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特許7543870プライマー、太陽電池用裏面保護シートおよび太陽電池モジュール
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  • 特許-プライマー、太陽電池用裏面保護シートおよび太陽電池モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】プライマー、太陽電池用裏面保護シートおよび太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20240827BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20240827BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240827BHJP
   C09B 67/22 20060101ALI20240827BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240827BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240827BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240827BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L31/04 562
C08G18/62 016
C08G18/40 063
C09B67/22 Z
C09D5/00 D
C09D133/00
B32B27/20 A
B32B27/30 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020192881
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081722
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩史
(72)【発明者】
【氏名】小清水 渉
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0214160(US,A1)
【文献】特開2015-015414(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153907(WO,A1)
【文献】特開2016-000785(JP,A)
【文献】特開2017-114937(JP,A)
【文献】特開2019-114793(JP,A)
【文献】特開2014-239127(JP,A)
【文献】特開2018-082031(JP,A)
【文献】特開平07-102176(JP,A)
【文献】特開2012-212805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/048-31/049
C09D 107/00-187/00
C09J 107/00-187/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性フィルム、およびプライマー層を備える太陽電池用裏面保護シートのプライマー層を形成するために使用されるプライマーであって、
(メタ)アクリル系共重合体(A)、着色剤(C)およびポリオール(D)を含み、
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が、31~80℃(但し、50~80℃を除く)であり、
ポリオール(D)は、数平均分子量が500~6,000である、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかを含み、
プライマーの不揮発分100質量%中、着色剤(C)を10~40質量%含み、
着色剤(C)は、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、およびイソインドリン系黄色顔料を含み、
下記(1)~(4)のすべてを満たすプライマー。
(1)80≦Mv+Mb+My
(2)25≦Mv’≦40
(3)40≦My’≦55
(4)63.5≦Mb’+1.42Mv’≦73.5
(Mv、Mb、Myは、それぞれ、着色剤(C)の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率であり、
Mv’、Mb’、My’は、それぞれ、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料およびイソインドリン系黄色顔料の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率である。)
【請求項2】
(1)90≦Mv+Mb+Myを満たす、請求項1記載のプライマー。
【請求項3】
さらにポリイソシアネート化合物(B)を含み、かつ(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基価が0.1~100mgKOH/gである、請求項1または2記載のプライマー。
【請求項4】
ポリオール(D)の含有率は、プライマーの不揮発分100質量%中、0.1~20質量%である、請求項1~3いずれか1項記載のプライマー。
【請求項5】
光反射性フィルム、および請求項1~4いずれか1項記載のプライマーから形成されてなるプライマー層を備える太陽電池用裏面保護シート。
【請求項6】
表面保護部材、表面側封止材、発電セル、裏面側封止材、および請求項5記載の太陽電池用裏面保護シートを備える太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用裏面保護シートのプライマー層を形成するために使用されるプライマー、それを用いてなる太陽電池用裏面保護シート、および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として使用されている太陽電池は、例えば、表面保護部材/表面封止材/太陽電池素子/裏面封止材/裏面保護部材の積層体である太陽電池モジュールを複数使用する実施態様が一般的である。裏面保護シートは、裏面封止材等との密着性を高めるため表面にプライマー層を形成する場合がある。
【0003】
太陽電池は、住宅の屋上に設置する場合があり、外観を重視して裏面保護シートの受光面側から見た外観を黒色に着色していることが多い。そこで特許文献1および特許文献2では、カーボンブラックで黒色に着色した裏面保護シートが開示されている。しかし、カーボンブラックは光を吸収するため裏面保護シートが高温になり易く、ひいては太陽電池モジュール全体が高温になり発電効率が低下するという問題がある。
【0004】
また、太陽電池素子の吸収する波長領域は、一般的に非晶質シリコン太陽電池素子は300~800nm、結晶シリコン太陽電池素子は400~1200nmであるが、太陽電池素子が吸収できず透過した光を裏面保護シートの反射層で反射できれば、反射光は再び太陽電池素子に入射して、光電変換効率が向上する。
【0005】
そこでカーボンブラックを使用せずに黒に着色した層と、幅広い波長の光を反射する反射層を備えた裏面保護シートとして、特許文献3では、基材のポリオレフィンフィルムに着色剤として銅フタロシアニン、キナクリドンレッド、およびベンツイミダゾロンイエローを練り込んだ裏面保護シートが開示されている。
また、特許文献4では、着色剤として赤色系顔料、青色系顔料、および黄色系顔料を配合したプライマーを使用した裏面保護シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-249421号公報
【文献】特開2010-138300号公報
【文献】国際公開2013/183658号
【文献】国際公開2013/105522号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、カーボンブラックを使用せず有機顔料を混ぜ合わせて黒くする方法では、充分な黒味を得るのが困難であり、また湿熱試験やUV照射試験を行った後に色味のバランスが崩れ、黒く見えなくなるという問題がおこる。また、プライマーが有機顔料を含むことで、封止材等への接着力の低下や、湿熱試験やUV照射試験を行った後に接着力が大きく悪化するという問題がある。
さらには、屋外の厳しい使用環境を再現するために湿熱試験とUV照射試験を繰り返すという過酷な耐久性試験を行った場合、黒味や接着力が低下してしまうことも問題である。
【0008】
本発明は、充分な黒味を有し、封止材等への接着力に優れ、過酷な耐久性試験を実施した後でも黒味と接着力が良好なプライマー層を形成できるプライマー、太陽電池用裏面保護シート、および太陽電池モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光反射性フィルム、およびプライマー層を備える太陽電池用裏面保護シートのプライマー層を形成するために使用されるプライマーであって、
(メタ)アクリル系共重合体(A)、および着色剤(C)を含み、
プライマーの不揮発分100質量%中、着色剤(C)を10~40質量%含み、
着色剤(C)は、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、およびイソインドリン系黄色顔料を含み、
下記(1)~(4)のすべてを満たすプライマーに関する。
(1)80≦Mv+Mb+My
