(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H02M7/12 K
(21)【出願番号】P 2021051726
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 定典
(72)【発明者】
【氏名】中田 健一
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-289228(JP,A)
【文献】特開2008-193878(JP,A)
【文献】特開2004-304970(JP,A)
【文献】特開2011-244583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置であって、
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
第1キャパシタと、
前記交流電源が接続される一対の入力端と、第1インダクタと、上アームスイッチング素子と、下アームスイッチング素子と、上アーム整流素子と、下アーム整流素子と、を有する一次側回路と、
第2インダクタと、二次側整流素子と、出力キャパシタと、第1出力端及び第2出力端と、を有する整流平滑回路と、
を備え、
前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子の直列接続と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の直列接続とがブリッジ回路を構成するとともに、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との接続点と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の接続点とが、前記一対の入力端と、前記第1インダクタを介して接続され、
前記一次側回路は、バッファスイッチング素子とバッファキャパシタとを有するバッファ回路を含み、
前記一次側回路は、前記第1キャパシタを介して、前記トランスの一次巻線と接続され、
前記整流平滑回路は、前記トランスの二次巻線と接続さ
れ、
前記バッファ回路は、前記トランスの一次巻線と並列に接続されている、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置であって、
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
第1キャパシタと、
前記交流電源が接続される一対の入力端と、第1インダクタと、上アームスイッチング素子と、下アームスイッチング素子と、上アーム整流素子と、下アーム整流素子と、を有する一次側回路と、
第2インダクタと、二次側整流素子と、出力キャパシタと、第1出力端及び第2出力端と、を有する整流平滑回路と、
第2キャパシタと、
を備え、
前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子の直列接続と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の直列接続とがブリッジ回路を構成するとともに、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との接続点と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の接続点とが、前記一対の入力端と、前記第1インダクタを介して接続され、
前記一次側回路は、バッファスイッチング素子とバッファキャパシタとを有するバッファ回路を含み、
前記一次側回路は、前記第1キャパシタを介して、前記トランスの一次巻線と接続され、
前記整流平滑回路は、前記トランスの二次巻線と接続さ
れ、前記第1出力端と前記出力キャパシタの一端とが接続され、前記第2出力端と前記出力キャパシタの他端とが接続され、前記第2インダクタの一端が、前記二次側整流素子を介して、前記出力キャパシタの一端に接続され、前記第2インダクタの他端が、前記出力キャパシタの他端に接続されており、
前記整流平滑回路は、前記第2キャパシタを介して、前記トランスの二次巻線に接続され、
前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のどちらか一方が非導通状態のときに前記二次側整流素子が導通する極性を有するように磁気結合している、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置であって、
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
第1キャパシタと、
前記交流電源が接続される一対の入力端と、第1インダクタと、上アームスイッチング素子と、下アームスイッチング素子と、上アーム整流素子と、下アーム整流素子と、を有する一次側回路と、
第2インダクタと、二次側整流素子と、出力キャパシタと、第1出力端及び第2出力端と、を有する整流平滑回路と、
第2キャパシタと、
を備え、
前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子の直列接続と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の直列接続とがブリッジ回路を構成するとともに、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との接続点と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の接続点とが、前記一対の入力端と、前記第1インダクタを介して接続され、
前記一次側回路は、バッファスイッチング素子とバッファキャパシタとを有するバッファ回路を含み、
前記一次側回路は、前記第1キャパシタを介して、前記トランスの一次巻線と接続され、
前記整流平滑回路は、
前記トランスの二次巻線と接続さ
れ、前記第1出力端と前記出力キャパシタの一端とが接続され、前記第2出力端と前記出力キャパシタの他端とが接続され、前記二次側整流素子の一端が、前記第2インダクタを介して、前記出力キャパシタの一端に接続され、前記二次側整流素子の他端が、前記出力キャパシタの他端に接続されており、
前記整流平滑回路は、前記第2キャパシタを介して、前記トランスの二次巻線に接続され、
前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のどちらか一方が非導通状態のときに前記二次側整流素子が導通する極性を有するように磁気結合している、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
前記バッファ回路は、前記ブリッジ回路に対して並列に接続されている、
請求項
2、又は3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記上アームスイッチング素子、前記下アームスイッチング素子、および前記上アーム整流素子、前記下アーム整流素子、前記二次側整流素子のうちのいずれかまたは全てがスイッチング素子で構成される場合の当該スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記交流電圧と、前記第1インダクタを流れる電流とに基づいて、入力電力の力率が改善するようにスイッチングを制御する、
請求項1から
4のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記上アームスイッチング素子、前記下アームスイッチング素子、および前記上アーム整流素子、前記下アーム整流素子、前記二次側整流素子のうちのいずれか、又は全てがスイッチング素子で構成される場合において、当該スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記第1出力端と前記第2出力端との間の電圧に基づいて、所定の直流電圧が出力されるように、スイッチングを制御する、
請求項1から
5のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、特に、交流電圧から直流電圧に変換するとともに、入力と出力とを絶縁する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力と出力とを絶縁するとともに、交流電圧から直流電圧に変換する回路として、トランスと、トランスの一次側に設けられた整流回路、及びインバータ回路と、トランスの二次側に設けられた整流回路とを備える電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の電力変換装置は、両整流回路、及びインバータ回路が、それぞれフルブリッジ回路により構成されている。この回路では、入力された交流電圧は、整流回路で直流電圧に変換されたのち、インバータ回路で高周波の交流電圧に変換してトランスに印加され、トランスにより絶縁して伝達され、再度整流回路で直流に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、2つの整流回路とインバータ回路の合計3つのブリッジ回路を用いるため、能動素子の数を少なくすることが困難であった。ここで、能動素子とは、スイッチング素子と整流素子の総称である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する電力変換装置は、交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置であって、一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、第1キャパシタと、前記交流電源が接続される一対の入力端と、第1インダクタと、上アームスイッチング素子と、下アームスイッチング素子と、上アーム整流素子と、下アーム整流素子と、を有する一次側回路と、第2インダクタと、二次側整流素子と、出力キャパシタと、第1出力端及び第2出力端と、を有する整流平滑回路と、を備え、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子の直列接続と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の直列接続とがブリッジ回路を構成するとともに、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との接続点と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の接続点とが、前記一対の入力端と、前記第1インダクタを介して接続され、前記一次側回路は、バッファスイッチング素子とバッファキャパシタとを有するバッファ回路を含み、前記一次側回路は、前記第1キャパシタを介して、前記トランスの一次巻線と接続され、前記整流平滑回路は、前記トランスの二次巻線と接続されている。
