(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両用ペダル組付け構造
(51)【国際特許分類】
G05G 1/30 20080401AFI20240827BHJP
G05G 25/00 20060101ALI20240827BHJP
G05G 1/38 20080401ALI20240827BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240827BHJP
B60K 26/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G05G1/30 E
G05G25/00 Z
G05G1/38
B60R16/02 620A
B60K26/04
(21)【出願番号】P 2021001639
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 幸寿
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05063811(US,A)
【文献】特開平10-231956(JP,A)
【文献】特開2009-096245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0070293(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0047775(US,A1)
【文献】国際公開第2020/235550(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/30
G05G 25/00
G05G 1/38
B60R 16/02
B60K 26/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の前部に設けられ、車両幅方向に沿って設けられた軸部を中心に回動可能に支持され踏力が付与されるペダルパッドを備えたペダルと、
前記ペダルに接続され、当該ペダルの車両前後方向の前方側において弛みが得られる余長部を有するハーネスと、
前記ペダル側に設けられ前記ハーネスが接続されるコネクタ部材との間に前記余長部を設けると共に、平面視で
当該余長部が前記ペダルパッドの
ペダル幅方向の外側に配策されるように当該ハーネスを誘導する誘導部材と、
を有する車両用ペダル組付け構造。
【請求項2】
前記誘導部材は、前記余長部が前記ペダルパッドの車両前後方向の前方側に配置されるように設定される請求項1に記載の車両用ペダル組付け構造。
【請求項3】
前記誘導部材は、
前記車室内の前端部において当該車室内と車室外とを区画するダッシュパネルに設けられたボルトに取り付けられ、前記ハーネスを車両幅方向に沿って保持するクランプ部材と、
前記クランプ部材に当接して当該クランプ部材の回転を規制するストッパ部材と、
を含んで構成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用ペダル組付け構造。
【請求項4】
前記ペダルは、前記ペダルパッドを回動可能に支持すると共に
前記コネクタ部材が設けられた本体部をさらに含んで構成され、
前記誘導部材は、前記ハーネスの前記コネクタ部材側に設けられ、前記余長部において配策経路を変更する変曲部が平面視で前記ペダルパッドのペダル幅方向の外側かつ前記ペダルパッドの車両前後方向の前方側となるように当該ハーネスの形状を保持する保持部材を含んでいる請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用ペダル組付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ペダル組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車室内のフロアパネル上に設置され、車両前後方向の後端部を支点として回動可能に設けられた所謂オルガン式のアクセルペダルに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術では、アクセルペダル(以下、単に「ペダル」という)における車両前後方向の前端部かつ車両上下方向の下方側に、コントロールボックスが設けられている。このコントロールボックスの前面には、カプラーが取り付けられており、このカプラーにハーネスが結線(以下、「接続」という)され、これにより、ハーネスがコントロールボックスに接続されるようになっている。
