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特許7543872光学デバイスの駆動方法、光学システム、及び、表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】光学デバイスの駆動方法、光学システム、及び、表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240827BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240827BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20240827BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 D
G02B26/08 D
B06B1/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020193280
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081999
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 慎一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅俊
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-170760(JP,A)
【文献】特開2011-000556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0370575(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0210191(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111766673(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
H04N 5/66-5/74
G02B 26/00-26/08
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイスの駆動方法であって、
前記光学デバイスは、
平面視で矩形の光学領域に光が入射する光学部材と、
平面視における前記光学領域の中心を通り、前記光学領域の第1辺とのなす角が90°未満である第1軸周りに、前記光学部材を変位させる第1アクチュエーターと、
前記光学領域の中心を通り、前記第1軸と直交する第2軸周りに、前記光学部材を変位させる第2アクチュエーターと、を含み、
前記光学デバイスの駆動方法は、
前記第1アクチュエーターに第1駆動信号を入力することによって前記第1アクチュエーターを励磁することと、
前記第2アクチュエーターに第2駆動信号を入力することによって前記第2アクチュエーターを励磁することと、
前記第1アクチュエーターを励磁している期間に、前記第2駆動信号の値を、前記第2アクチュエーターの励磁を実質的に停止する値とすることと、を含
前記第1駆動信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングと、前記第2駆動信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングとは、重なる、光学デバイスの駆動方法。
【請求項2】
前記第2アクチュエーターを励磁している期間に、前記第1駆動信号の値を、前記第1アクチュエーターの励磁を実質的に停止する値とすることと、を含む、請求項1記載の光学デバイスの駆動方法。
【請求項3】
前記第2駆動信号の値をBとした場合に、
前記第2アクチュエーターの励磁を停止する値は、B=0を含む、請求項1または2記載の光学デバイスの駆動方法。
【請求項4】
前記第2駆動信号の値をBとし、b1をb1>0である定数とし、b2をb2<0である定数とした場合に、
B=b1である第1期間と、
B=b2である第2期間と、を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の光学デバイスの駆動方法。
【請求項5】
前記第1駆動信号の値をAとした場合に、
前記第1期間と前記第2期間との間に、A>0かつB=0である第3期間、および、A<0かつB=0である第4期間のいずれかを含む、請求項4記載の光学デバイスの駆動方法。
【請求項6】
a1をa1>0である定数とし、a2をa2<0である定数とした場合に、
前記第3期間において、A=a1であり、
前記第4期間において、A=a2である、請求項5記載の光学デバイスの駆動方法。
【請求項7】
前記第1期間と前記第3期間との間、または前記第1期間と第4期間との間に、前記第1駆動信号の値Aおよび前記第2駆動信号の値Bが変化する第5期間を含む、請求項5または6記載の光学デバイスの駆動方法。
【請求項8】
平面視で矩形の光学領域に光が入射する光学部材と、
平面視における前記光学領域の中心を通り、前記光学領域の第1辺とのなす角が90°未満である第1軸周りに、前記光学部材を変位させる第1アクチュエーターと、
前記光学領域の中心を通り、前記第1軸と直交する第2軸周りに、前記光学部材を変位させる第2アクチュエーターと、を備える光学デバイスと、
駆動回路と、を有し、
前記駆動回路は、
前記第1アクチュエーターに第1駆動信号を出力することによって前記第1アクチュエーターを励磁することと、
前記第2アクチュエーターに第2駆動信号を出力することによって前記第2アクチュエーターを励磁することと、
前記第1アクチュエーターを励磁している期間に、前記第2駆動信号の値を、前記第2アクチュエーターの励磁を実質的に停止する値とすることと、を行い、
前記第1駆動信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングと、前記第2駆動信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングとは、重なる、光学システム。
【請求項9】
光源と、
前記光源から出射される光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光が、平面視で矩形の光学領域に入射する光学部材と、
平面視における前記光学領域の中心を通り、前記光学領域の第1辺とのなす角が90°未満である第1軸周りに、前記光学部材を変位させる第1アクチュエーターと、
前記光学領域の中心を通り、前記第1軸と直交する第2軸周りに、前記光学部材を変位させる第2アクチュエーターと、
を含む光学デバイスと、
駆動回路と、
前記光学デバイスを透過した光を透過させる光学系と、を備え、
前記駆動回路は、
前記第1アクチュエーターに第1駆動信号を出力することによって前記第1アクチュエーターを励磁することと、
前記第2アクチュエーターに第2駆動信号を出力することによって前記第2アクチュエーターを励磁することと、
前記第1アクチュエーターを励磁している期間に、前記第2駆動信号の値を、前記第2アクチュエーターの励磁を実質的に停止する値とすることと、を行い、
