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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/06 20060101AFI20240827BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240827BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20240827BHJP
【FI】
H01Q21/06
G01S7/02 216
G01S13/931
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020211654
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098238
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 一浩
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0072956(US,A1)
【文献】国際公開第2020/158009(WO,A1)
【文献】特開2018-129623(JP,A)
【文献】特開2021-93711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/06
G01S 7/02
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準平面と交差する方向であって前記基準平面に垂直な第1方向(Z)のベクトル成分を有する放射方向への電波の送信、または前記放射方向へ送信された電波の反射波の受信を行うように構成された第1アンテナ(21,22,31,32,33,34,71,72,73,74,91,92,93,121,122,123,126,127,128)と、
前記基準平面に平行な第2方向(R)において互いに隔てて配置された2つの第2アンテナであって、それぞれが、前記電波の送信及び前記反射波の受信のうち前記第1アンテナとは異なるいずれか一方を行うように構成された、2つの第2アンテナ(21,22,31,32,33,34,71,72,73,74,91,92,93,121,122,123,126,127,128)と、
を備え、
前記第1アンテナ及び前記2つの第2アンテナのうちの、少なくとも2つは、前記第1方向において互いに隔てて配置され且つ前記第1方向において互いに少なくとも部分的にオーバーラップしている、
アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置であって、
前記第1アンテナと、前記2つの第2アンテナのうちの1つとが、前記第1方向において互いにオーバーラップしている、アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ装置であって、
前記2つの第2アンテナが互いに前記第1方向においてオーバーラップしている、アンテナ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のアンテナ装置であって、
前記第1アンテナは、前記電波の送信を行うように構成され、
前記2つの第2アンテナの各々は、前記反射波の受信を行うように構成され、
前記第1アンテナと前記第1方向において互いにオーバーラップする、前記2つの第2アンテナのうちの1つは、前記第1アンテナよりも前記第1方向側に配置されている、
アンテナ装置。
【請求項5】
請求項2に記載のアンテナ装置であって、
前記2つの第2アンテナの各々は、前記電波の送信を行うように構成され、
前記第1アンテナは、前記反射波の受信を行うように構成され、
前記第1アンテナは、前記第1アンテナと前記第1方向において互いにオーバーラップする前記2つの第2アンテナのうちの1つよりも、前記第1方向側に配置されている、
アンテナ装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のアンテナ装置であって、
前記第1アンテナ及び前記2つの第2アンテナはそれぞれ、各々の偏波方向が互いに一致するように配置されている、アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のアンテナ装置であって、
前記第1アンテナ及び前記2つの第2アンテナのうちの、前記第1方向において互いにオーバーラップする2つは、それぞれ、各々の位相中心が前記第1方向において互いに重ならないように配置されている、アンテナ装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のアンテナ装置であって、
さらに、誘電体を含む多層基板(2)を備え、
前記多層基板は、
前記基準平面に平行であってグランドプレーン(16)が配置されたグランド層(P0)と、
前記基準平面に平行であって前記グランド層よりも前記第1方向側に配置された第1導体層(P1)と、
前記基準平面に平行であって前記グランド層と前記第1導体層との間に配置された第2導体層(P2)と、
を備え、
前記第1アンテナ及び前記2つの第2アンテナの各々は、前記第1導体層または前記第2導体層に配置されている、
アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載されるアンテナ装置が開示されている。アンテナ装置は、基板の表面に配置された2つの送信アンテナ及び4つの受信アンテナを備える。2つの送信アンテナの各々は、送信信号を送信する。4つの受信アンテナの各々は、物体で反射された送信信号、即ち反射波を受信する。
【0003】
2つの送信アンテナ及び4つの受信アンテナは、次のような設計条件に従って設けられている。即ち、4つの受信アンテナは、基板の表面に平行な空間方向Rに沿って互いに間隔d隔てて配置される。2つの送信アンテナは、空間方向Rに沿って互いに間隔4d隔てて配置される。4つの受信アンテナそれぞれの位相中心は、空間方向Rにおいて、2つの送信アンテナそれぞれの位相中心の間に存在する。
