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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/13 20060101AFI20240827BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B41J29/13
B41J2/32 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021006187
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110651
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 陸生
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120618(JP,A)
【文献】実開昭58-189659(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0175987(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106183448(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/315-2/345
2/42 -2/425
2/475-2/48
3/01 -3/54
3/62
29/00 -29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームを有する装置本体と、
第1回動位置と第2回動位置との間で回動可能に前記装置本体に取り付けられた回動部と、
前記装置本体に設けられ、印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、
前記回動部に回転可能に支持され、前記回動部が前記第1回動位置に位置するときに、前記サーマルヘッドとの間で挟持した前記印刷媒体を送るプラテンローラーと、
前記プラテンローラーを回転させる駆動部と、
前記本体フレームに設けられ、前記第1回動位置に位置する前記回動部が前記第1回動位置から前記第2回動位置へ向かう第1回動方向の力を前記駆動部から受けたときに、前記回動部が前記第1回動方向に回動することを阻止するロック部材と、を備え、
前記ロック部材は、
前記回動部が前記第1回動位置に位置するときに、前記回動部に設けられた回動側係合部と係合するロック側係合部と、
前記ロック部材を回転させることで前記ロック側係合部が前記回動側係合部と係合する位置が調整された後、前記本体フレームに対して固定される第1固定部と、を有し、
前記ロック部材の回転中心から前記第1固定部までの第1固定距離は、前記回転中心から前記ロック側係合部までのロック距離よりも長いことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記ロック部材を回転させることで前記ロック側係合部が前記回動側係合部と係合する位置が調整された後、前記本体フレームに対して固定される第2固定部、を有し、
前記回転中心から前記第2固定部までの第2固定距離は、前記ロック距離よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記回動部は、回動フレームと、前記回動側係合部が設けられたフック部材と、を有し、
前記フック部材は、前記回動フレームに対して、第1移動方向と、前記第1移動方向とは反対の第2移動方向と、に移動可能であり、
前記回動部は、前記第1回動位置において、前記フック部材が前記第1移動方向に移動することで、前記回動側係合部が前記ロック側係合部から外れ、前記第1回動方向へ回動可能となることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ロック側係合部が前記第1移動方向に変位することを規制する規制部、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記装置本体には、開口部が設けられ、
