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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240827BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240827BHJP
   B32B 9/04 20060101ALI20240827BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240827BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B9/00 A
B32B9/04
B32B27/36
B32B7/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020533042
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2020009975
(87)【国際公開番号】W WO2020195742
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019058185
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
(72)【発明者】
【氏名】玉利 昇
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021759(WO,A1)
【文献】特開2012-096469(JP,A)
【文献】特開2012-116082(JP,A)
【文献】特開2015-036208(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062145(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/187694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B32B 1/00-43/00
B29C 48/08
B29K 67/00
B29L 9/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)ポリブチレンテレフタレートを60~95質量%と(B)ポリエチレンテレフタレートを5~40質量%を含んでおり、前記ポリエチレンテレフタレート(B)のうちの少なくとも50質量%以上がバイオマス由来のエチレングリコールと化石燃料由来のジカルボン酸単位から構成されていることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムをロールにしたものであって、下記(1)~()を同時に満足することを特徴とするポリエステルフィルムロール
(1)JIS Z 1707に準じて測定した突刺し強度が0.6N/μm以上。
(2)フィルムの面配向度が0.144~0.160。
(3)フィルムの150℃で15分間加熱後の熱収縮率が、縦方向が0~4%、横方向が-1~3%。
(4)縦方向及び横方向の厚み精度がいずれも15%以下。
(5)縦方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングし、JIS Z 1707に準じて測定した突刺し強度の最大値をXmax(N)、最小値をXmin(N)、平均値をXaveとしたときの、下記式[1]で表される突刺し強度のばらつきが20%以下である。
突刺し強度の長手方向ばらつき(%)=100×(Xmax-Xmin)/Xave・・・[1]
【請求項2】
前記二軸延伸ポリエステルフィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が0.5~8%であることを特徴とする、前記請求項1に記載のポリエステルフィルムロール
【請求項3】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片方の面に無機薄膜層を有してなるガスバリア性積層フィルムをロールにしたものである、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルムロール
【請求項4】
前記ガスバリア性積層フィルムが、前記二軸延伸ポリエステルフィルムと前記無機薄膜層の間に接着層を有するものである、請求項3に記載のポリエステルフィルムロール
【請求項5】
前記ガスバリア性積層フィルムが、前記無機薄膜層の表面に保護層を有するものである、請求項3又は4に記載のポリエステルフィルムロール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、食品、医薬品、工業製品等の包装分野に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムに及びその製造方法に関する。更に詳しくは、優れた耐ピンホール性、耐破袋性を有し、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルフィルムであると共に、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のばらつきの少ない二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】

食品、医薬品等に用いられる包装材料は、蛋白質、油脂の酸化抑制、味、鮮度の保持、医薬品の効能維持のために、酸素や水蒸気等のガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。また、太陽電池や有機EL等の電子デバイスや電子部品等に使用されるガスバリア性材料は、食品等の包装材料以上に高いガスバリア性を必要とする。
【0003】

従来から、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする食品用途においては、プラスチックからなる基材フィルム層の表面に、アルミニウム等からなる金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物からなる無機薄膜を形成したガスバリア性積層フィルムが、一般的に用いられている。
【0004】

二軸延伸ナイロンフィルムを基材フィルム層とするすることにより、内容物による耐ピンホール性が良好になり、袋の落下時の内容物の漏れが無くなることが知られていた(例えば特許文献5)。しかし、二軸延伸ナイロンフィルムは吸湿時の寸法変化が大きく、加工工程時に吸湿によりカールする問題点やレトルト殺菌のような過酷な処理が施された場合に収縮により形が変形するという問題点があった。
【0005】

一方、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)フィルムに酸化ケイ素や酸化アルミニウム、これらの混合物等の無機酸化物の薄膜(無機薄膜層)を形成したものは、透明であり内容物の確認が可能であることから、広く使用されている。(例えば特許文献1及び特許文献2)

PETフィルムは、耐熱性や寸法安定性に優れ、レトルト殺菌のような過酷な処理が施された場合にも使用し得るが、PETフィルムは脆いため、これを使用した積層フィルムからなる袋は、落下時に袋が破れたり、穴が開いて、袋に詰められていた内容物が漏れるという課題が残されていた。
【0006】

これらの問題を解決するための手段として、二軸延伸したポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記する)フィルムをもちいることが検討されている。

例えば、特許文献3では、少なくともPBT樹脂、又はPBT樹脂に対してPET樹脂を30質量%以下の範囲で配合したポリエステル樹脂組成物を縦方向及び横方向それぞれ2.7~4.0倍同時二軸延伸することにより得られた二軸延伸PBTフィルムを基材フィルム層に使用することが知られていた。かかる技術によれば、耐屈曲ピンホール性、及び耐衝撃性を持ち、かつ優れた保香性を併せ持つ液体充填用包材が得られるというものである。

なお、フィルムの縦方向は、フィルムの流れ方向又はMD方向ともいう。また、フィルムの横方向は、フィルムの幅方向又はTD方向ともいう。
【0007】

ところで、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、汎用高分子材料であるポリエステルをこれらバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0008】

例えば、特許文献4では、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを含んでなる樹脂組成物であって、ジオール成分単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分単位が石油由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなることを特徴とする樹脂組成物及びフィルムが開示されている。

かかる技術によれば、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールに代えて、植物由来のエチレングリコールをその原料としたポリエステルは、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールを用いて製造されたポリエステルであっても、従来の化石燃料由来のエチレングリコールを用いた場合と同等の機械的特性が得られるというものである。
【0009】

しかしながら、上述したように、従来のPETフィルムは脆いため、これを使用した積層フィルムからなる袋は、落下時に袋が破れたり穴が開いて、袋に詰められていた内容物が漏れるという課題があり、優れた耐ピンホール性、耐破袋性とバイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルフィルムは未だ実現されていなかった。
【0010】

