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特許7543892無人航空機、無人航空機の制御方法、無人航空機の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】無人航空機、無人航空機の制御方法、無人航空機の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20240827BHJP
   B64D 17/80 20060101ALI20240827BHJP
   B64D 25/00 20060101ALI20240827BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20240827BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240827BHJP
   B64U 20/87 20230101ALI20240827BHJP
   B64U 80/82 20230101ALI20240827BHJP
   B64U 101/16 20230101ALN20240827BHJP
【FI】
B64C39/02
B64D17/80
B64D25/00
B64D47/08
B64U10/13
B64U20/87
B64U80/82
B64U101:16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020211158
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022083949
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020194884
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】尾川 英明
(72)【発明者】
【氏名】会津 直哉
(72)【発明者】
【氏名】倉重 規夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】松本 栄治
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106103275(CN,A)
【文献】国際公開第2020/032262(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/178898(WO,A1)
【文献】特開2017-218141(JP,A)
【文献】特開2019-077350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00 - B64U 101/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行中に、周囲にある飛行中に故障した無人航空機を検出する故障航空機検出部と、
前記故障した無人航空機を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置で撮影された撮像情報を解析することで、前記故障した無人航空機の捕獲手段を決定する捕獲手段決定部と、
前記捕獲手段決定部で決定した捕獲手段で前記故障した無人航空機を捕獲して所定の場所まで運搬する動作制御部と
前記故障した無人航空機の機体から、自機に搭載した機構により把持することが可能な部位を検出する把持部位検出部と、を備え、
前記捕獲手段決定部は、前記故障した無人航空機の姿勢が安定していると判定した場合には、前記把持部位検出部で検出された部位を把持することで前記故障した無人航空機を捕獲することを決定し、姿勢が安定していないと判定した場合には、前記故障した無人航空機を網で捕獲することを決定する
ことを特徴とする無人航空機。
【請求項2】
パラシュート機構部をさらに備え、
前記動作制御部は、前記故障した無人航空機を捕獲した後、所定値以上の速度で降下していると判定すると、前記パラシュート機構部を使用して飛行することで前記故障した無人航空機を運搬する
ことを特徴とする請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
飛行中に、周囲にある、故障して墜落した無人航空機を検出する故障航空機検出部と、
前記墜落した無人航空機を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置で撮影された撮像情報を解析することで、前記墜落した無人航空機の捕獲手段を決定する捕獲手段決定部と、
前記捕獲手段決定部で決定した捕獲手段で前記墜落した無人航空機を捕獲して所定の場所まで運搬する動作制御部と、
前記墜落した無人航空機の機体から、自機に搭載した機構により把持することが可能な部位を検出する把持部位検出部と、を備え、
