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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】特定運転操作識別システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20240827BHJP
   B60W 40/09 20120101ALI20240827BHJP
   G08G 1/00 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W40/09
G08G1/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020215822
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101308
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
(72)【発明者】
【氏名】山本 真史
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 有記
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102390379(CN,A)
【文献】特開2014-119099(JP,A)
【文献】特開2020-009371(JP,A)
【文献】特開2016-081087(JP,A)
【文献】特開2018-124096(JP,A)
【文献】特開2010-055545(JP,A)
【文献】特許第6717419(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された部品の故障または耐久性低下が車両乗員の操作に起因するものなのか否かを識別するための特定運転操作識別システムであって、
前記車両乗員の運転操作に関するデータおよび車両状態に関するデータを記憶するデータ記憶部と、
前記部品の故障または耐久性低下が発生したか否かを判定する故障発生判定部と、
前記部品の故障または耐久性低下を発生させる可能性のある特定運転操作に該当する複数種類の運転操作を予め記憶するとともに、前記データ記憶部に記憶された前記運転操作に関するデータに基づき、前記運転操作に関するデータから前記特定運転操作が検出された場合に前記特定運転操作があった判定するとともに、前記故障発生判定部により前記部品の故障または耐久性低下が発生したと判定された場合において、前記特定運転操作があったと判定されると、
前記データ記憶部に記憶された前記特定運転操作がなされたときの車両状態に関するデータに基づき、前記部品の故障または耐久性低下が前記車両乗員の前記特定運転操作に起因するものなのか否かを識別する特定運転操作識別部と、を備える
ことを特徴とする特定運転操作識別システム。
【請求項2】
前記運転操作に関するデータは、前記車両乗員の画像データに基づいて取得される
ことを特徴とする請求項1の特定運転操作識別システム。
【請求項3】
前記運転操作に関するデータは、前記車両乗員の音声データまたは会話データに基づいて取得される
ことを特徴とする請求項1の特定運転操作識別システム。
【請求項4】
前記特定運転操作識別部は、前記部品の故障または耐久性低下に関連性のある前記特定運転操作のなされた累積の回数が所定回数を超えたか否か、所定の走行時間当たりに前記特定運転操作のなされた回数が所定回数を超えたか否か、または所定の走行距離当たりに前記特定運転操作のなされた回数が所定回数を超えたか否か、の何れかに基づいて、前記特定運転操作が前記部品の故障または耐久性低下に起因するものなのか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1からの何れか1に記載の特定運転操作識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された部品の故障または耐久性低下が車両乗員の運転操作に起因するものであるか否かを識別する特定運転操作識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、車両における故障が発生したときや車両乗員が誤操作したときに、車両の制御動作に制限を加える処理を実行し、さらに制御動作に制限を加える処理を行うときには、制限の処理内容を車両乗員に報知することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-53373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両乗員の操作の内容によっては、制御動作に制限を加える処理が実行されず、それに伴い、車両に搭載された部品の故障や耐久性低下を招く場合が考えられる。この場合、その後の対処のうえで、部品の故障や耐久性低下が車両乗員の特定の運転操作に起因するものなのか否かを識別することが望ましい。そこで、車両に搭載された部品の故障または耐久性低下が発生した場合に、部品の故障または耐久性低下が車両乗員の運転操作に起因するものなのか否かを識別することを課題とする。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両に搭載された部品の故障または耐久性低下が車両乗員の運転操作に起因するものであるか否かを識別する特定運転操作識別システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)車両に搭載された部品の故障または耐久性低下が車両乗員の操作に起因するものなのか否かを識別するための特定運転操作識別システムであって、(b)前記車両乗員の運転操作に関するデータおよび車両状態に関するデータを記憶するデータ記憶部と、(c)前記部品の故障または耐久性低下が発生したか否かを判定する故障発生判定部と、(d)前記部品の故障または耐久性低下を発生させる可能性のある特定運転操作に該当する複数種類の運転操作を予め記憶するとともに、前記データ記憶部に記憶された前記運転操作に関するデータに基づき、前記運転操作に関するデータから前記特定運転操作が検出された場合に前記特定運転操作があった判定するとともに、前記故障発生判定部により前記部品の故障または耐久性低下が発生したと判定された場合において、前記特定運転操作があったと判定されると、前記データ記憶部に記憶された前記特定運転操作がなされたときの車両状態に関するデータに基づき、前記部品の故障または耐久性低下が前記車両乗員の前記特定運転操作に起因するものなのか否かを識別する特定運転操作識別部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記運転操作に関するデータは、前記車両乗員の画像データに基づいて取得されることを特徴とする。
【0008】
第3発明の要旨とするところは、第1発明において、前記運転操作に関するデータは、前記車両乗員の音声データまたは会話データに基づいて取得されることを特徴とする。
【0010】
