IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特許7543935磁性材料、磁性部材、コイル及びインダクタ配線板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】磁性材料、磁性部材、コイル及びインダクタ配線板
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/26 20060101AFI20240827BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240827BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240827BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20240827BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240827BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01F1/26
C08K3/08
C08K3/22
C08L71/10
C08L101/00
C08G65/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021015119
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118537
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 功
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田畑 有基
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/194099(JP,A1)
【文献】国際公開第2017/183461(WO,A1)
【文献】特開2018-041955(JP,A)
【文献】特開平11-302539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0055357(US,A1)
【文献】特開2002-158482(JP,A)
【文献】特開2014-199862(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/052528(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/26
C08K 3/08
C08K 3/22
C08L 71/10
C08L 101/00
C08G 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉末(A)と、下記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位を有する重合体(B)とを含有する、磁性材料であって、
前記磁性材料が、前記磁性粉末(A)と、該磁性粉末(A)を被覆する、前記重合体(B)を含む被覆層とを有する磁性フィラーであり、
前記重合体(B)の含有割合が、前記磁性材料を構成する固形分100質量%に対して、0.1~40質量%である、
磁性材料
【化1】
〔式(1-1)~(1-3)中、R1はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基、これら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又は、アミノ基の塩である。nはそれぞれ独立して、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成していてもよい。A1及びA2はそれぞれ独立して、-O-、-S-又は-N(R2)-である[R2は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基又はこれら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基である。]。Xは2価の有機基である。〕
【請求項2】
前記式(1-1)~(1-3)におけるXが、下記式(2-1)で表される基を含有する、請求項1に記載の磁性材料。
【化2】
〔式(2-1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基である。Lは、単結合、-O-、-S-、-N(R8)-、-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-NH-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)-、又は、2価の有機基である[R8は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、又は、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基である。]。yは、0~5の整数である。yが2以上の場合、複数のLは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R6及びR7はそれぞれ独立して、単結合、メチレン基、又は、炭素数2~4のアルキレン基である。〕
【請求項3】
前記磁性粉末(A)が鉄元素を含む、請求項1または2に記載の磁性材料。
【請求項4】
記被覆層が、更に硬化性化合物(C)及び硬化助剤(D)を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性材料。
【請求項5】
前記硬化性化合物(C)が、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、アリル化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物及びプロパルギル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の磁性材料。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の磁性材料から形成された磁性部材。
【請求項7】
請求項に記載の磁性部材を含むコイル。
【請求項8】
請求項に記載の磁性部材又は請求項に記載のコイルを含むインダクタ配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料、磁性部材、コイル及びインダクタ配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーインダクタ、高周波帯域用インダクタ、コモンモードチョークコイルと呼ばれるインダクタ素子が携帯電話機、スマートフォンなどの情報端末に数多く搭載されている。現在、動作信号の周波数が1MHz以上、特に10MHzから1GHzの範囲にある高周波帯域用インダクタ素子の構造としては、例えば、コア部材にコイルを巻き付けた巻線構造、コア部材にコイル導体を積層した積層構造、複数の層状の絶縁層それぞれにコイルの一部を構成する配線層を形成し、配線層が形成された絶縁層同士を各配線層同士が電気的に接続されるように積層して絶縁部の厚さ内にコイルが作り込まれたフィルム構造が知られている。
【0003】
高周波帯域用インダクタ素子においては、特性として高いQ値が求められることから空芯コイル、すなわち芯部が中空、あるいは非磁性体が充填された構造が一般的に採用されている。しかしながら、このような構造の高周波帯域用インダクタ素子は芯部が非磁性であり芯部の透磁率(比透磁率)を上げることが不可能であるため、インダクタ素子をより小型化しようとすると、高周波帯域で動作させた場合にインダクタンス(L値)が低下してしまうという欠点がある。
【0004】
特許文献1には、(A)カルボキシ基を有する脂環式オレフィン重合体、(B)熱硬化剤、(C)磁性体、及び(D)溶剤を含有する熱硬化性磁性スラリーを用いれば、(C)磁性体の分散性に優れ、各成分を高濃度で含有することができ、電気絶縁性、高周波特性、透磁率などの特性に優れた電気絶縁層を形成できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2004/29153号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の情報端末のさらなる薄型化、小型化の要求により、高周波帯域用インダクタ素子にも薄型化、小型化が求められている。
【0007】
高周波帯域用インダクタ素子のさらなる薄型化、小型化のためには、コイルの巻き数を減らし、コイルを構成する配線の断面積を小さくする必要がある。コイルの巻き数を減らし、コイルを構成する配線の断面積を小さくするためには、前記フィルム構造の高周波帯域用インダクタ素子が有利である。ところが、フィルム構造の高周波帯域用インダクタ素子では、単純にコイルの巻き数を減らし、コイルを構成する配線の断面積を小さくするとインダクタンスが低下してしまう。一方、フィルム構造の高周波帯域用インダクタ素子では、絶縁層の透磁率(μ’)を高めることができれば、高周波帯域用インダクタ素子のL値及びQ値を向上させることができる。よって、絶縁層の透磁率をより高くすることができ、かつ損失係数を低減させることができる材料が求められている。
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に係る熱硬化性磁性スラリーを用いてフィルム構造のインダクタ素子を形成した場合には、特に周波数が1MHzから1GHzの範囲では損失係数(μ’’/μ’)が大きくなってしまうおそれがある。よって、特許文献1が開示する材料は、高周波帯域用インダクタ素子の絶縁層(絶縁部)の材料として有用とは言い難い。
【0009】
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、周波数1MHzから1GHzの範囲における透磁率が高く、損失係数が小さく、かつ絶縁性の信頼性に優れる絶縁層を形成することができる磁性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出した。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0011】
[1] 磁性粉末(A)と、下記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位を有する重合体(B)とを含有する、磁性材料。
【0012】
【化1】
〔式(1-1)~(1-3)中、R1はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基、これら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又は、アミノ基の塩である。nはそれぞれ独立して、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成していてもよい。A1及びA2はそれぞれ独立して、-O-、-S-又は-N(R2)-である[R2は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基又はこれら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基である。]。Xは2価の有機基である。〕
【0013】
[2] 前記磁性材料が、
前記磁性粉末(A)と重合体(B)とを含有する磁性組成物である、又は、
前記磁性粉末(A)と、該磁性粉末(A)を被覆する、前記重合体(B)を含む被覆層とを有する磁性フィラーである、
[1]に記載の磁性材料。
【0014】
[3] 前記式(1-1)~(1-3)におけるXが、下記式(2-1)で表される基を含有する、[1]又は[2]に記載の磁性材料。
【0015】
【化2】
〔式(2-1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基である。Lは、単結合、-O-、-S-、-N(R8)-、-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-NH-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)-、又は、2価の有機基である[R8は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、又は、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基である。]。yは、0~5の整数である。yが2以上の場合、複数のLは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R6及びR7はそれぞれ独立して、単結合、メチレン基、又は、炭素数2~4のアルキレン基である。〕
【0016】
[4] 前記磁性粉末(A)が鉄元素を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の磁性材料。
【0017】
[5] 前記磁性組成物又は前記被覆層が、更に硬化性化合物(C)及び硬化助剤(D)を含有する、[2]に記載の磁性材料。
[6] 前記硬化性化合物(C)が、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、アリル化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物及びプロパルギル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[5]に記載の磁性材料。
【0018】
[7] 前記磁性組成物が更に溶媒(E)を含有する、[2]に記載の磁性材料。
【0019】
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の磁性材料から形成された磁性部材。
[9] [8]に記載の磁性部材を含むコイル。