前記捕獲手段決定部は、前記撮像装置で撮影された撮像情報を解析することで、
前記墜落した無人航空機の周辺に捕獲作業の障害となる可能性がある障害物があり、当該障害物の高さが前記墜落した無人航空機の高さよりも低く、且つ当該障害物と前記検出された無人航空機との間の距離が所定値以上あることを認識すると、前記墜落した無人航空機を網で捕獲することを決定し、
前記墜落した無人航空機の周辺に捕獲作業の障害となる可能性がある障害物があり、当該障害物の高さが前記検出された無人航空機の高さよりも低く、且つ当該障害物と前記検出された無人航空機との間の距離が所定値未満であることを認識し、前記把持部位検出部で把持することが可能な部位が検出されると、当該部位を把持することで前記故障した無人航空機を捕獲することを決定し、
前記障害物の高さが前記墜落した無人航空機の高さ以上であることを認識したとき、前記網で捕獲することが決定されず、且つ前記把持部位検出部で把持することが可能な部位が検出されなかったとき、または、前記網で捕獲することを決定した後、前記網の中に前記墜落した無人航空機を捕獲することができなかったことを検知したときには、前記網に前記墜落した無人航空機のプロペラ部を絡ませて捕獲することを決定する
ことを特徴とする無人航空機。
【請求項4】
撮像装置を搭載した無人航空機が、
飛行中に、周囲にある飛行中に故障した無人航空機または故障して墜落した無人航空機を検出し、
前記撮像装置で前記故障した無人航空機を撮影し、撮影した撮像情報を解析することで、前記故障した無人航空機の捕獲手段を決定し、
決定した捕獲手段で前記故障した無人航空機を捕獲して所定の場所まで運搬し、
前記故障した無人航空機の機体から、自機に搭載した機構により把持することが可能な部位を検出し、
前記捕獲手段の決定は、前記故障した無人航空機の姿勢が安定していると判定した場合には、検出された前記把持することが可能な部位を把持することで前記故障した無人航空機を捕獲することを決定し、姿勢が安定していないと判定した場合には、前記故障した無人航空機を網で捕獲することを決定する
ことを特徴とする無人航空機の制御方法。
【請求項5】
撮像装置を搭載した無人航空機に、
飛行中に、周囲にある飛行中に故障した無人航空機または故障して墜落した無人航空機を検出する機能と、
前記撮像装置で前記故障した無人航空機を撮影し、撮影した撮像情報を解析することで、前記故障した無人航空機の捕獲手段を決定する機能と、
決定した捕獲手段で前記故障した無人航空機を捕獲して所定の場所まで運搬する機能と、
前記故障した無人航空機の機体から、自機に搭載した機構により把持することが可能な部位を検出する機能と、を有し、
前記捕獲手段を決定する機能は、前記故障した無人航空機の姿勢が安定していると判定した場合には、検出された前記把持することが可能な部位を把持することで前記故障した無人航空機を捕獲することを決定し、姿勢が安定していないと判定した場合には、前記故障した無人航空機を網で捕獲することを決定する
ことを実行させる無人航空機の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機、無人航空機の制御方法、無人航空機の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な機能を搭載した無人航空機が普及している。無人航空機を利用することで、人が侵入できないような場所においても、測量、点検、または災害救助等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-215874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人航空機には、飛行中に故障して制御不能になった場合に安全に地上に着陸させるために、パラシュート等の衝撃を吸収する機構が搭載されている。しかし、故障した無人航空機は着陸場所を選ぶことができない。そのため、故障した無人航空機が川または海に水没して修理不可能な状態になったり、山林または立ち入り禁止エリアに着陸して回収不可能な状態になったりすることがあり、このような場合に、当該無人航空機を再利用できなくなるという問題があった。
【0005】
