(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A41D13/11 H
(21)【出願番号】P 2021042093
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】氏家 広大
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-191(JP,A)
【文献】特開2017-197885(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111227374(CN,A)
【文献】特開2011-167418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/11
A62B18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体と、一対の環状シート状の耳掛け部とを備え、
前記耳掛け部がそれぞれ、前記マスク本体の顔対向面と反対側の面に、前記マスク本体の横方向の各端部に接合されて、縦方向にわたる接合部が形成され
、さらに装着時には、横方向外方に展開され、前記接合部にて折り返され、
前記接合部の横方向の内端縁の輪郭が、横方向外方に凹んだ形状を有
し、前記マスク本体の横方向の端部における全長を三等分した長さを有する縦方向中央領域において、漸次、幅方向外側に向かう部分を有する、マスク。
【請求項2】
前記凹んだ形状の底部が、前記マスク本体の縦方向中央領域に位置する、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記接合部の横方向の内端縁の輪郭が、縦方向中央領域に近付くにつれ漸次又は段階的に、幅方向外側に向かうように延在する、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記接合部の横方向の最大幅が3~20mmである、請求項1から3のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
顔に装着するマスクの構成として、装着者の顔を少なくとも部分的に覆うマスク本体と、マスク本体にそれぞれ結合された一対の耳掛け部、すなわちマスク本体をその装着位置に保持するために装着者の各耳に掛けることのできる一対の部材とを備えたものが知られている。
【0003】
近年、マスクの装着中に耳に掛かる負担を軽減するため、紐状でなく、シート状の耳掛け部を用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、1つ又は複数のシート片から形成された第1耳掛け部及び第2耳掛け部がそれぞれ、第2の方向(縦方向)に沿った第1接合部及び第2接合部によってマスク本体部の一方の面に接合されたマスクが記載されている。当該マスクは、少なくともマスク装着時に、第1の耳掛け部が第1の接合部の箇所で第1の方向(横方向)に沿って折り返されるとともに、第2の耳掛け部が第2の接合部の箇所で第1の方向に沿って折り返されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスクを装着する際、使用者は通常、マスク本体を顔の立体形状に合わせて変形させる。この変形に伴い、マスク本体の横方向端部も立体的に湾曲し、耳掛け部とマスク本体との接合部も湾曲する。より具体的には、両接合部はそれぞれ、少なくとも縦方向の中央領域が横方向中央に凸となるように湾曲し得る。この湾曲によって、耳掛け部の、接合部の箇所で折り返された部分も同様に立体的に歪むことになる。ここで、耳掛け部がマスク本体の外面(顔に対向させる面とは反対側の面)に接合されている場合、上記歪みによって耳掛け部がマスク本体から局所的に浮いてしまうことがある。このような耳掛け部の浮いた部分は、マスク装着中に装着者の動作の妨げとなる可能性があり、外観も損ね得る。
【0006】
上記に鑑みた本発明の一態様は、装着時に、シート状の耳掛け部のマスク本体からの浮きが生じにくいマスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、マスク本体と、一対の環状シート状の耳掛け部とを備え、前記耳掛け部がそれぞれ、前記マスク本体の顔対向面と反対側の面に、前記マスク本体の横方向の各端部に接合されて、縦方向にわたる接合部が形成されており、前記接合部の横方向の内端縁の輪郭が、横方向外方に凹んだ形状を有する。
【0008】