発明の要旨とするところは、第1発明から第発明の何れかにおいて、前記特定運転操作識別部は、前記部品の故障または耐久性低下に関連性のある前記特定運転操作のなされた累積の回数が所定回数を超えたか否か、所定の走行時間当たりに前記特定運転操作のなされた回数が所定回数を超えたか否か、または所定の走行距離当たりに前記特定運転操作のなされた回数が所定回数を超えたか否か、の何れかに基づいて、前記特定運転操作が前記部品の故障または耐久性低下に起因するものなのか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、車両乗員の運転操作に関するデータおよび車両状態に関するデータを記憶するデータ記憶部と、部品の故障または耐久性低下が発生したか否かを判定する故障発生判定部と、部品の故障または耐久性低下を発生させる可能性のある特定運転操作に該当する複数種類の運転操作を予め記憶する特定運転操作識別部とが備えられ、特定運転操作識別部、運転操作に関するデータに基づいて、運転操作に関するデータから特定運転操作が検出された場合に特定運転操作があったと判定するとともに、故障発生判定部により車両に搭載された部品の故障または耐久性低下が発生したと判定された場合には、その特定運転操作がなされたときの車両状態に関するデータに基づき、部品の故障または耐久性低下が車両乗員の特定運転操作に起因するものか否かを識別することができる。
【0012】
第2発明によれば、車両乗員の画像データに基づいて、車両乗員の運転操作に関するデータを取得することができる。
【0013】
第3発明によれば、車両乗員の音声データまたは会話データに基づいて、車両乗員の運転操作に関するデータを取得することができる。
【0015】
発明によれば、部品の故障または耐久性低下に関連性のある特定運転操作のなされた累積の回数、所定の走行時間当たりに特定運転操作のなされた回数、または所定の走行距離当たりに特定運転操作のなされた回数に基づいて、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因するか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用された車両の概略構成を説明する図であると共に、車両に搭載された部品の故障または耐久性低下が車両乗員の運転操作に起因するものなのか否かを識別するための特定運転操作識別システムの概略構成を説明する図である。
図2】車内に設置される車載カメラの位置を説明する図である。
図3】サーバに記憶される運転操作データの一覧を時系列で示す図である。
図4】車両の走行中に所定の特定運転操作がなされたときの、車両の走行距離とその特定運転操作の繰り返し回数との関係を示す図である。
図5】車両の部品に故障または耐久性低下が発生したとき、その故障または耐久性低下が車両乗員の運転操作に起因するものであるか否かを判定する制御作動を説明するフローチャートである。
図6】特定された特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因する可能性があるか否かを判定するフローチャートである。
図7】本発明の他の実施例に対応する特定運転操作識別システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が適用された車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10に搭載された部品の故障または耐久性低下が車両乗員の転操作に起因するものなのか否かを識別するための特定運転操作識別システム8の概略構成を説明する図である。
【0019】
車両10は、エンジン14と第1回転機MG1と第2回転機MG2とを備え、エンジン14および第2回転機MG2を走行用の駆動力源とするハイブリッド車両である。また、車両10は、エンジン14と駆動輪28との間の動力伝達経路上に、動力伝達装置12を備えている。動力伝達装置12は、非回転部材であるケース16内において共通の軸心上に直列に配設された、電気式無段変速部18および機械式有段変速部20等を備えている。電気式無段変速部18は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン14に連結されている。機械式有段変速部20は、電気式無段変速部18の出力側に連結されている。また、動力伝達装置12は、機械式有段変速部20の出力回転部材である出力軸22に連結された差動歯車装置24、差動歯車装置24に連結された一対の車軸26等を備えている。
【0020】
動力伝達装置12において、エンジン14や第2回転機MG2から出力される動力は、機械式有段変速部20へ伝達され、その機械式有段変速部20から差動歯車装置24等を介して車両10が備える駆動輪28へ伝達される。以下、電気式無段変速部18を無段変速部18、機械式有段変速部20を有段変速部20という。また、動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。また、無段変速部18や有段変速部20等は上記共通の軸心に対して略対称的に構成されており、図1ではその軸心の下半分が省略されている。
【0021】
エンジン14は、駆動トルクを発生することが可能な動力源として機能する機関であって、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン14は、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等のエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン14の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
【0022】
第1回転機MG1および第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能および発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1および第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられた蓄電装置としてのバッテリ54に接続されており、後述する車両用制御装置100によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1および第2回転機MG2の各々の出力トルクであるMG1トルクTgおよびMG2トルクTmが制御される。
【0023】
無段変速部18は、第1回転機MG1と、エンジン14の動力を第1回転機MG1および無段変速部18の出力回転部材である中間伝達部材30に機械的に分割する動力分割機構としての差動機構32と、を備えている。中間伝達部材30には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。差動機構32は、シングルピニオン型の遊星歯車装置から構成されており、遊星歯車装置のキャリアCA0には連結軸34を介してエンジン14が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。無段変速部18は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される電気式無段変速機である。