【0006】
かかる構成によれば、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子とをスイッチングすることにより、トランスにより入力と出力とを絶縁するとともに、交流電圧が直流電圧に変換される。これにより、従来の回路に比して、能動素子の数を少なくできる。また、バッファ回路を用いることにより、トランスの漏れインダクタンス等に起因するサージ電圧を抑制できる。
【0007】
上記電力変換装置において、前記バッファ回路は、前記ブリッジ回路に対して並列に接続されていてもよい。
かかる構成によれば、電力変換装置は、サージ電圧の発生を抑制できる。
【0008】
上記電力変換装置において、前記バッファ回路は、前記トランスの一次巻線と並列に接続されていてもよい。
かかる構成によれば、電力変換装置は、サージ電圧を抑制できる。また、電力変換装置は、バッファキャパシタに印加される電圧を低くできる。
【0009】
上記電力変換装置において、第2キャパシタを更に有し、前記整流平滑回路は、前記第1出力端と前記出力キャパシタの一端とが接続され、前記第2出力端と前記出力キャパシタの他端とが接続され、前記第2インダクタの一端が、前記二次側整流素子を介して、前記出力キャパシタの一端に接続され、前記第2インダクタの他端が、前記出力キャパシタの他端に接続されており、前記整流平滑回路は、前記第2キャパシタを介して、前記トランスの二次巻線に接続され、前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のどちらか一方が非導通状態のときに前記二次側整流素子が導通する極性を有するように磁気結合しているものであってもよい。
【0010】
上記電力変換装置において、第2キャパシタを更に有し、前記整流平滑回路は、前記第1出力端と前記出力キャパシタの一端とが接続され、前記第2出力端と前記出力キャパシタの他端とが接続され、前記二次側整流素子の一端が、前記第2インダクタを介して、前記出力キャパシタの一端に接続され、前記二次側整流素子の他端が、前記出力キャパシタの他端に接続されており、前記整流平滑回路は、前記第2キャパシタを介して、前記トランスの二次巻線に接続され、前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のどちらか一方が非導通状態のときに前記二次側整流素子が導通する極性を有するように磁気結合しているものであってもよい。
【0011】
上記電力変換装置において、前記整流平滑回路は、前記二次側整流素子として、第1二次側整流素子と、第2二次側整流素子とを有し、前記第1出力端と前記出力キャパシタの一端とが接続され、前記第2出力端と前記出力キャパシタの他端とが接続され、前記第1二次側整流素子の一端が、前記第2インダクタを介して、前記出力キャパシタの一端に接続され、前記第1二次側整流素子の他端が、前記二次巻線の一端に接続され、前記第2二次側整流素子の一端が、前記第2インダクタと前記第1二次側整流素子との接続点に接続され、前記二次側整流素子の他端が、前記二次巻線の他端に接続され、前記出力キャパシタの他端は、前記二次巻線の中点に接続されており、前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のどちらか一方が非導通状態のときに前記第1二次側整流素子、又は前記第2二次側整流素子のいずれか一方が導通する極性を有するように磁気結合しているものであってもよい。
【0012】
上記電力変換装置において、前記上アームスイッチング素子、前記下アームスイッチング素子、および前記上アーム整流素子、前記下アーム整流素子、前記二次側整流素子のうちのいずれかまたは全てがスイッチング素子で構成される場合の当該スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部を更に備え、前記制御部は、前記交流電圧と、前記第1インダクタを流れる電流とに基づいて、入力電力の力率が改善するようにスイッチングを制御するものであってもよい。
【0013】
かかる構成によれば、交流電源から供給される電力の力率を制御できる。
上記電力変換装置において、前記上アームスイッチング素子、前記下アームスイッチング素子、および前記上アーム整流素子、前記下アーム整流素子、前記二次側整流素子のうちのいずれか、又は全てがスイッチング素子で構成される場合において、当該スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部を更に備え、前記制御部は、前記第1出力端と前記第2出力端との間の電圧に基づいて、所定の直流電圧が出力されるように、スイッチングを制御するものであってもよい。
【0014】
かかる構成によれば、出力電圧を所望の値に制御できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の回路に比して少ない能動素子で、入力と出力とを絶縁するとともに、交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図3】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図4】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図5】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図6】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図7】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図8】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図9】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図10】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図11】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図12】第1実施形態に係る電力変換装置1の動作の一例を示す図。
【
図13】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図14】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図15】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図16】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図17】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図18】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図19】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図20】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図21】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図22】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図23】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図24】第2実施形態に係る電力変換装置2の動作の一例を示す図。
【
図25】変形例1に係る電力変換装置3の動作の一例を示す図。
【
図26】変形例1に係る電力変換装置3の動作の一例を示す図。
【
図27】変形例1に係る電力変換装置3の動作の一例を示す図。
【
図28】変形例1に係る電力変換装置3の動作の一例を示す図。
【
図29】変形例1に係る電力変換装置4の構成の一例を示す図。
【
図30】変形例2に係る電力変換装置5の動作の一例を示す図。
【
図31】変形例2に係る電力変換装置5の動作の一例を示す図。
【
図32】変形例2に係る電力変換装置5の動作の一例を示す図。
【
図33】変形例2に係る電力変換装置5の動作の一例を示す図。
【
図34】変形例2に係る電力変換装置6の構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、本発明を具体化した一実施形態を説明する。電力変換装置1は、電力変換装置1は、交流電源V1から供給された交流電圧を直流電圧に変換し、電力変換装置1に接続される負荷に供給する装置である。
【0018】
電力変換装置1は、例えば、一次側回路10と、第1キャパシタ17と、トランス18と、第2キャパシタ19と、整流平滑回路20と、制御部50とを備える。
[一次側回路10について]
一次側回路10は、例えば、第1インダクタ11と、上アームダイオード12と、下アームダイオード13と、上アームスイッチング素子15と、下アームスイッチング素子16と、第1接続線CL1と、第2接続線CL2と、第1中間線ML1と、第2中間線ML2と、第1入力端t21と、第2入力端t22と、バッファ回路40とを備える。上アームダイオード12は「上アーム整流素子」の一例であり、下アームダイオード13は「下アーム整流素子」の一例である。
【0019】
交流電源V1と一次側回路10とは、電気的に接続されている。具体的には、交流電源V1の第1端t11と、一次側回路10の第1入力端t21とは、第1入力線L1によって接続されている。交流電源V1の第2端t12と一次側回路10の第2入力端t22とは、第2入力線L2によって接続されている。これにより、入力端t21,t22に交流電圧が入力される。
【0020】
上アームダイオード12と下アームダイオード13とは、第2接続線CL2によって直列に接続されている。具体的には、第2接続線CL2は、上アームダイオード12のアノードと、下アームダイオード13のカソードとを接続する。
【0021】
