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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両前部のシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/06 20060101AFI20240827BHJP
   B60J 10/86 20160101ALI20240827BHJP
   B60J 10/24 20160101ALI20240827BHJP
   B60J 10/27 20160101ALI20240827BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60R13/06
B60J10/86
B60J10/24
B60J10/27
B62D25/12 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020188765
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077775
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】市村 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雄高
(72)【発明者】
【氏名】稲田 由幸
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 成浩
(72)【発明者】
【氏名】郷家 孝徳
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-124513(JP,U)
【文献】特開2000-289466(JP,A)
【文献】特開2001-301541(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111572324(CN,A)
【文献】米国特許第05826378(US,A)
【文献】特開2009-255640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/06
B60J 10/86
B60J 10/24
B60J 10/27
B62D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフードの前縁部に車幅方向に沿って設けられ、前記フードと車体側部材との隙間をシールするシール部材を備える車両前部のシール構造であって、
前記シール部材は、前記フードの前縁部に取り付けられる取付部と、前記取付部から下方に膨出形成された中空部と、前記中空部の車両後方の箇所から分岐され、前記中空部の下方を通って車両前方斜め下方に延在されて前記車体側部材に弾接される下リップ部と、を含んで構成され、
前記フードの全閉位置において、前記隙間が所定量以下の場合は、前記中空部が押しつぶされて前記下リップ部と密着状態とされるとともに、前記下リップ部が押しつぶされた前記中空部により前記車体側部材に押圧され、
前記フードの全閉位置において、走行風によって前記隙間が前記所定量を超えて前記中空部の上下方向の高さより広がった場合は、前記中空部と前記下リップ部とが離間されて前記中空部の下方と前記下リップ部との間に空間を形成した状態で前記下リップ部が前記車体側部材に弾接され
前記車体側部材には、後方側が高くなる段差部が形成されており、
前記段差部は、前記隙間が前記中空部の前記高さより広がった際に、前記下リップ部の先端が当接される位置に設定されている
ことを特徴とする車両前部のシール構造。
【請求項2】
前記下リップ部の先部は、下方に向かって湾曲されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両前部のシール構造。
【請求項3】
前記フードの前縁部を覆う外装部品を備え、
前記シール部材の前記取付部は、前記フードの前縁部の下面に面接触される板状の下壁部と、前記下壁部の前端から上方に突設される前壁部と、前記前壁部の上部から後方に延設されて前記下壁部と対向して設けられる上壁部と、を有し、前記下壁部と前記上壁部とで前記フードの前縁部を車両前方から咥え込むように挟んで取り付けられ、
前記外装部品は、前記フードに装着された状態で、前記前壁部に前方から当接されて、前記フードの前縁部との間に前記前壁部を挟持する第1の規制部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両前部のシール構造。