前記第1駆動信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングと、前記第2駆動信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングとは、重なる、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイスの駆動方法、光学システム、及び、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部材を揺動させて、光学部材に入射される画像光の光路をずらすことにより、解像度を高める表示装置が知られている。例えば、特許文献1では、ガラス板を2つのアクチュエーターにより揺動させ、画像光の光路をずらす光路シフト動作を行う。この構成によれば、1つの画素を位置P1、P2、P3、P4の4つの位置に移動させることで、見かけ上、1つの画素より小さいサイズの4つの画素を表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-091343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の構成では、第1アクチュエーターおよび第2アクチュエーターへ供給される駆動信号により、ガラス板の揺動を組み合わせた光路シフト動作が行われる。この構成では、2つのアクチュエーターに電圧を印加するので、消費電力が大きいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本適用例の一態様は、光学デバイスの駆動方法であって、前記光学デバイスは、平面視で矩形の光学領域に光が入射する光学部材と、平面視における前記光学領域の中心を通り、前記光学領域の第1辺とのなす角が90°未満である第1軸周りに、前記光学部材を変位させる第1アクチュエーターと、前記光学領域の中心を通り、前記第1軸と直交する第2軸周りに、前記光学部材を変位させる第2アクチュエーターと、を含み、前記光学デバイスの駆動方法は、前記第1アクチュエーターに第1駆動信号を入力することによって前記第1アクチュエーターを励磁することと、前記第2アクチュエーターに第2駆動信号を入力することによって前記第2アクチュエーターを励磁することと、前記第1アクチュエーターを励磁している期間に、前記第2駆動信号の値を、前記第2アクチュエーターの励磁を実質的に停止する値とすることと、を含む、光学デバイスの駆動方法である。
【0006】
本適用例の別の一態様は、平面視で矩形の光学領域に光が入射する光学部材と、平面視における前記光学領域の中心を通り、前記光学領域の第1辺とのなす角が90°未満である第1軸周りに、前記光学部材を変位させる第1アクチュエーターと、前記光学領域の中心を通り、前記第1軸と直交する第2軸周りに、前記光学部材を変位させる第2アクチュエーターと、を備える光学デバイスと、駆動回路と、を有し、前記駆動回路は、 前記第1アクチュエーターに第1駆動信号を出力することによって前記第1アクチュエーターを励磁することと、前記第2アクチュエーターに第2駆動信号を出力することによって前記第2アクチュエーターを励磁することと、前記第1アクチュエーターを励磁している期間に、前記第2駆動信号の値を、前記第2アクチュエーターの励磁を実質的に停止する値とすることと、を行う、光学システムである。
【0007】
本適用例の別の一態様は、光源と、前記光源から出射される光を変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光が、平面視で矩形の光学領域に入射する光学部材と、平面視における前記光学領域の中心を通り、前記光学領域の第1辺とのなす角が90°未満である第1軸周りに、前記光学部材を変位させる第1アクチュエーターと、前記光学領域の中心を通り、前記第1軸と直交する第2軸周りに、前記光学部材を変位させる第2アクチュエーターと、を含む光学デバイスと、駆動回路と、前記光学デバイスを透過した光を透過させる光学系と、を備え、前記駆動回路は、前記第1アクチュエーターに第1駆動信号を出力することによって前記第1アクチュエーターを励磁することと、前記第2アクチュエーターに第2駆動信号を出力することによって前記第2アクチュエーターを励磁することと、前記第1アクチュエーターを励磁している期間に、前記第2駆動信号の値を、前記第2アクチュエーターの励磁を実質的に停止する値とすることと、を行う、表示装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のプロジェクターの光学的な構成を示す説明図。
図2】光路シフトデバイスによる光路シフトを示す説明図。
図3】プロジェクターの機能ブロック図。
図4】液晶表示素子の構成を示す平面図。
図5】光路シフトデバイスの平面図。
図6】光路シフトデバイスの部分断面図。
図7】光路シフトデバイスの部分拡大断面図。
図8】光変調装置と光路シフトデバイスの相対位置を示す説明図。
図9】駆動信号の波形および画素の位置の変化を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.プロジェクターの全体構成]
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る表示装置の一例であるプロジェクター1の光学的な構成を示す説明図である。
プロジェクター1は、光源102と、外部から入力される画像信号に基づき光源102が出射する光を変調する光変調装置108とを備え、スクリーン101に投写画像101Aを投写する。プロジェクター1の光変調装置は、LCD(Liquid Crystal Display)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)等を用いることができる。本実施形態では、光変調装置108として液晶表示素子108R、108G、108Bを備えるプロジェクター1を例として説明する。
【0010】
プロジェクター1は、ミラー104a、104b、104c、ダイクロイックミラー106a、106b、ダイクロイックプリズム110、光路シフトデバイス2、および、投射光学系112を備える。
【0011】
光源102は、例えば、ハロゲンランプ、水銀ランプ、発光ダイオード(LED)、レーザー光源等が挙げられる。また、光源102としては、白色光を出射するものが用いられる。光源102から出射された光は、例えば、ダイクロイックミラー106aによって赤色光(R)とその他の光とに分離される。赤色光は、ミラー104aで反射された後、液晶表示素子108Rに入射し、その他の光は、ダイクロイックミラー106bによってさらに緑色光(G)と青色光(B)とに分離される。緑色光は、液晶表示素子108Gに入射し、青色光は、ミラー104b、104cで反射された後、液晶表示素子108Bに入射する。ダイクロイックミラー106a、106bは、光源102が出射する光を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)に分離する分光素子に相当する。
【0012】
液晶表示素子108R、108G、108Bは、それぞれR、G、Bの原色に対応する透過型の空間光変調器である。液晶表示素子108R、108G、108Bのそれぞれは、例えば、縦1080行、横1920列のマトリクス状に配列した画素を備える液晶パネルを有する。各画素では、入射光に対する透過光の光量が調整され、各液晶表示素子108R、108G、108Bにおいて全画素の光量分布が協調制御される。このような液晶表示素子108R、108G、108Bによってそれぞれ空間的に変調された光は、ダイクロイックプリズム110で合成され、ダイクロイックプリズム110からフルカラーの画像光LLが出射される。そして、出射された画像光LLは、投射光学系112によって拡大されてスクリーン101に投射される。投射光学系112は、光学系の一例に対応する。
【0013】
投射光学系112は、液晶表示素子108R、108G、108Bによって変調された光をスクリーン101に投射し、スクリーン101に投写画像101Aを形成する。プロジェクター1が投写画像101Aを形成する動作は、表示することに相当する。
【0014】
投射光学系112は、少なくとも1つのレンズを備える。投射光学系112は、少なくとも1つ以上のミラーを備えた光学系であってもよく、1つ以上のレンズ、および1つ以上のミラーを備えた光学系であってもよい。投射光学系112は、スクリーン101におけるフォーカスを調整する機構を備えてもよい。
【0015】
光路シフトデバイス2は、ダイクロイックプリズム110と投射光学系112との間に配置される。プロジェクター1は、光路シフトデバイス2によって画像光LLの光路をシフトさせる、いわゆる光路シフトを行うことにより、液晶表示素子108R、108G、108Bの解像度よりも高い解像度の画像をスクリーン101に表示することが可能である。例えば、上記のように1920ピクセル×1080ピクセルの画像を表示するフルハイビジョンに対応した液晶表示素子108R、108G、108Bを用いる場合、スクリーン101に4K解像度相当の画像を表示できる。光路シフトデバイス2は、光学デバイスの一例に対応する。
【0016】
[2.光路シフトの態様]
光路シフトによる高解像度化について図2を参照して説明する。
図2は、光路シフトデバイス2による光路シフトを示す説明図である。後述するように、光路シフトデバイス2は、画像光LLを透過させる透光性の光学部材であるガラス板30を有する。光路シフトデバイス2は、ガラス板30の姿勢を変更することで、光の屈折を利用して画像光LLの光路をシフトさせる。