【0005】
つまり、上記先行技術では、ペダルにおける車両前後方向の前端部側に設けられたコントロールボックスの車両前後方向の前方側からハーネスをカプラーに接続させることになる。ペダルは、車室内の車両前後方向の前端部に設けられているため、ペダルよりもさらに車両前後方向の前方側からハーネスを接続させる場合、ハーネスの接続作業が大変である。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、ペダルのフロアパネル側への組付け時における作業性の向上を図ることが可能となる車両用ペダル組付け構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車両用ペダル組付け構造は、車室内の前部に設けられ、車両幅方向に沿って設けられた軸部を中心に回動可能に支持され踏力が付与されるペダルパッドを備えたペダルと、前記ペダルに接続され、当該ペダルの車両前後方向の前方側において弛みが得られる余長部を有するハーネスと、前記ペダル側に設けられ前記ハーネスが接続されるコネクタ部材との間に前記余長部を設けると共に、平面視で当該余長部が前記ペダルパッドのペダル幅方向の外側に配策されるように当該ハーネスを誘導する誘導部材と、を有している。
【0008】
請求項1に記載の車両用ペダル組付け構造では、ペダル、ハーネス及び誘導部材を備えており、ペダルは、車室内の前部に設けられている。当該ペダルには、踏力が付与されるペダルパッドが備わっており、ペダルパッドは、車両幅方向に沿って設けられた軸部を中心に回動可能に支持されている。ハーネスは、ペダルに接続されており、当該ペダルの車両前後方向の前方側において弛みが得られる余長部を有する。また、誘導部材は、ペダル側に設けられ当該ハーネスが接続されるコネクタ部材との間に余長部を設けると共に、平面視で当該余長部がペダルパッドのペダル幅方向の外側に配策されるように当該ハーネスを誘導する。
【0009】
例えば、ペダルをフロアパネル側に組付ける際、ハーネスをペダルに接続(結線)させた状態で、当該ペダルをフロアパネル側に固定する。その際、ハーネスの張力が高い場合、ペダルを組付ける際のハーネスの遊びは小さくなるため、ペダルの位置は規制され、その分、作業性はよくない。したがって、本発明では、ペダルの組付け時の作業性を考慮して、ハーネスには弛みが得られる余長部が設けられる。
【0010】
一方、比較例として、例えば、平面視でハーネスがペダルパッドの内側、つまり、平面視でハーネスがペダルパッドと重なる場合、当該ハーネスがペダルの下側に入り込む可能性があり、この場合、ペダルパッドの踏み込みによってハーネスが断線する可能性もある。
【0011】
したがって、前述のように、ハーネスに余長部を設けた場合、ペダルをフロアパネル側に組付ける際に、当該余長部がペダルの下側に入り込む可能性がある。このため、例えば、ペダルをフロアパネル側に組付ける際、余長部がペダルの下側に入り込まないように当該余長部を避ける必要があり、この点において作業性がよくない。
【0012】
これに対して、本発明では、誘導部材とペダル側に設けられたコネクタ部材の間に余長部を設け、当該誘導部材によって、平面視で当該余長部がペダルパッドのペダル幅方向の外側に配策されるように当該ハーネスを誘導している。これにより、ハーネスの余長部において、ペダルの下側への入り込みが抑制される。したがって、本発明では、ペダルをフロアパネル側に組付ける際に、余長部がペダルの下側に入り込まないように当該余長部を避ける必要はなく、作業性が向上する。
【0013】
なお、「ペダル」は、アクセルペダル以外に、ブレーキペダル、クラッチペダル等が含まれる。また、「接続」には、電気的接続以外に機械的接続も含まれる。さらに、「余長部」は、前述のように、ペダルをフロアパネル側に組付ける際に必要とされる。このため、ペダルをフロアパネル側に組付けた後は、当該余長部が弛みを有した状態で残される場合もあるが、ハーネスの配策によっては当該余長部の弛みはなくなる場合もある。
【0014】
請求項2に記載の車両用ペダル組付け構造は、請求項1に記載の車両用ペダル組付け構造において、前記誘導部材は、前記余長部が前記ペダルパッドの車両前後方向の前方側に形成されるように設定される。
【0015】
