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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】荷崩れ判定装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021043888
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143404
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三田 達也
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037464(JP,A)
【文献】特開2020-029316(JP,A)
【文献】特開2005-225592(JP,A)
【文献】特開平07-101696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0090285(US,A1)
【文献】特開2011-195334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00- 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷取り対象となる第1パレットの水平方向に隣接する第2パレットに、荷崩れが生じるか否かを判定する荷崩れ判定装置であって、
前記第1パレット及び前記第2パレットを撮像するように配置されたカメラと、
前記カメラから画像データを取得する取得部と、
前記画像データが入力されることにより前記第2パレットに荷崩れが生じるか否かを示す指標を出力する学習済みモデルを記憶した記憶装置と、
前記学習済みモデルの出力結果から前記第2パレットに荷崩れが生じるか否かを判定する判定部と、を備える荷崩れ判定装置。
【請求項2】
荷取り対象となる第1パレットに隣接する第2パレットに、荷崩れが生じるか否かを判定する荷崩れ判定装置であって、
前記第1パレット及び前記第2パレットを撮像するように配置されたカメラと、
前記カメラから画像データを取得する取得部と、
前記画像データが入力されることにより前記第2パレットに荷崩れが生じるか否かを示す指標を出力する学習済みモデルを記憶した記憶装置と、
前記学習済みモデルの出力結果から前記第2パレットに荷崩れが生じるか否かを判定する判定部と、を備え
前記学習済みモデルは、フォークリフトが前記第1パレットの正面に位置している状態で、前記フォークリフトの進行方向において、前記第1パレットよりも前記第2パレットのほうが前記フォークリフトの近くに位置している状況が写る画像データ、及び前記第1パレットの一部が前記第2パレットに引っかかっている状況が写る画像データの少なくとも1つを教師データとして学習されたものである荷崩れ判定装置。
【請求項3】
前記カメラは、フォークリフトのマストに取り付けられている請求項1又は請求項2に記載の荷崩れ判定装置。
【請求項4】
前記カメラは、前記第1パレット及び前記第2パレットの荷取りが行われる荷取り位置を撮像するように、フォークリフトが用いられる区域に設けられている請求項1又は請求項2に記載の荷崩れ判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷崩れ判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークに積載されたパレットの搬送を行うフォークリフトとしては、例えば、特許文献1に開示されている。フォークリフトは、フォークにパレットを積載する荷取り作業を行った後に、パレットを搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-109030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォークにパレットを積載する際に、荷取り対象となるパレットが、このパレットに隣接するパレットに干渉する場合がある。この場合、荷取り対象となるパレットに隣接するパレットに荷崩れが生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する荷崩れ判定装置は、荷取り対象となる第1パレットに隣接する第2パレットに、荷崩れが生じるか否かを判定する荷崩れ判定装置であって、前記第1パレット及び前記第2パレットを撮像するように配置されたカメラと、前記カメラから画像データを取得する取得部と、前記画像データが入力されることにより前記第2パレットに荷崩れが生じるか否かを示す指標を出力する学習済みモデルを記憶した記憶装置と、前記学習済みモデルの出力結果から前記第2パレットに荷崩れが生じるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0006】
これによれば、第2パレットに荷崩れが生じるか否かを判定することができる。
上記荷崩れ判定装置について、前記カメラは、フォークリフトのマストに取り付けられていてもよい。
【0007】
