(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240827BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240827BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G03G21/00 384
G03G15/20 515
G03G15/00 445
(21)【出願番号】P 2020193054
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】福江 修平
(72)【発明者】
【氏名】植木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】坂口 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-345488(JP,A)
【文献】特開2017-054042(JP,A)
【文献】特開2019-117254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータにより加熱されるローラと、
前記ローラとの間でシートを挟む無端状のベルトと、
前記ローラとの間で前記ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、
シートの搬送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の第1シートを搬送する場合には、先行するシートの搬送方向上流端から次のシートの搬送方向下流端までの間隔であるシート間隔を第1間隔としてシートを搬送し、
前記第1シートよりもカールが発生しやすい種類の第2シートを複数搬送する場合には、前記シート間隔を、前記第1間隔よりも大きい第2間隔としてシートを搬送
し、
前記第1間隔は、前記ベルトの周長よりも小さく、
前記第2間隔は、前記ベルトの周長よりも大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ニップ形成部材は、
前記ローラとの間で前記ベルトを挟む第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材を備え、
前記第1ニップ形成部材の前記ローラ側の面である第1先端面は、前記第2ニップ形成部材の前記ローラ側の面である第2先端面よりも前記ローラの近くに位置することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1ニップ形成部材は、前記第2ニップ形成部材よりも柔らかいことを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記シートの搬送方向において、前記第1ニップ形成部材は、前記第2ニップ形成部材から離れていることを特徴とする請求項
2または請求項
3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2シートは、前記第1シートよりも厚みが薄いことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2シートは、前記第1シートよりも坪量が小さいことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、ユーザによって入力されたシートの種類を示す種類情報に基づいて、前記シート間隔を設定することを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
ヒータにより加熱されるローラと、
前記ローラとの間でシートを挟む無端状のベルトと、
前記ローラとの間で前記ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、
シートの搬送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の第1シートを搬送する場合には、先行するシートの搬送方向上流端から次のシートの搬送方向下流端までの間隔であるシート間隔を第1間隔としてシートを搬送し、
前記第1シートよりもカールが発生しやすい種類の第2シートを複数搬送する場合には、前記シート間隔を、前記第1間隔よりも大きい第2間隔としてシートを搬送し、
ユーザによって入力されたシートの種類を示す種類情報に基づいて、前記シート間隔を設定可能であり、
前記種類情報が前記第2シートを示す情報である場合には、前記シート間隔を前記第2間隔にするか否かを選択させる情報を報知し、
前記シート間隔を前記第2間隔にすることを示す情報がユーザによって入力された場合には、前記シート間隔を前記第2間隔に設定し、
前記シート間隔を前記第2間隔にしないことを示す情報がユーザによって入力された場合には、前記シート間隔を前記第1間隔に設定することを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、
両面印刷を実行可能であり、
複数の第1シートを両面印刷する場合には、両面印刷中における最小のシート間隔を、前記第1間隔とし、
複数の第2シートを両面印刷する場合には、両面印刷中における最小のシート間隔を、前記第2間隔とすることを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
ヒータにより加熱されるローラと、
前記ローラとの間でシートを挟む無端状のベルトと、
前記ローラとの間で前記ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、
シートの搬送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の第1シートを搬送する場合には、先行するシートの搬送方向上流端から次のシートの搬送方向下流端までの間隔であるシート間隔を第1間隔としてシートを搬送し、
前記第1シートよりもカールが発生しやすい種類の第2シートを複数搬送する場合には、前記シート間隔を、前記第1間隔よりも大きい第2間隔としてシートを搬送し、
前記シート間隔を前記第2間隔とする場合には、前記シート間隔を前記第1間隔とする場合よりも、前記ヒータの温度を低くすることを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項11】
前記第1間隔は、前記ベルトの周長よりも小さく、
前記第2間隔は、前記ベルトの周長よりも大きいことを特徴とする請求項
8または請求項10に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにトナー像を定着させる定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、加熱ローラと支持ローラにより張架された定着ベルトと、支持ローラとの間で定着ベルトを挟む加圧ローラとを備え、湿度や温度に基づいてシートの搬送間隔を変更することで、シートのカールを抑制するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱ローラとの間でシートを挟む加圧ユニットが、無端状のベルトと、加熱ローラとの間でベルトを挟むパッドとを備える構成においては、加圧ユニットの熱容量が小さいため、複数枚のシートを連続印刷したときに、加圧ユニットの温度が低下しやすい。そのため、連続印刷時には加熱ローラと加圧ユニットとの温度差が大きくなって、シートのカールが大きくなりやすく、シートの種類によっては、加熱ローラに巻き付いてしまうといった問題が生じる。このような問題は、温度や湿度に関わらず、発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、シートの種類によらずにカールを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、ヒータにより加熱されるローラと、前記ローラとの間でシートを挟む無端状のベルトと、前記ローラとの間で前記ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、シートの搬送を制御する制御部と、を備える。
