(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】移動体用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/36 20180101AFI20240827BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20240827BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240827BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20240827BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240827BHJP
F21Y 113/13 20160101ALN20240827BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20240827BHJP
【FI】
F21S41/36
F21S41/16
F21V7/00 570
F21V9/38
F21Y115:30
F21Y113:13
F21W102:00
(21)【出願番号】P 2020188729
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 一
(72)【発明者】
【氏名】中野 卓充
(72)【発明者】
【氏名】谷本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】江塚 敏晴
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正志
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019555(WO,A1)
【文献】特開2005-063799(JP,A)
【文献】特開2010-243880(JP,A)
【文献】特開2010-198805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0188010(US,A1)
【文献】特開2016-081890(JP,A)
【文献】特開2012-064597(JP,A)
【文献】特開2020-177070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21S 8/00
F21S 2/00
B60Q 1/00
F21V 7/00
F21V 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光をそれぞれ出力する第1光源(11)、第2光源(12)、及び第3光源(13)と、
前記第1光源から
青色レーザ光が照射され、
緑色の第1波長の第1の光を出力する第1蛍光体(21)と、
前記第2光源から
青色レーザ光が照射され、前記第1波長とは異なる
赤色の第2波長の第2の光を出力する第2蛍光体(22)と、
前記第3光源から
青色よりも短い波長を有する青紫色レーザ光が照射され、前記第1波長及び前記第2波長とは異なる
青色の第3波長の第3の光を出力する第3蛍光体(23)と、
第1ダイクロイックミラー(31)及び第2ダイクロイックミラー(32、32A)を有し、前記第1の光、前記第2の光、及び第3の光が入射し、前記第1の光、前記第2の光、及び第3の光を合成した光を生成する第1光学系(30、30A)と、
前記第1光学系からの前記合成した光が入射し、前記合成した光に基づいて、出力用の第2光学系(40)に向かう透過光を生成する第3ダイクロイックミラー(33)と、を備え、
前記第3ダイクロイックミラーは、前記第1波長、前記第2波長、及び前記第3波長よりも短い波長の光を反射する特性を有する、移動体用灯具(1、1A)。
【請求項2】
前記第1波長は、前記第1ダイクロイックミラーを透過し、前記第2ダイクロイックミラーで反射し、前記第3ダイクロイックミラーを透過し、
前記第2波長は、前記第1ダイクロイックミラーで反射し、前記第2ダイクロイックミラーで反射し、前記第3ダイクロイックミラーを透過し、
前記第3波長は、前記第2ダイクロイックミラーを透過し、前記第3ダイクロイックミラーを透過する、
ように構成される請求項1に記載の移動体用灯具。
【請求項3】
前記第1波長は、前記第1ダイクロイックミラーを透過し、前記第2ダイクロイックミラーを透過し、前記第3ダイクロイックミラーを透過し、
前記第2波長は、前記第1ダイクロイックミラーで反射し、前記第2ダイクロイックミラーを透過し、前記第3ダイクロイックミラーを透過し、
前記第3波長は、前記第2ダイクロイックミラーで反射し、前記第3ダイクロイックミラーを透過する、
ように構成される請求項
1に記載の移動体用灯具。
【請求項4】
前記第3ダイクロイックミラーからの前記透過光を走査する走査部を備える、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の移動体用灯具。
【請求項5】
開口部を有する筐体を更に備え、