上アームスイッチング素子15は、第1端t31と、第2端t32とを有し、下アームスイッチング素子16は、第1端t41と、第2端t42とを有する。第1接続線CL1は、上アームスイッチング素子15の第2端t32と、下アームスイッチング素子16の第1端t41とを接続する。上アームスイッチング素子15及び下アームスイッチング素子16は、例えばパワースイッチング素子であり、本実施形態ではn型のパワーMOSFETである。両スイッチング素子15,16は、ボディダイオードを有している。ただし、上アームスイッチング素子15及び下アームスイッチング素子16は、MOSFETに限られず、逆並列ダイオードを有するIGBT等任意である。
【0022】
第1中間線ML1は、第1接続線CL1と第1入力端t21とを接続する。第1中間線ML1上には、第1インダクタ11が設けられる。第2中間線ML2は、第2接続線CL2と第2入力端t22とを接続する。したがって、上アームスイッチング素子15と下アームスイッチング素子16との接続点(つまり、第1接続線CL1上の点)と、上アームダイオード12と下アームダイオード13の接続点(つまり、第2接続線CL2上の点)とが、一対の入力端(入力端t21,t22)とは、第1インダクタ11を介して接続されている。
【0023】
上アームダイオード12のカソードと上アームスイッチング素子15の第1端t31とが接続され、下アームダイオード13のアノードと下アームスイッチング素子16の第2端t42とが接続される。したがって、上アームスイッチング素子15と下アームスイッチング素子16の直列接続と、上アームダイオード12と下アームダイオード13の直列接続とがブリッジ回路14を構成する。
【0024】
トランス18は、一次巻線W1と、二次巻線W2とを有する絶縁トランスである。一次巻線W1の始端(
図1中の黒丸が付された側)は、第1キャパシタ17を介して上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子15の第1端t31とに接続される。具体的には、第1キャパシタ17は、第1端t51と、第2端t52とを有している。一次巻線W1の始端は、第1キャパシタ17の第2端t52に接続され、第1キャパシタ17の第1端t51は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子15の第1端t31とに接続される。一次巻線W1の終端(
図1中の黒丸が付されていない側)は、下アームダイオード13のアノードと、下アームスイッチング素子16の第2端t42とに接続される。したがって、一次側回路10は、第1キャパシタ17を介して、トランス18の一次巻線W1と接続されている。
【0025】
[整流平滑回路20について]
整流平滑回路20は、第2インダクタ21と、二次側ダイオード22と、出力キャパシタ23と、第1出力線OL1と、第2出力線OL2と、第1出力端t91と、第2出力端t92とを備える。第2インダクタ21は、第1端t71と、第2端t72とを有し、出力キャパシタ23は、第1端t81と、第2端t82とを有する。二次側ダイオード22は、「二次側整流素子」の一例である。また、第1端t81は、「出力キャパシタの一端」の一例であり、第2端t82は、「出力キャパシタの他端」の一例である。
【0026】
二次巻線W2の始端(
図1中の黒丸が付された側)は、第2キャパシタ19を介して第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のアノードとに接続される。具体的には、第2キャパシタ19は、第1端t61と、第2端t62とを有している。二次巻線W2の始端は、第2キャパシタ19の第1端t61に接続され、第2キャパシタ19の第2端t62は、第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のアノードとに接続される。二次巻線W2の終端(
図1中の黒丸が付されていない側)は、第2インダクタ21の第2端t72と接続される。したがって、整流平滑回路20は、第2キャパシタ19を介して、トランス18の二次巻線W2と接続されている。
【0027】
出力キャパシタ23は、第1出力線OL1と第2出力線OL2との双方に接続されている。具体的には、出力キャパシタ23の第1端t81は、第1出力線OL1に接続されている。そして、出力キャパシタ23の第2端t82は、第2出力線OL2に接続されている。
【0028】
第2インダクタ21は、二次側ダイオード22と第2出力線OL2との双方に接続されている。具体的には、第2インダクタ21の第1端t71は、二次側ダイオード22のアノードに接続され、第2インダクタ21の第2端t72は、第2出力線OL2に接続されている。第1端t71は、「第2インダクタの一端」の一例であり、第2端t72は、「第2インダクタの他端」の一例である。
【0029】
二次側ダイオード22は、第2インダクタ21と出力キャパシタ23との間の部分に設けられている。上述したように、二次側ダイオード22のアノードと、第2インダクタ21の第1端t71とが接続されている。また、二次側ダイオード22のカソードと、出力キャパシタ23の第1端t81とが接続されている。
【0030】
[バッファ回路40について]
バッファ回路40は、バッファスイッチング素子Q3と、バッファキャパシタCcと、第3接続線CL3とを備える。バッファスイッチング素子Q3と、バッファキャパシタCcとは、第3接続線CL3によって直列に接続されている。バッファスイッチング素子Q3は、端子tq1と、端子tq2とを有し、バッファキャパシタCcは、端子tc1と、端子tc2とを有する。バッファスイッチング素子Q3の端子tq1と、バッファキャパシタCcの端子tc1とは、第3接続線CL3によって接続されている。バッファスイッチング素子Q3は、ボディダイオードを有している。バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードのアノードは、端子tq2に接続され、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードのカソードは、端子tq1に接続されている。
【0031】
また、バッファ回路40は、ブリッジ回路14と並列に接続されている。詳細には、バッファスイッチング素子Q3の端子tq2と、上アームダイオード12のカソード及び上アームスイッチング素子15の第1端t31の接続点とが、接続されている。また、バッファキャパシタCcの端子tc2と、下アームダイオード13のアノード及び下アームスイッチング素子16の第2端t42の接続点とが、接続されている。
【0032】
[制御部50について]
図1に示すように、電力変換装置1は、第1インダクタ11に流れる電流を検出する電流センサC1を備えている。また、電力変換装置1は、入力電圧を検出する電圧センサC2と、出力電圧を検出する電圧センサC3とを備えている。電流センサC1、電圧センサC2及び電圧センサC3は、その検出結果を制御部50に出力する。
【0033】
制御部50は、電流センサC1、電圧センサC2及び電圧センサC3からの信号に基づいて上アームスイッチング素子15及び下アームスイッチング素子16をON/OFFさせる。電力変換装置1は、上アームスイッチング素子15及び下アームスイッチング素子16の導通状態と非導通状態とを切り替えることにより、交流電源V1が供給する交流電圧を直流電圧に変換し、その直流電圧を両出力端t91,t92から出力する。
【0034】
詳しくは、制御部50は、入力電力の力率を改善するように各スイッチング素子15,16,Q3のスイッチングを制御する。また、制御部50は、出力端t91,t92から所定の電圧が出力されるように各スイッチング素子15,16,Q3のスイッチングを制御してもよい。
【0035】
以下、
図1~
図12を参照して、電力変換装置1の動作の詳細について説明する。制御方法は、交流電源V1において第1端t11の電位が第2端t12の電位よりも高い状態(以下、「交流電位が正の状態」とも記載する)と、第1端t11の電位が第2端t12の電位よりも低い状態(以下、「交流電位が負の状態」とも記載する)とで異なる。なお、説明の便宜上、電力変換装置1が動作開始するタイミングにおいて、各キャパシタ17、19、23は充電されているものとする。また、第1インダクタ11、トランス18の一次巻線W1及び二次巻線W2、第2インダクタ21には電流が流れているものとする。
【0036】
[交流電位が正の状態での動作]
まず、交流電位が正の状態におけるスイッチング制御について
図1~
図6を用いて説明する。
【0037】
この状態において、制御部50は、上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16及びバッファスイッチング素子Q3の導通状態と非導通状態とを切り替える。これにより、電力変換装置1の状態は、第1状態から第6状態まで遷移する。以下、各状態の詳細について説明する。
【0038】
[交流電位が正の状態:第1状態]
図1に示す第1状態は、制御部50が、上アームスイッチング素子15及び下アームスイッチング素子16を導通状態に制御し、バッファスイッチング素子Q3を非導通状態に制御した状態である。
図1に示すように、第1状態において、一次側回路10には、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra1と、第1キャパシタ17の放電に伴う電流経路ra2とに電流が流れる。また、第1状態において、整流平滑回路20には、一次巻線W1から二次巻線W2への電磁誘導による電力の転送及びトランス18の二次巻線W2からの電力の供給に伴う電流経路rb1と、出力キャパシタ23の放電に伴う電流経路rb2とに電流が流れる。
【0039】
電流経路ra1は、交流電源V1の第1端t11から、第1インダクタ11、下アームスイッチング素子16及び下アームダイオード13を経由した、交流電源V1の第2端t12までの経路である。第1状態において、電流経路ra1に流れる電流は、交流電源V1から第1インダクタ11に向かう方向に、時間の経過とともに大きくなる。
【0040】
電流経路ra2は、第1キャパシタ17の第1端t51から、上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16及び一次巻線W1の終端から始端を経由した、第1キャパシタ17の第2端t52までの経路である。トランス18の一次巻線W1には、第1キャパシタ17の両端の電圧が印加され、一次巻線W1の終端の電位が始端の電位よりも高くなる。この結果、トランス18の二次巻線W2の両端には、終端の電位が始端の電位よりも高くなるように電圧が発生する。