[10] [8]に記載の磁性部材又は[9]に記載のコイルを含むインダクタ配線板。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特に周波数1MHzから1GHzの範囲における透磁率が高く、損失係数が小さく、かつ絶縁性の信頼性に優れる絶縁層を提供することができ、ひいては、該絶縁層を含む高性能な高周波帯域用インダクタ素子を有する配線板を、簡便な工程により提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
【0022】
1.磁性材料
本発明の一実施形態に係る磁性材料(以下「本材料」ともいう。)は、磁性粉末(A)と、下記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位を有する重合体(B)とを含有する。
【0023】
【化3】
〔式(1-1)~(1-3)中、R1はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基、これら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又は、アミノ基の塩である。nはそれぞれ独立して、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成していてもよい。A1及びA2はそれぞれ独立して、-O-、-S-又は-N(R2)-である[R2は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基又はこれら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基である。]。Xは2価の有機基である。〕
【0024】
本材料の形態としては特に制限されないが、その好適例としては、
前記磁性粉末(A)と重合体(B)とを含有する磁性組成物(以下「本組成物」ともいう。)、
前記磁性粉末(A)と、該磁性粉末(A)を被覆する、前記重合体(B)を含む被覆層とを有する磁性フィラー(以下「本フィラー」ともいう。)
が挙げられる。
本組成物又は前記被覆層は、更に硬化性化合物(C)及び硬化助剤(D)を含有していてもよい。
【0025】
<磁性粉末(A)>
磁性粉末(A)としては、Fe元素を含むことが好ましい。該磁性粉末(A)としては、例えば、純鉄粉末、Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Al系合金粉末、Fe-Ni系合金粉末、Fe-Ni-Mo系合金粉末、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉末、Fe-Co系合金粉末、あるいはFe-Ni-Co系合金粉末などのFe合金類、Fe基アモルファス、Co基アモルファスなどのアモルファス合金類、Mg-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Mg-Mn-Sr系フェライト、Ni-Zn系フェライトなどのスピネル型フェライト類、Ba-Zn系フェライト、Ba-Mg系フェライト、Ba-Ni系フェライト、Ba-Co系フェライト、Ba-Ni-Co系フェライトなどの六方晶型フェライト類、Y系フェライトなどのガーネット型フェライト類が挙げられる。これらの中でも、磁性粉末(A)としては、Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Al系合金粉末等の、Si、Al、及びCrから選ばれる1種以上の元素を含むFe合金類が好ましく、Si及びCrを含むFe合金類がより好ましい。
【0026】
磁性粉末(A)としては、市販の磁性粉末を用いることができる。該市販の磁性粉末の具体例としては、山陽特殊製鋼(株)製「PST-S」、エプソンアトミックス(株)製「AW2-08」、「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF8F」、「AW2-08PF3F」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」、JFEケミカル(株)製「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」、戸田工業(株)製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、「S-1281」、「S-1641」、「S-1651」、「S-1470」、「S-1511」、「S-2430」、日本重化学工業(株)製「JR09P2」、CIKナノテック(株)製「Nanotek」、キンセイマテック(株)製「JEMK-S」、「JEMK-H」、SIGMA-ALDRICH社製「Yttriumironoxide」が挙げられる。
【0027】
磁性粉末(A)は、1種単独で用いてもよく、平均粒径や種類が異なる2種以上の粒子を用いてもよい。異なる粒径のフィラーを適切に用いることで本組成物の流動性が高まり、本フィラーにおける磁性粉末(A)の充填性を高めることができる。
【0028】
磁性粉末(A)の平均粒径は、0.1μm超であることが好ましく、より好ましくは0.1μmを超え100μm以下、更に好ましくは0.2~70μm、特に好ましくは0.5~50μmである。
平均粒径が前記範囲にあることで、本組成物の流動性をより高めることで、凹凸部などでの形状制御や、成形体の透磁率を高く維持しながら損失係数を低減することができる。
本明細書における平均粒径は、(株)島津製作所製のSALD2300を用い、分散溶媒としてトルエンを用いて回分セルで超音波分散処理を2分間行った後測定したD50のことをいう。
【0029】
磁性粉末(A)は、表面処理が施された粉末であってもよい。該表面処理とは、粉末表面を改質するための操作をいう。この操作としては、例えば、粉末表面をカップリング剤で処理したり、粉末をプラズマ処理したりすることが挙げられる。このような表面処理により、表面の一部又は全面に官能基を有する磁性粉末(A)を得ることができる。
【0030】
前記官能基は、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等の公知のカップリング剤による表面処理によって形成された残基が挙げられるが、シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤からなる群より選択されるカップリング剤の残基であることが好ましい。
表面の一部又は全面に官能基を有する磁性粉末(A)を用いることで、該磁性粉末(A)と重合体(B)との結合を強固にすることができ、本組成物の流動性をより高めることができる。
【0031】
前述したような表面の一部又は全面に官能基を有する磁性粉末(A)を得る際には、表面処理の一環として、予めプラズマ処理を施し、その後官能基を形成してもよい。例えば、酸素プラズマ処理を施すことにより、粉末の表面にOH基が生じ、これにより、酸素原子を介して、該粉末とカップリング剤の残基との結合が容易になり、より強固に官能基を結合させることができる。
なお、磁性粉末(A)において、粉末とカップリング剤の残基とが酸素原子を介して結合していることは、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計によって確認することができる。
【0032】
また、前述した表面処理の下地には、別のコート処理が施されてもよい。かかるコート処理としては、シリコーン樹脂のような樹脂コートの他、シリカコート等が挙げられる。このようなコート処理が施されることにより、磁性粉末(A)の絶縁性をより高めることができる。このようなコート処理は、必要に応じて施せばよい。このコート処理は、前述した表面処理の下地としてではなく、該コート処理を単独で施してもよい。
【0033】
磁性粉末(A)の体積分率は、本材料を構成する固形分100体積%(例:本組成物中の固形分100体積%;本フィラーにおける磁性粉末(A)と被覆層の合計の固形分100体積%)に対して、好ましくは35~99体積%、より好ましくは40~95体積%である。
磁性粉末(A)の体積分率が前記範囲にあると、磁性粉末(A)の含有率が十分に高くなるため、良好な磁気特性を有する本材料が得られる。
前記磁性粉末(A)の体積分率が前記下限値以上であると、磁性粉末(A)の磁気特性によって、本材料の磁気特性が低下し得ることを抑制できる。一方で、磁性粉末(A)の体積分率が前記上限値以下であると、相対的に重合体(B)の体積分率が低下して、本組成物の流動性が低下したり、本材料を硬化後の機械的特性が低下し得ることを抑制できる。
【0034】
<重合体(B)>
重合体(B)は、下記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位を有する。
本材料に含まれる重合体(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0035】
【化4】
〔式(1-1)~(1-3)中、R1はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基、これら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又は、アミノ基の塩である。nはそれぞれ独立して、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成していてもよい。A1及びA2はそれぞれ独立して、-O-、-S-又は-N(R2)-である[R2は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基又はこれら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基である。]。Xは2価の有機基である。〕
【0036】
1におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0037】
1における炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、1価の鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0038】
前記1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等のアルキニル基が挙げられる。
【0039】
前記1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;ノルボルネニル基等の多環のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0040】
前記1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0041】
1における炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、前記炭素数1~20の1価の炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。
【0042】
また、R1は、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基であってもよく、具体的には、該炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基の一部が-O-、-S-、エステル基やスルホニル基で置換されている基が挙げられる。
【0043】
1におけるアミノ基としては特に制限されず、1級アミノ基(-NH2)でもよく、2級アミノ基(-NHR)でもよく、3級アミノ基(-NR2)でもよい。
1における2級アミノ基及び3級アミノ基における置換基(R)は特に限定されないが、例えば、前記炭素数1~20の1価の炭化水素基が挙げられる。
前記アミノ基の塩におけるアニオン部位を構成するアニオンは特に限定されず、Cl-等の公知のアニオンが挙げられる。
【0044】
1としては、重合反応性よく重合体(B)を合成することができ、重合体(B)の原料となる単量体の溶解性を向上させる観点から、ハロゲン原子、炭素数1~6の1価の炭化水素基、炭素数1~6の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又はアミノ基の塩が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、ニトロ基、シアノ基、tert-ブチル基、フェニル基、1級アミノ基がより好ましい。同様の観点から、nとしては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0045】
前記式(1-1)におけるピリダジン環、前記式(1-2)におけるピリミジン環、前記式(1-3)におけるピラジン環に結合する2つの結合手(A1に結合する結合手及びA2に結合する結合手)の位置は特に限定されないが、重合反応性よく重合体(B)を合成することができる観点からはメタ位が好ましい。
【0046】
前記式(1-1)~(1-3)で表される繰り返し単位の中では、重合反応性よく重合体(B)を合成することができ、各種有機溶媒への溶解性に優れる重合体(B)を容易に得ることができる等の観点から、ピリミジン骨格を有する前記式(1-2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0047】