上記荷崩れ判定装置について、前記カメラは、前記第1パレット及び前記第2パレットの荷取りが行われる荷取り位置を撮像するように、フォークリフトが用いられる区域に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1パレットに隣接する第2パレットに、荷崩れが生じるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】フォークリフトが運用される区域を示す模式図。
図2】パレットの斜視図。
図3】フォークリフトの側面図。
図4】フォークリフトの構成を示すブロック図。
図5】荷崩れ判定処理を示すフローチャート。
図6】荷崩れが生じるおそれがある状況の一例を示す図。
図7】荷崩れ判定装置の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、荷崩れ判定装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、区域A1には、停車位置A2が設定されている。区域A1は、例えば、工場、港湾、空港、商業施設及び公共施設などの場所の全体、あるいは、一部である。停車位置A2は、トラックTが停車する位置である。区域A1では、フォークリフト10が運用されている。フォークリフト10は、トラックTに積まれたパレットPをフォークリフト10に積載する荷取り作業を行った後に、パレットPを別の場所や別の装置まで搬送する。停車位置A2は、トラックTに積まれたパレットPの荷取りが行われる荷取り位置である。トラックTには複数のパレットPが積まれている。フォークリフト10は、複数のパレットPのうち第1パレットP1を積載しようとしている。第1パレットP1に隣接するパレットPを第2パレットP2とする。第1パレットP1は、フォークリフト10の荷取り対象となるパレットPである。第2パレットP2は、荷取り対象となる第1パレットP1に隣接するパレットPである。
【0011】
図2に示すように、本実施形態のパレットPはメッシュパレットである。パレットPは、収容部Cと、脚部Lと、を備える。脚部Lは、複数設けられている。脚部Lは、収容部Cから突出している。脚部Lは、突出部LPを備える。突出部LPは、平面視において、収容部Cよりも外側に突出している。即ち、脚部Lを下方にしてパレットPを配置した場合、突出部LPは収容部Cよりも水平方向に突出している。
【0012】
図3に示すように、フォークリフト10は、荷役装置11を備える。荷役装置11は、マスト12と、リフトブラケット15と、フォーク16と、リフトシリンダ20と、ティルトシリンダ21と、を備える。マスト12は、アウタマスト13と、インナマスト14と、を備える。アウタマスト13は、前後に傾動可能に支持されている。インナマスト14は、アウタマスト13に対して昇降可能に設けられている。リフトブラケット15は、インナマスト14に固定されている。フォーク16は、リフトブラケット15に固定されている。フォーク16には、パレットPが積載される。リフトブラケット15及びフォーク16は、インナマスト14とともに昇降する。リフトシリンダ20は、インナマスト14を昇降動作させる。ティルトシリンダ21は、マスト12を傾動動作させる。リフトシリンダ20及びティルトシリンダ21は、油圧シリンダである。本実施形態のフォークリフト10は、フォークリフト10に搭乗した搭乗者によって操作される。
【0013】
図4に示すように、フォークリフト10は、油圧機構22と、荷崩れ判定装置30と、警報装置32と、を備える。荷崩れ判定装置30は、カメラ31と、制御装置41と、補助記憶装置51と、を備える。
【0014】
油圧機構22は、フォークリフト10に荷役を行わせるための部材である。油圧機構22は、ポンプを駆動させるための荷役モータと、リフトシリンダ20及びティルトシリンダ21への作動油の給排を制御するコントロールバルブと、を含む。
【0015】
カメラ31は、デジタルカメラである。カメラ31は、撮像素子を備える。撮像素子としては、例えば、CCDイメージセンサ(Charge Coupled Device image sensor)、及びCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor image sensor)を挙げることができる。カメラ31としては、例えば、RGBカメラ、赤外線カメラ、グレースケールカメラ、及び可視光カメラを挙げることができる。
【0016】
カメラ31は、所定のフレームレートで撮像を行って画像データを生成する。この画像データは、カメラ31で撮像した画像のデジタルデータである。カメラ31は、フォーク16にパレットPを積載する際に、フォーク16に積載するパレットP及びこのパレットPに隣接するパレットPが撮像されるように配置されている。即ち、カメラ31は、第1パレットP1及び第2パレットP2を撮像するように配置されている。カメラ31は、フォーク16に積載されたパレットPが画像データに写り込まないように配置することが好ましい。カメラ31は、マスト12の上部に設けられている。本実施形態において、カメラ31は、インナマスト14の上部に設けられている。従って、カメラ31は、インナマスト14とともに昇降可能に設けられている。
【0017】
警報装置32は、フォークリフト10の搭乗者に警報を行うための装置である。警報装置32は、音による警報を行う装置であってもよいし、光による警報を行う装置であってもよい。音による警報を行う装置としては、例えば、ブザー及び拡声器を挙げることができる。光による警報を行う装置としては、例えば、ランプを挙げることができる。