また、故障した無人航空機が着陸した地点に人がいたり設置した器物があったりした場合に、当該無人航空機が人や器物に接触または衝突して危害を及ぼす可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は、飛行中に制御不能になった他の無人航空機を、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収可能な場所まで運搬する無人航空機、無人航空機の制御方法、無人航空機の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の無人航空機は、飛行中に、周囲にある飛行中に故障した無人航空機を検出する故障航空機検出部と、前記故障した無人航空機を撮影する撮像装置と、前記撮像装置で撮影された撮像情報を解析することで、前記故障した無人航空機の捕獲手段を決定する捕獲手段決定部と、前記捕獲手段決定部で決定した捕獲手段で前記故障した無人航空機を捕獲して所定の場所まで運搬する動作制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の形態の無人航空機は、飛行中に、周囲にある、故障して墜落した無人航空機を検出する故障航空機検出部と、前記墜落した無人航空機を撮影する撮像装置と、前記撮像装置で撮影された撮像情報を解析することで、前記墜落した無人航空機の捕獲手段を決定する捕獲手段決定部と、前記捕獲手段決定部で決定した捕獲手段で前記墜落した無人航空機を捕獲して所定の場所まで運搬する動作制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の無人航空機の制御方法は、撮像装置を搭載した無人航空機が、飛行中に、周囲にある飛行中に故障した無人航空機を検出し、前記撮像装置で前記故障した無人航空機を撮影し、撮影した撮像情報を解析することで、前記故障した無人航空機の捕獲手段を決定し、決定した捕獲手段で前記故障した無人航空機を捕獲して所定の場所まで運搬することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の無人航空機の制御プログラムは、撮像装置を搭載した無人航空機に、飛行中に、周囲にある飛行中に故障した無人航空機を検出する機能と、前記撮像装置で前記故障した無人航空機を撮影し、撮影した撮像情報を解析することで、前記故障した無人航空機の捕獲手段を決定する機能と、決定した捕獲手段で前記故障した無人航空機を捕獲して所定の場所まで運搬する機能を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無人航空機、無人航空機の制御方法、無人航空機の制御プログラムによれば、飛行中に制御不能になった他の無人航空機を、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収可能な場所まで運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1、第2実施形態による無人航空機1、2の通常時の外観斜視図である。
図2】本発明の第1、第2実施形態による無人航空機1、2の第1捕獲機構部16が延伸した状態の外観斜視図である。
図3】本発明の第1、第2実施形態による無人航空機1、2の第2捕獲機構部17が延伸した状態の外観斜視図である。
図4】本発明の第1、第2実施形態による無人航空機1、2のパラシュート機構部18が開放された状態の外観斜視図である。
図5】本発明の第1、第2実施形態による無人航空機1、2の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第1実施形態による無人航空機1の制御部20の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の第1、第2実施形態による無人航空機1、2が故障した無人航空機Xを把持した状態を示す外観斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態による無人航空機2の制御部20の動作を示すフローチャートである。
図9】(a)は、本発明の第2実施形態による無人航空機2とその周辺にある高さが低い障害物を示す図であり、(b)は、無人航空機2とその周辺にある高さが高い障害物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態として、所定エリアで同時に飛行している複数の無人航空機の中のいずれかの無人航空機Xが故障して制御不能となったときに、この故障した無人航空機Xを安全な場所まで運搬する無人航空機について説明する。
【0014】
〈第1実施形態による無人航空機の構成〉
本発明の第1実施形態による無人航空機の構成について、図1図5を参照して説明する。本実施形態による無人航空機1は、胴体部11と、胴体部11にアーム部12-1~12-4を介して取り付けられた4つのプロペラ部13-1~13-4と、これらのプロペラ部13-1~13-4それぞれを駆動するプロペラ駆動部13a-1~13a-4と、カメラ装置14と、無線通信部15と、第1捕獲機構部16と、第1捕獲機構部16を駆動する第1捕獲駆動部16aと、第2捕獲機構部17と、第2捕獲機構部17を駆動する第2捕獲駆動部17aと、パラシュート機構部18と、パラシュート機構部18を駆動するパラシュート駆動部18aと、制御部20とを備える。
【0015】
カメラ装置14は、自無人航空機1の周囲を撮影する。無線通信部15は、所定距離内にある他の無人航空機との無線通信を行う。
【0016】
