(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】用紙搬送装置、及び、当該用紙搬送装置を用いるインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/60 20060101AFI20240827BHJP
B65H 5/22 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65H29/60 G
B65H5/22 C
(21)【出願番号】P 2021009914
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 彰
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-190034(JP,A)
【文献】特開2007-76794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/60
B65H 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する第1経路と、
前記第1経路で搬送された前記用紙を反転して前記第1経路における上流側に戻す第2経路と、
前記第1経路よりも下流側の位置に配置された第3経路と、
前記第1経路と前記第2経路との間に配置された搬送ベルトと、
前記第1経路で搬送された前記用紙の搬送先として前記第2経路と前記第3経路とのいずれか一方に切り替える経路切替部と、
前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の内側から外側に向かうエアの吹出力で前記搬送ベルトから遠ざかる方向に前記用紙を押圧するように前記経路切替部に設けられたエア吹出部と、
搬送する用紙の種類又はプリント条件に応じて前記ベルトプーリ部から吹き出すエアの温度を管理する温度管理部
と、を備え、
前記経路切替部は、前記用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行う
ことを特徴とす
る用紙搬送装置。
【請求項2】
用紙を搬送する第1経路と、
前記第1経路で搬送された前記用紙を反転して前記第1経路における上流側に戻す第2経路と、
前記第1経路よりも下流側の位置に配置された第3経路と、
前記第1経路と前記第2経路との間に配置された搬送ベルトと、
前記第1経路で搬送された前記用紙の搬送先として前記第2経路と前記第3経路とのいずれか一方に切り替える経路切替部と、
前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の外周面にエアを吹き付けるエアブロー機構
と、を備え、
前記経路切替部は、前記用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行う
ことを特徴とす
る用紙搬送装置。
【請求項3】
用紙を搬送する第1経路と、
前記第1経路で搬送された前記用紙を反転して前記第1経路における上流側に戻す第2経路と、
前記第1経路よりも下流側の位置に配置された第3経路と、
前記第1経路と前記第2経路との間に配置された搬送ベルトと、
前記第1経路で搬送された前記用紙の搬送先として前記第2経路と前記第3経路とのいずれか一方に切り替える経路切替部と、
前記経路切替部に配置されたブレード
と、を備え、
前記搬送ベルトは、前記用紙の搬送直交方向に対して複数配置されており、
前記ブレードは、先端側に前記用紙の搬送方向を切り替える切替爪を有しており、
前記切替爪は、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の外周面における前記搬送ベルトと前記搬送ベルトとの間に入り込むように配置されて
おり、
前記経路切替部は、前記用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行う
ことを特徴とす
る用紙搬送装置。
【請求項4】
前記経路切替部は、前記搬送ベルトの湾曲部分付近に設けられている
ことを特徴とする請求項1
乃至請求項3のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記経路切替部は、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の外側から内側に向かうエアの吸引力で前記用紙を前記搬送ベルトに吸引するエア吸引部を有する
ことを特徴とする請求項1
乃至請求項4のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記エア吸引部は、前記第1経路から前記第2経路への搬送時に前記用紙を吸引し、一方、前記第1経路から前記第3経路への搬送時には前記用紙を吸引しない
ことを特徴とする請求項
5に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
前記ベルトプーリ部における前記エア吸引部のエアの吸引力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定することができる
ことを特徴とする請求項
5又は請求項
6に記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
前記経路切替部は、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の内側から外側に向かうエアの吹出力で前記搬送ベルトから遠ざかる方向に前記用紙を押圧するエア吹出部を有する
ことを特徴とする請求項
2乃至請求項
7のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項9】
前記用紙の先端が前記経路切替部に進入する直前のタイミングで、前記エア吹出部によるエアの吹出動作を実行する制御部を有する
ことを特徴とする
請求項1又は請求項
8に記載の用紙搬送装置。
【請求項10】
前記ベルトプーリ部における前記エア吹出部のエアの吹出力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定することができる
ことを特徴とする
請求項1、請求項
8、請求項
9のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項11】
前記経路切替部は、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の内圧を大気に逃がすための大気開放バルブを有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
10のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項12】