前記回動部は、前記第1回動位置において、前記開口部を閉塞し、前記第2回動位置において、前記開口部を開放する開閉カバーとして機能することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1が開示するように、回動可能に設けられた開閉カバーと、印字ヘッドと、開閉カバーに回転可能に支持され、印字ヘッドとの間で印字用紙を挟持するプラテンローラーと、プラテンローラーを駆動する駆動モーターと、を備えたプリンターが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-052124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプリンターにおいて、開閉カバーが印字ヘッドとの間で印字用紙を挟持する第1回動位置から第2回動位置へ向かう第1回動方向へ回動することを阻止するロック部材を備えた構成とする。ロック部材が開閉カバーと係合する位置は、ロック部材を回転させることで調整可能である。この場合、駆動モーターにより開閉カバーを第1回動方向へ回動させる力が働いたときに、ロック部材のロック力が開閉カバーを第1回動方向へ回動させる力に負けて、ロック部材が回転してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、本体フレームを有する装置本体と、第1回動位置と第2回動位置との間で回動可能に装置本体に取り付けられた回動部と、装置本体に設けられ、印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、回動部に回転可能に支持され、回動部が第1回動位置に位置するときに、サーマルヘッドとの間で挟持した印刷媒体を送るプラテンローラーと、プラテンローラーを回転させる駆動部と、本体フレームに設けられ、第1回動位置に位置する回動部が第1回動位置から第2回動位置へ向かう第1回動方向の力を駆動部から受けたときに、回動部が第1回動方向に回動することを阻止するロック部材と、を備え、ロック部材は、回動部が第1回動位置に位置するときに、回動部に設けられた回動側係合部と係合するロック側係合部と、ロック部材を回転させることでロック側係合部が回動側係合部と係合する位置が調整された後、本体フレームに対して固定される第1固定部と、を有し、ロック部材の回転中心から第1固定部までの第1固定距離は、回転中心からロック側係合部までのロック距離よりも長い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】開閉カバーが閉められた状態における印刷装置の斜視図である。
図2】開閉カバーが開かれた状態における印刷装置の斜視図である。
図3】印刷装置の断面図である。
図4】印刷装置の内部構造の斜視図である。
図5】印刷装置の内部構造を-X方向から見た図である。
図6】ロック部材の斜視図である。
図7】フック側係合部がロック側係合部と係合した状態を示す断面図である。
図8】フック側係合部がロック側係合部から外れた状態を示す断面図である。
図9図5のA線で囲まれた部分を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を参照して、印刷装置の一実施形態について説明する。本実施形態の印刷装置1は、例えば、POSシステムにおいてレシートプリンターとして用いられるものである。なお、以下では、各図に示したXYZ直交座標系による方向を用いて説明するが、これらの方向は説明の便宜上のものにすぎず、以下の実施形態を何ら限定するものではない。
【0008】
[印刷装置の外観構造]
図1および図2に基づいて、印刷装置1の外観構造について説明する。印刷装置1は、装置本体3と、開閉カバー5とを備えている。装置本体3は、+Z方向の面に開口部6が設けられた略直方体状に形成されており、装置本体3の内部には、ロール紙収容部7が設けられている。ロール紙収容部7には、印刷媒体である記録紙Pが巻回されたロール紙Rが収容される(図3参照)。開閉カバー5は、装置本体3の+Y方向の端部に回動可能に取り付けられており、開口部6を開閉する。
【0009】
印刷装置1は、外装として、本体外装部9と、カッターカバー11と、開口外装部12と、カバー外装部13とを備えている。
【0010】
本体外装部9、カッターカバー11および開口外装部12は、装置本体3の外装を構成している。本体外装部9は、+Z方向の面が開口した略直方体の箱状に形成されている。カッターカバー11は、開閉カバー5に対して-Y方向に設けられている。カッターカバー11が開けられると、後述するオートカッター37(図3参照)が現れる。カッターカバー11と開閉カバー5との境界部には、排出口15が設けられている。排出口15からは、ロール紙収容部7に収容されたロール紙Rから繰り出された記録紙Pが、排出される。開口外装部12は、開口部6の縁部に設けられている。カバー外装部13は、開閉カバー5の外装を構成している。
【0011】
また、印刷装置1は、カバー開放ボタン17と、送りボタン19と、パネル部21とを備えている。カバー開放ボタン17、送りボタン19およびパネル部21は、印刷装置1の+Z方向の面において、+X方向の端部に設けられている。
カバー開放ボタン17が押されると、開閉カバー5が開く。送りボタン19が押されると、後述するプラテンローラー35が回転し、記録紙Pが排出口15に向けて送られる。パネル部21は、エラーなどの各種情報を、ユーザーに対して表示する。
【0012】
