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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】接触度確認装置及び接触度確認システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/06 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01S11/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020210294
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096977
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】三宅 史朗
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003416(JP,A)
【文献】特開2017-090284(JP,A)
【文献】特開2012-194808(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111415755(CN,A)
【文献】特開2020-106363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0181388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - G01S 5/14
G01S 11/00 - G01S 11/16
H04W 4/00 - H04W 99/00
G06Q 10/00 - G06Q 99/00
G16H 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
号発信機を装着するユーザの識別情報を含む無線信号を受信する第1の信号受信部と、
飛沫により感染し得る感染症に感染したユーザの識別情報を取得する感染者情報取得部と、
前記第1の信号受信部が受信した無線信号の第1の受信信号強度を測定する第1の受信信号強度測定部と、
前記第1の信号受信部で受信した無線信号に含まれる識別情報が前記感染したユーザの識別情報と一致した場合、第1の所定期間内において前記第1の受信信号強度測定部が測定した前記第1の受信信号強度の合計値に基づいて、前記信号発信機との接触度合いを評価する接触度評価部と、
を備える接触度確認装置であって、
前記第1の信号受信部は、前記接触度確認装置を装着する人の所定の位置に装着されることによって、前記接触度確認装置を装着する人の顔の正面方向に受信指向性を有する、
接触度確認装置。
【請求項2】
前記信号発信機が発信する無線信号を受信する第2の信号受信部と、
前記第2の信号受信部が受信した無線信号の第2の受信信号強度を測定する第2の受信信号強度測定部と、
を更に備え、
前記接触度評価部は、前記第2の信号受信部で受信した無線信号に含まれる識別情報が前記感染したユーザの識別情報と一致し、第2の所定期間内において前記第2の受信信号強度測定部が測定した前記第2の受信信号強度が所定の強度以上であった場合に、前記第1の受信信号強度に基づいて接触度合いを評価する、
請求項に記載の接触度確認装置。
【請求項3】
前記接触度評価部は、前記第2の所定期間内における前記第1の受信信号強度の合計値に基づいて接触度合いを評価する、
請求項に記載の接触度確認装置。
【請求項4】
信号発信機と接触度確認装置とを備えた接触度確認システムであって、
前記信号発信機は、装着するユーザの識別情報を含む無線信号を送信する信号発信部を備え、
前記接触度確認装置は、
記信号発信機が発信する無線信号を受信する第1の信号受信部と、
飛沫により感染し得る感染症に感染したユーザの識別情報を取得する感染者情報取得部と、
前記第1の信号受信部が受信した無線信号の第1の受信信号強度を測定する第1の受信信号強度測定部と、
前記第1の信号受信部で受信した無線信号に含まれる識別情報が前記感染したユーザの識別情報と一致した場合、第1の所定期間内において前記第1の受信信号強度測定部が測定した前記第1の受信信号強度の合計値に基づいて、前記信号発信機との接触度合いを評価する接触度評価部と、
を備え、
前記第1の信号受信部は、前記接触度確認装置を装着する人の所定の位置に装着されることによって、前記接触度確認装置を装着する人の顔の正面方向に受信指向性を有する、
