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特許7543928媒体搬送装置、画像読取装置、ジャム検出方法、ジャム検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、画像読取装置、ジャム検出方法、ジャム検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240827BHJP
   B65H 7/06 20060101ALI20240827BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240827BHJP
   G03B 27/62 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
B65H7/06
H04N1/00 567J
G03B27/62
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021008554
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112671
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】有森 和彦
(72)【発明者】
【氏名】野本 耕佑
(72)【発明者】
【氏名】和田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雅也
(72)【発明者】
【氏名】木付 寛道
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077968(JP,A)
【文献】特開2018-030296(JP,A)
【文献】特開2012-061626(JP,A)
【文献】特開2009-181116(JP,A)
【文献】特開平11-231752(JP,A)
【文献】特開2006-151612(JP,A)
【文献】特開2019-023712(JP,A)
【文献】特開2016-087812(JP,A)
【文献】特開2019-142647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
B65H 7/06
H04N 1/00
G06T 1/00
G03B 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送前の媒体を載置する媒体載置部と、
前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、
前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、
前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、
前記モーターを制御する制御部であって、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出処理を実行可能な制御部と、を備え、
前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し、媒体を検出する検出部が設けられ、
前記制御部は、複数の前記検出部の検出情報に基づき媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得し、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記閾値を下げる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、前記制御部は、前記媒体搬送経路における媒体の位置に応じ、前記閾値を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対の上流に、前記媒体載置部から送り出される媒体を分離する分離ローラー対を備え、
前記制御部は、媒体が前記分離ローラー対にニップされていない場合、媒体が前記分離ローラー対にニップされている場合よりも、前記閾値を下げる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、前記媒体搬送経路は、前記媒体載置部から送り出された媒体を下向きに湾曲させた後、前記媒体載置部からの媒体送り出し方向とは反対の方向に反転させる経路であり、
前記制御部は、前記媒体搬送経路における第1の区間に媒体先端がある場合、媒体を湾曲させる際の曲率が前記第1の区間よりも大きい第2の区間に媒体先端があるよりも、前記閾値を下げる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の媒体搬送装置において、前記制御部は、第1の媒体を搬送する場合、前記第1の媒体より剛性の高い第2の媒体を搬送する場合よりも、前記閾値を下げる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
搬送される媒体の面を読み取る読み取り部と、
媒体を搬送する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前記媒体搬送装置と、
を備えた画像読取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像読取装置において、前記制御部は、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記モーターの駆動速度を下げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記モーターの駆動速度を上げる、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の画像読取装置において、前記制御部は、媒体の剛性が相対的に他の媒体より高い場合、前記他の媒体よりも前記モーターの駆動速度を相対的に上げる、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
給送前の媒体を載置する媒体載置部と、
前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、
前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、
前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、を備えた媒体搬送装置において、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出方法であって、
前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し設けられた、媒体を検出する検出部の検出情報に基づき媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得し、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記閾値を下げる、
ことを特徴とするジャム検出方法。
【請求項10】
給送前の媒体を載置する媒体載置部と、
前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、
前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、
前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、を備えた媒体搬送装置において、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出プログラムであって、