【0024】
有段変速部20は、無段変速部18と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構である。有段変速部20は、例えば第1遊星歯車装置36および第2遊星歯車装置38の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備え、複数のギヤ段(変速段)に変速可能な公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、およびブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。係合装置CBに供給される係合油圧PRcbは、車両10に備えられた油圧制御回路56によって各々制御される。有段変速部20は、アクセル操作量(アクセル開度θacc)や車速V等に基づいて変速すべきギヤ段が判断されると、そのギヤ段毎に予め定められた係合装置CBの係合パターンとなるように各係合装置CBの係合状態が切り替えられる。
【0025】
車両10は、エンジン14、無段変速部18、および有段変速部20などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての車両用制御装置100を備えている。車両用制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。車両用制御装置100は、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等に分けて構成される。
【0026】
車両用制御装置100には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ60、出力回転速度センサ62、MG1回転速度センサ64、MG2回転速度センサ66、アクセル開度センサ68、スロットル弁開度センサ70、ブレーキペダルセンサ71、ステアリングセンサ72、Gセンサ74、ヨーレートセンサ76、バッテリセンサ78、油温センサ79、車両周辺情報センサ80、車両位置センサ81、外部ネットワーク通信用アンテナ82、ナビゲーションシステム83、運転支援設定スイッチ群84、シフトポジションセンサ85など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、AT入力回転速度NiであるMG2回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者の加速操作量としてのアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、ブレーキペダルの踏力に対応する、運転者によるブレーキペダルの踏込操作の大きさを表すブレーキ操作量Bra、車両10に備えられたステアリング99(図2参照)の操舵角θswおよび操舵方向Dsw、ステアリング99が運転者によって握られている状態を示す信号であるステアリングオン信号SWon、車両10の前後加速度Gx、車両10の左右加速度Gy、車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、係合装置CBの油圧アクチュエータへ供給される作動油すなわち係合装置CBを作動させる作動油の温度である作動油温THoil、車両周辺情報Iard、位置情報Ivp、通信信号Scom、ナビ情報Inavi、自動運転制御やクルーズ制御等の運転支援制御における運転者による設定を示す信号である運転支援設定信号Sset、車両10に備えられたシフトレバー98(図2参照)の操作ポジションPOSshなど)が、それぞれ供給される。
【0027】
車両用制御装置100からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、外部ネットワーク通信用アンテナ82、ホイールブレーキ装置86、操舵装置88、情報周知装置89など)に各種指令信号(例えばエンジン14を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1および第2回転機MG2を各々制御する為の回転機制御指令信号Smg、係合装置CBの作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Sat、通信信号Scom、ホイールブレーキによる制動トルクを制御する為のブレーキ制御指令信号Sbra、車輪(特には前輪)の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Sste、運転者に警告や報知を行う為の情報周知制御指令信号Sinfなど)が、それぞれ出力される。
【0028】
車両10は、さらに、外部との通信用の送受信機90およびゲートウェイECU92を備えている。送受信機90は、外部装置であるサーバ200等と通信する機器である。
【0029】
ゲートウェイECU92は、各々、車両用制御装置100と同様のハード構成を備えており、例えば車両用制御装置100内の書き替え可能なROMに記憶されたプログラムおよび/またはデータの書き替え用に設けられた中継装置である。ゲートウェイECU92は、送受信機90と接続されており、送受信機90とサーバ200との間での無線通信を用いて、車両用制御装置100とサーバ200との間での各種情報の受け渡しを行う。
【0030】
サーバ200は、車両10外部のネットワーク上におけるシステムである。サーバ200は、車両用制御装置100との間で無線通信を用いて、車両状態情報や車両現象情報等の各種情報を、受け付けたり、処理したり、解析したり、蓄積したり、提供したりする。サーバ200は、車両用制御装置100との間で各種情報を送受信する。車両状態情報は、例えば各種センサ等により検出された車両10の動作状態を示す情報であり、車両10の走行に関わる走行状態などである。この車両状態情報は、例えばアクセル開度θacc、車速V、操作ポジションPOSshなどであり、送受信機90およびゲートウェイECU92等を経由してサーバ200に送られる。車両現象情報は、例えば車両10で生じる現象を示す情報である。なお、車両状態情報は、外部ネットワーク通信用アンテナ82を介してサーバ200との間で無線通信で行われても良い。
【0031】
車両用制御装置100は、車両10における各種制御を実行する。例えば、車両用制御装置100は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である、不図示のATギヤ段変速マップを用いて有段変速部20の変速判断を行い、必要に応じて有段変速部20の変速制御を実行する。ATギヤ段変速マップは、例えば車速Vおよび要求駆動力Frdemを変数とする二次元座標上に、有段変速部20の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。
【0032】