上記のような優れた耐ピンホール性、耐破袋性とバイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルフィルムをえる手段としては、PBT樹脂に対してPET樹脂を30質量%以下の範囲で配合したポリエステル樹脂組成物を二軸延伸することにより得ることができるものと期待できるが、PBT樹脂に対してPET樹脂を配合したポリエステル樹脂組成物からなるようなフィルムの場合では、PBT樹脂とPETなどのその他の樹脂とを混合して成膜するのが一般的である。しかしPBTとその他の樹脂では、比重や樹脂チップの形状が異なる場合があるため、これら原料樹脂チップの偏析により、混合、押出し工程で原料比率のバラツキが生じ易く、フィルム長手方向で物性差が生じる。その結果、長尺な製品ロールの長手方向で均一な物性の製品が得られなくなるケースがある。

さらにこれらに使用するPETとしてバイオマスエチレングリコールを用いたPETを用いた場合、上記で述べたような偏析により長手方向でフィルムのバイオマス度も変動してしまう懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】

【文献】特開平6-278240号公報、
【文献】特開平11-10725号公報
【文献】特開2017―094746号公報
【文献】特開2012―097163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】

本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。

すなわち、優れた耐ピンホール性、耐破袋性を有するとともに、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルフィルムであり、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のばらつきが少ない二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】

本発明者らはかかる課題を解決するため鋭意検討した結果、PBT樹脂に対してバイオマスエチレングリコールを用いたPET樹脂を40質量%以下の範囲で配合したポリエステル樹脂組成物を二軸延伸して得られる二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、原料となる樹脂チップの混合に際しては、ホッパーに上方からポリブチレンテレフタレート樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管(以下、インナーパイプと称する場合がある)を通じて前記バイオマスエチレングリコールを用いたPET樹脂チップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする事で、フィルムの長手方向で物性のばらつきが少なく、バイオマス度の均一なフィルムを得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0014】

すなわち本発明は、以下の構成からなる。

〔1〕 少なくとも(A)ポリブチレンテレフタレートを60~95質量%と(B)ポリエチレンテレフタレートを5~40質量%を含んでおり、前記ポリエチレンテレフタレート(B)のうちの少なくとも60質量%以上がバイオマス由来のエチレングリコールと化石燃料由来のジカルボン酸単位から構成されていることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムであって、下記(1)~(4)を同時に満足することを特徴とするポリエステルフィルム。

(1)JIS Z 1707に準じて測定した突刺し強度が0.6N/μm以上。

(2)フィルムの面配向度が0.144~0.160。

(3)フィルムの150℃で15分間加熱後の熱収縮率が、縦方向が0~4%、横方向が-1~3%。

(4)縦方向及び横方向の厚み精度がいずれも15%以下。

〔2〕 前記二軸延伸ポリエステルフィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が0.5~8%であることを特徴とする、前記〔1〕に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。

〔3〕 縦方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングし、JIS Z 1707に準じて測定した突刺し強度の最大値をXmax(N)、最小値をXmin(N)、平均値をXaveとしたときの、下記式[1]で表される突刺し強度のばらつきが20%以下であることを特徴とする、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリエステルフィルム。

突刺し強度の長手方向ばらつき(%)=100×(Xmax-Xmin)/Xave・・・[1]

〔4〕 前記〔1〕~〔3〕いずれかに記載のポリエステルフィルムの少なくとも片方の面に無機薄膜層を有してなるガスバリア性積層フィルム。

〔5〕 ポリエステルフィルムと無機薄膜層の間に接着層を有することを特徴とする〔4〕に記載のガスバリア性積層フィルム。

〔6〕 無機薄膜層の表面に保護層を有することを特徴とする〔4〕又は〔5〕に記載のガスバリア性積層フィルム。

〔7〕 前記ポリエステル原料樹脂の溶融押出し工程において、ホッパーに上方から前記ポリブチレンテレフタレート(A)の原料樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管を通じて前記ポリエチレンテレフタレート(B)の原料樹脂チップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しすることを特徴とする〔1〕~〔3〕いずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0015】

本発明者らは、かかる技術によって、優れた耐ピンホール性、耐破袋性を有するとともに、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルフィルムであり、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のばらつきが少ない二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】

図1図1は、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを製造するための樹脂チップの混合方法の一例を説明する為の概略図である。
図2図2図1の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】

以下、本発明について詳細に説明する。

本発明のポリエステルフィルムは、PBT(A)を主たる構成成分とするものであり、PBTの含有率60質量%以上が好ましく、さらには70質量%以上が好ましい。60質量%未満であると突刺し強度が低下してしまい、フィルム特性としては十分なものでなくなってしまう。

主たる構成成分として用いるPBT(A)としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4-ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上であり、最も好ましくは重合時に1,4-ブタンジオールのエーテル結合により生成する副生物以外は含まれないことである。
【0018】

本発明のポリエステルフィルムは、上記PBT(A)のほかに力学特性や製膜性などを調整する目的でPET(B)が添加される。

PETの含有率としては5質量%以上が好ましい。5質量%未満であるとPBTの結晶化により製膜性が低下することがある。

PETの含有率としては40質量%以下が好ましく、さらには30質量%以下が好ましい。40質量%を超えると突刺し強度が低下してしまい、フィルム特性としては十分なものでなくなってしまう。
【0019】

また本発明のポリエステルフィルムに使用されるPET(B)としては、バイオマス由来のエチレングリコールと化石燃料由来のジカルボン酸単位から構成されていることが好ましい。

PET(B)としてバイオマス由来のエチレングリコールと化石燃料由来のジカルボン酸単位から構成されたPETを用いることで、フィルム中のバイオマス度を上げることができ、カーボンニュートラルなフィルムを得ることが可能となる。
【0020】

バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよい。
【0021】

ポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体を制限なく使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0022】

また、脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらのなかでも、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸又はこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、又はこれらの混合物がより好ましい。
【0023】

これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0024】

本発明による二軸延伸ポリエステルフィルムに含まれるPET(B)には、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルであっても良い。共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるので最も好ましい。
【0025】

また、上記ポリエステルは、これらの共重合ポリエステルを鎖延長(カップリング)した高分子量のポリエステルであってもよい。鎖延長剤としては、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできるが、その量は、通常ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。
【0026】

本発明において使用するPET(B)は、上記したジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができる。
【0027】