(2)25≦Mv’≦40
(3)40≦My’≦55
(4)63.5≦Mb’+1.42Mv’≦73.5
(Mv、Mb、Myは、それぞれ、着色剤(C)の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率であり、
Mv’、Mb’、My’は、それぞれ、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料およびイソインドリン系黄色顔料の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率である。)
【0010】
また、本発明は、(1)90≦Mv+Mb+Myを満たす、前記プライマーに関する。
【0011】
また、本発明は、さらにポリイソシアネート化合物(B)を含み、かつ(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基価が0.1~100mgKOH/gである、前記プライマーに関する。
【0012】
また、本発明は、さらにポリオール(D)を含み、ポリオール(D)は、数平均分子量が500~6,000である、ポリカーボネーポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかを含む、前記プライマーに関する。
【0013】
また、本発明は、光反射性フィルム、および前記プライマー層を備える太陽電池用裏面保護シートに関する。
【0014】
また、本発明は、表面保護部材、表面側封止材、発電セル、裏面側封止材、および前記太陽電池用裏面保護シートを備える太陽電池モジュールに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、充分な黒味を有し、封止材等への接着力に優れ、過酷な耐久性試験を実施した後でも黒味と接着力が良好なプライマー層を形成できるプライマー、太陽電池用裏面保護シートおよび太陽電池モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明における、Mb’とMv’との関係を満たす領域と、実施例及び比較例の座標例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体」は、「アクリル系共重合体」、「メタクリル系共重合体」、「アクリル系-メタクリル系共重合体」を包含する意である。太陽電池は、太陽光発電ともいう。
なお、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
また、以下に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0018】
《プライマー》
本発明のプライマーは、光反射性フィルム、およびプライマー層を備える太陽電池用裏面保護シートのプライマー層を形成するために用いられる。
プライマーは、(メタ)アクリル系共重合体(A)、および着色剤(C)を含み、必要に応じて、ポリイソシアネート化合物(B)、ポリオール(D)、およびその他成分を含有してもよい。
また、プライマーの不揮発分100質量%中に、着色剤(C)を10~40質量%含み、着色剤(C)としてジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、イソインドリン系黄色顔料を含む。
さらに下記(1)~(4)のすべてを満たす。
(1)80≦Mv+Mb+My
(2)25≦Mv’≦40
(3)40≦My’≦55
(4)63.5≦Mb’+1.42Mv’≦73.5
(Mv、Mb、Myは、それぞれ、着色剤(C)の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率であり、
Mv’、Mb’、My’は、それぞれ、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料およびイソインドリン系黄色顔料の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率である。)
【0019】
プライマー層は、本発明のプライマーを基材上に塗工し、形成される。プライマー層は、基材と他の層との密着性を向上させる。本明細書のプライマーは、適度な黒色の外観を有し、光反射性フィルム、およびプライマー層を備える太陽電池用裏面保護シート(以下、裏面保護シートともいう)のプライマー層の形成に好適に使用することができる。
【0020】
プライマーは、プライマー層を形成し、太陽電池モジュールを作製する際の加熱圧着工程で、プライマー層と裏面側封止材とが接するように積層されることが好ましい。これによって、簡便かつ安価に黒味が良好で、裏面保護シートと裏面側封止材との接着性が良好な太陽電池モジュールを形成することができる。なお、基材シート上に設けたプライマー層の上に接着剤を塗布する態様を採用することもでき、基材シートと接着剤との密着性を向上する目的でも使用することができる。例えば、光反射性フィルム上にプライマー層を形成した後、接着剤を塗布し、オレフィンフィルムを貼り合わせることで裏面保護シートを形成できる。このオレフィンフィルムが裏面側封止材と接するように積層し、加熱圧着することで太陽電池モジュールを形成できる。しかし、使用する材料が少なくてすみ、工程を簡便にできるという点で、プライマー層が裏面側封止材と接するように積層されることが好ましい。
【0021】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)>
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、反応性官能基を有するモノマー、またはその他モノマーから適宜選択したモノマーを常法に従い重合した共重合体である。ここで「モノマー」とは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を意味する。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。
反応性官能基を有するモノマーは、例えば、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、N-メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
その他モノマーは、例えば、ベンジルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
【0023】
なかでもアクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の、水酸基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、ポリイソシアネート化合物(B)と併用して塗膜を架橋し耐久性を向上させることができるため好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基価は、具体的には0.1~100mgKOH/gが好ましく、1~50mgKOH/gがより好ましく、2~30mgKOH/gがさらに好ましい。水酸基価がこの範囲にあることで、湿熱試験後の剥離強度の低下を抑制し易い。
【0024】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~1,000,000が好ましく、20,000~750,000がより好ましく、30,000~500,000がさらに好ましい。重量平均分子量がこの範囲であることにより、プライマー層の耐久性がより向上できる。
なお、重量平均分子量は、樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。例えば、カラム(昭和電工(株)製KF-805L、KF-803L、及びKF-802)の温度を40℃として、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、流速を0.2ml/minとし、検出をRI、試料濃度を0.02質量%とし、標準試料としてポリスチレンを用い、測定することができる。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、-20~100℃が好ましく、0~90℃がより好ましく、20~80℃がさらに好ましい。ガラス転移温度がこの範囲であると、封止材への初期接着力がより高くできる。
なお、本発明におけるガラス転移温度とは、乾燥させて不揮発分100質量%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって計測したガラス転移温度のことをいう。
例えば、ガラス転移温度は、試料約10mgを秤量したサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとをDSC装置にセットし、これを窒素気流中で、液体窒素を用いて-100℃まで急冷処理し、その後、20℃/分で200℃まで昇温し、DSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。
【0026】
また、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、炭素-炭素二重結合を有することが好ましい。本発明において炭素-炭素二重結合とは、ラジカル反応活性で、互いに重合し得る炭素-炭素二重結合部位(C=C)のことを指し、ベンゼン環、ピリジン環のような反応不活性な炭素-炭素二重結合はこれに該当しない。なかでも、(メタ)アクリロイル基のように反応性の高い炭素-炭素二重結合が好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)が炭素-炭素二重結合を有することで、封止材とプライマー層が熱圧着される際に、封止材に含まれる添加剤によって炭素-炭素二重結合同士が結合し封止材との接着性を向上したりプライマー層の耐久性を向上したりする効果を発現する。
