(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】バイオマスガス化システム
(51)【国際特許分類】
C10J 3/00 20060101AFI20240827BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20240827BHJP
C10K 1/02 20060101ALI20240827BHJP
C10K 1/06 20060101ALI20240827BHJP
C10K 1/10 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C10J3/00 F
C02F1/04 Z
C10K1/02
C10K1/06
C10K1/10
(21)【出願番号】P 2021006373
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】清水 正紀
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-22389(JP,A)
【文献】特開2012-1645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
F23G 5/027
F23G 5/46
F23G 5/44
F23J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉と、
該燃焼炉からの燃焼ガスを導入しバイオマスをガス化するガス化炉と、
該ガス化炉でバイオマスから発生した可燃性ガスを浄化するスクラバと、
該スクラバからの排水と前記ガス化炉からの排ガスを導入して前記排水を蒸発させ、かつ外部からの空気と熱交換を行う排水処理熱交換器と、
を備えるバイオマスガス化システム。
【請求項2】
前記排水処理熱交換器は、外管と内管を有し、該内管に前記排水と前記排ガスを導入し、前記外管と前記内管の間に前記外部からの空気を導入する、請求項1に記載のバイオマスガス化システム。
【請求項3】
前記排水が前記排水処理熱交換器に導入される前に、前記排水に含まれる固体を分離する固液分離装置を備える、請求項1または2に記載のバイオマスガス化システム。
【請求項4】
前記排水処理熱交換器によって熱交換された空気を導入し、バイオマス原料を乾燥する乾燥機を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のバイオマスガス化システム。
【請求項5】
前記排水処理熱交換器によって熱交換された空気の温度を測定する空気温度測定器と、
前記排水処理熱交換器に導入され排出された排ガスの温度を測定する排ガス温度測定器と、を備え、
前記空気の温度と前記排ガスの温度に基づいて、前記排水処理熱交換器への前記空気の導入量、前記排ガスの導入量、前記排水の導入量を制御する制御装置を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のバイオマスガス化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス原料を加熱して可燃性ガスを生成するガス化システムにおいては、発生した可燃性ガスをノズルから噴霧した水に通過させて、冷却し、酸性ガス、タールなどの有害物質を取り除き浄化するスクラバが用いられている。スクラバからの排水は、排水処理設備等で処理される。この排水処理を効率良く行うことが求められている。
【0003】
特許文献1には、スクラバからの排水で燃焼ガスを冷却し蒸気を発生するガス化システムが開示されている。冷却された燃焼ガスと発生した蒸気は、集塵処理の後に再び流動化ガスとしてガス化室と燃焼室に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1においては、スクラバからの排水は蒸気として再利用されるが、そのような再利用に適合しないガス化システムにおいては、排水を効率良く低コストで処理することが必要とされている。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、スクラバからの排水を処理すると共に熱交換を行って温風を生産するバイオマスガス化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のバイオマスガス化システムは、燃焼炉と、該燃焼炉からの燃焼ガスを導入しバイオマスをガス化するガス化炉と、該ガス化炉でバイオマスから発生した可燃性ガスを浄化するスクラバと、該スクラバからの排水と前記ガス化炉からの排ガスを導入して前記排水を蒸発させ、かつ外部からの空気と熱交換を行う排水処理熱交換器と、を備える。