車両用制御装置100は、エンジン14の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ52を介して第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン14、第1回転機MG1、および第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。車両用制御装置100は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θaccおよび車速Vを適用することで駆動要求量としての駆動輪28における要求駆動力Frdem[N]を算出する。前記駆動要求量としては、要求駆動力Frdemの他に、駆動輪28における要求駆動トルクTrdem[Nm]、駆動輪28における要求駆動パワーPrdem[W]、出力軸22における要求AT出力トルク等を用いることもできる。
【0033】
車両用制御装置100は、例えば無段変速部18を無段変速機として作動させる場合、エンジン最適燃費点等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するエンジンパワーPeが得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン14を制御すると共に第1回転機MG1の発電電力Wgを制御することで、無段変速部18の無段変速制御を実行して無段変速部18の変速比γ0を変化させる。
【0034】
車両用制御装置100は、走行モードとして、モータ走行モード或いはハイブリッド走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させる。例えば、車両用制御装置100は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ走行領域にある場合には、モータ走行モードを成立させる一方で、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値以上となるハイブリッド走行領域にある場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。
【0035】
また、車両用制御装置100は、車両10の運転制御として、運転者の運転操作に基づいて走行する手動運転制御と、運転者の運転操作に因らず車両10の運転制御を自動的に行うことで走行する自動運転制御、例えば運転者により入力された目的地や地図情報などに基づいて自動的に目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速と操舵とを自動的に行うことで走行する自動運転制御とを行うことができる。車両用制御装置100は、運転者によって運転支援設定スイッチ群84における自動運転選択スイッチが操作されて自動運転が選択されている場合には、自動運転モードを成立させて自動運転制御を実行する。
【0036】
ところで、車両乗員が一般に誤操作とされるような特定の運転操作(以下、特定運転操作という)を行うと、通常は車両10の制御動作が制限されるが、特定運転操作の内容によっては車両10の制御動作が制限されず、それに伴って、車両10に搭載される部品の故障や耐久性低下を招く虞がある。このとき、その後の対処のうえで、部品の故障や耐久性低下が車両乗員の特定運転操作に起因するものなのか否かを識別することが望ましい。そこで、車両10は、車両10に搭載された部品の故障または耐久性低下が車両乗員の特定運転操作に起因するものなのか否かを識別するための特定運転操作識別システム8を備えている。以下、特定運転操作識別システム8について説明する。
【0037】
特定運転操作識別システム8は、車両10に備えられている車両用制御装置100およびサーバ200を含んで構成されている。
【0038】
車両用制御装置100は、特定運転操作識別システム8を実行するために、データ取得手段として機能するデータ取得部108と、故障発生判定手段として機能する故障発生判定部110と、特定運転操作識別手段として機能する特定運転操作識別部112と、を機能的に備えている。
【0039】
データ取得部108は、車両乗員による各種運転操作に関するデータ(情報)を随時取得する。車両乗員の運転操作に関するデータ(以下、運転操作データ)として、例えば、エンジン14の始動操作(IGオン)、アクセルペダル操作、ブレーキペダル操作、ドア開閉操作、シートベルトの装着操作、シフトレバー操作、エアコンのオンオフ操作、ライトのオンオフ操作などが、操作された操作時間とともに取得される。また、操作された時点での車速Vやアクセル開度θaccなどが併せて取得されても構わない。
【0040】
本実施例では、車両乗員の運転操作データが、例えば図2に示す車室内において、センターミラー94の上部に設置された車載カメラ96によって撮影された車両乗員の画像データに基づいて取得される。具体的には、車両10に搭載された車載カメラ96によって撮影された車両乗員の画像データが画像解析されることにより、車両乗員の運転操作に識別される。この車両乗員の運転操作が随時取得される。また、例えばシフトレバー操作については、シフトポジションセンサ85によって検出される操作ポジションPOSshについても併せて取得され、その操作ポジションPOSshに基づいて詳細なシフトレバー操作が判断される。すなわち、データ取得部108は、車載カメラ96によって取得される画像データ、および、シフトポジションセンサ85などの各種センサによって検出される各種情報に基づいて、車両乗員の運転操作を判断して取得する。
【0041】
データ取得部108は、運転操作データを取得すると、送受信機90等を介して随時サーバ200に送信する。サーバ200は、各車両毎に送信された運転操作に関する運転操作データを記憶するデータ記憶部202を備えている。データ記憶部202は、運転操作データが送信されると、各車両毎に、運転操作データを時系列の順番で随時記憶する。図3は、サーバ200に記憶される運転操作データの一覧を示している。車両乗員の運転操作データが取得されると、図3に示すように、その運転操作がなされた操作時間、運転操作の内容が随時サーバ200に記憶されることにより、運転操作データの一覧として集積される。
【0042】
また、データ取得部108は、車両状態に関するデータ(情報)を、所定の時間間隔毎に随時取得する。車両状態に関するデータ(以下、車両状態データ)として、例えば、エンジン回転速度Neおよびその変化率、車速V、第2回転機MG2のMG2回転速度Nmおよびその変化率、作動油温THoil、エンジントルクTe、アクセル開度θacc、車速V、操作ポジションPOSsh、有段変速部20のギヤ段、走行距離または走行時間などがある。これら各種情報が、所定の時間間隔毎に車両状態データとして随時取得される。データ取得部108は、所定の時間間隔に車両状態データを取得すると、その車両状態データを送受信機90等を介してサーバ200に随時送信する。サーバ200に各車両毎の所定の時間間隔の車両状態データが送信されると、データ記憶部202は、送信された車両状態に関する車両状態データを時系列の順番で随時記憶する。
【0043】
故障発生判定部110は、車両10に搭載される部品の故障または耐久性低下が発生したか否かを判定する。故障発生判定部110は、例えば車両10に搭載されている不図示の各種診断装置からの情報(ダイアグデータ)に基づいて、故障の発生や耐久性の低下を判定する。例えば、有段変速部20のクラッチC1の摩擦板の摩耗に起因してクラッチC1において滑りが検出された場合には、診断装置によってクラッチC1の耐久性低下が判定される。