前記式(1-1)~(1-3)で表される繰り返し単位の原料となる単量体(ピリダジン環、ピリミジン環又はピラジン環を含む部分の原料となる単量体)としては、例えば、4,6-ジクロロピリミジン、4,6-ジブロモピリミジン、2,4-ジクロロピリミジン、2,5-ジクロロピリミジン、2,5-ジブロモピリミジン、5-ブロモ-2-クロロピリミジン、5-ブロモ-2-フルオロピリミジン、5-ブロモ-2-ヨードピリミジン、2-クロロ-5-フルオロピリミジン、2-クロロ-5-ヨードピリミジン、2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン、2,4-ジクロロ-5-ヨードピリミジン、5-クロロ-2,4,6-トリフルオロピリミジン、2,4,6-トリクロロピリミジン、4,5,6-トリクロロピリミジン、2,4,5-トリクロロピリミジン、2,4,5,6-テトラクロロピリミジン、2-フェニル-4,6-ジクロロピリミジン、2-メチルチオ-4,6-ジクロロピリミジン、2-メチルスルホニル-4,6-ジクロロピリミジン、5-メチル-4,6-ジクロロピリミジン、2-アミノ-4,6-ジクロロピリミジン、5-アミノ-4,6-ジクロロピリミジン、2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジン、4-アミノ-2,6-ジクロロピリミジン、5-メトキシ-4,6-ジクロロピリミジン、5-メトキシ-2,4-ジクロロピリミジン、5-フルオロ-2,4-ジクロロピリミジン、5-ブロモ-2,4-ジクロロピリミジン、5-ヨード-2,4-ジクロロピリミジン、2-メチル-4,6-ジクロロピリミジン、6-メチル-2,4-ジクロロピリミジン、5-メチル-2,4-ジクロロピリミジン、5-ニトロ-2,4-ジクロロピリミジン、4-アミノ-2-クロロ-5-フルオロピリミジン、2-メチル-5-アミノ-4,6-ジクロロピリミジン、5-ブロモ-4-クロロ-2-メチルチオピリミジン;3,6-ジクロロピリダジン、3,5-ジクロロピリダジン、4-メチル-3,6-ジクロロピリダジン;2,3-ジクロロピラジン、2,6-ジクロロピラジン、2,5-ジブロモピラジン、2,6-ジブロモピラジン、2-アミノ-3,5-ジブロモピラジン、5,6-ジシアノ-2,3-ジクロロピラジンが挙げられる。なお、これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0048】
前記式(1-1)、(1-2)、(1-3)中のA1及びA2はそれぞれ独立して、-O-、-S-、又は-N(R2)-である。A1及びA2が-O-である場合、柔軟性や溶解性、耐熱性の点で好ましい。A1及びA2が-N(R2)-である場合、密着性等の点で好ましい。
【0049】
2は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基又はこれら炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基である。
2における炭素数1~20の1価の炭化水素基及び炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基としてはそれぞれ、例えば、前記R1で例示した炭素数1~20の1価の炭化水素基及び炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、R2は、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基における一部が酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つで置換された基であってもよく、具体的には、該炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基の水素原子の一部又は全部がエステル基やスルホニル基で置換されている基が挙げられる。
【0050】
2としては、重合反応性よく重合体(B)を合成することができる観点から、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基が好ましい。
なお、A1及びA2が共に、-N(R2)-である場合、2つのR2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
前記Xで表される2価の有機基としては、下記式(2-1)で表される基を含有することが好ましい。
【0052】
【化5】
〔式(2-1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基である。Lは、単結合、-O-、-S-、-N(R8)-、-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-NH-、-S(O)-、-S(O)2-、-P(O)-、又は、2価の有機基である[R8は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、又は、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基である。]。yは、0~5の整数である。yが2以上の場合、複数のLは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R6及びR7はそれぞれ独立して、単結合、メチレン基、又は、炭素数2~4のアルキレン基である。〕
【0053】
Ar1及びAr2で表される芳香族炭化水素基としては、それぞれ独立して、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基のいずれか1種であることがより好ましく、フェニル基又はナフチル基であることが特に好ましい。
【0054】
また、Ar1及びAr2で表される芳香族炭化水素基は、各々1~8個の置換基を有してもよい。Ar1及びAr2で表される芳香族炭化水素基が有する置換基数は、重合反応性よく重合体(B)を合成することができる観点から、それぞれ、好ましくは0~8個より好ましくは0~4個、更に好ましくは0~2個である。
【0055】
置換基としては特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、1~3級アミノ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩、ヒドロキシ基の塩、又は1~3級アミノ基の塩が挙げられる。
【0056】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0057】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、前記R1で表される基として例示した炭素数1~20の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0058】
炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、前記R1で表される基として例示した炭素数1~20の1価のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0059】
炭素数1~20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基が挙げられる。
【0060】
炭素数1~20のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基が挙げられる。
【0061】
2級アミノ基(-NHR)及び3級アミノ基(-NR2)における置換基(R)は特に限定されないが、例えば、前記R1で表される基として例示した炭素数1~20の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0062】
カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩、ヒドロキシ基の塩、及び1~3級アミノ基の塩におけるカチオン部位を構成するカチオンは特に限定されず、Na+等の公知のカチオンが挙げられる。
【0063】
Ar1及びAr2における芳香族炭化水素基の置換基としては、重合反応性よく重合体(B)を合成することができる観点から、ハロゲン原子、炭素数1~3の1価の炭化水素基、炭素数1~3の1価のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のアルキルチオ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、1~3級アミノ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩、ヒドロキシ基の塩、又は1~3級アミノ基の塩が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、メトキシ基、メチルチオ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、1~3級アミノ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩、ヒドロキシ基の塩、又は1~3級アミノ基の塩がより好ましい。
【0064】
Lにおける2価の有機基としては、炭素数1~20の2価の有機基が好ましく、例えば、メチレン基、炭素数2~20のアルキレン基、ハロゲン化メチレン基、炭素数2~20のハロゲン化アルキレン基、2価のカルド構造が挙げられる。
【0065】
Lにおける炭素数2~20のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、sec-ブチレン基、ネオペンチレン基、4-メチル-ペンタン-2,2-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,1-ジイル基が挙げられる。
【0066】
Lにおけるハロゲン化メチレン基としては、例えば、メチレン基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。
【0067】
Lにおける炭素数2~20のハロゲン化アルキレン基としては、例えば、前記炭素数2~20のアルキレン基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。
【0068】
Lにおける2価のカルド構造としては、例えば、フルオレンに由来する2価の基(即ち、フルオレンにおける2つの水素原子を除いた基)、フェノールフタレインに由来する2価の基(即ち、フェノールフタレインにおける2つの水素原子を除いた基)、下記式(L1)で表される基が挙げられる。なお、フルオレンに由来する2価の基、及びフェノールフタレインに由来する2価の基においては、水素原子の一部又は全部が炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基で置換されていてもよく、更には、該置換基を含めた水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0069】
【化6】
〔式(L1)中、Rcは、環員数5~30の2価の脂環式炭化水素基である。〕
【0070】
cで表される環員数5~30の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、環員数5~15の単環の脂環式炭化水素基、環員数5~15の単環のフッ素化脂環式炭化水素基、環員数7~30の多環の脂環式炭化水素基、環員数7~30の多環のフッ素化脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0071】
前記環員数5~15の単環の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタン-1,1-ジイル基、シクロヘキサン-1,1-ジイル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,1-ジイル基、シクロペンテン-3,3-ジイル基、シクロヘキセン-3,3-ジイル基、シクロオクタン-1,1-ジイル基、シクロデカン-1,1-ジイル基、シクロドデカン-1,1-ジイル基、これらの基の水素原子の一部又は全部が炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基で置換された基が挙げられる。
【0072】
前記環員数5~15の単環のフッ素化脂環式炭化水素基としては、例えば、前記環員数5~15の単環の脂環式炭化水素基として例示した基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0073】
前記環員数7~30の多環の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[5.2.1.02,6]ヘプタン、ピナン、カンファン、デカリン、ノルトリシクラン、ペルヒドロアントラセン、ペルヒドロアズレン、シクロペンタノヒドロフェナントレン、ビシクロ[2.2.2]-2-オクテン等の多環の脂環式炭化水素の1つの炭素原子に結合している2つの水素原子を除いた基、これらの基の水素原子の一部又は全部が炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基で置換された基が挙げられる。
【0074】
前記環員数7~30の多環のフッ素化脂環式炭化水素基としては、例えば、前記環員数7~30の多環の脂環式炭化水素基として例示した基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0075】
Lとしては、重合体(B)の構造安定性の観点から、単結合、-O-、-S-、-C(O)-、-S(O)-、-S(O)2-、-C(O)-NH-、-C(O)-O-、メチレン基、炭素数2~5のアルキレン基、ハロゲン化メチレン基、炭素数2~10のハロゲン化アルキレン基、又は2価のカルド構造が好ましい。同様の観点から、yは、0~4が好ましく、0~3がより好ましい。
【0076】
6及びR7における炭素数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基が挙げられる。R6及びR7としてはそれぞれ独立して、重合反応性よく重合体(B)を合成することができる観点から、単結合、メチレン基、又はエチレン基が好ましい。
【0077】
前記式(1-1)~(1-3)で表される繰り返し単位の原料となる単量体(Xを含む部分の原料となる単量体)としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、フェニルヒドロキノン等のジヒドロキシフェニル化合物;9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ビスフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-デカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン等のビスフェノール化合物が挙げられる。なお、これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0078】