また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
【0028】

重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く第1族~第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ-ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
【0029】

チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好適に用いられる。更には、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物も好適に用いられる。これらの中でも、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ-n-ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C-94)が好ましく、特に、テトラ-n-ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C-94)が好ましい。
【0030】

ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-t-ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が挙げられる。また、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物を使用してもよい。これらの中でも、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-t-ブトキシドが好ましい。
【0031】

ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0032】

これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。ここで使用する触媒量としては、その使用量を低減させる程生成するポリエステルの末端カルボキシル基量が低減されるので使用触媒量を低減させる方法は好ましい態様である。
【0033】

ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、通常、150~260℃の範囲であり、反応雰囲気は、通常窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。また、反応圧力は、通常、常圧~10kPaである。また、反応時間は、通常、1時間~10時間程度である。
【0034】

上記した製造工程において、鎖延長剤(カップリング剤)を反応系に添加してもよい。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で、無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
【0035】

これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステルは公知の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。具体的には、ジオールとジカルボン酸とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、質量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルプレポリマーに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。質量平均分子量が20,000以上のプレポリマーであれば、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステルを製造することができる。
【0036】

得られたポリエステルは、固化させた後、さらに重合度を高めたり、環状三量体などのオリゴマーを除去するために、必要に応じて固相重合を行ってもよい。具体的には、ポリエステルをチップ化して乾燥させた後、100~180℃の温度で1~8時間程度加熱してポリエステルを予備結晶化させ、続いて、190~230℃の温度で、不活性ガス流通下又は減圧下で1~数十時間加熱することにより行われる。
【0037】

上記のようにして得られるポリエステルの固有粘度(オルトクロロフェノール溶液で、35℃にて測定)は、0.5dl/g~1.5dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.6dl/g~1.2dl/gである。固有粘度が0.5dl/g未満の場合は引裂き強度をはじめ、半透過反射フィルム基材としてポリエステルフィルムに要求される機械特性が不足することがある。他方、固有粘度が1.5dl/gを越えると、原料製造工程及びフィルム製膜工程における生産性が損なわれる。
【0038】

ポリエステルの製造工程において、又は製造されたポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を添加してもよく、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、ポリエステル樹脂組成物全体に対して、5~50質量%の範囲で添加される。
【0039】

本発明のポリエステルフィルムには、力学特性などを調整する目的で上記(A)及び(B)以外のポリエステル樹脂を含有することができる。

上記(A)及び(B)以外のポリエステル樹脂としては、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート及びポリプロピレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエステル樹脂、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸が共重合されたPBT樹脂、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリカーボネートジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール成分が共重合されたPBT樹脂などが挙げられる。
【0040】

これらPBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)以外のポリエステル樹脂の添加量の上限としては、30質量%未満が好ましく、より好ましくは25質量%以下が好ましい。PBT樹脂以外のポリエステル樹脂の添加量が30質量%を超えると、PBTとしての力学特性が損なわれ、衝撃強度、耐ピンホール性、又は耐破袋性が不十分となるほか、透明性やガスバリア性が低下するなどが起こることがある。
【0041】

本発明に用いるPBT樹脂の固有粘度の下限は好ましくは0.9dl/gであり、より好ましくは0.95dl/gであり、更に好ましくは1.0dl/gである。

原料であるPBT樹脂の固有粘度が0.9dl/g未満の場合、製膜して得られるフィルムの固有粘度が低下し、突刺し強度、衝撃強度、耐ピンホール性、又は耐破袋性などが低下するとなることがある。

PBT樹脂の固有粘度の上限は好ましくは1.4dl/gである。上記を越えると延伸時の応力が高くなりすぎ、製膜性が悪化するとなることがある。固有粘度の高いPBTを使用した場合、樹脂の溶融粘度が高くなるため押出し温度を高温にする必要があるが、PBT樹脂をより高温で押出しすると分解物が出やすくなることがある。
【0042】

前記PBT樹脂は必要に応じ、従来公知の添加剤、例えば、滑剤、安定剤、着色剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。

滑剤種としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機系滑剤のほか、有機系滑剤が好ましく、シリカ、炭酸カルシウムがより好ましく、中でもシリカがヘイズを低減する点で特に好ましい。これらにより透明性と滑り性と発現することができる。

滑剤濃度の下限は好ましくは100ppmであり、より好ましくは500ppmであり、さらに好ましくは800ppmである。上記未満であると基材フィルム層の滑り性が低下となることがある。滑剤濃度の上限は好ましくは20000ppmであり、より好ましくは10000ppmであり、さらに好ましくは1800ppmである。上記を越えると透明性が低下となることがある。
【0043】

上記のようにして得られるポリエステルフィルムは、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、ポリエステルフィルム中の全炭素に対して0.5~8%含まれることが好ましい。

大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。
【0044】

本発明のポリエステルフィルムの厚みの下限は好ましくは3μmであり、より好ましくは5μmであり、さらに好ましくは8μmである。3μm以上であると基材フィルム層としての強度が十分となる。

本発明のポリエステルフィルムの厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは75μmであり、さらに好ましくは50μmである。100μm以下であると本発明の目的における加工がより容易となる。
【0045】

本発明のポリエステルフィルムの縦方向の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の上限は、好ましくは4.0%であり、より好ましくは3.0%であり、さらに好ましくは2%である。上限を越えると保護膜の形成工程や、レトルト殺菌処理のような高温処理において生じる基材フィルム層の寸法変化により無機薄膜層に割れが生じ、ガスバリア性が低下する恐れがあるばかりか、印刷などの加工時の寸法変化により、ピッチズレなどが起こることがある。

本発明のポリエステルフィルムの横方向の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の上限は好ましくは3.0%であり、より好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1%である。上限を越えると保護膜の形成工程や、レトルト殺菌処理のような高温処理において生じる基材フィルム層の寸法変化により無機薄膜層に割れが生じ、ガスバリア性が低下する恐れがあるばかりか、印刷などの加工時の幅方向の寸法変化により、ピッチズレなどが起こるとなることがある。
【0046】