【0017】
図2には、互いに直交するX軸およびY軸を示す。X軸およびY軸は、液晶表示素子108R、108G、108Bの表示領域における画素の配列方向に対応する。例えば、液晶表示素子108R、108G、108Bは、それぞれ、X軸に沿って1920画素、Y軸に沿って1080画素を有する。このX軸およびY軸は、それぞれ、スクリーン101に投影される投写画像101Aの水平方向および垂直方向に対応する。ここで、X軸の一方向をX+方向とし、逆方向をX-方向とする。また、Y軸の一方向をY+方向とし、逆方向をY-方向とする。
【0018】
光路シフトデバイス2がガラス板30を変位させない状態におけるガラス板30の位置を、基準位置とする。基準位置において、ガラス板30はXY平面に平行である。本実施形態の光路シフトデバイス2は、ガラス板30を揺動させることにより、画像光LLを所定の位置に導く。
【0019】
図2には、ガラス板30を透過する画像光LLに含まれる画素Pxをシフトさせる様子を模式的に示す。ガラス板30が基準位置にある場合の画素Pxの位置を、位置P0とする。第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3、及び、第4位置P4は、ガラス板30の揺動により画素Pxの画像光LLが導かれる位置である。例えば、第1位置P1は、位置P0に対してX+方向およびY+方向に半画素分だけシフトした位置である。第2位置P2は、位置P0に対してX-方向およびY-方向に半画素分だけシフトした位置である。第3位置P3は、位置P0に対してX-方向およびY+方向に半画素分だけシフトした位置であり、第4位置P4は、位置P0に対しX+方向およびY-方向に半画素分だけシフトした位置である。図2は、ダイクロイックプリズム110からガラス板30を見た図に相当する。
【0020】
第1位置P1は第3位置に相当し、第2位置P2は第4位置に相当する。逆に、第1位置P1が第4位置に相当し、第2位置P2が第3位置に相当する構成であってもよい。第3位置P3は、第1位置に相当し、第4位置P4は第2位置に相当する。逆に、第3位置P3が第2位置に相当し、第4位置P4が第1位置に相当する構成であってもよい。
【0021】
図2に示す第1軸J1および第2軸J2は、ガラス板30の揺動の軸であり、光路シフトデバイス2がガラス板30を揺動させる機構に設定される仮想の軸線である。
【0022】
基準位置において、ガラス板30は、第1軸J1周り、および、第2軸J2周りのいずれにも傾いていない。
ガラス板30は、後述する第1アクチュエーター6の動作によって、第1軸J1周りに変位する。ガラス板30の変位の方向は、正方向、および、逆方向である。第1軸J1周りの正方向は、ガラス板30のX-、Y+側の部分がXY平面に対して手前に変位する方向である。ガラス板30が第1軸J1周りに正方向に変位すると、画素Pxは、第3位置P3に向けて第3方向F3に移動する。第1軸J1周りの逆方向は、ガラス板30のX+、Y-側の部分がXY平面に対して手前に変位する方向である。ガラス板30が第1軸J1周りに逆方向に変位すると、画素Pxは、第4位置P4に向けて第4方向F4に移動する。第3方向F3と第4方向F4は、第1軸J1に直交し、互いに反対方向である。
【0023】
ガラス板30は、後述する第2アクチュエーター7の動作によって、第2軸J2周りに変位する。ガラス板30の変位の方向は、正方向、および、逆方向である。
第2軸J2周りの正方向は、ガラス板30のX-、Y―側の部分がXY平面に対して手前に変位する方向である。ガラス板30が第2軸J2周りに正方向に変位すると、画素Pxは、第2位置P2に向けて第2方向F2に移動する。第2軸J2周りの逆方向は、ガラス板30のX+、Y+側の部分がXY平面に対して手前に変位する方向である。ガラス板30が第2軸J2周りに逆方向に変位すると、画素Pxは、第1位置P1に向けて第1方向F1に移動する。第1方向F1と第2方向F2は、第2軸J2に直交する方向であり、互いに反対方向である。
【0024】
プロジェクター1は、第1方向F1、第3方向F3、第2方向F2、および、第4方向F4の光路のシフトを順に実行することによって、見かけ上の画素数を増加させ、スクリーン101に投影される投写画像101Aを高解像度化できる。例えば、プロジェクター1は、画素Pxにより、第1位置P1で画像PAを表示させ、第3位置P3で画像PBを表示させ、第2位置P2で画像PDを表示させ、第4位置P4で画像PCを表示させる。この一連の表示によって、投写画像101Aは、1つの画素Pxによって半画素分だけずれた4つの位置に4つの画像PA、PB、PD、PCを表示する。これにより、投写画像101Aは、画素Pxより小さい画素で構成される、より高解像度の画像として視認される。
【0025】
投写画像101Aを全体として60Hzの周波数で表示する場合、プロジェクター1は、液晶表示素子に4倍の速度である240Hzで表示を実行させ、この表示の更新に合わせて画素Pxをシフトさせる。図2に示すように、画像PA、PB、PD、PCの順に画素Pxに表示をさせる場合、画素Pxを第1方向F1に移動させる動作と、第3方向F3に移動させる動作と、第2方向F2に移動させる動作と、第4方向F4に移動させる動作とを順に実行する。
【0026】
上記の動作は一例であり、画素Pxのずれ量は、半画素分に限定されず、例えば、画素Pxの長さの1/4であってもよいし、3/4であってもよい。また、図には画素Pxが正方形である例を示したが、画素Pxは矩形であればよい。この場合、画素PxのX軸におけるずれ量は、例えば、X軸に平行な画素Pxの辺の長さの半分や1/4とすることができる。また、画素PxのY軸におけるずれ量は、Y軸に平行な画素Pxの辺の長さの半分や1/4であってもよい。
【0027】
[3.プロジェクターの機能的構成]
図3は、図1のプロジェクター1のブロック図である。プロジェクター1は、制御回路120と、駆動信号処理回路121と、画像信号処理回路122を備える。
制御回路120は、液晶表示素子108R、108G、108Bに対するデータ信号の書き込み動作、光路シフトデバイス2における光路シフト動作、画像信号処理回路122におけるデータ信号の発生動作等を制御する。駆動信号処理回路121は、画像信号処理回路122が出力する同期信号SAに基づいて、光路シフトデバイス2に駆動信号DSを供給する駆動回路である。駆動信号処理回路121と、光路シフトデバイス2とを組み合わせた構成は、光学システムの一例に対応する。
【0028】
画像信号処理回路122は、図示しない外部装置から供給される画像信号VidをR、G、Bの3原色ごとに分離するとともに、それぞれの液晶表示素子108R、108G、108Bの動作に適したデータ信号Rv、Gv、Bvに変換する。そして、変換されたデータ信号Rv、Gv、Bvは、それぞれ液晶表示素子108R、108G、108Bに供給され、それに基づいて液晶表示素子108R、108G、108Bが画像を描画する。光源102が出射した光は、上述のように赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)に分光され、各色光は液晶表示素子108R、108G、108Bに描画された画像により変調される。
【0029】
光路シフトデバイス2は、ガラス板30を駆動する駆動源として、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7を備える。駆動信号処理回路121は、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7に駆動信号DSを出力する。駆動信号DSは、第1アクチュエーター6を駆動する第1駆動信号DS1と、第2アクチュエーター7を駆動する第2駆動信号DS2とを含む。第1アクチュエーター6には第1駆動信号DS1が入力され、第2アクチュエーター7には第2駆動信号DS2が入力される。
【0030】
[4.液晶表示素子の構成]
図4は、液晶表示素子108Rの構成を示す平面図である。液晶表示素子108R、108G、108Bはいずれも共通の構成を有するので、液晶表示素子108Gおよび液晶表示素子108Bについては図示および説明を省略する。
【0031】
液晶表示素子108Rは、透過型の液晶表示パネル181Rを有する。液晶表示パネル181Rは、赤色光(R)を変調する液晶パネルである。液晶表示パネル181Rはフレーム182に嵌め込まれ、不図示の駆動回路に接続されている。
【0032】