前記制御部は、複数の第1シートを搬送する場合には、先行するシートの搬送方向上流端から次のシートの搬送方向下流端までの間隔であるシート間隔を第1間隔としてシートを搬送し、前記第1シートよりもカールが発生しやすい種類の第2シートを複数搬送する場合には、前記シート間隔を、前記第1間隔よりも大きい第2間隔としてシートを搬送する。
【0007】
この構成によれば、第1シートよりもカールが発生しやすい第2シートを複数搬送する場合には、複数の第1シートを搬送するときよりもシート間隔を大きな第2間隔とすることで、シートがニップ部を通過しない時間が長くなって、ローラとベルトの温度差が小さくなるので、第2シートがカールするのを抑制することができる。また、第1シートを搬送する場合には、第2シートよりもカールが発生しにくいため、シート間隔を小さな第1間隔としても、第1シートがカールするのを抑制することができる。したがって、シートの種類によらずに、シートのカールを抑制することができる。
【0008】
また、前記第1間隔は、前記ベルトの周長よりも小さく、前記第2間隔は、前記ベルトの周長よりも大きくてもよい。
【0009】
この構成によれば、先行する第2シートがニップ部から排出されてから、次の第2シートがニップ部に到達するまでの間に、ベルトが1回転以上回転するので、次の第2シートがニップ部に到達する前に、ベルト全体の温度を確実に上げることができる。
【0010】
また、前記ニップ形成部材は、前記ローラとの間で前記ベルトを挟む第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材を備え、前記第1ニップ形成部材の前記ローラ側の面である第1先端面は、前記第2ニップ形成部材の前記ローラ側の面である第2先端面よりも前記ローラの近くに位置していてもよい。
【0011】
この構成によれば、ローラとニップ形成部材の位置関係を変えるだけで、ローラと第1ニップ形成部材のみでベルトを挟むモードと、ローラと第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材とでベルトを挟むモードとを切り替えることができる。
【0012】
また、前記第1ニップ形成部材は、前記第2ニップ形成部材よりも柔らかくてもよい。
【0013】
この構成によれば、第1ニップ形成部材を柔らかくすることで、多様な種類のシートに対してトナーを良好に定着することができ、固い方の第2ニップ形成部材でシートを圧接することで、シート上のトナーに光沢を出すことができる。
【0014】
また、前記シートの搬送方向において、前記第1ニップ形成部材は、前記第2ニップ形成部材から離れていてもよい。
【0015】
この構成によれば、各ニップ形成部材が変形したときに互いに接触するのを抑制することができるので、各ニップ形成部材同士の接触によりニップ部の形状やニップ圧に影響が出るのを抑制することができる。
【0016】
また、前記第2シートは、前記第1シートよりも厚みが薄くてもよい。
【0017】
この構成によれば、カールが発生しやすい厚みの薄い第2シートのカールを、良好に抑制することができる。
【0018】
また、前記第2シートは、前記第1シートよりも坪量が小さくてもよい。
【0019】
この構成によれば、カールが発生しやすい坪量の小さな第2シートのカールを、良好に抑制することができる。
【0020】
また、前記制御部は、ユーザによって入力されたシートの種類を示す種類情報に基づいて、前記シート間隔を設定してもよい。
【0021】
この構成によれば、ユーザが入力したシートの種類に基づいて、シートのカールを抑制することができる。
【0022】
また、前記制御部は、前記種類情報が前記第2シートを示す情報である場合には、前記シート間隔を前記第2間隔にするか否かを選択させる情報を報知し、前記シート間隔を前記第2間隔にすることを示す情報がユーザによって入力された場合には、前記シート間隔を前記第2間隔に設定し、前記シート間隔を前記第2間隔にしないことを示す情報がユーザによって入力された場合には、前記シート間隔を前記第1間隔に設定してもよい。
【0023】
この構成によれば、第2シートを印刷する際に、ユーザがシート間隔を広げるか否かを選択することができるので、ユーザがカール抑制を優先したい場合にはシート間隔を広げることができ、ユーザが印刷速度を優先したい場合にはシート間隔を広げないままにすることができる。
【0024】
また、前記制御部は、両面印刷を実行可能であり、複数の第1シートを両面印刷する場合には、両面印刷中における最小のシート間隔を、前記第1間隔とし、複数の第2シートを両面印刷する場合には、両面印刷中における最小のシート間隔を、前記第2間隔としてもよい。
【0025】
この構成によれば、両面印刷時にもシートのカールを抑制することができる。
【0026】
また、前記制御部は、前記シート間隔を前記第2間隔とする場合には、前記シート間隔を前記第1間隔とする場合よりも、前記ヒータの温度を低くしてもよい。
【0027】
この構成によれば、第2シートの印刷時にヒータの温度を低くすることで、第2シートがカールするのをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、シートの種類によらずにカールを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタを示す断面図である。
【
図4】ニップ状態が強ニップ状態であるときの、切替機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
【
図5】ニップ状態が中ニップ状態であるときの、切替機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
【
図6】ニップ状態が弱ニップ状態であるときの、切替機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
【
図7】片面連続印刷処理を示すフローチャートである。
【
図8】両面連続印刷処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、本体筐体2と、当該本体筐体2の内部に配置された供給部3、画像形成部4、定着装置80、搬送部9および制御部100とを備えている。
【0031】
本体筐体2は、上面に排出トレイ21を有している。
【0032】
供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、シートSを収容する供給トレイ31と、供給トレイ31内のシートSを画像形成部4に供給する供給機構32とを備えている。
【0033】
画像形成部4は、シートSにトナー像を転写して画像を形成する機能を有し、露光装置5と、4つのプロセスカートリッジ6と、転写ユニット7とを備えている。
【0034】