接触度確認システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触度確認装置及び接触度確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い、感染症の感染リスクを判断する技術が望まれている。関連する技術として、例えば、特許文献1には、利用者の移動経路から感染リスクを判断する技術が記載されている。
【0003】
新型コロナウィルス感染症のように飛沫感染により感染し得る感染症では、感染者と近距離で接触することにより感染するリスクが高まる。このため、厚生労働省では、感染者との接触を確認するための接触確認アプリケーションを提供している。この接触確認アプリケーションでは、スマートフォンのBluetooth(登録商標)機能を利用し、人との接触を記録しておき、感染者と接触した可能性を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-161987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記厚生労働省から提供されている接触確認アプリケーション(以下、単に「接触確認アプリケーション」と呼ぶ場合がある)では、実際には感染リスクが高まるような接触ではないにもかかわらず、感染者と接触の可能性があると判断される恐れがあり、自宅待機や行動制限が不要な人に対しても課される場合がある。このため、より精度よく接触を評価する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、受信指向性を有し、信号発信機が発信する無線信号を受信する第1の信号受信部と、前記第1の信号受信部が受信した無線信号の第1の受信信号強度を測定する第1の受信信号強度測定部と、第1の所定期間内において前記第1の受信信号強度測定部が測定した前記第1の受信信号強度の合計値に基づいて、前記信号発信機との接触度合いを評価する接触度評価部と、を備える接触度確認装置であって、前記接触度確認装置を装着する人の所定の位置に前記第1の信号受信部が装着されることによって、前記接触度確認装置を装着する人の向きに対応する受信指向性を有する、接触度確認装置を提供する。
【0007】
本発明は、信号発信機と接触度確認装置とを備えた接触度確認システムであって、前記接触度確認装置は、受信指向性を有し、前記信号発信機が発信する無線信号を受信する第1の信号受信部と、前記第1の信号受信部が受信した無線信号の第1の受信信号強度を測定する第1の受信信号強度測定部と、第1の所定期間内において前記第1の受信信号強度測定部が測定した前記第1の受信信号強度の合計値に基づいて、前記信号発信機との接触度合いを評価する接触度評価部と、を備え、前記接触度確認装置は、前記接触度確認装置を装着する人の所定の位置に前記第1の信号受信部が装着されることによって、前記接触度確認装置を装着する人の向きに対応する受信指向性を有し、または、前記信号発信機は、前記信号発信機を装着する人の所定の位置に装着されることによって、前記信号発信機を装着する人の向きに対応する送信指向性を有する、接触度確認システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、精度よく接触を評価することが可能な接触度確認装置及び接触度確認システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】関連する技術の確認精度を説明するための図である。
図2】実施の形態1に係る接触度確認システムの構成例を示す構成図である。
図3】実施の形態1に係る受信デバイスの受信指向性を示す図である。
図4】実施の形態1に係る受信デバイス及び情報処理部の構成例を示す構成図である。
図5】実施の形態1に係る接触情報記録処理の動作例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態1に係る接触確認処理の動作例を示すフローチャートである。
図7】実施の形態2に係る情報処理部の構成例を示す構成図である。
図8】実施の形態2に係る接触確認処理の動作例を示すフローチャートである。
図9】実施の形態3に係る接触度確認システムの構成例を示す構成図である。
図10】実施の形態3に係る送受信デバイスの構成例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図面においては、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0011】
(関連する技術の検討)
まず、図1を用いて、実施の形態適用前の接触確認アプリケーションの確認精度について検討する。ここでは、図1(a)のように、人Pのモデルを定義する。図1(a)は、人Pを上から見たモデルであり、円形が人Pの頭を表し、三角形が人Pの鼻を表している。三角形の鼻の先端の指す方向が人Pの顔の前方向(顔の前面側)であり、その反対方向が人Pの顔の後方向(後頭部側)である。