【0018】
制御装置41は、プロセッサ42と、記憶部43と、を備える。プロセッサ42としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びDSP(Digital Signal Processor)を挙げることができる。記憶部43は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部43は、処理をプロセッサ42に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部43、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置41は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0019】
制御装置41は、取得部44と、判定部45と、制御部46と、を備える。取得部44、判定部45及び制御部46は、制御装置41がプログラムを実行することで機能する機能要素である。
【0020】
補助記憶装置51は、制御装置41が読み取り可能な情報を記憶している。補助記憶装置51としては、例えば、ハードディスクドライブ、及びソリッドステートドライブを挙げることができる。
【0021】
補助記憶装置51は、学習済みモデルM1を記憶している記憶装置である。学習済みモデルM1は、画像データが入力されることにより、荷取り対象となる第1パレットP1に隣接する第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを示す指標を出力する対応関係を規定している。
【0022】
制御装置41が行う荷崩れ判定処理について説明する。荷崩れ判定処理は、第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを判定する処理である。なお、本実施形態における第2パレットP2の荷崩れは、第2パレットP2が置かれている位置からの第2パレットP2の落下を含む。第2パレットP2が平パレットの場合、第2パレットP2の荷崩れは、第2パレットP2に置かれた荷が崩れることを含む。即ち、第2パレットP2の荷崩れとは、第2パレットP2、あるいは、第2パレットP2に置かれた荷が、フォークリフト10により搬送可能な姿勢から搬送不可能な姿勢になることをいう。
【0023】
図5に示すように、ステップS1において、制御装置41は、カメラ31から画像データを取得する。制御装置41は、ステップS1の処理を行うことで、取得部44を備えているといえる。
【0024】
次に、ステップS2において、制御装置41は、学習済みモデルM1を用いた荷崩れ判定を行う。本実施形態の学習済みモデルM1は、画像データが入力されることで、画像データが予め定められたクラスに該当するか否かの指標を出力する。クラスとしては「荷崩れが生じる」及び「荷崩れが生じない」が設定されている。画像データが各クラスに該当するか否かを示す指標として、蓋然性を用いている。蓋然性とは、画像データがクラスに該当する信頼度ともいえる。蓋然性としては、例えば、クラス確率、及びスコアを用いることができる。クラス確率とは、画像データがクラスに該当する確率である。クラス確率は、0以上1以下の値である。スコアは、画像データがクラスに該当する確率が高いほど大きくなる値である。本実施形態では、画像データが各クラスに該当するか否かを示す指標として、クラス確率を用いている。そして、このクラス確率が、第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを示す指標である。
【0025】
学習済みモデルM1は、DNN(Deep Neural Network)を用いた機械学習によって生成されている。機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、CNN(Convolution Neural Network)を用いることができる。CNNは、画像データ毎に、該当するクラスを判定する。CNNは、入力層と、中間層と、出力層と、を備える。入力層には、画像データが入力される。中間層は、畳み込み層と、プーリング層と、を含む。中間層では、画像データの特徴量抽出が行われる。出力層は、クラス確率を出力する。
【0026】
学習済みモデルM1は、教師データを用いた教師有り学習、あるいは、半教師有り学習によって生成される。教師データとしては、画像データにラベルを付したものを挙げることができる。本実施形態では、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがある状況の第1パレットP1及び第2パレットP2が写る画像データに「荷崩れが生じる」のラベルを付したデータを教師データとする。また、荷崩れが生じるおそれがないと想定される状況の第1パレットP1及び第2パレットP2が写る画像データに「荷崩れが生じない」のラベルを付したデータを教師データとする。
【0027】