露光装置5は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しない光源やポリゴンミラーなどを備えている。露光装置5は、光ビームを感光体ドラム61の表面で高速走査することで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0035】
プロセスカートリッジ6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、現像ローラ63とを備えている。4つのプロセスカートリッジ6内には、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナーが収容されている。
【0036】
転写ユニット7は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを備えている。搬送ベルト73は、無端状のベルトであり、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に張設されている。搬送ベルト73の内側には、転写ローラ74が対応する感光体ドラム61との間で搬送ベルト73を挟持するように配置されている。
【0037】
帯電器62は、感光体ドラム61の表面を帯電する。その後、露光装置5は、感光体ドラム61の表面を露光して、感光体ドラム61の表面に静電潜像を形成する。
【0038】
現像ローラ63は、感光体ドラム61上に形成された静電潜像にトナーを供給する。これにより、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、搬送ベルト73によってシートSが、感光体ドラム61と転写ローラ74の間に搬送されると、感光体ドラム61上のトナー像がシートSに転写される。
【0039】
定着装置80は、シートSにトナー像を熱定着させる装置である。定着装置80の詳細については後述する。
【0040】
搬送部9は、定着装置80から排出されたシートSを本体筐体2外または再び画像形成部4に向けて搬送するように構成されている。搬送部9は、第1搬送経路91と、第2搬送経路92と、再搬送経路93と、第1搬送ローラ94と、第2搬送ローラ95と、第1スイッチバックローラSR1と、第2スイッチバックローラSR2と、複数の再搬送ローラ96と、回動可能な第1フラッパFL1および第2フラッパFL2とを備えている。
【0041】
第1搬送経路91は、定着装置80から排出されたシートを排出トレイ21に向けて案内する経路である。第2搬送経路92は、定着装置80から排出されたシートを、第1搬送経路91とは異なるルートで排出トレイ21に向けて案内する経路である。再搬送経路93は、後述する第1スイッチバックローラSR1等により本体筐体2内に引き込まれたシートSを、画像形成部4の上流側の供給機構32に案内する経路である。再搬送ローラ96は、再搬送経路93内のシートSを供給機構32に向けて搬送するローラであり、再搬送経路93に設けられている。
【0042】
第1搬送ローラ94は、定着装置80に設けられている。第1搬送ローラ94は、トナー像が熱定着されたシートSを、第2フラッパFL2に向けて搬送する。
【0043】
第2搬送ローラ95、第1スイッチバックローラSR1および第2スイッチバックローラSR2は、正逆回転可能なローラである。第2搬送ローラ95、第1スイッチバックローラSR1および第2スイッチバックローラSR2は、正回転時に本体筐体2の外、詳しくは排出トレイ21に向けてシートSを搬送し、逆回転時に本体筐体2内にシートSを引き込む。
【0044】
第2搬送ローラ95および第1スイッチバックローラSR1は、第1搬送経路91に設けられている。第1スイッチバックローラSR1は、第2搬送ローラ95よりも排出トレイ21の近くに配置されている。第2スイッチバックローラSR2は、第2搬送経路92に設けられている。
【0045】
搬送部9では、第1フラッパFL1と第2フラッパFL2の位置が適宜切り替えられることで、シートSを定着装置80から第1搬送経路91または第2搬送経路92に向けて搬送したり、シートSを第1搬送経路91または第2搬送経路92から再搬送経路93に搬送することが可能となっている。
【0046】
図2に示すように、定着装置80は、ヒータ110と、第1定着部材81と、第2定着部材82とを備えている。第1定着部材81は、ローラ120を有している。
【0047】
ヒータ110は、ハロゲンランプであり、通電によって発光するとともに発熱し、輻射熱によってローラ120を加熱する。ヒータ110は、ローラ120の回転軸線に沿ってローラ120の内側を通るように配置されている。ここで、ローラ120の回転軸線に沿う方向は、第1定着部材81の軸方向であり、以下、単に「軸方向」とも称する。
【0048】
ローラ120は、筒状のローラであり、ヒータ110によって加熱される。ローラ120は、金属などからなる素管121と、素管121の外周面を覆う弾性層122とを有している。弾性層122は、シリコンゴムなどのゴムからなる。
【0049】
ローラ120の軸方向における両端部は、後述するフレームFL、詳しくはサイドフレーム83(
図3参照)に回転可能に支持されており、モータから駆動力が入力されることで
図2の反時計回りに回転駆動する。
【0050】
第2定着部材82は、第1定着部材81に対して近接・離間する方向である所定方向に直線的に移動可能となっている。所定方向は、軸方向に直交している。第2定着部材82は、後述する切替機構300(
図3参照)によって第1定着部材81に向けて付勢されている。
【0051】
また、第2定着部材82は、無端状のベルト130と、ニップ形成部材Nと、ホルダ140と、ステイ200と、ベルトガイドGと、摺動シート150とを有している。
【0052】
ベルト130は、シートSにトナー像を定着させる際に、ローラ120との間でシートSを挟む部材である。ベルト130は、長尺筒状の部材であり、可撓性を有している。図示は省略するが、ベルト130は、金属や樹脂などからなる基材と、基材の外周面を覆う離型層とを有している。ベルト130は、ローラ120が回転したときにローラ120またはシートSとの摩擦によって
図2の時計回りに従動回転する。ベルト130の内周面には、グリスなどの潤滑剤が付けられている。ベルト130の内側には、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150が配置されている。
【0053】
ニップ形成部材Nは、ローラ120との間でベルト130を挟んでニップ部NPを形成する部材である。ニップ形成部材Nは、第1ニップ形成部材N1と、第2ニップ形成部材N2とを備えている。
【0054】
第1ニップ形成部材N1は、第1パッドP1と、第1固定板B1とを有している。
第1パッドP1は、直方体状の部材である。第1パッドP1は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第1パッドP1は、ローラ120との間でベルト130を挟んで上流ニップ部NP1を形成する。
【0055】
なお、以下の説明では、上流ニップ部NP1および後で詳述するニップ部NPにおけるベルト130の移動方向を単に「移動方向」という。なお、本実施形態において、移動方向は、ローラ120の外周面に沿った方向であるが、この方向は、おおよそ所定方向と軸方向に直交する方向に沿った方向であるため、所定方向と軸方向に直交する方向として図示することとする。なお、移動方向は、ニップ部NPでのシートSの搬送方向と同じ方向である。また、以下の説明では、移動方向の上流、下流を、単に「上流、下流」とも称する。
【0056】