前記第1光源、前記第2光源、前記第3光源、前記第1蛍光体、前記第2蛍光体、前記第3蛍光体、前記第1光学系、前記第1ダイクロイックミラー、及び前記第2ダイクロイックミラーは、前記筐体に収容され、
前記第3ダイクロイックミラーは、前記開口部を覆うように設けられ、前記開口部を介して出射される前記透過光を生成する、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の移動体用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光源から射出されたレーザ光を、ホログラム等を介して出射して外部(路面等)の照明を行う移動体用灯具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光源としてレーザ光源を用いる場合、レーザ光がコヒーレントな状態で外部に照射されることを防止できれば、高輝度を得ることができる点で有利である。この点、蛍光体にレーザ光を投射して励起させて励起光を生成し、この励起光によって外部の照明を行う場合、レーザ光が蛍光体によって散乱されるので、コヒーレントな状態で外部に照射されることを防止できる。また、蛍光体とレーザ光源との組み合わせは、ほぼ“点光源”として扱うことができ、LED(Light Emitting Diode)を用いる場合よりも集光性を高めることができる。
【0005】
しかしながら、蛍光体とレーザ光源との組み合わせを利用する構成においては、蛍光体の劣化や剥離等に起因して不都合(例えば、レーザ光が蛍光体によって散乱されることなくコヒーレントな状態で照射されてしまうこと等)が生じうる。
【0006】
そこで、本開示は、蛍光体とレーザ光源との組み合わせを利用する構成において、蛍光体の劣化や剥離等に起因して生じうる不都合を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面では、レーザ光をそれぞれ出力する第1光源(11)、第2光源(12)、及び第3光源(13)と、
前記第1光源からの青色レーザ光が照射され、緑色の第1波長の第1の光を出力する第1蛍光体(21)と、
前記第2光源からの青色レーザ光が照射され、前記第1波長とは異なる赤色の第2波長の第2の光を出力する第2蛍光体(22)と、
前記第3光源からの青色よりも短い波長を有する青紫色レーザ光が照射され、前記第1波長及び前記第2波長とは異なる青色の第3波長の第3の光を出力する第3蛍光体(23)と、
第1ダイクロイックミラー(31)及び第2ダイクロイックミラー(32、32A)を有し、前記第1の光、前記第2の光、及び第3の光が入射し、前記第1の光、前記第2の光、及び第3の光を合成した光を生成する第1光学系(30、30A)と、
前記第1光学系からの前記合成した光が入射し、前記合成した光に基づいて、出力用の第2光学系(40)に向かう透過光を生成する第3ダイクロイックミラー(33)と、を備え、
前記第3ダイクロイックミラーは、前記第1波長、前記第2波長、及び前記第3波長よりも短い波長の光を反射する特性を有する、移動体用灯具(1、1A)が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、蛍光体とレーザ光源との組み合わせを利用する構成において、蛍光体の劣化や剥離等に起因して生じうる不都合を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両用灯具を備える車両を概略的に示す側面図である。
【
図2】車両用灯具による照明方法の一例の説明図である。
【
図3】実施例1による車両用灯具の構成を概略的に示す図である。
【
図4】第1ダイクロイックミラーの特性の説明図である。
【
図5】実施例1による第2ダイクロイックミラーの特性の説明図である。
【
図7】実施例2による車両用灯具の構成を概略的に示す図である。
【
図8】実施例2による第2ダイクロイックミラーの特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0011】
図1は、車両用灯具1を備える車両を概略的に示す側面図である。車両用灯具1は、車両の前側の左右のそれぞれに設けられる車両用の前照灯である。なお、車両用灯具1は、車両の幅方向中央部に設けられてもよいし、3つ以上並んで設けられてもよい。以下では、車両用灯具1とは、特に言及しない限り、左右の任意のいずれ一方の車両用灯具を意味する。車両用灯具1は、図示しないハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に配置されてよい。
【0012】
車両用灯具1(移動体用灯具の一例)は、ハイビームやロービームを形成する灯具ユニット(図示せず)と同じ灯室内に配置されてもよいし、別の灯室内に配置されてもよい。
【0013】
図2は、車両用灯具1による照明方法の一例の説明図である。
【0014】