このような発明によれば、スクラバからの排水と前記ガス化炉からの排ガスを導入して前記排水を蒸発させ、かつ外部からの空気と熱交換を行う排水処理熱交換器を備えるので、排水の処理と熱交換を同時に行うことができ、設備を小型化することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記排水処理熱交換器は、外管と内管を有し、該内管に前記排水と前記排ガスを導入し、前記外管と前記内管の間に前記外部からの空気を導入する。
このような構成によれば、排水処理熱交換器は、外管と内管の間に外部からの空気を導入するので、排水処理熱交換器の外部の壁面が高温とならず断熱材の施工量を低減することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記排水が前記排水処理熱交換器に導入される前に、前記排水に含まれる固体を分離する固液分離装置を備える。
このような構成によれば、固液分離装置によって排水処理熱交換器に導入される排水から固体を取り除き、排水を効率良く蒸発させ処理することができる。
【0010】
本発明の一態様においては、前記排水処理熱交換器によって熱交換された空気を導入し、バイオマス原料を乾燥する乾燥機を備える。
このような構成によれば、前記排水処理熱交換器によって生産した温風をバイオマスガス化のために効率よく利用することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記排水処理熱交換器によって熱交換された空気の温度を測定する空気温度測定器と、前記排水処理熱交換器に導入され排出された排ガスの温度を測定する排ガス温度測定器と、を備え、前記空気の温度と前記排ガスの温度に基づいて、前記排水処理熱交換器への前記空気の導入量、前記排ガスの導入量、前記排水の導入量を制御する制御装置を備える。
このような構成によれば、空気の温度と排ガスの温度に基づいて、空気の導入量、排ガスの導入量、排水の導入量を制御するので、所望の温風を排水処理の効率を考慮しながら得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スクラバからの排水を処理すると共に熱交換を行って温風を生産するバイオマスガス化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る、バイオマスガス化システムを概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るバイオマスガス化システムを概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、バイオマスガス化システム1は、燃焼炉3、ガス化炉5、スクラバ7、排水処理熱交換器9、固液分離装置15、乾燥機17、スクラバ循環水タンク25、集塵機27を備えている。さらに、排水処理熱交換器9によって熱交換された空気の温度を測定する空気温度測定器19と、排水処理熱交換器9に導入され排出された排ガスの温度を測定する排ガス温度測定器21と、を備え、空気の温度と排ガスの温度に基づいて、排水処理熱交換器9への空気の導入量、排ガスの導入量、排水の導入量を制御する制御装置23を備えている。
【0015】
排水処理熱交換器9は、外管11、内管13、排気管14を備えている。外管11には、熱交換のための空気を導入する熱交換空気導入口9cと、熱交換した温風を送出する熱交換空気送出口9dが設けられている。内管13の上部には、ガス化炉5からの排ガスを導入する排ガス導入口9aと、スクラバ7からの排水を内管13の内部に噴霧するスクラバ水処理ノズル9bが設けられている。内管13の底部には、内管13の内部と排ガス排出口9eとを連通する排気管14が設けられており、更にその下部には、ダスト排出孔9fが設けられている。ダスト排出孔9fには、ロータリーバルブ(図示せず)が設けられ、運転中は、閉塞されているが、ダストを排出する清掃点検時等には、開放される。
【0016】
燃焼炉3では、燃料を燃焼させ、バイオマスをガス化させる熱源として燃焼ガスを発生させる。燃焼ガスは、ガス化炉2に導入され(矢印a)バイオマス原料を加熱し可燃性ガスを生成する。生成された可燃性ガスは、スクラバ7に送られ(矢印b)生成ガス導入口7cからスクラバ内に導入される。スクラバ7内では、スクラバ水ノズル7aから水を噴霧しており、可燃性ガスは、噴霧された水を通過し、冷却され、タール、ベンゼン、シアン化水素などの有害物質が取り除かれ浄化される。浄化された可燃性ガスは、可燃性ガス誘引ファン29によって生成ガス送出口7dから送出され(矢印c)製品として貯留タンク等(図示せず)に貯留される(矢印d)。
【0017】
可燃性ガスの浄化に利用された水は、スクラバ7のスクラバ水排出口7bからスクラバ循環水タンク25に貯留される。スクラバ循環水タンク25の水は、スクラバ水循環口25aから循環ポンプ33bによって吸引されて(矢印e)、スクラバ水ノズル7aに送出され(矢印f)噴霧される。このように、スクラバ循環水タンク25の水は循環ポンプ33bによって、スクラバ循環水タンク25の水を循環させ連続的に可燃性ガスを浄化する。