重合体(B)は、通常、前記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位以外に、必要に応じてその他の構造単位や、末端構造を有していてもよい。従って、前記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位は、該繰り返し単位同士が結合するか、前記その他の構造単位や末端構造と結合する。
【0079】
前記他の構造単位を誘導する単量体としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジフェニルチオカーボネート、ジフェニルセレノカーボネート、ホスゲン、チオホスゲン、セレノホスゲン等のカーボネート結合、チオカーボネート結合又はセレノカーボネート結合を含む構造単位を誘導する化合物;ベンゼンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール等のジヒドロキシ化合物;ビス(フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(フルオロフェニル)ナフチルホスフィンオキシド、ビス(フルオロフェニル)アントリルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド化合物;フタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリド、テレフタル酸ジクロリド等のジカルボン酸のジハロゲン化物が挙げられる。なお、これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0080】
前記末端構造としては、前記式(1-1)~(1-3)で表される繰り返し単位の原料となる単量体由来の構造、前記他の構造単位を誘導する単量体由来の構造、又は、所望の末端封止剤由来の構造が挙げられる。
【0081】
重合体(B)中の前記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される繰り返し単位の含有割合は、重合体(B)中の全繰り返し単位の合計100モル%に対し、好ましくは1~95モル%、より好ましくは5~80モル%である。
【0082】
重合体(B)の合成方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、前記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される繰り返し単位の原料となる単量体と、必要に応じて、前記他の構造単位を誘導する単量体や末端封止剤とを、有機溶媒中、アルカリ金属やアルカリ金属化合物等と共に加熱することで合成することができる。
【0083】
重合体(B)の重量平均分子量(Mw)の下限は、好ましくは500、より好ましくは1,000、更に好ましくは2,000、特に好ましくは3,000である。該Mwの上限は、好ましくは600,000、より好ましくは300,000、更に好ましくは200,000である。
【0084】
重合体(B)のガラス転移温度(Tg)の下限は、好ましくは70℃、より好ましくは80℃であり、上限は、加工性の点から、好ましくは320℃、より好ましくは300℃である。
【0085】
これら重合体(B)としては、例えば、特開2015-209511号公報、国際公開第2016/143447号、特開2017-197725号公報、特開2018-024827号公報等に記載の重合体を例示できる。
【0086】
重合体(B)の含有割合は、本材料を構成する固形分100質量%(例:本組成物中の固形分100質量%;本フィラーにおける磁性粉末(A)と被覆層の合計の固形分100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
重合体(B)の含有割合が前記範囲にあると、特に周波数1MHzから1GHzの範囲における透磁率が高く、損失係数が小さく、かつ絶縁性の信頼性に優れる絶縁層を容易に形成することができる。
【0087】
<硬化性化合物(C)>
硬化性化合物(C)(以下「化合物(C)」ともいう。)は、熱や光(例えば、可視光、紫外線、近赤外線、遠赤外線、電子線)の照射により硬化する化合物であり、後述する硬化助剤(D)を必要とするものであってもよい。このような化合物(C)としては、例えば、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、アリル化合物、アクリル化合物、メタクリル化合物、ウレタン化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物、及びプロパルギル化合物が挙げられる。これらの中でも、重合体(B)との相容性、耐熱性等の特性上の点から、特に、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、アリル化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物、及びプロパルギル化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
化合物(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0088】
前記エポキシ化合物としては、例えば、下記式(c1-1)~(c1-6)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(c1-6)で表される化合物は、JSR(株)製のエポキシ基含有NBR粒子「XER-81」である。
前記エポキシ化合物としては更に、ジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型液状エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、スチレン-ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等も挙げられる。
【0089】
【化7】
[式(c1-5)中、nは0~5000であり、mは独立して、0~5000である。]
【0090】
前記シアネートエステル化合物としては、例えば、下記式(c2-1)~(c2-7)で表される化合物が挙げられる。
【0091】
【化8】
[式(c2-6)及び(c2-7)中、nは独立して、0~30である。]
【0092】
前記ビニル化合物としては、例えば、下記式(c3-1)~(c3-5)で表される化合物が挙げられる。
【0093】
【化9】
[式(c3-4)中、nは1~5000である。]
【0094】
前記シリコーン化合物としては、例えば、下記式(c4-1)~(c4-16)で表される化合物が挙げられる。なお、式(c4-1)におけるRとしては、下記のいずれかが選択され、アクリロイル基を有する基が選択される場合には、前記アクリル化合物として取り扱うこともでき、メタクリロイル基を有する基が選択される場合には、前記メタクリル化合物として取り扱うこともでき、オキセタン基を有する基が選択される場合には、前記オキセタン化合物として取り扱うこともできる。また、式(c4-2)~(c4-16)において、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、脂環式飽和炭化水素基、アリール基、及びアルケニル基から選ばれる有機基であり、nは0~1000の整数(好ましくは0~100の整数)である。前記アルキル基、前記脂環式飽和炭化水素基、前記アリール基、及び前記アルケニル基としては、それぞれ、前記式(1)のR1の説明において例示した基と同様の基等を挙げることができる。
【0095】
【化10】
【0096】
前記オキサジン化合物としては、例えば、下記式(c5-1)~(c5-5)で表される化合物が挙げられる。
【0097】
【化11】
【0098】
前記マレイミド化合物としては、例えば、下記式(c6-1)~(c6-5)で表される化合物が挙げられる。
【0099】
【化12】
[式(c6-2)中、Etはエチル基であり、式(c6-3)中、nは0~30である。]
【0100】
前記アリル化合物としては、例えば、下記式(c7-1)~(c7-6)で表される化合物が挙げられる。特に、このアリル化合物としては、2つ以上(特に2~6、更には2~3)のアリル基を有する化合物が好ましい。
【0101】
【化13】
【0102】
前記オキセタン化合物としては、例えば、下記式(c8-1)~(c8-3)で表される化合物が挙げられる。
【0103】
【化14】
[式(c8-1)及び(c8-2)中、括弧で括った繰り返し単位の繰り返し単位数はそれぞれ独立に、0~30である。]
【0104】
前記メチロール化合物としては、例えば、特開2006-178059号公報及び特開2012-226297号公報に記載のメチロール化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のメラミン系メチロール化合物;ポリメチロール化グリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等のグリコールウリル系メチロール化合物;3,9-ビス[2-(3,5-ジアミノ-2,4,6-トリアザフェニル)エチル]-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス[2-(3,5-ジアミノ-2,4,6-トリアザフェニル)プロピル]-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン等のグアナミンをメチロール化した化合物、及び当該化合物中の活性メチロール基の全部又は一部をアルキルエーテル化した化合物等のグアナミン系メチロール化合物が挙げられる。
【0105】
前記プロパギル化合物としては、例えば、下記式(c9-1)~(c9-2)で表される化合物が挙げられる。
【0106】
【化15】
【0107】
化合物(C)の含有割合は、本材料を構成する固形分100質量%(例:本組成物中の固形分100質量%;本フィラーにおける磁性粉末(A)と被覆層の合計の固形分100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
化合物(C)の含有割合が前記範囲にあると、本材料の硬化物の靱性、耐熱性、耐薬品性をより向上させることができる等の点から好ましい。
【0108】
また、化合物(C)及び重合体(B)の合計を100質量%とした場合に、化合物(C)の含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
化合物(C)の含有割合が前記範囲にあると、本材料の硬化物の靱性、耐熱性、耐薬品性をより向上させることができる等の点から好ましい。
【0109】
<硬化助剤(D)>
硬化助剤(D)としては、例えば、硬化剤、熱反応開始剤(熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤)、光反応開始剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤)等の重合開始剤が挙げられる。
硬化助剤(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0110】
化合物(C)としてエポキシ化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、アミン系硬化剤、酸系又は酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、イミダゾール類、ポリメルカプタン系硬化剤、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート系硬化剤、ルイス酸等の硬化剤が挙げられる。
【0111】
前記アミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6-トリスアミノメチルヘキサン等のポリアミン;メンセンジアミン(MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、三井化学(株)製のNBDAに代表されるノルボルナン骨格のジアミン等の環状脂肪族ポリアミン;メタキシリレンジアミン(MXDA)等の芳香環を含む脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0112】
更に、他のアミン系硬化剤として、例えば、ポリアミンにアルデヒド及び/又はフェノール類を反応させることにより得られるマンニッヒ変性アミン;アミンアダクト(ポリアミンエポキシ樹脂アダクト)、ポリアミン-エチレンオキシドアダクト、ポリアミン-プロピレンオキシドアダクト、シアノエチル化ポリアミン、脂肪族ポリアミンとケトンとの反応物であるケチミン;テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン、ピコリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルアミノフェノール、ジメチルアミノ-p-クレゾール、N,N’-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等の第二級アミン類又は第三級アミン類;ダイマー酸と、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンとを反応させてなる液体ポリアミドが挙げられる。
【0113】
前記酸系又は酸無水物系硬化剤としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等のポリカルボン酸;無水フタル酸、無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等の芳香族酸無水物;無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、アルケニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水メチルハイミック酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物等の環状脂肪族酸無水物;ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物等の脂肪族酸無水物;クロレンド酸無水物、テトラブロモ無水フタル酸等のハロゲン化酸無水物等が挙げられる。