【請求項4】
前記上壁部は、同上壁部から前記下壁部に向かって延び、前記フードの前縁部の上面に弾接されて、前記下壁部との間に前記フードの前縁部を挟持する上リップ部を含み、
前記外装部品は、前記フードに装着された状態で、前記上壁部の上面に当接して前記上壁部を上方から押さえる第2の規制部を有する
ことを特徴とする請求項に記載の車両前部のシール構造。
【請求項5】
前記上壁部の上面には、前記前壁部から後方斜め上方に傾斜される傾斜面が形成され、前記外装部品の前記第2の規制部には、前記傾斜面に沿って車両前後方向に延び、同傾斜面に当接されるリブが車幅方向に間隔を開けて複数形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の車両前部のシール構造。
【請求項6】
前記中空部は、前記下壁部の下部に設けられ、
前記下壁部は、前記中空部よりも後方側に突設されている
ことを特徴とする請求項3から5の何れか一項に記載の車両前部のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両前部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
後部が車体に揺動可能に支持された前開き式のフードが設けられた車両においては、フードの前縁部とその下方に位置する車体前部の車体側部材との間の隙間をシールするためのシール部材がフードの前縁部に車幅方向に沿って設けられている(特許文献1参照)。
また、フードの下面に設けられたストライカと、車体骨格部材(例えば車両前部において車幅方向に延在するアッパーバー)に設けられストライカに係止するラッチ機構は、共にフードの全閉位置においてフードの前縁部の近傍に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-255640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、車両前部のデザイン性を高める観点から、フードの前部に、斜め下方に延在し車体前部の車体側部材上に位置する傾斜部を設けた車両が提供されている。
この場合、シール部材は、傾斜部の前縁部に設けられ、傾斜部の前縁部とその下方に位置する車体側部材(例えばフロントバンパ)との隙間をシールしている。
このような車両では、ラッチ機構を傾斜部よりも車両後方に位置する車体骨格部材(例えばアッパーバー)に設けることから、ストライカは、傾斜部よりも車両後方に離れたフードの箇所に設けられることになる。
したがって、車両が高速走行して強い走行風を受けた場合、フードの上面に負圧が発生し、その結果、フードに浮き上がりが発生し、ラッチ機構で係止されたストライカよりも前方に位置する傾斜部を含むフードのがたつきや振動が生じることが懸念される。
本発明は、シール部材に着目してなされたものであり、フードのがたつきや振動が生じることを抑制する上で有利な車両前部のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、車両のフードの前縁部に車幅方向に沿って設けられ、前記フードと車体側部材との隙間をシールするシール部材を備える車両前部のシール構造であって、前記シール部材は、前記フードの前縁部に取り付けられる取付部と、前記取付部から下方に膨出形成された中空部と、前記中空部の車両後方の箇所から分岐され、前記中空部の下方を通って車両前方斜め下方に延在されて前記車体側部材に弾接される下リップ部と、を含んで構成され、前記フードの全閉位置において、前記隙間が所定量以下の場合は、前記中空部が押しつぶされて前記下リップ部と密着状態とされるとともに、前記下リップ部が押しつぶされた前記中空部により前記車体側部材に押圧され、前記フードの全閉位置において、走行風によって前記隙間が前記所定量を超えて前記中空部の上下方向の高さより広がった場合は、前記中空部と前記下リップ部とが離間されて前記中空部の下方と前記下リップ部との間に空間を形成した状態で前記下リップ部が前記車体側部材に弾接されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両の高速走行時、フードの全閉位置において走行風によりフードと車体側部材との隙間が所定量を超えて中空部の上下方向の高さより広がった場合は、中空部と下リップ部とが離間されて中空部の下方と下リップ部との間に空間を形成した状態で下リップ部が車体側部材に弾接されるので、フードの前縁部と車体側部材と間が確実にシールされる。