【0027】
(メタ)アクリル系共重合体(A)に炭素-炭素二重結合を導入する方法としては、例えば水酸基またはアミノ基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)を合成し、その水酸基またはアミノ基の一部またはすべてに対しイソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマーを付加して変性させる方法や、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)を合成し、そのグリシジル基の一部またはすべてに対しカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系モノマーを付加して変性させる方法などが挙げられる。
【0028】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、2-イソシアナトエチルアクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレートなどが例示でき、これらの製品としては昭和電工(株)製のカレンズAOI、カレンズMOIなどがある。
【0029】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0030】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の炭素-炭素二重結合の量としては、二重結合当量で100~50,000g/eqであることが好ましく、200~30,000g/eqであることがさらに好ましく、300~20,000g/eqであることが最も好ましい。本発明において二重結合当量は[(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量]÷[(メタ)アクリル系共重合体(A)が有する炭素-炭素二重結合の個数]で計算される。
換言すると、炭素-炭素二重結合一つあたりの(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量である。例えば、重量平均分子量が50,000の(メタ)アクリル系共重合体(A)が有する炭素-炭素二重結合の個数が20であれば、この官能基当量は2,500と計算できる。なお、ここで重量平均分子量が50,000の(メタ)アクリル系共重合体(A)は、実際は様々な分子量を有する共重合体分子の混合物となっているが、二重結合当量を計算する場合はすべての分子が50,000であると仮定する。そして1分子当たりの炭素-炭素二重結合の個数はモノマーの重量比から計算できる。例えば(メタ)アクリル系共重合体(A)のモノマー質量100質量%のうち、グリシジル基に付加したアクリル酸(分子量72.06g/mol)が2.88質量%含まれる場合、分子量が50,000のアクリル樹脂1分子あたりの炭素-炭素二重結合の個数は50,000×(2.88/100)÷72.06≒20となり、20個となる。なお、(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は先述した方法で測定することができる。
【0032】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
プライマーには、ポリイソシアネート化合物(B)を用いてもよい。ポリイソシアネート化合物(B)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)がイソシアネート基と反応可能な官能基を有する場合、硬化剤として働きプライマーを架橋させ耐久性を向上させることができる。(メタ)アクリル系共重合体(A)の官能基はイソシアネート基と反応するものであれば特に限定されないが、反応性や安全性などの観点から水酸基が好ましい。
【0033】
ポリイソシアネート化合物(B)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、鎖式もしくは環状脂肪族ポリイソシアネート、および芳香脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1、3-フェニレンジイソシアネート、4、4’-ジフェニルジイソシアネート、1、4-フェニレンジイソシアネート、4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2、4-トリレンジイソシアネート、2、6-トリレンジイソシアネート、4、4’-トルイジンジイソシアネート、2、4、6-トリイソシアネートトルエン、1、3、5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4、4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4、4’、4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
鎖式脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1、2-プロピレンジイソシアネート、2、3-ブチレンジイソシアネート、1、3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2、4、4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
環状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3、5、5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1、3-シクロペンタンジイソシアネート、1、3-シクロヘキサンジイソシアネート、1、4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2、4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2、6-シクロヘキサンジイソシアネート、4、4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1、4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω、ω’-ジイソシアネート-1、3-ジメチルベンゼン、ω、ω’-ジイソシアネート-1、4-ジメチルベンゼン、ω、ω’-ジイソシアネート-1、4-ジエチルベンゼン、1、4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1、3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
これらのポリイソシアネートに加え、上記ポリイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体、更には上記ポリイソシアネートと公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0036】
これらのポリイソシアネート化合物(B)のなかでも、変色が少ない、低黄変型の鎖式もしくは環状脂肪族のポリイソシアネートが好ましく、耐湿熱性の観点からは、イソシアヌレート体が好ましい。より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体、3-イソシアネートメチル-3、5、5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体が好ましい。
また、ポリイソシアネート化合物(B)は、基材への密着性を向上する観点からブロック化ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0037】
ポリイソシアネート化合物(B)を使用する場合、(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基と、必要に応じて使用するポリオール(D)の水酸基との合計の水酸基量に対してNCO/OH=0.1~5(モル比)となるように使用することが好ましい。この範囲にあることによって耐久性向上の効果をより高めることができる。
【0038】
<着色剤(C)>
本明細書で着色剤(C)は、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、およびイソインドリン系黄色顔料を必須成分として含有し、必要に応じてその他着色剤を含有することができる。
その他着色剤としては、有彩色顔料等が挙げられる。
ただし、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率は、下記(1)~(4)のすべてを満たす。
(1)80≦Mv+Mb+My
(2)25≦Mv’≦40
(3)40≦My’≦55
(4)63.5≦Mb’+1.42Mv’≦73.5
(Mv、Mb、Myは、それぞれ、着色剤(C)の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率であり、