第1パッドP1は、第1固定板B1のローラ120側の面に固定されている。第1パッドP1は、第1固定板B1の上流端よりも移動方向の上流側に僅かに突出している。これにより、第1パッドP1はホルダ140と上流側で接触する。
【0057】
第1固定板B1は、第1パッドP1よりも硬い部材、例えば金属などからなる。
【0058】
第2ニップ形成部材N2は、第1ニップ形成部材N1に対して移動方向の下流側に間隔を空けて配置されている。つまり、第2ニップ形成部材N2は、シートSの搬送方向において、第1ニップ形成部材N1から離れている。第2ニップ形成部材N2は、第2パッドP2と、第2固定板B2とを有している。
【0059】
第2パッドP2は、直方体状の部材である。第2パッドP2は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第2パッドP2は、ローラ120との間でベルト130を挟んで下流ニップ部NP2を形成する。第2パッドP2は、移動方向において、第1パッドP1から離れている。
【0060】
このため、上流ニップ部NP1と下流ニップ部NP2との間には、第2定着部材82からの圧力が直接作用しない中間ニップ部NP3が存在する。この中間ニップ部NP3では、ベルト130はローラ120に接触するものの、ローラ120との間でベルト130を挟む部材が存在しないため、圧力はほとんど加わらない。従って、シートSは、ローラ120によって加熱されつつ、ほぼ加圧されることなく中間ニップ部NP3を通過する。本実施形態では、上流ニップ部NP1の上流端から下流ニップ部NP2の下流端までの領域、即ち、ベルト130の外周面とローラ120とが接触する全ての領域をニップ部NPと称する。つまり、本実施形態では、ニップ部NPは、第1パッドP1および第2パッドP2からの押圧力が加わらない部分を含む。
【0061】
第2パッドP2は、第2固定板B2のローラ120側の面に固定されている。第2パッドP2は、第2固定板B2の下流端よりも移動方向の下流側に僅かに突出している。これにより、第2パッドP2はホルダ140と下流側で接触する。
図6に示すように、所定方向において、第2パッドP2の寸法は、第1パッドP1の寸法よりも小さい。
【0062】
第2固定板B2は、第2パッドP2よりも硬い部材、例えば金属などからなる。所定方向において、第2固定板B2の寸法は、第1固定板B1と同じである。
【0063】
なお、第1パッドP1の硬さは、ローラ120の弾性層122の硬さよりも大きい。また、第2パッドP2の硬さは、第1パッドP1の硬さよりも大きい。つまり、第1パッドP1は、第2パッドP2よりも柔らかい。
【0064】
ここで、硬さとは、ISO7619-1に規定されているデュロメータ硬さのことである。デュロメータ硬さは,規定した条件下で試験片に規定の押針を押し込んだときの押針の押込み深さから得られる値である。例えば、弾性層122のデュロメータ硬さが5の場合、第1パッドP1のデュロメータ硬さは6~10、第2パッドP2のデュロメータ硬さは70~90であることが好ましい。
【0065】
なお、シリコンゴムの硬さは、製造時に添加する添加物(シリカ系充填剤やカーボン系充填剤)の比率を変えることで調整することができる。具体的には、添加物の比率を大きくすると、ゴムの硬さが大きくなる。また、シリコン系のオイルを添加することで、硬さを小さくすることもできる。ゴムの製法としては、液状射出成型や押出成型を採用することができる。一般的には、低硬度ゴムは、液状射出成型が適しており、高硬度ゴムは、押出成形が適している。
【0066】
ホルダ140は、ニップ形成部材Nを保持する部材である。つまり、第1ニップ形成部材N1と第2ニップ形成部材N2は、1つのホルダ140によって支持されている。ホルダ140は、ステイ200で支持されている。
【0067】
ホルダ140は、第1ニップ形成部材N1の第1定着部材81とは反対の面を支持する第1支持面141Aと、第2ニップ形成部材N2の第1定着部材81とは反対の面を支持する第2支持面141Bとを有する。第1支持面141Aと第2支持面141Bは、所定方向において同じ位置に位置する。
【0068】
これにより、
図6に示すように、第1ニップ形成部材N1が第2ニップ形成部材N2よりも第1定着部材81側に突出する。言い換えると、第1ニップ形成部材N1の第1定着部材81側の面である第1先端面N11は、所定方向において、第2ニップ形成部材N2の第1定着部材81側の面である第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。詳しくは、各ニップ形成部材N1,N2が第1定着部材81に圧接されていない状態において、第1先端面N11は第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。
【0069】
ここで、
図6の状態は、第1ニップ形成部材N1の第1先端面N11の一部のみが第1定着部材81に圧接された状態であり、第1先端面N11の他部と第2先端面N21には圧力は、加わっていない。そのため、第1先端面N11の他部と第2先端面N21の位置は、各ニップ形成部材N1,N2が第1定着部材81に圧接されていない状態のときと同じ位置となる。つまり、第1先端面N11の他部は、第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。言い換えると、所定方向において、第1先端面N11の圧力が加わっていない部分と第1定着部材81の外周面との最短距離D1は、圧力が加わっていない第2先端面N21と第1定着部材81の外周面との最短距離D2よりも小さい。
【0070】
ステイ200は、ホルダ140に対してニップ形成部材Nと反対側に位置してホルダ140を支持する部材である。ステイ200は、金属などからなる。ステイ200の軸方向の端部には、樹脂などからなる緩衝部材BF(
図4参照)が取り付けられている。緩衝部材BFは、金属製のステイ200と、後述する金属製のアーム310(
図4参照)とが擦れ合うのを抑制するための部材である。
【0071】
ベルトガイドGは、ベルト130の内周面131をガイドする部材である。ベルトガイドGは、耐熱性を有する樹脂などからなる。ベルトガイドGは、上流ガイドG1と、下流ガイドG2とを有している。
【0072】
摺動シート150は、各パッドP1,P2とベルト130との摩擦抵抗を低減するための矩形のシートである。摺動シート150は、ニップ部NPにおいて、ベルト130の内周面131と各パッドP1,P2との間で挟まれている。摺動シート150は、弾性変形可能な材料からなる。なお、摺動シート150の材料は、どのようなものであってもよいが、本実施形態では、ポリイミドを含有した樹脂シートを採用している。
【0073】
図3に示すように、定着装置80は、フレームFLと、切替機構300とをさらに備えている。フレームFLは、第1定着部材81および第2定着部材82を支持するフレームであり、金属などからなる。フレームFLは、第1定着部材81および第2定着部材82に対して軸方向の両側に配置されるサイドフレーム83およびブラケット84と、各サイドフレーム83に接続される接続フレーム85とを備えている。
【0074】
サイドフレーム83は、第1定着部材81および第2定着部材82を支持するフレームである。サイドフレーム83は、後述する第1バネ320の一端部と係合するバネ係合部83Aを有している。
【0075】
ブラケット84は、第2定着部材82を所定方向に移動可能に支持する部材であり、サイドフレーム83に固定されている。詳しくは、軸方向の両側に配置されるブラケット84は、ホルダ140の軸方向の端部142を所定方向に移動可能に支持する第1長孔84Aを有している。第1長孔84Aは、所定方向に延びる長孔である。