【0044】
特定運転操作識別部112は、部品の故障または耐久性低下が発生したと判定された場合に、部品の故障または耐久性低下を発生させる可能性のある特定の運転操作(以下、特定運転操作)があったかを診断するか否かを判定する。この判定が肯定された場合には、特定運転操作があったか否かが診断される。
【0045】
特定運転操作識別部112は、特定運転操作があったか否かの診断を実行すると判定された場合、データ記憶部202に記憶された運転操作に関するデータに基づき、特定運転操作があったか否かを判定する。特定運転操作識別部112は、サーバ200から送信されたこれまでの運転操作データの一覧を取得し、取得された運転操作データの一覧から、部品の故障または耐久性低下の原因となる車両乗員による特定運転操作を識別する。特定運転操作は、部品の故障や耐久性低下の原因となり得る運転操作であり、一般に誤操作とされるような運転操作である。なお、特定運転操作は、車両乗員が意図せずに行った運転操作(所謂、誤操作)だけでなく、意図的に行った運転操作も含む。
【0046】
特定運転操作は、例えば、車両乗員がアクセルペダルを踏み込んだ状態で、シフトレバー98の操作ポジションPOSshをNポジション(動力伝達遮断ポジション)からDポジション(動力伝達ポジション)へ切り替える操作などを含んでいる。特定運転操作は、予め実験的または設計的に求められ、複数種類規定されている。特定運転操作識別部112は、特定運転操作に該当する複数種類の運転操作を予め記憶しており、運転操作データの一覧の中から前記特定運転操作に該当する運転操作を検出した場合に、特定運転操作があったと判定する。このとき、特定運転操作識別部112は、検出された特定運転操作の内容および運転操作がなされた操作時間を取得する。
【0047】
特定運転操作識別部112は、特定運転操作があったと判定すると、データ記憶部202に記憶された、その特定運転操作がなされたときの車両状態に関する車両状態データに基づき、部品の故障または耐久性低下が車両乗員の特定運転操作に起因するものなのか否かを判定する。なお、特定運転操作が複数検出された場合には、それぞれの特定運転操作毎に部品の故障または耐久性の原因であるか否かが判定される。例えば、部品の故障または耐久性低下が発生した時点の近くでなされた特定運転操作から順番に、その特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因したか否かが判定される。
【0048】
特定運転操作識別部112は、特定運転操作がなされた操作時間(操作時点ともいう)の前後の車両状態データをサーバ200から取得する。次いで、特定運転操作識別部112は、特定運転操作がなされたときの操作時間における車両状態データから、部品の故障または耐久性低下を招くような車両状態(車両状態の変化を含む)が検出されたか否かを判定する。例えば、特定運転操作がなされた時点におけるエンジン回転速度Neの変化率が予め設計的に規定されている上限値を超えていたり、作動油温THoilが予め設計的に規定されている許容温度を超えていたりしたとき、部品の故障や耐久性低下を招く可能性のある車両状態が検出されたと判定される。なお、部品の故障や耐久性低下を招く可能性のある複数種類の車両状態が予め規定されており、特定運転操作識別部112は、それらの車両状態を予め記憶している。
【0049】
また、特定運転操作識別部112は、特定運転操作のなされた操作時間において、部品の故障や耐久性低下を招く可能性の車両状態が検出されると、その車両状態と特定運転操作との間に関連性があるか否かを判定する。例えば、アクセルペダルが踏み込まれた状態で操作ポジションPOSshがNポジションがDポジションに切り替えられるような特定運転操作がなされたとき、MG2回転速度Nmが急激に落ち込む。従って、上述した特定運転操作がなされたときにMG2回転速度Nmが急激に落ち込んだ場合には、車両状態と特定運転操作との間に関連性があるものと判定される。このような特定運転操作がなされたときに、その特定運転操作に起因するような車両状態が検出された場合、車両状態と特定運転操作との間に関連性があるものと判定される。特定運転操作識別部112は、特定運転操作毎にその特定運転操作に関連性のある車両状態を記憶しており、特定運転操作がなされたときにその特定運転操作に関連性のある車両状態になったとき、その特定運転操作と車両状態との間に関連性があるものと判定する。
【0050】
また、特定運転操作識別部112は、部品の故障または耐久性低下と特定運転操作がなされた操作時間における車両状態との間に関連性があるか否かを判定する。例えば、上述したようなアクセルペダルの踏み込み状態でNポジションからDポジションに切り替える特定運転操作がなされると、クラッチC1にかかる負荷が急激に増加するとともに、第2回転機MG2のMG2回転速度Nmが急激に落ち込む。すなわち、クラッチC1の耐久性低下とMG2回転速度Nmの落ち込みとは、相関性がある。これより、特定運転操作識別部112は、例えばクラッチC1の耐久性が低下したときに、特定運転操作によってMG2回転速度Nmの落ち込み(車両状態)が検出されると、部品の故障または耐久性低下と車両状態との間に関連性があると判定する。特定運転操作識別部112は、部品の故障または耐久性低下に関連性のある、すなわち部品の故障または耐久性低下の原因となる車両状態を、部品の故障または耐久性低下の内容毎に予め記憶しており、特定運転操作に基づく車両状態が、その部品の故障または耐久性低下に該当した場合、部品の故障または耐久性低下と車両状態との間に関連性があるものと判定する。
【0051】
特定運転操作識別部112は、特定運転操作と車両状態との間に関連性があり、且つ、部品の故障または耐久性低下と車両状態との間に関連性があった場合に、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因する可能性が有ると判定する。一方で、特定運転操作識別部112は、特定運転操作と車両状態との間に関連性がない、および/または、部品の故障または耐久性低下と車両状態との間に関連性がないと判定された場合、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因する可能性が無いまたは可能性が低いものと判定する。特定運転操作識別部112は、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因する可能性が無いまたは可能性が低いと判定されると、特定運転操作が複数検出された場合には、他の特定運転操作についても部品の故障または耐久性低下に起因する可能性があるか否かを判定する。特定運転操作識別部112は、検出された全ての特定運転操作について、部品の故障または耐久性低下に起因する可能性が無いまたは可能性が低いと判定されると、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因する可能性が無いまたは可能性が低いものと判定する。
【0052】