前記搬送ベルトの内周側の任意の場所に、エアの吸引力で前記用紙を前記搬送ベルトに吸引するエア吸引部が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
11のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項13】
前記用紙の先端が前記エアブロー機構のエアの吹出口に進入する直前のタイミングで、前記エアブロー機構によるエアの吹出動作を実行する制御部を有する
ことを特徴とする請求項
2に記載の用紙搬送装置。
【請求項14】
前記エアブロー機構の吹出力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定することができる
ことを特徴とする請求項
2又は請求項13に記載の用紙搬送装置。
【請求項15】
前記エアブロー機構から吹き出されたエアの流れを規制する規制部材を備える
ことを特徴とする請求項
2、請求項13、請求項14のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項16】
前記エアブロー機構から吹き出されたエアを吸引して外部に排出する排出機構を備える
ことを特徴とする請求項
2、請求項13乃至請求項15のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項17】
前記搬送ベルトは、前記用紙の搬送直交方向に対して複数配置されており、
前記エアブロー機構は、前記ベルトプーリ部の外周面における前記搬送ベルトと前記搬送ベルトとの間にエアを吹き付ける
ことを特徴とする請求項
2、請求項13乃至請求項16のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項18】
前記ベルトプーリ部は、外周面に、前記用紙の分離時に前記ブレードの前記切替爪が入り込むように形成された溝部を有する
ことを特徴とする請求項
3に記載の用紙搬送装置。
【請求項19】
請求項1乃至請求項
18のいずれか一項に記載の用紙搬送装置と、
インクジェット方式の印字部と、を備える
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置、及び、当該用紙搬送装置を用いるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト搬送方式のインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)の中には、印字時の用紙(枚葉紙)の搬送性を向上させるために、搬送ベルトの外側から内側にエアを吸引することで用紙を搬送ベルト側に吸引(吸着)しながら搬送するものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなインクジェット記録装置は、印字部を通過した用紙(枚葉紙)を印字部の上流側に反転して戻すことで両面印刷を行うことが可能な構成になっている。
【0003】
また、UVインク(紫外線硬化インク)を使用するインクジェット記録装置は、印字後に紫外線照射部で紫外線を用紙に照射することで、UVインクを乾燥させる構成になっている。このようなインクジェット記録装置の中には、紫外線照射部が熱を発生するため、印字部用と紫外線照射部用とに別々の搬送ベルトを有する構成になっているものがある。つまり、このようなインクジェット記録装置の中には、印字部用の搬送ベルトと紫外線照射部用の搬送ベルトとの2つの搬送ベルトを有する構成になっているものがある。
【0004】
インクジェット記録装置で品位の高い画像を印字するためには、印字部の印字ヘッドと用紙との間の距離を極力短くすることが好ましい。そして、印字部の印字ヘッドと用紙との間の距離を極力短くするためには、搬送ベルトの走行を安定させて、用紙の搬送性を向上させることが求められる。
【0005】
搬送ベルトの走行を安定させて、用紙の搬送性を向上させるためには、搬送ベルトへの用紙の吸引力を高くするとよい。つまり、例えば、搬送ベルトへの用紙の吸引力が低いと、UVインクや紫外線の影響によって用紙がカールしてしまい、搬送ベルトから用紙が浮き上がる現象が生じ、その結果、用紙の搬送が阻害されてしまう可能性がある。そこで、搬送ベルトへの用紙の吸引力を高くすると、用紙のカールを抑制して、搬送ベルトから用紙が浮き上がる現象を防止することができるため、用紙の搬送性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された従来技術は、以下に説明するように、用紙の搬送先の切替(特に、印字経路での吸引搬送後における用紙の搬送先の切替)が難しい、という課題があった。
【0008】
例えば、特許文献1に記載された従来技術は、搬送ベルトへの用紙の吸引力を高くし過ぎると、吸引エリアから用紙が外れてもエアによる搬送ベルトへの用紙の吸引力が残ってしまったり、静電気の発生によって静電気による搬送ベルトへの用紙の吸着力が残ってしまったりする。その結果、従来技術は、搬送ベルトから用紙を分離し難くなる可能性がある。特に、吸引搬送部材である搬送ベルトの後端付近(つまり、搬送ベルトの後工程への受け渡し部である、搬送ベルトの下流側の湾曲部分付近)に用紙の搬送先の切替機構がある場合に、従来技術は、切替機構の分離部材が搬送ベルトに強く接触してしまい、搬送ベルトの表面に影響する。そのため、従来技術は、用紙の搬送先の切替が難しくなる可能性がある。
【0009】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、搬送ベルトの動作に影響なく、用紙の搬送先の切替を行う用紙搬送装置、及び、当該用紙搬送装置を用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0011】
(1)用紙を搬送する第1経路と、前記第1経路で搬送された前記用紙を反転して前記第1経路における上流側に戻す第2経路と、前記第1経路よりも下流側の位置に配置された第3経路と、前記第1経路と前記第2経路との間に配置された搬送ベルトと、前記第1経路で搬送された前記用紙の搬送先として前記第2経路と前記第3経路とのいずれか一方に切り替える経路切替部と、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の内側から外側に向かうエアの吹出力で前記搬送ベルトから遠ざかる方向に前記用紙を押圧するように前記経路切替部に設けられたエア吹出部と、搬送する用紙の種類又はプリント条件に応じて前記ベルトプーリ部から吹き出すエアの温度を管理する温度管理部と、を備え、前記経路切替部は、前記用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行うことを特徴とする用紙搬送装置。