そして、中空部と下リップ部が元の形状に弾性復帰しようとする力は、フードの前縁部を上方に押し上げる方向にも作用し、フードのがたつきや振動を抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態の車両前部のシール構造が適用された車両の正面図である。
図2】実施の形態の車両前部のシール構造を車幅方向と直交する断面で破断した断面図で、車両の高速走行時、フードの全閉位置から傾斜部がその前縁部が上方に変位する方向に撓み、フードに浮き上がりが発生している状態の図である。
図3】実施の形態の車両前部のシール構造を車幅方向と直交する断面で破断した断面図で、車両の低速走行時、フードの全閉位置でフードに浮き上がりが発生していない状態の図である。
図4】フードの前部の傾斜部およびシール部材を示す斜視図である。
図5】シール部材の斜視図である。
図6】シール部材の端部にクリップが取り付けられた状態を示す斜視図である。
図7図6のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
以下の図面において符号UPは車両上方を示し、符号FRは車両前方を示し、符号HLは車幅方向外側を示す。なお、車両の左右は車両後方から車両前方を見ていうものとする。
図2に示すように、車両10の前部には、ダッシュパネルで車室と区画された車両前部空間Sが形成されている。
車両前部空間Sには、駆動源としてのエンジンあるいはモータが配置されると共に、それらエンジンやモータの車両前方にエンジンやモータを冷却する熱媒体の熱交換器(ラジエータ)が配置されている。
また、車両前部空間Sの前部の下部には、車幅方向に延在する車体側部材を構成するフロントバンパ12が配置され、フロントバンパ12は、車両前部の下部に配置された車体側部材を構成している。
フロントバンパ12の上方を向いた上面12Aに、車両前方側よりも車両後方側が高くなる段差部1202が車幅方向に沿って延在形成されている。
【0009】
車両前部空間Sの上方には、後部が車体に揺動可能に支持された前開き式のフード14が設けられ、フード14は、車両前部空間Sを覆う全閉位置と車両前部空間Sを開放する全開位置と間で揺動可能である。
図2に示すように、フード14は、車体外側の面を構成するフードアウターパネル16と、フードアウターパネル16に一体に取り付けられ車両前部空間Sに対向するフードインナーパネル18とを含んで構成され、それらパネルは共に金属製である。
図4に示すように、フード14は、車両前部空間Sの上方を覆うフード本体1402と、フード本体1402の前端から下方に屈曲し車両前部空間Sの車両前方の車幅方向の中央部分に位置する傾斜部1404とを備えている。
傾斜部1404の車幅方向に沿った幅は、フード本体1402前端の幅よりも小さく下方に至るにつれて次第に小さくなる寸法で形成されている。
【0010】
車体骨格部材(例えば、車両前部空間Sの前部で車幅方向に延在するアッパーバー)に設けられたラッチ機構に係脱可能に係止するストライカは、フード本体1402の前端から100mmから150mm程度車両後方に離れたフード本体1402の下面の箇所に設けられている。
図2に示すように、傾斜部1404は、フード本体1402の前端から車両前方に向かって斜め下方に延在する傾斜部本体1404Aと、傾斜部本体1404Aの前端から車両前方に突出してフード本体1402の前端に沿って車幅方向に延在し、車両前部に配置された車体側部材であるフロントバンパ12の上方に位置する前縁部1404Bとを有している。
本実施の形態では、傾斜部1404の前縁部1404Bはフードインナーパネル18の前縁部1404Bで構成されている。
フードアウターパネル16の前縁部1404Cは傾斜部1404の前縁部1404Bの上方に離れた箇所に位置し、その車両前後方向の長さは傾斜部1404の前縁部1404Bよりも短い寸法で形成されている。
したがって、フード14の前縁部は、フードインナーパネル18の前縁部1404Bで構成されている。
【0011】
図4に示すように、傾斜部1404には車幅方向に間隔をおいて複数の軽量穴20が設けられている。
フード14の全閉位置において複数の軽量穴20の後方にラジエータが位置している。
図1図2に示すように、傾斜部1404の車両前方には、複数のスリット2202が形成された外装部品を構成するフロントグリル22が取り付けられ、傾斜部1404の車両前方、すなわち、フード14の前縁部1404Bはフロントグリル22で覆われている。
フロントグリル22は車幅方向の中央に位置し、フロントグリル22の車幅方向に沿った幅は下方に至るにつれて次第に小さくなる寸法で形成されている。