ここで、殆どの特定運転操作は、一度なされただけでは部品の故障や耐久性低下に繋がらず、特定運転操作のなされた回数が累積で所定値を超えたり、短時間の間または短い走行距離の間に同じ特定運転操作が繰り返し行われたりすることで、部品の故障や耐久性低下に繋がる。そこで、特定運転操作識別部112は、運転操作データから特定運転操作がなされた累積の回数Nを特定運転操作の内容毎にそれぞれ計数する。また、特定運転操作識別部112は、計数した特定運転操作の累積の回数Nが予め設定されている所定回数αを超えたか否かに基づいて、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因するものなのか否かを判定する。具体的には、特定運転操作識別部112は、部品の故障または耐久性低下が発生した場合において、関連性のある特定運転操作の累積の回数Nが所定回数αを超えた場合に、その特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因しているものと判定する。前記所定回数αは、特定運転操作の内容毎に予め実験的または設計的に求められ、特定運転操作に関連性のある部品の故障または耐久性低下が発生する累積の回数Nの閾値に設定されている。なお、一度の特定運転操作がなされることで部品の故障または耐久性低下を招く可能性のある操作については、前記所定回数αが1回となる。
【0053】
また、所定の特定運転操作が短期間の間に繰り返し実行されたり、短い走行距離の間で繰り返し実行されたりすることで、部品の故障または耐久性の低下が発生する場合がある。これに対して、特定運転操作識別部112は、所定の走行距離Ls当たりに所定の特定運転操作のなされた回数が所定回数β1を超えたか否か、または、所定の走行時間Ts当たりに所定の特定運転操作のなされた回数が所定回数β2を超えたか否かに基づいて、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因するものか否かを判定する。具体的には、特定運転操作識別部112は、所定の走行距離Ls当たりに所定の特定運転操作のなされた回数が所定回数β1を超えた場合、または、所定の走行時間Ts当たりに所定の運転操作のなされた回数が所定回数β2を超えた場合に、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因するものと判定する。
【0054】
図4は、車両10の走行中に所定の特定運転操作がなされたときの、車両10の走行距離Lと特定運転操作のなされた累積の回数Nとの関係を示している。図4において、横軸が車両10の走行距離Lを示し、縦軸が所定の特定運転操作のなされた累積の回数Nを示している。図4においては、距離L1と距離L2との間の走行距離Lsで所定の特定運転操作が繰り返しなされることで、特定運転操作のなされた回数Nが大幅に増加している。特定運転操作識別部112は、このような所定の走行距離Ls(L1~L2)当たりに、所定の特定運転操作のなされた回数Nが所定回数β1を超えた場合において、この特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因した可能性が高いと判定する。なお、部品の故障または耐久性低下を判断するために規定される走行距離Ls、走行時間Ts、走行距離Lsおよび走行時間Ts毎に設定される所定回数(β1、β2)については、特定運転操作の内容毎に予め実験的または設計的に求められ、部品の故障または耐久性低下が生じ始める閾値に設定されている。
【0055】
また、特定運転操作のなされた累積の回数N等に応じて、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因する可能性を、複数段階に区分することもできる。例えば、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因である可能性が、特定運転操作のなされた累積の回数Nに応じて三段階(可能性大、可能性中、可能性小)に区分されてもよい。具体的には、特定運転操作が部品の故障や耐久性低下の原因である可能性を判断するための特定運転操作のなされた累積の回数Nの閾値である所定回数αが2個(α1、α2)設定され、特定運転操作のなされた回数Nが所定回数α1よりも少ない場合には可能性小と判定され、特定運転操作のなされた回数Nが所定回数α1~所定回数α2の範囲にある場合には可能性中と判定され、特定運転操作のなされた回数がα2を超える場合には、可能性大と判定される。さらに、特定運転操作が部品の故障や耐久性低下の原因である可能性を判断するための回数Nの閾値である所定回数αが細かく設定されることで、前記可能性を数値化(例えば10%、20%、・・・)することもできる。なお、所定回数(α1、α2・・・)の具体的な値については、予め実験的または設計的に求められ、特定運転操作の内容毎に適宜変更される。
【0056】
特定運転操作識別部112は、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因している可能性の有無を判定すると、情報周知装置89等を介して、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因している可能性を検査員に報知する。例えば、所定の特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因している可能性が高いと判定された場合には、その特定運転操作の内容、およびその特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因する可能性の高さなどが、情報周知装置89を構成する音声装置からの音声、または、車内ディスプレイの表示によって検査員に報知される。
【0057】
図5は、車両10の部品に故障または耐久性低下が発生したとき、その部品の故障または耐久性低下が車両乗員の特定運転操作に起因するものであるか否かを判定する制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両10の部品の故障または耐久性低下の原因を診断するときに実行される。
【0058】
先ず、故障発生判定部110の制御機能に対応するステップ(以下、ステップを省略)S10では、車両10の部品に故障または耐久性低下が発生したか否かが判定される。例えば車両10に備えられる各種診断装置のダイアグデータの情報に基づいて部品の故障や耐久性低下の発生が判定される。S10の判定が否定された場合、本ルーチンが終了させられる。S10の判定が肯定された場合、特定運転操作識別部112の制御機能に対応するS20において、特定運転操作があったかを診断する指示が出力された否かが判定される。S20の判定が否定された場合、本ルーチンが終了させられる。S20の判定が肯定された場合、特定運転操作識別部112の制御機能に対応するS30において、サーバ200のデータ記憶部202に記憶された運転操作データの一覧が取得され、その運転操作データの一覧から特定運転操作が識別される。また、運転操作データの一覧から特定運転操作が識別された場合には、特定運転操作の内容およびその特定運転操作がなされた操作時間が取得される。特定運転操作識別部112の制御機能に対応するS40では、S30に基づいて特定運転操作があったか否かが判定される。S40の判定が否定された場合、本ルーチンが終了させられる。
