(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240827BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240827BHJP
H01M 50/249 20210101ALN20240827BHJP
【FI】
H01M50/204
H01M10/42 P
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2020211285
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】守田 明広
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-108414(JP,A)
【文献】特開2009-087723(JP,A)
【文献】特表2016-526272(JP,A)
【文献】特許第6345101(JP,B2)
【文献】特許第6120990(JP,B2)
【文献】特許第5998084(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/50
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池をケースに収容した電池パックであって、
前記複数の単電池のうちの少なくとも1つの単電池において、前記電池パックの
前記ケースの内面と当該単電池の表面の間に電圧検出部が配置され、
前記電圧検出部は、前記電池パックの
前記ケースの内面と接合され、且つ、検出線によって前記単電池の正極端子と配線され、
前記電圧検出部は
、前記単電池の表面側
の前記単電池との接合力
が、前記電池パックの
前記ケースの内面側
の前記ケースとの接合力
よりも強い構造を有し、
外部からの
物理的な入力で前記電池パックの
前記ケースの内面が前記単電池の表面側へ動いた際に、前記電圧検出部が前記電池パックの
前記ケースの内面から外れ、前記単電池の表面に接合されることを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、衝突時の電池パックへの衝撃をセル正極端子-セルケースの電圧を監視することにより検出するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池パックへの外部からの物理的入力があった後に電池パックのケースが元の形状に戻った場合、単電池の正極端子とケースとの間の電圧が瞬間的に上昇した後、直ちに0Vに戻る。瞬間的な電圧変化では電池ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)のサンプリング周期から漏れ、電池ECUが外部からの物理的入力を検知できず、電池パックへの外部からの物理的入力を見逃す可能性がある。また、電池ECUのサンプリング周期を細かくすると、ECUの負荷が増加するため、サンプリング周期は、概ね数十~数百msecに設定する必要がある。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電池パックへの外部からの物理的入力の検出漏れを抑制することができる電池パックを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電池パックは、複数の単電池をケースに収容した電池パックであって、
前記複数の単電池のうちの少なくとも1つの単電池において、前記電池パックの内面と当該単電池の表面の間に電圧検出部が配置され、
前記電圧検出部は、前記電池パックの内面と接合され、且つ、検出線によって前記単電池の正極端子と配線され、
前記電圧検出部は前記単電池の表面側の接合力が強く、且つ、前記電池パックの内面側の接合力が弱い構造を有し、
外部からの入力で前記電池パックの内面が前記単電池の表面側へ動いた際に、前記電圧検出部が前記電池パックの内面から外れ、前記単電池の表面に接合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、精度良く電池パックへの外部からの物理的入力を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は従来の電池パックにおける外部からの物理的な入力に伴う電圧検出部が検出する時間に対する電圧との関係の一例を示す図である。
【
図2】
図2は本開示の電池パックにおける外部からの物理的な入力に伴う電圧検出部が検出する時間に対する電圧との関係の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の電池パックの一部の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、単電池(対象単電池)の表面側の接合力が強く、且つ、電池パックの内面側の接合力が弱い構造を有する電圧検出部の外部からの物理的な入力がある前から、外部からの物理的な入力があった時を経て、外部からの物理的な入力があった後に至るまでの電圧検出部の物理的挙動の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、電圧検出部の単電池(対象単電池)の表面側の接合力が強く、且つ、電池パックの内面側の接合力が弱い構造のいくつかの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の電池パックは、複数の単電池をケースに収容した電池パックであって、
前記複数の単電池のうちの少なくとも1つの単電池において、前記電池パックの内面と当該単電池の表面の間に電圧検出部が配置され、
