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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】燃料電池二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/12 20060101AFI20240827BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240827BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240827BHJP
   B62J 50/30 20200101ALI20240827BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20240827BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20240827BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20240827BHJP
【FI】
B62M7/12
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
B62J50/30
B62M7/02 X
B62M7/02 W
B60K8/00
H01M8/10 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020190972
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080033
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】▲さこ▼ 孝太
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-056432(JP,A)
【文献】特開2002-042843(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01398263(EP,A1)
【文献】中国実用新案第202320655(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/12
H01M 8/00
H01M 8/04
B62J 50/30
B62M 7/02
B60K 8/00
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体の内部に搭載された燃料電池と、前記燃料電池に反応用空気を圧縮して送給する圧縮機と、を備えた燃料電池二輪車において、
前記圧縮機は、後輪の車幅方向側方にて前記車体に支持され、
前記燃料電池は、前記圧縮機に対して車長方向前方に配設されており、
前記圧縮機から前方に延びる冷却用配管を通じて前記燃料電池に反応用空気が送給されるように構成されていることを特徴とする燃料電池二輪車。
【請求項2】
前記燃料電池は、前記圧縮機からの反応用空気の送給経路に加湿器を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池二輪車。
【請求項3】
前記燃料電池は、前記車体の前下部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池二輪車。
【請求項4】
前記車体の前方に開口された外気導入部から、前記車体の内部を貫通し、前記圧縮機に向かって後方に延びるダクトを備え、前記冷却用配管の少なくとも一部が、前記ダクトの内部に配設されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の燃料電池二輪車。
【請求項5】
前記ダクトの後部は、前記車体の側方に開放された溝部となっており、前記冷却用配管の少なくとも一部が、前記溝部内に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池二輪車。
【請求項6】
前記圧縮機は、前記ダクトの上面を後方に延長した仮想線および前記ダクトの下面を後方に延長した仮想線に接触するように配置されていることを特徴とする請求項~5の何れか一項に記載の燃料電池二輪車。
【請求項7】
前記ダクトは、前記外気導入部から前記車体の下部を貫通して後方に延び、後方に向けて断面が拡大し、かつ、後方に向けて高くなる傾斜を有していることを特徴とする請求項~6の何れか一項に記載の燃料電池二輪車。
【請求項8】
前記圧縮機の吸気口は、車長方向後方に開口していることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の燃料電池二輪車。
【請求項9】
前記冷却用配管は中間部が分岐管で構成されていることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の燃料電池二輪車。
【請求項10】
前記圧縮機は、そのケースに略車長方向に配向されたヒートシンクを備えることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の燃料電池二輪車。
【請求項11】
前記圧縮機はターボ型圧縮機であることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の燃料電池二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池二輪車、特に、空冷式燃料電池二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