したがって、フード14の全閉位置において、車両の走行時、フロントグリル22のスリット2202を介して走行風がラジエータに導かれる。
【0012】
図2に示すように、本実施の形態に係る車両前部のシール構造は、フード14の前縁部1404Bと、シール部材24と、フロントグリル22とを含んで構成されている。
フロントグリル22は、その車幅方向の両端と中間部とが従来公知の様々な取り付け構造により傾斜部1404に取り付けられている。
フロントグリル22は、フード14の傾斜部1404の車両前方に位置する前壁部22Aと、前壁部22Aの下端から車両後方に屈曲された下壁部22Bとを有し、フロントグリル22は合成樹脂製または金属製である。
下壁部22Bは、車両後方に至るにつれ上方に変位する階段状に設けられている。
すなわち、下壁部22Bは、前壁部22Aの下端から車両後方に延在する第1横壁部2202と、第1横壁部2202の後端から起立する第1縦壁部2204と、第1縦壁部2204の上端から車両後方に延在する第2横壁部2206と、第2横壁部2206の後端から起立する第2縦壁部2208と、第2縦壁部2208の上端から後方に延在する第3横壁部2210と、第3横壁部2210の後端から斜めに起立する第3縦壁部2212と、第3縦壁部2212の上方から車両後方に延在する第4横壁部2214と、第4縦壁部2214の上端から車両後方に延在する第4縦壁部2216と、複数のリブ2218とを含んで構成されている。
【0013】
リブ2218は、第2縦壁部2208と第3横壁部2210の車幅方向に間隔をおいた複数箇所に、第2縦壁部2208と第3横壁部2210とにわたって延在している。
リブ2218は、第2縦壁部2208の車両後方に向いた面2208Aの上半部と第3横壁部2210の下方に向いた面2210Aの後部との間を接続している。
リブ2218は、車両後方に至るにつれて次第に上方に変位する車両後方で斜め下方に向いた傾斜壁面2218Aを有している。
リブ2218の車幅方向の幅は約3mm程度であり、車幅方向に約100mm程度の等間隔をおいて複数設けられている。
【0014】
次に、シール部材24について、フード14の全閉位置からフード14の前縁部1404Bが上方に変位する方向に撓み、フード14に浮き上がりが発生している状態を示す図2と、何も力が作用していない状態のシール部材24の下部部分の断面図を示す図7とを参照して説明する。
シール部材24は、ゴムなどの弾性材料で構成されている。
シール部材24は、フード14の前縁部1404Bに車幅方向に沿って設けられ、車体側部材であるフロントバンパ12に上方から弾接し、フード14とフロントバンパ12との隙間をシールするものである。
シール部材24はフード14の前縁部1404Bに取り付けられる取付部24Aと、取付部24Aに接続されフロントバンパ12に弾接する下部24Bとを有している。
本実施の形態では、取付部24Aは硬度が高い弾性材料で、下部24Bは取付部24Aよりも硬度が低い弾性材料で構成され、これにより、フード14の前縁部1404Bに取り付けられる取付部24Aのシール部材24への取り付け強度を確保しつつ、フロントバンパ12に弾接する下部24Bによるシール性能の向上が図られている
【0015】
取付部24Aは、下壁部2408と、前壁部2402と、上壁部2404とを含んで構成されている。
下壁部2408は、板状を呈しフード14の前縁部1404Bの下面1410に面接触している。
より詳細には、下壁部2408は、前壁部2402の下部からフード14の前縁部1404Bの下面1410に沿って車両後方に延在し、下部24Bにより上方に付勢されていることからフード14の前縁部1404Bの下面1410に弾接している。
すなわち、フード14の前縁部1404Bの下面1410に下壁部2408が位置することから、シール部材24の取付部24Aは、フード14の前縁部1404Bにより上方に移動不能に支持されている。
後述する中空部2420は、下壁部2408の下部に設けられ、下壁部2408は、中空部2420よりも後方側に突設されている。
【0016】
前壁部2402は、下壁部2408の前端から上方に突設されている。
上壁部2404は、前壁部2402の上部から後方に延設されて下壁部2408と対向して設けられている。
そして、下壁部2408と上壁部2404とでフード14の前縁部1404Bを車両前方から咥え込むように挟んで取り付けられている。
上壁部2404は上リップ部2406を含んでいる。