(2)用紙を搬送する第1経路と、前記第1経路で搬送された前記用紙を反転して前記第1経路における上流側に戻す第2経路と、前記第1経路よりも下流側の位置に配置された第3経路と、前記第1経路と前記第2経路との間に配置された搬送ベルトと、前記第1経路で搬送された前記用紙の搬送先として前記第2経路と前記第3経路とのいずれか一方に切り替える経路切替部と、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の外周面にエアを吹き付けるエアブロー機構と、を備え、前記経路切替部は、前記用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行うことを特徴とする用紙搬送装置。
(3)用紙を搬送する第1経路と、前記第1経路で搬送された前記用紙を反転して前記第1経路における上流側に戻す第2経路と、前記第1経路よりも下流側の位置に配置された第3経路と、前記第1経路と前記第2経路との間に配置された搬送ベルトと、前記第1経路で搬送された前記用紙の搬送先として前記第2経路と前記第3経路とのいずれか一方に切り替える経路切替部と、前記経路切替部に配置されたブレードと、を備え、前記搬送ベルトは、前記用紙の搬送直交方向に対して複数配置されており、前記ブレードは、先端側に前記用紙の搬送方向を切り替える切替爪を有しており、前記切替爪は、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の外周面における前記搬送ベルトと前記搬送ベルトとの間に入り込むように配置されており、前記経路切替部は、前記用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行うことを特徴とする用紙搬送装置。
【0012】
(4)前記経路切替部は、前記搬送ベルトの湾曲部分付近に設けられていることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0013】
(5)前記経路切替部は、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の外側から内側に向かうエアの吸引力で前記用紙を前記搬送ベルトに吸引するエア吸引部を有することを特徴とする上記乃至(4)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0014】
(6)前記エア吸引部は、前記第1経路から前記第2経路への搬送時に前記用紙を吸引し、一方、前記第1経路から前記第3経路への搬送時には前記用紙を吸引しないことを特徴とする上記(5)に記載の用紙搬送装置。
【0015】
(7)前記ベルトプーリ部における前記エア吸引部のエアの吸引力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定することができることを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の用紙搬送装置。
【0016】
(8)前記経路切替部は、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の内側から外側に向かうエアの吹出力で前記搬送ベルトから遠ざかる方向に前記用紙を押圧するエア吹出部を有することを特徴とする上記(2)乃至(7)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0017】
(9)前記用紙の先端が前記経路切替部に進入する直前のタイミングで、前記エア吹出部によるエアの吹出動作を実行する制御部を有することを特徴とする上記(1)又は(8)に記載の用紙搬送装置。
【0018】
(10)前記ベルトプーリ部における前記エア吹出部のエアの吹出力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定することができることを特徴とする上記(1)、(8)、(9)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0019】
(11)前記経路切替部は、前記搬送ベルトを張架するベルトプーリ部の内圧を大気に逃がすための大気開放バルブを有することを特徴とする上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0021】
(12)前記搬送ベルトの内周側の任意の場所に、エアの吸引力で前記用紙を前記搬送ベルトに吸引するエア吸引部が設けられていることを特徴とする上記(1)乃至(11)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0023】
(13)前記用紙の先端が前記エアブロー機構のエアの吹出口に進入する直前のタイミングで、前記エアブロー機構によるエアの吹出動作を実行する制御部を有することを特徴とする上記(2)に記載の用紙搬送装置。
【0024】
(14)前記エアブロー機構の吹出力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定することができることを特徴とする上記(2)又は(13)に記載の用紙搬送装置。
【0025】
(15)前記エアブロー機構から吹き出されたエアの流れを規制する規制部材を備えることを特徴とする上記(2)、(13)、(14)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0026】
(16)前記エアブロー機構から吹き出されたエアを吸引して外部に排出する排出機構を備えることを特徴とする上記(2)、(13)乃至(15)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0027】
(17)前記搬送ベルトは、前記用紙の搬送直交方向に対して複数配置されており、
前記エアブロー機構は、前記ベルトプーリ部の外周面における前記搬送ベルトと前記搬送ベルトとの間にエアを吹き付けることを特徴とする上記(2)、(13)乃至(16)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【0029】
(18)前記ベルトプーリ部は、外周面に、前記用紙の分離時に前記ブレードの前記切替爪が入り込むように形成された溝部を有することを特徴とする上記(3)に記載の用紙搬送装置。
【0030】
(19)上記(1)乃至(18)のいずれか一項に記載の用紙搬送装置と、インクジェット方式の印字部と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、搬送ベルトの動作に影響なく、用紙の搬送先の切替を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態に係る用紙搬送装置を有するインクジェット記録装置の全体構成図である。
【
図2】実施形態に係る用紙搬送装置の経路切替部付近の構成図である。
【
図3】実施形態に係る用紙搬送装置のベルトプーリ部の構成図である。
【
図4】実施形態に係る用紙搬送装置のブレードの構成図である。
【
図10】用紙搬送装置の別の変形例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0034】