請求項2に記載の車両用ペダル組付け構造では、誘導部材によって、ハーネスの余長部がペダルパッドの車両前後方向の前方側に配置されるように設定される。これにより、本発明では、ハーネスの余長部において、ペダルの下側への入り込みが抑制される。
【0016】
請求項3に記載の車両用ペダル組付け構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両用ペダル組付け構造において、前記誘導部材は、前記車室内の前端部において当該車室内と車室外とを区画するダッシュパネルに設けられたボルトに取り付けられ、前記ハーネスを車両幅方向に沿って保持するクランプ部材と、前記クランプ部材に当接して当該クランプ部材の回転を規制するストッパ部材と、を含んで構成されている。
【0017】
請求項3に記載の車両用ペダル組付け構造では、誘導部材がクランプ部材及びストッパ部材を含んで構成されている。車室内の前端部には、当該車室内と車室外とを区画するダッシュパネルが設けられており、当該ダッシュパネルにはボルトが設けられている。このボルトにクランプ部材が取り付けられるようになっており、当該クランプ部材によって、ハーネスが車両幅方向に沿って保持される。
【0018】
一般に、クランプ部材は、ダッシュパネルに設けられたボルトに対して、当該ボルトの軸方向に沿って装着され、雄ネジ部に係止されるように構成されている。このため、当該クランプ部材は、ボルトに対して回転可能とされる。
【0019】
したがって、本発明では、さらに、誘導部材としてストッパ部材を含んでいる。このストッパ部材が、クランプ部材に当接し当該クランプ部材の回転を規制することによって、ハーネスが車両幅方向に沿って配策された状態が維持される。その結果、平面視でハーネスがペダルパッドのペダル幅方向の外側を配策するように当該ハーネスを誘導することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の車両用ペダル組付け構造は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用ペダル組付け構造において、前記ペダルは、前記ペダルパッドを回動可能に支持すると共に前記コネクタ部材が設けられた本体部をさらに含んで構成され、前記誘導部材は、前記ハーネスの前記コネクタ部材側に設けられ、前記余長部において配策経路を変更する変曲部が平面視で前記ペダルパッドのペダル幅方向の外側かつ前記ペダルパッドの車両前後方向の前方側となるように当該ハーネスの形状を保持する保持部材を含んでいる。
【0021】
請求項4に記載の車両用ペダル組付け構造では、ペダルが、ペダルパッドを回動可能に支持する本体部をさらに含んで構成されており、当該本体部には、ハーネスが接続されるコネクタ部材が設けられている。また、誘導部材として、保持部材を含んでいる。この保持部材は、ハーネスのコネクタ部材側に設けられており、余長部において配策経路を変更する変曲部が平面視でペダルパッドのペダル幅方向の外側かつペダルパッドの車両前後方向の前方側となるように当該ハーネスの形状を保持する。これにより、本発明では、平面視でペダルパッドのペダル幅方向の外側をハーネスが配策するように、当該ハーネスを誘導することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1に記載の車両用ペダル組付け構造は、ペダルのフロアパネル側への組付け時における作業性の向上を図ることができる、という優れた効果を有する。
【0023】
請求項2に記載の車両用ペダル組付け構造は、ハーネスの余長部をペダルパッドの車両前後方向の前方側に配置させることによって、当該余長部のペダルパッドの下側への入り込みを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0024】
請求項3に記載の車両用ペダル組付け構造は、クランプ部材及びストッパ部材によってハーネスを車両幅方向に沿って配策させた状態を維持することができる、という優れた効果を有する。
【0025】
請求項4に記載の車両用ペダル組付け構造は、保持部材によってハーネスの形状を保持して当該ハーネスがペダルパッドの外側を配策するように設定することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係る車両用ペダル組付け構造が適用されたオルガン式ペダルがフロアパネルに取り付けられた状態であり、車両幅方向外側かつ斜め上方側から見た要部を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用ペダル組付け構造が適用されたオルガン式ペダルがフロアパネルに取り付けられた状態の要部を示す概略平面図である。