上記第一の態様では、シート状の耳掛け部がそれぞれ、マスク本体の横方向の各端部に接合され、縦方向にわたって接合部が形成されている。このようなマスクは、装着時に、シート状の耳掛け部をそれぞれ横方向に開き、接合部で折り返して使用される。ここで、マスク本体を顔の形状に対応させるべく立体的に変形させると、マスク本体の横方向の両端部に形成された、マスク本体と耳掛け部との接合部も湾曲することになる。例えば、接合部は、接合部の縦方向の中央付近が横方向中央に近付くように湾曲した形状となり得る。この接合部の湾曲に伴い、耳掛け部の、接合部にて折り返された部分も湾曲変形して、歪みが生じ得る。耳掛け部はマスク本体の外面(顔に対抗させる面と反対側の面)に接合されているので、耳掛け部の折り返された部分及びその近傍の部分がマスク本体から離れて、浮きやすくなる。
【0009】
これに対し、本態様によれば、耳掛け部とマスク本体との接合部の横方向内側の端縁の輪郭が、横方向外方に凹んだ形状となっている。そのため、マスクの装着時に、マスク本体の横方向端部が横方向内方に凸となるように変形したとしても、接合部の内端縁の輪郭の変形は、元々輪郭が備えていた凹み形状によって相殺されるので、マスク装着時の当該輪郭の湾曲の度合いは小さくなる。これにより、耳掛け部の接合部にて折り返された部分の歪みを低減又は防止でき、耳掛け部の折り返された部分のマスク本体からの浮きを抑えることができる。よって、本態様のマスクによれば、耳掛け部のマスク本体からの浮きが装着者の動作の妨げになる可能性を防止できる。例えば、マスクの上からフェイスシールド等のさらなる防護手段を装着する場合に、防護手段の部品に耳掛け部が引っ掛かること等を防止できる。また、耳掛け部の浮きがないことで、装着中のマスクの外観も良好になる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記凹んだ形状の底部が、前記マスク本体の縦方向中央領域に位置する。
【0011】
上記第二の態様によれば、耳掛け部の折り返された部分のうち、最も歪みやすい縦方向中央の部分の歪みをより確実に防止できる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記接合部の横方向の内端縁の輪郭が、縦方向中央領域に近付くにつれ漸次又は段階的に、幅方向外側に向かうように延在する。
【0013】
上記第三の態様によれば、接合部の横方向の内端縁の位置が徐々に、緩やかに変化している。よって、端縁の輪郭において所定箇所に応力が集中することを防止でき、これにより、耳掛け部に強い力が掛かった場合でも接合部が壊れにくい。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記接合部の横方向の最大幅が3~20mmである。
【0015】
上記第四の態様によれば、マスク本体と耳掛け部との接合強度を高めるとともに、接合部の形成されたマスクの幅方向端部が過度に硬くなって快適な装着感を低下させることを防止できる
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、装着時に、シート状の耳掛け部のマスク本体からの浮きが生じにくいマスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一形態によるマスクを外面側から見た平面図である。
【
図2】
図1に示すマスクの内面側(顔側)から見た平面図である。
【
図3】耳掛け部が側方へ開かれた後の状態を示す部分平面図である。
【
図5】従来のマスクが装着されている状態を示す部分図である。
【
図6】本形態によるマスクが装着されている状態を示す部分図である。
【
図11】本発明の別の実施形態によるマスクを外面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0019】
(マスクの基本構成)
本形態によるマスクは、装着者の顔、より具体的には装着者の少なくとも鼻及び口を覆うことのできるマスクであってよい。本形態によるマスクは、異物が顔に到達することを防止したり、装着者が発する飛沫が飛散することを防止したりする機能を有し得るものであって、衛生マスク又はサージカルマスクとも呼ばれる。マスクは、使い捨てのものであっても、洗濯によって繰り返し使用可能なものであってもよい。
【0020】
図1に、本形態によるマスク1の平面図を示す。
図1は、マスク1を外側(若しくは外面側)、すなわち装着時に顔に対向させず外部に露出させる面側から見た図である。また、
図2に、マスクを内側(顔に対向させる面側)から見た平面図を示す。