【0076】
ここで、第1長孔84Aは、ガイドとしての溝に相当する。ホルダ140の軸方向の各端部142は、軸方向の両側の第1長孔84Aに挿入され、第2定着部材82は所定方向に移動可能に支持される。なお、ガイドとしての溝としては、底付きの溝であってもよい。
【0077】
切替機構300は、制御部100によって駆動され、第1定着部材81および第2定着部材82のニップ状態を、強ニップ状態と、強ニップ状態よりもニップ圧が低い中ニップ状態と、中ニップ状態よりもニップ圧が低い弱ニップ状態とに切替可能な機構である。ここで、強ニップ状態、中ニップ状態および弱ニップ状態では、いずれの状態でも、各パッドP1,P2の少なくとも一方と第1定着部材81との間でベルト130が挟まれている。
【0078】
図4(a)に示すように、切替機構300は、アーム310と、第1バネ320と、第2バネ330と、カム340とを備えている。アーム310、第1バネ320、第2バネ330およびカム340は、フレームFLの軸方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。
【0079】
アーム310は、緩衝部材BFを介してステイ200を第1定着部材81に向けて押圧するための部材である。アーム310は、第2定着部材82を支持するとともに、サイドフレーム83に回動可能に支持されている。
【0080】
アーム310は、アーム本体311と、カムフォロア350とを有している。アーム本体311は、金属などからなるL形状の板状部材である。
【0081】
サイドフレーム83は、アーム本体311を回動可能に支持するボス83Xを有している。アーム本体311は、サイドフレーム83のボス83Xに回動可能に支持される一端部311Aと、第1バネ320が連結される他端部311Bと、第2定着部材82を支持する係合穴311Cとを有している。係合穴311Cは、一端部311Aと他端部311Bの間に配置され、緩衝部材BFと係合している。
【0082】
また、アーム本体311は、カム340に向けて延びるガイド突起312をさらに有している。ガイド突起312は、カムフォロア350を移動可能に支持している。
【0083】
カムフォロア350は、カム340に接触可能となっている。カムフォロア350は、樹脂などからなり、ガイド突起312に嵌合される筒状部351と、筒状部351の一端に設けられる接触部352と、筒状部351の他端に設けられるフランジ部353とを有している。
【0084】
筒状部351は、ガイド突起312によって、当該ガイド突起312の延びる方向に移動可能に支持されている。接触部352は、筒状部351のカム340側の端部の開口を塞ぐ壁であり、カム340とガイド突起312の先端の間に配置されている。フランジ部353は、筒状部351の他端から、カムフォロア350の移動方向に直交する方向に突出している。
【0085】
そして、筒状部351とアーム本体311の間には、第2バネ330が配置されている。これにより、アーム本体311は、第1バネ320によって付勢されるとともに、第2バネ330によって付勢可能となっている。
【0086】
第1バネ320は、第2定着部材82に対して第1付勢力を付与することで、ニップ部NPに荷重を付与するバネである。詳しくは、第1バネ320は、アーム本体311を介して第2定着部材82に対して第1付勢力を付与している。第1バネ320は、金属などからなる引張コイルバネであり、一端がサイドフレーム83のバネ係合部83Aに連結され、他端がアーム本体311の他端部311Bに連結されている。
【0087】
第2バネ330は、第2定着部材82に対して第1付勢力とは逆向きの第2付勢力を付与可能なバネである。詳しくは、第2バネ330は、アーム本体311を介して第2定着部材82に対して第2付勢力を付与可能となっている。第2バネ330は、金属などからなる圧縮コイルバネであり、圧縮コイルバネで囲まれる空間内にガイド突起312が挿入された状態で、筒状部351とアーム本体311の間に配置されている。
【0088】
カム340は、カムフォロア350を介してアーム310を押圧することで、第2定着部材82を所定方向に移動させる部材である。また、カム340は、第2バネ330の伸縮状態を、第2付勢力が第2定着部材82に対して付与されない第1伸縮状態と、第2付勢力が第2定着部材82に対して付与される第2伸縮状態と、第2伸縮状態よりも変形した第3伸縮状態とに変更可能とする機能も有する。カム340は、制御部100で制御されることで、
図4(a)に示す第1カム位置と、
図5(a)に示す第2カム位置と、
図6(a)に示す第3カム位置との間で回動可能となっている。
【0089】
カム340は、樹脂などからなり、第1部位341と、第2部位342と、第3部位343とを有している。第1部位341、第2部位342および第3部位343は、カム340の外周面上に位置している。
【0090】
第1部位341は、カム340が第1カム位置に位置するときに、カムフォロア350に最も近い部位である。
図4(a)に示すように、カム340が第1カム位置に位置するときに、第1部位341は、カムフォロア350から離れている。
【0091】
第2部位342は、カム340が第2カム位置に位置するときに、カムフォロア350に接触する部位である。より詳しくは、第2部位342は、
図5(a)に示すように、カム340が第1カム位置から図示時計回りに約90度回動した際にカムフォロア350と接触する部位である。第2部位342からカム340の回動中心までの距離は、第1部位341からカム340の回動中心までの距離よりも大きい。
【0092】
第3部位343は、カム340が第3カム位置に位置するときに、カムフォロア350に接触する部位である。より詳しくは、第3部位343は、
図6(a)に示すように、カム340が第1カム位置から図示時計回りに約270度回動した部位、言い換えると、第2カム位置から図示時計回りに約180度回動した際に、カムフォロア350と接触する部位である。第3部位343からカム340の回動中心までの距離は、第2部位342からカム340の回動中心までの距離よりも大きい。
【0093】
カム340が第1カム位置に位置するときには、カム340がカムフォロア350から離れていることにより、第2バネ330の伸縮状態は第1伸縮状態となる。このようにカム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、アーム本体311は、
図4(a)に示す第1姿勢となっている。
【0094】
詳しくは、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、カム340がカムフォロア350から離れているため、第2バネ330の第2付勢力は、アーム本体311を介して第2定着部材82に付与されず、第1バネ320の第1付勢力のみがアーム本体311を介して第2定着部材82の各パッドP1,P2に付与されている。このように第1バネ320によって第2定着部材82に対して第1付勢力が付与され、且つ、第2バネ330によって第2定着部材82に対して第2付勢力が付与されていないときには、ニップ状態は、強ニップ状態であり、ニップ圧は、第1ニップ圧となる。
【0095】
カム340は、
図4(a)に示す第1カム位置から
図5(a)に示す第2カム位置に回動すると、カムフォロア350と接触して、カムフォロア350をアーム本体311に対して所定量移動させる。これにより、カム340が第2カム位置に位置するときには、第2バネ330の伸縮状態は、第1伸縮状態よりも変形した第2伸縮状態となる。