【0004】
このような設計条件を満たすために、2つの送信アンテナは、4つの受信アンテナが配置されている位置から空間方向Sへ完全にずらして配置されている。空間方向Sは、基板の板面に平行且つ空間方向Rに垂直である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8665137号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者の詳細な検討の結果、特許文献1に記載のアンテナ装置において、次に述べるような課題が見出された。即ち、2つの送信アンテナが、4つの受信アンテナから空間方向Sへ完全に離間して配置されているため、アンテナ装置の大型化を招く。アンテナ装置の大型化は、アンテナ装置が搭載される車両にも影響を及ぼす。具体的には、2つの送信アンテナからの送信信号を車両前方へ透過させるための透過口と、車両へ到来した反射波を4つの受信アンテナへ透過させるための透過口とを、それぞれ別個に確保する必要がある。つまり、アンテナ装置で送信及び受信される電波を透過させるために車両側に大きな透過口を確保する必要がある。
【0007】
仮に、2つの送信アンテナの間に4つの受信アンテナを配置できるならば、アンテナ装置全体の大型化を抑制可能である。しかし、2つの送信アンテナの間隔4dは、4つの受信アンテナ全体の空間方向Rの幅よりも短い。そのため、2つの送信アンテナの間に4つの受信アンテナを配置することは物理的に不可能である。
【0008】
本開示の1つの局面は、大型化が抑制された、送信アンテナ及び受信アンテナを備えたアンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの態様によるアンテナ装置は、第1アンテナ(21,22,31,32,33,34,71,72,73,74,91,92,93,121,122,123,126,127,128)と、2つの第2アンテナ(21,22,31,32,33,34,71,72,73,74,91,92,93,121,122,123,126,127,128)とを備える。
【0010】
第1アンテナは、放射方向への電波の送信、または放射方向へ送信された電波の反射波の受信を行う。放射方向は、基準平面と交差する方向である。放射方向は、さらに、基準平面に垂直な第1方向(Z)のベクトル成分を有する。
【0011】
2つの第2アンテナの各々は、第2方向(R)において互いに隔てて配置されている。第2方向は、基準平面に平行である。2つの第2アンテナは、それぞれ、電波の送信及び反射波の受信のうち、第1アンテナとは異なるいずれか一方を行う。
【0012】
つまり、第1アンテナが例えば電波の送信を行うように構成される場合は、2つの第2アンテナはいずれも反射波の受信を行うように構成される。逆に、第1アンテナが例えば反射波の受信を行うように構成される場合は、2つの第2アンテナはいずれも電波の送信を行うように構成される。
【0013】
そして、第1アンテナ及び2つの第2アンテナのうちの、少なくとも2つは、第1方向において互いに隔てて配置され、且つ第1方向において互いに少なくとも部分的にオーバーラップしている。
【0014】
なお、オーバーラップとは、物理的に実際に重なることに限らず、互いのアンテナ開口が少なくとも部分的に重なることも含む。ここでいうアンテナ開口とは、例えば、偏波方向に平行または垂直な外接矩形であってもよい。即ち、第1アンテナのアンテナ開口とは例えば第1アンテナ全体に外接し且つ第1アンテナの偏波方向に平行又は垂直な矩形であってもよい。
【0015】
このように構成されたアンテナ装置では、第1アンテナ及び2つの第2アンテナが同一平面上に配置されていない。第1アンテナ及び2つの第2アンテナのうちの少なくとも2つは、第1方向において互いにオーバーラップするように配置されている。これにより、アンテナ装置全体を第1方向に見た場合における、第1アンテナ及び2つの第2アンテナが配置される領域が、各々が同一平面上で互いに離間して配置される場合よりも縮小される。そのため、アンテナ装置の大型化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態のアンテナ装置の上面図である。
図3図2のアンテナ装置のIII-III断面を示す断面図である。
図4図2のアンテナ装置のIV-IV断面を示す断面図である。
図5】第1実施形態のアンテナ装置の分解斜視図である。
図6】第1実施形態の送信アンテナ及び受信アンテナの上面図である。
図7】第2実施形態のアンテナ装置の上面図である。
図8図7のアンテナ装置のVIII-VIII断面を示す断面図である。
図9】第2実施形態のアンテナ装置の分解斜視図である。
図10】第3実施形態のアンテナ装置の上面図である。
図11図10のアンテナ装置のXI-XI断面を示す断面図である。
図12】第3実施形態のアンテナ装置の分解斜視図である。
図13】第4実施形態のアンテナ装置の上面図である。
図14】第4実施形態のアンテナ装置の変形例を示す上面図である。
図15】第5実施形態のアンテナ装置の上面図である。
図16】第5実施形態のアンテナ装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
(1-1)レーダ装置の概要
図1に示す第1実施形態のレーダ装置1は、例えば車両に搭載される。レーダ装置1は、例えば、車両の周囲に存在する様々な物体を検出するために使用される。第1実施形態のレーダ装置1は、例えば、いわゆるMIMOレーダである。MIMOは、Multi Input Multi Outputの略語である。
【0018】
レーダ装置1は、アンテナ装置2を備える。レーダ装置1は、更に、送受信部3と、処理部4と、を備えていてもよい。
(1-2)アンテナ装置の構成