【0012】
接触確認アプリケーションはスマートフォンなどの端末装置にインストールされた状態で、人Pが持ち歩きながら動作する。その際、接触確認アプリケーションは、端末装置のBluetooth機能を使って情報を電波で送受信する。図1(b)は、Bluetoothの電波の送受信エリアを表している。送受信エリアは、端末装置を所持する人Pを中心とした円形状となる。すなわち、接触確認アプリケーションをインストールしている端末装置のBluetoothの指向性は、ほぼ全方位に向いており、無指向性である。これは、Bluetooth機能が、接触確認アプリケーションを使用することに特化しているわけではなく、他のサービスでも利用できるようにしているためである。
【0013】
図1(c)に示すように、人P1と人P2が近づき、例えば人P1の電波の送受信エリアに人P2が入ると、人P1と人P2の端末装置の接触確認アプリケーションは、互いに電波で送受信を行い、その電波の受信信号強度と送られてきた暗号化済み情報を取得し、時間情報とともに記録する。記録された情報により、人P1と人P2の接触の有無を確認する。
【0014】
しかしながら、接触確認アプリケーションは近くに人がいるかどうかのみを確認するものであり、さらに詳細な人の状況が考慮されていない。例えば、咳などの飛沫で感染する可能性がある感染症の場合、人の顔の前面がどこを向いているかによって感染リスクが異なる。図1(c)の例では、人P1と人P2は同じ方向を向いて横に並んでおり、図1(d)の例では、人P1と人P2は対面で向かい合っており、図1(e)では人P1と人P2は背中を向けあって反対方向を向いている。図1(c)~図1(e)は、人P1と人P2の物理的な距離は同じであるが、飛沫を受けるリスクは異なる。すなわち、向かい合っている図1(d)が最も感染リスクが高く、反対方向を向いている図1(e)が最も感染リスクが低い。
【0015】
このように、人の向きによって感染リスクが異なるものの、接触確認アプリケーションでは、人の向きが考慮されていないため、感染リスクを含めて接触を確認することができない。そこで、以下の実施の形態では、人と人との距離のほかに人の向きを考慮して重みづけを行うことで、感染リスクを含めて接触を確認することを可能とする。
【0016】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。図2は、本実施の形態に係る接触度確認システムの構成例を示している。図2に示すように、本実施の形態に係る接触度確認システム1は、複数のユーザ端末100、通知サーバ200を備えている。接触度確認システム1は、ユーザが所持(装着)するユーザ端末100間で無線信号を送受信することにより、感染症に感染した感染者との接触度を確認するシステムである。この感染症は、例えば、新型コロナウィルス感染症など主に飛沫により感染し得る感染症である。
【0017】
通知サーバ200は、感染者の情報を管理するサーバであり、感染者の暗号化済み識別情報を含む感染者情報を複数のユーザ端末100へ通知する。通知サーバ200とユーザ端末100との間は、例えば、インターネットなどのネットワークを介して接続されるが、シリアル回線などにより直接接続されてもよい。
【0018】
ユーザ端末100は、無線信号としてビーコン信号を発信及び受信し、ユーザ端末100間の接触度を確認する。ビーコン信号は、発信機と受信機の間の距離を測定するための信号であり、例えば、Bluetooth Low Energy(BLE)のiBeacon(登録商標)などである。なお、ビーコン信号は、Bluetoothに限らず、無線LAN等のその他の無線信号でもよい。
【0019】
ユーザ端末100は、例えば、受信デバイス110、情報処理部120を備える。受信デバイス110は、ビーコン信号の受信機であり、例えばBluetoothの受信デバイスである。情報処理部120は、受信デバイス110が受信したビーコン信号の情報と通知サーバ200から通知される情報とをもとに、他のユーザ端末100との接触度を確認する確認装置であり、また、ビーコン信号を発信する発信機でもある。例えば、情報処理部120は、スマートフォンなどの情報処理装置である。なお、受信デバイス110と情報処理部120は、別々の装置でもよいし、一体の装置でもよい。例えば、ユーザが装着可能なスマートフォンに、情報処理部120と受信デバイス110の機能を含めてもよい。また、受信デバイス110と情報処理部120との間は、Bluetoothや無線LAN等により無線接続されていてもよいし、シリアル回線や有線LANにより有線接続されてもよい。
【0020】