Mv’、Mb’、My’は、それぞれ、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料およびイソインドリン系黄色顔料の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率である。)
【0039】
着色剤(C)の含有率は、プライマーの不揮発分100質量%中10~40質量%であり、15~35質量%であることが好ましい。着色剤(C)の含有率を40質量%以下とすることで封止材等への密着性がより向上し、10%質量以上とすることで外観の黒色度がより向上する。
【0040】
[ジオキサジン系紫色顔料]
ジオキサジン系紫色顔料は、ジオキサジン骨格を有する紫色顔料であり、例えば、C.I.Pigment Violet 23が挙げられる。なお、ここでいう紫色系顔料とは、C.I. Pigment Violetに分類される顔料である。
【0041】
[フタロシアニン系青色顔料]
フタロシアニン系青色顔料は、フタロシアニン骨格を有する青色顔料であり、例えば、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 79が挙げられる。これらのなかでも耐候性、および色調の面でC.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4が好ましい。
【0042】
[イソインドリン系黄色顔料]
イソインドリン系黄色顔料は、イソインドリン骨格を有する黄色顔料であり、例えば、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 185が挙げられる。なお、ここでいう黄色系顔料とは、C.I. Pigment Yellowに分類される顔料である。これらのなかでも色調の面でC.I.Pigment Yellow 139が特に好ましい。なお、文献によってはイソインドリン系黄色顔料とイソインドリノン系黄色顔料を混同して記載しているものもあるが、本明細書ではこれらを区別する。プライマーに含有される必須の着色剤としてはイソインドリン系黄色顔料であることが重要である。
【0043】
イソインドリン系黄色顔料と区別されるイソインドリノン系黄色顔料は、イソインドリノン骨格を有する黄色顔料であり、例えば、C.I.Pigment Yellow 109、C.I.Pigment Yellow 110、C.I.Pigment Yellow 173が挙げられる。イソインドリノン骨格はイソインドリン骨格の五員環と結合している水素を酸素で置換した構造である。
本命発明においてイソインドリノン系黄色顔料は、その他有彩色顔料に該当する。
【0044】
本発明のプライマーは、着色剤(C)の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率(質量%)をMv、フタロシアニン系青色顔料の含有率(質量%)をMb、イソインドリン系黄色顔料の含有率(質量%)をMyとしたとき、
(1)80≦Mv+Mb+My
を満たす。
着色剤(C)中の、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、およびイソインドリン系黄色顔料の合計含有率が、80質量%以上であれば、充分な黒味を有し、封止材等への接着力に優れ、過酷な耐久性試験を実施した後でも黒味と接着力が良好なプライマー層を形成することができる。
Mv+Mb+My(質量%)は、90≦Mv+Mb+Myであることがより好ましく、さらには95≦Mv+Mb+Myであることが好ましい。
【0045】
さらにはジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料およびイソインドリン系黄色顔料の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率(質量%)をMv’、フタロシアニン系青色顔料の含有率(質量%)をMb’、イソインドリン系黄色顔料の含有率(質量%)をMy’としたとき、
(2)25≦Mv’≦40
(3)40≦My’≦55
(4)63.5≦Mb’+1.42Mv’≦73.5
を満たす。
なお、Mb’の下限値および上限値は25≦Mv’≦40かつ63.5≦Mb’+1.42Mv’≦73.5の条件から必然的に決まり、6.7≦Mb’≦38である。Mb’を横軸、Mv’を縦軸にグラフを描いたものを図1に示す。図1において平行四辺形に囲まれる範囲が25≦Mv’≦40かつ63.5≦Mb’+1.42Mv’≦73.5を満たす範囲である。
【0046】
なお、着色剤(C)がジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、イソインドリン系黄色顔料の3種類のみの場合、Mv=Mv’、Mb=Mb’、My=My’となる。
【0047】
ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、イソインドリン系黄色顔料の含有率がこれらの関係をすべて満たすことで、初期および耐久性試験後の黒味が良好となるだけでなく、過酷な耐久性試験を実施した後の接着力を良好に保持することができるという驚くべき効果を見出した。
【0048】
一般的な接着剤やプライマーにおいて被着体との接着力を向上させたり、耐久性を向上させるためには、主成分である樹脂の組成や特性を変えたり、樹脂を架橋させる硬化剤の組成や添加量を変えたりすることが多く、顔料は塗膜を着色するためだけに使用される。しかしながら本発明のプライマーは、主成分の樹脂である(メタ)アクリル系共重合体(A)だけでなく、着色剤(C)が過酷な耐久性試験後の接着力に大いに寄与する。この要因としては、湿熱試験と紫外線照射試験がサイクルで繰り返し行われるような過酷な条件では、さまざまな機構でプライマーの劣化が生じるため、プライマーに含まれる全成分が劣化およびその抑制に寄与するためと考えられる。着色剤(C)の成分が上記のような範囲にあることで、各顔料の成分とプライマーの樹脂成分が複雑に相互作用し合って、上記のような驚くべき効果を発現したと発明者らは考えている。
【0049】
どのような機序で相互作用が起こっているかは明らかではないが、その作用を高めるためにはジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、イソインドリン系黄色顔料の含有率の関係が、上述した要件を満たすことが重要である。なかでもジオキサジン系紫色顔料とフタロシアニン系青色顔料は類似の効果を発揮するため、これらを足し合わせたMb’+1.42Mv’が、特定の範囲内(63.5以上73.5以下)である必要がある。
なお、単位質量あたりの効果がジオキサジン系紫色顔料の方が高いため、1.42の係数が掛けられる。
【0050】
Mv’の範囲としては25≦Mv’≦35がより好ましく、My’の範囲としては40≦My’≦50がより好ましく、Mb’の範囲としては10≦Mb’≦38が好ましい。
【0051】
[その他有彩色顔料]
着色剤(C)は、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料、およびイソインドリン系黄色顔料に加えて、必要に応じて、着色剤(C)中20質量%以下、好ましくは、10質量%以下であれば、その他の有彩色顔料を含有してもよい。
その他有彩色顔料としては有機有彩色顔料、または無機有彩色顔料が挙げられる。
【0052】
有機有彩色顔料としては、例えばアゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンゾイミダゾロン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料などが挙げられる。
これらのなかでも耐湿熱性、耐候性に優れることからアンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンゾイミダゾロン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料が好ましい。
【0053】
無機有彩色顔料としては、例えばコバルトブルー、酸化鉄、ビリジアン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、黄鉛、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ビスマスバナジウムイエロー、フェロシアン化物、マンガンバイオレットなどが挙げられる。 これらのなかでもコバルトブルー、酸化鉄、ビスマスバナジウムイエロー、フェロシアン化物、マンガンバイオレットが好ましい。
【0054】
<分散剤>
プライマー中の着色剤(C)の安定性を向上するために、分散剤を用いてもよい。
分散剤は、プライマーを製造する段階で加えてもよく、着色剤(C)と分散剤を用い、(メタ)アクリル系共重合体(A)や溶剤と共に分散処理し、あらかじめ分散体としてから、その他の(メタ)アクリル系共重合体(A)や溶剤等と混合して用いることもできる。
これにより着色剤(C)は、プライマー中での分散安定性がより向上することができる。
【0055】
分散剤は着色剤(C)の表面に吸着し、立体反発によって着色剤が凝集することを防いだり、溶剤中で安定化して沈降することを抑制したりする。分散剤としては、例えば水酸基含有カルボン酸エステル、ポリアミノアマイドのポリカルボン酸塩、顔料に親和性のある官能基を有するウレタン樹脂、顔料に親和性のある官能基を有するアクリル樹脂、顔料に親和性のある官能基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも顔料に親和性のある官能基を有する樹脂系の分散剤が好ましい。さらには、酸価を有さずアミン価を有する樹脂系の分散剤が好ましい。