図6に示すように、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがある状況としては、第1パレットP1よりも第2パレットP2のほうがフォークリフト10の近くに位置している状況を挙げることができる。詳細にいえば、フォークリフト10が第1パレットP1の正面に位置している状態で、フォークリフト10の進行方向において、第1パレットP1よりも第2パレットP2のほうがフォークリフト10の近くに位置している状況である。この場合、フォーク16に第1パレットP1を積載し、フォークリフト10を後退させる際に、第1パレットP1に引き摺られて第2パレットP2が移動することで荷崩れを起こすおそれがある。また、第1パレットP1の突出部LPが第2パレットP2に引っ掛かっている状況も、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがある状況である。即ち、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがある状況とは、第1パレットP1が第2パレットP2に干渉する状況である。荷崩れが生じるおそれがないと想定される状況とは、第1パレットP1が第2パレットP2に干渉しない状況である。
【0028】
制御装置41は、上記した学習済みモデルM1に画像データを入力することで、「荷崩れが生じる」のクラス確率と、「荷崩れが生じない」のクラス確率とを得ることができる。
【0029】
図5に示すように、次に、ステップS3において、制御装置41は、第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを判定する。制御装置41は、「荷崩れが生じる」のクラス確率が閾値以上の場合、第2パレットP2に荷崩れが生じると判定する。閾値としては、フォークリフト10の管理者が任意に設定することができる。ステップS3の処理を行うことで、制御装置41は、判定部45を備えているといえる。制御装置41は、ステップS3の判定結果が否定の場合、荷崩れ判定処理を終了する。制御装置41は、ステップS3の判定結果が肯定の場合、ステップS4の処理を行う。
【0030】
ステップS4において、制御装置41は、警報装置32による警報を行う。警報装置32がブザーや拡声器であれば、音を発生させることで警報を行う。警報装置32がランプであれば、ランプを点灯や点滅させることで警報を行う。ステップS4の処理を行うことで、制御装置41は、警報装置32による警報を行う制御部46を備えているといえる。
【0031】
本実施形態の作用について説明する。
フォークリフト10が第1パレットP1をフォーク16に積載しようとする際に、第2パレットP2が荷崩れするおそれがあると、警報装置32による警報が行われる。これにより、フォークリフト10の搭乗者は、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがあることを認識できる。
【0032】
本実施形態の効果について説明する。
(1)制御装置41は、学習済みモデルM1を用いて第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを判定できる。
【0033】
(2)第2パレットP2に荷崩れが生じると判定した場合、制御装置41は、警報装置32による警報を行うことで、フォークリフト10の搭乗者に荷崩れが生じるおそれがあることを認識させる。フォークリフト10の搭乗者は、目視確認を行ったり、第2パレットP2に第1パレットP1が干渉しないように第1パレットP1の荷取り作業を行う。これにより、第2パレットP2に荷崩れが生じることを抑制できる。特に、パレットPとしてメッシュパレットを用いる場合、突出部LPが隣接するパレットPに干渉しやすく、荷崩れが発生しやすい。学習済みモデルM1を用いて第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを判定することで、第2パレットP2に荷崩れが生じることを適切に抑制できる。
【0034】
(3)カメラ31は、フォークリフト10のマスト12に取り付けられている。停車位置A2を撮像するように、カメラ31を区域A1に設けることも考えられる。この場合には、カメラ31は固定位置に設けられるため、予め停車位置A2を設定しておき、停車位置A2を撮像するようにカメラ31を取り付ける必要がある。この場合、予め設定された停車位置A2でしか第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを判定することができない。これに対し、カメラ31をマスト12に取り付けることで、カメラ31はフォークリフト10とともに移動する。このため、予め設定された停車位置A2以外であっても、第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを判定することができる。
【0035】
(4)学習済みモデルM1を用いて第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを判定している。ステレオカメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等の測距装置を用いて第1パレットP1と第2パレットP2の位置関係を把握し、この位置関係から第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かを判定することも考えられる。しかしながら、第1パレットP1と第2パレットP2の位置関係を把握するためには、測距装置の検出結果に基づきパレットPの抽出を行った上で、位置関係を把握する必要がある。複数のパレットPが存在する場合、形状が把握しにくく、パレットPの抽出を行いにくい場合がある。また、パレットPの種類は、メッシュパレット以外にも多数存在するため、これらに対応してパレットPの抽出を行うのは非常に困難である。これに対し、学習済みモデルM1を用いることで、未知のパレットであっても、荷崩れが生じるか否かを判定することができる。