前記電圧検出部は、前記電池パックの内面と接合され、且つ、検出線によって前記単電池の正極端子と配線され、
前記電圧検出部は前記単電池の表面側の接合力が強く、且つ、前記電池パックの内面側の接合力が弱い構造を有し、
外部からの入力で前記電池パックの内面が前記単電池の表面側へ動いた際に、前記電圧検出部が前記電池パックの内面から外れ、前記単電池の表面に接合されることを特徴とする。
【0011】
本実施形態では、説明の便宜上、最小単位となる電池を「単電池」と呼ぶ。なお、「単電池」の代わりに、「電池セル」または、「セル」などと呼ばれてもよい。
【0012】
電気自動車等の車両の駆動用バッテリーは高容量、高出力化を図るため、セルの直列数が増え電池パックが大型化する。そのため、電池パックの搭載位置が車室外(主に床下)となり、衝突、路面干渉等によりセルへ物理的な入力(荷重、負荷等)が入る可能性がある。
図1は従来の電池パックにおける外部からの物理的な入力に伴う電圧検出部が検出する時間に対する電圧との関係の一例を示す図である。
路面干渉のような比較的小さい衝撃の場合、ケースが元の形状に戻り、
図1に示すように検出用電圧が0Vに戻り、検出電圧が保持できず、物理的な入力があっても見かけ上セル電圧は変化しないため、既存の異常検知ロジック(セル電圧監視など)では検知できない恐れがあり、また、電池ECUの性能上、瞬間的な電圧変化を見逃す可能性がある。外部からのセルへの物理的入力があった後に、電池パックの形状が元に戻るような比較的小さい衝撃の場合、物理的な入力によりセル内部の電極間距離にずれが生じ、電池抵抗が上昇し、経年使用により電池が異常劣化する、もしくは微小な漏液や内部短絡を起こし異常劣化する可能性がある。そのため、ユーザーが気づかず継続使用しセルが故障し、車両の走行不能に陥る可能性がある。また、物理的な入力を見逃し、継続してセルを使用された場合、異常劣化したセルを有した電池パックが中古車市場、中古電池市場に出回る可能性があり、故障電池パック及び/又は中古車両が誤った価値で取引される恐れがある。
【0013】
本開示によれば、電池パックへの外部からの物理的な入力があった後に検出用電圧が保持される。外部からの物理的な入力があった後に検出電圧が保持される為、精度良くセルへの物理的な入力を検出できる。また、物理的な入力判定に所定時間設けることにより、電圧検出部のノイズ等による誤検知も防ぐことが可能となる。また、本開示によれば、電池の再利用の観点からも、中古市場への異常電池パックの流失を抑制することができる。
【0014】
図2は本開示の電池パックにおける外部からの物理的な入力に伴う電圧検出部が検出する時間に対する電圧との関係の一例を示す図である。
電池パックへの外部からの物理的入力がある前は、電圧検出部は、電池パック内面に接合され、単電池の表面とは接合しておらず、電気的に浮いた状態であるため、電圧検出部の検出電圧値は、0Vである。外部からの物理的入力があった時以降は、電圧検出部が電池パックの内面から外れ、単電池の表面と接合するため、電圧検出部が導電性を有する単電池表面と電気的に接続される。これにより、正極端子と単電池表面との間に判定閾値(所定値)を超える電圧が発生し、当該検出電圧を保持することができるため、精度良く電池パックに外部からの物理的入力があったものと判定することができる。すなわち、外部からの物理的入力があった時において、路面等から電池パックに衝撃が加わることにより電池パックのケースが変形し、その後たとえケースの形状が元に戻った場合であっても単電池に衝撃が加わったことを精度良く検知することができる。
【0015】
図3は、本開示の電池パックの一部の一例を示す模式図である。
図3に示す電池パックは、電池パック内に正極端子および負極端子を有するセル(単電池)と、電圧検出部と、を有し、電圧検出部は電池パック内面に接合され、電圧検出部は電圧検出線を介してセルの正極端子と接続されている。
図4は、単電池(対象単電池)の表面側の接合力が強く、且つ、電池パックの内面側の接合力が弱い構造を有する電圧検出部の外部からの物理的入力がある前から、外部からの物理的入力があった時を経て、外部からの物理的入力があった後に至るまでの電圧検出部の物理的挙動の一例を示す図である。
本開示の電池パックは、
図3に示すように、電池パック内面とセル表面の間に電圧検出部が配置され、検出線でセル正極端子と配線されている。また、
図4に示すように、電圧検出部はパック内面側、セル表面側でそれぞれ接合力が異なる構造(接合力A>接合力B)を持つ。電圧検出部はセル表面側の接合力が強く、電池パック内面側の接合力が弱い構造を有し、外部からの入力で電池パック内面がセル表面側へ動いた際に、電圧検出部が電池パック内面から外れ、セル表面に接合される。電池パック内面側よりセル表面側の結合力を強くすることにより、外部からの入力があった時に電圧検出部がセル表面に固定され、入力時の検出電圧が保持される。外部からの入力があった後にケースが元の形状に戻っても、電圧検出部がセル表面に固定されるため、検出電圧を保持することができ、外部からの入力を検知できる。
また、電池パックへの外部からの入力後に電圧検出部をセル表面に保持させるため、電圧検出部には正極端子-セル表面の電圧(約1.5-2V)が検出されその値が保持される。検出電圧値が保持されることにより、電池ECUのサンプリング周期から漏れることなく、精度良く外部からの入力を検出することが可能となる。
【0016】
本開示の電池パックは、複数の単電池をケースに収容する。
ケースは、従来公知の電池ケースとして用いられる材料を採用することができ、例えば、金属材料、樹脂等を挙げることができる。
単電池の個数は2つ以上であれば特に限定されず、要求される電池の規模に応じて適宜設定することができる。