【0021】
図1に示すように、本形態によるマスク1は、装着時に装着者の顔の正面に配置され、装着者の主として鼻及び口を覆うことができるマスク本体10と、マスク本体10に結合された一対の耳掛け部20a、20aとを備えている。マスク1(マスク本体10)は、装着時に装着者の顔の上下方向に対応する上下方向(縦方向)D1と、装着時に装着者の顔の左右方向に対応する左右方向(横方向)D2とを有する。縦方向D1と横方向D2とは直交している。一対の耳掛け部20a、20aは、マスク本体10の横方向D2の両端部に、縦方向D1に沿って形成された接合部50、50によって接合されている。
【0022】
図1及び
図2に示すマスク本体10は、横方向D2に長辺を有する長方形の平面視形状を有するが、マスク本体10の平面視形状は図示のものに限られない。また、
図1及び
図2に示すように、マスク本体10は、縦方向D1に並んで配置された複数の襞(プリーツ)によって形成されるプリーツ構造15を有している。プリーツ構造15の襞は、マスク本体10を構成するシートを横方向D2に沿った折り線にて折ることによって形成される。そして、複数の襞が形成された状態で、マスク本体10の横方向D2両端部が、ヒートシール等によって固定される。そのため、マスク1の使用時には、プリーツ構造15の襞を縦方向D1に広げることで、マスク本体10の横方向D2中央が、マスク1の外面側に突出するように湾曲して、顔の立体形状に適合するような形状に変形し得る。プリーツ構造15の具体的な構成は特に限定されず、マスク本体に形成される公知の構成であってよいが、
図1及び
図2に示すように、縦方向D1の中央に箱襞が形成されていると、装着時にマスク本体10の縦方向D1の中央を顔から離れる方向に突出させやすいので好ましい。
【0023】
マスク本体10は、複数の層が積層されてなる多層構造を有していてよい。例えば、異物(塵、花粉、細菌、ウィルス等)を捕集する機能が高められた中間層を、外層及び内層で挟んだ3層を少なくとも含む構造であってよい。マスク本体10を構成する各層は、不織布、織物、編物等の繊維含有層を含むことが好ましく、不織布を含むことがより好ましい。不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布等が挙げられる。また、中間層には、細い繊維を含み得るメルトブローン不織布が用いられることが好ましい。また、繊維含有層を構成する繊維は樹脂繊維であると好ましく、樹脂繊維の樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。外層及び内層の目付は、15~50g/m2であってよい。異物捕集性の高い中間層の目付は、10~100g/m2であると好ましく、15~50g/m2であるとより好ましい。
【0024】
一対の耳掛け部20a、20aはそれぞれ、平面視で環状(若しくは閉じた帯状)であってよい。装着時には、耳掛け部20aの環の内側、すなわち耳掛け部20aの中央の開口29に装着者の耳が入るようにして、耳掛け部20aを耳に掛けることができる。
図1及び
図2に示すように、一対の耳掛け部20a、20aは、紐状又は糸状と異なり、シート状に形成されている。一対の耳掛け部20a、20aが、シート状であることで、マスク装着時に耳掛け部20aを耳に掛けた時に、耳の後ろ又は耳たぶの裏面に面接触できるため、耳に掛かる負担を軽減することができる。そのため、長時間使用したとしても違和感を低減できる。
【0025】
また、耳掛け部20aの環形状は、円形、楕円形等であってよいが、
図1及び
図2に示すように、四角形(又は矩形)に近い形状であってよい。
図1に示すように、耳掛け部20aは、縦方向D1に沿って延在し且つ縦方向D1に沿ってマスク本体10に固定されている基部22と、装着時に装着者の耳の後ろに位置する耳後方配置部24と、上側において基部22と耳後方配置部24との間に延在する上側延在部23と、下側において基部22と耳後方配置部24との間に延在する下側延在部26とを有していてよい。
【0026】
図1及び
図2に示す形態では、一対の耳掛け部20a、20aは、横方向D2の中央で互いに分離可能に結合した単一シート状に、すなわち、耳掛け部シート20として形成されている。ここで、単一シートとは、連続した1枚のシートからなる形態を指す。この1枚のシートは、単層であってもよいし、複数の層が積層されてなる積層体であってもよい。一対の耳掛け部20a、20aが単一シート状になっていることで、製造時に耳掛け部20a、20aの位置決めを同時に行うことができ、マスクの製造がより容易になる。しかし、一対の耳掛け部20a、20aは必ずしも結合されていなくともよい。