【0036】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○制御装置41は、第2パレットP2に荷崩れが生じると判定した場合、荷役装置11を停止させてもよい。例えば、制御装置41は、油圧機構22を制御することで、フォーク16の昇降動作、及びフォーク16のティルト動作を停止させる。この場合、制御装置41は、警報装置32による警報を行ってもよいし、警報を行わなくてもよい。制御装置41は、第2パレットP2に荷崩れが生じると判定した場合、荷役装置11の停止、及び警報のうち少なくともいずれかを行う制御部46を備えているといえる。
【0037】
○取得部44及び判定部45として機能する装置と、補助記憶装置51とは、フォークリフト10とは異なる位置に設けられていてもよい。この場合、フォークリフト10に通信装置を設けて、通信装置がカメラ31によって撮像された画像データを送信するようにする。取得部44は、通信装置から送信された画像データを受信し、判定部45は学習済みモデルM1の出力結果から第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かの判定を行う。判定結果は、フォークリフト10に送信される。フォークリフト10では、判定結果に応じて、警報装置32による警報や荷役装置11の停止が行われる。
【0038】
図7に示すように、荷崩れ判定装置61は、区域A1に設けられていてもよい。荷崩れ判定装置61は、カメラ62と、制御装置63と、補助記憶装置64と、を備える。カメラ62は、区域A1に設けられている。カメラ62は、停車位置A2を撮像するように区域A1に取り付けられている。これにより、カメラ62は、トラックTに積まれた第1パレットP1及び第2パレットP2を撮像可能である。制御装置63は、制御装置41と同様の装置である。補助記憶装置64は、補助記憶装置51と同様の装置であって学習済みモデルM1を記憶している。制御装置63は、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがあると判定すると、警報装置71による警報を行ってもよい。警報装置71がブザーや拡声器の場合、警報装置71は、フォークリフト10の搭乗者が警報装置71からの音を認識できる位置に配置される。警報装置71がランプの場合、警報装置71は、フォークリフト10の搭乗者が視認可能な位置に配置される。また、荷崩れ判定装置61は、通信装置65を備えていてもよい。通信装置65は、フォークリフト10に情報を送信可能である。制御装置63は、第2パレットP2に荷崩れが生じると判定した場合、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがあることを通信装置65によってフォークリフト10に通知してもよい。フォークリフト10では、通信装置65からの通知によって、警報装置32による警報、及び荷役装置11の停止の少なくともいずれかが行われる。
【0039】
カメラ62を区域A1に設ける場合、フォークリフト10毎にカメラ31を設ける必要がない。区域A1で複数のフォークリフト10が用いられる場合、フォークリフト10毎にカメラ31を設けると、コストの増加を招く。これに対し、カメラ62を区域A1に設ける場合、停車位置A2毎にカメラ62を設ければよく、フォークリフト10の数によるコストの増加を抑制できる。
【0040】
○カメラ31は、アウタマスト13の上部に設けられていてもよい。即ち、カメラ31は、マスト12に取り付けられていればよい。
○フォークリフト10は、自動で動作するフォークリフトであってもよい。この場合、第2パレットP2に荷崩れが生じると判定した場合、制御装置41は、油圧機構22を制御することで、荷役装置11を停止させてもよい。制御装置41は、荷役装置11を停止させたことの通知を行ってもよい。通知は、警報装置32による警報によって行われてもよい。フォークリフト10に指示を与える上位制御装置が存在している場合には、フォークリフト10に通信装置を搭載し、この通信装置により上位制御装置に通知が行われるようにしてもよい。通知が行われた後には、人による目視確認が行われる。目視確認で、第2パレットP2に荷崩れが生じないと判定された場合、荷役装置11の動作が再開される。
【0041】
○パレットPは、メッシュパレットとは異なるパレットであってもよい。例えば、パレットPは、平パレット、又はポストパレットであってもよい。また、パレットPは、複数種類のパレットを含んでいてもよい。この場合、パレットPの種類に応じた教師データによって学習を行った学習済みモデルM1を用いてもよい。
【0042】
○荷取り位置は、パレットPの荷取りが行われる場所であればよく、トラックTの停車位置A2とは異なる位置であってもよい。例えば、棚に置かれたパレットPの荷取りが行われる場合、棚の配置位置が荷取り位置である。
【0043】