【0096】
カム340が第2カム位置に位置するときには、カム340でカムフォロア350が支持されるため、第2バネ330の第2付勢力がアーム本体311を介して第2定着部材82に第1付勢力とは逆向きに付与される。そのため、第1バネ320によって第2定着部材82に対して第1付勢力が付与され、且つ、第2バネ330によって第2定着部材82に対して第2付勢力が付与されているときには、ニップ状態は、中ニップ状態であり、ニップ圧が第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧となる。
【0097】
なお、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第2伸縮状態にしているときには、アーム本体311は、前述した第1姿勢のままとなっている。ここで、第2パッドP2は、ローラ120に対して押し付けられている状態、即ち、第2パッドP2に対して荷重が加わっている状態では、その荷重の大小に関わらず、ほぼ変形しない。そして、第2パッドP2がほぼ変形しないため、第2パッドP2を支持するステイ200、さらにはステイ200を支持するアーム310の姿勢も、荷重の大小によらずほぼ一定に保たれる。また、第1パッドP1の位置は、第2パッドP2の位置で決まるため、第2パッドP2がほぼ変形せず、その位置も変形しない状態では、第1パッドP1の位置も変わらない。従って、強ニップ(第1ニップ圧)と中ニップ(第2ニップ圧)では、どちらの場合でも全ニップ幅(上流ニップ部NP1の入口から下流ニップ部NP2の出口までの長さ)は変わらず、アーム310の姿勢もほぼ一定に保たれる。
【0098】
このように第2バネ330の伸縮状態が第1伸縮状態および第2伸縮状態のいずれの状態であっても、アーム本体311の姿勢が第1姿勢となるため、
図4(b)および
図5(b)に示すように、ニップ圧が第1ニップ圧であるときと第2ニップ圧であるときの両方の状態において、第1パッドP1および第2パッドP2は、ローラ120との間でベルト130を挟んでいる。
【0099】
カム340は、
図5(a)に示す第2カム位置から
図6(a)に示す第3カム位置に回動する場合には、カムフォロア350をアーム本体311に対してさらに移動させた後、カムフォロア350を介してアーム本体311を押圧する。これにより、第2バネ330の伸縮状態が第2伸縮状態よりも変形した第3伸縮状態となるとともに、アーム本体311が第1姿勢から当該第1姿勢と異なる第2姿勢に回動する。
【0100】
詳しくは、カム340を第2カム位置から第3カム位置に回動させていく過程における最初の段階では、カムフォロア350の接触部352がガイド突起312の先端に近づくように、カムフォロア350がアーム本体311に対して移動する。接触部352がガイド突起312の先端に接触すると、第2バネ330の伸縮状態が第3伸縮状態となる。このようにカム340が第2バネ330の伸縮状態を第3伸縮状態にしているときには、カムフォロア350の一部である接触部352がカム340とガイド突起312の間に挟まれる。その後、カム340をさらに回動させると、カム340が接触部352を介してガイド突起312を押圧するので、アーム本体311が第1バネ320の付勢力に抗して第1姿勢から第2姿勢に回動する。
【0101】
これにより、アーム本体311が第2姿勢であるときには、第2定着部材82は、アーム本体311が第1姿勢であるときの位置(
図5(b)の位置)よりもローラ120から離れた位置(
図6(b)の位置)に配置される。このように第2定着部材82のローラ120に対する位置が変わることで、アーム本体311が第2姿勢であるときには、
図6(b)に示すように、ニップ部NPの幅が第1姿勢のときよりも小さくなるとともに、ニップ圧が第2ニップ圧よりも小さな第3ニップ圧となる。つまり、カム340によってアーム310の姿勢が変わるため、ニップ圧及びニップ幅が変わるようになっている。詳しくは、アーム310が第2姿勢であるときには、ニップ状態は、第1パッドP1とローラ120との間でのみベルト130が挟まれ、第2パッドP2とローラ120との間ではベルト130を挟まない弱ニップ状態となっている。これにより、アーム310が第2姿勢であるときには、上流ニップ圧と上流ニップ幅が小さくなり、下流ニップ圧は無くなる。また、弱ニップ状態では、第1バネ320の付勢力がアーム本体311およびカムフォロア350の接触部352を介してカム340で受けられるので、第1パッドP1には第1バネ320の付勢力が加わらないようになっている。つまり、弱ニップ状態では、第1パッドP1の変形のみでニップ部NPが形成されている。
【0102】
制御部100は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えている。制御部100は、印刷するシートSの種類に応じてシート間隔を設定して、シートSの搬送を制御する機能を有している。ここで、シート間隔は、先行するシートSの搬送方向上流端から次のシートSの搬送方向下流端までの間隔である。
【0103】
詳しくは、制御部100は、複数の第1シートを搬送する場合には、シート間隔を第1間隔としてシートを搬送する。より詳しくは、制御部100は、複数の第1シートを搬送する場合には、供給トレイ31から複数のシートを順次ピックアップする時間間隔を、第1間隔に対応した第1時間間隔に設定してピックアップを順次行うことで、複数の第1シートをそれぞれ第1間隔ずつ離して搬送する。
【0104】
また、制御部100は、第1シートよりもカールが発生しやすい種類の第2シートを複数搬送する場合には、シート間隔を、第1間隔よりも大きい第2間隔としてシートを搬送する。詳しくは、制御部100は、複数のシートを順次ピックアップする時間間隔を第2間隔に対応した第2時間間隔に設定してピックアップを順次行うことで、複数の第2シートをそれぞれ第2間隔ずつ離して搬送する。
【0105】
第1間隔は、ベルト130の周長よりも小さい間隔に設定されている。第2間隔は、ベルト130の周長よりも大きい間隔に設定されている。
【0106】
第2シートは、例えば、第1シートよりも厚みが薄いシートとすることができる。また、第2シートは、例えば、第1シートよりも坪量が小さいシートとすることができる。
【0107】
また、制御部100は、ユーザによって入力されたシートの種類を示す種類情報に基づいて、シート間隔を設定する機能を有している。本実施形態では、本体筐体2の外表面に設けられる操作パネルや操作ボタンをユーザが操作することで、種類情報が制御部100に入力されることとする。具体的には、ユーザは、データを記憶したUSBメモリを本体筐体2に接続してUSBメモリ内のデータを印刷する場合に、操作パネルや操作ボタンを操作して、種類情報などを入力する。
【0108】
制御部100は、種類情報が第2シートを示す情報である場合には、シート間隔を第2間隔にするか否かを選択させる情報を操作パネルを介してユーザに報知する機能を有している。そして、制御部100は、シート間隔を第2間隔にすることを示す情報がユーザによって入力された場合には、シート間隔を第2間隔に設定し、シート間隔を第2間隔にしないことを示す情報がユーザによって入力された場合には、シート間隔を第1間隔に設定するように構成されている。
【0109】
