有無に応じてその後部座席ドアの推奨度が算出されてもよい。
【0040】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る推奨ドア案内装置1によれば、以下の作用効果が得られる。
【0041】
推奨ドア案内装置1は、自車両40に搭載されたドアの周囲に存在する他車両41,42を検出するセンサと、コントローラ20とを備える。コントローラ20は、センサによって検出された他車両41,42が可動状態にあるか否かを判定し、可動状態にあるか否かの判定結果に基づいてドアを開けることに関する推奨度を算出する。コントローラ20は他車両が可動状態にないと判定された場合は他車両が可動状態にあると判定された場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出する。そしてコントローラ20は推奨度に関する情報を出力する。推奨度が低いドアは推奨度が高いドアと比較して、発進後の他車両と干渉したり、他車両のドアと干渉したりする可能性がある。本実施形態によれば、その可能性がゼロとなるドア、あるいはほぼゼロとなるドアを案内することが可能となる。すなわち安全に開閉できるドアを案内することができる。
【0042】
またコントローラ20は他車両41,42の車内に乗員が存在するか否かを検出し、他車両の車内に乗員が存在する場合に他車両が可動状態にあると判定し、一方で他車両の車内に乗員が存在しない場合に他車両が可動状態にないと判定する。他車両の車内に乗員が存在する場合、降車する際におけるドアを開けるタイミングによってはドア同士が干渉するおそれがある。しかしながら本実施形態では推奨度が高い方のドアを案内することにより、他車両のドアと干渉する可能性がないドアを案内できる。すなわち安全に開閉できるドアを案内することができる。
【0043】
センサの一例はカメラ10である。コントローラ20はカメラ10によって他車両の車内を撮像した撮像画像に基づいて他車両の車内に乗員が存在するか否かを検出する。これにより精度よく乗員の有無が検出される。
【0044】
推奨ドア案内装置1はマイク11をさらに備える。コントローラ20はマイク11に入力された音データに基づいて他車両41,42の動力源が稼働しているか否かを検出し、動力源が稼働している場合に他車両が可動状態にあると判定し、一方で動力源が稼働していない場合に他車両が可動状態にないと判定する。動力源とは車両を駆動させるための動力機構であり例えばエンジンである。動力源が稼働している場合その他車両は発進する可能性がある。本実施形態によれば発進する可能性がない他車両側のドアを案内する。これにより安全に開閉できるドアを案内することができる。
【0045】
ドアは第1ドア及び第2ドアを含む。コントローラ20は第1ドアに係る推奨度、及び第2ドアに係る推奨度を算出し、第1ドア及び第2ドアのうち、推奨度が高い方を推奨ドアとして決定する。そしてコントローラ20は決定された推奨ドアを案内する情報を出力する。これにより安全に開閉できるドアを案内することができる。
【0046】
第1ドア及び第2ドアのうち、一方は自車両40の右側の後部座席ドア30であり、他方は自車両40の左側の後部座席ドア31である。
【0047】
情報の出力には、スピーカ12を介した音声による出力、車内に設置されたディスプレイ13への出力、後部座席ドアに設置されたライト14を点灯させること、の少なくともいずれか1つが含まれる。これにより安全に開閉できるドアを案内することができる。なお上記3つの出力はすべて同時に行われてもよい。
【0048】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。
【0049】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0050】
例えば、上述の実施形態では後部座席ドアについて説明したが本発明は後部座席ドアに限定されず、運転席ドア、助手席ドアについても適用可能である。
【0051】
上述の実施形態では可動状態の判定方法の一つとしてエンジン音を説明したが、エンジンが搭載されない電気自動車においては次の方法で可動状態が判定されてもよい。すなわち、マイク11にエンジンを搭載した車両の排気音を模した電子的な音が入力された場合にコントローラ20は他車両が可動状態にあると判定し、一方でマイク11に排気音を模した電子的な音が入力されない場合に他車両が可動状態にないと判定してもよい。これにより、自車両40に隣接する駐車車両が電気自動車であっても可動状態の判定が可能となる。
【0052】
電気自動車には電源をオンオフするための電源スイッチが搭載される。そこでコントローラ20は、他車両に設置された電源スイッチがオンになっているか否かに関する情報をクラウドサーバから取得してもよい。そしてコントローラ20は電源スイッチがオンになっていることを示す情報を取得した場合に他車両が可動状態にあると判定し、一方で電源スイッチがオフになっていることを示す情報を取得した場合に他車両が可動状態にないと判定してもよい。この方法は電源スイッチのオンオフに関する情報がクラウドサーバに集約されることが前提である。この方法であれば自車両40に隣接する駐車車両が電気自動車であっても可動状態の判定が可能となる。
【0053】
図5に示すように他車両41,42のうち両方に乗員が乗車している場合を考える。他車両41においては後部座席の左側に乗員が座っている。他車両42においては後部座席の左側に乗員が座っている。他車両41,42の両方とも車内に他の乗員はいないものとする。この場合、他車両41,42の両方とも可動状態にあると判定される。上述の実施形態ではこのような場合危険度の大きさを加味して推奨度が算出されると説明しており、
図5の例も同様に危険度の大きさを加味して推奨度が算出される。
図5では危険度の大きさは自車両40の進行方向中心線から他車両41,42の乗員の位置(座っている場所の位置)までの距離によって評価される。
図5では、自車両40の進行方向中心線から他車両41の乗員の位置までの距離は、自車両40の進行方向中心線から他車両42の乗員の位置までの距離より短い。これは他車両41の乗員は自車両に近い側に座っており、他車両42の乗員は自車両から遠い側に座っていることを意味する。よって降車するとき、他車両41の乗員は後部座席ドア33を開けると推定され、他車両42の乗員は後部座席ドア35を開けると推定される。この場合タイミングによっては右側の後部座席ドア30を開けたとき後部座席ドア33と干渉する可能性がある。一方左側の後部座席ドア31を開けたとき後部座席ドア34と干渉する可能性はゼロ、あるいはほぼゼロと推定される。よってこの場合、左側の後部座席ドア31の推奨度が右側の後部座席ドア30の推奨度より高くなるように算出される。その結果、推奨度が高い方のドア、すなわち左側の後部座席ドア31が推奨ドアとして決定される。すなわちコントローラ20は自車両40の中心から一方の他車両41の乗員の位置までの距離及び他方の他車両42の乗員の位置までの距離を算出し、距離が長い場合は短い場合と比較して推奨度が高くなるように推奨度を算出してもよい。これにより隣接する車両のドアとの干渉する可能性が低い安全に開閉できるドアを案内することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 推奨ドア案内装置
10 カメラ
11 マイク
12 スピーカ
13 ディスプレイ
14 ライト
20 コントローラ
21 降車意図判断部
22 可動状態判定部
23 推奨度算出部
24 案内出力部
30、31 後部座席ドア