上リップ部2406は、上壁部2404から下壁部2408に向かって延び、フード14の前縁部1404Bの上面1412に弾接されて、下壁部2408との間にフード14の前縁部1404Bを挟持する上リップ部2406を含んでいる。
詳細に説明すると、上リップ部2406は、後述する傾斜面2412がリブ2218の傾斜壁面2218Aにより車両後方で斜め下方に押圧され、後述する後壁2414が第3横壁部2210の下方に向いた面2210Aにより下方に押圧されていることから、上リップ部2406の下部はフード14の前縁部1404Bの上面1412に弾接している。
したがって、シール部材24の取付部24Aは、フード14の前縁部1404Bにより下方に抜落不能に支持されている。
また、下壁部2408の車両後方に位置する後端は、上リップ部2406がフード14の前縁部1404Bの上面1412に弾接する箇所よりも車両後方に位置している。
したがって、下壁部2408は上リップ部2406と協働してフード14の前縁部1404Bを挟持している。
【0017】
フロントグリル22がフード14に装着された状態で、フロントグリル22の第2縦壁部2208は、前壁部2402に前方から当接されて、フード14の前縁部1404Bとの間に前壁部2402を挟持する第1の規制部2208Aを構成している。
したがって、シール部材24の取付部24Aは、フード14の前縁部1404Bとフロントグリル22とにより、車両前後方向に移動不能に支持されている。
【0018】
また、フロントグリル22がフード14に装着された状態で、フロントグリル22の第3横壁部2210の下方に向いた面2210Aは、上壁部2404の上面2404Aに当接して上壁部2404を上方から押さえる第2の規制部2210Aを構成している。
【0019】
上壁部2404の上面2404Aには、前壁部2402から後方斜め上方に傾斜される傾斜面2412が形成され、第2の規制部2210Aには、傾斜面2412に沿って車両前後方向に延び、傾斜面2412に当接されるリブ2218が車幅方向に間隔を開けて複数形成されている。
本実施の形態では、上壁部2404は傾斜面2412の後端から車両後方に延在する後壁2414を有し、後壁2414が第3横壁部2210の下方に向いた面2210Aにより下方に押圧されている。
【0020】
下部24Bは、中空部2420と下リップ部2422とを含んで構成されている。
中空部2420は、下壁部2408の直下に位置し、下壁部2408に接続されており、その内部が空間部とされた中空状を呈している。
言い換えると、中空部2420は、取付部24Aから下方に膨出形成されている。
下リップ部2422は、中空部2420の車両後方に位置する箇所から車両前方で斜め下方に突設され、より詳細には、下リップ部2422は下方に向かって湾曲されている。
下リップ部2422は、中空部2420に接続する基部2422Aと、その反対に位置する先部2422Bとを有し、先部2422Bは、下方に向かって湾曲されフロントバンパ12の上面12Aに上方から弾接している。
言い換えると、下リップ部2422は、中空部2420の車両後方の箇所から分岐され、中空部2420の下方を通って車両前方斜め下方に延在されてフロントバンパ12の上面12Aに上方から弾接される。
【0021】
図3に示すように、フード14の全閉位置において、フード14とフロントバンパ12との隙間が所定量以下の場合は、中空部2420が押しつぶされて下リップ部2422と密着状態とされるとともに、下リップ部2422が押しつぶされた中空部2420によりフロントバンパ12の上面12Aに押圧される。
また、図2に示すように、フード14の全閉位置において、走行風によってフード14とフロントバンパ12との隙間が所定量を超えて中空部2420の上下方向の高さより広がった場合は、中空部2420と下リップ部2422とが離間されて中空部2420の下方と下リップ部2422との間に空間を形成した状態で下リップ部2422がフロントバンパ12の上面12Aに上方から弾接される。
そして、フロントバンパ12の段差部1202は、フード14とフロントバンパ12との隙間が中空部2420の上下方向の高さより広がった際に、下リップ部2422の先端が当接される位置に設定されている。
なお、中空部2420の上下方向の高さとは、中空部2420の内部の空間部を含む中空部2420全体の高さ(厚さ)である。
言い換えると、図2に示すように、フード14の全閉位置でフード14に浮き上がりが発生している状態では、図7に示すように何も力が作用していない状態の中空部2420と下リップ部2422に比べ、中空部2420は上下方向に圧縮されて若干押しつぶされ、また、下リップ部2422は先部2422Bが中空部2420に近づく方向に弾性変形されている。