第1捕獲機構部16は把持機構161を有し、通常時は飛行の妨げにならないように胴体部11の下部または内部に設置されている。第1捕獲機構部16は、把持機構161の使用時には、第1捕獲駆動部16aの駆動により図2に示すように胴体部11の外に延伸される。
【0017】
第2捕獲機構部17は、開口部171を有する袋状の網172を有し、第1捕獲機構部16と同様に、通常時は胴体部11の下部または内部に設置されている。第2捕獲機構部17は、網172の使用時には、第2捕獲駆動部17aの駆動により図3に示すように胴体部11の外に延伸される。
【0018】
パラシュート機構部18は、通常時は飛行の妨げにならないように胴体部11の上部または内部に設置されている。パラシュート機構部18は、パラシュート使用時には、パラシュート駆動部18aの駆動により図4に示すように胴体部11に接続された状態で胴体部11の外に放出され、パラシュートが開状態になる。
【0019】
制御部20は例えばCPUで構成され、撮像情報解析部21と、救難信号取得部22と、故障航空機検出部23と、捕獲手段決定部24と、把持部位検出部25と、動作制御部26とを有する。
【0020】
撮像情報解析部21は、カメラ装置14で撮影された撮像情報を解析する。救難信号取得部22は、故障した他の無人航空機Xから故障を通知する救難信号が発信され無線通信部15で受信されると、この救難信号を取得する。
【0021】
故障航空機検出部23は、撮像情報解析部21による撮像情報の解析結果、または、救難信号取得部22による故障した無人航空機Xからの救難信号の取得状況に応じて、周囲にある、飛行中に故障した無人航空機Xを検出する。捕獲手段決定部24は、検出した無人航空機Xの姿勢が安定しているか、または姿勢が安定せずに回転しているかを判定し、安定していると判定した場合には、捕獲手段として、当該無人航空機Xを把持して捕獲することを決定する。また捕獲手段決定部24は、当該無人航空機Xの姿勢が安定せずに回転していると判定した場合には、当該無人航空機Xを網で捕獲することを決定する。
【0022】
把持部位検出部25は、捕獲手段決定部24で無人航空機Xを把持して捕獲することが決定されたときに、第1捕獲機構部16で把持する無人航空機Xの部位を検出する。
【0023】
動作制御部26は、捕獲手段決定部24で決定された情報、および把持部位検出部25で検出された情報に基づいて、プロペラ駆動部13a-1~13a-4、第1捕獲駆動部16a、第2捕獲駆動部17a、およびパラシュート駆動部18aの動作を制御する。
【0024】
〈第1実施形態による無人航空機の動作〉
所定エリアで同時に飛行する複数の無人航空機の中の1台の無人航空機1で実行される動作について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0025】
無人航空機1は、飛行中、カメラ装置14で周囲を撮影し、撮影した撮像情報を撮像情報解析部21で解析することで、周囲を飛行する無人航空機を検出し、その動き情報を取得している。周囲の無人航空機の検出には既知のCNN(Convolutional Neural Network)による物体検出の技術を用いることができる。また無人航空機の動き情報は、フレーム毎の比較処理、または動き検出処理を用いて取得することができる。
【0026】
ここで、飛行している複数の無人航空機の中の1台の無人航空機Xが故障して制御不能になり降下し始めたものとする。このとき、無人航空機Xにおいて助けを求めるための救難信号の発信が可能な状態であれば、救難信号が発信される。
【0027】
無人航空機1では、制御部20の故障航空機検出部23が、撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて、下方向に所定値以上の速度で移動している無人航空機の存在を認識すると、当該無人航空機を故障した無人航空機Xとして検出する。また故障航空機検出部23は、撮像情報の解析結果に基づいて、パラシュートが機体から放出されているにも関わらず正常に開いていない無人航空機の存在を認識した場合も、当該無人航空機を故障した無人航空機Xとして検出する。または、故障した無人航空機Xから発信された救難信号が無線通信部15から受信されて救難信号取得部22で取得されると、当該信号に基づいて故障航空機検出部23が故障した無人航空機Xを検出する(S1の「YES」)。
【0028】
次に、捕獲手段決定部24が、撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて、検出した無人航空機Xの姿勢が安定しているか、または姿勢が安定せずに回転しているかを判定する(S2)。ここでは、捕獲手段決定部24は、撮像情報解析部21の解析結果により、撮像情報中の無人航空機Xの形や特徴点の形状変化、または輪郭変化の加速度が所定値よりも小さければ無人航空機Xの姿勢が安定していると判定する。また捕獲手段決定部24は、これらの変化の加速度が所定以上であれば、無人航空機Xの姿勢が安定せずに回転していると判定する。