図3は、本実施の形態に係る受信デバイス110の電波の受信指向性を示している。図3に示すように、受信デバイス110は、特定の方向の受信指向性を有する。すなわち、受信デバイス110の受信特性は、一方向に強く、他の方向には弱いパターンとなる。本実施の形態では、受信デバイス110は、ユーザ端末100を装着する人の顔や体の向きに対応する受信指向性を有する。すなわち、ユーザ(P)の顔の向きと受信デバイス110の受信指向性とが対応するように(同じ方向となるように)、受信デバイス110をユーザの所定の位置に配置(装着)する。ユーザの顔がどちらを向いているかを判定することができるように、ユーザの顔の前面側が強く、顔の横及び後方は弱い受信特性とする。例えば、受信デバイス110を、マスクや眼鏡、帽子等の顔の付近に取り付けてもよいし、胸ポケット等の体に装着してもよい。なお、飛沫等により感染症が人に伝播(感染)しやすい方向と受信デバイス110の受信指向性とが対応していることが好ましい。
【0021】
図4(a)は、本実施の形態に係る受信デバイス110の構成例を示している。図4(a)に示すように、受信デバイス110は、ビーコン受信部111、受信信号強度測定部112、接触情報通知部113を備えている。
【0022】
ビーコン受信部(第1のビーコン受信部)111は、BLE等の通信規格にしたがって、周囲の信号発信機であるユーザ端末100から無線送信されたビーコン信号を受信する。受信するビーコン信号には、送信元ユーザの暗号化済み識別情報が含まれている。ビーコン受信部111の受信アンテナ111aは、指向性アンテナであり、図3で説明したように、人の向きに対応する受信指向性を有している。
【0023】
受信信号強度測定部(第1の受信信号強度測定部)112は、ビーコン受信部111が受信したビーコン信号の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)(第1の受信信号強度)を測定する。接触情報通知部113は、周囲のユーザ端末100から受信したビーコン信号の送信元ユーザの暗号化済み識別情報と測定したビーコン信号の受信信号強度を含む接触情報(第1の接触情報)を、Bluetooth等により情報処理部120へ通知する。
【0024】
図4(b)は、本実施の形態に係る情報処理部120の構成例を示している。図4(b)に示すように、情報処理部120は、接触情報取得部121、記録制御部122、記録DB123、感染者情報取得部124、接触確認部125、ビーコン発信部126を備えている。
【0025】
接触情報取得部121は、ビーコン信号の送信元ユーザの暗号化済み識別情報と受信信号強度を含む接触情報を、受信デバイス110からBluetooth等により取得する。記録制御部122は、取得した接触情報を記録DB123へ記録するよう制御する。記録制御部122は、所定期間ごとに、接触情報に含まれるビーコン信号の送信元ユーザの暗号化済み識別情報及び受信信号強度を記録する。また、記録制御部122は、一定期間経過後、記録した接触情報を削除する。記録DB(第1の接触情報記録部)123は、記録制御部122の制御にしたがって接触情報を記録する。記録DB123は、送信元ユーザの暗号化済み識別情報ごとに、受信時間とともに受信信号強度を記録する。
【0026】
感染者情報取得部124は、通知サーバ200から、感染者の暗号化済み識別情報を、ネットワーク等を介して取得する。接触確認部(接触度評価部)125は、ビーコン信号の受信信号強度に基づき、感染者のユーザ端末100との接触を確認する。接触確認部125は、記録DB123に記録されている、所定期間(第1の所定期間)において感染者のユーザ端末100から送信され測定されたビーコン信号の受信信号強度の合計値に基づいて、感染者のユーザ端末100との接触度合いを評価する。例えば、受信信号強度から算出される距離に重みづけを行って、その重みづけの合計値に基づいて接触度合いを評価する。
【0027】
ビーコン発信部(信号発信機)126は、BLE等の通信規格にしたがってビーコン信号を無線送信する。送信するビーコン信号には、受信するビーコン信号と同様、送信元ユーザの暗号化済み識別情報が含まれる。この例では、ビーコン発信部126の送信アンテナ126aは、無指向性アンテナであり、全方位に向かう送信指向性を有する。
【0028】
図5は、本実施の形態に係るユーザ端末100の接触情報記録処理の例を示している。図5に示すように、まず、受信デバイス110を配置する(S101)。図3に示したように、ユーザのマスク等に受信デバイス110を装着し、ユーザの顔や体の向きに受信デバイス110の受信指向性が対応するように配置する。
【0029】
続いて、ユーザ端末100は、ビーコン信号を受信する(S102)。他のユーザ端末100のビーコン発信部126は、送信元ユーザの暗号化済み識別情報を含むビーコン信号を定期的に発信している。ユーザ端末100に他のユーザ端末100が近づくと、受信デバイス110のビーコン受信部111は、他のユーザ端末100からビーコン信号を受信する。ビーコン受信部111は、受信したビーコン信号に含まれる送信元ユーザの暗号化済み識別情報を取得する。