前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し設けられた、媒体を検出する検出部の検出情報に基づき、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得するステップと、
媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加した場合は前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少した場合は前記閾値を下げる様に前記閾値を変更するステップと、
を含むことを特徴とするジャム検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する媒体搬送装置、及びこれを備えた画像読取装置に関する。また本発明は、媒体搬送装置においてジャムを検出するジャム検出方法に関する。また本発明は、媒体搬送装置においてジャムを検出するジャム検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置には、媒体を搬送しながら読み取りを行う所謂シートフィードタイプのものがある。この様な画像読取装置に用いられる、媒体を搬送する媒体搬送装置では、従来から種々の方法でジャム検出が行われている。
その一つとして特許文献1には、原稿を搬送するローラーを駆動するモーターの駆動負荷値が閾値を超えた場合にジャムと判定し、モーターの駆動を停止する画像読取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-68175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
媒体搬送経路に複数の搬送ローラー対を備える場合であって前記複数の搬送ローラー対を一つのモーターで駆動する場合、例えば二つの搬送ローラー対で媒体を搬送している場合と、三つの搬送ローラー対で媒体を搬送している場合とでは、後者のほうがモーターの駆動負荷値は高くなる。従ってジャム検出に用いる閾値は、最も多くの数の搬送ローラー対で媒体を搬送する場合の駆動負荷値に基づいて設定する必要がある。
しかしながらこの場合、最も少ない数の搬送ローラー対で媒体を搬送している際の駆動負荷値と閾値との差が大きくなってしまい、ジャムが生じた場合に駆動負荷値が閾値を超えるまでに時間が掛かり、ジャムが進行し、媒体に生じるダメージが大きくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の媒体搬送装置は、給送前の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、前記モーターを制御する制御部であって、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出処理を実行可能な制御部と、を備え、前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し、媒体を検出する検出部が設けられ、前記制御部は、複数の前記検出部の検出情報に基づき媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得し、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記閾値を下げることを特徴とする。
【0006】
また本発明の画像読取装置は、搬送される媒体の面を読み取る読み取り部と、媒体を搬送する前記媒体搬送装置とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また本発明のジャム検出方法は、給送前の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、を備えた媒体搬送装置において、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出方法であって、前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し設けられた、媒体を検出する検出部の検出情報に基づき媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得し、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記閾値を下げることを特徴とする。
【0008】
また本発明のジャム検出プログラムは、給送前の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、を備えた媒体搬送装置において、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出プログラムであって、前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し設けられた、媒体を検出する検出部の検出情報に基づき、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得するステップと、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加した場合は前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少した場合は前記閾値を下げる様に前記閾値を変更するステップとを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】媒体搬送装置を上方から見た外観斜視図。
図2】媒体搬送装置における媒体搬送経路を示す図。
図3】媒体搬送装置における制御系統を示すブロック図。
図4】媒体搬送経路を媒体が搬送される一例を示す図。
図5】媒体搬送経路を媒体が搬送される一例を示す図。
図6】媒体搬送経路を媒体が搬送される一例を示す図。
図7】媒体搬送経路を媒体が搬送される一例を示す図。
図8】媒体搬送経路を媒体が搬送される一例を示す図。
図9】モーター駆動のデューティ値と閾値との関係を示す図。
図10】ジャム検出処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る媒体搬送装置は、給送前の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、前記モーターを制御する制御部であって、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出処理を実行可能な制御部と、を備え、前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し、媒体を検出する検出部が設けられ、前記制御部は、複数の前記検出部の検出情報に基づき媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得し、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記閾値を下げることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記制御部は、複数の前記検出部の検出情報に基づき媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得し、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記閾値を下げるので、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数に応じて、換言すれば前記モーターの駆動負荷に応じて、前記閾値を変化させることとなる。従って媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が少ない場合に、前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなって媒体のジャムを検出するまでに時間を要することを抑制できる。その結果、ジャムが進行して媒体に生じるダメージが大きくなることを抑制できる。