本発明のポリエステルフィルムの縦方向の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の下限は好ましくは0%である。上記未満であってもと改善の効果がそれ以上得られない(飽和する)ほか、力学的に脆くなってしまうことがある。

本発明のポリエステルフィルムの横方向の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の下限は好ましくは1.0%である。上記未満であっても改善の効果がそれ以上得られない(飽和する)ほか、力学的に脆くなってしまうことがある。
【0047】

本発明のポリエステルフィルムの突刺し強度の下限は好ましくは0.6N/μmである。0.6N/μm未満であると袋として用いる際に袋の強度が不十分となることがある。
【0048】

本発明のポリエステルフィルムロールにおいて、フィルムロールを長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで100m毎にサンプリングしJIS Z 1707に準じて測定した突刺し強度の最大値をXmax(N)、最小値をXmin(N)、平均値をXaveとしたときの、下記式(1)で表される突刺し強度のばらつきは20%以下であることが好ましく、さらに好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である。

突刺し強度の長手方向ばらつき(%)=100×(Xmax-Xmin)/Xave・・・(1)

フィルムロールの長手方向の突刺し強度のばらつきが20%を超えると、ポリエステルフィルムを二次加工して製造された包装袋に品質のばらつきが生じる恐れがある。
【0049】

本発明のポリエステルフィルムの衝撃強度の下限は好ましくは0.05J/μmである。0.05J/μm未満であると袋として用いる際に強度が不十分となる。

本発明における基材フィルム層の衝撃強度の上限は好ましくは0.2J/μmである。0.2J/μm以下でも改善の効果が飽和することがある。
【0050】

本発明のポリエステルフィルムの面配向度(ΔP)の下限は、好ましくは0.144であり、より好ましくは0.148であり、さらに好ましくは0.15である。上記未満であると配向が弱いため、十分な強度が得られず、耐破袋性が低下することがあるばかりか、基材フィルム層上に無機薄膜層と保護層を設けて積層フィルムとした場合に、保護膜の形成時にかかる張力と温度によって伸び易くなり、無機薄膜層が割れてしまうために、ガスバリア性が低下することがある。
【0051】

本発明のポリエステルフィルムの面配向度(ΔP)の上限は、好ましくは0.160であり、より好ましくは0.158であり、さらに好ましくは0.156である。上記を超えると配向強すぎて、製膜性が低下するばかりか、伸びにくくなるために耐ピンホール性が低下する恐れがある。
【0052】

本発明のポリエステルフィルムの厚みあたりのヘイズの上限は好ましくは0.66%/μmであり、より好ましくは0.60%/μmであり、更に好ましくは0.53%/μmである。0.66%/μm以下である基材フィルム層に印刷を施した際に、印刷された文字や画像の品位が向上する。
【0053】

また本発明のポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
【0054】

次に、本発明のポリエステルフィルムを得るため製造方法を具体的に説明する。これらに限定されるものではない。

本発明のポリエステルフィルムを得るため製造方法は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)チップと、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)チップとを、ホッパーを備えた押出機に供給及び混合し、該押出機からポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却して未延伸シートを成形する工程、成形された前記未延伸シートを長手方向に延伸する縦延伸工程、前記縦延伸後に横延伸可能な温度に予熱する予熱工程、前記長手方向と直交する幅方向に延伸する横延伸工程、前記縦延伸及び横延伸を行なった後のフィルムを加熱し結晶化させる熱固定工程、前記熱固定されたフィルムの残留歪みを除去する熱緩和工程、及び熱緩和後のフィルムを冷却する冷却工程からなる。

[未延伸シート成形工程]

まず、フィルム原料を乾燥あるいは熱風乾燥する。次いで、原料を計量、混合して押し出し機に供給し、加熱溶融して、シート状に溶融キャスティングを行う。

さらに、溶融状態の樹脂シートを、静電印加法を用いて冷却ロール(キャスティングロール)に密着させて冷却固化し、未延伸シートを得る。静電印加法とは、溶融状態の樹脂シートが回転金属ロールに接触する付近で、樹脂シートの回転金属ロールに接触した面の反対の面の近傍に設置した電極に電圧を印加することによって、樹脂シートを帯電させ、樹脂シートと回転冷却ロールを密着させる方法である。
【0055】

原料となる樹脂チップの混合に際しては、ホッパーに上方からポリブチレンテレフタレート樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管(以下、インナーパイプと称する場合がある)を通じて前記ポリエチレンテレフタレート(B)の樹脂チップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする事が好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)チップとポリエチレンテレフタレート樹脂(B)チップとを混合した状態で押出し機の上のホッパーに入れると、比重やチップの形状の異なる樹脂チップがホッパー内で原料偏析を起こす可能性があり、特にホッパーの内壁が鉛直でない箇所(斜めになっている部分)で原料偏析を起こす心配が高いが、インナーパイプを通じてホッパー内の押出機直上部にポリエチレンテレフタレート樹脂(B)をダイレクトに供給すると、比重やチップ形状が異なっていっても、原料偏斥を低減でき、ポリエステルフィルムを安定して工業生産することができる。
【0056】

具体的な混合手順の一例を図1に示す。図1は、ホッパー1を備えた押出機2と、インナーパイプ3との関係の一例を示す概略図であり、図2は前記図1のA部分の拡大図である。

図1,2において、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)などの主原料であるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)以外の樹脂のチップはインナーパイプ3を通じて供給され、主原料であるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)のチップはホッパー1の上部から供給される。そしてインナーパイプ3の出口4が押出機直上(正確には押出機2の樹脂供給口5の直上)になっているため、ポッパー内で経時とともにポリエチレンテレフタレート樹脂(B)のチップが偏析することを防止できるので、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の混合比率を常に一定に保つことができる。
【0057】

なお、前記インナーパイプ3の出口4の高さ(H2)は、以下の(式a)の関係を満足しているのが好ましく、(式a)及び(式b)の両方の関係を満足しているのがより好ましい。

H2<H1 (式a)

(式中、H1はホッパーの内壁が鉛直になっている部分の高さを示す(図2参照)。)

0.5×L/tanθ<H2 (式b)