第1実施形態のアンテナ装置2について、図2図6を参照して説明する。アンテナ装置2は、略直方体状の多層基板を備える。具体的には、特に図3図5に示すように、アンテナ装置2は、第1導体層P1と、第2導体層P2と、グランド層P0と、第1誘電体層L1と、第2誘電体層L2とを備える。第1導体層P1は、アンテナ装置2における第1の表面に対応する。グランド層P0はアンテナ装置2における第2の表面に対応する。第2誘電体層L2は、グランド層P0上に配置されている。第2導体層P2は、第2誘電体層L2上に配置されている。第1誘電体層L1は、第2導体層P2上に配置されている。第1導体層P1は、第1誘電体層L1上に配置されている。
【0019】
ここで、アンテナ装置2において、第1方向Z、第2方向R及び第3方向Sを定義する。第1方向Zは、アンテナ装置2における前述の第1の表面及び第2の表面に垂直な方向であって、第2の表面から第1の表面に向かう方向である。第2方向R及び第3方向Sはいずれも第1方向Zに垂直である。第3方向Sは第2方向Rに垂直である。第1方向Zに垂直な面を、以下、SR面と称することがある。SR面は、本開示における基準平面に相当する。第1導体層P1、第2導体層P2、グランド層P0、第1誘電体層L1及び第2誘電体層L2は、本実施形態ではSR面に平行である。
【0020】
グランド層P0には、SR面に平行な板状のグランドプレーン16が配置されている。第2誘電体層L2には、第2誘電体12が配置されている。即ち、第2誘電体12は、SR面に平行な板状薄板状の形状を備え、グランドプレーン16の上面に積層されている。第2導体層P2には、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22が配置されている。即ち、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22は、第2誘電体12の上面に積層されている。第1誘電体層L1には、第1誘電体11が配置されている。即ち、第1誘電体11は、全体としてSR面に平行な薄板状の形状を備え、第2導体層P2の上面に積層されている。ただし、より厳密には、第1誘電体11は、第2導体層P2における、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22が存在しない領域においては、第2誘電体12の上面に直接積層されている。第1導体層P1には、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34が配置されている。即ち、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34は、第1誘電体11の上面に積層されている。
【0021】
図2図5に示すように、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22は、第2方向Rにおいて互いに第1間隔隔てて配置されている。第1間隔は、本実施形態では、より詳しくは、第1送信アンテナ21の位相中心と第2送信アンテナ22の位相中心との間隔である。位相中心とは、電波の放射又は入射において、仮想的に電波の集中点とみなされる点である
なお、以下の説明においては、「送信アンテナ」との文言を用いる。第1実施形態において「送信アンテナ」とは、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22のそれぞれを示す。
【0022】
本実施形態の送信アンテナは、図6に示すように、第1放射素子201と、第2放射素子202と、第3放射素子203と、第4放射素子204とを備える。第1放射素子201、第2放射素子202、第3放射素子203及び第4放射素子204は、本実施形態では例えばいずれも同じ矩形状の形状及び大きさを有する。即ち、第1放射素子201、第2放射素子202、第3放射素子203及び第4放射素子204は、本実施形態では例えばパッチ状の導体、換言すればストリップ導体である。第1放射素子201、第2放射素子202、第3放射素子203及び第4放射素子204は、第3方向Sに沿って等間隔で配置されている。
【0023】
送信アンテナは、さらに、第1副給電線路206と、第2副給電線路207と、第3副給電線路208とを備える。第1副給電線路206は、第1放射素子201と第2放射素子202とを接続する。第2副給電線路207は、第2放射素子202と第3放射素子203とを接続する。第3副給電線路208は、第3放射素子203と第4放射素子204とを接続する。つまり、本実施形態の送信アンテナは、一例として、いわゆるマイクロストリップアレーアンテナとして構成されている。
【0024】
このように構成された送信アンテナの偏波方向、即ち主偏波の方向は、第3方向Sに平行な方向である。また、送信アンテナのアンテナ開口Apは、図6に示すように、矩形状の形状を有する。アンテナ開口Apは、送信アンテナの外接図形に対応する。より具体的には、本実施形態の送信アンテナのアンテナ開口Apは、送信アンテナに外接し、且つ送信アンテナの偏波方向に平行または垂直な矩形である。
【0025】
また、図6に示すように、送信アンテナの位相中心Pcは、例えば、第2副給電線路207の中心に対応する。即ち,位相中心Pcは、アンテナ開口Apにおける、第3方向Sの中心であって且つ第2方向Rの中心に対応する。
【0026】
送信アンテナは、当該送信アンテナの放射面から放射方向へ電波を送信(即ち放射)する。放射面は、送信アンテナにおける、SR面に平行な2つの表面のうち、第1方向Z側の表面、即ちグランドプレーン16に対向する表面とは反対側の表面である。放射方向は、放射面と交差する方向であって、第1方向Zのベクトル成分を有する方向である。
【0027】
第1送信アンテナ21には、主給電線路41が接続されている。第1送信アンテナ21は、送受信部3から主給電線路41を介して給電される。第2送信アンテナ22には、主給電線路42が接続されている。第2送信アンテナ22は、送受信部3から主給電線路42を介して給電される。
【0028】