【
図3】(A)は、比較例として、ワイヤハーネスがクランプ部材に保持された状態を示す斜視図であり、(B)は、第1実施形態に係る車両用ペダル組付け構造が適用されたオルガン式ペダルのワイヤハーネスがクランプ部材に保持された状態を示す斜視図である。がフロアパネルに取り付けられた状態の要部を示す概略平面図である。
【
図4】第2実施形態に係る車両用ペダル組付け構造が適用されたオルガン式ペダルの要部を示す概略側面図である。
【
図5】第2実施形態に係る車両用ペダル組付け構造が適用されたオルガン式ペダルの変形例を示す
図4に対応する概略側面図である。
【
図6】比較例を示す
図2に対応する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本実施の形態に係る車両用ペダル組付け構造が適用されたペダルについて説明する。なお、以下の図において適宜示される矢印FRは、車両前後方向の前側を示しており、矢印UPは、車両上下方向の上側を示している。また、矢印RHは、車両幅方向の右側を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
【0028】
<第1の実施形態>
(車両用ペダル組付け構造の構成)
まず、第1の実施形態に係る車両用ペダル組付け構造の構成について説明する。
【0029】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用ペダル組付け構造が適用されたオルガン式のアクセルペダル(以下、「オルガン式ペダル」という)12は、車両10の左側に設けられた運転席側のインストルメントパネル(図示省略)の下方奥側に設けられている。つまり、当該車両10は、いわゆる左ハンドル仕様車となっている。勿論、当該車両10が、右ハンドル仕様であってもよい。
【0030】
当該オルガン式ペダル12は、フロアカーペット14の上方側に設けられており、運転者が足裏(靴を履いた状態の足裏を含む)で踏むペダルパッド16と、当該ペダルパッド16を回動可能に支持するベース部材(本体部)18と、を含んで構成されている。
【0031】
ペダルパッド16は、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属で形成されており、平面視で車両前後方向を長手方向とする略矩形板状を成している。また、ペダルパッド16は、表面16Aが凹凸状となるように形成されており、ペダルパッド16を踏んだ状態で、当該ペダルパッド16の表面16Aに対して足裏の位置がずれないように形成されている。
【0032】
一方、ベース部材18は、平面視でペダルパッド16の下方側に配置され車両前後方向を長手方向とする略矩形状を成す本体部20と、当該本体部20を間において車両幅方向の左側に設けられた左フランジ部24と、右側に設けられた右フランジ部25と、を含んで構成されている。
【0033】
左フランジ部24は、本体部20の下部から車両幅方向の外側へ向かって張り出しており、フロアパネル22側へ取り付けられる。また、左フランジ部24には、締結孔26が設けられており、当該締結孔26内に挿入されたボルト(図示省略)を介して、左フランジ部24がフロアパネル22に締結される(締結部52)。これにより、ベース部材18はフロアパネル22に固定される。
【0034】
一方、右フランジ部25は、本体部20の上壁部20Aから張り出しており、当該右フランジ部25の下方側に、後述するコネクタ部材34が配置される。
【0035】
ここで、
図4は、第2の実施形態に係る車両用ペダル組付け構造が適用されたオルガン式ペダル12を示す側面図であり、本実施形態では関係ないが、後述する硬質チューブ60が設けられている。この図に示されるように、本体部20の後端部20B側には、車両幅方向に沿って軸部28が設けられている。
【0036】
この軸部28は、本体部20に対して回転可能(回動可能)に支持されており、当該軸部28には、ペダルパッド16の後端部16Bが固定されている。つまり、ペダルパッド16は、当該ペダルパッド16の後端部16Bを含む軸部28を中心に、ペダルパッド16の前端部16Cを自由端部として、本体部20に対して回動可能(矢印A方向)とされている。