空冷式燃料電池システムとしては、反応用空気を冷却用空気として使用するオープンカソード方式の燃料電池システムと、反応用空気を冷却用空気とは別に圧縮機で加圧して供給するクローズドカソード方式の燃料電池システムがあるが、搭載スペースに制約のある二輪車では、機器構成が簡素なオープンカソード方式の燃料電池システムが検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-100574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オープンカソード方式の燃料電池システムでは、冷却ファンを利用して外気から冷却用を兼ねた反応用空気を供給する構造であるため、湿度コントロールが難しく、固体高分子型燃料電池では電解質膜が乾燥すると出力が低下する課題があった。
【0005】
一方、クローズドカソード方式の燃料電池システムは、反応用空気が断熱圧縮により昇温するため、インタークーラ(およびインタークーラファン)により反応用空気を冷却する必要があり、オープンカソード方式に比較してシステムが大型化する傾向があり、二輪車に搭載し難い問題があった。
【0006】
本発明は従来技術の上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却構造とレイアウトを見直すことでクローズドカソード方式の燃料電池システムを搭載し、オープンカソード方式の課題を回避できる燃料電池二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
車体と、前記車体の内部に搭載された燃料電池と、前記燃料電池に反応用空気を圧縮して送給する圧縮機と、を備えた燃料電池二輪車において、
前記圧縮機は、後輪の車幅方向側方にて前記車体に支持され、
前記燃料電池は、前記圧縮機に対して車長方向前方に配設されており、
前記圧縮機から前方に延びる冷却用配管を通じて前記燃料電池に反応用空気が送給されるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る燃料電池二輪車は、上記のように、車体後部、後輪の側方に配置された圧縮機から前方に延びる冷却用配管を通じて燃料電池に反応用空気が送給される構成により、走行風を直接配管に当てて反応空気を冷却でき、インタークーラおよびインタークーラファンなどの冷却機器が不要になり、かつ、圧縮機が車体外部に配置されたことで、車体中央部の空いたスペースに燃料電池や燃料タンクなどの機器を搭載可能となり、クローズドカソード方式の燃料電池二輪車を構成するうえで有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明第1実施形態の燃料電池二輪車を示す一部破断した側面図である。
図2】本発明第1実施形態の燃料電池二輪車を示す一部破断した平面図である。
図3図2のA部拡大図である。
図4】本発明第2実施形態の燃料電池二輪車を示す一部破断した側面図である。
図5】本発明第2実施形態の燃料電池二輪車を示す一部破断した平面図である。
図6図5のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池二輪車1を示しており、各図において、燃料電池二輪車1は、車体フレーム2とこれを覆う車体外装4で構成された車体の内部に燃料電池システムを備え、操舵輪である前輪5、駆動輪である後輪6を備えている。
【0011】
前輪5は、フロントフォーク51の下端部に回動自在に支持され、図2に概略的に示すように、フロントフォーク51の上部中央にブラケットを介して固定されたステアリングステム52が、車体フレーム2の前端のヘッドパイプ21に回動自在に支持され、ステアリングステム52に固定されたハンドル53で操舵可能に構成されている。
【0012】
後輪6は、スイングアーム61の後端部に回動自在に支持され、スイングアーム61がその前端部において車体フレーム2に上下揺動可能に軸支されるとともに、スイングアーム61の後端部と車体フレーム2との間にリアサスペンションユニット62が介設されている。スイングアーム61には、後輪6を駆動するためのモータ15が組み込まれ、モータ15を制御するインバータ14が搭載されている。
【0013】
燃料電池システムは、燃料電池11、燃料としての水素を貯留する燃料タンク12、補助電源としての二次電池13、燃料電池11の出力電圧の調整と燃料電池11と二次電池13の電力の分配を制御する不図示の電力管理装置などから構成されており、電力管理装置からインバータ14を介してモータ15に給電する。
【0014】
燃料電池11は、シート45の前方において車体外装4で覆われた車体フレーム2の前下部に搭載されており、前輪4の後方に位置した車体外装4の正面下部(外気導入部)から内部に冷却用空気として走行風を取り入れ、後方に排気するように構成されている。
【0015】
燃料電池11は、冷却用空気とは別に反応用空気を圧縮して供給するクローズドカソード方式の固体高分子型燃料電池であり、燃料電池11に反応用空気を圧縮して送給するための圧縮機31および冷却用配管32を備えている。
【0016】
圧縮機31は、駆動用のモータ33を備えたターボ型電動コンプレッサであり、ヒートシンクを構成するケース34に収容され、後輪6の側方で車体フレーム2に支持されており、圧縮機31から前方に延びる冷却用配管32を通じて、車長方向前方に配置されている燃料電池11に反応用空気が送給されるように構成されている。
【0017】
図1および図2に示すように、車体外装4の正面下部の右側には、前方に開口された外気導入部40が設けられ、この外気導入部40の下部から、車体外装4の内部(フットレスト43の下側)を貫通し、圧縮機31に向かって後方に延びるダクト41が形成されており、ダクト41の内部に冷却用配管32の前部が配設されている。
【0018】
冷却用配管32の前端は車体中央側に向かう曲げ部32bを介して燃料電池11に接続されている。なお、図示を省略するが、燃料電池11の曲げ部32bとの接続部分に反応用空気を加湿するための加湿器が設けられることが好ましい。
【0019】
ダクト41の後部は、後方に向けて高くなる傾斜を有しかつ後方に向けて断面が拡大しており、圧縮機31は、ダクト41の後端開口部42の後方延長上に配置されている。
【0020】
ダクト41の内部は、外気導入部40から取り入れられた走行風が後方に向かって流れており、このようなダクト41内部で冷却用配管32に沿って走行風が流過することにより、冷却用配管32を通じて燃料電池11に供給される反応用空気が冷却される。さらに、圧縮機31が、ダクト41の後端開口部42の後方延長上に配置されていることで、ダクト41を通過した空気が外気(走行風)と共に圧縮機31(ケース34)に吹き当てられることにより、圧縮機31およびモータ33も冷却される。