【0114】
前記塩基性活性水素化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジドが挙げられる。
【0115】
前記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリン-(1)]-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-エチル-4-メチルイミダゾリン-(1)]-エチル-S-トリアジンが挙げられる。
【0116】
前記ポリメルカプタン系硬化剤としては、例えば、2,2’-ビスメルカプトエチルエーテルの部分エポキシ付加物;ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート等のチオグリコール酸のエステル;末端にメルカプト基を有するポリスルフィドゴム等のメルカプト基を含む化合物が挙げられる。
【0117】
前記イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;イソシアネート基を、フェノール、アルコール、カプロラクタム等のブロック化剤と反応させてマスクしてなるブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
【0118】
前記ルイス酸としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が挙げられる。
【0119】
また、化合物(C)としてエポキシ化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物、ジスルホニルメタン化合物、オキシムスルホネート化合物、ヒドラジンスルホネート化合物、トリアジン化合物、ニトロベンジル化合物のほか、有機ハロゲン化物類、ジスルホン等の光酸発生剤を用いることもできる。
【0120】
更に、化合物(C)としてエポキシ化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、(Z)-{[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}-N-シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)メタンイミニウム=テトラキス(3-フルオロフェニル)ボレート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=n-ブチルトリフェニルボレート、9-アントリルメチル=N,N-ジエチルカルバメート、(E)-1-[3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペノイル]ピペリジン、1-(アントラキノン-2-イル)エチル=イミダゾールカルボキシレート、2-ニトロフェニルメチル-4-メタクリロイルオキシピペリジン-1-カルボキシレート、1,2-ジイソプロピル-3-〔ビス(ジメチルアミノ)メチレン〕グアニジウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート等の光塩基発生剤等を用いることもできる。
【0121】
化合物(C)としてシアネートエステル化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等の有機金属塩類、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール化合物、1-ブタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール類、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらのイミダゾール類のカルボン酸若しくは酸無水物類の付加体等の誘導体、ベンジルジメチルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン類、ホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物等のリン化合物を用いることができる。
更には、前記エポキシ化合物を用いる場合における硬化助剤(D)として説明した、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることもできる。
【0122】
化合物(C)としてビニル化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、カチオン又はラジカル活性種を、熱又は光により発生する化合物(重合剤)等が挙げられる。カチオン重合剤としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が挙げられる。ラジカル重合剤としては、例えば、ベンゾインアセトフェノン等のベンゾイン系化合物、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物、2,4-ジエチルチオキサントン等の硫黄系化合物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0123】
また、化合物(C)としてビニル化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-クロロ-4’-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントン、3,9-ジクロロキサントン、3-クロロ-8-ノニルキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントン等の光ラジカル発生剤を用いることもできる。
【0124】
化合物(C)としてシリコーン化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒;ロジウム系触媒;などの白金族金属触媒、安息香酸亜鉛、オクチル酸亜鉛を用いることができる。
【0125】
また、化合物(C)としてシリコーン化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、4-クロロ-4’-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントン、3,9-ジクロロキサントン、3-クロロ-8-ノニルキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントン、ジエチルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-{4-(メチルチオ)フェニル}-2-モルホリノ-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1-オン、1-{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル}-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、シクロヘキシルフェニルケトン等の光反応開始剤を用いることもできる。
【0126】
化合物(C)としてオキサジン化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、フェノール及びその誘導体、シアン酸エステル、p-トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸、アジピン酸、p-トルエンスルホン酸エステル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、メラミン等の芳香族アミン化合物、2-エチル-4-メチルイミダゾール等の塩基、三フッ化ホウ素、ルイス酸等の硬化剤を用いることができる。
更には、前記エポキシ化合物を用いる場合における硬化助剤(D)として説明した、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることもできる。
【0127】
化合物(C)としてマレイミド化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,4-ジメチルピペラジン、キノリン、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、DBU等の塩基、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、アゾビスイソブチロニトリル等の硬化剤を用いることができる。
更には、前記エポキシ化合物を用いる場合における硬化助剤(D)として説明した、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることもできる。
【0128】
化合物(C)としてアリル化合物やプロパルギル化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ開始剤、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の過酸化物、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1,1’-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイド等のリン系、チオキサントン等の硫黄系、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン等のベンジル系、パーオキシカーボネート系等の硬化剤を用いることができる。
更には、前記エポキシ化合物を用いる場合における硬化助剤(D)として説明した、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることもできる。
【0129】
化合物(C)としてオキセタン化合物やメチロール化合物を用いる場合における硬化助剤(D)としては、例えば、光又は熱カチオン発生剤を用いることができる。
【0130】
光カチオン発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。
前記オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物及びジアゾメタン化合物の具体例としては、例えば、特開2014-186300号公報の段落[0074]~[0079]に記載された化合物が挙げられる。
【0131】
ハロゲン含有化合物について具体例を挙げると、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の具体例としては、1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン;フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス-(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のs-トリアジン誘導体が挙げられる。
【0132】
前記熱カチオン発生剤としては、例えば、ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)(メチル)スルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4-ヒドロキシフェニル)(ジメチル)スルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-アセトキシフェニル(ジメチル)スルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4-ヒドロキシフェニル)メチル(4-メチルベンジル)スルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)(メチル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0133】
硬化助剤(D)を含有する場合、該硬化助剤(D)の含有割合は、本材料、具体的には本組成物又は被覆層が良好に硬化して、硬化物が得られる範囲であることが好ましい。硬化助剤(D)の含有割合は、具体的には、重合体(B)及び化合物(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0134】
<他の成分>
本材料、具体的には、本組成物又は被覆層は、更に、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有していてもよい。
該他の成分としては、例えば、酸化防止剤、強化剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、離型剤、発泡剤、重合体(B)以外の他の重合体(例:エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアリーレン等の低誘電率かつ低誘電正接の特性を有する公知の重合体)が挙げられる。
これらの他の成分はそれぞれ、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0135】
なお、本材料は、前記重合体(B)を有するため、難燃性に優れる。このため、環境負荷の低い本材料を得るためには、前記難燃剤を含まないことが好ましい。
【0136】
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物、金属系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
【0137】
ヒンダードフェノール系化合物としては、分子量500以上の化合物が好ましい。分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-3,5-トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3-トリス[2-メチル-4-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-5-t-ブチルフェニル]ブタン、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0138】