そして、この若干押しつぶされた中空部2420と弾性変形された下リップ部2422が元の形状に弾性復帰しようとする力より下壁部2408を介して前縁部1404Bを上方に付勢し、また、下リップ部2422の先部2422Bをフロントバンパ12の上面に弾接している。
下リップ部2422は、フロントバンパ12の上面に弾接した状態で、下リップ部2422の先部2422Bが基部2422Aよりも車両前方で下方の箇所に位置する傾斜をもって延在している。
【0022】
シール部材24のフード14の前縁部1404Bへの取り付けは次のようになされている。
図5図7に示すように、シール部材24の長手方向の両端では、取付部24Aの下壁部2408と下部24Bとが、取付部24Aの上壁部2404と上リップ部2406よりも車幅方向外側に突出している。
図7に示すように、この突出した下壁部2408の上面には、クリップ30を配置するための凹部2430が下壁部2408の上面の長手方向に沿って延在形成され、凹部2430の長手方向の両端の底面には、貫通孔2432が形成されている。
クリップ30は、外周部に凹溝3002が形成された円盤状の台座部3004と、台座部3004の一方の面から突設された爪部3006とを有している。
【0023】
シール部材24をフード14の前縁部1404Bに取り付ける際には、上リップ部2406と下壁部2408とでフード14の前縁部1404Bを挟持させることでシール部材24をフード14の前縁部1404Bに仮り組みする。
シール部材24をフード14の前縁部1404Bに仮り組みしたのち、クリップ30の台座部3004の凹溝3002を貫通孔2432の縁部に係止させ、クリップ30の爪部3006をフード14のフード14の前縁部1404Bに形成された取り付け孔に係止する。これにより、シール部材24は車幅方向に移動不能にフード14の前縁部1404Bに取り付けられる。
シール部材24がフード14の前縁部1404Bに車幅方向に移動不能に取り付けられたのち、フロントグリル22を傾斜部1404に取り付ける。
【0024】
次に作用効果について説明する。
まず、図3を参照してフード14が全閉位置にあり、かつ、車両が停止しているかあるいは低速走行している場合について説明する。
この場合、フード14のフード14の前縁部1404Bはフロントバンパ12の上面12Aに最も近接した箇所に位置しており、シール部材24の中空部2420は、フード14の前縁部1404Bとフロントバンパ12の上面12Aとの間で押圧されて押しつぶされている。
下リップ部2422は、押しつぶされた中空部2420により弾性変形され、中空部2420の下部とフロントバンパ12との間でリップ部の先部2422Bが基部2422Aよりも車両前方に位置した状態で車両前後方向に延在しフロントバンパ12の上面12Aに押し付けられ、フロントバンパ12の上面12A上で、中空部2420の下部と下リップ部2422とが重なり合った状態となる。
すなわち、フード14の全閉位置において、フード14とフロントバンパ12との隙間が所定量以下の場合は、中空部2420が押しつぶされて下リップ部2422と密着状態とされるとともに、下リップ部2422が押しつぶされた中空部2420によりフロントバンパ12に押圧されるため、フード14とフロントバンパ12との隙間が確実にシールされた状態が得られる。
【0025】
そして、押しつぶされた中空部2420と弾性変形された下リップ部2422が元の形状に弾性復帰しようとする力より下壁部2408を介してフード14の傾斜部1404を上方に押し上げ、低速走行時におけるフード14のがたつきや振動を抑制する上で有利となる。
また、この状態で、フード14の前縁部1404Bおよびフロントグリル22の下壁部22Bと、フロントバンパ12の上面12Aとの間の空間のうち車両後方の半部が、下壁部2408と押しつぶされた中空部2420と車両前後方向に延在する下リップ部2422とにより閉塞されている。
そのため、寒冷地においてフード14の前縁部1404Bおよびフロントグリル22の下壁部22Bと、フロントバンパ12の上面12Aとの間の空間に雪が詰まって凍結したとしても、凍結した雪の容積は小さく、凍結した雪によるフード14の開放が妨げられることを防止する上で有利となる。
【0026】
次に、フード14が全閉位置にあり、かつ、車両が高速走行している場合について説明する。
車両が高速走行して強い走行風を受けた場合、フロントグリル22の前壁部22A等のフード14上面に負圧が発生する。
その結果、図3から図2に示すように、フード14に浮き上がりが発生し、フード14の傾斜部1404にがたつきや振動が生じることが考えられる。