図2図5に示すように、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34は、第2方向Rにおいて互いに第2間隔隔てて配置されている。第2間隔は、本実施形態では、より詳しくは、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34それぞれの位相中心を基準とした間隔である。
【0029】
なお、以下の説明においては、「受信アンテナ」との文言を用いる。第1実施形態において「受信アンテナ」とは、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34のそれぞれを示す。
【0030】
第1実施形態の受信アンテナは、図6に示すように構成されている。即ち、第1実施形態では、一例として、送信アンテナと受信アンテナとは互いに同じ形状且つ同じ寸法を有する。つまり、第1実施形態では、第1送信アンテナ21、第2送信アンテナ22、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34は、いずれも同じ形状且つ同じ寸法を有し、且ついずれも第3方向Sに平行な偏波方向を有する。
【0031】
受信アンテナは、送信アンテナから送信された電波の反射波を受信する。反射波とは、送信アンテナから送信された電波であって、アンテナ装置2の外部の物体、より具体的には車両の外部の物体、で反射してアンテナ装置2へ戻ってくる電波のことである。
第1受信アンテナ31は、主給電線路46を介して送受信部3に接続されている。第2受信アンテナ32は、主給電線路47を介して送受信部3に接続されている。第3受信アンテナ33は、主給電線路48を介して送受信部3に接続されている。第4受信アンテナ34は、主給電線路49を介して送受信部3に接続されている。
【0032】
第2間隔は、例えば、検知すべき水平方向の角度範囲に応じて決定される。水平方向とは、第3方向Sに垂直な方向である。一方、第1間隔は、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34を後述するように仮想アレイ展開するために適した距離に設定される。第1実施形態では、第1間隔は例えば第2間隔の4倍、即ち、第1間隔に、受信アンテナの数である「4」を乗算した値である。
【0033】
よって、仮に、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34を、第1送信アンテナ及び第2送信アンテナ22と同一平面上において第1送信アンテナと第2送信アンテナ22との間に配置しようとすると、例えば第1送信アンテナ21と第1受信アンテナ31とが物理的に干渉し、且つ第2送信アンテナ22と第4受信アンテナ34とが物理的に干渉する。そのため、同一平面上において第1送信アンテナと第2送信アンテナ22との間に第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34を配置することは物理的に不可能である。
【0034】
そこで、第1実施形態では、仮に同一平面上に配置したとすると互いに物理的に干渉してしまう複数のアンテナが、互いに第1方向Zにおいてオーバーラップするように配置されている。具体的には、第1実施形態では、図2図5に示すように、第1送信アンテナ21と第1受信アンテナ31とが第1方向Zにおいてオーバーラップしている。さらに、第2送信アンテナ22と第4受信アンテナ34とが第1方向Zにおいてオーバーラップしている。
【0035】
なお、オーバーラップとは、第1方向Zにおいて互いに部分的にまたは完全に(即ち、少なくとも部分的に)重なっていて、且つ第1方向Zにおいて互いに離間していることを意味する。また、本明細書では、オーバーラップとは、物理的に実際に重なっている形態に限らず、互いのアンテナ開口Apが少なくとも部分的に重なっている形態も含む。第1実施形態では、第1送信アンテナ21と第1受信アンテナ31とは、互いに物理的に重なっているのに加え、互いのアンテナ開口Apも重なっている。第2送信アンテナ22と第4受信アンテナ34とについても同様である。
【0036】
また、第1実施形態では、図2図5に示すように、互いにオーバーラップする第1送信アンテナ21及び第1受信アンテナ31は、第1受信アンテナ31が第1送信アンテナ21よりも第1方向Z側へ位置するように配置されている。互いにオーバーラップする第2送信アンテナ22及び第4受信アンテナ34についても、第4受信アンテナ34が第2送信アンテナ22よりも第1方向Z側へ位置するように配置されている。
【0037】
つまり、送信アンテナと受信アンテナとを互いにオーバーラップさせる場合、これら送信アンテナ及び受信アンテナは、受信アンテナの方が送信アンテナよりも第1方向Z側へ位置するように配置される。その理由は、アンテナ装置2へ到来した反射波がアンテナ装置2において受信アンテナに到達するまでに減衰することを抑制するためである。
【0038】
さらに、第1実施形態では、図2図5に示すように、互いにオーバーラップする第1送信アンテナ21及び第1受信アンテナ31は、互いの位相中心が第1方向Zにおいて重ならないように配置されている。互いにオーバーラップする第2送信アンテナ22及び第4受信アンテナ34についても、互いの位相中心が第1方向Zにおいて重ならないように配置されている。
【0039】
(1-3)レーダ装置の機能
(1-3-1)仮想アレーの説明
第1実施形態のレーダ装置1では、2つの送信アンテナと4つの受信アンテナとによって、「2×4」個、即ち8個の仮想アレーが展開される。
【0040】
なお、M個の送信アンテナTx1~TxMとN個の受信アンテナRx1~RxNとによってM×N個の仮想アレーを展開する技術は、例えば特開2019-113481号公報などに記載されているようにすでによく知られているが、ここで簡単に説明する。
【0041】