[印刷装置の内部構造]
図3および図4に基づいて、印刷装置1の内部構造について説明する。印刷装置1は、ベースフレーム23と、本体フレーム25と、カバーフレーム27と、サーマルヘッド29と、送りモーター31と、歯車列33と、プラテンローラー35と、オートカッター37と、ロック機構39とを備えている。
【0013】
ベースフレーム23および本体フレーム25は、本体外装部9の内側に設けられている。ベースフレーム23は、本体フレーム25を支持している。本体フレーム25は、第1本体フレーム41と、第2本体フレーム43とを備えている。第1本体フレーム41および第2本体フレーム43は、いずれも、Y方向に延在する略長方形の板状に形成されている。第2本体フレーム43は、第1本体フレーム41に対して、+X方向に設けられている。第1本体フレーム41および第2本体フレーム43の+Y方向の端部には、X方向に延在するカバー支軸45が設けられている。
【0014】
カバーフレーム27は、カバー外装部13の内側に設けられている。カバーフレーム27は、略長方形の枠状に形成されており、カバー支軸45を介して、本体フレーム25に回動可能に支持されている。カバーフレーム27の+Y方向の端部には、カバー支軸45と係合するカバー支軸穴(図示省略)が設けられている。
【0015】
サーマルヘッド29は、本体フレーム25に支持されている。サーマルヘッド29は、複数の発熱素子(図示省略)を備えており、ロール紙Rから繰り出された記録紙Pに印刷を行う。
【0016】
送りモーター31は、第1本体フレーム41の-Y方向の端部に固定されている。送りモーター31は、プラテンローラー35の駆動源である。なお、送りモーター31としては、例えば、DCモーター(DC:Direct Current)を用いることができる。
【0017】
歯車列33は、第1本体フレーム41に設けられている。歯車列33は、複数の歯車を備えており、送りモーター31の動力をプラテンローラー35に伝達する。
【0018】
プラテンローラー35は、カバーフレーム27の-Y方向の端部に回転可能に支持されている。プラテンローラー35は、開閉カバー5が閉められたときに、サーマルヘッド29と対向する。プラテンローラー35は、ローラーばね(図示省略)によって、サーマルヘッド29に向けて力が付与されている。このため、プラテンローラー35は、サーマルヘッド29との間で記録紙Pを挟持する。プラテンローラー35は、サーマルヘッド29との間で挟持した記録紙Pを、排出口15へ向けて送る。すなわち、プラテンローラー35が回転すると、記録紙Pがロール紙Rから繰り出されて、排出口15へ向けて送られる。
【0019】
プラテンローラー35と同軸上には、プラテンローラー35に対して-X方向に位置して、ローラー歯車47が設けられている。ローラー歯車47は、歯車列33の伝達歯車49と噛み合っており、プラテンローラー35と一体に回転する。
【0020】
オートカッター37は、プラテンローラー35と排出口15との間に設けられており、排出口15へ送られた記録紙Pを、印刷済み部分の後方で、X方向すなわち記録紙Pの幅方向に切断する。なお、オートカッター37は、切断された記録紙Pが排出口15に留まるよう、記録紙Pの-X方向の端部を残して、記録紙Pを切断する。
【0021】
[ロック機構]
図4ないし図9に基づいて、ロック機構39について説明する。なお、以下では、開閉カバー5の回動端のうち、図3に示すように、開閉カバー5に設けられたプラテンローラー35がサーマルヘッド29との間で記録紙Pを挟持可能な位置を、第1回動位置といい、第1回動位置とは反対の回動端を、第2回動位置という。すなわち、開閉カバー5は、第1回動位置と第2回動位置との間で、回動可能に構成されている。開閉カバー5は、第1回動位置において、装置本体3に設けられた開口部6を閉塞し(図1参照)、第2回動位置において、開口部6を開放する(図2参照)。また、開閉カバー5が第1回動位置から第2回動位置へ向けて回動する方向を、第1回動方向Ca(図5参照)という。開閉カバー5が第2回動位置から第1回動位置へ向けて回動する方向を、第2回動方向Cb(図5参照)という。なお、第1回動位置を閉位置または第1位置と記載してもよく、第2回動位置を開位置または第2位置と記載してもよい。
【0022】
図4ないし図6に示すように、ロック機構39は、カバーフック部材53と、ロック部材55とを備えている。
【0023】
カバーフック部材53は、カバーフレーム27の-Y方向の端部に設けられている。カバーフック部材53は、例えば板金を折曲げ加工等することにより形成されており、接続部57と、フック基端部59と、フック側係合部61と、レバー当接部63とを備えている。
【0024】