【0059】
S40の判定が肯定された場合、特定運転操作識別部112の制御機能に対応するS50において、サーバ200から、サーバ200のデータ記憶部202に記憶されている車両10の車両状態に関する各種情報、すなわち車両状態データが取得される。次いで、特定運転操作識別部112の制御機能に対応するS60において、S30で識別された特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因している可能性があるか否かが検証される。
【0060】
以下、S60の特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因する可能性があるか否かを判定する特定運転操作識別部112の制御作動について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、特定運転操作が複数識別された場合、部品の故障または耐久性低下が発生した時点に対して近い時点でなされた特定運転操作から順番に、部品の故障または耐久性低下に起因する可能性が高いか否かが判定される。
【0061】
図6において、S100では、取得された車両状態データの中から、部品の故障または耐久性低下を招く可能性のある車両状態(車両状態の変化を含む)が検出されたか否かが判定される。S100の判定が否定された場合、S150において、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因である可能性が無いまたは可能性が低いものと判定されてリターンされる。S100の判定が肯定された場合、S110において、S100で検出された車両状態と特定運転操作との間に関連性が有るか否かが判定される。S110が否定された場合、S150において、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因である可能性が無いまたは可能性が低いものと判定されてリターンされる。S110の判定が肯定された場合、S120において、部品の故障または耐久性低下とS100で検出された車両状態との間に関連性が有るか否かが判定される。S120が否定された場合、S150において、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因である可能性が無いまたは可能性が低いものと判定されてリターンされる。S120の判定が肯定された場合、S130において、特定運転操作がなされた累積の回数Nが、予め設定されている所定回数αを超えるか否かが判定される。S130の判定が肯定される場合、S140において、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因となる可能性が有るものと判定されてリターンされる。S130の判定が否定される場合、S150において、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因である可能性が無いまたは可能性が低いものと判定されてリターンされる。
【0062】
図5のフローチャートに戻り、特定運転操作識別部112の制御機能に対応するS70では、S60の判定結果に基づいて、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因である可能性があるか否かが判定される。S70の判定が否定される場合、特定運転操作識別部112の制御機能に対応するS90において、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因である可能性が無いまたは可能性が低いものと判定される。S70の判定が肯定される場合、特定運転操作識別部112の制御機能に対応するS80において、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下の原因である可能性があるものと判定される。
【0063】
上述のように、本実施例によれば、特定運転操作識別部112によって、運転操作に関するデータに基づいて部品の故障または耐久性低下を発生させる可能性のある特定運転操作があったと判定するとともに、車両10に搭載された部品の故障または耐久性低下が発生した場合には、その特定運転操作がなされたときの車両状態に関するデータに基づき、部品の故障または耐久性低下が車両乗員の特定運転操作に起因するものか否かを識別することができる。
【0064】
また、本実施例によれば、車載カメラ96によって撮影された車両乗員の画像データに基づいて車両乗員の運転操作に関する画像データが取得され、取得された画像データから車両乗員の運転操作を判断することで、車両乗員の運転操作に関するデータを取得することができる。また、運転操作に関するデータが取得されると、そのデータの中に特定運転操作に対応する運転操作があるか否かに基づいて、特定運転操作があったか否かを判定することができる。部品の故障または耐久性低下に関連性のある特定運転操作のなされた累積の回数、所定の走行時間Ts当たりに特定運転操作のなされた回数、または所定の走行距離Ls当たりに特定運転操作のなされた回数に基づいて、特定運転操作が部品の故障または耐久性低下に起因するか否かを判定することができる。
【0065】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0066】
図7は、本発明の他の実施例に対応する特定運転操作識別システム300の全体構成を示している。なお、図7においては、車両10の構成図および車両用制御装置100に各種情報を入力する各種センサ等については省略されている。
【0067】
特定運転操作識別システム300は、車両用制御装置100、サーバ200、および会話型ロボット302を、含んで構成されている。
【0068】
会話型ロボット302は、車両10内に設置され、車両乗員との間で会話できるように構成されている。会話型ロボット302の形状は、車両乗員の好みに合わせて適宜設定される。会話型ロボット302は、カメラ304、表示用ディスプレイ306、車両乗員との会話を行うためのスピーカ308およびマイク310、および会話型ロボット302の作動を制御する図示しない電子制御装置などを含んでいる。また、会話型ロボット302は、車両用制御装置100との間、および、サーバ200との間で、無線通信を介して情報の授受可能に構成されている。
【0069】
会話型ロボット302は、車両乗員との会話を行うとともに、会話の内容を会話データとして随時取得する。また、車両乗員の音声を介して、車両10の各種装置に操作指示を出せるように構成されている場合には、その車両乗員の音声を音声データとして随時取得する。取得された、会話データおよび音声データの内容に基づいて運転操作データが随時取得される。また、会話型ロボット302は、カメラ304を介して車両乗員の運転操作を監視することもでき、カメラ304によって取得された画像データに基づいて車両乗員の運転操作を識別し、その運転操作の内容を随時取得することができる。すなわち、車両10に搭載された車載カメラ96に代わって、画像データを取得して車両乗員の操作を判断ことができる。会話型ロボット302によって取得された車両乗員の音声データ、会話データ、画像データは、会話型ロボット302の図示しない記憶装置に記憶されたり、無線通信を介してサーバ200に記憶されたりする。