説明の簡素化のため、例えばM=2,N=2とする。また、2つの受信アンテナRx1,Rx2が互いに一定方向に間隔dで配置され、2つの送信アンテナTx1,Tx2が互いに一定方向に間隔dで配置されているものとする。なお、間隔dは間隔dのN倍(即ち本例では2倍)であるものとするそして、検出対象の物体が、2つの送信アンテナTx1,Tx2及び2つの受信アンテナRx1,Rx2の正面方向に対してθだけ傾いた方向に存在していると仮定する。また、物体における電波の反射係数をR、送信アンテナTx1から物体に至る経路での送信信号の位相変化をαで表し、物体から受信アンテナRx1に至る経路での信号の位相変化をαで表す。なお、α及びαは複素数で表現される。
【0042】
この場合、送信アンテナTx1から送信されて受信アンテナRx1で受信される信号は式(1)で表される。送信アンテナTx1から送信されて受信アンテナRx2で受信される信号は式(2)で表される。送信アンテナTx2から送信されて受信アンテナRx1で受信される信号は式(3)で表される。送信アンテナTx2から送信されて受信アンテナRx2で受信される信号は式(4)で表される。
【0043】
【数1】
【0044】
これらの式(1)~式(4)は、1つの送信アンテナから送信された信号が、一定方向に互いに間隔dで配列された4つの受信アンテナにより受信される場合と等価である。このように仮想的に配列された複数の受信アンテナを仮想アレーという。
【0045】
したがって、第1実施形態のアンテナ装置2においては、2つの送信アンテナと4つの受信アンテナとの組み合わせにより、8個の仮想的な受信アンテナを有する仮想アレーが展開される。具体的には、例えば、図2において、第4受信アンテナ34の右側(第2方向R側)に、第2間隔隔てて、さらに、第1受信アンテナ31~第4受信アンテナ34の一群が配置されているものと見なせる。
【0046】
(1-3-2)送受信部について
送受信部3は、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22のそれぞれに送信信号を供給する。送受信部3は、各送信信号を、ドップラ分割多重(以下、DDMA)方式にて変調する。DDMA方式とは、複数の送信アンテナから同時に送信された複数の信号が重畳された受信信号から、個々の信号の識別を可能とするための変調方式である。DDMA方式は、MIMOレーダにおいて公知の技術であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0047】
送受信部3は、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34のそれぞれから出力される受信信号にローカル信号を混合することで、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34のそれぞれに対応したビート信号を生成して処理部4に供給する。ローカル信号は、上述の各送信信号のうち基準となる一方である。
【0048】
(1-3-3)処理部について
処理部4は、例えば、CPU4aと、メモリ4bとを有するマイクロコンピュータを備える。メモリ4bは、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリを備えていてもよい。処理部4が有する機能は、CPU4aが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ4bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、処理部4は、1つのマイクロコンピュータを備えてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。
【0049】
処理部4は、物標検出処理を少なくとも実行する。処理部4が有する機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の機能は、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は、デジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現されてもよい。
【0050】
処理部4が実行する物標検出処理は、概ね次の通りである。即ち、処理部4は、起動すると、まず、送受信部3を動作させることでレーダ測定を実行し、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34のそれぞれから供給されるビート信号のサンプリングデータを取得する。
【0051】
次に、処理部4は、取得したサンプリングデータに基づき、仮想アレーによる8チャネル分の信号を抽出する。具体的には、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34のそれぞれについてFFT処理等を実行することで、受信信号に含まれるドップラ周波数の成分を表すドップラスペクトラムを算出する。
【0052】
次に、処理部4は、例えば、デジタルビームフォーミング(以下、DBF)等の手法を用いて、物標の検出を行う。処理部は、物標の検出結果から、探査範囲内に存在する物標に関する情報である物標情報を生成する。処理部4は、生成した物標情報を、車両においける不図示の装置へ出力する。
【0053】
(1-4)第1実施形態の効果
以上説明した第1実施形態によれば、以下の(1a)~(1c)の効果を奏する。
(1a)第1送信アンテナ21と第1受信アンテナ31とが第1方向Zにおいてオーバーラップしている。さらに、第2送信アンテナ22と第4受信アンテナ34とが第1方向Zにおいてオーバーラップしている。より具体的には、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34が、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22が配置された第2導体層P2とは異なる第1導体層P1において、第1送信アンテナ21と第2送信アンテナ22との間の領域と対向する領域に含まれるように配置されている。そのため、アンテナ装置2の大型化が抑制される。
【0054】
