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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/34 20060101AFI20240827BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20240827BHJP
【FI】
H01S5/34
H01S5/022
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020189721
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078795
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】506423051
【氏名又は名称】株式会社QDレーザ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】樽見 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】大山 浩市
(72)【発明者】
【氏名】武政 敬三
(72)【発明者】
【氏名】西 研一
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163030(JP,A)
【文献】特開2008-172188(JP,A)
【文献】特開2007-180276(JP,A)
【文献】特開2019-087587(JP,A)
【文献】米国特許第05712865(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ装置であって、
第1量子ドット層(242)と、前記第1量子ドット層より発光波長が長い第2量子ドット層(243)とをそれぞれ1つ以上含む構成とされた活性層(24)を備え、
前記活性層の利得スペクトルは、前記第1量子ドット層の発光波長と、前記第2量子ドット層の発光波長とに対応して、第1波長と、前記第1波長より長い第2波長とで極大値をとり、
前記利得スペクトルの前記第1波長における極大値を第1極大値とし、
前記利得スペクトルの前記第2波長における極大値を第2極大値として、
前記第1極大値は、前記第2極大値よりも大きく、
前記活性層に含まれる前記第1量子ドット層の数は、前記第2量子ドット層の数よりも多く、
前記第1波長と前記第2波長との間の波長であって、前記利得スペクトルが極小値をとるときの波長を第3波長とし、
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
該温度Tよりも低い温度Tにおける前記第2波長と、該温度Tにおける該第3波長と、該温度Tよりも高い温度Tにおける前記第1波長とが等しいとき、
前記第1量子ドット層の数をXとし、
前記第2量子ドット層の数をYとし、
該温度Tにおける前記第1極大値をGMAX1(T)とし、
該温度Tにおける前記第2極大値をGMAX2(T)とし、
該温度Tにおける前記第2極大値をGMAX2(T)とし、
該温度Tにおける前記第1極大値をGMAX1(T)として、
前記Xは、{GMAX2(T)/GMAX2(T)}・{GMAX1(T)/GMAX1(T)}・Yに最も近い整数である半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記第1波長と前記第2波長との間の波長であって、前記利得スペクトルが極小値をとるときの波長を第3波長とし、
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
該温度Tよりも低い温度Tにおける前記第2波長と、該温度Tにおける該第3波長と、該温度Tよりも高い温度Tにおける前記第1波長とが等しいとき、
該温度Tにおける前記第2極大値は、該温度Tにおける前記第2極大値よりも該温度Tにおける該極小値に近く、
該温度Tにおける前記第1極大値は、該温度Tにおける前記第1極大値よりも該温度Tにおける前記極小値に近い請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
半導体レーザ装置であって、
第1量子ドット層(242)と、前記第1量子ドット層より発光波長が長い第2量子ドット層(243)とをそれぞれ1つ以上含む構成とされた活性層(24)を備え、
前記活性層の利得スペクトルは、前記第1量子ドット層の発光波長と、前記第2量子ドット層の発光波長とに対応して、第1波長と、前記第1波長より長い第2波長とで極大値をとり、
前記利得スペクトルの前記第1波長における極大値を第1極大値とし、
前記利得スペクトルの前記第2波長における極大値を第2極大値として、
前記第1極大値は、前記第2極大値よりも大きく、
前記第1波長と前記第2波長との間の波長であって、前記利得スペクトルが極小値をとるときの波長を第3波長とし、
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
該温度Tよりも低い温度Tにおける前記第2波長と、該温度Tにおける該第3波長と、該温度Tよりも高い温度Tにおける前記第1波長とが等しいとき、
該温度Tにおける前記第2極大値は、該温度Tにおける前記第2極大値よりも該温度Tにおける該極小値に近く、