【0030】
続いて、ユーザ端末100は、ビーコン信号の受信信号強度を測定する(S103)。受信デバイス110の受信信号強度測定部112は、他のユーザ端末100から受信したビーコン信号の受信信号強度を測定する。受信信号強度測定部112は、定期的にビーコン信号を受信する毎にビーコン信号の受信信号強度を測定する。
【0031】
続いて、ユーザ端末100は、ビーコン信号による接触情報を記録する(S104)。受信デバイス110の接触情報通知部113は、受信したビーコン信号の送信元ユーザの暗号化済み識別情報と測定したビーコン信号の受信信号強度から接触情報を生成し、生成した接触情報を情報処理部120へ通知する。情報処理部120の接触情報取得部121は、通知された接触情報を取得し、記録制御部122は、取得した接触情報を記録DB123に記録する。記録制御部122は、所定期間、同じ識別情報のビーコン信号を受信した場合に、ビーコン信号の送信元ユーザの暗号化済み識別情報及び受信信号強度を、受信時間とともに記録DB123に記録する。
【0032】
図6は、本実施の形態に係るユーザ端末100の接触確認処理の例を示している。図6に示すように、まず、ユーザ端末100は、感染者情報を取得する(S201)。感染症に感染したユーザ(感染者)が通知サーバ200に感染者の情報を登録すると、通知サーバ200からユーザ端末100に感染者の暗号化済み識別情報が通知され、ユーザ端末100の感染者情報取得部124は、通知された識別情報を取得する。
【0033】
続いて、ユーザ端末100は、感染者の接触情報が記録されているか否か判定する(S202)。ユーザ端末の接触確認部125は、取得した感染者の暗号化済み識別情報と、記録DB123に記録されたビーコン信号の送信元ユーザの暗号化済み識別情報とを照合する。例えば、過去14日間において、感染者の識別情報に該当する接触情報が、記録DB123にあるか否か検索する。感染者の接触情報が記録されていない場合(S202/No)、処理を終了する。
【0034】
一方、感染者の接触情報が記録されている場合(S202/Yes)、ユーザ端末100は、接触を確認するための受信信号強度を抽出する(S203)。接触確認部125は、記録DB123を参照し、過去14日間の接触情報のうち、取得した感染者の暗号化済み識別情報に該当する全ての接触情報から受信信号強度を抽出する。
【0035】
続いて、ユーザ端末100は、受信信号強度から接触を確認する(S204~S207)。接触確認部125は、抽出した感染者の受信信号強度に基づいて、感染者との接触を確認する。具体的には、接触確認部125は、受信信号強度に基づいて見かけの距離を算出し(S204)、所定の基準距離に対する見かけの距離の重みづけを算出し(S205)、重みづけの合計を求める(S206)。さらに、接触確認部125は、重みづけの合計値により接触を判定する(S207)。
【0036】
受信信号強度を用いた接触確認の具体例について説明する。ビーコン信号の発信機及び受信機間の距離dと、受信機が測定するビーコン信号の受信信号強度との関係は、次の式で表される。
d=10^((TxPower-RSSI)/20) ・・・(1)
式(1)において、TXPowerは発信機と受信機を1m離した状態でビーコン信号を受信するときの受信信号強度である。ここでは、一例として-40dBmとする。
【0037】
例えば、実際に受信した際の受信信号強度RSSIが-40dBmの場合、式(1)より、距離dは次のように求められる。
d=10^((-40-(-40)))/20)=10^0=1m
【0038】
本実施の形態適用前では、電波の受信指向性は全方位のため、人と人の向きは関係なくRSSIは-40dBmで一定となる。これに対し、本実施の形態では、使用する受信デバイスの受信指向性は人の顔の前面を向いているため、人と人の向きによって、RSSIが変動する。この向きによる変動を評価するため、基準値に対する重みづけとして数値化する。具体的には、式(1)よりビーコン信号の受信信号強度から算出される距離を見かけの距離として計算し、この見かけの距離に対し、基準距離(例えば1m)により重みづけの係数(指標)を算出する。例えば、重みづけは、(基準距離)/(見かけの距離)として算出されるが、別の計算式を用いてもよい。さらに、この重みづけの計算を時間経過ごとに行い、所定期間内で重みづけの合計を求める。
【0039】