(1b)互いにオーバーラップする第1送信アンテナ21及び第1受信アンテナ31は、第1受信アンテナ31が第1送信アンテナ21よりも第1方向Z側へ位置するように配置されている。互いにオーバーラップする第2送信アンテナ22及び第4受信アンテナ34についても、第4受信アンテナ34が第2送信アンテナ22よりも第1方向Z側へ位置するように配置されている。
【0055】
そのため、送信アンテナを受信アンテナよりも第1方向Z側へ配置する場合に比べて、減衰の少ない反射波を受信アンテナにて受信することが可能となる。
(1c)互いにオーバーラップする第1送信アンテナ21及び第1受信アンテナ31は、互いの位相中心が第1方向Zにおいて重ならないように配置されている。互いにオーバーラップする第2送信アンテナ22及び第4受信アンテナ34についても、互いの位相中心が第1方向Zにおいて重ならないように配置されている。そのため、送信アンテナから送信される送信信号が受信アンテナから受ける影響を抑制することが可能となる。
【0056】
[2.第2実施形態]
第2実施形態のアンテナ装置60について、図7図9を参照して説明する。第2実施形態のアンテナ装置60と第1実施形態のアンテナ装置2との主な相違点は、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナが3層に分かれて配置されていること、複数の受信アンテナの構造、2つの受信アンテナが互いにオーバーラップしていること、などにある。以下、第2実施形態のアンテナ装置60について、第1実施形態のアンテナ装置2との相違点に絞って説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0057】
アンテナ装置60は、さらに、第3導体層P3と、第3誘電体層L3とを備える。第3誘電体層L3は、グランド層P0上に配置されている。第3導体層P3は、第3誘電体層L3上に配置されている。この第3導体層P3上に、第2誘電体層L2が配置されている。
【0058】
第3誘電体層L3には、第3誘電体13が配置されている。即ち、第3誘電体13は、SR面に平行な板状薄板状の形状を備え、グランドプレーン16の上面に積層されている。第3導体層P3には、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22が、第2方向Rに沿って互いに隔てて配置されている。即ち、第1送信アンテナ21及び第2送信アンテナ22は、第3誘電体13の上面に積層されている。
【0059】
アンテナ装置60は、第1受信アンテナ71と、第2受信アンテナ72と、第3受信アンテナ73と、第4受信アンテナ74とを備える。
第1受信アンテナ71及び第3受信アンテナ73は、第1導体層P1において第2方向Rに沿って互いに隔てて配置されている。第2受信アンテナ72及び第4受信アンテナ74は、第2導体層P2において第2方向Rに沿って互いに隔てて配置されている。
【0060】
そして、第1送信アンテナ21と第1受信アンテナ71とが第1方向Zにおいてオーバーラップしており、第2送信アンテナ22と第4受信アンテナ74とが第1方向Zにおいてオーバーラップしている。
【0061】
さらに、第2実施形態では、第1受信アンテナ71と第2受信アンテナ72とが第1方向Zにおいてオーバーラップしている。また、第3受信アンテナ73は、第2受信アンテナ72及び第4受信アンテナ74のそれぞれと第1方向Zにおいてオーバーラップしている。
【0062】
第1受信アンテナ71は、第1単位アンテナ71aと第2単位アンテナ71bとを備える。第1単位アンテナ71a及び第2単位アンテナ71bの各々は、例えば第1実施形態の受信アンテナと同じ形状及び同じ寸法であってもよい。第1単位アンテナ71a及び第2単位アンテナ71bは、図7に示すように、第2方向Rに沿って互いに離間して配置されている。第1単位アンテナ71a及び第2単位アンテナ71bは、共通給電線路76に接続され、共通給電線路76を介して送受信部3に接続される。
【0063】
第2受信アンテナ72、第3受信アンテナ73及び第4受信アンテナ74は、いずれも第1受信アンテナ71と同様に構成されている。
即ち、第2受信アンテナ72は、第1単位アンテナ72aと第2単位アンテナ72bとを備える。第1単位アンテナ72a及び第2単位アンテナ72bは、共通給電線路77に接続され、共通給電線路77を介して送受信部3に接続される。第3受信アンテナ73は、第1単位アンテナ73aと第2単位アンテナ73bとを備える。第1単位アンテナ73a及び第2単位アンテナ73bは、共通給電線路78に接続され、共通給電線路78を介して送受信部3に接続される。第4受信アンテナ74は、第1単位アンテナ74aと第2単位アンテナ74bとを備える。第1単位アンテナ74a及び第2単位アンテナ74bは、共通給電線路79に接続され、共通給電線路79を介して送受信部3に接続される。
【0064】
このように、複数の受信アンテナ同士をオーバーラップさせることで、複数の受信アンテナそれぞれの第2方向Rの寸法が大きくても、複数の受信アンテナ相互間の見なしの間隔を狭くすることが可能となり、これにより検出範囲の広角化が可能となる。
【0065】
[3.第3実施形態]
第3実施形態のアンテナ装置80について、図10図12を参照して説明する。第3実施形態のアンテナ装置80と第1実施形態のアンテナ装置2との主な相違点は、第2実施形態と同様に複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナが3層に分かれて配置されていること、複数の送信アンテナの構造、2つの送信アンテナが互いにオーバーラップしていること、などにある。以下、第3実施形態のアンテナ装置80について、第1実施形態及び第2実施形態との相違点に絞って説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0066】
アンテナ装置80は、第1送信アンテナ91と、第2送信アンテナ92と、第3送信アンテナ93とを備える。