(式中、Lはインナーパイプ3の出口4の内径を示す(図2参照)。θは他の樹脂チップの安息角である。)
【0058】

H2の高さを0.5×L/tanθよりも大きくすることで、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)チップ以外の樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂チップと混合される位置(H3;図2参照)を押出機の外部にすることができ、押出機内に空気が入って気泡が生じることを防止できる。
【0059】

ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)チップ以外の樹脂の混合位置の高さH3=H2-0.5×L/tanθは、0mより高く、2m未満であるのが望ましい。0mより高くすることで、押出機内への空気の侵入を防止できる。また2m未満にすることで、押出機までの距離を短く保つことができ、原料偏析を防止できる。高さH3は、好ましくは0.3m以上1.7m以下であり、更に好ましくは0.6m以上1.4m以下である。
【0060】

樹脂の加熱溶融温度の下限は好ましくは200℃であり、より好ましくは250℃であり、さらに好ましくは260℃である。上記未満であると吐出が不安定となることがある。樹脂溶融温度の上限は好ましくは280℃であり、より好ましくは270℃である。上記を越えると樹脂の分解が進行し、フィルムが脆くなってしまう。
【0061】

溶融したポリエステル樹脂を押出し冷却ロール上にキャスティングする時に、幅方向の結晶化度の差を小さくすることが好ましい。このための具体的な方法としては、溶融したポリエステル樹脂を押出し、キャスティングする時に同一の組成の原料を多層化してキャスティングすること、またさらに冷却ロール温度を低温とすることが挙げられる。
【0062】

溶融したポリエステル樹脂を押出し、キャスティングする方法は、具体的にはPBT樹脂を60質量%以上含む樹脂組成物を溶融して溶融流体を形成する工程(1)、形成された溶融流体をダイスから吐出し、冷却ロールに接触させて固化させ積層未延伸シートを形成する工程(2)、前記積層未延伸シートを二軸延伸する工程(3)を少なくとも有する。
【0063】

工程(1)において、ポリエステル樹脂組成物を溶融して溶融流体を形成する方法は特に限定されないが、好適な方法としては、一軸押出機や二軸押出機を用いて加熱溶融する方法を挙げることができる。
【0064】

工程(2)において、溶融流体をダイスから吐出し、冷却ロールに接触させて固化させる。

冷却ロール温度の下限は好ましくは-10℃である。上記未満であると結晶化抑制の効果が飽和することがある。冷却ロール温度の上限は好ましくは40℃である。上記を越えると結晶化度が高くなりすぎて延伸が困難となることがある。冷却ロール温度の上限は好ましくは25℃である。また冷却ロールの温度を上記の範囲とする場合、結露防止のため冷却ロール付近の環境の湿度を下げておくことが好ましい。冷却ロール表面の幅方向の温度差は少なくすることが好ましい。このとき、未延伸シートの厚みは15~2500μmの範囲が好適である。
【0065】

[縦延伸及び横延伸工程]

次に延伸方法について説明する。延伸方法は、同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でも可能であるが、突刺し強度を高めるためには、面配向度を高めておく必要があるほか、製膜速度が速く生産性が高いという点においては逐次二軸延伸が最も好ましい。
【0066】

縦延伸方向の延伸温度の下限は好ましくは55℃であり、より好ましくは60℃である。55℃以上であると破断が起こりにくい。また、フィルムの縦配向度が強くなり過ぎないため、熱固定処理の際の収縮応力を抑えられ、幅方向の分子配向の歪みの少ないフィルムが得られる。縦延伸方向の延伸温度の上限は、好ましくは100℃であり、より好ましくは95℃である。100℃以下であるとフィルムの配向が弱くなり過ぎないためフィルムの力学特性が低下しない。
【0067】

縦延伸方向の延伸倍率の下限は好ましくは2.8倍であり、特に好ましくは3.0倍である。2.8倍以上であると面配向度が大きくなり、フィルムの突刺し強度が向上するほか、フィルムの厚み精度が向上する。

縦延伸方向の延伸倍率の上限は好ましくは4.3倍であり、より好ましくは4.0倍であり、特に好ましくは3.8倍である。4.3倍以下であると、フィルムの横方向の配向度が強くなり過ぎず、熱固定処理の際の収縮応力が大きくなり過ぎず、フィルムの横方向の分子配向の歪みが小さくなり、結果として縦方向の直進引裂き性が向上する。また、力学強度や厚みムラの改善の効果はこの範囲では飽和する。
【0068】

横延伸方向の延伸温度の下限は好ましくは60℃であり、60度以上であると破断が起こりにくくなることがある。横延伸方向の延伸温度の上限は好ましくは100℃であり、100℃以下であると横方向の配向度が大きくなるため力学特性が向上する。
【0069】

横延伸方向の延伸倍率の下限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.6倍であり、特に好ましくは3.7倍である。3.5倍以上であると横方向の配向度が弱くなり過ぎず、力学特性や厚みムラが向上する。横延伸方向の延伸倍率の上限は好ましくは5倍であり、より好ましくは4.5倍であり、特に好ましくは4.0倍である。5.0倍以下であると力学強度や厚みムラ改善の効果はこの範囲でも最大となる(飽和する)。
【0070】

[熱固定工程]

熱固定工程での熱固定温度の下限は好ましくは195℃であり、より好ましくは200℃である。195℃以上であるとフィルムの熱収縮率を小さくなり、レトルト処理後においても、無機薄膜層がダメージを受けにくいため、ガスバリア性が向上する。熱固定温度の上限は好ましくは220℃であり、220度以下であると基材フィルム層が融けることがなく、脆くなり難い。
【0071】

[熱緩和部工程]

熱緩和部工程でのリラックス率の下限は好ましくは0.5%である。0.5%以上であると熱固定時に破断が起こりにくくなることがある。リラックス率の上限は好ましくは10%である。10%以下であると熱固定時の長手方向への収縮が小さくなる結果、フィルム端部の分子配向の歪みが小さくなり、直進引裂き性が向上する。また、フィルムのたるみなどが生じにくく、厚みムラが発生しにくい。
【0072】

[無機薄膜層]