【0037】
また、ペダルパッド16は、当該ペダルパッド16の裏面16D側に、例えば、本体部20の上壁部20Aに形成された孔部21(
図1参照)内に挿通可能な押圧部材30が設けられている。本体部20内には図示はしないがバネ部材が設けられており、当該押圧部材30の先端部が当接している。
【0038】
このため、ペダルパッド16を押圧すると(足裏で踏み込むと)、当該バネ部材は押圧部材30によって圧縮変形し、弾性エネルギが蓄積される。そして、ペダルパッド16への押圧力を解除すると(足裏を離すと)、バネ部材は復元し、ペダルパッド16は元の位置(初期状態)に戻る。
【0039】
なお、押圧部材30には、図示はしないが係止部が設けられており、本体部20には、当該係止部が係止される図示しない被係止部が形成されている。係止部が被係止部に係止されることによって、バネ部材が復元する際に、本体部20に対して押圧部材30が抜け止めされる。つまり、ペダルパッド16は、足裏で踏まない状態では初期状態として所定の角度が維持される。
【0040】
また、本実施形態では、ペダルパッド16の裏面16D側に押圧部材30が設けられている構成について説明したが、ペダルパッド16を押圧することによってバネ部材に弾性エネルギが蓄積されるようになっていれば良い。このため、押圧部材30が本体部20側に設けられてもよい。この場合、ペダルパッド16の押圧によって押圧部材30がバネ部材を圧縮変形させる方向へ移動する。
【0041】
ここで、ペダルパッド16が回動すると、ペダルパッド16が固定された軸部28が当該ペダルパッド16と一体に回動する。このとき、図示はしないがセンサー部が当該軸部28の回動量を検知し、ワイヤハーネス32を介してエンジンコントロールユニットへ電気信号を送信する。この電気信号によって、軸部28の回動量に応じてエンジンのスロットルバルブの開度が調整される。勿論、当該ワイヤハーネス32を介して機械的にスロットルバルブの開度を調整してもよい。
【0042】
一方、
図1、
図2に示されるように、オルガン式ペダル12のベース部材18の一部を構成する本体部20の右側壁部20C(後述するトンネル部56側)には、図示しないセンサー部と接続されたコネクタ部材34が設けられている。コネクタ部材34には、ワイヤハーネス32の一端部32Aが接続されており、ワイヤハーネス32の他端部は、図示はしないがエンジンコントロールユニット側に接続される。
【0043】
当該エンジンコントロールユニットは、例えば、車両前部に設けられたパワーユニットルーム内に配設されており、パワーユニットルームと車室内36とは、ダッシュパネル38によって区画されている。このため、ダッシュパネル38には、誘導部材39の一部として、ワイヤハーネス32を把持(保持)するためのクランプ部材40が取り付けられるようになっており、当該クランプ部材40によって、ワイヤハーネス32が把持される。
【0044】
したがって、車室内36側に配設されたオルガン式ペダル12のベース部材18に設けられたコネクタ部材34に接続されたワイヤハーネス32は、オルガン式ペダル12から車両前方側へ向かって延出され、ダッシュパネル38の表面側に沿って配策される。なお、ダッシュパネル38の車室内36側には、吸遮音部材として吸音効果を持たせた不織布製のサイレンサ42が敷設されている。このため、厳密にいうと、ワイヤハーネス32は、サイレンサ42の表面に沿って配策される。
【0045】
ここで、ダッシュパネル38には、ウェルドボルト44が設けられており、当該ウェルドボルト44にクランプ部材40が取り付けられる。クランプ部材40は、サイレンサ42に当接する板状の基部46と、基部46と一体に設けられウェルドボルト44に取り付けられる取付部48と、基部46と一体に設けられワイヤハーネス32を把持(保持)する把持部50と、を含んで構成されている。
【0046】
取付部48には、例えば、ウェルドボルト44の雄ネジ部が挿通可能な挿通穴が形成されており、挿通穴の内縁からは複数の爪部が挿通穴の中心に向かって張り出している。また、爪部はウェルドボルト44に形成された雄ネジ部に係止可能とされており、取付部48の挿通穴内へウェルドボルト44を挿入すると、ウェルドボルト44の雄ネジ部に複数の爪部が係止され、これによって、取付部48がウェルドボルト44に取り付けられることになる。一方、把持部50はワイヤハーネス32を把持するため、当該クランプ部材40を介してワイヤハーネス32は、ダッシュパネル38の表面側に沿って配策されることになる。