車両用灯具1は、例えば路面に画像G20を投映する態様で、路面を照明してよい。画像G20は、任意の画像であってよく、例えば、歩行者等の周囲の人に所定情報(自車の状態を通知するための情報や、コミュニケーション用の情報等)を提供するための画像や、自車の運転者等の乗員に所定情報(例えば自車の車両情報やナビゲーション情報、歩行者等の検出による注意喚起情報)を提供するための画像、他車の運転者等の乗員に所定情報(自車の状態を通知するための情報、コミュニケーション用の情報等)を提供するための画像等であってよい。なお、
図2では、左右の車両用灯具1が別々の画像G20を生成しているが、左右の車両用灯具1からの光を重ね合わせて一の画像を生成してもよい。
【0015】
次に、上述した車両用灯具1の好ましい実施例について、いくつかに分けて説明する。
【0016】
[実施例1]
図3は、一実施例(実施例1)による車両用灯具1の構成を概略的に示す図である。
図4は、第1ダイクロイックミラー31の特性の説明図であり、
図5は、第2ダイクロイックミラー32の特性の説明図であり、
図6は、第3ダイクロイックミラー33の説明図である。
図4から
図6には、各ダイクロイックミラーの特性A~Cが示されている。
図4から
図6の各図において、横軸は波長(nm:ナノメートル)を表し、縦軸は透過度(0~1.0)を表す。なお、透過度は0~1の値をとり、透過度0が透過率0%に対応し、透過度1.0が透過率100%に対応する。また、
図4から
図6には、後述する青色レーザに係るスペクトル特性D、青紫色レーザに係るスペクトル特性E、緑色光L1、赤色光L2、青色光L3に係るスペクトル特性(この場合、縦軸は例えば強度)F~Hが併せて示されている。なお、スペクトル特性F~H等は、一例であり、適宜変更されてもよい。
【0017】
車両用灯具1は、筐体2を有する。筐体2は、開口部2aを有する。
【0018】
車両用灯具1は、第1光源11、第2光源12、第3光源13、第1蛍光体21、第2蛍光体22、第3蛍光体23、第1ダイクロイックミラー31、第2ダイクロイックミラー32、及び第3ダイクロイックミラー33を有する。
【0019】
第1光源11、第2光源12、第3光源13、第1蛍光体21、第2蛍光体22、第3蛍光体23、第1ダイクロイックミラー31、及び第2ダイクロイックミラー32は、筐体2内に設けられる。第3ダイクロイックミラー33は、筐体2の開口部2aを覆うように設けられてよい。
【0020】
また、車両用灯具1は、更に、集光レンズ40(第2光学系の一例)と、走査部50とを有する。集光レンズ40及び走査部50は、
図3に示すように、筐体2の外部に設けられてよい。
【0021】
第1光源11、第2光源12、及び第3光源13は、それぞれ、レーザ光源であり、レーザ光をそれぞれ出力する。
【0022】
本実施例では、一例として、第1光源11は、青色レーザを出射し、第2光源12は、青色レーザを出射し、第3光源13は、青色よりも短い波長を有する青紫色レーザを出射する。
【0023】
第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23は、それぞれ、第1光源11、第2光源12、及び第3光源13に対応付けて設けられる。第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23は、それぞれ、第1光源11、第2光源12、及び第3光源13からのレーザ光のコヒーレンスを低減する機能を有し、第1光源11、第2光源12、及び第3光源13のそれぞれとの組み合わせにより、ほぼ点光源として機能する。
【0024】
本実施例では、一例として、第1蛍光体21は、第1光源11からのレーザ光が照射され、緑色の波長(第1波長の一例)の緑色光L1(第1の光の一例)を出力し、第2蛍光体22は、第2光源12からのレーザ光が照射され、赤色の波長(第2波長の一例)の赤色光L2(第2の光の一例)を出力し、第3蛍光体23は、第3光源13からのレーザ光が照射され、青色の波長(第3波長の一例)の青色光L3(第3の光の一例)を出力する。
【0025】
なお、
図3に示すように、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23には、それぞれに対応付けてリフレクタやコリメータレンズ25が設けられてもよい。これにより、第1光源11、第2光源12、及び第3光源13からの各レーザ光を、平行化して後述する第1ダイクロイックミラー31や第2ダイクロイックミラー32に入射させることができる。
【0026】
第1ダイクロイックミラー31及び第2ダイクロイックミラー32は、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3に基づいて、これらを合成した光L4(以下、「合成光L4」とも称する)を生成する第1光学系30の一例を形成する。
【0027】
具体的には、第1ダイクロイックミラー31は、
図3に示すように、第1光源11の光軸上かつ第2光源12の光軸上に設けられる。すなわち、第1ダイクロイックミラー31は、第1蛍光体21からの緑色光L1と、第2蛍光体22からの赤色光L2とが入射するように配置される。
【0028】
第1ダイクロイックミラー31は、
図4に示すように、緑の波長域と赤の波長域とを仕切る特性Aを有し、緑の波長域及びそれよりも短い波長の光を透過し、赤の波長域及びそれよりも長い波長の光を反射する。