【0021】
なお、圧縮機31は、吸気圧力が走行風の影響を受けないように吸気口30が車長方向後方に配向されており、図3に示されるように、吸気口30を覆うように後方に拡張された拡張部分34eの後部開口34bにフィルタ30fを設け、このフィルタ30fを介して反応用空気が圧縮機31に吸入されるようにすることが好ましい。また、ケース34に形成されるヒートシンクは略車長方向に配向された圧縮機31の回転軸方向と並行に配向された複数のフィンで構成されることが好ましい。
【0022】
以上のように構成された燃料電池二輪車1は、圧縮機31が車体外部の後輪6の側方に配置され、この圧縮機31から前方に延びる冷却用配管32を通じて車体前下部に搭載された燃料電池11に反応用空気を供給する構成により、反応用空気の冷却区間となる冷却用配管32の管路長が確保され、インタークーラやインタークーラファンなどの強制冷却手段が不要となり、その分の消費電力を節減できる。
【0023】
しかも、上記のように配置された圧縮機31および冷却用配管32は、ガソリンエンジンを搭載した自動二輪車のマフラーと同様のレイアウトであり、マフラーに見立てて車体外部に見栄え良く配置でき、マフラーに準じた支持構造を採用できる利点もある。
【0024】
また、ダクト41の後部が、外気導入部40の下部から後方に向けて高くなる傾斜を有している構成により、ダクト41の内部で発生する乱流により、走行風と冷却用配管32との熱交換が促進される効果も期待できる。
【0025】
(第2実施形態)
図4および図5は、本発明の第2実施形態に係る燃料電池二輪車201を示している。この第2実施形態の燃料電池二輪車201は、ダクト241の構造のみが第1実施形態の燃料電池二輪車1と異なり、それ以外は同様であるため、同様の構成には同じ符号を付すことで説明を省略し、以下、変更点について説明する。
【0026】
第2実施形態の燃料電池二輪車201のダクト241は、車体外装4の正面下部の右側前方に開口された外気導入部240の下部から、車体外装204の内部(フットレスト43の下側)を貫通し、圧縮機31に向かって後方に延びる基本構成は第1実施形態と同様であるが、ダクト241の後部は、車体外装204の側方に開放された溝部243となっており、冷却用配管32の前部の曲げ部32bを含む前端部のみがダクト241の筒状部分の内部に配設され、冷却用配管32の前部の残余の部分は、溝部243内に配設されている。
【0027】
図6は、車体外装204に形成されたダクト241の溝部243と、この部分に配設された冷却用配管32の断面図であり、図示のように、略円弧状の断面を有する溝部243の中心部に冷却用配管32が配設されている。
【0028】
この構成により、ダクト41の筒状部分を通過した走行風が溝部243で案内され、冷却用配管32に沿って流過することで、冷却用配管32を通じて燃料電池11に供給される反応用空気が冷却される。この際、冷却用配管32の車体外側と内側で、内側の流速が速くなることにより、冷却用配管32の内側を、外側同様に効率的に冷却することができる。また、圧縮機31が、ダクト241の後端部242の後方延長上に配置されていることにより、ダクト41を通過した空気が外気と共に圧縮機31(ケース34)に吹き当てられ、圧縮機31およびモータ33も冷却される点は第1実施形態と同様である。
【0029】
なお、第1実施形態の燃料電池二輪車1においても、上記実施形態と同様に、ダクト4の断面の中心部に冷却用配管32が配設されていても良い。この構成により、冷却用配管32の全周に均一に冷却風が当たるようになり、冷却性能を確保するうえで有利である。
【0030】
また、上記各実施形態では、圧縮機31が、その回転軸方向をダクト41,241の延在方向に一致させて後端開口部42,242の後方延長上に配置される場合について述べたが、圧縮機31の回転軸方向をダクト41,241の延在方向に対して交差するように配置するなどして、圧縮機31(ケース34)が、ダクト41,241の上面を後方に延長した仮想線と、ダクト41,241の下面を後方に延長した仮想線とに接触するように配置されていてもよい。
【0031】
また、上記各実施形態では、ダクト41,241の外気導入部40,240が、燃料電池11冷却用の外気導入部の側方に隣接して別設される場合を示したが、共通の外気導入部の内部で、ダクト41,241の外気導入部40,240が側方に分岐する構成とすることもできる。
【0032】
また、上記各実施形態では、冷却用配管32が、圧縮機31の送出部に接続される後端曲げ部32aと、燃料電池11に接続される前端曲げ部32bとの間で、ダクト41,241と平行に直線的に延在する場合を示したが、冷却用配管32の中間部に曲線的に延在する部分を含んでも良い。また、冷却用配管32の中間部が複数の分岐管で構成されていても良いし、分岐管(マニホールド)の形態で燃料電池11に接続されても良い。
【0033】
また、上記各実施形態では、ダクト41,241および車体外装4を備えたスクータタイプの二輪車として実施される場合について示したが、ダクト41,241を省略して、フロントカウル44のみを備える二輪車や、車体外装4を備えないネイキッドタイプの二輪車として実施することもできる。さらに、二輪車以外に、2つの前輪を備えた三輪車などに実施することもできる。
【0034】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内でさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0035】
1,201 燃料電池二輪車
2 車体フレーム
4 車体外装
5 前輪
6 後輪
11 燃料電池
30 吸気口
31 圧縮機
32 冷却用配管
33 モータ
34 ケース(ヒートシンク)
40,240 外気導入部
41,241 ダクト
243 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6