本材料、具体的には、本組成物又は被覆層が酸化防止剤を含有する場合、該酸化防止剤の含有割合は、例えば、重合体(B)及び化合物(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下である。
【0139】
1-1.本フィラー
前述の通り、本材料の好適な一実施形態は、前記磁性粉末(A)と、該磁性粉末(A)を被覆する、前記重合体(B)を含む被覆層とを有する磁性フィラー(本フィラー)である。
該被覆層は、前記重合体(B)の他に、前記化合物(C)、硬化助剤(D)及び他の成分を含有していてもよい。
【0140】
本フィラーにおける磁性粉末(A)と被覆層との質量比(磁性粉末(A)の質量/被覆層の質量)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは75以下、更に好ましくは50以下である。
磁性粉末(A)と被覆層との質量比が前記範囲にあることで、被覆層と磁性粉末(A)とが剥離しにくいフィラーを容易に得ることができる。
なお、前記質量比における磁性粉末(A)の質量は、磁性フィラーを製造する際の磁性粉末(A)の仕込み量を表し、被覆層の質量は、磁性フィラーを製造する際の、被覆層を形成する重合体(B)、化合物(C)及び硬化助剤(D)の合計仕込み量を表す。
【0141】
本フィラーの被覆層は、Bステージ樹脂層の状態であることが好ましい。Bステージ樹脂層の状態であることで、本フィラー同士の接着性が優れ(加工成形時に加熱プレス等により接着性を発現する)、該本フィラーから磁性部材(例:磁性シート)などの成形体を形成する際に靭性のある部材(例:シート)を容易に形成することができる。
なお、本明細書において、「Bステージ樹脂層」とは、樹脂が半硬化した状態の層のことをいう。樹脂層が、Bステージ樹脂層であるか否かは、DSC(示差走査熱熱量計)を用い、樹脂層(本フィラー)の発熱量を測定することで確認することができる。具体的には、該発熱量が5J/g以上である場合、樹脂層(被覆層)は、Bステージ樹脂層の状態であるといえる。
【0142】
前記被覆層(Bステージ樹脂層の状態の被覆層)の厚さとしては、被覆層と磁性粉末(A)とが剥離しにくいフィラーを容易に得ることができる観点から、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.015μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
被覆層の厚さが前記範囲にあると、絶縁性を確保しつつ、膜厚の均一性を保つことができる。
該被覆層の厚さは、例えば、SEMにて本フィラーの断面を観察することにより測定することができる。また、TGA測定による熱重量減少率を用いて被覆層形成用材料の使用量を測定して、平均膜厚を算出することもできる。
【0143】
本フィラーの、周波数1MHzから1GHzの範囲における比透磁率(μ’)は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。
比透磁率が前記範囲にあると、インダクタンス値を上げやすく、薄膜や小型のインダクタを製造しやすい。
また、本フィラーの、周波数1MHzから1GHzの範囲における損失係数tanδ(比透磁率μ’に対する透磁損失μ’’の比(μ’’/μ’))は、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である。
損失係数が前記範囲にあると、鉄損が生じることを抑制でき、発熱を抑制しやすい。
比透磁率(μ’)及び透磁損失(μ’’)は、具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
なお、前記比透磁率及び損失係数は、被覆層が完全硬化した状態(Cステージ樹脂層の状態)である場合の特性である。
【0144】
本フィラーは、磁性粉末(A)表面に、重合体(B)を含む被膜層を形成することができれば特に制限されない。
このような被覆層を構成する方法としては、例えば、容器内で磁性粉末(A)を攪拌しながら被覆層形成用材料をスプレーで吹付けてコーティングし、必要により乾燥する方法、磁性粉末(A)と被覆層形成用材料とを含む混合液をスプレーで噴霧して乾燥させる方法、磁性粉末(A)と被覆層形成用材料とを含む混合液を濾過して粉体を回収し、必要により乾燥する方法、磁性粉末(A)と被覆層形成用材料とを含む混合液を超臨界流体存在下で攪拌し、必要により乾燥する方法が挙げられる。
これらの方法により得られる本フィラーは、溶剤を乾燥させた状態で凝集なく回収することが好ましい。
【0145】
前記被覆層形成用材料は、前記重合体(B)を含めば特に制限されないが、前記化合物(C)、硬化助剤(D)及び他の成分を含有していてもよく、更に分散媒や溶剤を含有していてもよい。該溶剤としては、例えば、下記本組成物の欄に記載の溶剤(E)が挙げられる。
【0146】
1-2.本組成物
前述の通り、本材料の好適な一実施形態は、前記磁性粉末(A)と重合体(B)とを含有する磁性組成物(本組成物)である。
本組成物は、前記重合体(B)を含む被覆層で被覆されていない磁性粉末(A)と重合体(B)とを含む組成物であってもよいが、本フィラーを含む組成物であることが好ましい。
本組成物の形態は特に制限されず、例えば、液状、ペースト状が挙げられる。
【0147】
本組成物は、前記磁性粉末(A)及び重合体(B)の他に、前記化合物(C)、硬化助剤(D)及び他の成分を含有していてもよい。更に、本組成物は、溶剤(E)を含有していてもよい。
また、前記重合体(B)は溶解性に優れるため、液状の化合物(C)に重合体(B)を溶解させることで、無溶剤系の組成物とすることもできる。
【0148】
・溶剤(E)
本組成物は、必要に応じて溶剤を含有していてもよい。前記溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤;γ-ブチロラクトン、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ベンゾフェノン等のケトン系溶剤、1,2-メトキシエタン、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多官能性溶剤;スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等のスルホン系溶剤;塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数;1~4)、トリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数;1~4)が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0149】
本組成物中の前記溶剤(E)の含有割合は特に限定されないが、例えば、重合体(B)及び化合物(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0質量部以上2000質量部以下、より好ましくは0質量部以上200質量部以下である。また、溶剤(E)に対し、重合体(B)や化合物(C)の溶解性が高い場合には、本組成物中の前記溶剤(E)の含有割合は、50質量部以上100,000質量部以下としてもよい。
【0150】
本組成物の調製方法は特に限定されないが、例えば、磁性粉体(A)、重合体(B)、及び、必要に応じて他の添加剤(例えば、化合物(C)、硬化助剤(D)、溶剤(E)、前記他の成分)を均一に混合することによって調製することができる。
【0151】
2.磁性部材
本発明の一実施形態に係る磁性部材は、本材料から形成される。
該磁性部材としては、磁性シート、コア、トロイダルコア、巻き線コイルを内部に有する(巻き線コイルを内部に埋め込んだ)部材(磁性層)、空芯コイルの内部に充填される部材(磁性コア)、コイルを封止する外装材などを例示することができる。コア形状は、求められる用途や特性により適宜選択すればよい。また、磁性部材は、基板や素子を構成する絶縁層としても用いることができる。
【0152】
<磁性シート>
磁性シートは、例えば、離型処理をした金型に、本フィラー、好ましくはBステージ樹脂層を有する本フィラーを充填し、金型プレスをすることで作製することができる。
また、磁性シートは、本組成物を、溶融成形法、溶剤キャスト法等の公知の成形方法により、成形することで作製することもできる。
磁性シートは、支持体上に形成することで、支持体と磁性シートとの積層体(支持体付き磁性シート)として得ることもできる。
なお、本明細書において、シート、フィルム、膜等に特に区別はない。
【0153】
磁性シートの厚さは、該シートを用いる対象の薄型化の観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、特に好ましくは40μm以下である。磁性シートの厚さの下限は特に限定されないが、通常、5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。
【0154】
前記支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0155】
前記プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドが挙げられる。中でも、PET、PENが好ましく、安価なPETが特に好ましい。
【0156】
前記金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例:スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0157】
支持体は、磁性シートと接合する面にマット処理、コロナ処理等の表面処理を施した支持体であってもよい。
【0158】
支持体の厚みとしては特に限定されないが、好ましくは5~75μm、より好ましくは10~60μmである。
なお、前記支持体としては、離型層付き支持体であってもよく、該離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが前記範囲にあることが好ましい。
【0159】
支持体付き磁性シートにおいて、磁性シートの支持体と接合していない面(即ち、磁性シートの支持体とは反対側の面)には、磁性シートのゴミ等の付着やキズを抑制することができる等の点から、支持体に準じた保護フィルムを更に積層してもよい。支持体付き樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって所望の用途に使用することができる。
該保護フィルムの厚さは特に限定されないが、例えば、1~40μmである。
磁性シート、支持体付き磁性シート、及び、保護フィルムを有する支持体付き磁性シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0160】
3.コイル
本発明の一実施形態に係るコイルは、前記磁性部材を含む。
前記磁性部材を含むコイルの態様としては、例えば、コイルのコアとして、前記磁性部材からなるコアを用いる態様、空芯コイルの内部に充填される部材として前記磁性部材を用いる態様、コイル全体を前記磁性部材(磁性層)中に埋め込んだ態様が挙げられる。また、該コイルを封止する外装材として、前記磁性部材を用いてもよい。
コイルの形状としては特に制限されず、インダクタに用いられる公知の構造が好適に挙げられる。例えば、特開2019-212664号公報に記載のコイルが挙げられる。
【0161】
4.インダクタ配線板
本発明の一実施形態に係るインダクタ配線板は、インダクタ素子を含み、前記磁性部材又はコイルを含めば特に制限されず、公知の構造とすることができる。
インダクタ配線板に含まれる前記磁性部材としては、例えば、(配線を有する)磁性層が挙げられる。
【0162】
前記インダクタ配線板は、公知の方法によって製造することができる。該方法の好適例としては、例えば、国際公開第2018/194099号に記載の方法が挙げられる。
【0163】
前記インダクタ配線板が備えるインダクタ素子が機能し得る周波数は、例えば、1MHz~1GHzが挙げられる。また、前記インダクタ配線板が備えるインダクタ素子は電源系が想定される。
【0164】
前記インダクタ配線板は、半導体チップ等の電子部品を搭載するための配線板として用いることができ、該配線板を内層基板として使用した(多層)プリント配線板として用いることもできる。また、該配線板を個片化したチップインダクタ部品として用いることもでき、該チップインダクタ部品を表面実装したプリント配線板として用いることもできる。
【0165】
また、プリント配線板がキャビティを有する場合、キャビティ内に前記インダクタ配線板を内蔵させた、インダクタ配線板内蔵プリント配線板としてもよい。該配線板の詳細は、特開2012-186440号公報の記載を参酌することができる。
【0166】
また、前記インダクタ配線板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。該半導体装置としては、電気製品(例:コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ)及び乗物(例:自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機)等に好適に用いることができる。
【実施例
【0167】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」は、特に断らない限り質量基準である。
【0168】
<合成例1>
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BisTMC)(18.6g、60.0mmol)、4,6-ジクロロピリミジン(Pym)(8.9g、60.0mmol)、及び炭酸カリウム(11.1g、81.0mmol)を量り入れ、N-メチル-2-ピロリドン(64g)を加え、窒素雰囲気下、130℃で6時間反応させた。反応終了後、N-メチル-2-ピロリドン(368g)を加えて、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(9.1kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P-1)で表される構造単位を有する重合体P-1を得た(収量;20.5g、収率;90%、重量平均分子量(Mw);32,000、ガラス転移温度(Tg);206℃)。