第1送信アンテナ91及び第3送信アンテナ93は、第3導体層P3において第2方向Rに沿って互いに隔てて配置されている。第2送信アンテナ92は、第2導体層P2において第2方向Rに沿って互いに隔てて配置されている。第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34は、第1実施形態と同様に第1導体層P1に配置されている。
【0067】
そして、第1送信アンテナ91と第2送信アンテナ92とが第1方向Zにおいてオーバーラップしており、さらに、第2送信アンテナ92と第3送信アンテナ93とが第1方向Zにおいてオーバーラップしている。
【0068】
また、第1送信アンテナ91は、第1受信アンテナ31及び第2受信アンテナ32のそれぞれともオーバーラップしている。第2送信アンテナ92は、第1受信アンテナ31、第2受信アンテナ32、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34のそれぞれともオーバーラップしている。第3送信アンテナ93は、第3受信アンテナ33及び第4受信アンテナ34のそれぞれともオーバーラップしている。
【0069】
第1送信アンテナ91は、第1単位アンテナ91aと第2単位アンテナ91bと第3単位アンテナ91cとを備える。第1単位アンテナ91a、第2単位アンテナ91b及び第3単位アンテナ91cの各々は、例えば第1実施形態の受信アンテナと同じ形状及び同じ寸法であってもよい。第1単位アンテナ91a、第2単位アンテナ91b及び第3単位アンテナ91cは、図10に示すように、第2方向Rに沿って互いに離間して配置されている。第1単位アンテナ91a、第2単位アンテナ91b及び第3単位アンテナ91cは、共通給電線路96に接続され、共通給電線路96を介して送受信部3に接続される。
【0070】
第2送信アンテナ92及び第3送信アンテナ93は、いずれも第1送信アンテナ91と同様に構成されている。
即ち、第2送信アンテナ92は、第1単位アンテナ92a、第2単位アンテナ92b及び第3単位アンテナ92cを備える。第1単位アンテナ92a、第2単位アンテナ92b及び第3単位アンテナ92cは、共通給電線路97に接続され、共通給電線路97を介して送受信部3に接続される。第3送信アンテナ93は、第1単位アンテナ93a、第2単位アンテナ93b及び第3単位アンテナ93cを備える。第1単位アンテナ93a、第2単位アンテナ93b及び第3単位アンテナ93cは、共通給電線路98に接続され、共通給電線路98を介して送受信部3に接続される。
【0071】
このように、複数の受信アンテナ同士をオーバーラップさせることで、複数の受信アンテナそれぞれの第2方向Rの寸法が大きくても、複数の受信アンテナ相互間の見なしの間隔を狭くすることが可能となり、これにより検出範囲の広角化が可能となる。
【0072】
[4.第4実施形態]
第4実施形態では、図13を参照して、送信アンテナ及び受信アンテナの変形例を説明する。図13に示すアンテナ装置110は、第1送信アンテナ121と、第2送信アンテナ122と、第3送信アンテナ123と、第1受信アンテナ126と、第2受信アンテナ127と、第3受信アンテナ128とを備える。
【0073】
第1送信アンテナ121、第2送信アンテナ122及び第3送信アンテナ123は、第3方向Sに沿って互いに離間して配置されている。第1送信アンテナ121、第2送信アンテナ122及び第3送信アンテナ123は、例えば第2導体層P2に配置されていてもよい。
【0074】
第1受信アンテナ126、第2受信アンテナ127及び第3受信アンテナ128は、第2方向Rに沿って互いに離間して配置されている。第1受信アンテナ126、第2受信アンテナ127及び第3受信アンテナ128は、例えば第1導体層P1に配置されていてもよい。
【0075】
第1送信アンテナ121は、主給電線路131を介して送受信部3に接続される。第2送信アンテナ122は、主給電線路132を介して送受信部3に接続される。第3送信アンテナ123は、主給電線路133を介して送受信部3に接続される。第1受信アンテナ126は、主給電線路136を介して送受信部3に接続される。第2受信アンテナ127は、主給電線路137を介して送受信部3に接続される。第3受信アンテナ128は、主給電線路138を介して送受信部3に接続される。
【0076】
第1送信アンテナ121は、第1放射素子211と、第2放射素子212と、第3放射素子213と、第4放射素子214と、第5放射素子215とが、第2方向Rとは反対方向に沿って互いに離間して配置され、且つ互いに副給電線路によって接続されている。このような第1送信アンテナ121は、第2方向Rに平行な偏波方向を備える。第2送信アンテナ122及び第3送信アンテナ123はいずれも第1送信アンテナ121と同様の構成を備える。
【0077】
第1受信アンテナ126は、第1放射素子221と、第2放射素子222と、第3放射素子223と、第4放射素子224と、第5放射素子225と、第6放射素子226と、第7放射素子227とが、第3方向Sに沿って互いに千鳥状に配置され、且つ互いに副給電線路によって接続されている。このような第1受信アンテナ126は、第1送信アンテナ121と同じく、第2方向Rに平行な偏波方向を備える。第2受信アンテナ127及び第3受信アンテナ128はいずれも第1受信アンテナ126と同様の構成を備える。
【0078】
そして、第1送信アンテナ121、第2送信アンテナ122及び第3送信アンテナ123の各々は、第1受信アンテナ126、第2受信アンテナ127及び第3受信アンテナ128とオーバーラップしている。
【0079】
このように、アンテナ装置110では、複数の送信アンテナの配列方向と複数の受信アンテナの配列方向とが異なる(具体的には直交している)ものの、複数の送信アンテナの偏波方向と配列方向と複数の受信アンテナの配列方向とは一致する。このように構成されたアンテナ装置110によっても、アンテナ装置110の大型化の抑制が可能となる。
【0080】