接続部57は、X方向に長い略長方形の板状に形成されており、カバーフレーム27をX方向に横断するように設けられている。接続部57は、接続部57のX方向の両端部に設けられたフック基端部59とレバー当接部63とを接続している。接続部57のX方向の両端部には、X方向に長いガイド穴65が設けられている。ガイド穴65は、カバーフレーム27に固定されたガイドピン67と係合している。このため、カバーフック部材53は、カバーフレーム27に対して、ガイド穴65およびガイドピン67をガイドとして、X方向、すなわち開閉カバー5の回動軸に平行な方向、に移動可能である。ここで、カバーフック部材53が移動する方向のうち、-X方向を、第1移動方向Da(図7参照)といい、+X方向を、第2移動方向Db(図7参照)という。
【0025】
接続部57には、フック側バネ掛止部69が設けられている。フック側バネ掛止部69には、フックバネ71の-X方向の端部が掛止めされている。フックバネ71の+X方向の端部は、カバーフレーム27に設けられたカバー側バネ掛止部73に掛止めされている。フックバネ71は、例えば引っ張りコイルばねであり、カバーフック部材53に対して、+X方向すなわち第2移動方向Dbの力を付与している。
【0026】
フック基端部59は、接続部57の-X方向の端部から-Z方向に連続し、略長方形状に形成されている。フック基端部59の+X方向の面からは、フック凸部75(図7参照)が+X方向に突出している。フック凸部75は、略円柱状に形成されており、カバーフレーム27に設けられたフック穴(図示省略)と係合している。フック凸部75およびフック穴は、ガイド穴65およびガイドピン67と共に、カバーフレーム27に対するカバーフック部材53のX方向への移動をガイドする。
【0027】
フック側係合部61は、フック基端部59の-Z方向の端部から-Z方向に連続し、略「L」字状に形成されている。フック側係合部61は、ロック部材55のロック側係合部83と係合する。
【0028】
レバー当接部63は、接続部57の+X方向の端部から-Z方向に連続している。上記のカバー開放ボタン17が押されると、第2本体フレーム43に設けられたロック解除レバー(図示省略)が回転し、回転したロック解除レバーが、レバー当接部63に当たる。
【0029】
ロック部材55は、第1本体フレーム41に固定されている。ロック部材55は、略逆「L」字の板状に形成されており、第1アーム部77と、第2アーム部79と、ロック基端部81と、ロック側係合部83とを備えている。
【0030】
第1アーム部77は、第2アーム部79の-Y方向の端部から、-Y方向と-Z方向との間の斜め方向に延在している。第1アーム部77の先端部すなわち-Z方向の端部には、第1ロック固定穴85が設けられている。第1本体フレーム41には、第1ロック固定穴85に対応する位置に、第1フレーム穴(図示省略)が設けられている。第1ロック固定穴85および第1フレーム穴に挿入された第1ロック固定ネジ89により、第1ロック固定穴85の周縁部が第1本体フレーム41に固定される。
【0031】
第2アーム部79は、第1アーム部77の+Z方向の端部から+Y方向に延在している。第2アーム部79の略中間部には、第2ロック固定穴91が設けられている。第1本体フレーム41には、第2ロック固定穴91に対応する位置に、第2フレーム穴(図示省略)が設けられている。第2ロック固定穴91および第2フレーム穴に挿入された第2ロック固定ネジ95により、第2ロック固定穴91の周縁部が第1本体フレーム41に固定される。第2アーム部79の先端部すなわち+Y方向の端部には、ロック回転穴97が設けられている。ロック回転穴97は、第1本体フレーム41の-X方向の面から-X方向に突出したロック回転軸99と係合している。
【0032】
ロック基端部81は、第2アーム部79の-Y方向の端部から+Z方向に連続している。ロック基端部81は、第1本体フレーム41に設けられた規制部101と係合している。規制部101は、第1本体フレーム41の-Z方向の端部から、-X方向に突出している。規制部101の+X方向且つ-Y方向の角部には、切欠き部102が設けられている。切欠き部102は、ロック基端部81と係合している。規制部101は、ロック側係合部83が-X方向すなわち第1移動方向Daに変位することを規制する。
【0033】
ロック側係合部83は、ロック基端部81の-Y方向の端部から-X方向に突出している。ロック側係合部83は、カバーフック部材53のフック側係合部61と係合する。ロック側係合部83の-X方向の面には、ロック傾斜部103が設けられている。ロック傾斜部103は、ロック傾斜部103の-Z方向の端部が、ロック傾斜部103の+Z方向の端部に比べ、-X方向に位置するように、傾斜している。
【0034】
このように構成されたロック機構39は、開閉カバー5が閉まるとき、すなわち開閉カバー5が第2回動方向Cbに回動するときには、以下のように作用する。まず、開閉カバー5が第2回動方向Cbに回動すると、フック側係合部61の-Z方向の面がロック傾斜部103に当たり、フック側係合部61が、ロック傾斜部103により-X方向にガイドされる。これにより、カバーフック部材53がフックバネ71に抗して-X方向すなわち第1移動方向Daに移動し、フック側係合部61がロック部材55を-Z方向へ乗り越える。