単電池は、従来公知の電池を採用することができ、単電池は、通常、発電要素、正極端子、負極端子を有する。
発電要素は、通常、正極と電解質層と負極を有する。正極、電解質層、負極の各材料は、特に限定されず、従来公知の電池に用いられる材料を適宜選択することができる。
正極は正極端子と接続していてもよく、負極は負極端子と接続していてもよい。
正極端子、負極端子は、従来公知の電池の端子として用いられる材料を適宜選択することができる。
単電池としては、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であってもよい。二次電池は繰り返し充放電が可能である。二次電池は、例えば車載用電池として有用である。また、単電池は、電解質が液系である液系電池であってもよく、電解質が固体電解質である固体電池であってもよい。
【0017】
電圧検出部は、複数の単電池のうちの少なくとも1つの単電池(電圧検出の対象となる単電池、以下対象単電池と称する場合がある)において、電池パックの内面と当該単電池の表面との間に配置されていればよい。電圧検出部は、複数の単電池のうちすべての単電池において、電池パックの内面と各当該単電池の表面との間に配置されていてもよい。なお、電圧検出部は、必ずしも全ての単電池に対して設けなくてもよい。電圧検出部は、電池パックへの外部からの入力が懸念される部位の近傍の単電池に対して少なくとも設けるようにしてもよい。
電圧検出部は、外部からの入力前は、電池パックの内面と接合され、且つ、検出線(電圧検出線)によって単電池(対象単電池)の正極端子と配線される。
電圧検出部は、単電池(対象単電池)の表面側の接合力が強く、且つ、電池パックの内面側の接合力が弱い構造を有する。これにより、外部からの入力で電池パックの内面が単電池(対象単電池)の表面側へ動いた際に、電圧検出部が電池パックの内面から外れ、単電池(対象単電池)の表面に接合される。
電池パックの内面は、絶縁性を有する材料で構成されていてもよく、導電性を有する材料で構成されていてもよい。絶縁性を有する材料としては樹脂等が挙げられる。導電性を有する材料としては、炭素系材料、金属材料等が挙げられる。
単電池の表面は、導電性を有する材料で構成されていてもよい。導電性を有する材料としては、炭素系材料、金属材料等が挙げられる。電圧検出部の構造が、外部からの物理的入力があった時に単電池表面を突き破り内部に侵入することが可能な構造である場合は、単電池の内部が導電性を有する材料で構成されていれば、単電池の表面は必ずしも導電性を有する材料でなくてもよく、単電池の表面は絶縁性を有する材料であってもよい。絶縁性を有する材料としては樹脂等が挙げられる。
【0018】
図5は、電圧検出部の単電池(対象単電池)の表面側の接合力が強く、且つ、電池パックの内面側の接合力が弱い構造のいくつかの例を示す模式図である。
図5に示すように、電圧検出部の構造には、例えば、接着剤型、銛型、プラグ型、フック型、クリップ型等が挙げられる。
接着剤型の場合、接着力の異なる2種類の接着剤を用意し、接着力の相対的に強い接着剤をセル表面側に配置し、接着力の相対的に弱い接着剤を電池パック内面側に配置してもよい。接着剤としては、特に限定されず、従来公知の接着剤を用いることができる。
また、接着剤型の場合、接着剤は同じ種類であっても、接着面の面積の大小で接合力A>Bを実現してもよい。
銛型の場合は、導電性を有する比較的柔らかい部材をセル表面に配置し、部材に突き刺さることが可能となるようにしてもよい。当該部材としては、例えば炭素系の材料であってもよい。
【0019】
電圧検出部は、例えば電圧センサ等であってもよく、必要に応じて制御部として電池ECUを備えていてもよい。なお、制御部は、各電圧検出部の各電圧センサを制御することができれば、電池パック内に1つ有していてもよい。また、電圧検出部が電池パックを外部電源等と接続したときに外部からの入力があったことを検知することができるものである場合は、制御部は、必ずしも電池パック内に備えられていなくてもよい。
電圧センサは、単電池の正極端子と単電池の表面との間の電位差を測定するように構成されていてもよい。例えば、電圧検出線によって、電圧センサの一方の端子は正極端子に接続され、他方の端子は通常時は絶縁性を有する電池パック内側に接続され、外部からの物理的入力後は導電性を有する単電池の表面に接続されてもよい。これにより、通常時は電圧が検出されず、異常時(外部からの物理的入力後)は、単電池の正極端子と単電池の表面との間の電圧が検出される。電圧センサの検出値に基づいて、電池パックへの外部からの物理的入力を検出することができる。なお、異常時の電圧を検出することができる限りは、電池パック内側の材料は必ずしも絶縁性を有する必要はなく、電池パック内側は、導電性の材料で構成されていてもよい。
制御部としての電池ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、メモリ(RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory))と、各種信号を入出力するためのI/F装置とを含んで構成されていてもよい。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、CPUによって実行される処理が記されている。
制御部としての電池ECUは、電圧センサによって所定値以上の電圧が測定された場合に、電池パックに外部からの物理的入力があったものと判定してもよい。また、電圧検出部のノイズ等による誤検知を抑制する観点から、外部からの物理的な入力の判定に所定時間を設けてもよい。
電圧の所定値は、例えば、予め異常時の電圧を測定したデータ群を用意しておき、当該データ群から、適宜設定してもよい。