【0029】
ここで、無人航空機Xの姿勢が安定していると判定したときには(S2の「YES」)、捕獲手段決定部24は、当該無人航空機Xを把持して捕獲することを決定する。無人航空機Xを把持して捕獲することが決定されると、把持部位検出部25は、当該無人航空機Xとの通信が可能であれば当該無人航空機Xから無人航空機Xの形状情報を取得する。そして把持部位検出部25は、取得した形状情報に基づいて、無人航空機Xの機体から、第1捕獲機構部16で把持する部位を検出する。
【0030】
また、把持部位検出部25は、故障した無人航空機Xとの通信が不可能なときには、撮像情報解析部21で解析された撮像情報の解析結果に基づいて、無人航空機Xの機体から、第1捕獲機構部16で把持する部位を検出する。
【0031】
具体的には把持部位検出部25は、TOF(Time of Flight)カメラまたは2眼(マルチ)カメラを用いることでまず無人航空機Xまでの距離を計測する。そして把持部位検出部25は、計測した距離と、撮像情報の画角および無人航空機Xの大きさから、無人航空機Xの各部の太さや長さを認識する。
【0032】
ここで、計測した無人航空機Xまでの距離Dは、以下の式(1)および(2)で示される。
【0033】
D= (H/2 + αh) / (tan(θh/2))・・・(1)
D= (H/2 + αv) / (tan(θv/2))・・・(2)
【0034】
上記式(1)において、Hは無人航空機Xの水平方向の長さであり、αhは撮像情報の水平方向の余裕分(無人航空機X以外の部分の水平方向の長さ)であり、θhはカメラ装置14の水平視野角である。また、上記式(2)において、Hは無人航空機Xの垂直方向の長さであり、αvは撮像情報の垂直方向の余裕分(無人航空機X以外の部分の垂直方向の長さ)であり、θvはカメラ装置14の垂直視野角である。この式(1)、(2)により、Hを算出することで無人航空機Xの大きさを求めることができ、これに基づいて各部の太さや長さを求めることができる。
【0035】
次に把持部位検出部25は、認識した情報に基づいて無人航空機Xの機体から、第1捕獲機構部16で掴むことが可能な大きさ、太さ等を有する部分を候補として選択し、その中から、自無人航空機1の性能を考慮して把持する部位を検出する(S3)。
【0036】
第1捕獲機構部16で把持する無人航空機Xの部位としては例えば、胴体部、アーム部、開いていないパラシュートの胴体部への取り付け部品に近い箇所、または機体下部に取り付けられたパイプ状のバー等が検出される。
【0037】
把持部位検出部25で把持する部位が検出されると、動作制御部26は撮像情報解析部21で解析された情報に基づいて、無人航空機Xの落下速度および方向から、落下ルートを把握する。そして、動作制御部26は把握した情報に基づいて、捕獲ポイント(位置)を決定するとともに、捕獲時の自無人航空機1の姿勢を決定する。
【0038】
動作制御部26は、第1捕獲駆動部16aを駆動して図2に示すように第1捕獲機構部16を胴体部11から延伸させ、決定した位置および姿勢で無人航空機Xを捕獲するようにプロペラ駆動部13a-1~13a-4等を駆動する。そして動作制御部26は、第1捕獲駆動部16aを駆動させて、ステップS3で検出した無人航空機Xの部位、例えば図7に示すように胴体部11を把持機構161が把持して無人航空機Xを捕獲する(S4)。
【0039】
また、ステップS2において無人航空機Xの姿勢が安定せずに回転していると判定したときには(S2の「NO」)、捕獲手段決定部24は、当該無人航空機Xを網172で捕獲することを決定する。無人航空機Xを網172で捕獲することが決定されると、動作制御部26は第2捕獲駆動部17aを駆動して図3に示すように第2捕獲機構部17を胴体部11から延伸させ、網172で無人航空機Xを捕獲する(S5)。
【0040】
ステップS4またはS5の処理により無人航空機Xが捕獲され、動作制御部26が撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて無人航空機Yを捕獲したことを検知すると、自無人航空機1の水平方向のバランスがとれるように、第1捕獲機構部16または第2捕獲機構部17の延伸方向、飛行姿勢等を調整する(S6)。
【0041】
次に動作制御部26は、捕獲した無人航空機Xの重みで自無人航空機1が所定値以上の速度で降下しているか否かを判定する(S7)。ここで、無人航空機1が所定値以上の速度で降下していないと判定した場合には(S7の「NO」)、動作制御部26の制御により通常飛行運転を行い、捕獲した無人航空機Xを、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収できる場所まで運搬する(S8)。
【0042】