フード14に浮き上がりが発生した場合、フード14の前縁部1404Bとフロントバンパ12の上面12Aとの間の隙間が大きくなるため、それまで押しつぶされていた中空部2420が隙間の大きさに追従して中空の形状に弾性復帰しようとし、また、下リップ部2422は基部2422Aから車両前方で斜め下方に延在する形状に弾性復帰しようとする。
【0027】
しかしながら、依然として中空部2420は若干押しつぶされた状態で、また、下リップ部2422は先部2422Bが中空部2420に近づく方向に弾性変形された状態であり、中空部2420と下リップ部2422が元の形状に弾性復帰しようとする力が、下壁部2408、前縁部1404Bを介してフード14の傾斜部1404を上方に押し上げる方向に作用する。
すなわち、フード14の全閉位置において、走行風によってフード14とフロントバンパ12との隙間隙間が所定量を超えて中空部2420の上下方向の高さより広がった場合は、中空部2420と下リップ部2422とが離間されて中空部2420の下方と下リップ部2422との間に空間を形成した状態で下リップ部2422がフロントバンパ12の上面12Aに弾接される。
したがって、高速走行時におけるフード14に浮き上がりが生じてもフード14の傾斜部1404のがたつきや振動を抑制する上で有利となる。
また、中空部2420と下リップ部2422が元の形状に弾性復帰しようとする力より下リップ部2422の先部2422Bがフロントバンパ12の上面12Aに弾接するため、フード14の前縁部1404Bとフロントバンパ12の上面12Aとの隙間はシール部材24の下壁部2408、中空部2420および下リップ部2422によって確実にシールされた状態に保持される。
【0028】
また、本実施の形態では、下リップ部2422は、中空部2420の車両後方の箇所から分岐され、中空部2420の下方を通って車両前方斜め下方に延在されてフロントバンパ12の上面12Aに弾接される。
そのため、走行風が下リップ部2422に当たって、下リップ部2422の先部2422Bを車両後方に変形させようとしても、下リップ部2422の先部2422Bがフロントバンパ12の上面12Aに確実に弾接されるため、シール部材24によるフード14の前縁部1404Bとフロントバンパ12の上面12Aとの隙間のシールを確実に行なう上で有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、下リップ部2422の先部2422Bは、下方に向かって湾曲されている。
そのため、フロントバンパ12の上面12Aに下リップ部2422を確実に当接させることができ、これにより、フード14とフロントバンパ12との隙間を確実にシールする上で有利となる。
【0030】
また、本実施の形態では、フロントバンパ12の上方を向いた上面12Aには、車両前方側よりも車両後方側が高くなる段差部1202が車幅方向に沿って延在形成され、段差部1202は、フード14とフロントバンパ12との隙間が中空部2420の上下方向の高さより広がった際に、下リップ部2422の先端が当接される位置に設定されている。
そのため、走行風によりフード14の傾斜部1404が上方への力を受けた際、下リップ部2422を段差部1202に引掛けて確実に当接させることができる。これにより、シール部材24の車両後方側への捲り上がりを防止でき、フード14とフロントバンパ12との隙間を確実にシールする上で有利となる。
【0031】
また、本実施の形態では、フード14の前縁部1404Bを覆うフロントグリル22を備え、シール部材24の取付部24Aは、フード14の前縁部1404Bの下面1410に面接触される板状の下壁部2408と、下壁部2408の前端から上方に突設される前壁部2402と、前壁部2402の上部から後方に延設されて下壁部2408と対向して設けられる上壁部2404とを有している。
そして、下壁部2408と上壁部2404とでフード14の前縁部1404Bを車両前方から咥え込むように挟んで取り付けられている。
また、フロントグリル22は、フード14に装着された状態で、前壁部2402に前方から当接されて、フロントグリル22との間に前壁部2402を挟持する第1の規制部2208Aを有している。
したがって、フード14の前縁部1404Bにより、シール部材24の取付部24Aは、上方に移動不能に、かつ、下方に抜落不能に支持され、フード14の前縁部1404Bと第1の規制部2208Aとにより、取付部24Aは、車両前後方向に移動不能に支持されているので、シール部材24のフード14の前縁部1404Bへの取り付け強度を簡単な構成により十分に確保する上で有利となる。