該温度Tにおける前記第1極大値は、該温度Tにおける前記第1極大値よりも該温度Tにおける前記極小値に近い半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記活性層に含まれる前記第1量子ドット層の数は、前記第2量子ドット層の数よりも多い請求項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記活性層の動作波長を選択する波長選択部(3)を備え、
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
前記波長選択部は、前記動作波長が、該温度Tにおける前記第1波長よりも長く、該温度Tにおける前記第2波長よりも短くなるように前記動作波長を選択する請求項1ないしのいずれか1つに記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記第1波長と前記第2波長との間の波長であって、前記利得スペクトルが極小値をとるときの波長を第3波長として、
前記波長選択部は、前記動作波長が、該温度Tにおける前記第1波長よりも、該温度Tにおける該第3波長に近く、該温度Tにおける前記第2波長よりも、該温度Tにおける該第3波長に近くなるように、前記動作波長を選択する請求項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記波長選択部は、前記活性層をシングルモード発振させるように前記動作波長を選択する請求項またはに記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
半導体レーザ装置であって、
第1量子ドット層(242)と、前記第1量子ドット層より発光波長が長い第2量子ドット層(243)とをそれぞれ1つ以上含む構成とされた活性層(24)を備え、
前記活性層の利得スペクトルは、前記第1量子ドット層の発光波長と、前記第2量子ドット層の発光波長とに対応して、第1波長と、前記第1波長より長い第2波長とで極大値をとり、
前記利得スペクトルの前記第1波長における極大値を第1極大値とし、
前記利得スペクトルの前記第2波長における極大値を第2極大値として、
前記第1極大値は、前記第2極大値よりも大きく、
前記活性層の動作波長を選択する波長選択部(3)を備え、
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
前記波長選択部は、前記動作波長が、該温度Tにおける前記第1波長よりも長く、該温度Tにおける前記第2波長よりも短くなるように前記動作波長を選択し、
前記波長選択部は、前記活性層をシングルモード発振させるように前記動作波長を選択する半導体レーザ装置。
【請求項9】
前記活性層に含まれる前記第1量子ドット層の数は、前記第2量子ドット層の数よりも多い請求項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項10】
前記第1波長と前記第2波長との間の波長であって、前記利得スペクトルが極小値をとるときの波長を第3波長として、
前記波長選択部は、前記動作波長が、該温度Tにおける前記第1波長よりも、該温度Tにおける該第3波長に近く、該温度Tにおける前記第2波長よりも、該温度Tにおける該第3波長に近くなるように、前記動作波長を選択する請求項またはに記載の半導体レーザ装置。
【請求項11】
前記第1波長と前記第2波長との間の波長であって、前記利得スペクトルが極小値をとるときの波長を第3波長とし、
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
該温度Tよりも低い温度Tにおける前記第2波長と、該温度Tにおける該第3波長と、該温度Tよりも高い温度Tにおける前記第1波長とが等しいとき、
該温度Tにおける前記第2極大値と、該温度Tにおける該極小値と、該温度Tにおける前記第1極大値とが等しい請求項1ないし10のいずれか1つに記載の半導体レーザ装置。
【請求項12】
半導体レーザ装置であって、
第1量子ドット層(242)と、前記第1量子ドット層より発光波長が長い第2量子ドット層(243)とをそれぞれ1つ以上含む構成とされた活性層(24)を備え、
前記活性層の利得スペクトルは、前記第1量子ドット層の発光波長と、前記第2量子ドット層の発光波長とに対応して、第1波長と、前記第1波長より長い第2波長とで極大値をとり、
前記利得スペクトルの前記第1波長における極大値を第1極大値とし、
前記利得スペクトルの前記第2波長における極大値を第2極大値として、
前記第1極大値は、前記第2極大値よりも大きく、
前記第1波長と前記第2波長との間の波長であって、前記利得スペクトルが極小値をとるときの波長を第3波長とし、
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
該温度Tよりも低い温度Tにおける前記第2波長と、該温度Tにおける該第3波長と、該温度Tよりも高い温度Tにおける前記第1波長とが等しいとき、
該温度Tにおける前記第2極大値と、該温度Tにおける該極小値と、該温度Tにおける前記第1極大値とが等しい半導体レーザ装置。
【請求項13】
前記活性層に含まれる前記第1量子ドット層の数は、前記第2量子ドット層の数よりも多い請求項12に記載の半導体レーザ装置。
【請求項14】
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