【0070】
また、会話型ロボット302の記憶装置には、特定運転操作と規定されている複数種類の運転操作が予め記憶されており、会話型ロボット302は、特定運転操作として規定されている運転操作がなされたか否かを随時判断している。なお、特定運転操作が実行されたか否かを判断するに当たって、操作ポジションPOSsh等の情報についても、必要に応じて車両用制御装置100から無線通信を介して会話型ロボット302に随時供給されてもよい。また、特定運転操作が実行されたと判断された場合には、会話型ロボット302が、特定運転操作を実行したか否かを車両乗員に質問し、特定運転操作を実行したと車両乗員が回答した場合には、そのような特定運転操作をしないように車両乗員に指示することもできる。なお、このときの特定運転操作に関する質問についても会話データとして取得され、記憶装置に随時記憶される。
【0071】
部品の故障または耐久性の低下が発生した場合には、会話型ロボット302に記憶された、車両乗員の音声データまたは会話データの内容に基づいて、特定運転操作がなされたか否かが判定される。また、車両走行中または走行後において、会話型ロボット302が特定運転操作を行ったか否かを質問し、車両乗員が会話型ロボット302の質問に対して特定運転操作を行ったと回答した会話データが検出された場合には、特定運転操作がなされたとものと判定することもできる。さらに、会話型ロボット302のカメラによって取得された画像データによっても特定運転操作の有無が判断されることで、特定運転操作の有無を一層精度良く判定することができる。このように、会話型ロボット302が、特定運転操作がなされたか否かを判定する機能を果たすことができる。また、特定運転操作がなされたか否かが判定された後は、前述した図5図6と同じ手順に基づいて、部品の故障または耐久性低下が特定運転操作に起因している可能性があるか否かが判定される。
【0072】
このように、会話型ロボット302と車両乗員との会話データや会話型ロボット302によって取得される車両乗員の音声データに基づいて、特定運転操作がなされたか否かが判定されるものであってもよく、さらに会話型ロボット302によって取得された画像データに基づいて、特定運転操作がなされたか否かが判定されるものであっても構わない。
【0073】
上述のように、本実施例によれば、会話型ロボット302によって取得された車両乗員の音声データまたは会話データの内容に基づいて、特定運転操作の有無や特定運転操作の内容等を取得することができる。
【0074】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0075】
例えば、前述の実施例1では、車載カメラ96によって随時取得される画像データに基づいて、車両乗員の運転操作が随時取得されてサーバ200に記憶されるものであったが、必ずしも全ての運転操作を記憶させる必要はなく、特定運転操作に該当する運転操作のみ取得されてサーバ200に記憶されるものであっても構わない。これより、サーバ200に記憶される運転操作データのデータ量が低減される。
【0076】
また、前述の実施例1では、車両乗員の各種運転操作に関する情報が運転操作データとして取得されると、随時サーバ200のデータ記憶部202に記憶されていたが、必ずしもサーバ200のデータ記憶部202に記憶する必要はなく、例えば車両10側の記憶装置に記憶されるものであっても構わない。また、車両状態に関する情報である車両状態データについても、必ずしもサーバ200のデータ記憶部202に記憶される態様に限定されず、車両10側に記憶されるものであっても構わない。運転操作データおよび車両状態データが車両10に記憶されることでサーバ200が不要となり、車両10側のみで特定運転操作識別システムを構成することが可能になる。また、運転操作データが車両10側に記憶され、車両状態データがサーバ200に記憶されるなど、データ記憶部が車両10およびサーバ200にそれぞれ設けられるものであっても構わない。
【0077】
また、前述の実施例では、車両10に搭載される部品の故障または耐久性低下が、車両10に搭載される各種診断装置からの情報に基づいて判定されるものであったが、車両乗員からの指摘や検査員の検査内容に基づいて判断されるものであっても構わない。
【0078】
また、前述の実施例2では、会話型ロボット302は、車両走行中における車両乗員との会話データや音声データを記憶し、記憶された会話データや音声データに基づいて特定運転操作の有無を判定するものであったが、部品の故障または耐久性低下が発生した後において、会話型ロボット302が車両乗員に特定運転操作を行ったか否かを質問することもできる。
【0079】
また、前述の実施例1では、車室内に設置される車載カメラ96によって、車室内の画像データが取得されるものであったが、例えば自動運転に使用されるカメラを流用するなど、車室内の画像データを取得可能なカメラであれば適宜使用することができる。
【0080】
また、前述の実施例では、部品の故障または耐久性低下が発生すると、運転操作に関するデータに基づいて、部品の故障または耐久性低下を発生させる可能性のある特定運転操作があった否か判定されるものであったが、本発明は必ずしもこの態様に限定されない。具体的には、運転操作がなされる度に、その運転操作が特定運転操作に該当するか判断されるものであっても構わない。例えば、運転操作がなされる毎に、その運転操作が特定運転操作に該当するか否か判定され、特定運転操作に該当した場合にはフラグが立てられる。また、部品の故障または耐久性低下が発生した場合には、そのフラグが立てられたかに基づいて特定運転操作の有無が判断される。
【0081】
また、前述の実施例では、車両10は、無段変速部18および有段変速部20が直列に接続された動力伝達装置12を備えて構成されるものであったが、本発明の車両の構造は必ずしもこれに限定されない。例えば、エンジンと回転機とが差動機構32等を介することなく直接接続され、エンジンおよび回転機と駆動輪との間に有段変速機が設けられるものであっても構わない。また、必ずしも有段変速機に限定されず、ベルト式の無段変速機などであっても構わない。
【0082】
また、前述の実施例では、車両10は、エンジン14および第2回転機MG2を駆動力源とするハイブリッド車両であったが、本発明は必ずしもハイブリッド車両に限定されない。例えば、エンジン14のみを駆動力源とする車両であってもよく、回転機のみを駆動力源とする電気自動車であっても構わない。すなわち、本発明は、車両の駆動力源や駆動形式等は特に限定されない。
【0083】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
8、300:特定運転操作識別システム
10:車両
112:特定運転操作識別部
202:データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7