【0169】
【化16】
【0170】
なお、ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル(株)製、「DMS7100」)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/分で測定し、損失正接が極大となる温度とした。損失正接は、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った値とした。
【0171】
また、重量平均分子量(Mw)は、GPC装置(東ソー(株)製の「HLC-8320型」)を使用し、下記条件で測定した。
カラム:東ソー(株)製の「TSKgel α-M」と、東ソー(株)製の「TSKgel guardcоlumn α」とを連結したもの
展開溶媒:N-メチル-2-ピロリドン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:0.75質量%
試料注入量:50μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0172】
<合成例2>
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BisTMC)(10.7g、34.5mmol)、3,6-ジクロロピリダジン(Pyd)(5.1g、34.2mmol)、及び炭酸カリウム(6.5g、47.0mmol)を量り入れ、N-メチル-2-ピロリドン(36g)を加え、窒素雰囲気下、145℃で9時間反応させた。反応終了後、N-メチル-2-ピロリドン(150g)を加えて希釈し、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(3kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、合成例1と同じ条件で乾燥し、下記式(P-2)で表される構造単位を有する重合体P-2を得た(収量7.6g、収率48%、重量平均分子量(Mw);30,000、ガラス転移温度(Tg);232℃)。なお、重量平均分子量及びガラス転移温度は合成例1と同様に測定した。
【0173】
【化17】
【0174】
<合成例3>
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BisTMC)(18.6g、60.0mmol)、4,6-ジクロロ-2-フェニルピリミジン(PhPym)(13.7g、61.1mmol)、及び炭酸カリウム(11.4g、82.5mmol)を量り入れ、N-メチル-2-ピロリドン(75g)を加え、窒素雰囲気下、130℃で6時間反応させた。反応終了後、N-メチル-2-ピロリドン(368g)を加えて希釈し、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(9.1kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、合成例1と同じ条件で乾燥し、下記式(P-3)で表される構造単位を有する重合体P-3を得た(収量20.5g、収率90%、重量平均分子量(Mw);187,000、ガラス転移温度(Tg);223℃)。なお、重量平均分子量及びガラス転移温度は合成例1と同様に測定した。
【0175】
【化18】
【0176】
<合成例4>
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BisTMC)(12.4g、40.0mmol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(BisA)(2.3g、10.0mmol)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-デカン(BisP-DED)(3.3g、10.0mmol)、4,6-ジクロロ-2-フェニルピリミジン(PhPym)(13.7g、61.1mmol)、及び炭酸カリウム(11.4g、82.5mmol)を量り入れ、N-メチル-2-ピロリドン(75g)を加え、窒素雰囲気下、130℃で6時間反応させた。反応終了後、N-メチル-2-ピロリドン(368g)を加えて希釈し、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(9.1kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、合成例1と同じ条件で乾燥し、下記式(P-4)で表される構造単位を有する重合体P-4を得た(収量23.5g、収率87%、重量平均分子量(Mw);165,000、ガラス転移温度(Tg);196℃)。なお、重量平均分子量及びガラス転移温度は合成例1と同様に測定した。
【0177】
【化19】
【0178】
<合成例5>
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BisTMC)(12.4g、40.0mmol)、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ビスフェノール(BisP-MIBK)(2.7g、10.0mmol)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-デカン(BisP-DED)(3.3g、10.0mmol)、4,6-ジクロロ-2-フェニルピリミジン(PhPym)(13.7g、61.1mmol)、及び炭酸カリウム(11.4g、82.5mmol)を量り入れ、N-メチル-2-ピロリドン(75g)を加え、窒素雰囲気下、130℃で6時間反応させた。反応終了後、N-メチル-2-ピロリドン(368g)を加えて希釈し、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(9.1kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、合成例1と同じ条件で乾燥し、下記式(P-5)で表される構造単位を有する重合体P-5を得た(収量23.8g、収率88%、重量平均分子量(Mw);157,000、ガラス転移温度(Tg);190℃)。なお、重量平均分子量及びガラス転移温度は合成例1と同様に測定した。
【0179】
【化20】
【0180】
[実施例1]
コア粒子として磁性粉末(エプソンアトミックス(株)製、製品名「AW2-08PF8F」、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径;5μm、比重;7.0g/cm3)945部、重合体P-1 50部、硬化性化合物として2,2’-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン(東京化成工業(株)製)50部、硬化助剤として1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(三菱化学(株)製、製品名「BMI 12」)5部、及び、シクロペンタノン(東京化成工業(株)製)160部を、ペイントシェーカーで混合してスラリー液を得た。アドバンテック東洋(株)製のNo5C濾紙を用いた吸引濾過により、得られたスラリー液から溶剤を除去した後、回収した粒子を40℃の真空乾燥機で12時間乾燥することで、絶縁膜被覆磁性フィラーを得た。
【0181】
[実施例2]
重合体P-1 35部、硬化性化合物としてSR-16H(阪本薬品工業(株)製、エポキシ当量;160g/eq)65部、硬化助剤として1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(BMI 12)2.5部、及び、メチルエチルケトン(東京化成工業(株)製)922.5部を混合してスプレー吹付け液を得た。
磁性粉末(エプソンアトミックス(株)製、製品名「AW2-08PF3F」、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径;3μm、比重;7.0g/cm3)1947.5部を、スリーワンモーターを用いてスパイラル型攪拌羽根で攪拌しながら、そこに、得られたスプレー吹付け液を高粘度液体微粒化スプレーノズル(噴霧液量:1mL/min、エア量:10L/min)を用いてスプレー吹付けを行いながら60℃で送風乾燥することで、絶縁膜被覆磁性フィラーを得た。
【0182】
[実施例3]
コア粒子として磁性粉末(AW2-08PF8F)595部、重合体P-1 80部、硬化性化合物としてHP-4032D(DIC(株)製、エポキシ当量;141meq/g)20部、硬化助剤として1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(BMI 12)5部、及び、メチルエチルケトン(東京化成工業(株)製)420部を、高圧釜を用い、CO2を流入させ、圧力30MPa、40℃で2時間攪拌した。攪拌後、40℃のまま脱CO2を行い、更に乾燥のために脱圧後もCO2をフローして内容物を乾燥させた後、40℃で12時間真空乾燥を行うことで、絶縁膜被覆磁性フィラーを得た。
【0183】
[実施例4~8]
実施例1において、スラリー液の原料を表1に記載の原料に変更した以外は実施例1と同様にして、絶縁膜被覆磁性フィラーを得た。
【0184】
[比較例1]
コア粒子として磁性粉末(AW2-08PF3F)1947.5部、ノボラック樹脂(群栄化学工業(株)製、製品名「レジトップPSM-4261」)65部、硬化性化合物としてo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本製鉄(株)製、製品名「YDCN-704」)34部、硬化助剤としてトリフェニルホスフィン(東京化成工業(株)製)1部を、溶媒を加えずに二本ロールで80℃に加温しながら混錬することで、磁性フィラーを得た。
【0185】
[比較例2]
実施例1において、スラリー液の原料を表1に記載の原料に変更し、40℃で12時間乾燥しなかった以外は実施例1と同様にして、絶縁膜被覆磁性フィラーを得た。
【0186】
<Bステージ特性>
実施例及び比較例で得られた磁性フィラーのBステージ特性として、平均粒径、算出膜厚及び発熱量を測定した。結果を表1に示す。なお、Bステージ特性とは、磁性フィラーにおける絶縁膜が半硬化した状態のことをいう。
【0187】
〔平均粒径〕
表1に記載の平均粒径は、用いた磁性粉末の平均粒径である。該平均粒径は、前述の方法で測定した値である。
【0188】
〔算出膜厚〕
実施例及び比較例で得られた磁性フィラーにおける被覆層の膜厚の理論値を、用いた磁性粉末の平均粒径、用いた磁性粉末の比重、及び、用いた重合体の比重から算出した(算出膜厚)。この際、磁性粉末の比重を7.0g/cm3、重合体の比重を1.2g/cm3として計算した。
【0189】
〔発熱量〕
実施例及び比較例で得られた磁性フィラーを、DSC(示差走査熱熱量計)を用いて、150℃から300℃まで、10℃/分の昇温速度で昇温し、磁性フィラーの発熱量を測定した。
この発熱量が5J/g以下の磁性フィラーは、該フィラーを用いて下記Cステージ特性のようにプレスにより成形体を形成した場合、プレス後のフィラー同士の接着性が劣る結果となる。このため、この発熱量が5J/g以下の磁性フィラーは、不良であると判断した。
【0190】
<Cステージ特性>
実施例及び比較例で得られた磁性フィラーのCステージ特性として、分散性、比透磁率、損失係数、抵抗値、埋込外観及び信頼性を測定した。結果を表1に示す。なお、ここで、Cステージ特性とは、磁性フィラーにおける絶縁膜が完全硬化した状態のことをいう。
【0191】
・トロイダルコアの作製
離型処理したSKS3の合金工具鋼製の金型を用いて、外径18mm、内径11mm、高さ(厚み)7mm程度のトロイダルコアが得られるように、実施例及び比較例で得られた磁性フィラーを金型に充填した。充填後に、26トン油圧式成形機((有)東邦プレス工業所製)を用い、金型を180℃に加熱しながら35MPaで90分間プレス処理を行うことで、トロイダルコアを作製した。
【0192】
〔平均遮蔽距離(分散性)〕
作製したトロイダルコアのSEM観察を行った。得られたSEM画像1枚につき、任意の箇所における、粒子間に存在する樹脂層の長さ(遮蔽距離)を100点測定し、同様に測定した100枚のSEM画像における遮蔽距離を算術平均することにより、平均遮蔽距離を算出した。
この平均遮蔽距離が、絶縁膜被覆磁性フィラーを構成する絶縁膜の膜厚より長く、該絶縁膜の膜厚の2倍よりも短い場合、磁性粒子の分散性が良好であるといえる。平均遮蔽距離が前記下限以上であると、絶縁性を担保しやすい。また、平均遮蔽距離が前記上限以下であると良好な透磁率や損失係数を確保しやすい。一方、磁性フィラー同士が連続的に繋がってしまい、個々が絶縁されていない場合、測定できないため表中には不良と記載した。
【0193】
〔比透磁率及び損失係数〕
作製したトロイダルコアを用いて、キーサイト・テクノロジーズ・インク製のインピーダンスアナライザ「E4991B」、及び、キーサイト・テクノロジーズ・インク製の磁性材料テストフィクスチャ「16454A」を用いて、測定周波数を1MHzから1GHzの範囲とし、室温23℃にて比透磁率(μ’)及び透磁損失(μ’’)を測定し、損失係数(tanδ)を下記式より算出した。
tanδ=μ’’/μ’
測定周波数が、1MHz、20MHz又は100MHzである場合の比透磁率及び損失係数を表1に示す。比透磁率が2以上である場合を良好と判断でき、損失係数が0.1以下である場合を良好であると判断できる。
【0194】
〔抵抗値及び埋込外観(配線板の評価)〕
ラインの幅が25μm、スペースの幅が25μm、厚さが12μmである、回路(配線パターン)を有するくし型配線パターンが形成されたポリイミドフィルム(厚さ50μm)の配線パターン側に、実施例及び比較例で得られた磁性フィラーを、得られる絶縁層の厚みが50μmとなるように配置し、その上にPETフィルムを配置した後、26トン油圧式成形機((有)東邦プレス工業所製)を用い、35MPaで加圧した。この加圧により形成された積層体からPETフィルムを剥離した後、185℃、60分間の加熱処理により磁性フィラー層を熱硬化することで絶縁層を有する配線板を得た。