また、制御部100は、両面印刷を実行可能であり、複数の第1シートを両面印刷する場合には、両面印刷中における最小のシート間隔を第1間隔とし、複数の第2シートを両面印刷する場合には、両面印刷中における最小のシート間隔を第2間隔とする機能を有している。具体的には、制御部100は、印刷指令に含まれる、その印刷指令において印刷するページ数を示す情報に基づいて、印刷するページの順序を決定する。なお、ページの順序の決定は、ページ数とページの順序の関係を示すテーブルに基づいて実行される。例えば、制御部100は、ページ数が4ページである場合には、ページの順序を、2ページ、4ページ、1ページ、3ページの順とする。
【0110】
そして、制御部100は、決定したページの順序とシート間隔とに基づいて、最小のシート間隔が、設定したシート間隔となるように、供給トレイ31からのシートのピックアップのタイミングや、再搬送ローラ96の駆動を停止して再搬送経路93内でシートを留めておく時間や、第1搬送経路91と第2搬送経路92のどちらにシートを搬送するかを決定する。具体的には、例えば、制御部100は、複数枚のシートを両面印刷する場合には、1枚目のシートの搬送方向上流端から2枚目のシートの搬送方向下流端までの間隔を、設定したシート間隔とする。即ち、両面印刷中における最小のシート間隔は、先行するシートの搬送方向上流端から次のシートの搬送方向下流端までの間隔である。
【0111】
また、制御部100は、シート間隔を第2間隔とする場合には、シート間隔を第1間隔とする場合よりも、ヒータ110の温度を低くする機能も有している。
【0112】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。
制御部100は、複数枚のシートの片面に印刷を実行する旨の印刷指令を受けた場合には、
図7に示す片面連続印刷処理を実行する。片面連続印刷処理において、制御部100は、まず、印刷指令に基づいて、印刷するシートの種類が第2シートであるか否かを判定する(S1)。
【0113】
ステップS1において第2シートでないと判定した場合には(No)、制御部100は、シート間隔を第1間隔に設定して(S7)、ヒータ110の目標温度を第1目標温度に設定する(S8)。ステップS8の後、制御部100は、シートに印刷を行う印刷処理を実行して(S6)、本処理を終了する。詳しくは、ステップS7,S8経由でステップS6を実行する場合には、制御部100は、ヒータ110の温度が第1目標温度となるようにヒータ110に流す電流を制御するとともに、複数のシートをそれぞれ第1間隔ずつ離して搬送し、シートごとに印刷を実行する。
【0114】
ステップS1において第2シートであると判定した場合には(Yes)、制御部100は、第2シートにカールが発生するのを抑制するためのカール抑制処理を実行するか否かを選択させるための選択画面を操作パネルに表示する(S2)。選択画面は、例えば、「カール抑制処理を実行しますか?」というメッセージと、カール抑制処理の実行を選択するための「Yes」、「No」のボタン画像を表示した画面とすることができる。
【0115】
ステップS2の後、制御部100は、カール抑制処理を実行することが選択されたか否かを判定する(S3)。ステップS3において、カール抑制処理を実行しないことが選択されたと判定した場合には(No)、制御部100は、ステップS7の処理に進む。
【0116】
ステップS3においてカール抑制処理を実行することが選択されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、シート間隔を第1間隔よりも大きな第2間隔に設定して(S4)、ヒータ110の目標温度を第1目標温度よりも低い第2目標温度に設定する(S5)。
【0117】
ステップS5の後、制御部100は、シートに印刷を行う印刷処理を実行して(S6)、本処理を終了する。詳しくは、ステップS4,S5経由でステップS6を実行する場合には、制御部100は、ヒータ110の温度が第2目標温度となるようにヒータ110に流す電流を制御するとともに、複数のシートをそれぞれ第2間隔ずつ離して搬送し、シートごとに印刷を実行する。
【0118】
制御部100は、複数枚のシートの両面に印刷を実行する旨の印刷指令を受けた場合には、
図8に示す両面連続印刷処理を実行する。なお、両面連続印刷処理は、前述した片面連続印刷処理の一部の処理を変更したものなので、同じ処理については同一の符号を付して説明を省略する。
【0119】
両面連続印刷処理では、制御部100は、まず、ステップS1においてシートの種類を判定し、シートの種類が第2シートでない場合には(No)、両面印刷中における最小のシート間隔を第1間隔に設定する(S17)。ステップS17の後、制御部100は、ステップS8を経て、ステップS16を実行する。ステップS16において、制御部100は、印刷するページ数とテーブルに基づいて、印刷するページの順序を決定する。その後、制御部100は、決定したページの順序と、ステップS17で設定したシート間隔とに基づいて、最小のシート間隔が、設定したシート間隔となるように、供給トレイ31からのシートのピックアップのタイミング等を決定した後、両面印刷を行う。これにより、ステップS17,S8経由でステップS16を実行する場合には、制御部100は、ヒータ110の温度が第1目標温度となるようにヒータ110に流す電流を制御するとともに、最小のシート間隔が第1間隔となるようにシートを搬送し、シートごとに印刷を実行する。
【0120】
ステップS1においてシートの種類が第2シートであると判定した場合には(Yes)、制御部100は、ステップS2,S3の処理を実行する。ステップS3においてカール抑制処理を実行しないことが選択されたと判定した場合には(No)、制御部100は、ステップS17の処理に進む。
【0121】
ステップS3においてカール抑制処理を実行することが選択されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、両面印刷中における最小のシート間隔を第1間隔よりも大きな第2間隔に設定する(S14)。ステップS14の後、制御部100は、ステップS5を経て、ステップS16を実行する。ステップS14,S5経由でステップS16を実行する場合には、制御部100は、ヒータ110の温度が第2目標温度となるようにヒータ110に流す電流を制御するとともに、最小のシート間隔が第2間隔となるようにシートを搬送し、シートごとに印刷を実行する。
【0122】
次に、制御部100の動作の一例について詳細に説明する。
本体筐体2に接続したUSBメモリ内のデータを片面印刷する場合において、ユーザが操作パネル等を操作して、印刷モードを片面印刷に選択し、シートの種類を第1シートに選択して印刷を実行するボタンを押すと、データとユーザによって選択された情報を含む印刷指令が、制御部100に出力される。制御部100は、印刷指令を受けると、その印刷指令に基づいて、複数枚のシートを連続して印刷する片面連続印刷処理を実行するか否かを判定する。
【0123】
制御部100は、片面連続印刷処理を実行しないと判定した場合、つまり印刷枚数が1枚である場合には、公知の印刷処理を実行する。制御部100は、片面連続印刷処理を実行すると判定した場合には、
図7に示す片面連続印刷処理を実行する。
【0124】
片面連続印刷処理において、制御部100は、シートの種類が第1シートであることからステップS1でNoと判定する。その後、制御部100は、シート間隔を第1間隔、ヒータ110の目標温度を第1目標温度に設定して、印刷処理を実行する(S7,S8,S6)。これにより、複数枚の第1シートが小さな第1間隔で搬送されるので、複数枚の第1シートを高い印刷速度で印刷することができる。
【0125】