フレーム182は、ブラケット183により支持される。ブラケット183は、フレーム182をベース部材184に固定する治具である。ブラケット183をベース部材184に固定する位置は調整可能であり、ブラケット183の取り付け位置を調整することにより、液晶表示パネル181Rの位置を調整可能である。
【0033】
液晶表示パネル181Rは、画像を表示する表示領域180Rを有する。表示領域180Rは、液晶表示パネル181Rにおいて画像が形成される領域であり、光源102が発した光を分光した赤色光(R)は表示領域180Rを透過して変調される。本実施形態では、液晶表示パネル181Rに矩形の表示領域180Rが形成される。従って、液晶表示素子108Rが変調した画像光は、矩形の表示領域180Rを透過し、矩形の投写画像101Aを形成する光となる。
【0034】
図4には、表示領域180Rにおいて軸AXおよび軸AYを図示する。軸AX、AYは、仮想の軸線である。軸AXは表示領域180におけるX軸に沿っており、軸AYは表示領域180におけるY軸に沿っている。
上述したように、液晶表示素子108G、108Bにおいても、液晶表示素子108Rと同様に、不図示の表示領域に画像が形成される。表示領域の形状、および、表示領域とX軸、Y軸との対応は、表示領域180Rと共通である。
【0035】
[5.光路シフトデバイスの構成]
図5は、光路シフトデバイス2の平面図である。図6は光路シフトデバイス2の部分断面図である。図7は、光路シフトデバイス2の部分拡大断面図である。
【0036】
光路シフトデバイス2は、ガラス板30を有し、ガラス板30は第1フレーム31により支持される。第1フレーム31は金属製または合成樹脂製の枠形状の部材である。
【0037】
ガラス板30は、光透過性を有する透光性基板であり、画像光LLが入射する光学部材である。図4に示したように、画像光LLの赤色成分は表示領域180Rを透過することにより矩形の画像を形成する光に変調されている。画像光LLの緑色成分および青色成分も同様である。従って、ガラス板30に入射する画像光LLは、ガラス板30において矩形の光学領域30Aを透過する。光学領域30Aの中心CEは、基準位置において画像光LLが透過する領域の平面視における重心である。本実施形態では、光学領域30Aの中心CEは、ガラス板30の中心に一致する。中心CEは、ガラス板30から出射される画像光LLの中心軸とガラス板30とが交差する位置であってもよい。
【0038】
ガラス板30は、少なくとも光学領域30Aを含む大きさおよび形状であればよく、例えば、ガラス板30の平面形状が円形であってもよいし、矩形を含む各種の多角形であってもよい。
【0039】
光路シフトデバイス2が備える光学部材は、実質的に無色透明であることが好ましい。本実施形態では光学部材の一例としてガラス板30を用いる例を説明する。ガラス板30は、例えば、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスのような各種ガラス材料を用いることができる。光学部材は、画像光LLを透過する透光性を有していればよく、ガラスのほか、水晶やサファイアのような各種結晶材料、ポリカーボネート系樹脂やアクリル系樹脂等の樹脂材料で構成されたものであってもよい。光学部材の材料としてガラスを採用する場合、光学部材の剛性が高いため、画像光LLの光路をずらす際の光路のシフト量のばらつきを抑制できるという利点がある。
また、ガラス板30において、画像光LLが入射する入射面および画像光LLが出射する出射面に、反射防止膜が形成されていてもよい。
【0040】
図5には、ガラス板30の光学領域30AにおけるX方向、およびY方向を示す軸BXおよび軸BYを図示する。軸BX、BYは、液晶表示素子108Rの表示領域180R、および、液晶表示素子108G、108Bの不図示の表示領域の軸AX、AYに対応する仮想の軸線である。
【0041】
光路シフトデバイス2は、第1軸J1、および、第2軸J2を有する。第1軸J1および第2軸J2は、ガラス板30の回動の中心となる仮想の軸線であり、第1軸J1は、光学領域30Aの中心CEを通る。第2軸J2は、中心CEを通り、第1軸J1と交差する。本実施形態では、第1軸J1と第2軸J2とは中心CEにおいて互いに直交する。
【0042】
光路シフトデバイス2は、第1フレーム31を揺動可能に支持する第2フレーム4と、第2フレーム4を揺動可能に支持するベース部材5と、ガラス板30を変位させる第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7と、を備える。
【0043】
ベース部材5は、第1フレーム31の外側を囲むように配置される環状の部材である。第2フレーム4は、環状の部材であり、第1フレーム31の外側を囲むように配置されている。第2フレーム4は、ベース部材5に形成された不図示の溝に収容される。
【0044】
第1フレーム31は、矩形の光学領域30Aの4つの角に対応する方向に突出する突出部32、33、34、35を有する。突出部32、33は第2軸J2に重なり、突出部34、35は第1軸J1に重なる位置にある。突出部32は、支持部材36を介して第2フレーム4に連結される。突出部33は、光学領域30Aの中心CEに対して突出部32の反対側に突出する。突出部33は、支持部材37を介して第2フレーム4に連結される。
【0045】
支持部材36、37は、第2軸J2上に配置される。支持部材36は、第2フレーム4と突出部3との間をつなぐ軸部36Aを有する。支持部材37は、第2フレーム4と突出部32との間をつなぐ軸部37Aを有する。軸部36A、37Aは、ねじれ方向における弾性を有する。支持部材36と支持部材37は、それぞれ、第2軸J2方向における第1フレーム31の両端部を支持する。第1フレーム31は、弾性を有する軸部36A、37Aによって、第2軸J2を中心として所定範囲で回転可能に第2フレーム4に支持される。
【0046】
突出部34は、第2フレーム4の内側に形成される空間42に位置し、自由に移動可能である。ベース部材5には、第1軸J1上に、支持部材45、46が取り付けられる。支持部材46は、中心CEに対して支持部材45の反対側に位置する。支持部材45と支持部材46を介して、第1軸J1上の第2フレーム4の両端部が、ベース部材5によって支持される。
【0047】
支持部材45は、第2フレーム4とベース部材5との間をつなぐ軸部45Aを有する。支持部材46は、第2フレーム4とベース部材5との間をつなぐ軸部4Aを有する。軸部45A、46Aは、ねじれ方向における弾性を有する。第2フレーム4は、支持部材45、46によって、第1軸J1を中心として所定範囲で回転可能に、ベース部材5に支持される。
【0048】
ガラス板30は、第1フレーム31とともに第軸J周りに揺動可能であり、さらに、第2フレーム4とともに第軸J周りに揺動可能に支持される。
【0049】
第1軸J1と第2軸J2とは互いに直交し、第1軸J1と矩形の光学領域30Aの辺とがなす角度は90°未満であり、例えば、図に示す角度θは45°である。このため、本実施形態のガラス板30は、中心CEを中心として、光学領域30Aのいずれの辺とも平行でない2方向に、揺動可能に支持されている。ガラス板30の揺動方向は、光学領域30Aの辺、軸BX、軸BYのいずれとも平行でない方向が好ましく、より好ましくは、軸BX、軸BYに対して90°未満の傾きを有する方向である。最も好ましい例として、ガラス板30の揺動方向は、図2に示した画素Pxの位置P0に対する第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3、第4位置P4の各位置の方向と一致する。具体的には、ガラス板30の揺動方向は軸BXと軸BYのいずれに対しても45°の方向である。
【0050】
第1アクチュエーター6は、第2軸J2上において、第2フレーム4の一端部とベース部材5との間に配置される。第2軸J2における第2フレーム4の他端部は、ベース部材5に形成された切欠部51に納められ、自由に移動可能である。なお、第1アクチュエーター6は、第2軸J2と重なっていなくてもよい。
【0051】
第1アクチュエーター6は、磁石61と、コイル62と、磁石保持板63と、コイル保持板64と、を有する振動アクチュエーターである。
【0052】
磁石保持板63は、第2フレーム4に固定される。コイル保持板64は、ベース部材5に固定される。磁石61は磁石保持板63に取り付けられ、コイル62は、磁石61に対向する位置で、コイル保持板64によって保持される。磁石61とコイル62とは互いに連結されていない。磁石61とコイル62との間には、磁石61とコイル62とが相互に移動可能な程度に間隙が設けられている。