【0035】
フック側係合部61がロック側係合部83を乗り越えると、フックバネ71によりカバーフック部材53が+X方向すなわち第2移動方向Dbに移動する。これにより、フック側係合部61の+Z方向の面が、ロック側係合部83の-Z方向の面と係合する(図7参照)。その結果、ロック部材55により、開閉カバー5が第1回動位置にロックされ、開閉カバー5が第1回動方向Caに回動することが阻止される。
【0036】
一方、ロック機構39は、開閉カバー5が開くとき、すなわち開閉カバー5が第1回動方向Caに回動するときには、以下のように作用する。すなわち、カバー開放ボタン17が押されると、ロック解除レバーが回転し、回転したロック解除レバーにより、カバーフック部材53のレバー当接部63が-X方向に押される。これにより、カバーフック部材53がフックバネ71に抗して第1移動方向Daに移動し、フック側係合部61がロック部材55から外れる(図8参照)。このように、開閉カバー5は、第1回動位置において、フック側係合部61が第1移動方向Daに移動することで、フック側係合部61がロック部材55から外れ、第1回動方向Caへ回動可能となる。
【0037】
続いて、ロック解除レバーがさらに回転すると、回転したロック解除レバーによりカバーフレーム27が+Z方向に押される。これにより、開閉カバー5が第1回動方向Caに回動する。
【0038】
ここで、開閉カバー5が第1回動位置に位置するときに、部品の寸法バラツキなどにより、フック側係合部61とロック側係合部83との間に隙間が生じることがある。フック側係合部61とロック側係合部83との間に隙間があると、プラテンローラー35が回転して記録紙Pが送られるときに、開閉カバー5がガタついてしまう。その結果、開閉カバー5に設けられたプラテンローラー35と装置本体3に設けられたサーマルヘッド29との間で記録紙Pを適切に挟持することができず、記録紙Pの送りや記録紙Pへの印刷に不具合が生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、開閉カバー5が第1回動位置に位置するときに、フック側係合部61とロック側係合部83との間に隙間が生じないよう、ロック側係合部83がフック側係合部61と係合する位置を調整可能となっている。
【0039】
すなわち、ロック部材55は、第1ロック固定ネジ89および第2ロック固定ネジ95により第1本体フレーム41に固定されていない状態では、ロック回転軸99を中心として回転可能に構成されている。そのため、ロック部材55が第1本体フレーム41に固定される前に、開閉カバー5が第1回動位置に位置する状態で、フック側係合部61とロック側係合部83との間に隙間が生じないようにロック部材55を回転させることで、ロック側係合部83がフック側係合部61と係合する位置が調整される。その後、第1ロック固定ネジ89および第2ロック固定ネジ95により、ロック部材55が第1本体フレーム41に固定される。
【0040】
このように、ロック側係合部83がフック側係合部61と係合する位置を調整可能であることで、フック側係合部61とロック側係合部83との間に隙間が生じることを抑制することができ、プラテンローラー35が回転して記録紙Pが送られるときに開閉カバー5がガタついてしまうことを抑制することができる。
【0041】
なお、ロック回転軸99を中心としてロック部材55を回転させることでロック側係合部83がフック側係合部61と係合する位置が調整可能なように、第1ロック固定穴85は、ロック回転軸99と係合するロック回転穴97を中心とした周方向に長い長穴に形成されている。また、第2ロック固定穴91は、円形であるが、ロック部材55の回転量を考慮して、第2ロック固定ネジ95の径よりも大きい径に形成されている。なお、第2ロック固定穴91は、第1ロック固定穴85と同様に、ロック回転穴97を中心とした周方向に長い長穴に形成されてもよい。
【0042】
ここで、プラテンローラー35により記録紙Pが送られるときに、開閉カバー5に対して第1回動方向Caに回動させる力が作用する場合がある。例えば、記録紙Pが排出口15へ送られるとき、ローラー歯車47に対しては、-X方向から見て、ローラー歯車47を反時計回りに回転させようとする力が伝達される。この力は、ロール紙Rがロールエンドとなりプラテンローラー35が回転しない状態となった場合には、開閉カバー5に対して第1回動方向Caに回動させる力として作用する。
【0043】