【0047】
ところで、オルガン式ペダル12を組付ける際、まず、オルガン式ペダル12のコネクタ部材34にワイヤハーネス32の一端部32Aを接続する。次に、オルガン式ペダル12のベース部材18をフロアパネル22側に締結させるが、オルガン式ペダル12の組付け時には、作業者が車両外側から上半身のみを車室内36側へ入れて、前述した一連の作業が行われる。
【0048】
このとき、例えば、ワイヤハーネス32の張力が高い場合、オルガン式ペダル12の組付け時の遊びが小さくなるため、オルガン式ペダル12の位置は規制され、その分、作業性はよくない。このため、本実施形態では、作業者が組付けし易いように、ワイヤハーネス32には弛み部54Aが得られる余長部54が設けられる。
【0049】
一方、ダッシュパネル38において、クランプ部材40を取り付けるためのフラットな座面が得られる部位として、本実施形態では、オルガン式ペダル12の前方側かつ上方側にウェルドボルト44が設けられている。このウェルドボルト44にクランプ部材40の取付部48が取り付けられる。つまり、余長部54はクランプ部材40とコネクタ部材34の間に設けられることになる。
【0050】
ここで、フロアパネル22の車両幅方向の中央部には、上方側へ向かってトンネル部56が突設されており、ワイヤハーネス32の一端部32Aが接続されるコネクタ部材34は、オルガン式ペダル12のトンネル部56側に設けられている。このため、クランプ部材40の把持部50によって把持されたワイヤハーネス32は、当該トンネル部56の側壁部56A側へ案内される。
【0051】
すなわち、当該クランプ部材40は、把持部50によってワイヤハーネス32が車両幅方向に沿って配策されるようにクランプ部材40の向きが設定される。そして、ワイヤハーネス32がトンネル部56の側壁部56Aに到達すると、ワイヤハーネス32は車両前後方向に沿って配策される。このように、ワイヤハーネス32をペダルパッド16の下方側から迂回させるようにして配策させることによって、オルガン式ペダル12の前方側に形成される弛み部54Aの弛み量を低減させることができる。
【0052】
前述のように、クランプ部材40は、把持部50によってワイヤハーネス32が車両幅方向に沿って配策されるようにクランプ部材40の向きが設定される。
図3(B)に示されるように、本実施形態では、誘導部材39の他の一部として、把持部50によってワイヤハーネス32が車両幅方向に沿って配策されるように向きが設定されたクランプ部材40の下方側には、当該クランプ部材40に当接するように誘導部材としてのサイレンサ(ストッパ部材)58がさらに設けられている。
【0053】
つまり、クランプ部材40の下方側において、サイレンサ42の板厚を厚くしてサイレンサ58を形成し、当該サイレンサ58をクランプ部材40に当接させている。勿論、サイレンサ42とは別にサイレンサが設けられてもよい。
【0054】
(車両用ペダル組付け構造の作用及び効果)
次に、本実施の形態に係る車両用ペダル組付け構造の作用及び効果について説明する。
【0055】
図1、
図2に示されるように、本実施形態では、ワイヤハーネス32は、オルガン式ペダル12に接続されており、当該オルガン式ペダル12の前方側において弛み部54Aを有する余長部54を設けられている。一方、誘導部材39は、平面視でワイヤハーネス32がオルガン式ペダル12のペダル幅方向の外側を配策するように当該ワイヤハーネス32を誘導している。
【0056】
前述のように、オルガン式ペダル12をフロアパネル22側に組付ける際、ワイヤハーネス32をオルガン式ペダル12に接続させた状態で、当該オルガン式ペダル12をフロアパネル22側に固定する。このため、本実施形態では、オルガン式ペダル12の組付け時の作業性を考慮して、ワイヤハーネス32には弛み部54Aが得られる余長部54が設けられる。
【0057】
このように、本実施形態では、余長部54を設けることで、オルガン式ペダル12を組付ける際のワイヤハーネス32の遊びを確保した上で、ワイヤハーネス32が接続されたオルガン式ペダル12をフロアパネル22側への組付けすることができるため、オルガン式ペダル12の組付け時の作業性の向上を図ることができる。
【0058】
一方、比較例として、