【0053】
第2アクチュエーター7は、第1軸J1上において突出部35と第2フレーム4との間に配置される。突出部35とは反対側に位置する突出部34は、上述のように空間42に納められ、自由に移動可能である。なお、第2アクチュエーター7は、第1軸J1と重なっていなくてもよい。
第2アクチュエーター7は、磁石71と、コイル72と、磁石保持板73と、コイル保持板74と、を有する振動アクチュエーターである。
【0054】
磁石保持板73は、第1フレーム31の突出部35に固定される。コイル保持板74は、第2フレーム4に固定される。磁石71は磁石保持板73に取り付けられ、コイル72は、磁石71に対向する位置で、コイル保持板74によって保持される。磁石71とコイル72とは互いに連結されていない。磁石71とコイル72との間には、磁石71とコイル72とが相互に移動可能な程度に間隙が設けられている。
【0055】
図6は、図5に示した光路シフトデバイス2を第1軸J1に沿って切断した要部断面図である。図6および後述する図7には、ガラス板30が基準位置にあるときのガラス板30の法線方向をZ軸として示す。Z軸は第1軸J1および第2軸J2のそれぞれに対して直交する。画像光LLは、Z軸に沿ってガラス板30に入射する。
【0056】
第2アクチュエーター7において、磁石71とコイル72は対向して配置される。コイル72は長円形状の空芯コイルであり、第2軸J2と略平行に延びる2本の有効辺721、722を備える。コイル72は、2本の有効辺721、722がZ軸に沿って並ぶように位置決めされて、コイル保持板74に保持される。
【0057】
磁石71のS極711とN極712は、コイル72と対向する対向面において、Z軸に沿って並んでいる。磁石71は永久磁石であり、例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等を用いることができる。ガラス板30が基準位置に位置するとき、第2アクチュエーター7は、磁石71のS極711とN極712の一方が有効辺721と対向し、他方が有効辺722と対向する。
【0058】
コイル72に通電すると、磁石71が、Z軸に沿って、コイル72に対して相対的に移動する。これにより、磁石71に固定された第1フレーム31に対し、第2軸J2周りの駆動力が加えられ、第1フレーム31がガラス板30とともに第2軸J2周りに回動する。
【0059】
駆動信号処理回路121は、コイル72に流れる電流の方向、すなわち第2駆動信号DS2の極性を切り替えることが可能である。コイル72に流れる電流の方向により、第1フレーム31の回動方向が変化する。例えば、コイル72に順方向に電流が流れた場合に磁石71がZ軸に沿って一方側に変位する構成であれば、コイル72に逆方向に電流が流れると、磁石71はZ軸に沿って他方側に変位する。このため、駆動信号処理回路121が第2アクチュエーター7に入力する第2駆動信号DS2の極性に応じて、第2アクチュエーター7は、第1フレーム31をZ軸に沿って一方側、および、その逆側に回動させる。
【0060】
図7は、図5に示した光路シフトデバイス2を第2軸J2に沿って切断した要部断面図であり、特に、第1アクチュエーター6およびその近傍の構成を拡大して示す。
【0061】
磁石61とコイル62は、第2軸J2に沿って、互いに対向して配置される。コイル62は長円形状の空芯コイルであり、第1軸J1と略平行に延びる2本の有効辺621、622を備える。コイル62は、2本の有効辺621、622がZ軸に沿って並ぶように位置決めされて、コイル保持板64に固定される。
【0062】
磁石61のS極611とN極612は、コイル62と対向する面に、Z軸に沿って並んでいる。磁石61は永久磁石であり、磁石71と同様に、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等を用いることができる。ガラス板30が基準位置に位置するとき、第1アクチュエーター6は、磁石61のS極611とN極612の一方が有効辺621と対向し、他方が有効辺622と対向する。
【0063】
コイル62に通電すると、磁石61が、Z軸に沿って、コイル62に対して相対的に移動する。これにより、磁石61を保持する第2フレーム4に対し、第1軸J1周りの駆動力が加えられ、第2フレーム4がガラス板30とともに第1軸J1周りに回動する。
【0064】
駆動信号処理回路121は、コイル62に流れる電流の方向、すなわち第1駆動信号DS1の極性を切り替えることが可能である。コイル62に流れる電流の方向により、第2フレーム4の回動方向が変化する。例えば、コイル62に順方向に電流が流れた場合に磁石61がZ軸に沿って一方側に変位する構成であれば、コイル62に逆方向に電流が流れると、磁石61はZ軸に沿って他方側に変位する。このため、駆動信号処理回路121が第1アクチュエーター6に入力する第1駆動信号DS1の極性に応じて、第1アクチュエーター6は、第2フレーム4をZ軸に沿って一方側、および、その逆側に回動させる。
【0065】
第1アクチュエーター6において、磁石保持板63およびコイル保持板64は、鉄などの金属からなり、バックヨークとして機能する。第2アクチュエーター7においても同様に、磁石保持板73およびコイル保持板74は、鉄などの金属からなり、バックヨークとして機能する。これらのバックヨークは、漏れ磁束を少なくし、磁気効率を上げる効果を奏する。
【0066】
第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7の動作によって、ガラス板30に対する画像光LLの入射角度が基準位置から傾くことにより、ガラス板30は、ガラス板30に入射した画像光LLを屈折させつつ透過させる。従って、目的とする入射角度になるように、ガラス板30の姿勢を変化させることにより、画像光LLの偏向方向や偏向量を制御できる。
【0067】
図8は、光変調装置108と光路シフトデバイス2の相対位置を示す説明図である。図8には、図5に示した光路シフトデバイス2の各部に、光変調装置108の構成を重ねて示す。図8は、画像光LLの光路において投射光学系112の位置から光路シフトデバイス2及び光変調装置108を見た状態を示している。
【0068】
ダイクロイックプリズム110は、Z軸に沿った平面視、すなわちガラス板30の平面視において光路シフトデバイス2のガラス板30に重なる位置にある。ダイクロイックプリズム110に対向して、液晶表示素子108R、108G、108Bが配置される。液晶表示素子108Gは、ガラス板30の平面視において、ダイクロイックプリズム110及びガラス板30に重なる位置にあり、液晶表示素子108Rおよび液晶表示素子108Bはダイクロイックプリズム110に対してBX軸に沿って反対側に位置する。
液晶表示素子108Rは、液晶フレーム161Rに取り付けられる。液晶表示素子108Gの位置は、ダイクロイックプリズム110に対してガラス板30の反対側である。
【0069】
液晶表示素子108Rとダイクロイックプリズム110との間には、偏光素子170Rが配置される。偏光素子170Rは、液晶表示素子108Rに対応する矩形の光学部材である。液晶表示素子108Rにより変調された赤色光は、偏光素子170Rにより偏光を整えられ、ダイクロイックプリズム110に入射する。
偏光素子170Rには、偏光素子170Rの周囲を囲む偏光素子フレーム171Rが取り付けられ、偏光素子フレーム171Rは液晶フレーム161Rに固定される。また、液晶表示素子108Rには、液晶表示素子108Rの周囲を囲む固定フレーム172Rが取り付けられ、固定フレーム172Rを介して液晶フレーム161Rに固定される。
【0070】
液晶表示素子108R、および、偏光素子170Rは、偏光素子フレーム171Rおよび固定フレーム172Rによって、ダイクロイックプリズム110に対して適切な位置で保持される。
【0071】
液晶表示素子108Bは、液晶フレーム161Bに取り付けられる。
液晶表示素子108Bとダイクロイックプリズム110との間には、偏光素子170Bが配置される。偏光素子170Bは、液晶表示素子108Bに対応する矩形の光学部材である。液晶表示素子108Bにより変調された青色光は、偏光素子170Bにより偏光を整えられ、ダイクロイックプリズム110に入射する。