また、無人航空機1が所定値以上の速度で降下していると判定した場合には、動作制御部26はパラシュートを使用することを決定し(S9)、パラシュート駆動部18aを駆動してパラシュート機構部18を胴体部11の外に放出して飛行する。その場合に、カメラ装置14で上方向を撮影した撮像情報を撮像情報解析部21が解析することで、パラシュートが適切に開いているかを動作制御部26確認してもよい。そして、浮力が大きいためにパラシュートが適切に開いていないと判断すると、動作制御部26は、プロペラ駆動部13a-1~13a-4の駆動を制御してパラシュートが適切に開くように降下速度を調整する。そして、動作制御部26の制御により、捕獲した無人航空機Xを、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収できる場所まで運搬する(S8)。
【0043】
以上の第1実施形態によれば、飛行中に制御不能になった他の無人航空機を、同時に周囲を飛行している他の無人航空機が捕獲して、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収可能な場所まで運搬することができる。
【0044】
上述した実施形態では、故障した無人航空機Xを1台の無人航空機1が捕獲して運搬する場合について説明したが、無人航空機Xを捕獲した無人航空機1が所定値以上の速度で降下してしまう場合、複数の無人航空機で運搬するようにしてもよい。この場合は、無人航空機Xを捕獲した無人航空機1が所定値以上の速度で落下しているときに、周囲を飛行している他の無人航空機2がこれを検出し、無人航空機1と同様の処理を実行することで、無人航空機1と協働して無人航空機Xを運搬する。
【0045】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態として、所定エリアで同時に飛行している複数の無人航空機の中のいずれかの無人航空機Xが故障して墜落したときに、この墜落した無人航空機Yを安全な場所まで運搬する無人航空機について説明する。
【0046】
〈第2実施形態による無人航空機の構成〉
本発明の第2実施形態による無人航空機2の構成は、第1実施形態で説明した無人航空機1の構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態において無人航空機2の制御部20の故障航空機検出部23は、撮像情報解析部21による撮像情報の解析結果、または、救難信号取得部22による墜落した無人航空機Yからの救難信号の取得状況に応じて、周囲にある、墜落した無人航空機Yを検出する。
【0048】
また捕獲手段決定部24は、検出した無人航空機Yの周りの障害物の有無情報、および障害物がある場合の当該障害物の大きさ等の情報を取得することで、当該無人航空機Yの捕獲手段を決定する。
【0049】
〈第2実施形態による無人航空機の動作〉
墜落した無人飛行機Yの周辺を飛行する無人航空機2で実行される動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0050】
無人航空機2は、飛行中、カメラ装置14が周囲を撮影し、撮影した撮像情報を撮像情報解析部21が解析することで、周囲にある無人航空機の情報を取得している。ここで、他の無人航空機Yが故障して墜落したものとする。このとき、無人航空機Yにおいて助けを求めるための救難信号の発信が可能な状態であれば、救難信号が発信される。
【0051】
無人航空機2では、制御部20の故障航空機検出部23が、撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて、飛行エリア内の地上の位置に停止している無人航空機の存在を認識すると、当該無人航空機を、故障により墜落した無人航空機Yとして検出する。または、墜落した無人航空機Yから発信された救難信号が無線通信部15から受信されて救難信号取得部22で取得されると、当該信号に基づいて故障航空機検出部23が墜落した無人航空機Yを検出する(S11の「YES」)。
【0052】
無人航空機Yを検出すると、動作制御部26がプロペラ駆動部13a-1~13a-4等を駆動して墜落した無人航空機Yに接近する。そして、無人航空機Yに接近した状態でカメラ装置14が無人航空機Yおよびその周辺を撮影し、撮影した撮像情報を撮像情報解析部21が取得して解析する(S12)。
【0053】
次に、捕獲手段決定部24が、撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて、無人航空機Yの周辺に当該無人航空機Yの捕獲作業の障害となる可能性がある障害物があるか否かを判定する(S13)。ここでは捕獲手段決定部24が、無人航空機Yの周辺に2つの障害物P1およびP2を検出したものとする(S13の「YES」)。
【0054】