本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に無機薄膜層を設けることで、ガスバリア性を付与することが出来る。

無機薄膜層は金属又は無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0073】

無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0074】

無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0075】

[接着層]

本発明のガスバイア性積層フィルムは、レトルト処理後のガスバリア性やラミネート強度を確保することを目的として、基材フィルム層と前記無機薄膜層との間に接着層を設けることができる。

基材フィルム層と前記無機薄膜層との間に設ける接着層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。これらの接着層に用いる樹脂組成物は、有機官能基を少なくとも1種類以上有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。前記有機官能基としては、アルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。前記シランカップリング剤の添加によって、レトルト処理後のラミネート強度がより向上する。
【0076】

前記接着層に用いる樹脂組成物の中でも、オキサゾリン基を含有する樹脂とアクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の混合物を用いることが好ましい。オキサゾリン基は無機薄膜との親和性が高く、また無機薄膜層形成時に発生する無機酸化物の酸素欠損部分や金属水酸化物とが反応することができ、無機薄膜層と強固な密着性を示す。また接着層中に存在する未反応のオキサゾリン基は、基材フィルム層及び接着層の加水分解により発生したカルボン酸末端と反応し、架橋を形成することができる。
【0077】

前記接着層を形成するための方法としては、特に限定されるものではなく、例えばコート法など従来公知の方法を採用することができる。コート法の中でも好適な方法としては、オフラインコート法、インラインコート法を挙げることができる。例えば基材フィルム層を製造する工程で行うインラインコート法の場合、コート時の乾燥や熱処理の条件は、コート厚みや装置の条件にもよるが、コート後直ちに直角方向の延伸工程に送入し延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましく、そのような場合には通常50~250℃程度の温度とすることが好ましい。

コート法を用いる場合に使用する溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0078】

[保護層]

本発明においては、前記無機薄膜層の上に保護層を有する。金属酸化物層は完全に密な膜ではなく、微小な欠損部分が点在している。金属酸化物層上に後述する特定の保護層用樹脂組成物を塗工して保護層を形成することにより、金属酸化物層の欠損部分に保護層用樹脂組成物中の樹脂が浸透し、結果としてガスバリア性が安定するという効果が得られる。加えて、保護層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層フィルムのガスバリア性能も大きく向上することになる。
【0079】

本発明の積層フィルムの無機薄膜層の表面に形成する保護層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。

前記ウレタン樹脂は、ウレタン結合の極性基が無機薄膜層と相互作用するとともに、非晶部分の存在により柔軟性をも有するため、屈曲負荷がかかった際にも無機薄膜層へのダメージを抑えることができるため好ましい。

前記ウレタン樹脂の酸価は10~60mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。より好ましくは15~55mgKOH/gの範囲内、さらに好ましくは20~50mgKOH/gの範囲内である。ウレタン樹脂の酸価が前記範囲であると、水分散液とした際に液安定性が向上し、また保護層は高極性の無機薄膜上に均一に堆積することができるため、コート外観が良好となる。
【0080】

前記ウレタン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上であることが好ましく、より好ましくは90℃以上である。Tgを80℃以上にすることで、湿熱処理過程(昇温~保温~降温)における分子運動による保護層の膨潤を低減できる。
【0081】

前記ウレタン樹脂は、ガスバリア性向上の面から、芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネート成分を主な構成成分として含有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。

その中でも、メタキシリレンジイソシアネート成分を含有することが特に好ましい。上記樹脂を用いることで、芳香環同士のスタッキング効果によりウレタン結合の凝集力を一層高めることができ、結果として良好なガスバリア性が得られる。
【0082】

本発明においては、ウレタン樹脂中の芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの割合を、ポリイソシアネート成分(F)100モル%中、50モル%以上(50~100モル%)の範囲とすることが好ましい。芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合は、60~100モル%が好ましく、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。このような樹脂として、三井化学株式会社から市販されている「タケラック(登録商標)WPB」シリーズは好適に用いることが出来る。芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合が50モル%未満であると、良好なガスバリア性が得られない可能性がある。
【0083】

前記ウレタン樹脂は、無機薄膜層との親和性向上の観点から、カルボン酸基(カルボキシル基)を有することが好ましい。ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入すればよい。また、カルボン酸基含有ウレタン樹脂を合成後、塩形成剤により中和すれば、水分散体のウレタン樹脂を得ることができる。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン等のトリアルキルアミン類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のN-アルキルモルホリン類、N-ジメチルエタノールアミン、N-ジエチルエタノールアミン等のN-ジアルキルアルカノールアミン類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0084】

以上より、本発明のポリエステルフィルムは、耐破袋性、耐屈曲性に優れ、かつ、基材フィルム層の上に、広幅のロールを無機薄膜層及び保護層を形成してガスバリアフィルムを製造するような場合においても、加熱搬送時に発生する筋状のシワを抑制し、幅方向のガスバリア性を均一にすることができる。
【0085】

[包装材料]

本発明の積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルム層の外側(接着層形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
【0086】

さらに、本発明の積層フィルムには、無機薄膜層又は基材フィルム層とヒートシール性樹脂層との間又はその外側に、印刷層や他のプラスチック基材及び/又は紙基材を少なくとも1層以上積層してもよい。
【0087】

印刷層を形成する印刷インクとしては、水性及び溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂及びこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
【実施例
【0088】

次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
【0089】

[フィルムの厚み]

JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
【0090】

[フィルムの縦方向厚み精度]

得られたフィルムロールの中央部から縦方向にフィルム片を切り出し、5cmピッチで、100箇所をダイアルゲージを用いて測定したときの最大厚みをTmax,最小厚みをTmin、平均厚みをTave とし、下記の式(1)より厚み精度(Tv)を求めた。

縦方向Tv(%)={(Tmax-Tmin)/Tave}×100 (%)・・・[1]

[フィルムの幅方向厚み精度]

得られた1000mm幅のフィルムロールを幅方向に切り出し、5cmピッチで、20箇所をダイアルゲージを用いて測定したときの最大厚みをTmax,最小厚みをTmin、平均厚みをTave とし、下記の式(2)より厚み精度(Tv)を求めた。