偏光素子170Bには、偏光素子170Bの周囲を囲む偏光素子フレーム171Bが取り付けられ、偏光素子フレーム171Bは液晶フレーム161Bに固定される。また、液晶表示素子108Bには、液晶表示素子108Bの周囲を囲む固定フレーム172Bが取り付けられ、固定フレーム172Bを介して液晶フレーム161Bに固定される。
【0072】
液晶表示素子108B、および、偏光素子170Bは、偏光素子フレーム171Bおよび固定フレーム172Bによって、ダイクロイックプリズム110に対して適切な位置で保持される。
【0073】
また、図示はしないが、液晶表示素子108Gは、液晶表示素子108Rおよび液晶表示素子108Bと同様に、偏光素子170Gと連結され、ダイクロイックプリズム110に対して適切な位置で固定される。
【0074】
液晶フレーム161R、161B、偏光素子フレーム171R、171B、および、固定フレーム172R、172Bは、液晶表示素子108R、108Bや偏光素子170R、170Bを確実に固定可能な剛性を有する。これら液晶フレーム161R、161B、偏光素子フレーム171R、171B、および、固定フレーム172R、172Bの少なくとも一部は、固定部材を構成する。これら固定部材は、高い剛性を有し、重量を抑えることが可能な構成であることが望まれるため、金属製とすることが好ましい。一方、固定部材を金属製とした場合、光路シフトデバイス2の第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7の磁力に対する影響が懸念される。なお、液晶表示素子108Gの固定部材は、光路シフトデバイス2との距離が液晶表示素子108R、108Bの固定部材よりも遠いため、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7への影響はない。
【0075】
本実施形態では、図8に示したように、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7が光路シフトデバイス2の角部に配置される。詳細には、第1アクチュエーター6は第2軸J2に沿った方向における第2フレーム4の端部に配置され、第2アクチュエーター7は、第1軸J1に沿った方向における第1フレーム31の端部に配置される。このため、ガラス板30を含む面内において、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7がそれぞれ第1フレーム31および第2フレーム4の辺上にある場合と比較して、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7はガラス板30から離れた位置にある。仮に、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7がこれらの辺上にある場合、固定部材と対向してしまう恐れがある。光路シフトデバイス2全体のX軸に沿った長さを長くすれば、第1アクチュエーター6または第2アクチュエーター7と固定部材とを対向しない位置に配置できるが、装置全体が大型化してしまう。
【0076】
これに対し、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7が光路シフトデバイス2の角部に配置されていると、光路シフトデバイス2の大きさが、光路シフトデバイス2の辺と固定部材とが平面視で重なる大きさであっても、第1アクチュエーター6と第2アクチュエーター7との間の距離が固定部材の長さよりも大きければ、角部にある第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7は固定部材と重ならない。従って、第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7の磁力と、ダイクロイックプリズム110の周囲に配置される各種金属製部材との相互の影響について、懸念は解消されている。
【0077】
[6.光路シフトデバイスの駆動方法]
光路シフトデバイス2は、駆動信号処理回路121から供給される駆動信号DSにより、ガラス板30を第1軸J1周りの第1揺動方向、および、第2軸J2周りの第2揺動方向の2方向に揺動させる。第1アクチュエーター6では、駆動信号処理回路121から入力する第1駆動信号DS1に基づいてコイル62に電流が流れ、磁石61が変位する。第2アクチュエーター7では、第2駆動信号DS2に基づいてコイル72に電流が流れ、磁石71が変位する。
【0078】
図9は、駆動信号DSの波形および画素Pxの位置の変化を示すタイミングチャートである。図9のタイミングチャートにおいて、(a)は第1駆動信号DS1の波形を示し、(b)は第2駆動信号DS2の波形を示し、(c)は画素Pxの位置を示す。図9における符号t1-t9はそれぞれ特定の時刻を示している。図9に示す符号PA、PB、PC、PDは、画素Pxにより表示される画像を指している。画像PA、PB、PC、PDは、それぞれ、図2に示した第1位置P1、第3位置P3、第4位置P4、第2位置P2に表示される画像である。
【0079】
図9には、第1駆動信号DS1の信号レベルA、および、第2駆動信号DS2の信号レベルBを示す。
この例では、プロジェクター1が画像PB、PD、PC、PAの順に画像を表示する。光路シフトデバイス2が光路を移動させる方向は、第3方向F3、第2方向F2、第4方向F4、第1方向F1の順で変化する。第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2は、正の信号レベル、負の信号レベル、および0のレベルの間を変化する。すなわち、第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2の電流値は、それぞれ、正の値、負の値、および0の間を変化する。第1駆動信号DS1の信号レベル、及び、第2駆動信号DS2の信号レベルは、値と言い換えることができる。
【0080】
第1アクチュエーター6は、第1駆動信号DS1が正の値である場合に、ガラス板30を第1軸J1周りに正方向に回動させ、第1駆動信号DS1が負の値である場合に、ガラス板30を第1軸J1周りに逆方向に回動させる。第2アクチュエーター7は、第2駆動信号DS2が正の値である場合に、ガラス板30を第2軸J2周りに正方向に回動させ、第2駆動信号DS2が負の値である場合に、ガラス板30を第2軸J2周りに逆方向に回動させる。
【0081】
第1駆動信号DS1の信号レベルA=0の状態は、第1駆動信号DS1が第1アクチュエーター6を実質的に励磁していない状態である。この状態で、信号レベルAは完全に0でなくてもよい。また、信号レベルA=0の区間において、信号レベルAは0であってもよい。また、信号レベルA=0の区間において、第1アクチュエーター6の磁力がガラス板30を変位させない程度の磁力であって、信号レベルAが0でない状態であってもよい。言い換えれば、ガラス板30の変位が実質的に無く、信号レベルAが0でない状態であってもよい。
【0082】
同様に、第2駆動信号DS2の信号レベルB=0の状態は、第2駆動信号DS2が第2アクチュエーター7を実質的に励磁していない状態である。この状態で、信号レベルBは完全に0でなくてもよい。信号レベルB=0の区間において、信号レベルBは0であってもよい。また、信号レベルB=0の区間において、第2アクチュエーター7の磁力がガラス板30を変位させない程度の磁力であって信号レベルBが0でない状態であってもよい。言い換えれば、ガラス板30の変位が実質的に無く信号レベルBが0でない状態であってもよい。
【0083】
信号レベルAの値a1は正の所定値であり、値a2は負の所定値である。信号レベルBの値b1は正の所定値であり、値b2は負の所定値である。
図9では、動作開始から時刻t1にかけて第1駆動信号DS1が立ち上がり、信号レベルAがa1に達する。第1駆動信号DS1の信号レベルAが正であり、第2駆動信号DS2の信号レベルBが0であるとき、光路シフトデバイス2は、図2に示す第3方向F3に光路をシフトさせる。これにより、プロジェクター1は画像PBを表示する。
【0084】
時刻t2から時刻t3にかけて第1駆動信号DS1が立ち下がるとともに第2駆動信号DS2が立ち上がり、信号レベルAが0、信号レベルBがb1に達する。光路シフトデバイス2は、信号レベルBが正であり、信号レベルAが0であるとき、図2に示す第2方向F2に光路をシフトさせる。これにより、プロジェクター1は画像PDを表示する。
【0085】