【0012】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部は、前記媒体搬送経路における媒体の位置に応じ、前記閾値を変更することを特徴とする。
前記媒体搬送経路の構成によっては、前記媒体搬送経路における媒体の位置に応じて前記モーターの駆動負荷が変化する場合がある。本態様によれば、前記制御部は、前記媒体搬送経路における媒体の位置に応じ、前記閾値を変更するので、前記閾値をより一層適切な値とすることができ、媒体のジャムをより適切に検出することができる。
【0013】
第3の態様は、第2の態様において、前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対の上流に、前記媒体載置部から送り出される媒体を分離する分離ローラー対を備え、前記制御部は、媒体が前記分離ローラー対にニップされていない場合、媒体が前記分離ローラー対にニップされている場合よりも、前記閾値を下げることを特徴とする。
【0014】
前記複数の搬送ローラー対の上流に、前記媒体載置部から送り出される媒体を分離する分離ローラー対を備える構成では、媒体が前記分離ローラー対にニップされていると、前記搬送ローラー対による媒体の搬送に際して前記分離ローラー対が搬送負荷となり、前記モーターの駆動負荷が上がる。この様な構成においては、媒体が前記分離ローラー対にニップされている場合を基準にして前記閾値を設定し、そしてこの閾値を一律に適用すると、媒体が前記分離ローラー対にニップされていない場合の前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなり、媒体のジャムを検出するまでに時間を要することとなる。
しかしながら本態様では、前記制御部は、媒体が前記分離ローラー対にニップされていない場合、媒体が前記分離ローラー対にニップされている場合よりも、前記閾値を下げるので、媒体が前記分離ローラー対にニップされていない場合の前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなることを抑制でき、媒体のジャムを迅速に検出できる。
【0015】
第4の態様は、第2の態様において、前記媒体搬送経路は、前記媒体載置部から送り出された媒体を下向きに湾曲させた後、前記媒体載置部からの媒体送り出し方向とは反対の方向に反転させる経路であり、前記制御部は、前記媒体搬送経路における第1の区間に媒体先端がある場合、媒体を湾曲させる際の曲率が前記第1の区間よりも大きい第2の区間に媒体先端があるよりも、前記閾値を下げることを特徴とする。
【0016】
例えば媒体の先端が湾曲した経路を進む場合、曲率が大きくなるほど前記モーターの駆動負荷が上がる。従って媒体の先端が曲率の大きい経路を進む場合を基準にして前記閾値を設定し、そしてこの閾値を一律に適用すると、媒体の先端が相対的に曲率の小さい経路を進む場合に前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなり、媒体のジャムを検出するまでに時間を要することとなる。
しかしながら本態様では、前記制御部は、前記媒体搬送経路における第1の区間に媒体先端がある場合、媒体を湾曲させる際の曲率が前記第1の区間よりも大きい第2の区間に媒体先端があるよりも、前記閾値を下げるので、媒体の先端が前記第1の区間を進む場合に前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなることを抑制でき、媒体のジャムを迅速に検出できる。
【0017】
第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記制御部は、第1の媒体を搬送する場合、前記第1の媒体より剛性の高い第2の媒体を搬送する場合よりも、前記閾値を下げることを特徴とする。
媒体の剛性が相対的に高いほど、前記モーターの駆動負荷が上がる。従って剛性の高い媒体を基準にして前記閾値を設定し、そしてこの閾値を一律に適用すると、相対的に剛性の低い媒体を搬送する際の前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなり、媒体のジャムを検出するまでに時間を要することとなる。
しかしながら本態様によれば、前記制御部は、第1の媒体を搬送する場合、前記第1の媒体より剛性の高い第2の媒体を搬送する場合よりも、前記閾値を下げるので、剛性の低い媒体を搬送する際に前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなることを抑制でき、媒体のジャムを迅速に検出できる。
【0018】
第6の態様に係る画像読取装置は、搬送される媒体の面を読み取る読み取り部と、媒体を搬送する第1から第5の態様のいずれかに係る前記媒体搬送装置とを備えたことを特徴とする。
本態様によれば、画像読取装置において、上記第1から第5の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0019】
第7の態様は、第6の態様において、前記制御部は、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記モーターの駆動速度を下げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記モーターの駆動速度を上げることを特徴とする。
【0020】
媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が相対的に少ないほど、前記搬送ローラー対での媒体のスリップによって媒体搬送量が不足し、前記読み取り部での読み取り結果に悪影響が生じる虞がある。
そこで本態様では、前記制御部は、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記モーターの駆動速度を下げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記モーターの駆動速度を上げるので、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数に応じた適切な媒体搬送量を実現でき、ひいては前記読み取り部での読み取り結果を良好に得ることができる。
【0021】
第8の態様は、第6のまたは第7の態様において、前記制御部は、媒体の剛性が相対的に他の媒体より高い場合、前記他の媒体よりも前記モーターの駆動速度を相対的に上げることを特徴とする。
【0022】
媒体の剛性が高いほど、前記搬送ローラー対での媒体のスリップによって媒体搬送量が不足し、前記読み取り部での読み取り結果に悪影響が生じる虞がある。
そこで本態様では、前記制御部は、媒体の剛性が相対的に他の媒体より高い場合、前記他の媒体よりも前記モーターの駆動速度を相対的に上げるので、媒体の剛性に応じた適切な媒体搬送量を実現でき、ひいては前記読み取り部での読み取り結果を良好に得ることができる。
【0023】