前記活性層は、温度が該温度Tよりも低温になると、前記利得スペクトルの強度が低下するとともに発光波長が短波長側へシフトし、温度が該温度Tよりも高温になると、前記利得スペクトルの強度が低下するとともに発光波長が長波長側へシフトする特性を有する請求項1ないし13のいずれか1つに記載の半導体レーザ装置。
【請求項15】
半導体レーザ装置であって、
第1量子ドット層(242)と、前記第1量子ドット層より発光波長が長い第2量子ドット層(243)とをそれぞれ1つ以上含む構成とされた活性層(24)を備え、
前記活性層の利得スペクトルは、前記第1量子ドット層の発光波長と、前記第2量子ドット層の発光波長とに対応して、第1波長と、前記第1波長より長い第2波長とで極大値をとり、
前記利得スペクトルの前記第1波長における極大値を第1極大値とし、
前記利得スペクトルの前記第2波長における極大値を第2極大値として、
前記第1極大値は、前記第2極大値よりも大きく、
前記利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をTとして、
前記活性層は、温度が該温度Tよりも低温になると、前記利得スペクトルの強度が低下するとともに発光波長が短波長側へシフトし、温度が該温度Tよりも高温になると、前記利得スペクトルの強度が低下するとともに発光波長が長波長側へシフトする特性を有する半導体レーザ装置。
【請求項16】
前記活性層に含まれる前記第1量子ドット層の数は、前記第2量子ドット層の数よりも多い請求項15に記載の半導体レーザ装置。
【請求項17】
前記第1量子ドット層における量子ドット(242a)の密度は、前記第2量子ドット層における量子ドット(243a)の密度よりも大きい請求項ないし16のいずれか1つに記載の半導体レーザ装置。
【請求項18】
前記活性層は、p型不純物が含まれている請求項1ないし17のいずれか1つに記載の半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット層を備える半導体レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SOA(半導体光増幅器)を用いた半導体レーザ装置において、量子ドット層による電子の3次元的な閉じ込めと、活性層近傍へのp型不純物のドープによって、広い温度範囲で高出力を得る方法が提案されている。
【0003】
このような半導体レーザ装置は、通常、1つの波長で利得がピークをとる特性を有する。環境温度が変化した場合、利得のピークは大きく変化しないが、利得がピークをとる波長は大きく変化する。そのため、動作波長を固定すると、温度変化による出力の変動が大きくなる。
【0004】
これについて特許文献1では、発光波長の異なる複数の量子ドット層を用いて、ピークが平坦な利得特性を得ている。ピークをとる波長帯域は、使用温度範囲の波長シフト量に対応しており、これにより、温度変化による利得変動を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-244235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、量子ドットの状態密度が完全に離散化されていないと、利得のピークが温度によって変動するため、動作波長を固定すると出力の変動が大きくなる。また、量子ドットの状態密度を完全に離散化することは困難である。したがって、温度によって利得のピークが変動する場合にも、動作波長における利得変動を低減する方法が必要である。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、温度変化による利得変動を低減できる半導体レーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体レーザ装置であって、第1量子ドット層(242)と、第1量子ドット層より発光波長が長い第2量子ドット層(243)とをそれぞれ1つ以上含む構成とされた活性層(24)を備え、活性層の利得スペクトルは、第1量子ドット層の発光波長と、第2量子ドット層の発光波長とに対応して、第1波長と、第1波長より長い第2波長とで極大値をとり、利得スペクトルの第1波長における極大値を第1極大値とし、利得スペクトルの第2波長における極大値を第2極大値として、第1極大値は、第2極大値よりも大きく、活性層に含まれる第1量子ドット層の数は、第2量子ドット層の数よりも多く、第1波長と第2波長との間の波長であって、利得スペクトルが極小値をとるときの波長を第3波長とし、利得スペクトルの強度が最大となるときの温度をT として、該温度T よりも低い温度T における第2波長と、該温度T における該第3波長と、該温度T よりも高い温度T における第1波長とが等しいとき、第1量子ドット層の数をXとし、第2量子ドット層の数をYとし、該温度T における第1極大値をG MAX1 (T )とし、該温度T における第2極大値をG MAX2 (T )とし、該温度T における第2極大値をG MAX2 (T )とし、該温度T における第1極大値をG MAX1 (T )として、Xは、{G MAX2 (T )/G MAX2 (T )}・{G MAX1 (T )/G MAX1 (T )}・Yに最も近い整数である
【0009】
このように、短波長側の第1極大値を長波長側の第2極大値よりも大きくすると、ある波長帯域では、温度による利得のばらつきが小さくなる。したがって、温度変化による利得変動を低減することができる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態にかかる半導体レーザ装置の構成を示す図である。