【0041】
電流経路rb1は、二次巻線W2の終端から、第2インダクタ21及び第2キャパシタ19を経由した、二次巻線W2の始端までの経路である。第1状態において、電流経路rb1に流れる電流は、時間の経過とともに第2インダクタ21の第2端t72から第1端t71に向かう方向に大きくなり、第2インダクタ21の磁束も当該電流の増大に伴い増加する。
【0042】
電流経路rb2は、出力キャパシタ23の第1端t81から、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷(図示せず)及び第2出力端t92を経由した、出力キャパシタ23の第2端t82までの経路である。第1出力端t91と第2出力端t92との間には、出力キャパシタ23の両端の電圧である直流電圧が生じる。出力キャパシタ23の放電により、負荷に電流を供給する。第1状態において、二次側ダイオード22は導通状態にはない。
【0043】
[交流電位が正の状態:第2状態]
図2に示す第2状態は、第1状態に遷移してから所定の時間が経過した後、制御部50が、上アームスイッチング素子15を導通状態に、バッファスイッチング素子Q3を非導通状態に、それぞれ保持したまま、下アームスイッチング素子16を非導通状態に制御した状態である。
図2に示すように、第2状態において、一次側回路10には、交流電源V1からの電力の供給と第1インダクタ11の電流の連続性による電流経路ra3と、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性による電流経路ra4とに電流が流れる。また、第2状態において、整流平滑回路20には、出力キャパシタ23から負荷への電流経路rb2と、第2インダクタ21及び二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2の電流の連続性による電流経路rb3とに電流が流れる。電流経路rb2は、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0044】
電流経路ra3は、交流電源V1の第1端t11から、第1インダクタ11、上アームスイッチング素子15、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオード、バッファキャパシタCc及び下アームダイオード13を経由した、交流電源V1の第2端t12までの経路である。第2状態では、第1インダクタ11を流れる電流は、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを通ってバッファキャパシタCcに流れ、バッファキャパシタCcを充電する。これに伴い、第1インダクタ11に印加される電圧の向きが変わり、第1インダクタ11に流れる電流は、減少する。
【0045】
電流経路ra4は、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1から、第1キャパシタ17、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオード及びバッファキャパシタCcを経由した漏れインダクタンスRw1までの経路である。第2状態では、一次巻線W1を流れる電流は、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを通ってバッファキャパシタCcに流れ、バッファキャパシタCcを充電する。このとき、一次巻線W1には、バッファキャパシタCc両端の電圧が印加される。また、第2状態に制御される前後では、一次巻線W1に印加される電圧の向きが逆になる。したがって、一次巻線W1を流れる電流は、急速に減少する。
【0046】
電流経路rb3は、二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2から、第2インダクタ21及び第2キャパシタ19を経由した二次巻線W2と漏れインダクタンスRw2とまでの経路である。
【0047】
[交流電位が正の状態:第3状態]
図3に示す第3状態は、第2状態に遷移してから所定の時間が経過した後、制御部50が、上アームスイッチング素子15を導通状態、下アームスイッチング素子16を非導通状態に保持したまま、バッファスイッチング素子Q3を導通状態に制御した状態である。
図3に示すように、第3状態において、一次側回路10には、電流経路ra3´と、電流経路ra4´とに電流が流れる。また、第3状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb2と、電流経路rb3とに電流が流れる。電流経路rb2と、電流経路rb3とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0048】
電流経路ra3´及び電流経路ra4´は、第2状態においてバッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを経由していた電流経路ra3と電流経路ra4が、第3状態では、バッファスイッチング素子Q3本体の経由に替わったものである。これにより、電流経路ra3、電流経路ra4に比して、電流経路ra3´、電流経路ra4´の抵抗を小さくすることができる。第2状態と同様に、第3状態においても、電流経路ra3´及び電流経路ra4´の電流が減少する。
【0049】
ここで、一次側回路10が第2状態である期間は、下アームスイッチング素子16を完全に非導通状態に制御する時間が確保されれば短い期間であってもよい。換言すると、第1状態から第3状態への遷移期間中に、各スイッチング素子15,16,Q3の全てが導通状態となり、バッファキャパシタCcが短絡状態とならなければ、第2状態である期間は、短い期間であってもよい。
【0050】
[交流電位が正の状態:第4状態]
図4に示す第4状態は、第3状態に遷移してから所定の時間が経過した状態である。第4状態において、一次側回路10には、交流電源V1からの電力の供給と第1インダクタ11の電流の連続性による電流経路ra5と、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分の電流が流れる電流経路ra6とに電流が流れる。また、第4状態において、整流平滑回路20には、第2インダクタ21の電流の連続性による電流経路rb4に電流が流れる。
【0051】
電流経路ra5は、交流電源V1の第1端t11から、第1インダクタ11、上アームスイッチング素子15、第1キャパシタ17、一次巻線W1及び下アームダイオード13を経由した、交流電源V1の第2端t12までの経路である。第3状態において電流経路ra4´を流れていた電流が減少し、なくなると、一次巻線W1には、交流電源V1から、第1インダクタ11、上アームスイッチング素子15及び第1キャパシタ17を経由する電流経路ra5の電流が流れる。この時、一次巻線W1を流れる電流は、第3状態において一次巻線W1に流れる電流とは逆向きの電流である。また、電流経路ra5に電流が流れることにより、第1キャパシタ17が充電され、第1インダクタ11に流れる電流は減少する。また、トランス18の一次巻線W1の始端の電位が終端の電位よりも高くなる。したがって、二次巻線W2でも始端の電位が終端の電位よりも高くなる。
【0052】
電流経路ra6は、上アームダイオード12のカソード、端子tq2、第1端t31及び第1端t51の接続点から、バッファスイッチング素子Q3及びバッファキャパシタCcを経由した、端子tc2、下アームダイオード13のアノード及び第2端t42の接続点までの経路である。電流経路ra6には、第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流との差分が流れる。具体的には、第1インダクタ11に流れる電流が、一次巻線W1に流れる電流よりも大きい場合、バッファスイッチング素子Q3を介してバッファキャパシタCcに電流が流れ、バッファキャパシタCcが充電される。また、第1インダクタ11に流れる電流が、一次巻線W1に流れる電流よりも小さい場合、バッファキャパシタCcから放電された電流がバッファスイッチング素子Q3を介して一次巻線W1に流れる。
【0053】
電流経路rb4には、2つの経路が含まれる。一つは、第2インダクタ21の第1端t71から、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した、第2インダクタ21の第2端t72までの経路である。この電流経路は、第2インダクタ21の電流の連続性によるものである。もう一つは、二次巻線W2の始端から、第2キャパシタ19、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した、二次巻線W2の終端までの経路である。これは、二次巻線W2の始端の電位が終端の電位よりも高くなるために形成される電流経路である。第4状態では、二次側ダイオード22が導通している。すなわち、上アームスイッチング素子15が導通状態で、下アームスイッチング素子16が非導通状態のとき、二次側ダイオード22が導通するような極性で、トランス18の一次巻線W1と二次巻線W2とが磁気結合している。
【0054】
[交流電位が正の状態:第5状態]
図5に示す第5状態は、第4状態に遷移してから所定の時間が経過した後、制御部50が、上アームスイッチング素子15を導通状態に、下アームスイッチング素子16を非導通状態に保持したまま、バッファスイッチング素子Q3を非導通状態に制御した状態である。
図5に示すように、第5状態において、一次側回路10には、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分の電流が電流経路ra7に流れる。また、第5状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb4に電流が流れる。電流経路ra5と、電流経路rb4とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
電流経路ra7は、端子tc2、下アームダイオード13のアノード及び第2端t42の接続点から、下アームスイッチング素子16のボディダイオードを経由した、第1接続線CL1までの経路である。第5状態では、バッファスイッチング素子Q3が非導通状態に制御されるため、第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流との差分は、電流経路ra7に流れる。具体的には、第4状態から第5状態に遷移する直前において、バッファキャパシタCcから放電され、一次巻線W1に流れていた電流は、第5状態に遷移後、電流経路ra7を流れて一次巻線W1に戻る経路に流れる。下アームスイッチング素子16のボディダイオードが導通すると、一次巻線W1に印加される電圧の極性が逆転するため、電流経路ra5に流れる電流が、交流電源V1から第1インダクタ11に向かう方向に、増加を始める。第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流とが一致すると、下アームスイッチング素子16のボディダイオードは非導通状態となる。