第9の態様に係るジャム検出方法は、給送前の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、を備えた媒体搬送装置において、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出方法であって、前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し設けられた、媒体を検出する検出部の検出情報に基づき媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得し、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加すると前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少すると前記閾値を下げることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数に応じて、換言すれば前記モーターの駆動負荷に応じて、前記閾値を変化させることとなる。従って媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が少ない場合に、前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなって媒体のジャムを検出するまでに時間を要することを抑制できる。その結果、ジャムが進行して媒体に生じるダメージが大きくなることを抑制できる。
【0025】
第10の態様に係るジャム検出プログラムは、給送前の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部から送り出された媒体を搬送する媒体搬送経路と、前記媒体搬送経路に設けられた複数の搬送ローラー対と、前記複数の搬送ローラー対の動力源であるモーターと、を備えた媒体搬送装置において、前記モーターの駆動負荷と、前記駆動負荷に対する閾値と、を参照して前記媒体搬送経路における媒体のジャムを検出するジャム検出プログラムであって、前記媒体搬送経路において前記複数の搬送ローラー対のそれぞれに対し設けられた、媒体を検出する検出部の検出情報に基づき、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数を取得するステップと、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が増加した場合は前記閾値を上げ、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が減少した場合は前記閾値を下げる様に前記閾値を変更するステップとを含むことを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数に応じて、換言すれば前記モーターの駆動負荷に応じて、前記閾値を変化させることとなる。従って媒体の搬送に係わる前記搬送ローラー対の数が少ない場合に、前記モーターの駆動負荷と前記閾値との差が大きくなって媒体のジャムを検出するまでに時間を要することを抑制できる。その結果、ジャムが進行して媒体に生じるダメージが大きくなることを抑制できる。
【0027】
以下、本発明を具体的に説明する。
各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であり、X軸方向が装置内を搬送される媒体の幅方向であり、装置奥行き方向でもある。本実施形態では-X方向が装置前方側となり、+X方向が装置後方側となる。またY軸方向は装置幅方向であり、-X方向から装置を見て+Y方向が左側となり、-Y方向が右側となる。Z軸方向は装置高さ方向及び鉛直方向である。
【0028】
図1において画像読取装置の一例であるスキャナー1は、フラットベッドタイプのスキャナーとして構成されたスキャナー部2の上部に、媒体搬送装置10を備えている。媒体搬送装置10は、+X方向の端部に設けられた不図示のヒンジを介してスキャナー部2に対して開閉可能に設けられ、開くことでスキャナー部2の上部を構成する原稿台ガラス3(図2参照)を開閉する。
媒体搬送装置10は装置本体11に、給送トレイ15と、開閉カバー17と、第1フレーム12(図2参照)と、排出トレイ47とを備えている。
【0029】
給送トレイ15には、給送前の媒体が載置される。給送トレイ15において+X方向には載置される媒体の+X方向のエッジをガイドするエッジガイド16Aが設けられ、給送トレイ15において-X方向には載置される媒体の-X方向のエッジをガイドするエッジガイド16Bが設けられている。エッジガイド16A、16Bは、互いに接近し或いは離間する方向にスライド可能に設けられている。
【0030】
開閉カバー17はX軸方向に平行な軸中心を有する回転軸(不図示)を中心に回転可能に設けられている。開閉カバー17にはロック解除レバー18が設けられており、ユーザーがロック解除レバー18を引き起こすことで、開閉カバー17の全閉状態におけるロックを解除でき、開閉カバー17を開くことができる。開閉カバー17を開くことで、媒体搬送装置10の内部、特に湾曲反転経路が露呈し、ジャム処理を行うことができる。
【0031】
スキャナー部2は、図2に示す様に原稿台ガラス3を備え、原稿台ガラス3の下側には第1読み取り部4がY軸方向に沿って移動可能に設けられている。
媒体搬送装置10の下面には、原稿台ガラス3に載置された媒体を押さえる押さえマット13が設けられている。Y軸方向において+Y方向の領域には押さえマット13は設けられておらず、この領域において停止した第1読み取り部4に向けて媒体を搬送することで、媒体の面を読み取ることができる。尚、媒体搬送装置10は内部に第2読み取り部45を備えており、この第2読み取り部45と第1読み取り部4とによって、搬送される媒体の両面を読み取ることができる。媒体搬送装置10は第2読み取り部45を備えている為、媒体搬送装置10はそれ単体で画像読取装置の一例と捉えることもできる。
【0032】
以下、図2を参照して媒体搬送装置10の内部における媒体搬送経路について更に説明する。
図2において符号Tで示す破線は、媒体搬送装置10における媒体搬送経路としての湾曲反転経路を示している。湾曲反転経路Tは、後述する分離ローラー対23から第4搬送ローラー対39に至る経路である。尚、本明細書においてローラー対とは、湾曲反転経路Tを挟む様に対向配置される一対のローラーを意味する。
給送トレイ15に載置された媒体は、ピックローラー20により送り出される。ピックローラー20は、給送トレイ15に載置された媒体の+Y方向端部領域と対向する位置に設けられている。
【0033】
給送モーター55(図3参照)により駆動されるピックローラー20は、ローラー支持部材21に支持されている。ローラー支持部材21は、後述する給送ローラー24と同軸で回転可能に設けられており、回転することで、ピックローラー20を媒体に対して進退させる。
ピックローラー20の下流には、分離ローラー対23が設けられている。分離ローラー対23は、給送モーター55(図3参照)により駆動される給送ローラー24と、回転抵抗が付与された分離ローラー25とで構成される。分離ローラー25には、不図示のトルクリミッターにより回転抵抗が付与されており、ピックローラー20により送り出された媒体は、分離ローラー25の作用によって分離されて下流に送られる。
【0034】
分離ローラー対23の下流には、第1搬送ローラー対27が設けられている。第1搬送ローラー対27は、搬送モーター56(図3参照)により駆動される駆動ローラー28と、従動回転可能な従動ローラー29とで構成される。
第1搬送ローラー対27より下流で、媒体は下向きに湾曲させられる。第1搬送ローラー対27の下流には、第2搬送ローラー対31が設けられている。湾曲反転経路Tにおいて第2搬送ローラー対31は、下向きの媒体の面が上向きに変化する位置、即ち湾曲反転経路Tにおいて最も+Y方向の位置よりも下流で媒体をニップして搬送する。
第2搬送ローラー対31は、搬送モーター56(図3参照)により駆動される駆動ローラー32と、従動回転可能な従動ローラー33とで構成される。
【0035】