なお、従来技術には、前記した課題に加え、以下の課題もある。そのため、本実施形態では、以下の課題を解決することもできる用紙搬送装置を提供することを意図している。
(従来技術のさらなる課題)
従来技術は、エア吸引部に搬送ベルトに吸引された用紙を吸引力に対向して搬送ベルトから分離させることが難しい。そのため、従来技術は、吸引搬送部材である搬送ベルトを張架するベルトプーリ部とエア吸引部との間に十分な距離を確保できない場合に、用紙が搬送ベルトに吸引されたまま搬送ベルトの下部側に回り込むように動作する可能性がある。
【0035】
<インクジェット記録装置の構成>
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る用紙搬送装置2を用いるインクジェット記録装置1の構成について説明する。
図1は、インクジェット記録装置1の全体構成図である。本実施形態では、用紙搬送装置2が用紙として任意の寸法に整形された枚葉紙を搬送する場合を想定して説明する。
【0036】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、用紙搬送装置2と、制御部3と、フィーダー11と、加温ユニット12と、アライナー13と、印字部14aと、紫外線照射部15aと、デリバリー16と、を備えている。なお、以下の説明において「上流」及び「下流」は、フィーダー11からデリバリー16に向けて搬送される用紙の搬送方向を基準にしている。
【0037】
用紙搬送装置2は、用紙を搬送する装置である。本実施形態では、用紙搬送装置2が搬送ベルト24で用紙を搬送するベルト搬送方式の装置であるものとして説明する。
制御部3は、用紙搬送装置2を含むインクジェット記録装置1の各部の動作を制御する手段である。
フィーダー11は、用紙搬送装置2に用紙を繰り出す装置である。
加温ユニット12は、用紙を加温する手段である。加温ユニット12は、フィーダー11の下流側に配置されている。
アライナー13は、搬送方向に対して略直交する方向(搬送直交方向)の一方側に設けられた基準位置に用紙を揃える機構である。アライナー13は、加温ユニット12の下流側に配置されている。
印字部14aは、用紙に画像を印字する手段である。本実施形態では、印字部14aが、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応する印字ヘッド14aa,14ab,14ac,14adを有しており、インクジェット方式で用紙に印字する機構であるものとして説明する。なお、以下の説明では、インクジェット記録装置1において、用紙搬送装置2における印字部14aに対向する部位と印字部14aとを総称して「印字搬送部14」と称する。印字搬送部14は、アライナー13の下流側に配置されている。印字搬送部14は、用紙を搬送しながら印字部14aで用紙に画像を印字する。
紫外線照射部15aは、印字部14aにより用紙に塗布されたインクを乾燥させる手段である。なお、以下の説明では、インクジェット記録装置1において、用紙搬送装置2における紫外線照射部15aに対向する部位と紫外線照射部15aとを総称して「紫外線照射搬送部15」と称する。紫外線照射搬送部15は、印字搬送部14の下流側に配置されている。紫外線照射搬送部15は、用紙を搬送しながら、紫外線照射部15aで紫外線を用紙に照射する。
デリバリー16は、任意の集積部に用紙を搬送する機構である。デリバリー16は、紫外線照射搬送部15の下流側に配置されている。
【0038】
用紙搬送装置2は、繰出経路21と、両面搬送部22と、水平経路23と、を備えている。
【0039】
繰出経路21は、フィーダー11から両面搬送部22に用紙を搬送する部位である。
両面搬送部22は、印字部14aに対して用紙の両面を対向させることができるように構成された搬送機構である。両面搬送部22の一部は、印字搬送部14として構成されている。両面搬送部22は、第1経路としての印字経路22aと、第2経路としての裏面経路22bと、を有している。印字経路22a(第1経路)は、印字部14aの下に用紙を通すための経路である。裏面経路22b(第2経路)は、印字部14aを通過した用紙を印字部14aの上流側に反転して戻すための経路である。
水平経路23は、印字経路22a(第1経路)よりも下流側の位置に配置された第3経路である。
【0040】
繰出経路21と印字経路22a(第1経路)と水平経路23(第3経路)は、略水平方向に並んで配置されている。裏面経路22b(第2経路)は、印字経路22a(第1経路)に対向するように搬送ベルト24の下部側に配置されている。
【0041】
搬送ベルト24の全面には、微細な孔が形成されている。また、搬送ベルト24の内周側には、エアを吸引するエア吸引部28a,28c,28dが配置されている。用紙搬送装置2は、搬送ベルト24を介してエア吸引部28a,28c,28dで用紙を吸引しながら、搬送ベルト24を走行させることで用紙を搬送ベルト24に密着させた状態で搬送する構成になっている。エア吸引部28aは、後記する搬送ベルト24bの内周側において紫外線照射部15aに対向するように配置されている。エア吸引部28cは、後記する搬送ベルト24bの内周側においてエア吸引部28aの下側に配置されている。エア吸引部28dは、後記する搬送ベルト24aの内周側において印字部14aに対向するように配置されている。
【0042】
用紙搬送装置2は、搬送ベルト24として、印字搬送部14に配置された搬送ベルト24aと、紫外線照射搬送部15に配置された搬送ベルト24bと、を有している。また、用紙搬送装置2は、搬送ベルト24bの後端付近(つまり、搬送ベルト24bの下流側の湾曲部分である折り返し部分付近)に、経路切替部25を有している。経路切替部25は、印字経路22a(第1経路)を搬送された用紙の搬送先として裏面経路22b(第2経路)と水平経路23(第3経路)とのいずれか一方に切り替える構成になっている。
【0043】
経路切替部25は、ブレード26と、搬送ベルト24bを張架するベルトプーリ部27と、を有している。
【0044】
ブレード26は、用紙の搬送方向を切り替えるとともに、搬送ベルト24bから用紙を分離させる分離部材である。用紙搬送装置2は、印字経路22a(第1経路)から水平経路23(第3経路)に用紙を搬送する際に、エア吸引部28aで搬送ベルト24bに吸引された用紙をブレード26で搬送ベルト24bから分離させる。これにより、用紙搬送装置2は、印字経路22a(第1経路)から水平経路23(第3経路)に用紙を円滑に送ることができる。
【0045】
ベルトプーリ部27は、搬送ベルト24bを張架する部材である。ベルトプーリ部27の全面には、微細な孔が形成されている。また、ベルトプーリ部27の内周側には、エアを吸引するエア吸引部28bが配置されている。用紙搬送装置2は、搬送ベルト24及びベルトプーリ部27を介してエア吸引部28bで用紙を吸引しながら、搬送ベルト24を走行させることで印字経路22a(第1経路)から裏面経路22b(第2経路)に用紙を円滑に搬送することができる。
【0046】