○学習済みモデルM1は、CNN以外のアルゴリズムを用いたモデルであってもよい。例えば、機械学習のアルゴリズムとしては、SSD(Single Shot Multibox Detector)、R-CNN(Regional Convolutional Neural Network)、fast R-CNN、faster R-CNN、及びYOLO(You Only Look Once)を挙げることができる。これらのアルゴリズムは、画像データに含まれる物体毎にクラスを判定するものである。学習済みモデルM1は、画像データ毎にクラスを判定するものであってもよいし、物体毎にクラスを判定するものであってもよい。
【0044】
○学習済みモデルM1は、インスタンスセグメンテーション又はセマンティックセグメンテーションを用いたものであってもよい。インスタンスセグメンテーションは、ピクセル単位でクラスを判定する。インスタンスセグメンテーションを用いる場合、機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、FCN(Fully Convolutional Network)、及びSegNetを用いることができる。セマンティックセグメンテーションは、ピクセル単位でクラスを判定し、かつ、物体が存在する領域を分割する。セマンティックセグメンテーションを用いる場合、機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、Mask R-CNNを用いることができる。
【0045】
○学習済みモデルM1は、DNN以外のアルゴリズムで生成されていてもよい。例えば、学習済みモデルM1は、SVM(Support Vector Machine)を用いて生成されていてもよい。この場合、制御装置41は、特徴量抽出を行う。学習済みモデルM1は、特徴量抽出により得られた特徴量から物体の該当するクラスの指標を出力する。特徴量抽出の手法としては、例えば、HOG(Histograms of Oriented Gradients)、及びSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)を挙げることができる。
【0046】
○画像データが各クラスに該当するか否かを示す指標は、該当するクラスを示す値であってもよい。例えば「荷崩れが生じる」が0、「荷崩れが生じない」が1に対応する場合、学習済みモデルM1は、画像データが入力されることで1か0かを出力してもよい。
【0047】
○フォークリフト10は、遠隔地にいる操作者によって操作されるフォークリフトであってもよい。この場合、警報装置32は、上記した遠隔地に設けられていてもよい。荷崩れ判定装置30によって第2パレットP2に荷崩れが生じると判定されると、遠隔地に設けられた警報装置32により警報が行われる。
【0048】
○学習済みモデルM1を記憶する記憶装置は、記憶部43であってもよい。
○学習済みモデルM1は、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがある状況の第1パレットP1及び第2パレットP2が写る画像データに「荷崩れが生じる」のラベルを付したデータのみを教師データとして生成されていてもよい。即ち、荷崩れが生じるおそれがないと想定される状況の第1パレットP1及び第2パレットP2が写る画像データに「荷崩れが生じない」のラベルを付したデータを用いた学習を行わなくてもよい。この場合、学習済みモデルM1は、カメラ31から取得した画像データが「荷崩れが生じる」のクラスに該当するクラス確率を出力する。制御装置41は、クラス確率が予め定められた閾値以上の場合、第2パレットP2に荷崩れが生じると判定する。
【0049】
○学習済みモデルM1は、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがないと想定される状況の第1パレットP1及び第2パレットP2が写る画像データに「荷崩れが生じない」のラベルを付したデータのみを教師データとして生成されていてもよい。即ち、第2パレットP2に荷崩れが生じるおそれがある状況の第1パレットP1及び第2パレットP2が写る画像データに「荷崩れが生じる」のラベルを付したデータを用いた学習を行わなくてもよい。この場合、学習済みモデルM1は、カメラ31から取得した画像データが「荷崩れが生じない」のクラスに該当するクラス確率を出力する。制御装置41は、クラス確率が予め定められた閾値未満の場合、第2パレットP2に荷崩れが生じると判定する。この場合、「荷崩れが生じない」のクラスに該当するクラス確率が、第2パレットP2に荷崩れが生じるか否かの指標である。
【0050】
○取得部44及び判定部45は、それぞれ、別の装置であってもよい。また、油圧機構22の制御など、フォークリフト10の荷役に関する制御を行う制御装置41と、取得部44及び判定部45として機能する装置とは別の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
A2…荷取り位置としての停車位置、P1…第1パレット、P2…第2パレット、10…フォークリフト、12…マスト、30,61…荷崩れ判定装置、31,62…カメラ、44…取得部、45…判定部、51,64…記憶装置としての補助記憶装置。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7