【0056】
[交流電位が正の状態:第6状態]
図6に示す第6状態は、第5状態に遷移してから所定の時間が経過した後、制御部50が、上アームスイッチング素子15を導通状態、バッファスイッチング素子Q3を非導通状態に保持したまま、下アームスイッチング素子16を導通状態に制御した状態である。
図6に示すように、第6状態において、一次側回路10には、電流経路ra1と、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性により電流経路ra8とに電流が流れる。また、第6状態において、整流平滑回路20には、二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2の電流の連続性によりrb5に電流が流れる。電流経路ra1については、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
電流経路ra8は、漏れインダクタンスRw1から、下アームスイッチング素子16、上アームスイッチング素子15及び第1キャパシタ17を経由した、漏れインダクタンスRw1までの経路である。第6状態では、電流経路ra1を電流が流れることによって第1インダクタ11を流れる電流が増加する。これに伴い、一次巻線W1には、第1インダクタ11を流れる電流が流れなくなるものの、漏れインダクタンスRw1が電流を流し続けようとするため、電流経路ra8の電流が発生する。ただし、一次巻線W1には、電流経路ra8に流れる電流に抗う向きの、第1キャパシタ17の電圧が印加される。このため、電流経路ra8に流れる電流は、急速に減少する。
【0058】
電流経路rb5には、2つの経路が含まれる。一つは、第2インダクタ21の第1端t71から、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した、第2インダクタ21の第2端t72までの経路である。もう一つは、二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2から、第2キャパシタ19、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した、二次巻線W2と漏れインダクタンスRw2とまでの経路である。二次巻線W2の印加電圧が反転する一方で、第2キャパシタ19が放電し、且つ第2インダクタ21が蓄えたエネルギーにより電流を流し続けることにより、電流経路rb5に電流が流れ続ける。これにより、出力キャパシタ23が充電され、第2インダクタ21の磁束は、減少する。
【0059】
その後、一次巻線W1に流れる電流が0になると、電流の流れる向きが反転する。また、二次巻線W2の電流の向きも反転し、二次側ダイオード22が非導通状態となる。これにより、電力変換装置1の状態は、
図1の第1状態に戻ることになる。
【0060】
[交流電位が負の状態での動作]
次に、交流電位が負の状態におけるスイッチング制御について
図7~
図12を用いて説明する。
【0061】
この状態において、制御部50は、上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16及びバッファスイッチング素子Q3の導通状態と非導通状態を切り替える。これにより、電力変換装置1の状態は、第1状態から第6状態まで遷移する。
【0062】
[交流電位が負の状態:第1状態]
図7に示す第1状態は、制御部50が上アームスイッチング素子15及び下アームスイッチング素子16を導通状態に制御し、バッファスイッチング素子Q3を非導通状態に制御した状態である。
図7に示すように、第1状態において、一次側回路10には、電流経路ra2と、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra9とに電流が流れる。また、第1状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb1と、電流経路rb2とに電流が流れる。電流経路ra2と、電流経路rb1と、電流経路rb2とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
電流経路ra9は、交流電源V1の第2端t12から上アームダイオード12、上アームスイッチング素子15及び第1インダクタ11を経由した交流電源V1の第1端t11までの経路である。第1状態において、電流経路ra9に流れる電流は、時間の経過とともに第1インダクタ11から交流電源V1に向かう方向に大きくなり、第1インダクタ11の磁束も当該電流の増加に伴い増加する。
【0064】
[交流電位が負の状態:第2状態]
図8に示す第2状態は、第1状態に遷移してから所定の時間が経過した後、制御部50が、下アームスイッチング素子16を導通状態に、バッファスイッチング素子Q3を非導通状態に保持したまま、上アームスイッチング素子15を非導通状態に制御した状態である。
図8に示すように、第2状態において、一次側回路10には、電流経路ra4と、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra10とに電流が流れる。また、第2状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb2と、電流経路rb3とに電流が流れる。電流経路ra4と、電流経路rb2と、電流経路rb3とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0065】
電流経路ra10は、交流電源V1の第2端t12から、上アームダイオード12、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオード、バッファキャパシタCc、下アームスイッチング素子16のボディダイオード及び第1インダクタ11を経由した、交流電源V1の第1端t11までの経路である。第2状態では、第1インダクタ11を流れる電流は、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを通ってバッファキャパシタCcに流れ、バッファキャパシタCcを充電する。これに伴い、第1インダクタ11の電流は、減少する。
【0066】
[交流電位が負の状態:第3状態]
図9に示す第3状態は、第2状態に遷移してから所定の時間が経過した後、制御部50が、上アームスイッチング素子15を非導通状態に、下アームスイッチング素子16を導通状態に保持したまま、バッファスイッチング素子Q3を導通状態に制御した状態である。
図9に示すように、第3状態において、一次側回路10には、電流経路ra4´と、電流経路ra10´とに電流が流れる。また、第3状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb2と、電流経路rb3とに電流が流れる。電流経路ra4´と、電流経路rb2と、電流経路rb3とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。電流経路ra10´は、バッファスイッチング素子Q3においてボディダイオードではなくドレイン-ソース間を流れる点を除いて、電流経路ra10と同様である。
【0067】
ここで、一次側回路10が第2状態である期間は、上アームスイッチング素子15を完全に非導通状態に制御する時間が確保されれば短い期間であってもよい。換言すると、第1状態から第3状態への遷移期間中に、各スイッチング素子15,16,Q3の全てが導通状態となり、バッファキャパシタCcが短絡状態とならなければ、第2状態である期間は、短い期間であってもよい。
【0068】
[交流電位が負の状態:第4状態]
図10に示す第4状態は、第3状態に遷移してから所定の時間が経過した状態である。
図10に示すように、第4状態において、一次側回路10には、電流経路ra6と、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra11に電流が流れる。また、第4状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb4に電流が流れる。電流経路ra6と、電流経路rb4とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
電流経路ra11は、交流電源V1の第2端t12から、上アームダイオード12、第1キャパシタ17、一次巻線W1、下アームスイッチング素子16及び第1インダクタ11を経由した、交流電源V1の第1端t11までの経路である。第3状態において電流経路ra4´を流れていた電流が減少し、なくなると、電流経路ra11が示すように、一次巻線W1には、交流電源V1から、上アームダイオード12及び第1キャパシタ17を経由して電流が流れる。この時、一次巻線W1を流れる電流は、第3状態において一次巻線W1に流れる電流とは逆向きの電流である。また、電流経路ra11に電流が流れることにより、第1キャパシタ17が充電され、第1インダクタ11に流れる電流は、減少する。トランス18の一次巻線W1には、始端の電位が終端の電位よりも低くなるように電圧が印加されるので、二次巻線W2において、始端の電位が終端の電位よりも低くなるような電圧が発生する。
【0070】
[交流電位が負の状態:第5状態]
図11に示す第5状態は、第4状態に遷移してから所定の時間が経過した後、制御部50が、上アームスイッチング素子15を非導通状態に、下アームスイッチング素子16を導通状態に保持したまま、バッファスイッチング素子Q3を非導通状態に制御した状態である。
図11に示すように、第5状態において、一次側回路10には、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分の電流が電流経路ra12に流れる。また、第5状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb4に電流に流れる。電流経路ra11と、電流経路rb4とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0071】