【0027】
一対の耳掛け部20a、20aが耳掛け部シート20として形成されている場合、耳掛け部シート20は、所定位置で破断させることによって分離した一対の耳掛け部20a、20aを形成できるように構成されていてよい。
図1の形態では、一対の耳掛け部20a、20aは、結合部28にて結合されている。結合部28の結合形式は特に限定されないが、使用者の通常の力で引っ張ることによって分離可能な結合であることが好ましい。例えば
図1に示すようにミシン目として形成されていてよい。また、シートの厚みを小さくすること、又はその他の手段によって、一対の耳掛け部20a、20aの境界を脆弱化したり、応力が掛かりやすくしたりすることによって、結合部28を形成してもよい。また、結合部28は、使用者がハサミ等の道具によって切断できるように構成されていてもよい。
【0028】
耳掛け部20a、20a(又は耳掛け部シート20)は、伸縮性を有する材料、少なくとも横方向に伸縮性を有する材料から形成されていてよい。耳掛け部20a、20aが伸縮性を有することで、マスクの装着動作時には、使用者は、耳掛け部20a、20aを耳の後ろまで引っ張ってから耳に掛けるという動作を容易に行うことができ、また装着時(装着中)も、耳掛け部20a、20aに発生する引張り応力によって、マスク本体10を顔にフィットさせることができる。
【0029】
耳掛け部20aは、伸縮性を有する材料からなる単層シートであってもよいし、伸縮性の材料からなる層を含む複数の層が積層されてなる多層シートであってもよい。伸縮性の材料とは、伸縮性の不織布、伸縮性フィルム、又は糸ゴム等の糸状若しくは紐状の伸縮性部材であってよい。伸縮性の不織布が含まれる場合、当該不織布の伸縮性は、不織布が伸縮性繊維を含むことによって、例えば繊維の材料自体が伸縮性を有する又は繊維が捲縮繊維であることによって発現されていてよい。或いは、所定の物理的構造によって、例えば表面に凹凸を有することによって伸縮性が発現されていてもよい。伸縮性の不織布の具体例としては、縮性エアスルー不織布、伸縮性スパンボンド不織布、伸縮性スパンレース不織布、伸縮性ニードルパンチ不織布、伸縮性ケミカルボンド不織布等が挙げられる。用いられる不織布の目付は、好ましくは5~50g/m2、より好ましくは8~35g/m2であってよい。
【0030】
耳掛け部20aが、複数の不織布の層が積層されてなる多層シートから構成されている場合、例えば、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布といった構成とすることができ、これらのうち少なくとも1層に伸縮性の不織布を使用することができる。また、耳掛け部20aが、伸縮性フィルムを含む多層シートから構成されている場合、不織布/伸縮性フィルム、不織布/伸縮性フィルム/不織布(例えば、スパンボンド不織布/伸縮性フィルム/スパンボンド不織布、エアスルー不織布/伸縮性フィルム/エアスルー不織布等)といった構成が挙げられる。2層が積層されてなるシートの場合、どちらか一方の層を伸縮性として、当該伸縮性の層を伸長させた状態で、もう一方の層を積層させて間欠的に固定した後、弛緩させて自然状態に戻して、耳掛け部20a用のシートを得ることができる。また、3層が積層されてなるシートの場合、中央の層を伸長させた状態で、両面にそれぞれ層を積層させて間欠的に固定した後、弛緩させて自然状態に戻して、耳掛け部20a用のシートを得ることができる。
【0031】
上記のうち、製造が容易であり、高い伸縮性が得られることから、伸縮性フィルムを用いた構成、特に伸縮性フィルムの両面に不織布を配置してなる構成が好ましい。伸縮性フィルムの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン等が挙げられる。伸縮性フィルムの伸縮性は、引張試験機による測定で最大伸長率(引張破断時の伸長率)が3.5~4.0であるものが好ましい。また、伸縮性フィルムは、湿気を通過させる機能を有してよい。伸縮性フィルムを用いる場合、伸縮性フィルムを自然長に対する所定倍率で伸長させた状態で、不織布を超音波溶着等によって伸縮性フィルムに間欠的に接合させた後、弛緩させて自然状態に戻すことで、耳掛け部20a用のシートを得ることができる。伸縮性フィルムの弛緩によって不織布の接合されていない部分が盛り上がるため、得られるシートには、伸縮方向に概ね直交する方向に沿って延びる多数の皺が形成されている。
【0032】