給送トレイ15から送り出された媒体は、湾曲反転経路Tによって下向きに湾曲された後、給送トレイ15からの媒体送り出し方向とは反対の方向即ち-Y方向に反転させられる。反転させられた媒体は図2に示す位置で停止している第1読み取り部4と対向する領域を通り、読み取りが行われ、第3搬送ローラー対35に到達する。第3搬送ローラー対35は、搬送モーター56(図3参照)により駆動される駆動ローラー36と、従動回転可能な従動ローラー37とで構成される。
【0036】
第3搬送ローラー対35によって送られた媒体は第2読み取り部45と対向する領域を通り、読み取りが行われ、第4搬送ローラー対39に到達する。第4搬送ローラー対39は、搬送モーター56(図3参照)により駆動される駆動ローラー40と、従動回転可能な従動ローラー41とで構成される。媒体は第4搬送ローラー対39によって排出トレイ47へ排出される。
【0037】
以上の湾曲反転経路Tを媒体が搬送される過程において、給送トレイ15に載置されていた媒体の上面が第1読み取り部4によって読み取られ、また給送トレイ15に載置されていた媒体の下面が第2読み取り部45によって読み取られる。
本実施形態において第2読み取り部45と第1読み取り部4は、いずれも密着型イメージセンサーモジュール(CISM)により構成される。
【0038】
続いて図3を参照しつつスキャナー1における制御系統について説明する。制御手段としての制御部50は原稿Pの給送、搬送、排出、及び読み取りを含め、スキャナー1の各種制御を行う。また制御部50には、操作パネル7からの信号が入力される。
尚、本実施形態において制御部50はスキャナー部2に設けられるが、媒体搬送装置10に設けられても良い。
【0039】
制御部50は、CPU51、フラッシュROM52を備えている。フラッシュROM52は読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリである。CPU51はフラッシュROM52に格納されたプログラム54やパラメータ等に従って各種演算処理を行い、スキャナー1全体の動作を制御する。ここでプログラム54は、必ずしも一つのプログラムを意味するものではなく、複数のプログラムで構成され、それには後述するジャム検出処理を行う為のジャム検出プログラムが含まれ、またその他に媒体の給送、搬送、及び読み取りに必要な各種制御プログラムなども含まれる。ジャム検出プログラムは、後に図10を参照して説明するジャム検出方法を実現する。
【0040】
スキャナー1は外部コンピューター90と接続可能に構成されており、制御部50には、外部コンピューター90から情報が入力される。外部コンピューター90は、不図示の表示部を備えている。表示部には、外部コンピューター90が備える不図示の記憶手段に格納された制御プログラムによりユーザーインターフェース(UI)が実現される。
制御部50には、第1読み取り部4及び第2読み取り部45からの読み取りデータが入力され、また、各読み取り部を制御する為の信号が制御部50から各読み取り部に送信される。
【0041】
次に制御部50は、給送モーター55と搬送モーター56を制御する。給送モーター55と搬送モーター56は、本実施形態ではいずれもDCモーターである。各モーターには不図示のロータリーエンコーダーが設けられ、制御部50は各モーターのロータリーエンコーダーから受信するパルス信号をもとに、各モーターの回転量や回転速度を把握でき、その結果各ローラー対の駆動量を把握できる。
【0042】
制御部50は、各モーターに印加する電圧をパルス幅変調方式(PWM(Pulse
Width Modulation))により制御している。即ち所定のスイッチング周期でオンとオフを繰り返すパルス状の信号に基づいてオン時間の間だけ電圧を印加する、換言すれば電流を流すことにより、各モーターの駆動を制御している。ここで、スイッチング周期におけるオン時間の割合値を「デューティ値」という。各モーターは、加速領域と定速領域と減速領域とを含む目標速度曲線に沿うようにデューティ値が調整されて回転速度が制御される。
【0043】
そして制御部50は、各モーターの各回転位置での目標回転速度に現行の回転速度を収束させるPID(Proportional Integral Differential)制御を行う。目標回転速度と現行の回転速度との差が大きければ、デューティ値が大きくなり、目標回転速度と現行の回転速度との差が小さければ、デューティ値は小さくなる。換言すると、各モーターの駆動負荷が大きく、目標回転速度と現行の回転速度との差が大きい場合は、各モーターの駆動負荷の一例であるデューティ値が大きくなる。その逆に、各モーターの駆動負荷が小さく、目標回転速度と現行の回転速度との差が小さい場合は、各モーターの駆動負荷の一例であるデューティ値は小さくなる。この様にデューティ値は、各モーターの駆動負荷に応じて変動する変動値である。
【0044】
ここで、湾曲反転経路Tにおいて媒体がジャムとなった場合、搬送モーター56のデューティ値が増加する。そこで制御部50は、媒体の搬送中において搬送モーター56のデューティ値と閾値とを参照し、搬送モーター56のデューティ値が閾値を上回った場合、媒体のジャムが発生したと判断するジャム検出処理を実行する。以下では、前記閾値を「ジャム検出閾値」と称する。制御部50は、媒体のジャムが発生したと判断した場合、各モーターの駆動を停止するとともに、操作パネル7に媒体のジャムが発生した旨のアラートを表示させる。
【0045】
尚、本実施形態では搬送モーター56のデューティ値をもとにジャム検出を行う為、デューティ値に基づいたジャム検出は、媒体先端が第1搬送ローラー対27に到達した以降が対象となる。媒体先端が第1搬送ローラー対27に到達するまでは、媒体を予定搬送量だけ搬送しても媒体先端が後述する第2媒体検出部62により検出されない場合、ジャムと判定する。また勿論、媒体先端が第1搬送ローラー対27に到達した以降も、後述するデューティ値に基づいたジャム検出処理と併せて、媒体を予定搬送量だけ搬送しても後述する第3媒体検出部63、第4媒体検出部64、第5媒体検出部65で検出されない場合にジャムが生じたと判定するジャム検出処理を行っても良い。
【0046】
次に制御部50には、第1媒体検出部61、第2媒体検出部62、第3媒体検出部63、第4媒体検出部64、第5媒体検出部65、からの検出信号も入力される。これらの検出部は、発光部(不図示)と受光部(不図示)とを備えて成る光学センサーであり、制御部50は各検出部から受信する検出信号に基づき、各検出部による検出位置での媒体先端或いは媒体後端の通過を検知できる。尚、各検出部は光学センサーに限らず、媒体と接触する接触式のセンサーであっても良い。
【0047】
ここで図4に示す様に、第1媒体検出部61は分離ローラー対23に対して設けられた検出部である。また第2媒体検出部62は第1搬送ローラー対27に対して設けられた検出部である。また第3媒体検出部63は第2搬送ローラー対31に対して設けられた検出部である。また第4媒体検出部64は第3搬送ローラー対35に対して設けられた検出部である。また第5媒体検出部65は第4搬送ローラー対39に対して設けられた検出部である。制御部50は、各検出部から受信する検出信号に基づき、媒体先端及び媒体後端の現在位置を把握できる。
【0048】
尚、本実施形態において第1媒体検出部61は、分離ローラー対23における媒体ニップ位置の下流近傍において媒体を検出する。また第2媒体検出部62、第3媒体検出部63、第4媒体検出部64、及び第5媒体検出部65は、第4搬送ローラー対39における媒体ニップ位置の上流近傍において媒体を検出する。
【0049】
続いて、ジャム検出処理におけるジャム検出閾値の切り換えについて説明する。本実施形態において制御部50は、媒体をニップするローラー対の数、分離ローラー対23による媒体ニップの有無、湾曲反転経路Tにおける媒体先端の位置などに応じて、ジャム検出閾値を変更する。またジャム検出閾値の変更と併せて、モーター駆動速度、換言すれば媒体の予定搬送速度を変更する。