【0029】
従って、本実施例では、第1ダイクロイックミラー31は、第1蛍光体21からの緑色光L1を透過し、第2蛍光体22からの赤色光L2を反射する。これにより、第2ダイクロイックミラー32には、緑色光L1及び赤色光L2が入射する。
【0030】
第2ダイクロイックミラー32は、
図3に示すように、第1ダイクロイックミラー31よりも第1光源11から離れた側で、第1蛍光体21の光軸上かつ第3光源13の光軸上に設けられる。すなわち、第2ダイクロイックミラー32は、第1ダイクロイックミラー31からの緑色光L1及び赤色光L2と、第3蛍光体23から青色光L3とが入射するように配置される。
【0031】
第2ダイクロイックミラー32は、
図5に示すように、青の波長域と緑の波長域とを仕切る特性Bを有し、青の波長域及びそれよりも短い波長の光を透過し、緑の波長域及びそれよりも長い波長の光を反射する。
【0032】
従って、本実施例では、第2ダイクロイックミラー32は、第1ダイクロイックミラー31からの緑色光L1及び赤色光L2を反射し、第3蛍光体23から青色光L3を透過する。
【0033】
このようにして、第1ダイクロイックミラー31及び第2ダイクロイックミラー32は、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3に基づいて、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3を含む合成光L4を、第3ダイクロイックミラー33に向けて出射できる。
【0034】
第3ダイクロイックミラー33は、第2ダイクロイックミラー32よりも第3光源13から離れた側で、第3光源13の光軸上に配置される。すなわち、第3ダイクロイックミラー33は、第2ダイクロイックミラー32からの合成光L4が入射するように配置される。
【0035】
第3ダイクロイックミラー33は、
図6に示すように、青紫の波長域と青の波長域とを仕切る特性Cを有し、青紫の波長域及びそれよりも短い波長の光を
反射し、青の波長域及びそれよりも長い波長の光を
透過する。従って、本実施例では、第3ダイクロイックミラー33は、第2ダイクロイックミラー32からの合成光L4を透過することができる。
【0036】
集光レンズ40は、第3ダイクロイックミラー33よりも第3光源13から離れた側で、第3光源13の光軸上に配置される。なお、集光レンズ40の光軸は、第3光源13の光軸と一致する。すなわち、集光レンズ40には、第3ダイクロイックミラー33からの透過光L5(≒合成光L4)が入射するように配置される。集光レンズ40は、透過光L5(赤、青、緑の各色のレーザ光)を集光して走査部50に向けて出射する。
【0037】
走査部50は、第3ダイクロイックミラー33からの透過光L5(集光レンズ40を介して入射する透過光L5)が入射するように配置される。走査部50は、透過光L5を走査して、上述した画像G20を出力する。
【0038】
走査部50は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナであってよい。この場合、MEMSスキャナは、集光レンズ40から入射するレーザ光を、路面上に投射する。MEMSスキャナは、例えば、直交する2軸まわりに回転可能なMEMSミラーを備える。路面上のレーザ光の投射位置は、MEMSミラーの向きに応じて変化する。従って、MEMSスキャナは、図示しない制御装置による制御下で、路面上のレーザ光の投射位置を任意に変化させることができる。
【0039】
ところで、「発明が解決しようとする課題」の欄で上述したように、本実施例のように、蛍光体(第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23)とレーザ光源(第1光源11、第2光源12、及び第3光源13)との組み合わせを利用する構成においては、蛍光体の劣化や剥離等に起因して生じうる不都合(例えば、レーザ光が蛍光体によって散乱されることなくコヒーレントな状態で照射されてしまうこと等)を、適切に防止できることが有用である。
【0040】
この点、本実施例によれば、上述した構成により、かかる不都合を適切に防止できる。
【0041】
具体的には、本実施例によれば、第1蛍光体21の異常により第1光源11からのレーザ光が、第1ダイクロイックミラー31に直接入射する場合でも、第1光源11からのレーザ光(青)は、第1ダイクロイックミラー31を透過し(
図4参照)、かつ、第2ダイクロイックミラー32を透過する(
図5参照)ので、集光レンズ40へと向かうことがない。これにより、第1蛍光体21の異常が発生した場合でも、第1光源11からのレーザ光が、コヒーレントな状態で集光レンズ40を介して外部へと照射されてしまうことを防止できる。
【0042】
同様に、第2蛍光体22の異常により第2光源12からのレーザ光が、第1ダイクロイックミラー31に直接入射する場合でも、第2光源12からのレーザ光(青)は、第1ダイクロイックミラー31を透過するので(