また、印刷モードが片面印刷に選択され、シートの種類が第2シートに選択された状況で片面連続印刷処理を実行する場合には、制御部100は、シートの種類が第2シートであることからステップS1でYesと判定する。その後、制御部100は、カール抑制処理を実行するか否かを選択させる選択画面を操作パネルに表示する(S2)。
【0126】
選択画面においてユーザがカール抑制処理を実行しないことを選択すると(S3:No)、制御部100は、シート間隔を第1間隔、ヒータ110の目標温度を第1目標温度に設定して、印刷処理を実行する(S7,S8,S6)。これにより、複数枚の第2シートが小さな第1間隔で搬送されるので、第2シートのカールの抑制よりも、複数枚の第2シートを高い印刷速度で印刷することを優先させることができる。
【0127】
選択画面においてユーザがカール抑制処理を実行することを選択すると(S3:Yes)、制御部100は、シート間隔を第2間隔、ヒータ110の目標温度を第2目標温度に設定して、印刷処理を実行する(S4~S6)。複数枚の第2シートが大きな第2間隔で搬送されるとともに、ヒータ110の温度が低い第2目標温度となるので、第2シートのカールを抑制することができる。
【0128】
なお、両面印刷時でのユーザの操作および制御部100の動作は、片面印刷時と略同様であるため、説明は省略する。
【0129】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
第1シートよりもカールが発生しやすい第2シートを複数搬送する場合には、複数の第1シートを搬送するときよりもシート間隔を大きな第2間隔とすることで、シートがニップ部NPを通過しない時間が長くなって、ローラ120とベルト130の温度差が小さくなるので、第2シートがカールするのを抑制することができる。具体的には、カールが発生しやすい厚みの薄い第2シート、または、坪量の小さな第2シートがカールするのを抑制することができる。また、第1シートを搬送する場合には、第2シートよりもカールが発生しにくいため、シート間隔を小さな第1間隔としても、第1シートがカールするのを抑制することができる。したがって、シートの種類によらずに、シートのカールを抑制することができる。
【0130】
第2間隔をベルト130の周長よりも大きくしたので、先行する第2シートがニップ部NPから排出されてから、次の第2シートがニップ部NPに到達するまでの間に、ベルト130が1回転以上回転するので、次の第2シートがニップ部NPに到達する前に、ベルト130全体の温度を確実に上げることができる。
【0131】
第1ニップ形成部材N1の第1先端面N11を、第2ニップ形成部材N2の第2先端面N21よりもローラ120の近くに配置したので、ローラ120とニップ形成部材Nの位置関係を変えるだけで、ローラ120と第1ニップ形成部材N1のみでベルト130を挟むモードと、ローラ120と第1ニップ形成部材N1および第2ニップ形成部材N2とでベルト130を挟むモードとを切り替えることができる。
【0132】
この構成によれば、第1パッドP1を第2パッドP2よりも柔らかくしたので、柔らかい方の第1パッドP1によって多様な種類のシートに対してトナーを良好に定着することができ、固い方の第2パッドP2によってシートを圧接することで、シート上のトナーに光沢を出すことができる。
【0133】
第1ニップ形成部材N1がシートの搬送方向において第2ニップ形成部材N2から離れているので、各パッドP1,P2が変形したときに互いに接触するのを抑制することができ、各パッドP1,P2同士の接触によりニップ部NPの形状やニップ圧に影響が出るのを抑制することができる。
【0134】
制御部100が、ユーザによって入力されたシートの種類を示す種類情報に基づいて、シート間隔を設定するので、ユーザが入力したシートの種類に基づいて、シートのカールを抑制することができる。
【0135】
第2シートを印刷する際に、ユーザがカール抑制処理を実行するか否か、つまりシート間隔を広げるか否かを選択することができるので、ユーザがカール抑制を優先したい場合にはシート間隔を広げることができ、ユーザが印刷速度を優先したい場合にはシート間隔を広げないままにすることができる。
【0136】
制御部100が、複数の第1シートを両面印刷する場合には、両面印刷中における最小のシート間隔を第1間隔とし、複数の第2シートを両面印刷する場合には、両面印刷中における最小のシート間隔を第2間隔とするので、両面印刷時にもシートのカールを抑制することができる。
【0137】
制御部100が、シート間隔を第2間隔とする場合には、シート間隔を第1間隔とする場合よりも、ヒータ110の温度を低くするので、ローラ120とベルト130の温度差をより小さくすることができ、第2シートがカールするのをより抑制することができる。
【0138】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、種類情報の入力を本体筐体2の操作パネル等を操作することで行うこととしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ユーザがパソコンなどの端末を操作することで種類情報の入力が行われてもよい。
【0139】
前記実施形態では、シート間隔を第2間隔とする場合に、シート間隔を第1間隔とする場合よりも、ヒータ110の温度を低くしたが、本発明はこれに限定されず、シート間隔を第2間隔とするときのヒータの温度と、シート間隔を第1間隔とするときのヒータの温度とを同じ温度にしてもよい。
【0140】
前記実施形態では、カール抑制処理の選択画面を表示して、ユーザにカール抑制処理を実行するかの選択を行わせたが、本発明はこれに限定されず、選択画面の表示などは行わなくてもよい。具体的には、
図7および
図8の各処理において、ステップS2,S3を取り除いてもよい。
【0141】
前記実施形態では、ニップ状態を、強ニップ状態、中ニップ状態、弱ニップ状態の3段階に切り替えるように構成したが、本発明はこれに限定されず、ニップ状態を、強ニップ状態と弱ニップ状態の2段階で切り替えるように構成してもよいし、強ニップ状態と弱ニップ状態を含む4段階以上で切り替えるように構成してもよい。
【0142】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えばモノクロのプリンタ、複写機、複合機などに本発明を適用してもよい。
【0143】
前記実施形態では、第2定着部材82を第1定着部材81に対して移動させる構成としたが、本発明はこれに限定されず、第1定着部材を第2定着部材に対して移動させてもよい。
【0144】
ヒータは、どのようなヒータであってもよく、例えばカーボンヒータなどとすることができる。また、ヒータの数は、複数であってもよい。
【0145】
前記実施形態では、ニップ形成部材をパッドと固定板とで構成したが、本発明はこれに限定されず、ニップ形成部材は、例えばパッドのみで構成されていてもよい。
【0146】
前記実施形態では、第2バネ330とカムフォロア350を設けたが、本発明はこれに限定されず、第2バネとカムフォロアはなくてもよい。つまり、カムでアーム本体を直接押圧する構成としてもよい。
【0147】
前記実施形態では、第1パッドP1および第2パッドP2をゴムで構成したが、本発明はこれに限定されず、パッドは、例えば、加圧時においても弾性変形しない樹脂や金属などの硬質材料から構成されていてもよい。
【0148】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0149】
1 カラープリンタ
100 制御部
110 ヒータ
120 ローラ
130 ベルト
N ニップ形成部材
S シート