なお、第1受信アンテナ126、第2受信アンテナ127及び第3受信アンテナ128は、例えば図14に示すアンテナ装置140のように、第2方向Rに非平行且つ非垂直な方向に沿って配列されてもよい。第1送信アンテナ121、第2送信アンテナ122及び第3送信アンテナ123についても、例えば図14に示すアンテナ装置140のように、第3方向Sに非平行且つ非垂直な方向に沿って配列されてもよい。この場合、第1受信アンテナ126、第2受信アンテナ127及び第3受信アンテナ128の配列方向と、第1送信アンテナ121、第2送信アンテナ122及び第3送信アンテナ123の配列方向とが、互いに直交してもよい。
【0081】
[5.第5実施形態]
図15及び図16を参照して、第5実施形態のアンテナ装置150について説明する。アンテナ装置150は、基本的には、第1実施形態のアンテナ装置2と同様の構成を備える。アンテナ装置150は、第1実施形態のアンテナ装置2に対して、さらに、複数のダミーアンテナが付加されている。
【0082】
具体的には、第1導体層P1(即ち第1誘電体11の上面)において、第1受信アンテナ31から第2方向Rとは逆方向に第2間隔離れた位置に、ダミーアンテナ171が設けられている。さらに、第4受信アンテナ34から第2方向Rへ第2間隔離れた位置に、ダミーアンテナ172が設けられている。
【0083】
また、第2導体層P2(即ち第2誘電体12の上面)において、第1送信アンテナ21から第2方向Rとは逆方向に第2間隔離れた位置に、ダミーアンテナ161が設けられている。さらに、第2送信アンテナ22から第2方向Rへ第2間隔離れた位置に、ダミーアンテナ165が設けられている。さらに、第1送信アンテナ21と第2送信アンテナ22との間に、第2方向Rに沿って互いに第2間隔で3つのダミーアンテナ162,163,164が設けられている。
【0084】
ダミーアンテナ161,162,163,164,165,171,172は、いずれも、送受信部3に接続されておらず、給電はされない。
このように複数のダミーアンテナが付加されたアンテナ装置150によれば、第1実施形態のアンテナ装置2により得られる効果に加えて、さらに、仮想アレーを構成する受信アンテナそれぞれの指向性の相関性を高めることができる。より具体的には、仮想アレーを構成する受信アンテナそれぞれの指向性を揃える(理想的には一致させる)ことが可能となる。
【0085】
[6.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0086】
(6-1)アンテナ装置においては、複数のアンテナがどのようにオーバーラップしてもよい。例えば、第1実施形態のように、受信アンテナと送信アンテナとがオーバーラップしてもよい。また例えば、第2実施形態のように、複数の受信アンテナが互いにオーバーラップしてもよい。また例えば、第3実施形態のように、複数の送信アンテナが互いにオーバーラップしてもよい。また、複数の受信アンテナが互いにオーバーラップする一方で複数の送信アンテナはいずれも受信アンテナとオーバーラップしなくてもよい。逆に、複数の送信アンテナが互いにオーバーラップする一方で複数の受信アンテナはいずれも受送信ンテナとオーバーラップしなくてもよい。
【0087】
(6-2)複数の受信アンテナは、必ずしも、同一方向に沿って配列されなくてもよい。複数の送信アンテナについても、必ずしも、同一方向に沿って配列されなくてもよい。また、受信アンテナの偏波方向と送信アンテナの偏波方向とを必ずしも完全に一致させる必要はない。また、例えば、受信アンテナ及び送信アンテナのうちの一方が直線偏波であって他方が円偏波であってもよい。
【0088】
(6-3)互いにオーバーラップする送信アンテナ及び受信アンテナに関し、受信アンテナを送信アンテナよりも第1方向Z側に配置することは必須ではない。上記実施形態とは逆に、送信アンテナを受信アンテナよりも第1方向Z側に配置してもよい。
【0089】
(6-4)複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナが4つ以上の導体層に分散して配置されてもよい。
(6-5)送信アンテナはいくつ備えられていてもよい。受信アンテナについても、いくつ備えられていてもよい。ただし、1つの送信アンテナを備える場合は複数の受信アンテナが必要であり、逆に複数の送信アンテナを備える場合は受信アンテナは1つであってもよい。なお、仮想アレーを展開させるためには、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナが必要である。
【0090】
(6-6)送信アンテナ及び受信アンテナはそれぞれどのような形状であってもよい。送信アンテナ及び受信アンテナは、上記各実施形態で示したような平面状(パッチ状)とは異なる形状を備えていてもよい。送信アンテナの形状及び寸法と、受信アンテナの形状及び寸法とが、異なっていてもよい。
【0091】
(6-7)本開示のアンテナ装置は、レーダ装置1とは異なる各種装置で用いられても良い。また、本開示のアンテナ装置は、車両に搭載されなくてもよい。
(6-8)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0092】
(6-9)上述したアンテナ装置の他、例えば当該アンテナ装置を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0093】
2,60,80,110,140,150…アンテナ装置、11…第1誘電体、12…第2誘電体、13…第3誘電体、16…グランドプレーン、21,91,121…第1送信アンテナ、22,92,122…第2送信アンテナ、31,71,126…第1受信アンテナ、32,72,127,…第2受信アンテナ、33,73,128…第3受信アンテナ、34,74…第4受信アンテナ、93,123…第3送信アンテナ、L1…第1誘電体層、L2…第2誘電体層、L3…第3誘電体層、P0…グランド層、P1…第1導体層、P2…第2導体層、P3…第3導体層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16