このように、開閉カバー5に対して第1回動方向Caに回動させる力が作用した場合に、開閉カバー5に対するロック部材55のロック力Fが、開閉カバー5を第1回動方向Caに回動させる力に負けてしまうと、ロック部材55がロック回転軸99を中心として、-X方向から見て反時計回りに回転することになる。ロック部材55が回転すると、開閉カバー5が第1回動方向Caに回動してしまい、その結果、ローラー歯車47が伝達歯車49から外れ、ローラー歯車47或いは伝達歯車49の歯先が損傷するなどの不具合が生じるおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、ロック部材55は、ロック力Fが開閉カバー5を第1回動方向Caに回動させる力に負けないように、第1本体フレーム41に固定されている。すなわち、開閉カバー5に対するロック部材55のロック力Fは、次式により表される(図9参照)。
F=f×(L+L)/L
f:第1ロック固定穴85或いは第2ロック固定穴91における固定力
:ロック回転穴97から第1ロック固定穴85までの第1固定距離
:ロック回転穴97から第2ロック固定穴91までの第2固定距離
:ロック回転穴97からロック側係合部83までのロック距離
【0045】
第1固定距離Lは、ロック距離Lよりも長い。すなわち、L>Lである。このように、第1ロック固定ネジ89により周縁部が固定される第1ロック固定穴85が、ロック部材55の回転中心となるロック回転穴97に対して、ロック側係合部83よりも遠い位置に設けられているため、ロック部材55のロック力Fを向上させることができる。したがって、開閉カバー5に対して第1回動方向Caに回動させる力が作用した場合にも、ロック部材55がロック回転軸99を中心として回転することを抑制することができる。ゆえに、ローラー歯車47が伝達歯車49から外れることを抑制することができ、ローラー歯車47或いは伝達歯車49の歯先が損傷するなどの不具合が生じることを抑制することができる。さらに、ロック部材55は、第2ロック固定ネジ95により第2ロック固定穴91の周縁部が固定されるため、ロック部材55のロック力Fをより向上させることができる。
【0046】
ここで、第2固定距離Lは、ロック距離Lよりも短い。すなわち、L<Lである。このように、ロック部材55の回転中心となるロック回転穴97から遠い第1ロック固定穴85の周縁部と、ロック回転穴97に近い第2ロック固定穴91の周縁部と、の2か所において、ロック部材55が第1本体フレーム41に対して固定される。そのため、ロック部材55が第1ロック固定穴85を備えたことでロック部材55のサイズが大きくなっても、ロック部材55が第1本体フレーム41から浮き上がること、すなわちロック部材55と第1本体フレーム41との間に隙間が生じること、を抑制することができる。したがって、ロック側係合部83が第1移動方向Daに変位することを抑制することができる。
【0047】
また、上述したように、第1本体フレーム41に設けられた規制部101によっても、ロック側係合部83が-X方向すなわち第1移動方向Daに変位することが抑制されている。
【0048】
ここで、図8において、二点鎖線で仮想的に示したように、ロック側係合部83が第1移動方向Daに変位すると、上述したように、カバー開放ボタン17が押され、カバーフック部材53がカバーフレーム27に対して第1移動方向Daに移動しても、フック側係合部61がロック側係合部83から外れないおそれがある。
【0049】
これに対し、本実施形態では、ロック側係合部83が第1移動方向Daに変位することが規制されているため、カバー開放ボタン17が押され、カバーフック部材53がカバーフレーム27に対して第1移動方向Daに移動したときに、フック側係合部61がロック側係合部83から外れない状態となることを回避することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態の印刷装置1では、ロック部材55において、第1ロック固定ネジ89により周縁部が固定される第1ロック固定穴85が、ロック部材55の回転中心となるロック回転穴97に対して、ロック側係合部83よりも遠い位置に設けられているため、ロック部材55のロック力Fを向上させることができる。したがって、開閉カバー5に対して第1回動方向Caに回動させる力が作用した場合にも、ロック部材55がロック回転軸99を中心として回転することを抑制することができる。
【0051】
[その他の変形例]
上記の実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態は、上述したほか、以下のような形態に変更することができる。また、実施形態や変形例を、それぞれ組み合わせた構成でもよい。
【0052】
ロック部材55において、第1本体フレーム41に固定される固定部は、第1ロック固定穴85の周縁部や第2ロック固定穴91の周縁部に限定されるものではない。例えば、ロック部材55から雄ねじが形成された凸部を突出させ、その凸部を、第1本体フレーム41に固定される固定部として機能させてもよい。