図6に示されるように、平面視でワイヤハーネス100の余長部100Aがペダルパッド102のペダル幅方向の内側、つまり、平面視でワイヤハーネス100がペダルパッド102と重なる場合、当該ワイヤハーネス100がオルガン式ペダル104の下側に入り込む可能性がある。この場合、ペダルパッド102の踏み込みによってワイヤハーネス100が断線する可能性もある。
【0059】
これに対して、本実施形態では、
図2に示されるように、クランプ部材40及びサイレンサ58を含む誘導部材39によって、ワイヤハーネス32が車両幅方向に沿って配策される。これにより、本実施形態では、平面視でワイヤハーネス32がペダルパッド16の外側を配策する。
【0060】
その結果、本実施形態では、ワイヤハーネス32がオルガン式ペダル12の下側に入り込まないようにすることが可能となる。したがって、本実施形態では、ペダルパッド16を踏み込むことによって生じるワイヤハーネス32の断線を防止することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、ワイヤハーネス32のオルガン式ペダル12の下側への入り込みが抑制されるため、オルガン式ペダル12をフロアパネル22側に組付ける際に、当該ワイヤハーネス32がオルガン式ペダル12の下側に入り込まないように当該ワイヤハーネス32を避ける必要はなく、作業性が向上する。
【0062】
また、本実施形態では、クランプ部材40によって、ワイヤハーネス32を車両幅方向に沿って配策し、フロアパネル22のトンネル部56の側壁部56Aに到達すると、車両前後方向に沿って配策させる。ワイヤハーネス32の一端部32Aが接続されたコネクタ部材34は、オルガン式ペダル12の本体部20の右側壁部20Cに設けられているため、ワイヤハーネス32をトンネル部56の側壁部56Aに沿って車両前後方向に配策させることができる。
【0063】
つまり、本実施形態では、平面視でワイヤハーネス32がペダルパッド16の外側を配策するように当該ワイヤハーネス32を誘導することができる。このように、ワイヤハーネス32をペダルパッド16の下方側から迂回させるようにして配策させることによって、オルガン式ペダル12の前方側に形成される弛み部54Aの弛み量を低減させることができる。
【0064】
ところで、本実施形態では、クランプ部材40の下方側にはサイレンサ58が設けられ、当該クランプ部材40に当接している。クランプ部材40の取付部48は、ウェルドボルト44の雄ネジ部に対して爪部を係止させるため、ウェルドボルト44の雄ネジ部と爪部との間で生じる摩擦力を超える外力(例えば、自重)がクランプ部材40に作用すると、
図3(A)に示されるように、クランプ部材40は当該ウェルドボルト44に対して回転する。
【0065】
このため、本実施形態では、
図3(B)に示されるように、ワイヤハーネス32による自重が作用する方向においてサイレンサ58を設け、当該サイレンサ58をクランプ部材40に当接させることによって、クランプ部材40の回転を規制している。つまり、本実施形態では、ワイヤハーネス32が車両幅方向に沿って配策された状態を維持することができる。
【0066】
このように、本実施形態では、サイレンサ58(サイレンサ42)を用いてクランプ部材40の回転を規制している。ダッシュパネル38にはサイレンサ42が敷設されるため、当該サイレンサ42を活用することで、当該クランプ部材40の回転を規制するための部材を別途設ける必要がない。但し、クランプ部材40に当接することで当該クランプ部材40の回転を規制することができれば良いため、サイレンサ58以外の別部材を用いてもよいのは勿論のことである。
【0067】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る車両用ペダル組付け構造の構成について説明する。なお、本実施形態における車両用ペダル組付け構造の基本的な構成は、第1実施形態における車両用ペダル組付け構造の構成と略同じである。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0068】
本実施形態では、
図4に示されるように、ワイヤハーネス32の一端部32A(コネクタ部材34)側に硬質チューブ(保持部材)60を外挿させている。これにより、硬質チューブ60の形状に沿ってワイヤハーネス32を配策することができる。
【0069】