電流経路ra12は、上アームスイッチング素子15の第2端t32から、上アームスイッチング素子15のボディダイオードを経由した、上アームダイオード12のカソード、端子tq2、第1端t31及び第1端t51の接続点までの経路である。第5状態では、バッファスイッチング素子Q3が非導通状態に制御されるため、第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流との差分は、電流経路ra12に流れる。具体的には、第4状態から第5状態に遷移する直前において、バッファキャパシタCcから放電され、一次巻線W1に流れていた電流は、第5状態に遷移後、電流経路ra12を流れて一次巻線W1に戻る。上アームスイッチング素子15のボディダイオードが導通すると、一次巻線W1に印加される電圧の極性が逆転するため、電流経路ra11に流れる電流が急速に減少する。第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流とが一致すると、上アームスイッチング素子15のボディダイオードは非導通状態となる。
【0072】
[交流電位が負の状態:第6状態]
図12に示す第6状態は、第5状態に遷移してから所定の時間が経過した後、制御部50が、下アームスイッチング素子16を導通状態に、バッファスイッチング素子Q3を非導通状態に保持したまま、上アームスイッチング素子15を導通状態に制御した状態である。
図12に示すように、第6状態において、一次側回路10には、電流経路ra8と、電流経路ra9とに電流が流れる。また、第6状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路ra8と、電流経路ra9と、電流経路rb5とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0073】
その後、一次巻線W1に流れる電流が0になると、電流の流れる向きが反転する。また、二次巻線W2の電流の向きも反転し、二次側ダイオード22が非導通状態となる。これにより、電力変換装置1の状態は、
図7の第1状態に戻ることになる。
【0074】
以上のように、交流電位が正の状態においても、交流電位が負の状態においても、第1状態が開始してから第6状態が終了するまで時間は、一定であっても一定でなくてもよい。ただし、どちらの場合も、第1状態の開始から第6状態の終了までの時間は、入力電圧の周期よりも十分短いことが望ましい。
【0075】
[各状態の遷移の別例について]
なお、上述では、電力変換装置1の状態が、交流電位が正の状態と、交流電位が負の状態とにおいて、それぞれ、第1状態~第6状態まで遷移する場合について説明したが、これに限られない。電力変換装置1の状態は、例えば、第1状態において、電流経路ra2の電流が小さかったり、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1が小さい場合、第2状態を継続中に電流経路ra4の電流がゼロになったりする場合がある。この場合、第2状態中に、第1インダクタ11を流れる電流が、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを流れるバッファキャパシタCcを充電する電流と、第1キャパシタ17を通って一次巻線W1に流れる電流とに分かれ、その後、バッファスイッチング素子Q3が導通状態となり、第4状態に遷移してもよい。また、第4状態において、一次巻線W1を流れる電流が小さかったり、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1が小さい場合、第5状態継続中に電流経路ra7、電流経路ra12の電流がゼロになったりする場合がある。この場合、第5状態中に、第1インダクタ11の電流が全て第1キャパシタ17を通って一次巻線W1に流れ、その後、交流電位が正の状態では下アームスイッチング素子16が導通状態となること、交流電位が負の状態では上アームスイッチング素子15が導通状態となることで、第6状態に遷移してもよい。
【0076】
[本実施形態の電力変換装置1にかかる作用について]
以上のとおり、制御部50は、交流電位が正の状態において、上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16及びバッファスイッチング素子Q3を導通状態と非導通状態とに切り替えることにより、電力変換装置1の状態を第1状態から第6状態まで順に繰り返して遷移させる。また、制御部50は、交流電位が負の状態において、上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16及びバッファスイッチング素子Q3を導通状態と非導通状態とに切り替えることにより、電力変換装置1の状態を第1状態から第6状態まで順に繰り返して遷移させる。これにより、電力変換装置1において電力変換が行われる。
【0077】
詳細には、電力変換装置1は、交流電源V1の極性に応じて、第1状態~第6状態まで遷移することを繰り返す。これにより、下アームスイッチング素子16の第2端t42の電位よりも、上アームスイッチング素子15の第1端t31の電位が、常に高くなる。すなわち、上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16、上アームダイオード12及び下アームダイオード13とのブリッジ回路14により、交流電源V1の交流電圧は直流電圧に変換される。
【0078】
第4状態~第6状態においては、一次巻線W1の始端の方が一次巻線W1の終端よりも高電位になる。また、このとき、第1キャパシタ17は、充電される。さらに、このとき、二次側ダイオード22が導通し、トランス18の二次巻線W2から、第2キャパシタ19及び二次側ダイオード22を通って負荷に電流が流れる。したがって、エネルギーが、一次側からトランス18を介して負荷に供給されることになる。
【0079】
第1状態~第3状態においては、第1キャパシタ17の両端の電圧が、トランス18の一次巻線W1に印加される。このとき、一次巻線W1の終端の電位が、一次巻線W1の始端の電位よりも高くなる。また、このとき、トランス18の二次巻線W2から、第2インダクタ21、第2キャパシタ19に電流が流れ、それぞれ電磁エネルギー、静電エネルギーとして蓄えられる。
【0080】
第1状態~第3状態の時に第2インダクタ21及び第2キャパシタ19に蓄えられたエネルギーは、第4状態~第6状態の時に、負荷に供給される。トランス18の一次巻線W1に印加される電圧の極性に関わらず、トランス18の1次側から2次側へのエネルギー伝達が行われるので、トランス18の利用効率が高い。
【0081】
また、第2状態~第3状態においては、ブリッジ回路14から第1キャパシタ17に流れる電流と、漏れインダクタンスRw1から第1キャパシタ17に流れる電流とが衝突してサージ電圧が発生しないように、バッファ回路40は、バッファキャパシタCcによりサージ電圧を吸収する。また、第4状態~第5状態においては、バッファ回路40において、第1インダクタ11を流れる電流と、一次巻線W1を流れる電流との差分を吸収したり、吸収したエネルギーを適宜放電したりする。
【0082】
[制御部50の制御について]
本実施形態では、制御部50は、第1インダクタ11を流れる電流と、入力電圧とに基づいて、入力電力の力率が改善するようにスイッチングを制御することが可能である。例えば、制御部50は、上アームスイッチング素子15及び下アームスイッチング素子16の第6状態開始から第1状態終了までの時間を制御することにより、上アームダイオード12、下アームダイオード13及びブリッジ回路14を力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路として動作させる。第6状態および第1状態では、交流電源V1と第1インダクタ11とが閉回路を形成し、交流電源V1からの電流は第1インダクタ11により制限される。第1インダクタ11に流れる電流の増加分は、第6状態開始から第1状態終了までの時間に比例するため、第6状態開始から第1状態終了までの時間を制御することにより、第1インダクタ11の電流を制御することが可能となる。制御部50は、電流センサC1と電圧センサC2からの信号に基づき、第1インダクタ11に流れる電流の波形が略正弦波状になり、当該正弦波の周波数と位相が、交流電源V1の周波数と位相と一致するように、第6状態開始から第1状態終了までの継続時間を制御する。
【0083】
また、制御部50は、電圧センサC3の検出結果に基づいて、所定の直流電圧が出力されるように、スイッチング制御を行うこともできる。詳細には、制御部50は、例えば、電圧センサC3によって検出された出力電圧と所定の直流電圧(目標電圧)との差に基づいて、両スイッチング素子15、16のデューティ比制御を行う。更に、制御部50は、入力電力の力率改善と、出力電圧の制御を同時に行うことも可能である。
【0084】
[本実施形態の電力変換装置1にかかる効果について]
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)電力変換装置1は、交流電源V1の極性に応じて、制御部50が各スイッチング素子15,16,Q3を制御することにより、第1状態~第6状態に遷移する。これにより、ブリッジ回路14が交流電源V1の交流電圧を直流電圧に変換する。
【0085】
同時に、上アームスイッチング素子15と下アームスイッチング素子16とのスイッチング動作により、トランス18の一次巻線W1に高周波の交流電圧を印加する。これにより、トランス18を介して、絶縁しながら電力をトランス18の二次側に伝達する。
【0086】
従来技術の回路では、交流電圧から直流電圧への変換と、変換された直流電圧から高周波の交流電圧への変換を別々のブリッジ回路で行っていた。一方、本実施形態の電力変換装置1では、交流から直流への変換と、変換された直流から高周波の交流への変換を一つのブリッジ回路で行っている。
【0087】
これにより、電力変換装置1は、従来技術の回路のようにフルブリッジ回路を用いる場合に比して、スイッチング素子や整流素子等の能動素子の数を少なくできる。また、本実施形態の電力変換装置1は、従来技術の回路のようにフルブリッジ回路を用いる場合に比して、電流が通過する能動素子の数が少ないので、能動素子における導通損失を低減できる。
【0088】
(1-2)バッファ回路40は、第2状態~第3状態においては、ブリッジ回路14から第1キャパシタ17に流れる電流と、漏れインダクタンスRw1から第1キャパシタ17に流れる電流とが衝突してサージ電圧が発生しないように、サージ電圧を吸収する。