なお、耳掛け部20a用のシートは、糸状ゴムを伸長させた状態で、伸縮性の小さい又は伸縮性を有さない不織布で挟み込むことによって形成してもよい。また、上記の材料同士を、伸縮性又は非伸縮性のホットメルト不織布(加熱により繊維が軟化又は溶融して他部材と接着可能な不織布)で貼り合わせてもよい。
【0033】
耳掛け部20a(耳掛け部シート20)の目付は、20~150g/m2であってよい。また、耳掛け部20aの厚みは、100~3,000μmであってよい。
【0034】
(マスクの使用)
本形態によるマスク1の使用を開始する際、使用者は、マスク1の装着前に、耳掛け部20a、20aをそれぞれ横方向D2側方へ開く。上述のように一対の耳掛け部20a、20a同士が分離可能に結合されている場合には、展開前に、結合を解除して耳掛け部20a、20aを互いに分離させる。
【0035】
図3に、マスク1の耳掛け部20a、20aを展開した後の状態の右側部分を示す。耳掛け部20aを横方向D2外方に展開させた後には、耳掛け部20aが裏返されて、耳掛け部20aのマスク本体10に対向していた面が露出する。そして、マスク本体10の外面のほぼ全体も露出する。
【0036】
図1~
図3に示すように、本形態では、一対の耳掛け部20a、20aは、マスク本体10の外面に配置されている。そのため、一対の耳掛け部20a、20a同士を分離させて横方向D2外方へ開く動作において、マスク本体10の内面に触れる可能性を低減できるか又はその可能性をなくすことができ、衛生的観点から好ましい。
【0037】
本形態によるマスク1は、例えば次のように使用することができる。マスク本体10の外面を上にしてマスク1が置かれている状態で、使用者が一対の耳掛け部20a、20aをそれぞれ手で把持して横方向D2外方へ開いた後、一対の耳掛け部20a、20aを把持したままマスク1を他人(装着者)の顔へと移動させる。そして、マスク本体10をその他人の顔の所望の位置へ配置した後、持ち方を変えることなく、一対の耳掛け部20a、20aをそれぞれ、他人の耳に掛けることができる。よって、本形態によるマスク1は、例えば子供、病人等の、マスクを自らで装着することが困難である人にマスクを装着させる場合に、好適に使用できる。
【0038】
なお、一対の耳掛け部20a、20aには、一対の耳掛け部20a、20aを互いに分離して横方向D2外方に開く際に使用者が摘まむことができる摘み部25、25が形成されていてよい(
図1)。摘み部25、25は、下側延在部26に形成されていてよく、平面視でマスク本体10の端縁から、好ましくはマスク1の下端(又はマスク本体10の下端)から突出していると好ましい。その場合、マスク本体10自体に、すなわちマスク本体10の外面及び内面のどちらにも触れずに又はほとんど触れずに、使用者が両手で摘み部25、25を摘まむこともできる。よって、使用者は、マスク本体10に触れずに又はほとんど触れずに一対の耳掛け部20a、20aを分離・展開させることができる。よって、使用者が手指の衛生に十分な配慮ができない状況であっても、良好な衛生状態のマスク1を自らに又は他人に装着できる。
【0039】
また、耳掛け部20aが摘み部25、25を有することで、使用者は、耳掛け部20aを装着者の耳に掛ける時又は掛けた後に、摘み部25、25を持って耳掛け部の調整を容易に行うこともできる。すなわち、摘み部25、25を持って、耳掛け部20aを、耳に対して相対的に耳掛け部20aの周方向にずらして位置調整を行うこと、或いは耳掛け部20aを後側に向かって引っ張ったり緩めたりして耳掛け部20aの張り具合を調整することが可能である。
【0040】
さらに、本形態では、一対の耳掛け部20a、20aがマスク本体の外面の両側部にそれぞれ接合されているので(
図1~
図3)、マスク1の装着時、すなわち耳掛け部20a、20aを側方に開いて耳に掛けている状態では、マスク本体10の両側部は、耳掛け部20aによって外面側から顔に向かって押さえられる。これにより、マスク本体10の両側部においてマスク本体10と顔との隙間を小さくすることができ、マスクの機能、例えば異物を遮断する機能、装着者が発した飛沫を飛散させない機能等を向上できる。また、本体の両側部の内面側(顔側)に耳掛け部20aが配置されていないことで、装着中に、マスク本体10の両側部において耳掛け部20aが装着者の顔に直接接触しないため、違和感も低減される。
【0041】
なお、マスク本体10には、マスク本体10の外面及び内面の区別を可能にするマーク18を、エンボス加工、印刷、縫込み等によって形成してもよい。マーク18は、使用者が目視で認識できるものであれば、その形態は限定されない。マーク18は、