図2図1に示すSOAの断面図である。
図3図2に示す活性層の断面図である。
図4】活性層の利得スペクトルである。
図5】温度による利得の変化を示す図である。
図6】室温時と低温時の利得スペクトルである。
図7】室温時と高温時の利得スペクトルである。
図8】比較例における-20℃~105℃の利得スペクトルである。
図9】比較例における-20℃~105℃の利得強度である。
図10】第1実施形態における-20℃~105℃の利得スペクトルである。
図11】第1実施形態における-20℃~105℃の利得強度である。
図12】利得変動をさらに低減する方法について説明するための図である。
図13】第2実施形態における活性層の断面図である。
図14】第3実施形態における活性層の利得スペクトルである。
図15】第3実施形態における利得変動の低減について説明するための図である。
図16】利得変動をさらに低減する方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の半導体レーザ装置1は、SOA2と、波長選択部3とを備えている。半導体レーザ装置1は、例えばレーザレーダやLiDAR(Light Detection And Ranging)などに適用される。SOA2と波長選択部3は、例えば図示しない半導体基板に半導体プロセスを施すことで形成される。
【0018】
SOA2は、レーザ光を発生させる光源である。図2に示すように、SOA2は、下部電極21と、基板22と、アンダークラッド層23と、活性層24と、オーバークラッド層25と、コンタクト層26と、上部電極27の積層構造によって構成されている。なお、図1では、SOA2のうちアンダークラッド層23、活性層24、オーバークラッド層25のみを図示している。
【0019】
図2に示すように、下部電極21は、基板22の裏面側、つまりアンダークラッド層23と反対側に接触させられている。基板22は、例えばGaAs基板などで構成されている。アンダークラッド層23は、n型のAlGaAsなどで構成されている。活性層24は、アンダークラッド層23の上面に形成されている。活性層24の詳細については、後述する。
【0020】
オーバークラッド層25は、活性層24の上面に形成されており、例えばAlGaAsで構成されている。コンタクト層26は、上部電極27とのコンタクトを取るためのものであり、オーバークラッド層25の上面に形成されている。コンタクト層26は、例えばGaAsで構成されている。
【0021】
上部電極27は、コンタクト層26の上面に形成されている。上部電極27とコンタクト層26およびオーバークラッド層25の表層部に至るまで凹部28が形成されており、SOA2は、凹部28以外の位置に上部電極27とコンタクト層26が突き出たメサ構造とされている。
【0022】
このように構成されたSOA2により、上部電極27と下部電極21との間に所定の電位差を発生させる電圧を印加することで、レーザ発振を生じさせ、活性層24の端面からレーザ光を出射させることができる。
【0023】
波長選択部3は、半導体レーザ装置1の動作波長を選択するものであり、図1に示すように、エタロンフィルタ31と、ミラー32とを備えている。エタロンフィルタ31は、所定の波長のみを透過させるものである。エタロンフィルタ31は、活性層24から射出された光が入射するように配置されており、図1の矢印A1で示すように、エタロンフィルタ31を透過した光は、ミラー32に入射する。
【0024】
ミラー32は、エタロンフィルタ31から入射した光を、エタロンフィルタ31に向かって反射するように配置されている。矢印A2で示すように、ミラー32で反射した光は、エタロンフィルタ31を透過して活性層24に入射し、活性層24のうちエタロンフィルタ31、ミラー32とは反対側の端面から射出される。エタロンフィルタ31の設計によって、透過させる光の波長を調整することにより、半導体レーザ装置1の動作波長を選択することができる。
【0025】
本実施形態では、波長選択部3は、活性層24をシングルモード発振、すなわち、単一の波長で発振させるように動作波長を選択する。具体的には、波長選択部3は、2つのエタロンフィルタ31を備えている。2つのエタロンフィルタ31をそれぞれエタロンフィルタ31a、31bとする。
【0026】
エタロンフィルタ31a、31bは、自由スペクトル間隔が異なっており、エタロンフィルタ31aが透過させる複数の波長と、エタロンフィルタ31bが透過させる複数の波長とが、1つの波長のみで重複している。したがって、図1に示すように、活性層24から射出された光の経路上にエタロンフィルタ31a、31bを置くことで、この1つの波長の光がミラー32に入射し、活性層24に戻る。これにより、活性層24がシングルモード発振するようになる。
【0027】
活性層24がマルチモード発振するように動作波長を選択してもよいが、活性層24がシングルモード発振することで、利得変動を低減することができる。
【0028】
なお、ここでは波長選択部3がエタロンフィルタ31とミラー32とで構成される場合について説明したが、波長選択部3が所定の波長の光のみを反射する回折格子等で構成されていてもよい。波長選択部3を回折格子で構成する場合には、活性層24はシングルモード発振する。また、エタロンフィルタや回折格子等で構成される波長選択部3に対して、外部から電圧等を印加することによって、半導体レーザ装置1の動作波長を選択してもよい。
【0029】