【0089】
かかる構成によれば、電力変換装置1は、バッファ回路40を用いることにより、トランス18の漏れインダクタンスRw1による電流と、交流電源V1から入力される電流とが衝突することにより生じ得るサージ電圧を抑制できる。
【0090】
(1-3)トランス18は、トランス18の一次巻線W1の始端と終端に印加される電圧の向きによらず、スイッチングパターンの第1状態~第6状態の全てにおいて、一次側から二次側に電力を伝達する。したがって、電力変換装置1は、トランス18の利用効率を高くできる。
【0091】
(1-4)バッファ回路40は、両スイッチング素子15,16とバッファキャパシタCcとの間に設けられたバッファスイッチング素子Q3を有する。かかる構成によれば、第1インダクタ11を流れる電流が一次巻線W1を流れる電流よりも大きい場合に、差分をバッファキャパシタCcに充電させるだけでなく、バッファキャパシタCcから一次巻線W1に電流を供給することもできる。これにより、適切にバッファキャパシタCcを放電させ、バッファキャパシタCcの両端電圧の上昇を抑えることができるとともに、交流電源V1からのエネルギーを無駄なくトランス18を介して出力することができる。
【0092】
特に、本実施形態では、バッファスイッチング素子Q3として、逆並列ダイオードを有するスイッチング素子(例えばMOSFET)を用いている。これにより、サージ電圧に係る動作が必要な状態(例えば第3状態)では、バッファスイッチング素子Q3を導通状態にすることによって、バッファスイッチング素子Q3の抵抗を低くすることができる。したがって、ダイオードのみの場合と比較して、サージ電圧が流れることに起因する発熱などを抑制できる。また、バッファスイッチング素子Q3を制御にすることによって、バッファキャパシタCcからの放電制御を行うことができる。例えば、第4状態において、バッファスイッチング素子Q3が導通状態であることにより、バッファキャパシタCcの放電電流を一次巻線W1に流すことができる。
【0093】
(1-5)電力変換装置1において、バッファ回路40は、ブリッジ回路14に対して並列に接続される。これにより、電力変換装置1は、トランス18の漏れインダクタンスRw1により、ブリッジ回路14に流れる電流を、並列に接続されたバッファ回路40に迂回させることができる。したがって、電力変換装置1は、サージ電流がブリッジ回路14に流れることを抑制できる。
【0094】
(1-6)電力変換装置1は、上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16及びバッファスイッチング素子Q3のスイッチングを制御する制御部50を更に備える。制御部50は、第1インダクタ11を流れる電流と、交流電源V1からの入力電圧とに基づいて、力率が改善するようにスイッチングを制御する。
【0095】
かかる構成によれば、電力変換装置1は、交流電源V1から供給される電力の力率を改善できる。
(1-7)制御部50は、第1出力端t91と第2出力端t92との間の電圧に基づいて、所定の直流電圧が出力されるように、上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16及びバッファスイッチング素子Q3のスイッチングを制御する。
【0096】
かかる構成によれば、電力変換装置1は、第1出力端t91と第2出力端t92との間の電圧に基づいてフィードバック制御し、電力変換装置1が出力する直流電圧を、所定の直流電圧(目標電圧)に近づけることができる。
【0097】
<第2実施形態>
以下、図面を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態では、電力変換装置2において、一次側回路10と、バッファ回路40との接続が、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
図13に示すように、電力変換装置2は、例えば、電力変換装置1と同様の構成を備える一方で、一次側回路10、第1キャパシタ17、トランス18及びバッファ回路40の接続が電力変換装置1とは異なる。具体的には、電力変換装置2において、一次巻線W1の始端は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子15の第1端t31とに電気的に接続される。また、一次巻線W1の終端は、第1キャパシタ17の第1端t51に接続され、第1キャパシタ17の第2端t52は、下アームダイオード13のカソードと、下アームスイッチング素子16の第2端t42とに接続される。
【0099】
また、バッファスイッチング素子Q3の端子tq2と、ブリッジ回路14(詳細には上アームダイオード12のカソード及び第1端t31)と一次巻線W1の始端との接続点とは、接続されている。また、バッファキャパシタCcの端子tc2は、一次巻線W1の終端及び第1キャパシタ17の第1端t51に接続されている。これにより、バッファキャパシタCcは、第1キャパシタ17と直列に接続されている。
【0100】
以下、
図13~
図24を参照して、電力変換装置2の動作の詳細について説明する。なお、説明の便宜上、電力変換装置2が動作開始するタイミングにおいて、各キャパシタ17、19、23、Ccは充電されているものとする。また、第1インダクタ11、トランス18の一次巻線W1、第2インダクタ21には電流が流れているものとする。更に、以降の説明において、各状態の遷移タイミングは、上述した実施形態と同様である。したがって、制御部50が制御する各スイッチング素子15,16,Q3の導通状態または非導通状態は、第1実施形態における各状態の導通状態または非導通状態と同様であるため、説明を省略する。
【0101】
[交流電位が正の状態での動作]
まず、交流電源V1において第1端t11の電位が第2端t12の電位よりも高い状態(つまり、交流電位が正の状態)におけるスイッチング制御について
図13~
図18を用いて説明する。
【0102】
[交流電位が正の状態:第1状態]
図13に示すように、第1状態において、一次側回路10には、電流経路ra1と、第1キャパシタ17の放電に伴う電流経路ra21とに電流が流れる。また、第1状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb1と、電流経路rb2とに電流が流れる。電流経路ra1と、電流経路rb1と、電流経路rb2とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0103】
電流経路ra21は、第1キャパシタ17の第1端t51から、一次巻線W1、上アームスイッチング素子15及び下アームスイッチング素子16を経由した、第1キャパシタ17の第2端t52までの経路である。トランス18の一次巻線W1には、第1キャパシタ17の両端の電圧が印加され、一次巻線W1の終端の電位が始端の電位よりも高くなる。この結果、トランス18の二次巻線W2の両端には、終端の電位が始端の電位よりも高くなるように電圧が発生する。
【0104】
[交流電位が正の状態:第2状態]
図14に示すように、第2状態において、一次側回路10には、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra22と、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性により電流経路ra23とに電流が流れる。また、第2状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb2と、電流経路rb3とに電流が流れる。電流経路rb2と、電流経路rb3とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0105】
電流経路ra22は、交流電源V1の第1端t11から、第1インダクタ11、上アームスイッチング素子15、バッファスイッチング素子Q3、バッファキャパシタCc、第1キャパシタ17及び下アームダイオード13を経由した、交流電源V1の第2端t12までの経路である。第2状態では、第1インダクタ11を流れる電流は、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを通ってバッファキャパシタCcと、第1キャパシタ17とに流れる。したがって、電流経路ra22を流れる電流は、バッファキャパシタCc及び第1キャパシタ17を充電する。第1インダクタ11に流れる電流は、減少する。
【0106】
電流経路ra23は、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1から、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオード及びバッファキャパシタCcを経由した漏れインダクタンスRw1までの経路である。第2状態では、一次巻線W1を流れる電流は、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを通ってバッファキャパシタCcに流れる。したがって、電流経路ra23を流れる電流は、バッファキャパシタCcを充電する。第2状態に制御される前後では、一次巻線W1に印加される電圧の向きが逆になる。したがって、一次巻線W1を流れる電流は、急速に減少する。
【0107】
[交流電位が正の状態:第3状態]
図15に示すように、第3状態において、一次側回路10には、電流経路ra22と、電流経路ra23´とに電流が流れる。また、第3状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb2と、電流経路rb3とに電流が流れる。電流経路ra22と、電流経路rb2と、電流経路rb3とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0108】
電流経路ra23´は、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1から、バッファスイッチング素子Q3(ドレイン-ソース間)及びバッファキャパシタCcを経由した漏れインダクタンスRw1までの経路である。したがって、第2状態では、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを経由して流れていた電流が、第3状態では、バッファスイッチング素子Q3本体を経由して流れる。これにより、電流経路ra23に比して、電流経路ra23´の抵抗を小さくすることができる。第2状態と同様に、第3状態においても、電流経路ra22及び電流経路ra23´の電流が減少するとともに電流経路rb3の電流も減少する。