図1等に示すように、文字であってもよいし、数字、記号、図形、ロゴ等であってもよい。
【0042】
(接合部)
図1に示すように、本形態では、シート状の耳掛け部20a、20a(若しくは耳掛け部シート20)は、マスク本体10の外面に重ねられ、横方向D2の両端部で、接合部50、50(グレーで示す領域)によって接合されている。接合部50、50は、例えば、圧力及び/又は熱を加えることによって、耳掛け部20a及びマスク本体10の対向する面同士を接合させる手段、例えばヒートシール、超音波シール、非加熱のエンボス加工等によって形成できる。耳掛け部20a及びマスク本体10の素材が合成樹脂である場合には、両者が融着され、より確実な接合が可能であることから、ヒートシールを用いることが好ましい。
【0043】
図1に示すように、接合部50は、縦方向D1に沿って、好ましくは耳掛け部20aの縦方向D1の上端から下端まで連続して、形成されていてよい。接合部50は、縦方向D1に沿って線状に形成されていてもよいが、接着強度を向上させる観点から、ある程度の幅を有することが好ましい。
【0044】
図1に示すように、本形態では、接合部50、50は、横方向D2の内端縁51の輪郭が、横方向D2外方に凹んだ形状を有している。
図1の例では、接合部50の横方向D2の内端縁51の輪郭に形成された凹部は、短い上辺を横方向D2外側に有する台形となっている。
【0045】
以下、接合部50、50が、横方向D2の内端縁51の輪郭が横方向D2外方に凹んだ形状を有することの利点について述べる。そのために、まず、従来のマスクの装着時の形状変化について説明する。
図4に、従来のマスク1'の、マスク本体10の外面側から見た平面図を示す。従来のマスク1'は、
図1に示す本形態によるマスク1と基本構造は同じであるが、接合部50'、50'が、縦方向D1に沿って直線状に延びている点で、マスク1と異なる。
【0046】
図5は、
図4に示す従来のマスク1'を装着した状態を示す部分斜視図である。
図5に示すように、装着時には、マスク1'のマスク本体10のプリーツ構造15は、顔の立体形状に対応するように、幅方向D2中央において縦方向D1に広げられ、また、マスク本体10の横方向D2の中央が外面側に突出するように変形されている。このようなマスク本体10の中央の変形に伴い、マスク本体10の横方向D2の端部も変形するので、当該横方向D2の端部に形成された接合部も変形する。より具体的には、マスク本体10の横方向D2の端部に形成されている接合部50は、当該接合部50縦方向D1の中央が、少なくとも横方向D2の中央に近付くように(横方向D2中央に向かって凸となるように)変形する。このような接合部50'の変形により、耳掛け部20aが接合部50'にて折り返された部分、特に耳掛け部20aの基部22も湾曲変形し、歪みが生じ得る。例えば、基部22の縦方向D1の中央付近で、マスク本体10から基部22が離れた箇所(浮きr)が生じ得る(
図5)。基部22の浮きrは、折れ又はシワになったりする場合もある。
【0047】
これに対し、
図6に、本形態によるマスク1(
図1及び
図2)を装着した状態の部分斜視図を示す。
図6は
図5に対応する図であり、マスク1'の場合(
図5)と同様に、マスク本体10を顔の立体形状に対応させて変形されている。このマスク本体10の変形に伴い、マスク本体10の横方向D2の端部自体は、当該端部の縦方向D1の中央が、少なくとも横方向D2の中央に近付くように変形されている。しかしながら、本形態においては、接合部50の幅方向D2内端縁51の輪郭は、装着前の状態で幅方向D2外方に凹んでいるので(
図1)、装着時にマスク本体10を変形させた状態では、内端縁51の輪郭の縦方向D1の中央が突出せず、縦方向D1に沿って直線状又はそれに近い形状になり得る。よって、接合部50にて折り返されている耳掛け部20aの部分、特に接合部50に近い基部22の湾曲変形は少なく、歪みも少ない。そうすると、耳掛け部20a、特に基部22がマスク本体10から浮き上がる現象(マスク本体10の外面から離れて立ち上がる現象)は抑えられる。耳掛け部20aの外面側への浮きは装着者の動作の妨げとなる場合があるが、そのような不都合も回避できる。例えば、マスクの上からフェイスシールド等のさらなる防護手段を装着する場合に、防護手段の部品に耳掛け部20aの浮いた部分が引っ掛かること等を防止できる。さらに、装着時の耳掛け部20aがマスク本体10により密着するので、マスク1の外観も良好になる。
【0048】
図7に、