例えば、1分毎の受信信号強度から求めた距離に重みづけを行い、10分間の合計をとる場合、受信信号強度が常に-40dBmであれば合計値は10となる。この10を合計値の基準として、接触度合いを判定する。人の顔や体の向きとその状態を維持した時間によって重みづけの合計が変わるため、合計値と基準値とを比較して、感染リスクを判定する。以下の表1~表3に、それぞれ人の向きが異なる場合における、ビーコン信号の受信信号強度と接触確認の目安になる10分間の重みづけの算出例を示す。
【0040】
表1は、人と人が向かい合って対面を10分間維持した場合の算出例である。この場合、重みづけが1.0前後で一定となり、合計が9.72と基準の10に近くなるため、感染の可能性が高いと判定される。
【表1】
【0041】
表2は、人と人が向かい合って対面を5分間維持した後、一方の人が横を向いた場合の算出例である。この場合、5分後から重みづけが減少し、合計が5.87となるため、感染の可能性が低いと判定される。
【表2】
【0042】
表3は、人と人が向かい合って対面を3分間維持した後、両者が背中を向けあって反対側を向いた場合の算出例である。この場合、3分後から重みづけが大きく減少し、合計が4.15となるため、さらに感染の可能性が低いと判定される。
【表3】
【0043】
続いて、ユーザ端末100は、接触の判定結果を出力する(S208)。接触確認部125は、ユーザ端末100の表示部などに、接触度合いに応じたアラートを通知する。接触確認部125は、判定結果を用い、接触確認の際にどの程度の感染リスクがあったかを出力する。接触確認部125は、感染リスクに応じて、適切な行動や相談方法等のメッセージを出力してもよい。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、無線信号を用いた接触確認システムにおいて、電波の受信指向性を持たせた受信デバイスを用意し、それを人の顔や体の向きに対応するように配置する。これにより、人の顔や体の向きによって、受信信号強度が変わるため、感染リスクを考慮して、精度よく接触度合いを評価することができる。さらに、この確認結果を用いることで、医療機関での精密検査の必要の有無や緊急度の判定を行うことが可能となる。
【0045】
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態は、実施の形態1のユーザ端末の情報処理部において、さらに無指向性のビーコン受信部を備える例である。
【0046】
図7は、本実施の形態に係る情報処理部120の構成例を示している。図7に示すように、情報処理部120は、実施の形態1の構成に加えて、ビーコン受信部127、受信信号強度測定部128、記録DB129をさらに備えている。なお、情報処理部以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0047】
ビーコン受信部(第2のビーコン受信部)127は、BLE等の通信規格にしたがって、周囲のユーザ端末100から無線送信されたビーコン信号を受信する。受信するビーコン信号は、受信デバイス110が受信するビーコン信号と同じである。ビーコン受信部127の受信アンテナ127aは、ビーコン発信部126と同様、無指向性アンテナであり、全方位に向かう受信指向性を有する。なお、送信アンテナ126aと受信アンテナ127aは、同じ特性であるため、1つの送受信アンテナにより構成してもよい。
【0048】
受信信号強度測定部(第2の受信信号強度測定部)128は、ビーコン受信部127が受信したビーコン信号の第2の受信信号強度を測定する。記録DB(第2の接触情報記録部)129は、記録制御部122の制御にしたがって、ビーコン受信部127が受信したビーコン信号の送信元ユーザの暗号化済み識別情報及び受信信号強度測定部128が測定したビーコン信号の第2の受信信号強度を含む第2の接触情報を記録する。
【0049】
本実施の形態では、記録制御部122は、実施の形態1のように受信デバイス110から取得した第1の接触情報を記録DB123に記録し、さらに、ビーコン受信部127が受信したビーコン信号の第2の接触情報を記録DB129に記録するよう制御する。記録制御部122は、第1の接触情報の記録と同様、所定期間、ビーコン受信部127が同じ識別情報のビーコン信号を受信した場合に、ビーコン信号の送信元ユーザの暗号化済み識別情報及び第2の受信信号強度を、受信時間とともに記録DB129に記録する。接触確認部125は、記録DB129に記録されている、所定期間(第2の所定期間)において感染者のユーザ端末100から送信され測定されたビーコン信号の受信信号強度が所定の強度以上であった場合に、受信デバイス110が受信したビーコン信号の第1の受信信号強度に基づいて感染者のユーザ端末100との接触度合いを評価する。このとき、第2の所定期間内における第1の受信信号強度の合計値に基づいて接触度合を評価する。第2の所定期間は、実施の形態1で合計値を求めた第1の所定期間と同じ期間でもよいし、異なる期間でもよい。