図4図8は一例としてA4サイズの媒体Pを短手方向が搬送方向に沿う様に搬送する場合の媒体Pの位置変化を示すものである。図4図8において、符号Se1は湾曲反転経路Tにおける分離ローラー対23と第1搬送ローラー対27との間の区間であり、符号Se2は湾曲反転経路Tにおける第1搬送ローラー対27と第2搬送ローラー対31との間の区間であり、符号Se3は湾曲反転経路Tにおける第2搬送ローラー対31と第3搬送ローラー対35との間の区間であり、符号Se4は湾曲反転経路Tにおける第3搬送ローラー対35と第4搬送ローラー対39との間の区間である。
【0050】
図4に示す状態では、媒体Pは分離ローラー対23のみにニップされている為、給送モーター55にのみ媒体搬送に伴う駆動負荷が掛かり、搬送モーター56には媒体搬送に伴う駆動負荷は掛かっていない。この状態から媒体Pの搬送が進むと、図5に示す様に媒体Pは第1搬送ローラー対27にニップされ、即ち搬送モーター56には一つのローラー対に応じた駆動負荷が掛かる。
【0051】
この状態から媒体Pの搬送が更に進むと、図6に示す様に媒体Pは第1搬送ローラー対27と第2搬送ローラー対31にニップされ、即ち搬送モーター56には二つのローラー対に応じた駆動負荷が掛かる。
この状態から媒体Pの搬送が更に進むと、図7に示す様に媒体Pは第1搬送ローラー対27、第2搬送ローラー対31、及び第3搬送ローラー対35にニップされ、即ち搬送モーター56には三つのローラー対に応じた駆動負荷が掛かる。
この状態から媒体Pの搬送が更に進むと、図8に示す様に媒体Pは第2搬送ローラー対31、第3搬送ローラー対35、及び第4搬送ローラー対39にニップされ、即ち搬送モーター56には三つのローラー対に応じた駆動負荷が掛かる。
以降の図示は省略するが、更に媒体Pの搬送が進むと、搬送モーター56には二つのローラー対に応じた駆動負荷が掛かり、次いで一つのローラー対(第4搬送ローラー対39)に応じた駆動負荷が掛かり、そして媒体Pが排出されると、搬送モーター56には媒体搬送に伴う駆動負荷が掛からなくなる。
尚、媒体Pの長さが更に長い場合は、搬送モーター56には最大で4つのローラー対に応じた駆動負荷が掛かることとなる。
【0052】
以上の様に媒体Pの搬送が進むと媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が変化する為、媒体Pの搬送に伴って搬送モーター56のデューティ値も変化する。図9において縦軸Aは搬送モーター56のデューティ値であり、横軸tは媒体搬送距離である。横軸tにおいてR1で示す区間は搬送モーター56が駆動するローラー対のうち媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が一つの区間であり、以降同様にR2で示す区間は媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が二つの区間、R3で示す区間は媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が三つの区間、R4で示す区間は媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が四つの区間である。
符号Cd1で示す実線は区間R1における搬送モーター56のデューティ値であり、以降同様に符号Cd2で示す実線は区間R2における搬送モーター56のデューティ値であり、符号Cd3で示す実線は区間R3における搬送モーター56のデューティ値であり、符号Cd4で示す実線は区間R4における搬送モーター56のデューティ値である。
図示する様に、搬送モーター56のデューティ値は媒体Pの搬送に伴って段階的に上昇し、その後段階的に下降する。
【0053】
この様な構成において、ジャム検出閾値を符号S0で示す一点鎖線の様に最も高いデューティ値Cd4に基づいて設定すると、他のデューティ値Cd1、Cd2、Cd3と、ジャム検出閾値S0との差が大きくなってしまう。その結果、区間R1、R2、R3においてジャムが生じた際にデューティ値がジャム検出閾値S0を上回るまでに時間が掛かり、ジャムが進行し、媒体Pに生じるダメージが大きくなる虞がある。
【0054】
そこで制御部50は、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数に応じ、ジャム検出閾値を変更する。媒体Pの搬送に係わるローラー対の数は、第1媒体検出部61、第2媒体検出部62、第3媒体検出部63、及び第4媒体検出部64の検出信号に基づき把握することができる。
そして制御部50は、媒体Pを検出する検出部の数、即ち媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が増加すると、図9に示す様にジャム検出閾値を上げる。また制御部50は、媒体Pを検出する検出部の数、即ち媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が減少すると、ジャム検出閾値を下げる。
【0055】
図9において符号S1で示す破線は区間R1におけるジャム検出閾値であり、以降同様に符号S2で示す破線は区間R2におけるジャム検出閾値であり、符号S3で示す破線は区間R3におけるジャム検出閾値であり、符号S4で示す破線は区間R4におけるジャム検出閾値である。各ジャム検出閾値は、予め実験的に求めたデューティ値に対し所定の値を加算した値であって、フラッシュROM52(図3参照)に保存されており、必要に応じて読み出すことができる。
【0056】
以下、図10を参照してジャム検出プログラムの処理の流れについて説明する。
制御部50は、媒体Pの給送を開始すると(ステップS101)、以降継続して第2媒体検出部62、第3媒体検出部63、第4媒体検出部64、及び第5媒体検出部65の各検出部のいずれかに信号変化が生じたか否かを監視する(ステップS102)。その結果、各検出部のいずれかに信号変化が生じた場合(ステップS102においてYes)、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数を取得する(ステップS103)。
【0057】
次いで媒体Pの先端位置、即ち媒体Pの先端が湾曲反転経路Tにおける区間Se1、Se2、Se3、Se4のいずれにあるかを取得する(ステップS104)。そしてステップS103、S104の結果に基づきジャム検出閾値を取得する(ステップS105)。ステップS105でのジャム検出閾値の取得については後に更に詳説する。
そして取得したジャム検出閾値に基づき、ジャム検出閾値を切り換える(ステップS106)。
【0058】
次いで、ステップS103、S104の結果に基づきモーター駆動速度を取得し(ステップS107)、取得したモーター駆動速度に基づき給送モーター55及び搬送モーター56の駆動速度を切り換える(ステップS108)。
このモーター駆動速度の設定については、後に改めて説明する。
以上の処理を、媒体Pを排出するまで、具体的には媒体Pの後端が第4媒体検出部64を通過するまで行う(ステップS109)。
【0059】
表1に、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数と、ジャム検出閾値及びモーター駆動速度の関係を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
ジャム検出閾値S1、S2、S3、S4は、図9を参照して説明した通りであり、その値の大きさはS1<S2<S3<S4となる。
またモーター駆動速度V1、V2、V3、V4については、速度V4が最も低速であり、速度V1が最も高速であって、具体的にはV1>V2>V3>V4となる様に設定され、フラッシュROM52(図3参照)に保存され、必要に応じて読み出すことができる。