【0053】
プラテンローラー35を回転可能に支持する回動部は、装置本体3の開口部6を開閉する開閉カバー5に限定されるものではない。例えば、回動部は、プラテンローラー35を回転可能に支持するフレームなどでもよい。
【0054】
[付記]
以下、印刷装置について付記する。
印刷装置は、本体フレームを有する装置本体と、第1回動位置と第2回動位置との間で回動可能に装置本体に取り付けられた回動部と、装置本体に設けられ、印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、回動部に回転可能に支持され、回動部が第1回動位置に位置するときに、サーマルヘッドとの間で挟持した印刷媒体を送るプラテンローラーと、プラテンローラーを回転させる駆動部と、本体フレームに設けられ、第1回動位置に位置する回動部が第1回動位置から第2回動位置へ向かう第1回動方向の力を駆動部から受けたときに、回動部が第1回動方向に回動することを阻止するロック部材と、を備え、ロック部材は、回動部が第1回動位置に位置するときに、回動部に設けられた回動側係合部と係合するロック側係合部と、ロック部材を回転させることでロック側係合部が回動側係合部と係合する位置が調整された後、本体フレームに対して固定される第1固定部と、を有し、ロック部材の回転中心から第1固定部までの第1固定距離は、回転中心からロック側係合部までのロック距離よりも長い。
【0055】
この構成によれば、第1固定部が、ロック部材の回転中心に対して、ロック側係合部よりも遠い位置に設けられているため、ロック部材のロック力を向上させることができる。したがって、開閉カバーに対して第1回動方向に回動させる力が作用した場合にも、ロック部材が回転することを抑制することができる。
なお、開閉カバー5は、「回動部」の一例である。記録紙Pは、「印刷媒体」の一例である。送りモーター31は、「駆動部」の一例である。フック側係合部61は、「回動側係合部」の一例である。第1ロック固定穴85の周縁部は、「第1固定部」の一例である。
【0056】
この場合、ロック部材は、ロック部材を回転させることでロック側係合部が回動側係合部と係合する位置が調整された後、本体フレームに対して固定される第2固定部、を有し、回転中心から第2固定部までの第2固定距離は、ロック距離よりも短いことが好ましい。
【0057】
この構成によれば、ロック部材の回転中心から遠い第1固定部と、ロック部材の回転中心に近い第2固定部と、の2か所において、ロック部材が本体フレームに対して固定される。したがって、ロック部材が第1固定部を備えたことでロック部材のサイズが大きくなっても、ロック部材が本体フレームから浮き上がることを抑制することができる。
なお、第2ロック固定穴91の周縁部は、「第2固定部」の一例である。
【0058】
この場合、回動部は、回動フレームと、回動側係合部が設けられたフック部材と、を有し、フック部材は、回動フレームに対して、第1移動方向と、第1移動方向とは反対の第2移動方向と、に移動可能であり、回動部は、第1回動位置において、フック部材が第1移動方向に移動することで、回動側係合部がロック側係合部から外れ、第1回動方向へ回動可能となることが好ましい。
【0059】
この構成によれば、フック部材を第1移動方向に移動させることで、回動側係合部をロック側係合部から外すことができ、回動部を第1回動方向へ回動させることができる。
なお、カバーフレーム27は、「回動フレーム」の一例である。カバーフック部材53は、「フック部材」の一例である。
【0060】
この場合、ロック側係合部が第1移動方向に変位することを規制する規制部、を備えたことが好ましい。
【0061】
この構成によれば、フック部材が回動フレームに対して第1移動方向に移動したときに、フック側係合部がロック側係合部から外れない状態となることを回避することができる。
【0062】
この場合、装置本体には、開口部が設けられ、回動部は、第1回動位置において、開口部を閉塞し、第2回動位置において、開口部を開放する開閉カバーとして機能することが好ましい。
【0063】
この構成によれば、プラテンローラーを支持した回転部を、開口部を開閉する開閉カバーとしても機能させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…印刷装置、3…装置本体、5…開閉カバー、6…開口部、25…本体フレーム、27…カバーフレーム、29…サーマルヘッド、31…送りモーター、35…プラテンローラー、53…カバーフック部材、55…ロック部材、61…フック側係合部、83…ロック側係合部、85…第1ロック固定穴、91…第2ロック固定穴、101…規制部、Ca…第1回動方向、Cb…第2回動方向、Da…第1移動方向、Db…第2移動方向、P…記録紙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9