活性層24の詳細な構成について説明する。図3に示すように、活性層24は、中間層241を備えている。また、活性層24は、量子ドット層242と、量子ドット層243とをそれぞれ1つ以上含み、中間層241と、量子ドット層242または量子ドット層243とが交互に積層された構成とされている。
【0030】
中間層241は、例えばInGa1-xAs(0≦x<1)で構成されている。量子ドット層242、量子ドット層243は、それぞれ、結晶成長や微細加工などによって形成された粒状の量子ドット242a、243aを備えた構造であり、表面側および裏面側が中間層241によって覆われている。量子ドット層242、量子ドット層243は、例えばInAs、InGaAsで構成されており、量子ドット層242、243を含む活性層24には、p型不純物が選択ドープされている。量子ドット層242、量子ドット層243は、それぞれ、第1量子ドット層、第2量子ドット層に相当する。量子ドット242a、量子ドット243aは、それぞれ、第1量子ドット、第2量子ドットに相当する。
【0031】
活性層24の利得スペクトルは、量子ドット層242および量子ドット層243の基底準位による発光によって構成される極大値を有し、活性層24の発光波長および利得強度は、量子ドット層242および量子ドット層243の構成によって決まる。利得スペクトルは、例えばHakki-Paoli法によって測定することができる。
【0032】
本実施形態では、活性層24において、量子ドット層243に対応する発光波長が量子ドット層242に対応する発光波長よりも長くなるように、量子ドット層242および量子ドット層243が構成されている。また、量子ドット層242に対応する発光波長の利得が、量子ドット層243に対応する発光波長の利得よりも大きくなるように、量子ドット層242および量子ドット層243が構成されている。
【0033】
具体的には、量子ドット層243が備える量子ドット243aは、量子ドット層242が備える量子ドット242aよりも高さ寸法が大きくされており、これにより量子ドット層243は量子ドット層242よりも発光波長が長くされている。量子ドット242a、243aの高さ寸法は、量子ドット層242、243の厚さ方向における幅である。例えば、量子ドット層242の発光波長は1230nmとされ、量子ドット層243の発光波長は1300nmとされる。
【0034】
また、量子ドット層242の積層数を量子ドット層243の積層数よりも多くすることで、量子ドット層242に対応する発光波長の利得が、量子ドット層243に対応する発光波長の利得よりも大きくなる。例えば、図3に示すように、活性層24は5層の量子ドット層242と3層の量子ドット層243とを備えている。
【0035】
このような構成により、活性層24の利得スペクトルは、図4に示すようになる。すなわち、活性層24の利得スペクトルは、量子ドット層242の発光波長に対応して、波長λMAX1で極大値GMAX1をとる。また、利得スペクトルは、量子ドット層243の発光波長に対応して、λMAX1より長い波長であるλMAX2で極大値GMAX2をとる。また、GMAX1はGMAX2よりも大きい。λMAX1、λMAX2は、それぞれ、第1波長、第2波長に相当する。GMAX1、GMAX2は、それぞれ、第1極大値、第2極大値に相当する。
【0036】
なお、図4において、λminは、λMAX1とλMAX2との間の波長であって、利得スペクトルが極小値をとるときの波長であり、Gminは、この極小値である。λminは第3波長に相当する。
【0037】
p型不純物がドープされた、量子ドット層を有する活性層は、利得スペクトルの強度と発光波長が温度によって変化する特性を有する。以下、温度はSOA2の下部電極21の裏面の温度を指すが、SOA2の内部または外表面であればどの位置の温度であってもよい。
【0038】
具体的には、図5に示すように、利得強度はある温度Tで最大となり、Tよりも低い温度、および、Tよりも高い温度では、 温度Tのときに比べて利得が小さくなる。Tは、例えば15℃以上25℃以下の室温である。また、温度が高いほど発光波長が長くなる。
【0039】
すなわち、温度がTよりも低温になると、利得スペクトルの強度が低下するとともに発光波長が短波長側へシフトする。また、温度がTよりも高温になると、利得スペクトルの強度が低下するとともに発光波長が長波長側へシフトする。
【0040】
このように、温度がTよりも低い場合と高い場合の両方で、利得強度が低下する。しかしながら、図5に示すように、高温時には低温時よりも利得強度が急峻に低下するため、Tとの温度差が同じでも、高温時には低温時よりも温度Tにおける利得との差が大きくなる。
【0041】
このような温度特性により、例えば利得スペクトルが極大値を1つのみ有する場合には、動作波長を固定すると、温度変化による利得変動が大きくなる。
【0042】
これについて、本発明者らは、高温時には低温時よりも利得強度が急峻に低下するという特性に対応して利得変動を低減する方法を着想した。その方法について、図6図7を用いて説明する。図6図7は、本実施形態における活性層24の利得スペクトルの温度による変化を示す図である。
【0043】