尚、制御部50は、ジャム検出閾値を高い値に切り換える際は、図9に示す様に各検出部のいずれかに信号変化が生じたタイミングから緩やかに上昇させる。またジャム検出閾値を低い値に切り換える際は、図9に示す様に各検出部のいずれかに信号変化が生じたタイミングをもとに搬送に係わるローラー対の数が切り換わるタイミングから緩やかに下降させる。即ちジャム検出閾値は、搬送モーター56のデューティ値に追従する様に設定される。但しこれに限られず、ジャム検出閾値の切り換えは完全に段階的に行う様にしても良い。
【0062】
以上の様に制御部50は、ジャム検出処理において複数の検出部の検出情報に基づき、媒体Pを検出する検出部の数、即ち媒体Pの搬送に係わるローラー対の数を取得し、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が増加すると、ジャム検出閾値を上げる。また制御部50は、ジャム検出処理において複数の検出部の検出情報に基づき、媒体Pを検出する検出部の数、即ち媒体Pの搬送に係わるローラー対の数を取得し、媒体Pを検出する検出部の数、即ち媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が減少すると、ジャム検出閾値を下げる。制御部50はこの様なジャム検出処理を実現するジャム検出プログラムを有し、当該ジャム検出プログラムによって上述したジャム検出方法が実現される。
以上により、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が少ない場合に、搬送モーター56のデューティ値とジャム検出閾値との差が大きくなって媒体Pのジャムを検出するまでに時間を要することを抑制できる。その結果、ジャムが進行して媒体Pに生じるダメージが大きくなることを抑制できる。
【0063】
次に媒体Pの搬送に係わるローラー対の数に応じたモーター駆動速度の切り換えについて説明する。
媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が相対的に少ないほど、媒体Pの搬送に係わるローラー対での媒体Pのスリップによって媒体搬送量が不足し、第1読み取り部4或いは第2読み取り部45での読み取り結果に悪影響が生じる虞がある。
そこで制御部50は、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数に応じ、モーター駆動速度を変更する。具体的には、上述したモーター駆動速度V1、V2、V3、V4の様に、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が増加すると搬送モーター56の駆動速度を下げ、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数が増加すると搬送モーター56の駆動速度を上げる。
尚、制御部50は少なくとも媒体Pの後端が第1媒体検出部61を通過するまでは、分離ローラー対23を駆動する給送モーター55の駆動速度即ち分離ローラー対23による予定搬送速度を、搬送モーター56の駆動速度の変化率と同じになる様に変化させる。
以上により、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数に応じた適切な媒体搬送量を実現でき、ひいては各読み取り部での読み取り結果を良好に得ることができる。
【0064】
以上が媒体Pの搬送に係わるローラー対の数に応じた、ジャム検出閾値とモーター駆動速度の切り換えの基本的内容であり、更に本実施形態では以降説明する様に、他の幾つかの観点に基づいてジャム検出閾値の取得(図10のステップS105)とモーター駆動速度の取得(図10のステップS107)を行う。
先ず制御部50は、湾曲反転経路Tにおける媒体Pの位置に応じ、ジャム検出閾値を変更する。このことにより、ジャム検出閾値をより一層適切な値とすることができ、ジャムをより適切に検出することができる。
以下、これを更に具体的に説明する。先ず、媒体Pが分離ローラー対23にニップされていると、分離ローラー対23より下流におけるローラー対による媒体Pの搬送に際して分離ローラー対23が搬送負荷となり、搬送モーター56のデューティ値が上がる。この様な構成においては、媒体Pが分離ローラー対23にニップされている場合を基準にしてジャム検出閾値を設定し、そしてこのジャム検出閾値を一律に適用すると、媒体Pが分離ローラー対23にニップされていない場合の搬送モーター56のデューティ値とジャム検出閾値との差が大きくなり、媒体Pのジャムを検出するまでに時間を要することとなる。
【0065】
そこで制御部50は、媒体Pが分離ローラー対23にニップされていない場合、媒体Pが分離ローラー対にニップされている場合よりも、ジャム検出閾値を下げる。
表2に、分離ローラー対23による媒体Pのニップの有無と、ジャム検出閾値及びモーター駆動速度に乗じる係数の一例を示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2において閾値乗数Ma1、Ma2は、表1に示したジャム検出閾値に乗じる乗数であって、Ma1>Ma2となる様に設定されている。閾値乗数Ma1、Ma2は、フラッシュROM52(図3参照)に保存され、必要に応じて読み出すことができる。
以上により、媒体Pが分離ローラー対23にニップされていない場合の搬送モーター56のデューティ値とジャム検出閾値との差が大きくなることを抑制でき、媒体のジャムを迅速に検出できる。
【0068】
尚、分離ローラー対23での媒体Pのニップ力は、媒体Pの種類に応じて変更できる様に構成されることが好ましい。この様に構成した場合、分離ローラー対23での媒体Pのニップ力に応じて、表2での「ニップあり」の場合における閾値乗数と速度乗数を切り換える様に構成することも好適である。
【0069】
また制御部50は、媒体Pが分離ローラー対23にニップされているか否かに応じて、搬送モーター56の駆動速度を切り換える。即ち、媒体Pが分離ローラー対23にニップされていると、分離ローラー対23より下流におけるローラー対による媒体Pの搬送に際してスリップが生じ、媒体搬送量が不足し、第1読み取り部4或いは第2読み取り部45での読み取り結果に悪影響が生じる虞がある。
そこで制御部50は、媒体Pが分離ローラー対23にニップされている場合の搬送モーター56の駆動速度を、媒体Pが分離ローラー対23にニップされていない場合の搬送モーター56の駆動速度より高速にする。
【0070】
表2の速度乗数Na1、Na2は、表1に示したモーター駆動速度に乗じる乗数であって、Na1>Na2となる様に設定されている。速度乗数Na1、Na2は、フラッシュROM52(図3参照)に保存され、必要に応じて読み出すことができる。
このことにより、分離ローラー対23による媒体Pのニップの有無に応じた適切な媒体搬送量を実現でき、ひいては各読み取り部での読み取り結果を良好に得ることができる。
尚、制御部50は少なくとも媒体Pの後端が第1媒体検出部61を通過するまでは、分離ローラー対23を駆動する給送モーター55の駆動速度即ち分離ローラー対23による予定搬送速度を、搬送モーター56の駆動速度の変化率と同じになる様に変化させる。
【0071】
次に、媒体Pの先端が湾曲反転経路Tを進む場合、経路の曲率が大きくなるほど搬送モーター56のデューティ値が上がる。これは、媒体Pの先端及び媒体Pの面が湾曲反転経路Tの不図示のガイド面と接触しながら進むため、搬送モーター56の駆動負荷が大きくなるためである。従って媒体Pの先端が曲率の大きい経路を進む場合を基準にしてジャム検出閾値を設定し、そしてこのジャム検出閾値を一律に適用すると、媒体Pの先端が相対的に曲率の小さい経路を進む場合に搬送モーター56のデューティ値とジャム検出閾値との差が大きくなり、媒体Pのジャムを検出するまでに時間を要することとなる。
【0072】
そこで制御部50は、湾曲反転経路Tにおける第1の区間に媒体Pの先端がある場合、媒体Pを湾曲させる際の曲率が前記第1の区間よりも大きい第2の区間に媒体Pの先端があるよりも、ジャム検出閾値を下げる。なお、制御部50は、第2の区間に媒体Pの先端がある場合、第1の区間に媒体Pの先端があるよりも、ジャム検出閾値を上げてもよい。