図4参照)、集光レンズ40へと向かうことがない。これにより、第2蛍光体22の異常が発生した場合でも、第2光源12からのレーザ光が、コヒーレントな状態で集光レンズ40を介して外部へと照射されてしまうことを防止できる。
【0043】
同様に、第3蛍光体23の異常により第3光源13からのレーザ光が、第2ダイクロイックミラー32に直接入射する場合でも、第3光源13からのレーザ光(青紫)は、第2ダイクロイックミラー32を透過するものの(
図5参照)、第3ダイクロイックミラー33で反射されるので(
図6参照)、集光レンズ40へと向かうことがない。これにより、第3蛍光体23の異常が発生した場合でも、第3光源13からのレーザ光が、コヒーレントな状態で集光レンズ40を介して外部へと照射されてしまうことを防止できる。
【0044】
このようにして、本実施例によれば、第3ダイクロイックミラー33が、
図6に示すように、合成光L4を形成する光の成分のうちの青よりも短い波長の光だけを反射する特性、すなわち、第3光源13からのレーザ光(青紫)を反射する特性を有する。これにより、筐体2内の第3光源13からのレーザ光が、第3ダイクロイックミラー33を介して筐体2の外部へと照射されることを防止できる。そして、この結果、筐体2内の第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のそれぞれからのレーザ光が、第3ダイクロイックミラー33を介して筐体2の外部へと照射されることを防止できる。これにより、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のうちのいずれに異常が生じた場合であっても、レーザ光が、コヒーレントな状態で集光レンズ40を介して外部へと照射されてしまうことを防止できる。
【0045】
従って、本実施例によれば、第3ダイクロイックミラー33を設けることで、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のうちのいずれにも異常がないときは、赤、青、緑の各色の透過光L5が集光レンズ40を介して外部へと照射できる。一方で、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のうちのいずれに異常が生じたときは、各光源11~13のレーザ光が蛍光体21~23を通過することなく外部へと照射されてしまうことを、防止できる。
【0046】
[実施例2]
図7は、他の一実施例(実施例2)による車両用灯具1Aの構成を概略的に示す図である。
図8は、第2ダイクロイックミラー32Aの特性の説明図である。
図8では、上述した
図5と同様、横軸に波長を取り、縦軸に透過率を取り、第2ダイクロイックミラー32Aの特性Iが示されている。また上述した
図5と同様、
図8には、青色レーザに係るスペクトル特性D、青紫色レーザに係るスペクトル特性E、緑色光L1、赤色光L2、青色光L3に係るスペクトル特性(この場合、縦軸は例えば強度)F~Hが併せて示されている。
【0047】
本実施例による車両用灯具1Aは、上述した実施例による車両用灯具1に対して、第2ダイクロイックミラー32が第2ダイクロイックミラー32Aで置換され、かつ、第1光源11、第2光源12、第3光源13、第1蛍光体21、第2蛍光体22、第3蛍光体23、及び第1ダイクロイックミラー31の配置が変更された点が、主に異なる。
【0048】
第2ダイクロイックミラー32Aは、上述した実施例による第2ダイクロイックミラー32に対して、
図5に示した特性Bが
図8に示す特性Iに変更された点が異なる。
【0049】
具体的には、第2ダイクロイックミラー32Aは、
図8に示すように、青の波長域と緑の波長域とを仕切る特性Iを有し、青の波長域及びそれよりも短い波長の光を反射し、緑の波長域及びそれよりも長い波長の光を透過する。
【0050】
従って、本実施例では、第2ダイクロイックミラー32Aは、第1ダイクロイックミラー31からの緑色光L1及び赤色光L2を透過し、第3蛍光体23から青色光L3を反射する。
【0051】
第1光源11、第2光源12、第3光源13、第1蛍光体21、第2蛍光体22、第3蛍光体23、第1ダイクロイックミラー31、及び第2ダイクロイックミラー32Aの配置は、上述した実施例1による同要素の配置に対して、90度反時計回りに回転する態様で変更されている。
【0052】
第1ダイクロイックミラー31及び第2ダイクロイックミラー32Aは、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3に基づいて、これらを合成した光L4(合成光L4)を生成する第1光学系30Aの一例を形成する。本実施例の場合も、上述した実施例と同様、第1ダイクロイックミラー31及び第2ダイクロイックミラー32Aは、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3に基づいて、緑色光L1、赤色光L2、及び青色光L3を含む合成光L4を、第3ダイクロイックミラー33に向けて出射できる。
【0053】
また、本実施例の場合も、上述した実施例と同様、上述した構成により、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のうちのいずれに異常が生じた場合に生じうる不都合を適切に防止できる。
