(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】透析室加湿システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/14 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A61M1/14
(21)【出願番号】P 2021036875
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 紀和
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-104632(JP,A)
【文献】特開2006-275383(JP,A)
【文献】特開平06-129677(JP,A)
【文献】特開2013-017492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0067700(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析室に設置される少なくとも一つの透析装置と、
RO水を製造するRO水製造装置と、
前記RO水製造装置から流出したRO水を再び前記RO水製造装置に戻す循環流路と、
前記循環流路から分岐しており、RO水を前記少なくとも一つの透析装置に供給する供給流路と、
前記透析室に設置されており、前記循環流路から供給されたRO水を気化させることによって前記透析室を加湿する加湿部と、備える、透析室加湿システム。
【請求項2】
前記循環流路から分岐する分岐流路をさらに備え、
前記加湿部は、前記分岐流路に接続されている、請求項1に記載の透析室加湿システム。
【請求項3】
前記加湿部は、前記循環流路に接続されている、請求項1に記載の透析室加湿システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つの透析装置は、筐体を有し、
前記加湿部は、前記筐体内に配置されている、請求項1に記載の透析室加湿システム。
【請求項5】
前記加湿部から供給される気相のRO水とともに薬剤を噴霧可能な噴霧部をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の透析室加湿システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透析室加湿システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2013-17492号公報には、複数の透析装置と、水処理装置(ROタンク)と、水処理装置と各透析装置とをつなぐ流路と、を備える多人数用透析装置が開示されている。各透析装置から排出された使用済透析液は、熱交換器に供給された後、排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2013-17492号公報に記載されるような透析装置が用いられる透析室には、インフルエンザウィルスの不活化の目的等のため、加湿が求められている。そこで、透析室に加湿器を設置することが考えられる。通常、加湿器内のタンクには、雑菌の繁殖等を抑制するために、塩素を含む水道水が供給される。ただし、タンクへの水道水の供給により、タンクやフィルター等にミネラルが溜まるため、定期的なメンテナンスが必要となる。
【0005】
本発明の目的は、加湿部のメンテナンスの頻度を低減しつつ透析室を加湿することが可能な透析室加湿システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一局面に従った透析室加湿システムは、透析室に設置される少なくとも一つの透析装置と、RO水を製造するRO水製造装置と、前記RO水製造装置から流出したRO水を再び前記RO水製造装置に戻す循環流路と、前記循環流路から分岐しており、RO水を前記少なくとも一つの透析装置に供給する供給流路と、前記透析室に設置されており、前記循環流路から供給されたRO水を気化させることによって前記透析室を加湿する加湿部と、備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、加湿部のメンテナンスの頻度を低減しつつ透析室を加湿することが可能な透析室加湿システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の透析室加湿システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態の透析室加湿システムの構成を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の第3実施形態の透析室加湿システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の透析室加湿システムの構成を概略的に示す図である。本実施形態の透析室加湿システム1は、少なくとも一つの透析装置10と、RO水製造装置20と、循環流路30と、供給流路32と、分岐流路34と、加湿器40と、を備えている。
【0011】
少なくとも一つの透析装置10は、透析室R1に設置されている。本実施形態では、少なくとも一つの透析装置10は、複数の透析装置10を含んでいる。なお、
図1では、透析装置10が一つだけ明示されている。透析装置10の近傍には、透析用ベッドBが設置されている。透析装置10は、筐体12と、筐体12内に設けられた装置本体14と、を有している。
【0012】