これらのなかでもアミン価が1~50mgKOH/gであることが好ましく、1~30mgKOH/gであることが特に好ましい。このような分散剤を用いることでプライマーの耐久性を向上させることができる。
【0056】
着色剤(C)の分散処理は、例えば、ガラスビーズやジルコニアビーズのようなビーズ(粉砕メディア)を使用して、ビーズ間の衝突やせん断のエネルギーを利用して分散するビーズミルや、撹拌のせん断力や圧力変化によるキャビテーション、超音波振動によるキャビテーションを利用して分散する、いわゆるメディアレス分散機など、公知の分散装置が使用できる。通常、分散処理は樹脂および分散剤、着色剤(C)と溶剤を混合してから行われるが、他の原料が含まれていてもよい。
【0057】
<ポリオール(D)>
プライマーは、ポリオール(D)を含んでいてもよい。
ポリオール(D)により、プライマー層に柔軟性を付与することができ、これによって湿熱試験の湿度、温度によって硬化剤との架橋が過剰に進み、硬くなって接着力が低下してしまうことを防いだり、着色剤(C)が含まれることによってアクリル系共重合体(A)の柔軟性が低下してしまうことを防ぐという効果が得られる。
ポリオール(D)としては、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびポリオレフィンポリオール等が挙げられ、ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールが好ましい。
【0058】
ポリオール(D)の含有率は、プライマーの不揮発分100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0059】
ポリオール(D)の数平均分子量(Mn)は、500~6,000であることが好ましく、500~5,000であることがより好ましく、1,000~3,000であることがさらに好ましい。数平均分子量がこれらの範囲にあることによって、上述した柔軟性付与の効果をより発揮できる。
接着力や耐久性の点から、数平均分子量が500~6000である、ポリカーボネーポリオールまたはポリエステルポリオールがとくに好ましい。
【0060】
ポリカーボネートポリオールは、例えば(株)クラレ製クラレポリオールC-590、C-1090、C-2090、C-3090、宇部興産(株)製ETERNACOLL PH-50、PH-100、PH-200、PH-300、三菱ケミカル(株)製ベネビオールなどとして商業的に入手することができる。
【0061】
ポリエステルポリオールは、例えば(株)クラレ製クラレポリオールP-510、P-1010、P-2010、P-3010、P-4010、P-5010、P-6010、宇部興産(株)製ETERNACOLL 3000シリーズなどとして商業的に入手することができる。
【0062】
<その他成分>
本明細書のプライマーは、課題を解決できる範囲内であれば、例えば、無彩色粒子、架橋促進剤、溶剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、シランカップリング剤等を含有できる。
【0063】
[無彩色粒子]
本発明のプライマーは、さらに無彩色の粒子(有機系粒子、無機系粒子)を含有できる。無彩色の粒子を含むと、プライマー層表面のタックを低減することができる。
また、無彩色の粒子は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、微粒子の形状は、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状、樹枝状等が挙げられる。
【0064】
無彩色の有機系粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂などのポリマー粒子、あるいは、セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、澱粉などが挙げられる。
【0065】
前記ポリマー粒子は、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、シード重合法、マイクロサスペンジョン重合法等の公知の重合法で合成できる。
【0066】
無彩色の有機系粒子は、融点もしくは軟化点が150℃以上の粒子が好ましい。融点もしくは軟化点が150℃以上のものを使用すると、溶剤乾燥時の熱で軟化しにくく、耐ブロッキング性が低下し難い。
【0067】
無彩色の無機系粒子は、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ケイ素、アンチモン、チタンなどの金属の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。無機系粒子は、具体的な化合物でいうと、例えば、シリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、鉛酸化物、珪藻土、ゼオライト、アルミノシリケート、タルク、ホワイトカーボン、マイカ、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラスビーズ、クレー、ワラスナイト、酸化アンチモン、酸化チタン、リトポン、軽石粉、硫酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、炭酸バリウムなどからなる無機系粒子が挙げられる。
【0068】
[架橋促進剤]
本発明のプライマーは課題を解決できる範囲内であれば、さらに架橋促進剤を添加できる。プライマーがポリイソシアネート化合物(B)を含有し、(メタ)アクリル系共重合体(A)やポリオールの水酸基とウレタン結合を形成して架橋する場合、触媒としての役割を果たす。架橋促進剤としてはスズ化合物、金属塩、塩基などが挙げられ、具体的にはオクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、塩化スズ、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。
【0069】
[溶剤]
プライマーは、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;等が挙げられる。
【0070】
溶剤は、沸点が50℃~200℃であることが好ましい。沸点が適度な範囲にあると塗工時の乾燥性とプライマー層の表面平滑性を両立し易い。
【0071】
<プライマーの製造方法>
次に本発明のプライマーの製造方法について説明する。プライマーは、(メタ)アクリル系共重合体(A)、着色剤(C)、必要に応じてイソシアネート化合物(B)、ポリオール(D)、分散剤、および溶剤等をディスパーなどを用いて均一に混合後、分散処理することにより製造することができる。
なお、前述したように、着色剤(C)の分散効率を高めるため、(メタ)アクリル系共重合体(A)、および分散剤等を使用する割合を少なく、着色剤(C)の濃度を高く設定した混合液を分散処理することによって、着色剤(C)を粉砕して細かくした顔料分散体をあらかじめ製造して用いることもできる。次いで、分散処理された混合液に残りの(メタ)アクリル系共重合体(A)や必要に応じてイソシアネート化合物(B)、ポリオール(D)その他成分を加えることで、所定の顔料濃度のプライマーが得られる。
【0072】
分散処理は、例えばガラスビーズやジルコニアビーズのようなビーズ(粉砕メディア)を使用してビーズ間の衝突やせん断のエネルギーを利用して分散するビーズミルや、撹拌のせん断力や圧力変化によるキャビテーションおよび超音波振動によるキャビテーションを利用して分散する、いわゆるメディアレス分散機など公知の分散装置を使用できるが、分散処理の簡便さからビーズミルを使用することが好ましい。
【0073】
《太陽電池用裏面保護シート》
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、光反射性フィルム、およびプライマー層を備える。太陽電池モジュールが受け、かつ太陽電池素子が利用しきれなかった光はプライマー層を通過し光反射性フィルムで反射される。前記の反射光は、プライマー層を通過し、太陽電池素子に入光することで、前面に加え、裏面からも光を受けることができ、太陽電池素子の発電効率が向上する。
太陽電池用裏面保護シートは、表面保護部材、表面側封止材、発電セル、裏面側封止材、太陽電池用裏面保護シートを備えた太陽電池モジュールを作製するための加熱圧着工程で裏面側封止材と密着する。
【0074】
太陽電池用裏面保護シートは、光反射性フィルム、およびプライマー層を有していればよく、光反射性フィルム単独での使用に限られず、透明PETフィルムのような他の基材上にプライマーを塗工し、当該基材の反対面に接着剤を塗布して光反射性フィルムを貼り合わせたフィルム積層体も太陽電池用裏面保護シートとして使用することができる。
【0075】
さらには前記したように、「光反射性フィルム/プライマー層/接着剤層/オレフィンフィルム」なる構成とし、当該オレフィンフィルムが裏面封止材と接するように積層して用いることもできる。
【0076】
本明細書の太陽電池用裏面保護シートは、例えば、結晶シリコン太陽電池素子、銅インジウムセレナイドに代表される化合物半導体やアモルファスシリコンのような光電変換層に電極を設けた素子等から形成された太陽電池モジュールの保護に使用できる。
【0077】
<プライマー層>