【0054】
具体的には、本実施例によれば、第1蛍光体21の異常により第1光源11からのレーザ光が、第1ダイクロイックミラー31に直接入射する場合でも、第1光源11からのレーザ光(青)は、第1ダイクロイックミラー31を透過するものの(
図4参照)、第2ダイクロイックミラー32Aで反射する(
図8参照)ので、集光レンズ40へと向かうことがない。これにより、第1蛍光体21の異常が発生した場合でも、第1光源11からのレーザ光が、コヒーレントな状態で集光レンズ40を介して外部へと照射されてしまうことを防止できる。
【0055】
同様に、第2蛍光体22の異常により第2光源12からのレーザ光が、第1ダイクロイックミラー31に直接入射する場合でも、第2光源12からのレーザ光(青)は、第1ダイクロイックミラー31を透過するので(
図4参照)、集光レンズ40へと向かうことがない。これにより、第2蛍光体22の異常が発生した場合でも、第2光源12からのレーザ光が、コヒーレントな状態で集光レンズ40を介して外部へと照射されてしまうことを防止できる。
【0056】
同様に、第3蛍光体23の異常により第3光源13からのレーザ光が、第2ダイクロイックミラー32Aに直接入射する場合でも、第3光源13からのレーザ光(青紫)は、第2ダイクロイックミラー32Aで反射するものの(
図8参照)、第3ダイクロイックミラー33で反射されるので(
図6参照)、集光レンズ40へと向かうことがない。これにより、第3蛍光体23の異常が発生した場合でも、第3光源13からのレーザ光が、コヒーレントな状態で集光レンズ40を介して外部へと照射されてしまうことを防止できる。
【0057】
このようにして、本実施例によっても、第3ダイクロイックミラー33が、
図6に示すように、第3光源13からのレーザ光(青紫)を反射する特性を有するので、筐体2内の第3光源13からのレーザ光が、第3ダイクロイックミラー33を介して筐体2の外部へと照射されることを防止できる。そして、この結果、筐体2内の第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のそれぞれからのレーザ光が、第3ダイクロイックミラー33を介して筐体2の外部へと照射されることを防止できる。これにより、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のうちのいずれに異常が生じた場合であっても、レーザ光が、コヒーレントな状態で集光レンズ40を介して外部へと照射されてしまうことを防止できる。
【0058】
従って、本実施例によれば、第3ダイクロイックミラー33を設けることで、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のうちのいずれにも異常がないときは、赤、青、緑の各色の透過光L5が集光レンズ40を介して外部へと照射できる。一方で、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のうちのいずれに異常が生じたときは、各光源11~13のレーザ光が蛍光体21~23を通過することなく外部へと照射されてしまうことを、防止できる。
【0059】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0060】
例えば、上述した各実施例では、特定のレイアウトで筐体2内の各要素が配置されているが、かかる配置は態様に変更可能である。いずれの場合も、第3ダイクロイックミラー33に、赤、青、緑の各色のレーザ光を含む合成光L4を入射させつつ、かつ、第3ダイクロイックミラー33に、青色よりも短い波長のレーザ光を反射する特性C(
図6参照)を付与することで、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。すなわち、赤、青、緑の各色のレーザ光である透過光L5を生成しつつ、第1蛍光体21、第2蛍光体22、及び第3蛍光体23のうちのいずれに異常が生じた場合に生じうる不都合を適切に防止できる。
【0061】
また、上述した各実施例では、第1光源11は、青色レーザを出射し、第2光源12は、青色レーザを出射し、第3光源13は、青紫色レーザを出射するが、これに限られない。例えば、第1光源11及び/又は第2光源12は、青紫色レーザを出射してもよい。この場合も、緑色光L1及び赤色光L2が得られるように第1蛍光体21及び/又は第2蛍光体22を構成することで、上述した各実施例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
1、1A 車両用灯具
2 筐体
2a 開口部
11 第1光源
12 第2光源
13 第3光源
21 第1蛍光体
22 第2蛍光体
23 第3蛍光体
25 コリメータレンズ
30、30A 第1光学系
31 第1ダイクロイックミラー
32、32A 第2ダイクロイックミラー
33 第3ダイクロイックミラー
40 集光レンズ
50 走査部
L1 緑色光
L2 赤色光
L3 青色光
L4 合成光
L5 透過光