図1の右側の接合部50近傍の部分の拡大図を示す。上述の通り、接合部50の幅方向D2の内端縁51の輪郭は、幅方向D22外方に凹んでいる。図示の例では、凹み部分(凹部)は、短い上辺を横方向D2外側に有する台形となっているが、矩形(長方形又は正方形)等であってもよい。但し、凹部形状が台形の場合のように、端縁51の輪郭線が、縦方向D1中央領域に近付くにつれ、漸次又は段階的に幅方向D2外側に向かうようになっていると、縦方向D1及び横方向D2に緩やかに方向が変化している輪郭線が得られるので、輪郭の方向が変化した置に応力が集中することを防止し、接合部50の破損を防止できる。
【0049】
図7には、マスク本体10の上方領域UR、中央領域MR、下方領域LRも示す。これらの領域の縦方向D1の長さはそれぞれ、マスク1の横方向D2の端部における全長(縦方向D1の全長)をほぼ三等分した長さとすることができる。接合部50の横方向D2の内端縁51の輪郭の凹部の底部51aは、中央領域MRに含まれていることが好ましい。マスクの装着時には、マスク本体10の横方向D2の端部においては、中央領域MRが最も湾曲しやすく、耳掛け部20aの基部22の、中央領域MRで接合されている部分が最も歪みやすいので、中央領域MRにおいて接合部50の幅方向D2の内端縁51が、より幅方向D2外側に位置することで、基部22の浮きを良好に防止できる(
図5、6)。
【0050】
接合部50の横方向D2の内端縁51の、最も幅方向D2内側の位置と最も幅方向D2の外側の位置との距離d1は、2~18mmであってよい。距離d1を上記範囲とすることで、装着時に接合部50が湾曲した状態になりにくいという上述の効果を向上できるとともに、接合部50に掛かる引張り力の縦方向D1での分布が過度に不均一になることを防止し、不要なマスク1に応力が発生することを防ぐ。
【0051】
さらに、接合部50の最大幅wmaxは、3~20mmであってよい。最大幅wmaxを上記範囲とすることで、マスク本体10と耳掛け部20aとの接合強度を高めるとともに、接合部50が形成されているマスク1の横方向D2端部が過度に硬くなって快適な装着感を低下させることを防止できる。一方、接合部50の最小幅wminは、1~18mmであってよい。最小幅wminを上記範囲とすることで、幅方向D2の内端縁51の幅方向D2外方に凹んだ形状を形成しやすくなるとともに、接合部50の硬さ増大を抑制できる。最大幅wmaxは、マスク本体10の上方領域UR及び/又は下方領域LRにあり、最小幅wminは、マスク本体10の中央領域MR内の位置にあってよい。
【0052】
、
図8~
図10に接合部50の変形例を示す。接合部50の形状は、幅方向D2の内端縁51の輪郭が幅方向D2外側に凹んだ形状を有していれば、特に限定されない。よって、例えば、
図8に示すように、凹部が台形又は他の四角形でなく、凹部の底部51aが底点となっているような形状であってもよい。すなわち、接合部50の幅方向D2の内端縁51の輪郭が、幅方向D2内方に底辺を有する三角形の形状を有していてもよい。
【0053】
図9に示すように、接合部50の幅方向D2の内端縁51の輪郭は、曲線からなっていてもよい。より具体的には、に示すように、内端縁51の輪郭が、曲率半径の中心が幅方向D2内側にある円形の一部からなっていてよい。さらに、
図10に示すように、接合部50の幅方向D2の内端縁51の輪郭は、その一部が曲線部分になっている形状であってよい。より具体的には、接合部50の内端縁51の輪郭が、マスク本体10の中央領域MR内に底部(底点)51aを有する凹部を含み、凹部より上側及び下側では、縦方向D1に沿った直線状になっていてよい。
【0054】
なお、接合部50は、接合部50内の領域全体で連続して、耳掛け部20aとマスク本体10とが接合されてもよい。或いは、接合部50が、微視的に耳掛け部20aとマスク本体10とが接合されている接合小部分と、微視的に耳掛け部20aとマスク本体10とが接合されていない非接合小部分とを含んでいてもよい。後者のように、接合小部分と非接合小部分とを含む接合部50によれば、柔軟性及び接着強度のバランスを確保でき、好ましい。上記の接合小部分は、接合部50の領域内で散在しているドット状、縦方向D1又は横方向D2に延びる複数の線、格子、クロスハッチ等として形成されていてよい。
【0055】
(補助材付きマスク)
図11に、本発明の別の実施形態によるマスク101を外面側から見た平面図を示す。また、
図12に、
図11のX-X線断面図を示す。マスク101の基本的な構造及び得られる効果等は、マスク1(