【0050】
図8は、本実施の形態に係るユーザ端末100の接触確認処理の例を示している。図8に示すように、実施の形態1と同様、ユーザ端末100は、感染者情報を取得し(S201)、感染者の接触情報が記録されていると判定された場合(S202/Yes)、第2の受信信号強度が大きいか否か判定する(S210)。接触確認部125は、記録DB129を参照し、ビーコン受信部127が受信したビーコン信号の第2の受信信号強度のうち、感染者の識別情報に該当する第2の受信信号強度が所定の強度以上か否か判定する。第2の受信信号強度が所定の強度よりも小さい場合(S210/No)、処理を終了する。
【0051】
一方、第2の受信信号強度が所定の強度以上の場合(S210/Yes)、実施の形態1と同様、第1の受信信号強度を抽出し(S203)、第1の受信信号強度から接触を確認し(S204~S207)、判定結果を出力する(S208)。
【0052】
以上のように、実施の形態1のユーザ端末において、さらに無指向性のビーコン受信部を備え、そのビーコン受信部が受信したビーコン信号の受信信号強度が大きい場合に、実施の形態1の接触確認を行ってもよい。これにより、接触確認アプリケーションと同等の機能により接触が確認された場合に実施の形態1の接触確認を行うことができるため、確認対象を絞りこんだ上で接触を詳細に判断できる。
【0053】
(実施の形態3)
以下、図面を参照して実施の形態3について説明する。本実施の形態は、実施の形態1または2のユーザ端末において、受信デバイスを送受信デバイスとする例である。
【0054】
図9は、本実施の形態に係る接触度確認システムの構成例を示している。図9に示すように、本実施の形態に係る接触度確認システム1では、ユーザ端末100は、受信デバイス110の代わりに送受信デバイス130を備えている。送受信デバイス130は、実施の形態1の受信デバイス110と同様に、ビーコン信号を受信する受信機であるとともに、さらに、ビーコン信号を発信する発信機でもある。
【0055】
図10は、本実施の形態に係る送受信デバイス130の構成例を示している。図10に示すように、送受信デバイス130は、実施の形態1の構成に加えて、ビーコン発信部114をさらに備えている。ビーコン発信部(信号発信機)114は、BLE等の通信規格にしたがってビーコン信号を無線送信する。送信するビーコン信号は、実施の形態1で送信するビーコン信号と同様である。ビーコン発信部114の送信アンテナ114aは、ビーコン受信部111と同様、指向性アンテナであり、図3に示したように、人の所定の位置に装着することにより、人の向きに対応する送信指向性を有している。受信アンテナ111aと送信アンテナ114aは、同じ特性であるため、1つの送受信アンテナにより構成してもよい。この例では、ビーコン受信部111とビーコン発信部114の両方が人の向きに対応する指向性を有しているが、いずれか一方のみが人の向きに対応する指向性を有していてもよい。なお、本実施の形態に係る情報処理部120は、実施の形態1の構成から、ビーコン発信部126を除いた構成となる。
【0056】
以上のように、実施の形態1または2のユーザ端末において、送受信デバイスを備え、受信指向性と同様、人の向きに対応するように送信指向性を持たせてもよい。これにより、送信側の人の向きに応じて受信信号強度がさらに変動するため、より精度よく接触を確認することができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0058】
上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。各装置の機能(処理)を、CPUやメモリ等を有するコンピュータにより実現してもよい。例えば、記憶装置に実施形態における方法(接触情報記録方法や接触確認方法)を行うためのプログラムを格納し、各機能を、記憶装置に格納されたプログラムをCPUで実行することにより実現してもよい。
【0059】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0060】
1 接触度確認システム
100 ユーザ端末
110 受信デバイス
111 ビーコン受信部
111a 受信アンテナ
112 受信信号強度測定部
113 接触情報通知部
114 ビーコン発信部
114a 送信アンテナ
120 情報処理部
121 接触情報取得部
122 記録制御部
123、129 記録DB
124 感染者情報取得部
125 接触確認部
126 ビーコン発信部
126a 送信アンテナ
127 ビーコン受信部
127a 受信アンテナ
128 受信信号強度測定部
130 送受信デバイス
200 通知サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10