本実施形態では、区間Se1、Se4が上記第1の区間に相当し、区間Se2、Se3が上記第2の区間に相当する。
表3に、媒体先端位置と、閾値乗数及び速度乗数との関係の一例を示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表3において閾値乗数Mb1、Mb2、Mb3、Mb4は、表1に示したジャム検出閾値に乗じる乗数であって、フラッシュROM52(図3参照)に保存され、必要に応じて読み出すことができる。一例として本実施形態では、Mb4<Mb3<Mb2=Mb1に設定されている。
以上により、媒体Pの先端が相対的に曲率の小さい経路を進む場合に搬送モーター56のデューティ値とジャム検出閾値との差が大きくなることを抑制でき、媒体のジャムを適切に検出できる。
【0075】
尚、区間Se3即ち第1読み取り部4によって読み取りを行う区間において、区間Se2よりもジャムが生じ易い場合、より迅速にジャムを検出する為に、区間Se3でのジャム検出閾値と、ジャムが生じていない状態でのデューティ値との差を小さめに設定することも好適である。
【0076】
次に、表3の速度乗数Nb1、Nb2、Nb3、Nb4は、表1に示したモーター駆動速度に乗じる乗数であって、Nb4<Nb3<Nb2=Nb1となる様に設定されている。速度乗数Nb1、Nb2、Nb3、Nb4は、フラッシュROM52(図3参照)に保存され、必要に応じて読み出すことができる。
以上により、湾曲反転経路Tにおける媒体先端の位置に応じた適切な媒体搬送量を実現でき、ひいては各読み取り部での読み取り結果を良好に得ることができる。
尚、制御部50は少なくとも媒体Pの後端が第1媒体検出部61を通過するまでは、分離ローラー対23を駆動する給送モーター55の駆動速度即ち分離ローラー対23による予定搬送速度を、搬送モーター56の駆動速度の変化率と同じになる様に変化させる。
【0077】
また制御部50は、媒体Pの剛性に応じてジャム検出閾値と、搬送モーター56の駆動速度を変更する。具体的には、制御部50は第1の媒体を搬送する場合、当該第1の媒体より剛性の高い第2の媒体を搬送する場合よりも、ジャム検出閾値を下げる。なお、制御部50は、第2の媒体を搬送する場合、第1の媒体を搬送する場合よりもジャム検出閾値を上げてもよい。
即ち媒体Pの剛性が高いほど、搬送モーター56のデューティ値が上がる。従って剛性の高い媒体Pを基準にしてジャム検出閾値を設定し、そしてこのジャム検出閾値を一律に適用すると、相対的に剛性の低い媒体Pを搬送する際の搬送モーター56のデューティ値とジャム検出閾値との差が大きくなり、媒体Pのジャムを検出するまでに時間を要することとなる。
そこで制御部50は第1の媒体について、当該第1の媒体より剛性の高い第2の媒体よりも、ジャム検出閾値を下げる。
表4に、媒体種類と、閾値乗数及び速度乗数との関係の一例を示す。
【0078】
【表4】
【0079】
表4において媒体1、媒体2、媒体3、媒体4は、この順に剛性が高くなり、即ち媒体4が最も剛性が高い媒体である。閾値乗数Mc1、Mc2、Mc3、Mc4は、表1に示したジャム検出閾値に乗じる乗数であって、Mc1<Mc2<Mc3<Mc4となる様に設定されている。閾値乗数Mc1、Mc2、Mc3、Mc4は、フラッシュROM52(図3参照)に保存され、必要に応じて読み出すことができる。尚、媒体種類は、操作パネル7(図3参照)を介してユーザーが設定することができる。但し媒体種類は、湾曲反転経路Tの区間Se1や区間Se2におけるデューティ値をもとに把握しても良いし、区間Se1に媒体Pの厚みを検出するセンサーを設け、その検出情報に基づいて把握しても良い。
【0080】
媒体1と媒体2との関係においては、媒体1が上記第1の媒体となり、媒体2が上記第2の媒体となる。同様に媒体2と媒体3との関係においては、媒体2が上記第1の媒体となり、媒体3が上記第2の媒体となる。同様に媒体3と媒体4との関係においては、媒体3が上記第1の媒体となり、媒体4が上記第2の媒体となる。
以上により、相対的に剛性の低い媒体Pを搬送する際に搬送モーター56のデューティ値とジャム検出閾値との差が大きくなることを抑制でき、媒体Pのジャムを迅速に検出できる。
【0081】
同様に速度乗数Nc1、Nc2、Nc3、Nc4は、表1に示したモーター駆動速度に乗じる乗数であって、Nc1<Nc2<Nc3<Nc4となる様に設定されている。閾値乗数Nc1、Nc2、Nc3、Nc4は、フラッシュROM52(図3参照)に保存され、必要に応じて読み出すことができる。
即ち、媒体Pの剛性が相対的に高いほど搬送負荷も大きくなり、各ローラーでのスリップによって媒体搬送量が不足し、第1読み取り部4或いは第2読み取り部45での読み取り結果に悪影響が生じる虞がある。しかしながら上記の様に媒体Pの剛性が相対的に他の媒体Pより高い場合、他の媒体Pよりも搬送モーター56の駆動速度を上げるので、剛性の高い媒体Pを搬送する際に媒体搬送量が不足することを抑制でき、媒体Pの剛性に応じた適切な媒体搬送量を実現でき、ひいては各読み取り部での読み取り結果を良好に得ることができる。
尚、制御部50は少なくとも媒体Pの後端が第1媒体検出部61を通過するまでは、分離ローラー対23を駆動する給送モーター55の駆動速度即ち分離ローラー対23による予定搬送速度を、搬送モーター56の駆動速度の変化率と同じになる様に変化させる。
【0082】
以上説明した実施形態では、図4図8に示した様に湾曲反転経路Tに1枚の媒体Pが存在する場合を例に説明したが、湾曲反転経路Tに複数枚の媒体Pが存在している場合であっても、媒体Pの搬送に係わるローラー対の数に基づき、ジャム検出閾値及びモーター駆動速度を適切に設定することができる。
また以上説明した実施形態では、各ローラー対に対して検出部を設け、各検出部での媒体検出状況に応じて媒体Pの搬送に係わるローラー対を把握したが、媒体搬送量に基づく媒体の予想到達位置に応じて媒体Pの搬送に係わるローラー対を把握し、それに基づいてジャム検出閾値やローラー駆動速度を変更することもできる。その場合、媒体を検出する検出部は必ずしも全てのローラー対に対して設ける必要はなく、またローラー対のニップ位置に対し上流で媒体を検出する形態に限られず、前記ニップ位置、或いは前記ニップ位置の下流で媒体を検出しても良い。
【0083】
本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
また上記実施形態では、媒体搬送装置10を、画像読取装置の一例であるスキャナー1に適用した例について説明したが、媒体に対し記録を行う記録手段を備えた記録装置に対して適用することもできる。
【符号の説明】
【0084】
1…スキャナー、2…スキャナー部、3…原稿台ガラス、4…第1読み取り部、7…操作パネル、10…媒体搬送装置、11…装置本体、12…第1フレーム、13…押さえマット、15…給送トレイ、16A、16B…エッジガイド、17…開閉カバー、18…ロック解除レバー、19…駆動機構部、20…ピックローラー、21…ローラー支持部材、23…分離ローラー対、24…給送ローラー、25…分離ローラー、27…第1搬送ローラー対、28…駆動ローラー、29…従動ローラー、31…第2搬送ローラー対、32…駆動ローラー、33…従動ローラー、35…第3搬送ローラー対、36…駆動ローラー、37…従動ローラー、39…第4搬送ローラー対、40…駆動ローラー、41…従動ローラー、45…第2読み取り部、47…排出トレイ、50…制御部、51…CPU、52…フラッシュROM、54…プログラム、55…給送モーター、56…搬送モーター、61…第1媒体検出部、62…第2媒体検出部、63…第3媒体検出部、64…第4媒体検出部、65…第5媒体検出部、T…湾曲反転経路
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