【0032】
また、本実施の形態では、上壁部2404は、上壁部2404から下壁部2408に向かって延び、フード14の前縁部1404Bの上面1412に弾接されて、下壁部2408との間にフード14の前縁部1404Bを挟持する上リップ部2406を含み、フロントグリル22は、フード14に装着された状態で、上壁部240の上面2404Aに当接して上壁部2404を上方から押さえる第2の規制部2210Aを有している。
そのため、シール部材24をフード14の前縁部1404Bに仮り組みする際に上リップ部2406と下壁部2408とでフード14の前縁部1404Bを挟持できるので、仮組み時にシール部材24がフード14の前縁部1404Bから脱落することなく保持され、シール部材24の取り付け作業の効率化を図る上で有利となる。
また、仮り組みした後、フロントグリル22をフード14に取り付けることにより、シール部材24の前壁部2402がフロントグリル22の第1の規制部2208Aとフード14の前縁部1404Bとで挟持されると共に、上壁部2404がフロントグリル22の第2の規制部2210Aにより下方に押圧されることで、上リップ部2406と下壁部2408とでフード14の前縁部1404Bを挟持する。
したがって、シール部材24のフード14の前縁部1404Bへの取り付けを強固に行ない、シール部材24の下方への脱落を防止する上で有利となる。
【0033】
また、本実施の形態では、上壁部2404の上面2404Aには、前壁部2402から後方斜め上方に傾斜される傾斜面2412が形成され、フロントグリル22の第2の規制部2210Aには、傾斜面2412に沿って車両前後方向に延び、傾斜面2412に当接されるリブ2218が車幅方向に間隔を開けて複数形成されている。
そのため、傾斜面2412はリブ2218(傾斜壁面2218A)により斜め車両後方で斜め下方に押圧されている。
したがって、製造上のばらつきによって、下壁部2408に対する上壁部2404の上下方向の位置が多少高くても、複数のリブ2218によって上壁部2404が分散して押圧されるため、上壁部2404に作用する押圧力が過大になることを抑制しつつ上壁部2404の下方への押圧力を確保する上で有利となる。
そのため、上リップ部2406と下壁部2408とでフード14の前縁部1404Bを確実に挟持する上で有利となり、シール部材24の脱落を防止する上でより有利となる。
また、フロントグリル22をフード14に取り付ける際に、上壁部2404に作用する押圧力が過大となることを抑制できるので、フロントグリル22や上壁部2404に無理な力が加わることを抑制でき、フロントグリル22の取り付け作業の容易化を図る上で、フロントグリル22や上壁部2404の保護を図る上で有利となる。
【0034】
また、本実施の形態では、中空部2420は、下壁部2408の下部に設けられ、下壁部2408は、中空部2420よりも後方側に突設されている。
そのため、シール部材24が前壁部2402の箇所を支点として下壁部2408の後端が上方へ回転しようとする動きを抑制する上で有利となり、シール部材24の脱落を防止する上で有利となる。
【0035】
なお、本実施の形態では、フード14の前縁部1404Bを覆う外装部品がフロントグリル22で構成されている場合について説明したが、外装部品がフロントグリル22以外の車両構成部品であっても本発明は無論適用される。
また、本実施の形態では、フード14がフロンドグリル22を備える場合について説明したが、フード14の車両前部の構造を傾斜部1404とフロントグリル22が一体化された構造にし、フロントグリル22を省略してもよく、この場合にも本発明は無論適用される。
【符号の説明】
【0036】
10 車両
12 フロントバンパ
12A 上面
1202 段差部
14 フード
1402 フード本体
1404B 前縁部
1410 下面
1412 上面
16 フードアウターパネル
18 フードインナーパネル
20 軽量穴
22 フロントグリル(外装部品)
22A 前壁部
22B 下壁部
2208A 第1の規制部
2210A 第2の規制部
2218 リブ
2218A 傾斜壁面
24 シール部材
24A 取付部
24B 下部
2402 前壁部
2404 上壁部
2404A 上面
2406 上リップ部
2408 下壁部
2412 傾斜壁
2414 後壁
2420 中空部
2422 下リップ部
2422A 基部
2422B 先部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7