【0018】
スクラバ循環水タンク25の水を処理するときは、スクラバ水処理口25bから送液ポンプ33aによってスクラバ循環水タンク25の水の一定量を排水として引き抜き(矢印g)、固液分離装置15に送る(矢印h)。固液分離装置15では、引き抜かれたスクラバ循環水タンク25の排水に含まれる固形分を分離する。固形分を分離されたスクラバ循環水タンク25の排水は、排水処理熱交換器9に送出される(矢印i)。このときの排水の温度は、40~60℃である。また、このとき排水として引き抜かれたのと同じ分量の水が、図示しない水供給口からスクラバ循環水タンク25に新たに供給され、スクラバ7とスクラバ循環水タンク25の間で環流する水の量は略一定に保たれている。
【0019】
燃焼炉3で生成され、ガス化炉5においてバイオマス原料のガス化に利用された燃焼ガスは、排ガスとして排水処理熱交換器9に送られる(矢印j)。このときの排ガスの温度は、600~800℃である。また、排水処理熱交換器9において熱交換して温風を生産するための空気は、空気誘引ファン31によって、外部から吸引され(矢印k)、排水処理熱交換器9に送られる(矢印m)。
【0020】
排水処理熱交換器9では、固液分離装置15を経て固形分を分離された排水を内管13上部に設けられたスクラバ水処理ノズル9bから噴霧供給すると同時に、ガス化炉5からの排ガスを排ガス導入口9aから内管13に導入する。このとき、内管13内では、ガス化炉5からの排ガスとスクラバ水処理ノズル9bから噴霧供給される水が混合し接触し、スクラバ7からの排水が蒸発し、乾燥処理される。
【0021】
外管11と内管13の間には、熱交換空気導入口9cより外部の空気が導入されており、導入された空気は内管13内に導入された排ガスとの間で熱交換され、熱交換空気送出口9dより乾燥機17に送出される(矢印n)。このとき熱交換され送出される空気の温度は、80~100℃である。乾燥機17では、バイオマス原料の乾燥が行われた後、温風は外部に放出される(矢印o)。内管13に導入された排ガスは、内管13の底部から排気管14を通過して排ガス排出口9eから排出され、図示しないボイラ等で利用された後、集塵機27に送られる(矢印p)。このとき排ガス排出口9eから排出される排ガスの温度は、500~600℃である。集塵機27で集塵された排ガスは、外部に放出される(矢印q)。
【0022】
さらに前述したように、熱交換空気送出口9dから送出された空気の温度を測定する空気温度測定器19と、排ガス排出口9eから排出された排ガスの温度を測定する排ガス温度測定器21が設けられ、これら空気温度測定器19、排ガス温度測定器21は、測定した温度を制御装置23に送信している。制御装置23は、測定された空気の温度と排ガスの温度に基づいて、排水処理熱交換器9への空気の導入量、排ガスの導入量、排水の導入量を制御している。具体的には、空気誘引ファン31のモータの回転数や、送液ポンプ33aのモータの回転数、排ガス導入口9aに設けられたバルブ(図示せず)の開閉等を制御する。
【0023】
以上述べたように、本実施形態におけるバイオマスガス化システム1は、スクラバ7からの排水を、ガス化炉5からの排ガスの熱を利用して蒸発させて排水処理するので、排水処理施設を設けることなく排水処理が実施できる。したがって、別途排水処理施設を設けるのに比較して低コストで排水処理が実施できる。排水処理熱交換器9では、排水を処理すると同時に外部からの空気を設備から発生する排熱との熱交換によって温風を生産するので、省スペースかつ経済性に優れた温風を生産することができる。
【0024】
排水処理熱交換器9は、外管と内管を有し、外管と内管の間に外部からの空気を導入し熱交換をおこなって温風を生産するので、排水処理熱交換器9の外部の壁面が高温とならず断熱材の施工量を低減することができる。生産された温風は、バイオマス原料の乾燥に用いることができるので、効率のよいバイオマスガス化システム1が実施できる。本実施形態では、さらに空気の温度と排ガスの温度に基づいて、空気の導入量、排ガスの導入量、排水の導入量を制御する制御装置23を備える。したがって、排水処理の効率を考慮しながらバイオマスガス化システム1を管理しつつ、所望の温風を得ることができる。かくして、スクラバ7からの排水を処理すると共に熱交換を行って温風を生産する、経済性がよく省スペースのバイオマスガス化システム1を提供することができる。
【0025】
なお、上述の実施形態では、生産された温風はバイオマス原料の乾燥に用いられたが、これに限定されない。例えば、生産した温風は、建屋の空調に用いてもよいし、農産物の生産に用いてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 バイオマスガス化システム
3 燃焼炉
5 ガス化炉
7 スクラバ
9 排水処理熱交換器
11 外管
13 内管
15 固液分離装置
17 乾燥機
19 空気温度測定器
21 排ガス温度測定器
23 制御装置