時刻t4から時刻t5にかけて第1駆動信号DS1が立ち下がるとともに第2駆動信号DS2が立ち下がり、信号レベルAがa2、信号レベルBが0に達する。光路シフトデバイス2は、信号レベルAが負であり、信号レベルBが0であるとき、図2に示す第4方向F4に光路をシフトさせる。これにより、プロジェクター1は画像PCを表示する。
【0086】
時刻t6から時刻t7にかけて第1駆動信号DS1が立ち上がるとともに第2駆動信号DS2が立ち下がり、信号レベルAが0、信号レベルBがb2に達する。光路シフトデバイス2は、信号レベルBが負であり、信号レベルAが0であるとき、図2に示す第1方向F1に光路をシフトさせる。これにより、プロジェクター1は画像PAを表示する。
【0087】
時刻t8から時刻t9にかけて第1駆動信号DS1が立ち上がるとともに第2駆動信号DS2が立ち上がり、信号レベルAがa1、信号レベルBが0に達すると、プロジェクター1は画像PBを表示する。
【0088】
光路シフトデバイス2は、第1アクチュエーター6によって光路を第3方向F3および第4方向F4にシフトさせる。また、第2アクチュエーター7によって光路を第1方向F1および第2方向F2にシフトさせる。つまり、第1方向F1~第4方向F4の4つの方向に光路をシフトさせる過程で、第1アクチュエーター6と第2アクチュエーター7とが同時に励磁された状態を必要としない。
【0089】
従って、図9に示すように、画像を表示している期間において、信号レベルAと信号レベルBが同時に正の値に維持される期間、および、同時に負の値に維持される期間がないことから、駆動信号処理回路121が出力する駆動信号DSの電流値を抑えることができ、光路シフトデバイス2を駆動するための消費電力を抑制できる。
【0090】
また、区間t2-t3、t4-t5等に示すように、光路をシフトさせる方向が切り替わるときは、第1アクチュエーター6と第2アクチュエーター7を個別に動作させることができる。具体的には、第1駆動信号DS1の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングと、第2駆動信号DS2の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングとが重なってもよい。このため、短時間で光路のシフト方向を切り替えることができる。
【0091】
投写画像101Aが不鮮明になることを防ぐため、光路のシフト方向を切り替える間は、画像を表示しないことが望ましい。図9に示したように、光路シフトデバイス2は、短時間で光路のシフト方向を切り替えることが可能であるため、画像を表示しない期間が短く、画像を表示できる時間の割合が大きい。これにより、解像感が高く、表示品位の高い投写画像101Aを投写できる。
【0092】
以上説明したように、光路シフトデバイス2の駆動方法において、光路シフトデバイス2は、平面視で矩形の光学領域30Aに光が入射するガラス板30と、第1アクチュエーター6と、第2アクチュエーター7とを含む。第1アクチュエーター6は、平面視における光学領域30Aの中心CEを通り、光学領域30Aの第1辺とのなす角が90°未満である第1軸J1周りに、ガラス板30を変位させる。第2アクチュエーター7は、光学領域30Aの中心CEを通り、第1軸J1と直交する第2軸J2周りに、ガラス板30を変位させる。光路シフトデバイス2の駆動方法は、第1アクチュエーター6に第1駆動信号DS1を入力することによって第1アクチュエーター6を励磁することと、第2アクチュエーター7に第2駆動信号DS2を入力することによって第2アクチュエーター7を励磁することと、第1アクチュエーター6を励磁している期間に、第2駆動信号DS2の値を、第2アクチュエーター7の励磁を実質的に停止する値とすることを含む。
光路シフトデバイス2において、第1アクチュエーター6を動作させることにより、光学領域30Aの第1辺とのなす角が90°未満である第1軸J1周りにガラス板30を揺動させることができる。また、第2アクチュエーター7を動作させることにより、第1軸J1と直交する第2軸J2周りに、ガラス板30を揺動させることができる。
【0093】
光路シフトデバイス2の駆動方法は、第1アクチュエーター6と第2アクチュエーター7のいずれか一方を動作させ、複数の異なる方向であって、光学領域30Aの辺に平行でない方向に、画像光LLをシフトさせることができる。この駆動方法では、光路シフトデバイス2を駆動し、第1アクチュエーター6を励磁する間に、第2アクチュエーター7の励磁を実質的に停止させる。例えば、図9に示す駆動方法において、期間t1-t2、期間t5-t6では、第1駆動信号DS1により第1アクチュエーター6を励磁する一方、第2駆動信号DS2の信号レベルは0であり、第2アクチュエーター7を実質的に停止させる。これにより、画像光LLをシフトさせて表示画像を高解像度化する動作を、低い消費電力によって実行できる。
【0094】
上記駆動方法は、第2駆動信号DS2により第2アクチュエーター7を励磁することと、第2アクチュエーター7を励磁している期間に、第1駆動信号DS1の値を、第1アクチュエーター6の励磁を実質的に停止する値とすることと、を含む。
例えば、図9に示す期間t3-t4、および、期間7-t8において、第2駆動信号DS2は第2アクチュエーター7を励磁する状態である一方、第1駆動信号DS1の信号レベルは0であり、第1アクチュエーター6の励磁を実質的に停止する。これにより、画像光LLをシフトさせて表示画像を高解像度化する動作を、低い消費電力によって実行できる。
【0095】
上記の駆動方法において、第2駆動信号DS2の値をBとした場合、第2アクチュエーター7の励磁を停止する値は、B=0を含む。この場合、第2駆動信号DS2の値BをB=0とすることで、第2アクチュエーター7の励磁を確実に、実質的に停止した状態とすることができ、光路シフトデバイス2の消費電力を、より一層、低減できる。
【0096】
上記の駆動方法は、第2駆動信号DS2の値をBとし、b1をb1>0である定数とし、b2をb2<0である定数とした場合に、B=b1である第1期間と、B=b2である第2期間と、を含む。例えば、図9において、期間t3-t4は第1期間の一例であり、期間t7-t8は第2期間の一例である。これらの期間において、第1駆動信号DS1の値Aを、第1アクチュエーター6の励磁を実質的に停止させる値とすることにより、光路シフトデバイス2の消費電力を、より一層、低減できる。
【0097】
上記の駆動方法は、第1駆動信号DS1の値をAとした場合に、第1期間と第2期間との間に、A>0かつB=0である第3期間、および、A<0かつB=0である第4期間のいずれかを含む。例えば、図9において、期間t5-t6は第4期間の一例である。また、時刻t9を起点として時刻t1以降と同じ動作を行う場合に、第2期間に相当する期間t7-t8に続いて、A>0かつB=0とする期間t1-t2を含んでもよい。この場合、期間t1-t2は第3期間の一例に対応する。これらの期間において、第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2の値のいずれかを、アクチュエーターの励磁を実質的に停止させる値とすることにより、光路シフトデバイス2の消費電力を、より一層、低減できる。
【0098】
上記の駆動方法において、a1をa1>0である定数とし、a2をa2<0である定数とした場合に、第3期間においてA=a1であり、第4期間においてA=a2であってもよい。上述のように、期間t1-t2は第3期間の一例に対応し、期間t5-t6は第4期間の一例に対応する。これらの期間では、第1駆動信号DS1により第1アクチュエーター6を励磁し、第2アクチュエーター7の励磁を実質的に停止させることにより、光路シフトデバイス2の消費電力を、より一層、低減できる。
【0099】
上記の駆動方法は、第1期間と第3期間との間、または第1期間と第4期間との間に、第1駆動信号DS1の値Aおよび第2駆動信号DS2の値Bが変化する第5期間を含む。例えば、図9において、期間t2-t3、期間t4-t5、期間t6-t7、及び、期間t8-t9では、第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2の値が変化する。これらの期間は第5期間の一例に対応する。この駆動方法によれば、第1駆動信号DS1の値と第2駆動信号DS2の値とを同時に変化させることにより、画像光LLをシフトさせる動作を短時間で完了できる。
【0100】