なお、図6図7の実線は温度Tにおける利得スペクトルを示し、図6の一点鎖線は温度Tよりも低い温度Tにおける利得スペクトルを示し、図7の一点鎖線は温度Tよりも高い温度Tにおける利得スペクトルを示す。λMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)は、温度TにおけるλMAX1、λMAX2、λminである。λMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)は、温度TにおけるλMAX1、λMAX2、λminである。λMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)は、温度TにおけるλMAX1、λMAX2、λminである。GMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)は、温度TにおけるGMAX1、GMAX2、Gminである。GMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)は、温度TにおけるGMAX1、GMAX2、Gminである。GMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)は、温度TにおけるGMAX1、GMAX2、Gminである。
【0044】
図6図7に示すように、本実施形態のように利得スペクトルが2つの極大値を有する場合にも、利得強度は図5に示すように変化する。
【0045】
すなわち、図6図7では、λMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)とλMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)との差は、λMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)とλMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)との差と同程度である。しかしながら、GMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)とGMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)との差は、GMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)とGMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)との差よりも大きい。
【0046】
これに対して、本実施形態のようにGMAX1>GMAX2とすると、ある波長帯域において、温度による利得のばらつきが小さくなる。
【0047】
具体的には、温度Tよりも低温になると、利得スペクトルが短波長側にシフトし、温度Tにおける波長λmin付近で極大値GMAX2をとるようになる。そして、低温時の利得低下は高温時に比べて小さいので、GMAX2を例えばGMAX1よりも小さくすることで、低温時のGMAX2が温度TにおけるGminに近くなる。また、温度Tよりも高温になると、利得スペクトルが長波長側にシフトし、温度Tにおける波長λmin付近で極大値GMAX1をとるようになる。そして、高温時の利得低下は低温時に比べて大きいので、GMAX1を例えばGMAX2よりも大きくすることで、高温時のGMAX1が温度TにおけるGminに近くなる。すなわち、各温度の利得スペクトルが、温度Tにおける波長λmin、利得Gmin付近を共通して通るようになる。
【0048】
これにより、温度TにおけるλMAX1とλMAX2の間の波長では、温度による利得の変化が小さくなる。したがって、波長選択部3によって、この波長を動作波長として選択することで、温度変化による利得変動を低減することができる。
【0049】
図8図11は、本発明者らが行った実験の結果を示すグラフである。実験では、温度を-20℃~105℃の範囲で7通りに変化させ、各温度における利得を調べた。なお、図8図11のグラフは、温度が25℃、動作波長が1280nmのときの利得強度が1となるように規格化されている。
【0050】
図8の複数のグラフは、それぞれ、図9の複数のプロットに対応しており、図10の複数のグラフは、それぞれ、図11の複数のプロットに対応している。また、図8図10の複数のグラフは温度の順に並んでおり、一番左のグラフが-20℃のときの実験結果、一番右のグラフが105℃のときの実験結果である。
【0051】
図8図9は、比較例における実験結果である。比較例では、量子ドット層242と量子ドット層243とが、間に中間層241を挟んで交互に4層ずつ形成されている。また、量子ドット層242、量子ドット層243の発光波長はそれぞれ1260nm、1300nmとされている。このように、量子ドット層242と量子ドット層243の発光波長の差を40nm程度にすると、利得スペクトルのピークが30nm程度の範囲で平坦な形状になる。比較例では、図8に示すように、温度による利得のばらつきが、どの波長においても大きくなっており、図9に示すように、51%の利得変動が発生している。
【0052】
図10図11は、本実施形態における実験結果である。実験では、25℃における量子ドット層242、量子ドット層243の発光波長をそれぞれ1230nm、1300nmとし、量子ドット層242、量子ドット層243の積層数をそれぞれ5層、3層とした。これにより、GMAX1>GMAX2とされている。本実施形態では、図10に示すように、温度による利得のばらつきが、1280nm付近の波長で小さくなっており、図11に示すように、利得変動が26%に低減している。このように、本実施形態では、比較例に比べて、広い温度範囲で利得変動が低減される。