プライマー層は、本発明のプライマーにより形成される。
プライマーを光反射性フィルム上に塗工、乾燥して形成されることが好ましい。
【0078】
塗工は、例えば、コンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティング等の塗工装置によることができる。乾燥方式としては、例えば、熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられる。乾燥温度は、通常80~200℃である。
【0079】
プライマーの塗布量は、溶剤乾燥後の重量で0.1~25g/平方メートルが好ましい。溶剤乾燥後のプライマー層の重量がこの範囲にあることで黒味と封止材等への密着性、耐久性のバランスに優れるプライマー層とすることができる。さらには太陽電池用裏面保護シートを形成するときのコストも安価に抑えることができる。
【0080】
<光反射性フィルム>
光反射性フィルムは、太陽電池素子が発電に利用可能な波長400~1200nmの光を反射できることが好ましい。光の反射は、例えば、所定の平均粒子径を有する二酸化チタンを配合する必要があるが、1種類では、前記波長領域の全てを反射することが難しい。そのため、平均粒子径が異なる2種類以上の二酸化チタンを配合することが好ましい。また、光反射フィルムは、2種類の二酸化チタンうち、一方を第一の光反射フィルム、他方を第二の光反射フィルムに分ける多層構成も好ましい。また、二酸化チタンの配合に代えて、または併用してフィルムを発泡させて、光反射機能を有する発泡フィルムを作製して使用することもできる。
【0081】
二酸化チタンは、光反射性フィルム100質量%中に5~40質量%含むことが好ましい。
【0082】
光反射性フィルムの基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエン等のオレフィンフィルム;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体フィルム等のフッ素系フィルム;アクリルフィルム;トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルムが挙げられる。これらのなかでもフィルム剛性、コストの観点からポリエステル系樹脂フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(「PET」とも称する)フィルムがより好ましい。
【0083】
基材は、単層または2層以上の積層体を使用できる。また、基材は、金属酸化物や非金属無機酸化物が蒸着ないしスパッタリングされた無機層を備える構成であってもよい。
【0084】
基材の厚みは、25~300μmが好ましい。
【0085】
《太陽電池モジュール》
太陽電池モジュールは、表面保護部材、表面側封止材、発電セル、裏面側封止材、および本発明の太陽電池用裏面保護シートを備える。
【0086】
表面保護部材としてはガラス板、ポリカーボネートやポリアクリレートのプラスチック板、耐候性のある透明フィルムおよびその積層体などを使用することができる。耐候性のある透明フィルムおよびその積層体などは太陽電池モジュール用フロントシートなどと呼ばれることもある。
【0087】
表面側封止材、裏面側封止材としてはエチレン-ビニルアルコール共重合体(「EVA」とも称する)やオレフィンフィルム等が挙げられる。これらの表面側封止材、裏面側封止材には耐候性向上のための紫外線吸収剤、光安定剤や封止材自身を架橋させるため過酸化物等が含まれていてもよい。
【0088】
発電セルとしては結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムセレナイドに代表される化合物半導体などの光電変換層に電極を設けた素子が挙げられる。前記素子はガラス等の基板上に形成されていてもよい。
【0089】
太陽電池モジュールの製造方法としては、表面保護部材、表面側封止材、発電セル、裏面側封止材、および本発明の太陽電池用裏面保護シートをこの順に積層し、真空ラミネートと呼ばれる真空熱圧着工程を経て一体化させることで製造することができる。真空ラミネートの圧着条件は、例えば140℃~170℃で3~10分間程度真空脱泡し、その後温度を維持したまま大気圧で10~50分間程度プレスする条件が挙げられる。加熱圧着後、必要に応じて100~200℃オーブンに入れて5~60分程度の加熱を行ってもよい。太陽電池モジュールを製造するために、(株)エヌ・ピー・シーや日清紡メカトロニクス(株)製等の真空ラミネーターを用いることができる。
【0090】
次に、太陽電池モジュールや太陽電池用裏面保護シートに求められる性能について説明する。太陽電池用裏面保護シートは他の部材と積層されて太陽電池モジュールを構成するが、太陽電池は屋外で数年~数十年使用されるため、優れた耐久性が要求される。この耐久性を評価するために様々な試験が実施され、裏面保護シートはこの耐久性試験後も劣化しないことが求められる。
【0091】
耐久性試験の例としては、例えば特定の温度と相対湿度の雰囲気に曝す耐湿熱試験や、紫外線や擬似太陽光を照射する光照射試験、これらの試験を交互に繰り返す湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験などが挙げられる。
【0092】
耐湿熱試験の例としては、太陽電池を温度85℃、相対湿度85%の雰囲気に曝すダンプヒート試験や、温度105~121℃、相対湿度100%の雰囲気に曝すプレッシャークッカー試験などが挙げられる。
【0093】
上述した耐久性試験のうち湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験は、熱や水蒸気、光などによる分解、素材の収縮による劣化が複合的に発生するため、それぞれの耐久性試験が単独で実施されるよりもより厳しい試験となる。太陽電池や裏面保護シート、およびこれらに使用される部材は、このような過酷な耐久試験後も性能を保持することが求められる。
本発明のプライマーを用いることで、充分な黒味を有し、封止材等への接着力に優れるだけでなく、このような過酷な耐久性試験を実施した後でも黒味と接着力が良好なプライマー層を形成することができる。
【実施例
【0094】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
また、実施例中および表中に記載された原料(溶剤を除く)の配合量は不揮発分換算値(質量部)であり、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0095】
(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度、水酸基価および分散剤の酸価、アミン価は下記に記載するようにして測定した。
【0096】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度の測定は、前述した示差走査熱量測定(DSC)法により求めた。
なお、Tg測定用の試料は、測定する樹脂溶液を150℃で約15分、加熱し、乾固させたものを用いた。
【0097】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)
=[{(b-a)×F×28.05}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0098】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に約1gの試料を正確に量り採り、100mlのトルエン/エタノール混合液(容量比:トルエン/エタノール=2/1)を更に加えて、それらを混合する。次に、この溶液にフェノールフタレイン試液を指示薬として加え30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
酸価は次式により求めた。酸価は、樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
但し、
Sは試料の採取量(g)、
aは0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)、
Fは0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0099】
<アミン価の測定>
ビーカーに0.1~3gの試料を0.1mgの桁まで計り取り、10mLの酢酸を加え試料が完全に溶解するまでゆっくり撹拌する。試験溶液を、自動滴定装置を用いて0.10mol/L過塩素酸酢酸溶液で600mV近辺の終点まで電位差滴定する。
試料のアミン価は次式により求めた。
アミン価(mgKOH/g)
={(V×F×5.611)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
V:試料滴定に要した0.10mol/L過塩素酸酢酸溶液の容量(ml)
F:0.10mol/L過塩素酸酢酸溶液の濃度ファクタ
【0100】
((メタ)アクリル系共重合体の製造)
[(メタ)アクリル系共重合体A1溶液]
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート10部、エチルメタクリレート10部、n-ブチルメタクリレート63部、2-エチルヘキシルメタクリレート15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート2部、アゾビスイソブチロニトリル0.25部を含むモノマー混合液を滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、重量平均分子量が72,000、水酸基価が8.6mgKOH/g、Tgが26℃、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A1溶液を得た。