ワイヤハーネス32の一端部32A側は、硬質チューブ60が外挿された状態で硬質チューブ60と共に車両前後方向に沿って配策されている。硬質チューブ60は、その先端60Aが平面視でペダルパッド16の先端から突出するように当該硬質チューブ60の長さが設定されている。一方、ワイヤハーネス32の余長部54において、ワイヤハーネス32が配策される配策経路62は、変曲部62A、62Bによって変更されている。
【0070】
ここでは、硬質チューブ60の先端60Aの近傍には変曲部62Aが設けられ、当該変曲部62Aによって配策経路62は車両後方側へ向かった後、変曲部62Bによって配策経路62は車両前方側(クランプ部材40側)へ向かうように設定されている。さらに、当該変曲部62A、62Bは、オルガン式ペダル12の前方側となるようにそれぞれ設定されている。これにより、本実施形態では、平面視でワイヤハーネス32がオルガン式ペダル12の前方側となるように当該ワイヤハーネス32の形状を保持することが可能となる。
【0071】
このように、硬質チューブ60によって配策経路62の変曲部62A、62Bをオルガン式ペダル12の前方側となるようにそれぞれ設定することで、本実施形態では、ワイヤハーネス32の余長部54がオルガン式ペダル12の前方側に配置されるように設定される。これにより、本実施形態では、ワイヤハーネス32の余長部54がオルガン式ペダル12の下側に入り込まないようにすることが可能となる。
【0072】
なお、本実施形態では、硬質チューブ60を用いたが、ワイヤハーネス32を車両前後方向に沿って配策することができればよいため、当該硬質チューブ60に限るものではない。例えば、コネクターカバー34A、ビニールテープ等のテープを巻いたテープ巻き部64等、ワイヤハーネス32を保持可能な部材であれば、硬質チューブ60と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態は、第1実施形態と共に適用されてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、ワイヤハーネス32の一端部32A側に硬質チューブ60が外挿されているが、硬質チューブ60の先端60Aが平面視でペダルパッド16の先端から突出するように設定されていれば良い。このため、コネクタ部材34の配置場所によっては、必ずしもワイヤハーネス32の一端部32側に硬質チューブ60が外挿される必要はない。
【0074】
例えば、本実施形態の変形例として、
図5に示されるように、コネクタ部材34がオルガン式ペダル12の車両前後方向の後部側に設けられている場合、硬質チューブ60の先端60Aが平面視でペダルパッド16の先端から突出するように当該硬質チューブ60の長さが設定されると、硬質チューブ60の長さが長くなってしまう。
【0075】
このため、オルガン式ペダル12の本体部20の右側壁部20Cに保持具66を設け、当該保持具66によって硬質チューブ60を保持することで硬質チューブ60を固定する。この場合、ワイヤハーネス32の一端部32A側は露出してもよい。これにより、硬質チューブ60は必要最小限の長さに設定することができる。
【0076】
また、本実施形態に係るオルガン式ペダルを備えた車両用フロア構造に係るペダルパッド16は、オルガン式ペダル12のペダルパッド16として説明したが、これに限らず、オルガン式のブレーキペダルのペダルパッド等に適用されてもよい。
【0077】
さらに、本実施形態では、オルガン式ペダル12は、ペダルパッド16と当該ペダルパッド16を回動可能に支持するベース部材18とを含んで構成されているが、ペダルパッド16が回動可能に支持されていればよいため、当該ベース部材18については必ずしも必要ではない。
【0078】
また、本実施形態に係るオルガン式ペダルを備えた車両用フロア構造は、エンジンの駆動力により走行する車両に限らずモータの駆動力によって車両を走行させる電気自動車に適用されてもよい。
【0079】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10 車両
12 オルガン式ペダル(ペダル)
16 ペダルパッド
20 本体部
32 ワイヤハーネス(ハーネス)
34 コネクタ部材
36 車室内
38 ダッシュパネル
39 誘導部材
40 クランプ部材(誘導部材)
44 ウェルドボルト(ボルト)
54 余長部
54A 弛み部(弛み)
58 サイレンサ(ストッパ部材、誘導部材)
60 硬質チューブ(保持部材、誘導部材)
62 配策経路
62A 変曲部
62B 変曲部