【0053】
利得の変動をさらに低減する方法について説明する。まず、動作波長において各温度の利得スペクトルが密集していることが望ましい。そのためには、温度がTから低下するときに、利得スペクトルが、温度Tにおける利得スペクトルのλMAX2、GMAX2からλmin、Gminに向かう部分に沿ってシフトすることが望ましい。また、温度がTから上昇するときには、利得スペクトルが、温度Tにおける利得スペクトルのλMAX1、GMAX1からλmin、Gminに向かう部分に沿ってシフトすることが望ましい。
【0054】
このように利得スペクトルがシフトすると、温度が大きく変化し、λMAX2(T)=λmin(T)となったときに、|GMAX2(T)-Gmin(T)|<|GMAX2(T)-GMAX2(T)|となる。また、λmin(T)=λMAX1(T)となったときに、|GMAX1(T)-Gmin(T)|<|GMAX1(T)-GMAX1(T)|となる。すなわち、温度TのときのGMAX2が、温度TのときのGMAX2よりも温度TのときのGminに近く、温度TのときのGMAX1が、温度TのときのGMAX1よりも温度TのときのGminに近くなる。これにより、温度変化による利得変動をさらに低減することができる。
【0055】
このような利得スペクトルは、例えば、量子ドット層242、量子ドット層243の層数を以下のようにすることで得られる。すなわち、λMAX2(T)=λmin(T)=λMAX1(T)とし、量子ドット層242の数をXとし、量子ドット層243の数をYとして、Xを、{GMAX2(T)/GMAX2(T)}・{GMAX1(T)/GMAX1(T)}・Yに最も近い整数とする。
【0056】
さらに、図12に示すように、λMAX2(T)=λmin(T)=λMAX1(T)のとき、GMAX2(T)=Gmin(T)=GMAX1(T)となることが望ましい。これにより、温度変化による利得変動をさらに低減することができる。なお、図12において、実線、一点鎖線、二点鎖線は、それぞれ、温度T、T、Tのときの利得スペクトルを示す。
【0057】
また、利得のばらつきは波長λmin(T)付近で小さくなるので、温度変化による利得変動をさらに低減するために、動作波長が、λMAX1(T)よりも長く、λMAX2(T)よりも短いことが望ましい。さらに、動作波長が、λMAX1(T)よりもλmin(T)に近く、λMAX2(T)よりもλmin(T)に近いことが望ましい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態では、GMAX1>GMAX2とすることで、所定の波長帯域における利得のばらつきが小さくなる。したがって、動作波長を固定した場合にも、温度変化による利得変動を低減することができる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して活性層24の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図13に示すように、本実施形態では、量子ドット層242と量子ドット層243がそれぞれ4層形成されている。また、量子ドット層242における量子ドット242aの密度は、量子ドット層243における量子ドット243aの密度よりも大きくされている。
【0061】
利得スペクトルの極大値は、量子ドット密度によっても変えることができ、量子ドット層242の量子ドット密度を量子ドット層243の量子ドット密度よりも大きくすることで、GMAX1がGMAX2よりも大きくなる。
【0062】
例えば、量子ドット層242の量子ドット密度を6.0×1010個/cmとし、量子ドット層243の量子ドット密度を3.6×1010個/cmとすることで、図10と同様の利得スペクトルが得られる。
【0063】
このように、量子ドット密度によってGMAX1>GMAX2とした本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して利得スペクトルの極大値の数を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0065】
ここでは、活性層24が発光波長の異なる量子ドット層を3つ以上備え、各量子ドット層の発光波長に対応して、利得スペクトルが3つ以上の波長で極大値をとる場合について説明する。
【0066】
利得スペクトルの極大値の数をNとする。図14に示すように、温度Tにおける短波長側から数えてi番目の極大値をGMAX(i、T)とし、短波長側から数えてi番目の極小値をGmin(i、T)とする。また、極大値GMAX(i、T)をとる波長をλMAX(i、T)とし、極小値Gmin(i、T)をとる波長をλmin(i、T)とする。なお、図14、および、後述する図15図16では、N=3の場合について図示している。
【0067】
利得スペクトルの極大値が3つ以上ある場合には、Mを1以上N未満の整数として、GMAX(M、T)>GMAX(M+1、T)とすることで、第1実施形態と同様に、λMAX(M、T)とλMAX(M+1、T)との間の波長帯域で利得変動が小さくなる。この場合、GMAX(M、T)が温度Tにおける第1極大値に相当し、GMAX(M+1、T)が温度Tにおける第2極大値に相当する。また、λMAX(M、T)、λMAX(M+1、T)、λmin(M、T)が、それぞれ、温度Tにおける第1波長、第2波長、第3波長に相当する。
【0068】