【0101】
[(メタ)アクリル系共重合体A2溶液]
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート60部、n-ブチルメタクリレート10部、n-ブチルアクリレート17部、t-ブチルアクリレート9部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4部、アゾビスイソブチロニトリル0.25部を含むモノマー混合液を滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジブチルスズジラウレートを0.03部添加し、2-イソシアナトエチルメタクリレート2.3部をメチルエチルケトン2.3部に溶解したものを、40℃で撹拌しながら2時間かけて滴下した。さらに40℃で2時間撹拌した後、IRでイソシアネートピーク(2260cm-1)が消失したことを確認し、重量平均分子量が67,000、水酸基価が9.0mgKOH/g、Tgが39℃、二重結合当量が6910、不揮発分50%の側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリル系共重合体A2溶液を得た。
【0102】
[(メタ)アクリル系共重合体A3、A5~A21溶液]
(メタ)アクリル系共重合体A1溶液の合成において、モノマー組成およびアゾビスイソブチロニトリルの添加量を表1のように変更したこと以外は、(メタ)アクリル系共重合体A1溶液と同様に合成を行い、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A3、A5~A21溶液を得た。
【0103】
[(メタ)アクリル系共重合体A4溶液]
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート20部、エチルメタクリレート10部、n-ブチルメタクリレート50部、2-エチルヘキシルメタクリレート16部、グリシジルメタクリレート2部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート2部、アゾビスイソブチロニトリル0.25部を含むモノマー混合液を滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。その後、ハイドロキノンを0.03部、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。サンプリングを行い酸価が1mgKOH/g以下であることを確認し反応を終了した。次いで、冷却を行い、重量平均分子量が38,500、水酸基価が18.0mgKOH/g、Tgが31℃、二重結合当量が7280、不揮発分50%の側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリル系樹脂A4溶液を得た。
【0104】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量、水酸基価、Tgを表1に示す。
【表1】
【0105】
なお、表1中の略語は、以下の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
EMA:エチルメタクリレート
BMA:n-ブチルメタクリレート
2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
tBA:t-ブチルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
AA:アクリル酸
MOI:2-イソシアナトエチルメタクリレート
なお、表2~表7に記載の着色剤には以下のものを使用した。
【0106】
その他実施例および比較例で用いた材料を下記に示す。
(着色剤(C))
[有彩色有機顔料]
PV23;C.I.Pigment Violet 23(ジオキサジン系):トーヨーカラー(株)製「LIONOGEN VIOLET FG6140」
PB15:3;C.I.Pigment Blue 15:3(フタロシアニン系):トーヨーカラー(株)製「LIONOL BLUE FG-7330」
PY139;C.I.Pigment Yellow 139(イソインドリン系):BASF社製「パリオトールイエローD1819」
PG36;C.I.Pigment Green 36(フタロシアニン系):BASF社製「Heliogen Green L9361」
PY109;C.I.Pigment Yellow 109(イソインドリノン系):BASF社製「イルガジンイエローL1030」
PY180;C.I.Pigment Yellow 180(ベンゾイミダゾロン系):クラリアント社製「PVファーストイエローHG」
PR122;C.I.Pigment Red 122(キナクリドン系):クラリアント社製「ホスタパームピンクE-02」
PR254;C.I.Pigment Red 254(ジケトピロロピロール系):BASF社製「イルガジンレッドL3661HD」
PV19;C.I.Pigment Violet 19(キナクリドン系):BASF社製「シンカシャバイオレットL5110」
PO71;C.I.Pigment Orange 71(ジケトピロロピロール系):BASF社製「イルガジンオレンジD2905」
PO61;C.I.Pigment Orange 61(イソインドリノン系):BASF社製「イルガジンオレンジL2890HD」
PR168;C.I.Pigment Red 168(アンスラキノン系):クラリアント社製「ホスタパームスカーレットGO」
PY138;C.I.Pigment Yellow 138(キノフタロン系):BASF社製「パリオトールイエローL0960HD」
PR170;C.I.Pigment Red 170(ナフトール系):クラリアント社製「ノバパームレッドF5RK」
[有彩色無機顔料]
PB28;C.I.Pigment Blue 28(コバルトブルー):アサヒ化成工業(株)製「Cobalt Blue1024」
PR101;C.I.Pigment Red 101(酸化鉄系):BASF社製「Sicotrans Red L2715D」
PY184;C.I.Pigment Yellow 184(ビスマスバナジウムイエロー):BASF社製「Sicopal Yellow K1120FG」
PB27;C.I.Pigment Blue 27(フェロシアン化物):大日精化工業(株)「MILORI BLUE FX-6940」
PV16;C.I.Pigment Violet 16(マンガンバイオレット):二酸化マンガンをリン酸アンモニウム、リン酸カリウムとともに溶融後、水洗して可溶物を除き得られたものをPigment Violet 16(マンガンバイオレット)として使用
【0107】
(分散剤)
分散剤1:ウレタン樹脂系ブロック共重合物(酸価なし、アミン価14mgKOH/g)
分散剤2:アクリル樹脂系ブロック共重合物(酸価なし、アミン価4mgKOH/g)
分散剤3:アクリル樹脂系ブロック共重合物(酸価なし、アミン価30mgKOH/g)
分散剤4:アクリル樹脂系ブロック共重合物(酸価なし、アミン価47mgKOH/g)
分散剤5:アクリル樹脂系ブロック共重合物(酸価なし、アミン価55mgKOH/g)
分散剤6:アクリル樹脂系ブロック共重合物(酸価10mgKOH/g、アミン価57mgKOH/g)
(ポリオール(D))
C-590、C-1090、C-3090、C-5090;「クラレポリオールC-590、C-1090、C-3090、C-5090」(株)クラレ製MPD系ポリカーボネートポリオール
P-6010;「クラレポリオールP-6010」(株)クラレ製MPD系ポリエステルポリオール
(ポリイソシアネート化合物(B))
B1:住化コベストロウレタン(株)製「スミジュールBL3175」
B2:住化コベストロウレタン(株)製「スミジュールN3300」
【0108】
[実施例1]
<プライマー1>
(メタ)アクリル系共重合体、着色剤、分散剤、メチルエチルケトン(MEK)をディスパーで均一に撹拌した後、1mmφのジルコニアビーズを用いてビーズ分散することによって着色剤(C)を均一に分散した。その後、上記以外の成分であるポリイソシアネート化合物、架橋促進剤、MEK加えて均一に混合し、不揮発分比率で下記の組成となるように不揮発分20%のプライマー1を作製した。
【0109】
・着色剤(C)
C.I.Pigment Violet 23(PV23) 8.58部
トーヨーカラー(株)製「LIONOGEN VIOLET FG6140」
C.I.Pigment Blue 15:3(PB15:3) 8.58部
トーヨーカラー(株)製「LIONOL BLUE FG-7330」
C.I.Pigment Yellow 139(PY139) 12.84部
BASF社製「パリオトールイエローD1819」
・(メタ)アクリル系共重合体(A)
(メタ)アクリル系樹脂A1 61.85部
・分散剤
分散剤1:ウレタン樹脂系ブロック共重合物 3部
(酸価なし、アミン価14mgKOH/g)
・ポリイソシアネート化合物(B)
ポリイソシアネート化合物B1 3部
住化コベストロウレタン(株)製「スミジュールBL3175」
ポリイソシアネート化合物B2 1.9部
住化コベストロウレタン(株)製「スミジュールN3300」
・その他成分