得られた配線板に5Vの電圧を印加し、該配線板における絶縁層上の7箇所において抵抗値を測定した。得られた7箇所分の抵抗値の平均値を算出した。
また、この際、配線パターンの観察を行い、配線パターンにボイドや剥離などが見られない場合、埋込外観は良好、これらのいずれかが見られた場合、埋込外観は不良と判断した。
【0195】
〔信頼性(TCT)〕
冷熱サイクル試験機を用い、前記と同様に作製した絶縁層を有する配線板を、-40℃の室で30分間冷却し、そこから125℃の室に移動し、125℃の室で30分間加熱し、その後、-40℃の室に移動する工程を1サイクルとし、該サイクルを500回繰り返した後の絶縁層の外観変化をSEM画像にて確認した。絶縁層に発泡やクラックが発生した場合を信頼性不良とし、500サイクル前後において、絶縁層に変化がない場合を信頼性良好とした。
また、500サイクル前後の7箇所の絶縁層の平均抵抗値の変化の確認を行った。500サイクル前の平均抵抗値に対する500サイクル後の平均抵抗値の比(500サイクル後の平均抵抗値/500サイクル前の平均抵抗値)が、0.1未満である場合を信頼性良好とし、該比が0.1以上である場合を信頼性不良と判断した。
【0196】
【表1】
【0197】
[実施例9]
実施例4で作製した絶縁膜被覆磁性フィラー100gと、アセトン(東京化成工業(株)製)10gとを、ペイントシェーカーで30分間混合して、ペーストを得た。
【0198】
[実施例10]
実施例4で作製した絶縁膜被覆磁性フィラー100gと、SR-16H(阪本薬品工業(株)製)2.4gと、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(BMI 12)0.1gと、アセトン(東京化成工業(株)製)10gとを、ペイントシェーカーで30分間混合して、ペーストを得た。
【0199】
[実施例11]
実施例5で作製した絶縁膜被覆磁性フィラー100gと、アセトン(東京化成工業(株)製)10gとを、ペイントシェーカーで30分間混合して、ペーストを得た。
【0200】
[実施例12]
実施例5で作製した絶縁膜被覆磁性フィラー100gと、SR-16H(阪本薬品工業(株)製)2.4gと、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(BMI 12)0.1gと、アセトン(東京化成工業(株)製)10gとを、ペイントシェーカーで30分間混合して、ペーストを得た。
【0201】
[比較例3]
比較例1で作製した磁性フィラー100gと、アセトン(東京化成工業(株)製)10gとを、ペイントシェーカーで30分間混合して、ペーストを得た。
【0202】
[比較例4]
比較例1で作成した磁性フィラー100gと、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN-704)1.2gと、トリフェニルホスフィン(東京化成工業(株)製)0.2gと、アセトン(東京化成工業(株)製)10gとを、ペイントシェーカーで30分間混合して、ペーストを得た。
【0203】
<配線板の作製>
ラインの幅が25μm、スペースの幅が25μm、厚さが12μmである、回路(配線パターン)を有するくし型配線パターンが形成されたポリイミドフィルム(厚さ50μm)の配線パターン側に、実施例及び比較例で得られたペーストを、得られる絶縁層の厚みが50μmとなるようにスクリーン印刷し、70℃で10分間乾燥させた後、26トン油圧式成形機((有)東邦プレス工業所製)を用い、金型を180℃に加熱しながら35MPaで90分間プレス処理することで絶縁層を有する配線板を得た。
この際、配線パターンの観察を行い、配線パターンにボイドや剥離などが見られない場合、埋込外観は良好、これらのいずれかが見られた場合、埋込外観は不良と判断した。
【0204】
<Cステージ特性>
実施例及び比較例で得られたペーストのCステージ特性として、分散性、比透磁率、損失係数、抵抗値及び信頼性を測定した。結果を表2に示す。なお、ここで、Cステージ特性とは、ペーストを構成する成分が完全硬化した状態のことをいう。
【0205】
・トロイダルコアの作製
離型処理したSKS3の合金工具鋼製の金型を用いて、外径18mm、内径11mm、高さ(厚み)7mm程度のトロイダルコアが得られるように、実施例及び比較例で得られたペーストを金型に充填した。充填後、60℃で3時間真空乾燥し、次いで、26トン油圧式成形機((有)東邦プレス工業所製)を用い、金型を180℃に加熱しながら35MPaで90分間プレス処理を行うことで、トロイダルコアを作製した。
【0206】
作製したトロイダルコアを用い、実施例1と同様にして、平均遮蔽距離(分散性)、比透磁率及び損失係数を測定した。
【0207】
〔抵抗値及び埋込外観(配線板の評価)〕
前記と同様に作製した絶縁層を有する配線板に5Vの電圧を印加し、該配線板における絶縁層上の7箇所において抵抗値を測定した。得られた7箇所分の抵抗値の平均値を算出した。
また、この際、配線パターンの観察を行い、配線パターンにボイドや剥離などが見られない場合、埋込外観は良好、これらのいずれかが見られた場合、埋込外観は不良と判断した。
【0208】
〔信頼性(TCT)〕
冷熱サイクル試験機を用い、前記と同様に作製した絶縁層を有する配線板を、-40℃の室で30分間冷却し、そこから125℃の室に移動し、125℃の室で30分間加熱し、その後、-40℃の室に移動する工程を1サイクルとし、該サイクルを500回繰り返した後の絶縁層の外観変化をSEM画像にて確認した。絶縁層に発泡やクラックが発生した場合を信頼性不良とし、500サイクル前後において、絶縁層に変化がない場合を信頼性良好とした。
また、500サイクル前後の7箇所の絶縁層の平均抵抗値の変化の確認を行った500サイクル前の平均抵抗値に対する500サイクル後の平均抵抗値の比(500サイクル後の平均抵抗値/500サイクル前の平均抵抗値)が、0.1未満である場合を信頼性良好とし、該比が0.1以上である場合を信頼性不良と判断した。
【0209】
【表2】
【0210】
[実施例13]
実施例6で作製した絶縁膜被覆磁性フィラー100gと、アセトン(東京化成工業(株)製)50gとを撹拌して、磁性フィラー分散液を作製した。
この分散液をPETフィルム上にギャップを150μmとした塗工幅12cmのアプリケータを用いて塗工し、70℃で10分間、次いで、120℃で10分間オーブン中で乾燥して100μm厚の磁性シートを作製した。
【0211】
[実施例14]
実施例6で作製した絶縁膜被覆磁性フィラー100gと、SR-16H(阪本薬品工業(株)製)2.4gと、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(BMI 12)0.1gと、アセトン(東京化成工業(株)製)50gとを撹拌して、磁性フィラー分散液を作製した。
得られた分散液を用いた以外は実施例13と同様にして、磁性シートを作製した。
【0212】
[実施例15]
実施例7で作製した絶縁膜被覆磁性フィラー100gと、アセトン(東京化成工業(株)製)50gとを撹拌して、磁性フィラー分散液を作製した。
得られた分散液を用いた以外は実施例13と同様にして、磁性シートを作製した。
【0213】
[実施例16]
実施例7で作製した絶縁膜被覆磁性フィラー100gと、SR-16H(阪本薬品工業(株)製)2.4gと、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(BMI 12)0.1gと、アセトン(東京化成工業(株)製)50gとを撹拌して、磁性フィラー分散液を作製した。
得られた分散液を用いた以外は実施例13と同様にして、磁性シートを作製した。
【0214】
[比較例5]
比較例1で作製した磁性フィラー100gと、アセトン(東京化成工業(株)製)50gとを撹拌して、磁性フィラー分散液を作製した。
得られた分散液を用いた以外は実施例13と同様にして、磁性シートを作製した。
【0215】
[比較例6]
比較例1で作成した磁性フィラー100gと、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN-704)1.2gと、トリフェニルホスフィン(東京化成工業(株)製)0.2gと、アセトン(東京化成工業(株)製)10gとを撹拌して、磁性フィラー分散液を作製した。
得られた分散液を用いた以外は実施例13と同様にして、磁性シートを作製した。
【0216】
<配線板の作製>
ラインの幅が25μm、スペースの幅が25μm、厚さが12μmである、回路(配線パターン)を有するくし型配線パターンが形成されたポリイミドフィルム(厚さ50μm)の配線パターン側に、実施例及び比較例で得られた磁性シート(PETフィルムを剥離したもの)を配置した後、26トン油圧式成形機((有)東邦プレス工業所製)を用い、180℃、35MPaで90分間加圧することで絶縁層を有する配線板を得た。
この際、配線パターンの観察を行い、配線パターンにボイドや剥離などが見られない場合、埋込外観は良好、これらのいずれかが見られた場合、埋込外観は不良と判断した。
【0217】
<Cステージ特性>
実施例及び比較例で得られた磁性シートのCステージ特性として、分散性、比透磁率、損失係数、抵抗値及び信頼性を測定した。結果を表3に示す。なお、ここで、Cステージ特性とは、磁性シートが完全硬化した状態のことをいう。
【0218】
・トロイダルコアの作製
離型処理したSKS3の合金工具鋼製の金型を用いて、外径18mm、内径11mm、高さ(厚み)7mm程度のトロイダルコアが得られるように、実施例及び比較例で得られた磁性シート(PETフィルムを剥離したもの)を金型に充填した。充填後、26トン油圧式成形機((有)東邦プレス工業所製)を用い、金型を180℃に加熱しながら35MPaで90分間プレス処理を行うことで、トロイダルコアを作製した。
【0219】
作製したトロイダルコアを用い、実施例1と同様にして、平均遮蔽距離(分散性)、比透磁率及び損失係数を測定した。
【0220】
〔抵抗値及び埋込外観(配線板の評価)〕
前記と同様に作製した絶縁層を有する配線板に5Vの電圧を印加し、該配線板における絶縁層上の7箇所において抵抗値を測定した。得られた7箇所分の抵抗値の平均値を算出した。
また、この際、配線パターンの観察を行い、配線パターンにボイドや剥離などが見られない場合、埋込外観は良好、これらのいずれかが見られた場合、埋込外観は不良と判断した。
【0221】
〔信頼性(TCT)〕
冷熱サイクル試験機を用い、前記と同様に作製した絶縁層を有する配線板を、-40℃の室で30分間冷却し、そこから125℃の室に移動し、125℃の室で30分間加熱し、その後、-40℃の室に移動する工程を1サイクルとし、該サイクルを500回繰り返した後の絶縁層の外観変化をSEM画像にて確認した。絶縁層に発泡やクラックが発生した場合を信頼性不良とし、500サイクル前後において、絶縁層に変化がない場合を信頼性良好とした。
また、500サイクル前後の7箇所の絶縁層の平均抵抗値の変化の確認を行った。500サイクル前の平均抵抗値に対する500サイクル後の平均抵抗値の比(500サイクル後の平均抵抗値/500サイクル前の平均抵抗値)が、0.1未満である場合を信頼性良好とし、該比が0.1以上である場合を信頼性不良と判断した。
【0222】
【表3】
【0223】
なお、前記表1~3の中の略称は以下の通りである。
【0224】
<重合体>
・重合体A:マレイン酸変性スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(旭化成(株)製、製品名「タフテックM1913」)
・重合体B:ノボラック樹脂(群栄化学工業(株)製、製品名「レジトップPSM-4261」)
【0225】
<硬化性化合物>
・化合物A:2,2’-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン(東京化成工業(株)製)
・化合物B:SR-16H(阪本薬品工業(株)製、エポキシ当量;160g/eq)
・化合物C:HP-4032D(DIC(株)製、エポキシ当量;141meq/g)
・化合物D:SR-4PG(坂本薬品工業(株)製、エポキシ当量;305g/eq)
・化合物E:o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本製鉄(株)製、製品名「YDCN-704」)
【0226】
<硬化助剤>
・硬化助剤A:1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(三菱化学(株)製、製品名「BMI 12」)
・硬化助剤B:2-エチルオクチル酸亜鉛(富士フィルム和光純薬(株)製)
・硬化助剤C:トリフェニルホスフィン(東京化成工業(株)製)
【0227】
<溶媒>
・溶媒A:シクロペンタノン(東京化成工業(株)製)
・溶媒B:メチルエチルケトン(東京化成工業(株)製)
・溶媒C:アセトン(東京化成工業(株)製)
【0228】
<磁性粉末>
・磁性粉末A:AW2-08PF8F(エプソンアトミックス(株)製、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径;5μm、比重;7.0g/cm3
・磁性粉末B:AW2-08PF3F(エプソンアトミックス(株)製、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径;3μm、比重;7.0g/cm3
・磁性粉末C:AW2-08PF20F(エプソンアトミックス(株)製、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径;11μm、比重;7.0g/cm3
【0229】
表1~表3の結果から、実施例1~16で得られた本材料によれば、高透磁率及び低損失係数にできるだけでなく、埋め込み性も良好であり信頼性が高く、基材等との密着性にも優れるインダクタ配線板を作製できることが確認された。これに対し、比較例1~4の重合体(B)を含有しない磁性材料を用いた場合では、埋め込み外観に不良が見られ、信頼性も劣っていることが確認された。
【0230】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を包含する。また本発明は、上記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成をも包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。