また、用紙搬送装置2は、裏面経路22b(第2経路)側において、搬送ベルト24bと搬送ベルト24aとの間にブレード29を有している。ブレード29は、搬送ベルト24bから用紙を分離させる分離部材である。用紙搬送装置2は、裏面経路22b(第2経路)に沿って下流側の搬送ベルト24bから上流側の搬送ベルト24aの下側に設けられた搬送手段としての搬送ローラに用紙を搬送する際に、エア吸引部28cで搬送ベルト24bに吸引された用紙をブレード29で搬送ベルト24bから分離させる。これにより、用紙搬送装置2は、下流側の搬送ベルト24bから上流側の搬送ベルト24aの下側に設けられた搬送ローラに用紙を円滑に引き渡すことができる。
【0047】
<用紙搬送装置の経路切替部付近の構成>
以下、
図2を参照して、用紙搬送装置2の経路切替部25付近の構成について説明する。
図2は、用紙搬送装置2の経路切替部25付近の構成図である。
【0048】
図2に示すように、用紙搬送装置2は、印字経路22a(第1経路)と、裏面経路22b(第2経路)と、を有している。また、用紙搬送装置2は、印字部14a(
図1参照)に対向するように配置された搬送ベルト24aと、紫外線照射部15aに対向するように配置された搬送ベルト24bと、を有している。搬送ベルト24a,24bは、2つ以上のベルトプーリ部によって張架されている。
【0049】
用紙搬送装置2は、経路切替部25付近に、エア吸引部28として3つのエア吸引部28a,28b,28cを有している。エア吸引部28aは、搬送ベルト24bの内周部分において印字経路22a側に配置されている。エア吸引部28bは、搬送ベルト24bの後端側を張架するベルトプーリ部27の内部に配置されている。エア吸引部28cは、搬送ベルト24bの内周部分において裏面経路22b側に配置されている。また、用紙搬送装置2は、搬送ベルト24bから用紙を分離させる分離部材としてのブレード26,29を有している。また、用紙搬送装置2のベルトプーリ部27は、用紙の搬送先を切り替える切替部材として機能する。
【0050】
<用紙搬送装置のベルトプーリ部の構成>
以下、
図3を参照して、用紙搬送装置2のベルトプーリ部27の構成について説明する。
図3は、用紙搬送装置2のベルトプーリ部27の構成図である。
【0051】
図3に示すように、ベルトプーリ部27は、中空の棒状の形状を呈している。ベルトプーリ部27の外周部分には少なくとも1つ以上の溝部30が設けられており、溝部30によって1乃至複数の大径部が形成されている。
図3に示す例では、ベルトプーリ部27の外周部分には2つの溝部30が設けられており、2つの溝部30によって、溝部30よりも径の大きい3つの大径部が形成されている。各形成部には、搬送ベルト24bが張架されている。つまり、本実施形態では、用紙搬送装置2は、3本の搬送ベルト24bで用紙を搬送する構成になっている。
【0052】
前記した通り、搬送ベルト24(搬送ベルト24a,24b)の全面には、エアを通過させるための孔(図示せず)が設けられている。また、ベルトプーリ部27の少なくとも搬送ベルト24bが張架される大径部には、エアを通過させるための孔(図示せず)が設けられている。
【0053】
ベルトプーリ部27の一端側(図示例では左端側)には、エアを吸引するエア吸引機構41が設けられている。また、ベルトプーリ部27は、他端側(図示例では右端側)が封鎖された構成になっている。エア吸引機構41は、エアを吸引する吸引ファン41aと、エアの流路を開閉する吸引バルブ41bと、を有している。用紙搬送時において、吸引ファン41aは、常に作動している。用紙搬送装置2は、エア吸引機構41の吸引バルブ41bを開けることで、ベルトプーリ部27の内部から外部に向かう吸引エアA11を発生させる。これにより、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部空間に負圧を発生させて、搬送ベルト24b及びベルトプーリ部27に設けられた孔(図示せず)を通してベルトプーリ部27の外部から内部に進むようにエアを流動させる。このような用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部空間を、エアを吸引するエア吸引部28bとして機能させることができる。なお、用紙搬送装置2は、エア吸引機構41の吸引バルブ41bを閉じることで、ベルトプーリ部27の内部から外部に向かう吸引エアA11を発生させないようにすることができる。したがって、エア吸引部28dは、印字経路22a(第1経路)から裏面経路22b(第2経路)への搬送時に用紙を吸引し、一方、印字経路22a(第1経路)から水平経路23(第3経路)への搬送時には用紙を吸引しない構成になっている。
【0054】
なお、ベルトプーリ部27の一端側(図示例では左端側)において、吸引バルブ41bよりも中央寄りの部位には、大気開放バルブ40が設けられている。用紙搬送装置2は、大気開放バルブ40を開けることで、ベルトプーリ部27の内部から大気に向かう排出エアA10を発生させる。これにより、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部空間の圧力を大気圧にリセットすることができる。リセットのタイミングについては、後記する。
【0055】
図4に示すように、ブレード26は、ベルトプーリ部27の溝部30に入り込む切替爪31を有している。
図4は、用紙搬送装置2のブレード26の構成図である。切替爪31は、ブレード26を回動させることにより、ベルトプーリ部27に形成された溝30に出たり入ったりする構成になっている。つまり、ブレード26は、切替爪31を自由端として回動することで、切替爪31を搬送ベルト24から用紙を分離する分離部材として機能させることができる。
【0056】
<ベルトプーリ部の変形例の構成>
図5に示すように、ベルトプーリ部27は、ベルトプーリ部27の内部空間を、エアを吸引するエア吸引部28bとして機能させるだけでなく、エアを吹き出すエア吹出部38bとして機能させる構成に変形することができる。
図5は、ベルトプーリ部27の変形例の説明図である。
【0057】
図5に示すように、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部空間に送風エアA21を送り込むことで、ベルトプーリ部27の内部空間をエアを吹き出すエア吹出部38bとして機能させることができる。なお、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27から吹き出すエアの温度を管理する温度管理部32を有しているとよい。温度管理部32は、エアを加熱する加熱部32aと、エアの温度を検知する温度検知センサ32bと、で構成することができる。
【0058】
図6に、ベルトプーリ部27の内部空間をエア吸引部28bとエア吹出部38bとして機能させるための具体的なベルトプーリ部27の構成について説明する。
図6は、ベルトプーリ部27の変形例の構成図である。
【0059】