無人航空機Yの周辺に2つの障害物P1およびP2を検出すると、捕獲手段決定部24はさらに撮像情報の解析結果に基づいて、当該障害物P1、P2の高さ情報、および当該障害物P1、P2と無人航空機Yとの間の距離の情報を取得する(S14)。障害物P1、P2の高さ情報としては、既知の技術を用いて例えば、TOFカメラまたは2眼カメラを用いて無人航空機Yおよびその周辺を撮影したときの焦点距離に基づいて、無人航空機Yを基準として高いか、または低いかを算出する。
【0055】
そして、捕獲手段決定部24は、取得した情報に基づいて、網172で無人航空機Yを捕獲することが可能であるか否かを判断する(S15)。具体的には、図9(a)に示すように、障害物P1およびP2の高さが無人航空機Yの高さよりも低く、且つ障害物P1と無人航空機Yとの間の距離L1または障害物P2と無人航空機Yとの間の距離L2が所定値以上であることを認識すると、この距離L1またはL2の隙間を利用して網172で無人航空機Yを捕獲することが可能と判断する。また捕獲手段決定部24は、図9(b)に示すように、障害物P1およびP2の高さが無人航空機Yの高さ以上であることを認識したとき、または、障害物P1、P2と無人航空機Yとの間の距離L1、L2が所定値未満であることを認識したときには、網172で無人航空機Yを捕獲することが不可能と判断する。網172は、胴体部11内に畳んで格納可能であるため、把持機構161を用いて捕獲する場合よりも網172を用いて捕獲する場合の方が、無人航空機Yや障害物P1およびP2から離れた位置から安全に作業を行うことができる。
【0056】
ここで、網172で無人航空機Yを捕獲可能であると判断すると(S15の「YES」)、捕獲手段決定部24は無人航空機Yを網172で捕獲することを決定し、無人航空機Yを捕獲するために網172を投網する動作を行う際の自無人航空機2の高度を算出する(S16)。この高度は、無人航空機2の胴体部11から第2捕獲機構部17を延伸させることで網172を投網したときに、網172が無人航空機Yに届く高さで算出される。
【0057】
捕獲手段決定部24が無人航空機2の高度を算出すると、動作制御部26は、プロペラ駆動部13a-1~13a-4を駆動させて自無人航空機2を算出された高度まで移動させる(S17)。そして動作制御部26は第2捕獲駆動部17aを駆動して第2捕獲機構部17を胴体部11から延伸させて投網動作を実行し、網172で無人航空機Xを捕獲する(S18)。
【0058】
次に動作制御部26が、撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて、無人航空機Yを捕獲したことを検知すると(S19の「YES」)通常飛行運転を行い、捕獲した無人航空機Yを、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収できる場所まで運搬する(S20)。
【0059】
ステップS13において、捕獲手段決定部24が、無人航空機Yの周辺に障害物がないと判定すると(S13の「NO」)ステップS16に移行し、無人航空機2は無人航空機Yを捕獲するために網172を投網する動作を行う際の機体の高度を算出し(S16)、算出した高度まで移動して(S17)網172で無人航空機Yを捕獲する(S18)。この場合は、網172を大きく広げて無人航空機Yの機体全体を包み込むように確実に捕獲する。
【0060】
また、ステップS15において、網172で無人航空機Yを捕獲することが不可能であると判断すると(S15の「NO」)、捕獲手段決定部24はさらに、把持機構161により無人航空機Yを把持して捕獲することが可能であるか否かを判定する(S21)。ここで捕獲手段決定部24は、障害物P1およびP2の高さが無人航空機Yの高さよりも低く、且つ障害物P1、P2と無人航空機Yとの間の距離L1、L2が所定値以下であることを認識しても、把持部位検出部25で把持可能な部位が検出されれば、把持機構161により無人航空機Yを捕獲可能であると判断する。把持部位検出部25は、把持可能な部位を、第1実施形態で説明したように無人航空機Yから取得する形状情報、または撮像情報解析部21で解析された撮像情報の解析情報に基づいて検出する。
【0061】
ここで、無人航空機Yを把持可能と判断すると(S21の「YES」)、捕獲手段決定部24は、把持部位検出部25で検出された部位を把持することで無人航空機Yを捕獲することを決定する。そして動作制御部26は、第1実施形態で説明したように、第1捕獲駆動部16aを駆動して第1捕獲機構部16を胴体部11から延伸させ、プロペラ駆動部13a-1~13a-4等を駆動して無人航空機2を無人航空機Yに接近させる。そして、無人航空機Y内の把持可能と判断した部位、例えば胴体部11を把持機構161が把持して捕獲する(S22)。
【0062】
動作制御部26が、撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて、無人航空機Yを捕獲したことを検知すると、通常飛行運転を行い、捕獲した無人航空機Yを、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収できる場所まで運搬する(S20)。