図1)と同様である。しかし、マスク101は、耳掛け部20aがマスク本体10に直接的に接合しておらず、シート状の補助材130を介して接合されている点で、マスク1(
図1)と異なる。
【0056】
図11及び
図12に示すように、補助材130、130は、マスク本体10の横方向D2の端部にそれぞれ設けられている。そして、補助材130、130は、マスク本体10の、一対の耳掛け部20a、20aが重ねられている側に配置されている。すなわち、マスク本体10の横方向D2の端部においては、マスク本体10、耳掛け部20a、及び補助材130が重ねて配置されている。
【0057】
補助材130は、幅方向D2の外側でマスク本体10と接合され、幅方向D2の内側で耳掛け部20aと接合されている。これにより、耳掛け部20aは、補助材130を介して間接的にマスク本体10の横方向D2の端部に接合され、縦方向D1にわたる接合部150が形成されている。接合部150は、補助材130とマスク本体10とが直接接合されて形成された接合部である。一方、補助材130と耳掛け部20aとは第2接合部160によって直接接合されている。
【0058】
このように、耳掛け部20aがマスク本体10に直接ではなく、補助材130を介して間接的に接合されていることで、様々な利点が得られる。例えば、マスク本体10及び耳掛け部20aは通常、それぞれ目的に適った異なる材料(例えば伸縮性の異なる材料)から形成されているため、十分な強度では直接接合できない場合があるが、本形態のように補助材130を介在させることで、耳掛け部20aとマスク本体10との伸縮性の差が緩衝され、耳掛け部20a、20aとマスク本体10とを強固に結合させることができる。また、補助材130を用いることで、耳掛け部20a、20aが、マスク本体10に対してより自由に変形したり動いたりすることができるので、様々な使用者の顔にフィットさせることができる。
【0059】
マスク101を使用する場合も、耳掛け部20a、20a同士の結合部28における結合を解除して、耳掛け部20a、20aを幅方向D2外方に開き、耳掛け部20a、20aを装着者の各耳に掛ける。この時、第2接合部160で接合されている耳掛け部20aと補助材130とは、一体的に展開される。耳掛け部20aが展開されると、補助材130が接合部150にて折り返される。よって、補助材130は、耳掛け部20aの一部又は延長部分ともいえる。
【0060】
マスク101においても、接合部150の横方向D2の内端縁151の輪郭は、横方向D2外方に凹んだ形状を有する。
図11に示す接合部150の形状は、
図1に示すマスク1の接合部50と同様に、幅方向D2外側に短い上辺を有する台形の形状となっている。よって、マスク101においても、装着時のマスク本体10の変形に伴う耳掛け部20aの変形若しくは歪みを低減し、耳掛け部20aのマスク本体10からの浮きを防止できる。より具体的には、マスク本体10に直接接合されている補助材130の折り返された部分の立ち上がり(浮き)を防止でき、ひいては耳掛け部20aの浮きを防止できる。
【0061】
図11に示すように、補助材130は、マスク1の縦方向D1にわたって延在していてよい。また、補助材130の横方向D2の長さ(幅)は、マスク1全体のサイズ及び構成、マスク本体10及び耳掛け部20aのサイズ、形状、材質にもよるが、15~35mmであると好ましい。補助材130の目付は、5~100g/m
2であってよい。また、補助材30の厚みは、100~1,000μmであってよい。
【0062】
補助材130は、伸縮性のない若しくは小さい材料から形成してもよいし、ある程度の伸縮性を有する材料から形成されていてもよい。補助材30には、例えば、伸縮性不織布を含んでいてよい。その場合、補助材130は、少なくとも横方向D2で伸縮性を有することが好ましいが、補助材130の伸縮性は耳掛け部20aの伸縮性よりも小さいことが好ましい。なお、補助材130は、力が掛かると形状が不可逆的に変形し得る材料から形成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 マスク
1' 従来のマスク
10 マスク本体
15 プリーツ
18 マーク
20 耳掛け部シート
20a 耳掛け部
22 基部
23 上側延在部
24 耳後方配置部
25 摘み部
26 下側延在部
28 分離可能な結合部
29 開口
30 補助材
50、150 接合部
50' 従来の接合部
51、151 接合部の幅方向の内端縁
51' 従来の接合部の幅方向の内端縁
51a 内端縁の凹部の底部
130 補助材
160 第2接合部
D1 縦方向(上下方向)
D2 横方向(左右方向)