図6に示すように、用紙搬送装置2は、エア吸引機構41に加え、エアを送風するエア送風機構42を備えている。
エア送風機構42は、エアを送風する送風ファン42aと、エアの流路を開閉する送風バルブ42bと、を有している。用紙搬送時において、送風ファン42aは、常に作動している。用紙搬送装置2は、エア吸引機構41の吸引バルブ41bが絞められた状態で、エア送風機構42の送風バルブ42bを開けることで、ベルトプーリ部27の外部から内部に向かう送風エアA21を発生させる。これにより、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部空間に正圧を発生させて、搬送ベルト24b及びベルトプーリ部27に設けられた孔(図示せず)を通してベルトプーリ部27の内部から外部に進むようにエアを流動させる。このような用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部空間を、エアを吸引するエア吹出部38bとして機能させることができる。なお、ベルトプーリ部27の内部空間をエアを吸引するエア吸引部28bとして機能させる場合に、用紙搬送装置2は、エア送風機構42の送風バルブ42bが絞められた状態で、エア吸引機構41の吸引バルブ41bを開けるように動作する。
【0060】
用紙搬送装置2は、
図7に示す用紙検知センサSNで用紙の先端部が経路切替部25に入る直前のタイミングを検知する。
図7は、用紙検知センサSNの説明図である。
図7に示すように、用紙搬送装置2は、経路切替部25の直前の場所に用紙検知センサSNを有している。用紙搬送装置2は、用紙の先端部が経路切替部25に入る直前のタイミングを用紙検知センサSNで検知すると、ブレード26を作動させるとともに、エア吸引機構41の吸引バルブ41b及びエア送風機構42の送風バルブ42bの開閉動作を行う。
【0061】
図8は、バルブの開閉動作のタイムチャートである。
図8に示すように、用紙搬送装置2は、印字経路22a(第1経路)から裏面経路22b(第2経路)に用紙の搬送先を切り替える場合に、エア送風機構42の送風バルブ42bを閉じた状態でエア吸引機構41の吸引バルブ41bを開ける。これにより、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部空間をエアを吸引するエア吸引部28bとして機能させて、用紙を搬送ベルト24bに吸引させる吸引エアを発生させる。また、用紙搬送装置2は、印字経路22a(第1経路)から水平経路23(第3経路)に用紙の搬送先を切り替える場合に、エア吸引機構41の吸引バルブ41bを閉じた状態でエア送風機構42の送風バルブ42bを開ける。これにより、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部空間を、エアを吸引するエア吹出部38bとして機能させて、用紙を搬送ベルト24bから分離させる分離エアを発生させる。
【0062】
なお、用紙搬送装置2は、エア吸引機構41の吸引バルブ41bを閉じるタイミング及びエア送風機構42の送風バルブ42bを閉じるタイミングに重なるように大気開放バルブ40を開くとよい。これにより、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内圧を一旦リセットしてから吸引エア又は分離エアを発生させることができるため、用紙の搬送先の切替動作を高速化することができる。リセットのタイミングは、例えば、
図7に示すように、裏面経路搬送の終了前後のタイミングや水平経路搬送の終了直前のタイミングである。ここで、「裏面経路搬送の終了前後のタイミング」とは、裏面経路22b(第2経路)から印字経路22a(第1経路)に用紙を搬送する動作の終了前後のタイミングを意味している。また、「水平経路搬送の終了直前のタイミング」とは、印字経路22a(第1経路)から水平経路23(第3経路)に用紙を搬送する動作の終了直前のタイミングを意味している。
【0063】
<用紙搬送装置の主な特徴>
以下に、本実施形態に係る用紙搬送装置2の主な特徴について説明する。
(1)
図1に示すように、本実施形態に係る用紙搬送装置2は、印字経路22a(第1経路)と、裏面経路22b(第2経路)と、水平経路23(第3経路)と、搬送ベルト24と、経路切替部25と、を備えている。印字経路22a(第1経路)は、印字部14aに対向するように用紙を搬送する経路である。裏面経路22b(第2経路)は、印字経路22a(第1経路)を搬送された用紙を反転して印字経路22a(第1経路)における上流側に戻す経路である。水平経路23(第3経路)は、印字経路22a(第1経路)よりも下流側の位置に配置された経路である。搬送ベルト24は、印字経路22a(第1経路)と裏面経路22b(第2経路)との間に配置された用紙を搬送する手段である。搬送ベルト24は、経路切替部25による用紙の搬送先の切替動作に応じて選択的に、印字経路22a(第1経路)と裏面経路22b(第2経路)とに沿って用紙を搬送したり、印字経路22a(第1経路)と水平経路23(第3経路)とに沿って用紙を搬送したりする。経路切替部25は、搬送ベルト24の湾曲部分である折り返し部分付近に設けられ、かつ、印字経路22a(第1経路)を搬送された用紙の搬送先として裏面経路22b(第2経路)と水平経路23(第3経路)とのいずれか一方に切り替える構成になっている。また、経路切替部25は、用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行う構成になっている。なお、用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行う点については、搬送ベルト24の折り返し部分に限らず、搬送ベルト24の任意の場所に適用することができる。例えば、用紙搬送装置2は、搬送ベルト24の折り返し部分以外の任意の湾曲部分で、エアコントロールにより用紙を搬送ベルト24に吸引したり吸引しないことで、用紙の搬送先を切り替えることができる。
【0064】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、経路切替部25において用紙の搬送先の切替動作をエアコントロールで行うため、切替機構の分離部材(ブレード26)を吸引搬送部材である搬送ベルトに強く接触させないようにすることができる。そのため、本実施形態に係る用紙搬送装置2は、搬送ベルト24に影響なく、用紙の搬送先の切替を行うことができる。
【0065】
(2)
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る用紙搬送装置2の経路切替部25は、搬送ベルト24bを張架するベルトプーリ部27の外側から内側に向かうエアの吸引力で用紙を搬送ベルト24bに吸引するエア吸引部28bを有しているとよい。