【0063】
またステップS21において、障害物P1およびP2の高さが無人航空機Yの高さ以上であることを認識したとき、または、把持部位検出部25で把持可能な部位が検出されなかったことにより、把持機構161を用いても無人航空機Yを捕獲することが不可能であることを認識したときには(S21の「NO」)、捕獲手段決定部24は、網172に無人航空機Yのプロペラ部Y1を絡ませて捕獲することを決定する。そして動作制御部26は、第2捕獲駆動部17aを駆動して第2捕獲機構部17を胴体部11から延伸させて、網172を無人航空機Yのプロペラ部Y1~Y4のいずれかに向けて垂らす(S23)。そして動作制御部26は、無人航空機Yに対し、プロペラ部Y1~Y4の回転動作指示を送信する(S24)。
【0064】
無人航空機Yは、回転動作指示を取得するとプロペラ部Y1~Y4を回転させる。無人航空機Yのプロペラ部Y1~Y4が回転すると無人航空機2から垂らされた網172がプロペラ部Y1~Y4に絡まり、無人航空機2が無人航空機Yを捕獲した状態になる。そして、動作制御部26が、撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて、無人航空機Yを捕獲したことを検知すると、無人航空機2が無人航空機Yを、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収できる場所まで運搬する(S20)。
【0065】
また、ステップS19において、撮像情報の解析等により、無人航空機2から無人航空機Yに向けて網172を投網したが、網172の中に無人航空機Yを捕獲することができなかったことを検知した場合には(S19の「NO」)、捕獲手段決定部24は、網172に無人航空機Yのプロペラ部Y1~Y4を絡ませて捕獲することを決定する。そして動作制御部26は、無人航空機Yに対し、プロペラ部Y1の回転動作指示を送信する(S25)。これにより無人航空機Yがプロペラ部Y1を回転させると、網172がプロペラ部Y1に絡まり、無人航空機2が無人航空機Yを捕獲した状態になる。そして、動作制御部26が、撮像情報解析部21における撮像情報の解析結果に基づいて、無人航空機Yを捕獲したことを検知すると、無人航空機2が無人航空機Yを、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収できる場所まで運搬する(S20)。
【0066】
以上の第2実施形態によれば、飛行中に制御不能になり墜落した無人航空機を、周囲で飛行している他の無人航空機が捕獲して、人や器物に危害を及ぼさずに安全に着陸可能で、且つ安全に回収可能な場所まで運搬することができる。
【0067】
なお、上記の第2実施形態では、撮像情報の解析等により、無人航空機2から無人航空機Yに向けて網172を投網したが、網172の中に無人航空機Yを捕獲することができなかったことを検知した場合には(S19の「NO」)、捕獲手段決定部24が、網172に無人航空機Yのプロペラ部Y1~Y4を絡ませて捕獲する場合について説明した。このときに、無人航空機Yのプロペラ部Y1~Y4が動作不能な場合は、無人航空機2の高度、位置を制御することで、網172にプロペラ部Y1~Y4を絡ませるようにして捕獲してもよい。
【0068】
また第2実施形態において、無人航空機2が、捕獲した無人航空機Yを持ち上げられない場合、または持ち上げてもすぐに高度が低下してしまう場合には、第1実施形態で説明した場合と同様に、動作制御部26がパラシュートを使用することを決定し、パラシュート駆動部18aを駆動してパラシュート機構部18を胴体部11の外に放出して飛行するようにしてもよい。
【0069】
上述した無人航空機1または2の制御部20の機能をプログラム化してコンピュータに搭載することにより、当該コンピュータを、制御対象の無人航空機に搭載する制御部として機能させる無人航空機の制御プログラムを構築することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 無人航空機
11 胴体部
12-1~12-4 アーム部
13-1~13-4 プロペラ部
13a-1~13a―4 プロペラ駆動部
14 カメラ装置(撮像装置)
15 無線通信部
16 第1捕獲機構部
16a 第1捕獲駆動部
17 第2捕獲機構部
17a 第2捕獲駆動部
18 パラシュート機構部
18a パラシュート駆動部
20 制御部
21 撮像情報解析部
22 救難信号取得部
23 故障航空機検出部
24 捕獲手段決定部
25 把持部位検出部
26 動作制御部
161 把持機構
171 開口部
172 網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9