RO水製造装置20は、RO水を製造する。RO水製造装置20は、機械室R2に設置されている。このRO水は、透析装置10に供給される。透析患者に供給されるRO水の温度は、例えば、30℃程度に設定される。
【0013】
循環流路30は、RO水製造装置20から流出したRO水を再びRO水製造装置20に戻す流路である。循環流路30は、透析室R1を通るように設けられている。より詳細には、循環流路30は、機械室R2から透析室R1を経由して機械室R2に戻るように設けられている。
【0014】
供給流路32は、RO水を透析装置10の装置本体14に供給する。供給流路32は、循環流路30のうち透析室R1内に位置する部位から分岐している。
【0015】
分岐流路34は、循環流路30のうち透析室R1内に位置する部位から分岐している。分岐流路34は、加湿器40にRO水を供給する。
【0016】
加湿器40は、透析室R1に設置されている。加湿器40は、循環流路30からRO水の供給を受ける。加湿器40は、ケース42と、加湿部44と、噴霧部46と、を有している。
【0017】
加湿部44は、循環流路30から供給されたRO水を気化させることによって透析室R1を加湿する。加湿部44には、分岐流路34を通じて循環流路30からRO水が供給される。
【0018】
噴霧部46は、加湿部44から供給される気相のRO水とともに薬剤を透析室R1に噴霧可能である。噴霧部46には、分岐流路34を通じて循環流路30からRO水が供給される。
【0019】
ケース42は、加湿部44及び噴霧部46を収容している。噴霧部46は、ケース42の表面に露出するように設けられている。
【0020】
RO水製造装置20は、循環流路30、装置本体14及び加湿部44の洗浄ないし消毒のため、80℃程度の熱水を循環流路30に供給することが可能である。供給流路32を通じて装置本体14に供給された熱水及び分岐流路34を通じて加湿部44に供給された熱水は、排出流路から排出される。
【0021】
以上に説明したように、本実施形態の透析室加湿システム1では、RO水が加湿部44に供給されるため、加湿部44へのミネラル分の堆積が抑制される。よって、加湿部44のメンテナンスの頻度を下げつつ透析室R1を加湿することが可能となる。
【0022】
また、この透析室加湿システム1では、透析装置10に供給されるRO水の一部が加湿部44に利用されるため、加湿部44にRO水を供給する専用の装置が不要となる。
【0023】
(第2実施形態)
次に、
図2を参照しながら、本発明の第2実施形態の透析室加湿システム1について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0024】
本実施形態では、加湿器40は、循環流路30に接続されている。より詳細には、加湿器40の加湿部44は、循環流路30に接続されている。つまり、本実施形態では、分岐流路34が設けられていない。循環流路30の熱水循環によって、加湿器の消毒を兼ねることができる。
【0025】
この態様においても、加湿部44のメンテナンスの頻度を下げつつ透析室R1を加湿することが可能となる。
【0026】
(第3実施形態)
次に、
図3を参照しながら、本発明の第3実施形態の透析室加湿システム1について説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0027】
本実施形態では、加湿部44及び噴霧部46は、透析装置10の筐体12内に収容されている。つまり、本実施形態では、ケース42が設けられていない。
【0028】
分岐流路34は、供給流路32のうち筐体12内に位置する部位から分岐している。
【0029】
この態様では、筐体12内に装置本体14及び加湿部44が収容されるため、省スペース化される。また、分岐流路34を循環流路30から分岐させることが不要となり、加湿部44用の電源も不要となる。また、装置本体14自身が熱水を循環させる能力(ポンプ)を有するため、装置本体14の熱水循環によって加湿器の熱水消毒を兼ねることができる。
【0030】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0031】
この開示の一局面に従った透析室加湿システムは、透析室に設置される少なくとも一つの透析装置と、RO水を製造するRO水製造装置と、前記RO水供給装置から流出したRO水を再び前記RO水製造装置に戻す循環流路と、前記循環流路から分岐しており、RO水を前記少なくとも一つの透析装置に供給する供給流路と、前記透析室に設置されており、前記循環流路から供給されたRO水を気化させることによって前記透析室を加湿する加湿部と、備える。
【0032】
この透析室加湿システムでは、透析装置に供給されるRO水の一部が加湿部に供給されるため、加湿部へのミネラル分の堆積が抑制される。よって、加湿部のメンテナンスの頻度を下げつつ透析室を加湿することが可能となる。
【0033】
また、前記透析室加湿システムにおいて、前記循環流路から分岐する分岐流路をさらに備え、前記加湿部は、前記分岐流路に接続されていてもよい。
【0034】
あるいは、前記加湿部は、前記循環流路に接続されていてもよい。
【0035】
あるいは、前記少なくとも一つの透析装置は、筐体を有し、前記加湿部は、前記筐体内に配置されていてもよい。
【0036】
また、前記加湿部から供給される気相のRO水とともに薬剤を噴霧可能な噴霧部をさらに備えることが好ましい。
【0037】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1 透析室加湿システム、10 透析装置、12 筐体、14 装置本体、20 RO水製造装置、30 循環流路、32 供給流路、34 分岐流路、40 加湿器、42 ケース、44 加湿部、46 噴霧部、R1 透析室、R2 機械室。