【0066】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、経路切替部25付近においてエアコントロールでベルトプーリ部27への用紙の吸引を行うことができるため、吸引搬送部材である搬送ベルト24bへの用紙の吸引力を高くし過ぎないようにすることができる。その結果、本実施形態に係る用紙搬送装置2は、搬送ベルト24bの走行を安定させて、用紙の搬送性を向上させることができる。
【0067】
(3)本実施形態に係る用紙搬送装置2のエア吸引部28bは、印字経路22a(第1経路)から裏面経路22b(第2経路)への搬送時に用紙を吸引し、一方、印字経路22a(第1経路)から水平経路23(第3経路)への搬送時には用紙を吸引しない構成になっているとよい。
【0068】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、用紙の搬送先の切替を良好に行うことができる。
【0069】
(4)本実施形態に係る用紙搬送装置2のベルトプーリ部27におけるエア吸引部28bのエアの吸引力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定するとよい。
【0070】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、吸引搬送部材である搬送ベルト24bへの用紙の吸引力を高くし過ぎないようにすることができる。その結果、本実施形態に係る用紙搬送装置2は、搬送ベルト24bの走行を安定させて、用紙の搬送性を向上させることができる。
【0071】
(5)
図5に示すように、本実施形態に係る用紙搬送装置2の経路切替部25は、搬送ベルト24を張架するベルトプーリ部27の内側から外側に向かうエアの吹出力で搬送ベルト24から遠ざかる方向に用紙を押圧するエア吹出部38bを有しているとよい。
【0072】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、搬送ベルト24から用紙を良好に分離することができる。そのため、本実施形態に係る用紙搬送装置2は、さらに、切替機構の分離部材(ブレード26)を吸引搬送部材である搬送ベルト24bに強く接触させないようにすることができる。そのため、本実施形態に係る用紙搬送装置2は、さらに、搬送ベルト24bに影響なく、用紙の搬送先の切替を行うことができる。
【0073】
(6)本実施形態に係る用紙搬送装置2の制御部3は、用紙の先端が経路切替部25に進入する直前のタイミングで、エア吹出部38bによるエアの吹出動作を実行するとよい。
【0074】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、用紙の先端が経路切替部25に進入するまでの間に、搬送ベルト24bから用紙を分離させることができる。そのため、本実施形態に係る用紙搬送装置2は、用紙の搬送性を向上させることができる。
【0075】
(7)本実施形態に係る用紙搬送装置2のベルトプーリ部27におけるエア吹出部38bのエアの吹出力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定するとよい。
【0076】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、搬送する用紙に合わせて適切なエアの吹出力を設定することができるため、搬送ベルト24bから用紙を分離する際に用紙が浮き上がり過ぎることを抑制でき、用紙の搬送性を向上させることができる。
【0077】
(8)
図3に示すように、本実施形態に係る用紙搬送装置2の経路切替部25は、搬送ベルト24を張架するベルトプーリ部27の内圧を大気に逃がすための大気開放バルブ40を有しているとよい。
【0078】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内圧を一旦リセットしてから吸引エア又は分離エアを発生させることができるため、用紙の搬送先の切替動作を高速化することができる。
【0079】
(9)
図5及び
図6に示すように、用紙搬送装置2は、搬送する用紙の種類又はプリント条件に応じてベルトプーリ部27から吹き出すエアの温度を管理する温度管理部32を有しているとよい。
【0080】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27から吹き出すエアの温度によって周囲の構成要素に好ましくない影響が発生することを抑制することができる。例えば、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27から吹き出した分離エアが紫外線照射部15aや印字部14aに流れて、分離エアの温度によって用紙に描画された印字画像や印字部14aから噴射されるUVインクのミストに好ましくない影響が発生することを抑制することができる。
【0081】
(10)
図2に示すように、用紙搬送装置2は、経路切替部25に配置されたブレード26を備えている。
図3に示すように、搬送ベルト24は、用紙の搬送直交方向に対して複数配置されているとよい。そして、
図4に示すように、ブレード26は、先端側に用紙の搬送方向を切り替える切替爪31を有しており、切替爪31は、搬送ベルト24を張架するベルトプーリ部27の外周面における2本の搬送ベルト24の間に形成された溝30(
図3参照)に入り込むように配置されているとよい。
【0082】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、ブレード26の切替爪31で用紙の搬送先の切替を確実に行うことができる。
【0083】
(11)
図4に示すように、ベルトプーリ部27は、外周面に、用紙の分離時にブレードの切替爪31が入り込むように形成された溝部30を有しているとよい。
【0084】
このような本実施形態に係る用紙搬送装置2は、ブレード26の切替爪31がベルトプーリ部27の外周面に形成された溝部30に入り込むため、さらに、搬送ベルト24bに影響なく、用紙の搬送先の切替を行うことができる。
【0085】
以上の通り、本実施形態に係る用紙搬送装置2によれば、吸引搬送部材である搬送ベルト24bの動作に影響なく、用紙の搬送先の切替を行うことができる。
【0086】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0087】
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、ある構成要素に他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に変更したりすることができる。また、本発明は、一部の構成要素を削除することもできる。
【0088】
また、用紙搬送装置2は、ブレード26,29を無くした構成にすることができる。その場合に、ベルトプーリ部27の溝部30は不要である。
【0089】
また、例えば、前記した実施形態に係る用紙搬送装置2は、
図9に示す構成のように、変形することができる。
図9は、用紙搬送装置2の変形例の構成図である。
【0090】