幅方向Tv(%)={(Tmax-Tmin)/Tave}×100 (%)・・・[2]
【0091】

[フィルムの面配向度ΔP]

サンプルについてJIS K 7142-1996 A法により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(Nx)、幅方向の屈折率(Ny)を測定し、式(3)の計算式により面配向度ΔPを算出した。

面配向度(ΔP)=(Nx+Ny)/2-Nz [3]
【0092】

[フィルムの熱収縮率]

ポリエステルフィルムの熱収縮率は試験温度150℃、加熱時間15分間とした以外は、JIS-C-2151-2006.21に記載の寸法変化試験法で測定した。試験片は21.1(a)に記載に従い使用した。
【0093】

[フィルムの突刺し強度]

得られたポリエステルフィルムを5cm角にサンプリングし、株式会社イマダ製デジタルフォースゲージ「ZTS-500N」、電動計測スタンド「MX2-500N」及び突刺し治具「TKS-250N」を用いて、JIS Z1707に準じてフィルムの突刺し強度を測定した。単位はN/μmで示した。
【0094】

[長手方向の突刺し強度のばらつき]

得られたポリエステルフィルムロール(幅2080mm、巻き長30,000m)について、長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで100m毎にサンプリングした。

サンプリングした各フィルムについて、JIS Z 1707に準じて突刺し強度を測定した。

得られた突刺し強度の最大値をXmax(N)、最小値をXmin(N)、平均値をXaveとし、下記式(4)で表される突刺し強度のばらつきを求めた。

突刺し強度の長手方向ばらつき(%)=100x(Xmax-Xmin)/Xave ・・・・(4)
【0095】

[フィルムのインパクト強度]

株式会社東洋精機製作所製のインパクトテスターを用い、23℃の雰囲気下におけるフィルムの衝撃打ち抜きに対する強度を測定した。衝撃球面は、直径1/2インチのものを用いた。単位はJ/μmで示した。

[フィルムのバイオマス度測定]

得られたフィルムバイオマス度は、ASTM D6866-16 Method B (AMS)に示された放射性炭素(C14)測定により行った。
【0096】

以下に本実施例及び比較例で使用する原料樹脂及び塗工液の詳細を記す。なお、実施例1-1~1-8、及び比較例1~5で使用し、表1及び表2に示した。

1)PBT樹脂:後述する二軸延伸ポリエステルフィルムの作製において使用するポリブチレンテレフタレート樹脂は1100-211XG(CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.、固有粘度1.28dl/g)を用いた。

2)バイオマス由来PET樹脂(B-1):後述する二軸延伸ポリエステルフィルムの作製において使用するバイオマス由来PET樹脂として、以下の方法を用いて合成したものを用いた。

<バイオマス由来のポリエステルの合成>

テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、ついでその重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行った。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。そのペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC-60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のポリエチレンテレフタレートと同等であった。

3)化石燃料由来PET樹脂(B-2):後述する二軸延伸ポリエステルフィルムの作製において使用する化石燃料由来PET樹脂として、テレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)(東洋紡株式会社製、固有粘度0.62dl/g)を用いた。
【0097】

3)オキサゾリン基を有する樹脂(A):オキサゾリン基を有する樹脂として、市販の水溶性オキサゾリン基含有アクリレート(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-300」;固形分10%)を用意した。この樹脂のオキサゾリン基量は7.7mmol/gであった。
【0098】

4)アクリル樹脂(B):アクリル樹脂として、市販のアクリル酸エステル共重合体の25質量%エマルジョン(ニチゴー・モビニール株式会社製「モビニール(登録商標)7980」を用意した。このアクリル樹脂(B)の酸価(理論値)は4mgKOH/gであった。
【0099】

5)ウレタン樹脂(C):ウレタン樹脂として、市販のポリエステルウレタン樹脂のディスパージョン(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)W605」;固形分30%)を用意した。このウレタン樹脂の酸価25mgKOH/gであり、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)は100℃であった。また、H-NMRにより測定したポリイソシアネート成分全体に対する芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの割合は、55モル%であった。
【0100】

6)ウレタン樹脂(D);:ウレタン樹脂として、市販のメタキシリレン基含有ウレタン樹脂のディスパージョン(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)WPB341」;固形分30%)を用意した。このウレタン樹脂の酸価25mgKOH/gであり、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)は130℃であった。また、H-NMRにより測定したポリイソシアネート成分全体に対する芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの割合は、85モル%であった。
【0101】

7)接着層に用いる塗工液1

下記の配合比率で各材料を混合し、塗工液1(接着層用樹脂組成物)を作製した。

水 54.40質量%

イソプロパノール 25.00質量%

オキサゾリン基含有樹脂 (A) 15.00質量%

アクリル樹脂 (B) 3.60質量%

ウレタン樹脂 (C) 2.00質量%
【0102】

8)保護層のコートに用いる塗工液2

下記の塗剤を混合し、塗工液2を作製した。

水 60.00質量%

イソプロパノール 30.00質量%

ウレタン樹脂(D) 10.00質量%
【0103】

[ラミネート積層体の作製]

後述する実施例1~7及び比較例1~3に示したガスバリア性フィルムの保護層側に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」を13.5:1(質量比)の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、ヒートシール性樹脂層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「P1147」)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネート積層体を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。
【0104】

[ラミネート積層体の水蒸気透過度]

前述のラミネート積層体に対して、JIS-K7129-1992 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W1A」)を用い、温度40℃、相対湿度90RH%の雰囲気下で、常態での水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、基材フィルム層側からシーラント側に水蒸気が透過する方向で行った。
【0105】

[ラミネート積層体のレトルト後の水蒸気透過度]

前述のラミネート積層体に対して、レトルト釜内で130℃の熱水中に30分間保持する湿熱処理を行い、40℃で1日間(24時間)乾燥し、得られた湿熱処理後のラミネート積層体について上記と同様にして水蒸気透過度を測定した。
【0106】