架橋促進剤:ジブチルスズジラウレート 0.25部
【0110】
<太陽電池用裏面保護シート1>
続いて、得られたプライマー1をグラビアコーターで厚さ188μmの白色ポリエステルフィルムのコロナ処理面に塗布し、100℃1分で溶剤を乾燥させ、塗布量:5g/平方メートルのプライマー層を形成し、プライマー層付きポリエステルフィルムである太陽電池用裏面保護シート1を得た。
【0111】
[実施例2~73]
<プライマー2~73>
(メタ)アクリル系共重合体、着色剤、分散剤、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、架橋促進剤を表2~表8に示す組成、および配合量(不揮発分比率)となるように配合した以外は、実施例1記載のプライマー1と同様にして、不揮発分20%のプライマー1~73を作製した。
【0112】
<太陽電池用裏面保護シート2~73>
プライマー1をプライマー2~73に変更した以外は、太陽電池用裏面保護シート1と同様にして太陽電池用裏面保護シート2~73を作製した。なお、太陽電池用裏面保護シート67のみ、プライマー層の乾燥後の塗布量を15g/平方メートルとした。
【0113】
[実施例74]
<プライマー74>
(メタ)アクリル系共重合体、着色剤、分散剤、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、架橋促進剤を表2に示す組成、および配合量(不揮発分比率)となるように配合した以外は、実施例1記載のプライマー1と同様にして、不揮発分20%のプライマー74を作製した。
【0114】
<太陽電池用裏面保護シート74>
プライマー74をグラビアコーターで厚さ188μmの白色ポリエステルフィルムのコロナ処理面に塗布し、100℃1分で溶剤を乾燥させ、塗布量:5g/平方メートルのプライマー層を形成した。続いて、プライマー層の上に東洋モートン(株)製の太陽電池用裏面保護シート用ポリエステル系接着剤を塗布し、100℃1分で溶剤を乾燥させ塗布量:5g/平方メートルの接着剤層を形成した。その上に膜厚50μmの透明ポリエチレンフィルムをニップ温度60℃、圧力0.1MPa、スピード1m/minでラミネートし、60℃で7日間エージングし、太陽電池用裏面保護シート74を得た。
【0115】
[実施例75]
<プライマー75>
(メタ)アクリル系共重合体、着色剤、分散剤、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、架橋促進剤を表8に示す組成、および配合量(不揮発分比率)となるように配合した以外は、実施例74記載のプライマー74と同様にして、不揮発分20%のプライマー75を作製した。
【0116】
<太陽電池用裏面保護シート75>
プライマー74をプライマー75に変更した以外は、太陽電池用裏面保護シート74と同様にして太陽電池用裏面保護シート75を作製した。
【0117】
[比較例1~13]
<プライマー76~88>
(メタ)アクリル系共重合体、着色剤、分散剤、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、架橋促進剤を表8に示す組成、および配合量(不揮発分比率)となるように配合した以外は、実施例1記載のプライマー1と同様にして、不揮発分20%のプライマー76~88を作製した。
【0118】
<太陽電池用裏面保護シート76~88>
プライマー1をプライマー76~88に変更した以外は、太陽電池用裏面保護シート1と同様にして太陽電池用裏面保護シート76~88を作製した。なお、太陽電池用裏面保護シート85のみ、プライマー層の乾燥後の塗布量を15g/平方メートルとした。
【0119】
[評価項目および評価方法]
プライマーおよび太陽電池用裏面保護シートの評価項目および評価方法は、以下の通りである。結果を表2~表8に示す。
【0120】
<EVAに対する接着力>
以下の手順に従いEVAに対する初期の接着力と湿熱試験後、湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験後の接着力を求め、以下の基準で評価した。
得られた太陽電池用裏面保護シートのプライマー層の上にEVAフィルム(Ultra Pearl PV-45FR00S、サンビック社製)を2枚と白板ガラス板を重ね、この積層体を140℃に加熱したモジュールラミネータPVL0505S(日清紡メカトロニクス社製)の熱板の上に、白板ガラスが下になるように置き、1Torr程度に真空排気して5分間放置した。次いで、140℃を維持したまま大気圧でプレスし、15分間放置して太陽電池疑似モジュール1~3の3点作製した。
【0121】
(初期接着力)
得られた太陽電池疑似モジュール1のポリエステルフィルム面をカッターで15mm幅でEVAフィルムに到達する程度に切り、プライマー層とEVAフィルムとの初期接着力を温度25℃相対湿度50%の雰囲気中で測定した。
【0122】
(湿熱試験後の接着力)
得られた太陽電池疑似モジュール2を、恒温恒湿機を使用して、温度85℃相対湿度85%雰囲気中に2000時間曝し、湿熱試験を行った。その後、プライマー層とEVAフィルムとの接着力を上記同様に測定した。
【0123】
(湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験後、の接着力)
得られた太陽電池疑似モジュール3を準備し、温度85℃相対湿度85%雰囲気中に1000時間曝し、湿熱試験を行った。その後、岩崎電気(株)製「アイスーパーUVテスターSUV-W161」を使用し、照度100mW/cm、ブラックパネル温度63℃、湿度70%RHにて50時間紫外線照射を行った。再度、温度85℃相対湿度85%雰囲気中に1000時間曝した後、同じ条件で50時間紫外線照射し、湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験を実施した。その後、プライマー層とEVAフィルムとの接着力を上記同様に測定した。
【0124】
接着力測定には引っ張り試験機を用い、荷重速度100mm/minで180度剥離試験を行った。得られた測定値に対して、10段階で評価を行った。10点が特に良好で3点以上が実用域(40N/15mm以上)である。2点、1点は実用不可である。
【0125】
なお、実施例74、および75の太陽電池用裏面保護シートについては、透明ポリエチレンフィルム上にEVAフィルム(Ultra Pearl PV-45FR00S、サンビック社製)、白板ガラス板を重ね、この積層体を140℃に加熱したモジュールラミネータPVL0505S(日清紡メカトロニクス社製)の熱板の上に、白板ガラスが下になるように置き、1Torr程度に真空排気して5分間放置した。次いで、140℃を維持したまま大気圧でプレスし、15分間放置して太陽電池疑似モジュールを3点作製し、これを用いて太陽電池用裏面保護シートのEVAフィルムに対する初期接着力および湿熱試験後、湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験後の接着力を上述した方法と同様にして評価した。
【0126】
<黒味評価>
(サンプル作製直後の黒味)
作製直後の太陽電池疑似モジュールを太陽光にかざしながら白板ガラス側からプライマー層の黒味を目視で確認した。
評価は10段階で行った。10点が特に黒味に優れており、3点以上が実用域である。2点、1点は実用不可である。
【0127】
(湿熱試験後の黒味)
湿熱試験後の接着力を測定した太陽電池疑似モジュールを用いて、プライマー層の黒味を上記同様に評価した。
【0128】
(湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験後の黒味)
湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験後の接着力を測定した太陽電池疑似モジュールを用いて、プライマー層の黒味を上記同様に評価した。
【0129】
なお、実施例74、および75の太陽電池用裏面保護シートについては、透明ポリエチレンフィルム上にEVAフィルム(Ultra Pearl PV-45FR00S、サンビック社製)、白板ガラス板を重ね、この積層体を140℃に加熱したモジュールラミネータPVL0505S(日清紡メカトロニクス社製)の熱板の上に、白板ガラスが下になるように置き、1Torr程度に真空排気して5分間放置した。次いで、140℃を維持したまま大気圧でプレスし、15分間放置して太陽電池疑似モジュールを3点作製し、これを用いて太陽電池用裏面保護シートの初期の黒味および湿熱試験後、湿熱+紫外線照射サイクル耐久性試験後の黒味を上述した方法と同様にして評価した。
【0130】
なお、表2~8中、Mv、Mb、My、Mpは、それぞれ、着色剤(C)の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、イソインドリン系黄色顔料、その他有彩色有機顔料の含有率であり、
Mv’、Mb’、My’は、それぞれ、ジオキサジン系紫色顔料、フタロシアニン系青色顔料およびイソインドリン系黄色顔料の合計100質量%中の、ジオキサジン系紫色顔料の含有率、フタロシアニン系青色顔料の含有率、およびイソインドリン系黄色顔料の含有率である。
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
【表8】
【0138】
表2~8の結果から、実施例で得られたプライマーおよび太陽電池用裏面保護シートは、充分な黒味を有し、封止材等への接着力に優れ、過酷な耐久性試験を実施した後でも黒味と接着力が良好なプライマー層を形成できることが確認できた。


図1