図9に示す例では、用紙搬送装置2は、ブレード26の代わりに、経路切替部25にエアブロー機構51を有している。エアブロー機構51は、ベルトプーリ部27の外周面にエアを吹き付ける機構である。このような構成の用紙搬送装置2は、搬送ベルト24bから用紙をさらに良好に分離することができる。なお、用紙搬送装置2は、ブレード26に加え、エアブロー機構51を有する構成であってもよい。つまり、用紙搬送装置2は、ブレード26とエアブロー機構51との双方を経路切替部25に有する構成であってもよい。
【0091】
また、例えば、前記した実施形態に係る用紙搬送装置2は、
図10に示す構成のように、変形することができる。
図10は、用紙搬送装置2の別の変形例の構成図である。
【0092】
図10に示す例では、用紙搬送装置2は、印字部14aと紫外線照射部15aとを同一の搬送ベルト24上に設けるとともに、紫外線照射部15aの下流側の経路切替部25にエアーブロー機構51を設けた構成になっている。用紙搬送装置2は、印字部14aに対する紫外線照射部15aの熱影響が比較的小さい場合に、印字部14aと紫外線照射部15aとを同一の搬送ベルト24上に設けることができる。
【0093】
なお、
図10に示すように、用紙搬送装置2は、規制部材61を有する構成にしてもよい。規制部材61は、エアブロー機構51から吹き出した分離エアの流れを規制する(排風する)ための板状の部材である。
図10に示す例では、規制部材61は、紫外線照射部15aの下流側の場所(具体的には、紫外線照射部15aと経路切替部25との間の場所)に設けられている。用紙搬送装置2は、エアブロー機構51から吹き出した分離エアの流れを規制部材61で規制することで、吹き出した分離エアによって周囲の構成要素に好ましくない影響が発生することを抑制することができる。例えば、用紙搬送装置2は、エアブロー機構51から吹き出した分離エアが紫外線照射部15aや印字部14aに流れて、分離エアの温度や流れによって、紫外線照射部15aでの温度に好ましくない影響が発生したり、印字部14aから噴射されるUVインクのミストに好ましくない影響が発生したりすることを抑制することができる。
【0094】
また、
図10に示すように、用紙搬送装置2は、規制部材61に加え、排出機構62を有する構成にしてもよい。排出機構62は、エアブロー機構51から吹き出した分離エアを吸引して任意の場所に排出する(排風する)ための機構である。排出機構62は、封止部材62aと、排出ファン62bと、を有している。封止部材62aは、規制部材61との間に、エアブロー機構51から吹き出した分離エアを取り込むための密閉空間を形成する部材である。排出ファン62bは、封止部材62aと規制部材61とによって形成された密閉空間内のエアを外部に排出するためのファンである。用紙搬送装置2は、排出機構62によりエアブロー機構51から吹き出した分離エアを吸引して任意の場所に排出することで、吹き出した分離エアによって周囲の構成要素に好ましくない影響が発生することを抑制することができる。
【0095】
制御部3は、用紙の先端がエアブロー機構51のエアの吹出口に進入する直前のタイミングで、エアブロー機構51によるエアの吹出動作を実行するとよい。
【0096】
このような構成の用紙搬送装置2は、搬送ベルト24a,24bから用紙を良好に分離することができる。
【0097】
また、エアブロー機構51の吹出力は、搬送する用紙の種類と坪量とサイズの中の任意の条件に応じて設定するとよい。
【0098】
このような構成の用紙搬送装置2は、搬送する用紙に合わせて適切な分離エアの吹出力を設定することができるため、搬送ベルト24a,24bから用紙を分離する際に用紙が浮き上がり過ぎることを抑制でき、用紙の搬送性を向上させることができる。
【0099】
また、搬送ベルト24は、用紙の搬送直交方向に対して複数配置されており、エアブロー機構51は、ベルトプーリ部27の外周面における2本の搬送ベルト24の間に形成された溝30(
図3参照)にエアを吹き付ける構成になっているとよい。このような構成の用紙搬送装置2は、搬送ベルト24から用紙をさらに良好に分離することができる。
【0100】
また、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部に設けられたエア吸引部28bだけでなく、搬送ベルト24の内周側の任意の場所に設けられたエア吸引部28で吸引搬送するようにしてもよい。例えば、
図1に示す例では、用紙搬送装置2は、ベルトプーリ部27の内部に設けられたエア吸引部28bだけでなく、搬送ベルト24の内周側に設けられたエア吸引部28a,28c,28dで吸引しながらベルトプーリ部27で用紙を搬送する構成になっている。
【0101】
また、用紙搬送装置2は、経路切替部25だけでなく、
図9に示すエアブロー機構51を任意の場所に設けることができる。この場合に、エアブロー機構51は、搬送ベルト24の外周面と用紙との間に分離エアを吹き付けるように作用する。このような構成の用紙搬送装置2は、搬送ベルト24から用紙を良好に分離することができる。例えば、用紙搬送装置2は、
図9に示すエアブロー機構51を、
図1に示す搬送ベルト24aと搬送ベルト24bとの間に設けることができる。このような構成の用紙搬送装置2は、搬送ベルト24から用紙を良好に分離することができるため、搬送ベルト24aと搬送ベルト24bとの間で用紙を良好に引き渡すことができる。
【0102】
また、用紙搬送装置2は、エアによる搬送ベルト24への吸着のみならず、静電気等により搬送ベルト24に吸着させて用紙を搬送することができる。その場合に、用紙搬送装置2は、用紙の搬送方向の切替をエアコントロールによって行ってもよいので、静電気の吸着でも印字経路22a(第1経路)から水平経路23(第3経路)に用紙を円滑に送ることができる。このような構成は、特に、紙種がプラスチック系の用紙である場合に、静電気により用紙が搬送ベルト24に吸着し易いため、有効である。
【符号の説明】
【0103】
1 インクジェット記録装置
2 用紙搬送装置
3 制御部
11 フィーダー
12 加温ユニット
13 アライナー
14 印字搬送部
14a 印字部
14aa,14ab,14ac,14ad 印字ヘッド
15 紫外線照射搬送部
15a 紫外線照射部
16 デリバリー
21 繰出経路
22 両面搬送部
22a 印字経路(第1経路)
22b 裏面経路(第2経路)
23 水平経路(第3経路)
24(24a,24b) 搬送ベルト(吸引搬送部材)
25 経路切替部
26,29 ブレード(分離部材)
27 ベルトプーリ部(切替部材)
28(28a,28b,28c,28d) エア吸引部
30 溝部
31 切替爪
32 温度管理部
32a 加熱部
32b 温度検知センサ
38b エア吹出部
40 大気開放バルブ
41 エア吸引機構
41a 吸引ファン
41b 吸引バルブ
42 エア送風機構
42a 送風ファン
42b 送風バルブ
51 エアブロー機構
61 規制部材
62 排出機構
62a 封止部材
62b 排出ファン
SN 用紙検知センサ