以下に各実施例及び比較例で使用する二軸延伸ポリエステルフィルムの作製方法を記す。また、下記二軸延伸ポリエステルフィルムの物性を表1及び表2に示した。

<実施例1>

一軸押出機を用い、PBT樹脂を80質量%と不活性粒子として平均粒径2.4μmのシリカ粒子を7000ppmとなるように混合したバイオマス由来のPET樹脂を20質量%配合したものを290℃で溶融させた後、メルトラインに導入した。ただし、バイオマス由来のPET樹脂は、押出し機に入る前に他原料と混合するように図1に示すようなインナーパイプを用いて入れた。

次いで265℃のT-ダイスからキャストし、20℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。

次いで、60℃で縦方向に2.9倍ロール延伸し、次いで、テンターに通して90℃で横方向に4.0倍延伸し、200℃で3秒間の緊張熱処理と1秒間9%の緩和処理を実施した後、50℃で2秒間フィルムを冷却した。

次いで、両端の把持部を10%ずつ切断除去して厚みが15μm、全幅4200mmのポリエステルフィルムの全幅のロール(以下、ミルロールという)を得た。得られたミルロールをスリットして、ロール幅2080mm幅のスリットロール2本を採取した。
【0107】

以下に示した無機薄膜層及び保護層の形成方法でスリットしたフィルムに無機薄膜層と保護層を形成してガスバリア性積層フィルムを得た。

<無機薄膜層の形成>

スリットしたフィルムに無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/接着層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO/A1複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
【0108】

<保護層の形成>

塗工液2をワイヤーバーコート法によって、上記の蒸着で形成された無機薄膜層上に塗布し、200℃で15秒乾燥させ、保護層を得た。乾燥後の塗布量は0.190g/m(Dry固形分として)であった。

以上のようにして、基材フィルム上に接着層/無機薄膜層/保護層をこの順に備えたガスバリア性積層フィルムを作製した。

得られたポリエステルフィルム及びガスバリア性フィルムの製膜条件、物性及び評価結果を表1に示した。
【0109】

<実施例2~6、比較例1,2>

二軸延伸ポリエステルフィルム2~6、及び比較例1,2の二軸延伸フィルムの製膜工程において、PBT樹脂の比率、バイオマス由来PETと化石燃料由来PETの比率、縦横延伸倍率、リラックス率を表1及び表2に示した以外は、実施例1と同様に行った。

得られたポリエステルフィルム及びガスバリア性フィルムの製膜条件、物性及び評価結果を表1及び表2に示した。
【0110】

<実施例7>

一軸押出機を用い、PBT樹脂を80質量%とPET樹脂を20質量%混合したものに、不活性粒子として平均粒径2.4μmのシリカ粒子をシリカ濃度として混合樹脂に対して900ppmとなるように配合したものを290℃で溶融させた後、メルトラインに導入した。次いで265℃のT-ダイスからキャストし、20℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。

次いで、60℃で縦方向に2.9倍ロール延伸し、縦延伸後に接着層用樹脂組成物(塗工液1)をファウンテンバーコート法により塗布した。その後、乾燥しながらテンターに導き、次いで、テンターに通して90℃で横方向に4.0倍延伸し、200℃で3秒間の緊張熱処理と1秒間9%の緩和処理を実施した後、50℃で2秒間の冷却を行った。

次いで、両端の把持部を10%ずつ切断除去して厚みが15μm、全幅4200mmのポリエステルフィルムのミルロールを得た。得られたミルロールをスリットして、幅が2080mmのスリットロール2本を採取した。

得られたポリエステルフィルム及びガスバリア性フィルムの製膜条件、物性及び評価結果を表2に示した。
【0111】

<比較例3>

一軸押出機を用い、PBT樹脂を80質量%と不活性粒子として平均粒径2.4μmのシリカ粒子を7000ppmとなるように混合したPET樹脂を20質量%配合したものを290℃で溶融させた後、メルトラインを12エレメントのスタティックミキサーに導入した。PBT樹脂とPET樹脂の混合にはインナーパイプを用いず、ホッパー上部で混合した。

上記同様265℃のT-ダイスからキャストし、20℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。

次いで、60℃で縦方向に2.9倍ロール延伸し、次いで、テンターに通して90℃で横方向に4.0倍延伸し、200℃で3秒間の緊張熱処理と1秒間9%の緩和処理を実施した後、50℃で2秒間の冷却を行いフィルムを冷却した。

次いで、両端の把持部を10%ずつ切断除去して厚みが15μm、全幅4200mmのポリエステルフィルムの全幅のロール(以下、ミルロールという)を得た。得られたミルロールをスリットして、ロール幅2080mm幅のスリットロール2本を採取した。

得られたポリエステルフィルム及びガスバリア性フィルムの製膜条件、物性及び評価結果を表2に示した。
【0112】

表1及び表2に示すように、本発明によって得られた二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、実施例1~7にみられるように、PBT比率を本発明の範囲とし、PET原料としてバイオマス由来のPETを用いることで、比較例1に示した石油由来PETと用いた場合と物性上遜色なく、耐ピンホール性に優れ、バイオマス度の高いカーボンニュートラルなポリエステルフィルムを得ることが可能であった。
【0113】

また、本発明によって得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、原料の供給にインナーパイプを用いることによって、長手方向での突刺し強度のばらつきが小さくなっていた。
【0114】

比較例2は、バイオマス由来のPETの比率を増やしているのでバイオマス度は高くなるが、同時にPBTの比率が低下するので、耐突刺し性などの力学強度が低下した。

比較例3は、原料の供給にインナーパイプを用いておらず、原料の偏析のために長手方向で原料比率の変動が大きくなるため、長手方向の突刺し強度のばらつきが多くなっていた。
【0115】

【表1】
【0116】

【表2】


【産業上の利用可能性】
【0117】

本発明によれば、優れた耐ピンホール性、耐破袋性を有するとともに、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルフィルムであり、巻き長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のばらつきが少ない二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することが可能となった。これらのフィルムは食品包装材料として広く適用でき得ることから、産業界に大きく寄与することが期待される。

また、医薬品、工業製品等の包装用途の他、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途にも広く用いることができる。
【符号の説明】
【0118】

1 ホッパー

2 押出機

3 インナーパイプ

4 インナーパイプ出口
図1
図2