例えば、光路シフトデバイス2は、第2アクチュエーター7を動作させることにより、第フレーム314とともにガラス板30を揺動させ、第1アクチュエーター6を動作させることにより、第フレームとともにガラス板30を揺動させることができる。この構成によれば、第1アクチュエーター6の動作と第2アクチュエーター7の動作とが互いに干渉することがないので、第1アクチュエーター6と第2アクチュエーター7とを同時に動作させて、画像光LLをシフトさせる動作を短時間で完了できる。従って、ガラス板30を短時間で移動させることができ、ガラス板30の移動中に表示を停止した場合であっても、投写画像101Aの解像感を損なわないという利点がある。
【0101】
上記の駆動方法において、光路シフトデバイス2は、第1期間において入射光をガラス板30から第位置Pに導光させ、第3期間において入射光をガラス板30から第位置Pに導光させる。また、第4期間において入射光をガラス板30から第位置Pに導光させ、第2期間において入射光をガラス板30から第位置Pに導光させる。
この方法によれば、B=b1かつA=0とする第1期間と、B=b2かつA=0とする第2期間と、A>0かつB=0とする第3期間と、A<0かつB=0とする第4期間とのそれぞれで、画像光LLを異なる位置に導く。このため、第1アクチュエーター6と第2アクチュエーター7とを実質的に1個ずつ励磁させて、画像光LLを4つの異なる位置にシフトさせることができ、より低い消費電力で、投写画像101Aの高解像度化を実現できる。
【0102】
光路シフトデバイス2に駆動信号処理回路121を組み合わせた光学システムは、ガラス板30と、第1アクチュエーター6と、第2アクチュエーター7と、を備える光路シフトデバイス2と、駆動信号処理回路121とを備える。ガラス板30は、平面視で矩形の光学領域30Aに光が入射する。第1アクチュエーター6は、平面視における光学領域30Aの中心CEを通り、光学領域30Aの第1辺とのなす角が90°未満である第1軸J1周りに、ガラス板30を変位させる。第2アクチュエーター7は、光学領域30Aの中心CEを通り、第1軸J1と直交する第2軸J2周りに、ガラス板30を変位させる。駆動信号処理回路121は、第1アクチュエーター6に第1駆動信号DS1を出力することによって第1アクチュエーター6を励磁することと、第2アクチュエーター7に第2駆動信号DS2を出力することによって第2アクチュエーター7を励磁することと、第1アクチュエーター6を励磁している期間に、第2駆動信号DS2の値を、第2アクチュエーター7の励磁を実質的に停止する値とすることと、を行う。
【0103】
プロジェクター1は、光源102と、光源102から出射される光を変調する光変調装置108と、を備える。プロジェクター1は、ガラス板30と、第1アクチュエーター6と、第2アクチュエーター7とを含む光路シフトデバイス2と、駆動信号処理回路121と、投射光学系112と、を備える。ガラス板30は、光変調装置108により変調された光が、平面視で矩形の光学領域30Aに入射する。第1アクチュエーター6は、平面視における光学領域30Aの中心CEを通り、光学領域30Aの第1辺とのなす角が90°未満である第1軸J1周りに、ガラス板30を変位させる。第2アクチュエーター7は、光学領域30Aの中心CEを通り、第1軸J1と直交する第2軸J2周りに、ガラス板30を変位させる。駆動信号処理回路121は、第1アクチュエーター6に第1駆動信号DS1を出力することによって第1アクチュエーター6を励磁することと、第2アクチュエーター7に第2駆動信号DS2を出力することによって第2アクチュエーター7を励磁することと、第1アクチュエーター6を励磁している期間に、第2駆動信号DS2の値を、第2アクチュエーター7の励磁を実質的に停止する値とすることと、を行う。
【0104】
光路シフトデバイス2において、第1アクチュエーター6を動作させることにより、光学領域30Aの第1辺とのなす角が90°未満である第1軸J1周りにガラス板30を揺動させることができる。また、第2アクチュエーター7を動作させることにより、第1軸J1と直交する第2軸J2周りに、ガラス板30を揺動させることができる。
【0105】
上記の光学システム、および、プロジェクター1によれば、第1アクチュエーター6と第2アクチュエーター7のいずれか一方を動作させ、複数の異なる方向であって、光学領域30Aの辺に平行でない方向に、画像光LLをシフトさせることができる。この光路シフトデバイス2を駆動し、第1アクチュエーター6を励磁する間に、第2アクチュエーター7の励磁を実質的に停止させる。例えば、図9において、期間t1-t2、期間t5-t6では、第1駆動信号DS1により第1アクチュエーター6を励磁する一方、第2駆動信号DS2の値は0であり、第2アクチュエーター7の励磁を実質的に停止させる。これにより、画像光LLをシフトさせて表示画像を高解像度化する動作を、低い消費電力によって実行できる。
【0106】
[7.その他の実施形態]
上述した実施形態は本発明の好適な実施の形態である。但し、上述の実施形態は限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形実施が可能である。
【0107】
例えば、第1アクチュエーター6は、磁石61を第2フレーム4に固定し、コイル62をベース部材5に固定し、コイル62に通電することによって磁石61とともに第2フレーム4を変位させる構成として説明したが、これは一例である。変形例として、第2フレーム4にコイル62を固定し、ベース部材5に磁石61を固定し、コイル62に通電することにより第2フレーム4を変位させる構成としてもよい。同様に、第2アクチュエーター7は、磁石71を第1フレーム31に固定し、コイル72を第2フレーム4に固定し、コイル72に通電することによって磁石71とともに第1フレーム31を変位させる構成として説明したが、これは一例である。変形例として、第1フレーム31にコイル72を固定し、第2フレーム4に磁石71を固定し、コイル72に通電することにより第1フレーム31を変位させる構成としてもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、第1アクチュエーター6、および、第2アクチュエーター7として、磁石とコイルを対向させてローレンツ力により駆動力を発生させる振動アクチュエーターを用いる構成を説明した。本発明はこれに限定されず、他の原理で動作するアクチュエーターを用いることもできる。例えば、ピエゾアクチュエーターを採用することができる。
【0109】
上記実施形態において、プロジェクター1は、ガラス板30の変位の方向や変位量を検出するセンサーを備える構成であってもよい。この場合、制御回路120は、センサーの検出結果に基づいて駆動信号DSを補正する機能を備えていてもよい。
【0110】
図9に例示した第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2の波形は典型的な例であって、現実の信号波形が図9と一致することを限定する意図はない。また、図1の光学系の説明図、および、図3の機能ブロック図は、プロジェクター1の構成例を模式化して示す図であって、本発明を適用する対象の装置を限定するものではない。
【符号の説明】
【0111】
1…プロジェクター(表示装置)、2、2A…光路シフトデバイス(光学デバイス)、4…第2フレーム、5…ベース部材、6…第1アクチュエーター、7…第2アクチュエーター、8…第3アクチュエーター、9…第4アクチュエーター、30…ガラス板(光学部材)、30A、30B…光学領域、31…第1フレーム、32、33、34、35…突出部、36、37…支持部材、36A、37A…軸部、40…第2フレーム本体、41…張出部、45、46…支持部材、45A、46A…軸部、61、71、81、91…磁石、62、72、82、92…コイル、63、73、83、93…磁石保持板、64、74、84、94…コイル保持板、101…スクリーン、101A…投写画像、102…光源、104a、104b、104c…ミラー、106a、106b…ダイクロイックミラー、108…光変調装置、108B、108G、108R…液晶表示素子、110…ダイクロイックプリズム、112…投射光学系(光学系)、120…制御回路、121…駆動信号処理回路(駆動回路)、122…画像信号処理回路、621、622…有効辺、721、722…有効辺、CE…中心、DS1…第1駆動信号、DS2…第2駆動信号、J1…第1軸、J2…第2軸、LL…画像光。
図1
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