すなわち、GMAX(M、T)、GMAX(M+1、T)、Gmin(M、T)は第1実施形態のGMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)に相当する。また、GMAX(M、T)、GMAX(M+1、T)、Gmin(M、T)は第1実施形態のGMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)に相当する。また、GMAX(M、T)、GMAX(M+1、T)、Gmin(M、T)は第1実施形態のGMAX1(T)、GMAX2(T)、Gmin(T)に相当する。
【0069】
また、λMAX(M、T)、λMAX(M+1、T)、λmin(M、T)は第1実施形態のλMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)に相当する。また、λMAX(M、T)、λMAX(M+1、T)、λmin(M、T)は第1実施形態のλMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)に相当する。また、λMAX(M、T)、λMAX(M+1、T)、λmin(M、T)は第1実施形態のλMAX1(T)、λMAX2(T)、λmin(T)に相当する。
【0070】
このような利得スペクトルを得るには、活性層24を、波長λMAX(1、T)~λMAX(N、T)に対応するN種類の量子ドット層がそれぞれ1層以上形成された構成とする。そして、波長λMAX(M、T)に対応する量子ドット層の数を、波長λMAX(M+1、T)に対応する量子ドット層の数よりも多くする。波長λMAX(M、T)に対応する量子ドット層は、第1量子ドット層に相当し、波長λMAX(M+1、T)に対応する量子ドット層は、第2量子ドット層に相当する。
【0071】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、以下のようにすることで、利得変動をさらに低減することができる。
【0072】
すなわち、図15に示すように、温度T、Tを、λMAX(M+1、T)=λmin(M、T)=λMAX(M、T)をみたす温度とする。そして、|GMAX(M+1、T)-Gmin(M、T)|<|GMAX(M+1、T)-GMAX(M+1、T)|、かつ、|GMAX(M、T)-Gmin(M、T)|<|GMAX(M、T)-GMAX(M、T)|となるようにする。これにより、温度変化による利得変動をさらに低減することができる。
【0073】
なお、図15、および、後述する図16において、実線、一点鎖線、二点鎖線は、それぞれ、温度T、T、Tのときの利得スペクトルを示す。また、図15図16では、M=1の場合について図示している。
【0074】
このような利得スペクトルは、例えば、量子ドット層の数を以下のようにすることで得られる。すなわち、温度T、Tを、λMAX(M+1、T)=λmin(M、T)=λMAX(M、T)をみたす温度とし、波長λMAX(M、T)、λMAX(M+1、T)に対応する量子ドット層の数をそれぞれX、Yとする。そして、Xを、{GMAX(M+1、T)/GMAX(M+1、T)}・{GMAX(M、T)/GMAX(M、T)}・Yに最も近い整数とする。
【0075】
さらに、図16に示すように、λMAX(M+1、T)=λmin(M、T)=λMAX(M、T)のとき、GMAX(M+1、T)=Gmin(M、T)=GMAX(M、T)となることが望ましい。
【0076】
また、利得のばらつきは波長λmin(M、T)付近で小さくなるので、温度変化による利得変動をさらに低減するために、動作波長が、λMAX(M、T)よりも長く、λMAX(M+1、T)よりも短いことが望ましい。さらに、動作波長が、λMAX(M、T)よりもλmin(M、T)に近く、λMAX(M+1、T)よりもλmin(M、T)に近いことが望ましい。
【0077】
利得スペクトルの極大値が3つ以上存在する本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0079】
例えば、第3実施形態では、少なくとも一部の隣り合う2つの極大値が第1実施形態のGMAX1、GMAX2と同様の条件を満たしていれば、温度変化による利得変動を低減することができる。すなわち、GMAX(1、T)>GMAX(2、T)であれば、GMAX(2、T)<GMAX(3、T)となっていてもよい。この場合にも、λMAX(1、T)とλMAX(2、T)との間の波長で、利得変動が低減される。同様に、GMAX(2、T)>GMAX(3、T)であれば、GMAX(1、T)<GMAX(2、T)となっていてもよい。利得スペクトルの極大値が4つ以上存在する場合も同様である。
【0080】
また、第1実施形態のように量子ドット層242の数を量子ドット層243の数より多くするとともに、第2実施形態のように量子ドット層242における量子ドット242aの密度を量子ドット層243における量子ドット243aの密度より大きくしてもよい。
【0081】
また、第3実施形態において、第2実施形態のように量子ドット密度で利得の大きさを調整してもよい。この場合には、波長λMAX(M、T)に対応する量子ドット層の密度を、波長λMAX(M+1、T)に対応する量子ドット層の密度よりも大きくすればよい。
【符号の説明】
【0082】
2 SOA
24 活性層
242 量子ドット層
243 量子ドット層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16