【0109】
ここで、一次側回路10が第2状態である期間は、下アームスイッチング素子16を完全に非導通状態に制御する時間が確保されれば短い期間であってもよい。換言すると、第1状態から第3状態への遷移期間中に、各スイッチング素子15,16,Q3の全てが導通状態となり、バッファキャパシタCcが短絡状態とならなければ、第2状態である期間は、短い期間であってもよい。
【0110】
[交流電位が正の状態:第4状態]
図16に示すように、第4状態において、一次側回路10には、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra24と、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分に伴う電流経路ra25とに電流が流れる。また、第4状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb4に電流が流れる。電流経路rb4については、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0111】
電流経路ra24は、交流電源V1の第1端t11から、第1インダクタ11、上アームスイッチング素子15、一次巻線W1、第1キャパシタ17及び下アームダイオード13を経由した、交流電源V1の第2端t12までの経路である。第3状態において電流経路ra23´を流れていた電流が減少し、なくなると、一次巻線W1には、交流電源V1から、第1インダクタ11及び上アームスイッチング素子15を経由する電流経路ra24の電流が流れる。この時、一次巻線W1を流れる電流は、第3状態において一次巻線W1に流れる電流とは逆向きの電流である。また、電流経路ra24に電流が流れることにより、第1キャパシタ17が充電され、第1インダクタ11に流れる電流は、減少する。
【0112】
電流経路ra25は、上アームダイオード12のカソード、端子tq2、第1端t31及び一次巻線W1の始端の接続点から、バッファスイッチング素子Q3及びバッファキャパシタCcを経由した、端子tc2、一次巻線W1の終端及び第1端t51の接続点までの経路である。電流経路ra25には、第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流との差分が流れる。具体的には、第1インダクタ11に流れる電流が、一次巻線W1に流れる電流よりも大きい場合、一次巻線W1からバッファキャパシタCcに電流が流れ、バッファキャパシタCcが充電される。また、第1インダクタ11に流れる電流が、一次巻線W1に流れる電流よりも小さい場合、バッファキャパシタCcから放電された電流がバッファスイッチング素子Q3を介して一次巻線W1に電流が流れる。
【0113】
[交流電位が正の状態:第5状態]
図17に示すように、第5状態において、一次側回路10には、電流経路ra7と、電流経路ra24とに電流が流れる。また、第5状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb4に電流が流れる。電流経路ra7と、電流経路ra24と、電流経路rb4とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0114】
第5状態では、バッファスイッチング素子Q3が非導通状態に制御されるため、第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流との差分は、電流経路ra7に流れる。具体的には、第4状態において、バッファキャパシタCcから放電され、一次巻線W1に流れていた電流は、第5状態において、電流経路ra7から一次巻線W1に戻る。下アームスイッチング素子16のボディダイオードが導通すると、一次巻線W1に印加される電圧の極性が逆転するため、電流経路ra24に流れる電流が急速に減少する。第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流とが一致すると、下アームスイッチング素子16のボディダイオードは非導通状態となる。
【0115】
[交流電位が正の状態:第6状態]
図18に示すように、第6状態において、一次側回路10には、電流経路ra1と、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性により電流経路ra26とに電流が流れる。また、第6状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路ra1と、電流経路rb5とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0116】
電流経路ra26は、漏れインダクタンスRw1から、第1キャパシタ17、下アームスイッチング素子16及び上アームスイッチング素子15を経由した、漏れインダクタンスRw1までの経路である。第6状態において、下アームスイッチング素子16が導通状態に制御されると、第1インダクタ11を流れる電流は、電流経路ra1を流れるようになる。これに伴い、一次巻線W1には、第1インダクタ11を流れる電流が流れなくなるものの、漏れインダクタンスRw1が電流を流し続けようとするため、電流経路ra26の電流が発生する。ただし、一次巻線W1には、電流経路ra26に流れる電流に抗う向きの、第1キャパシタ17の電圧が印加される。このため、電流経路ra26に流れる電流は、急速に減少する。
【0117】
その後、一次巻線W1に流れる電流が0になると、電流の流れる向きが反転する。また、二次巻線W2の電流の向きも反転し、二次側ダイオード22が非導通状態となる。これにより、電力変換装置2の状態は、
図13の第1状態に戻ることになる。
【0118】
[交流電位が負の状態での動作]
次に、交流電源V1において第1端t11の電位が第2端t12の電位よりも低い状態(つまり、交流電位が負の状態)におけるスイッチング制御について
図19~
図24を用いて説明する。
【0119】
[交流電位が負の状態:第1状態]
図19に示すように、第1状態において、一次側回路10には、電流経路ra9と、電流経路ra21とに電流が流れる。また、第1状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb1と、電流経路rb2とに電流が流れる。電流経路ra9と、電流経路ra21と、電流経路rb1と、電流経路rb2とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。上述したように、第1状態において、電流経路ra9に流れる電流は、時間の経過とともに大きくなる。
【0120】
[交流電位が負の状態:第2状態]
図20に示すように、第2状態において、一次側回路10には、電流経路ra23と、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra27とに電流が流れる。また、第2状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb2と、電流経路rb3とに電流が流れる。電流経路ra23と、電流経路rb2と、電流経路rb3とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0121】
電流経路ra27は、交流電源V1の第2端t12から、上アームダイオード12、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオード、バッファキャパシタCc、第1キャパシタ17及び下アームスイッチング素子16のボディダイオード及び第1インダクタ11を経由した、交流電源V1の第1端t11までの経路である。第2状態では、第1インダクタ11を流れる電流は、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを通ってバッファキャパシタCcに流れ、バッファキャパシタCc及び第1キャパシタ17を充電する。これに伴い、第1インダクタ11に流れる電流は、減少する。
【0122】
[交流電位が負の状態:第3状態]
図21に示すように、第3状態において、一次側回路10には、電流経路ra23´と、電流経路ra27´とに電流が流れる。また、第3状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb2と、電流経路rb3とに電流が流れる。電流経路ra23´と、電流経路rb2と、電流経路rb3とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。電流経路ra27´は、バッファスイッチング素子Q3においてボディダイオードではなくドレイン-ソース間を電流が流れる点を除いて、電流経路ra27と同様である。
【0123】
[交流電位が負の状態:第4状態]
図22に示すように、第4状態において、一次側回路10には、電流経路ra25と、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra28とに電流が流れる。また、第4状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb4に電流が流れる。電流経路ra25と、電流経路rb4とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0124】
電流経路ra28は、交流電源V1の第2端t12から、上アームダイオード12、一次巻線W1、第1キャパシタ17、下アームスイッチング素子16及び第1インダクタ11を経由した、交流電源V1の第1端t11までの経路である。第3状態において電流経路ra23´を流れていた電流が減少し、なくなると、一次巻線W1には、交流電源V1から、上アームダイオード12を経由する電流経路ra28の電流が流れる。この時、一次巻線W1を流れる電流は、第3状態において一次巻線W1に流れる電流とは逆向きの電流である。また、電流経路ra28に電流が流れることにより、第1キャパシタ17が充電され、第1インダクタ11に流れる電流は、減少する。
【0125】
[交流電位が負の状態:第5状態]
図23に示すように、第5状態において、一次側回路10には、電流経路ra12と、電流経路ra28とに電流が流れる。また、第5状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb4に電流が流れる。電流経路ra12と、電流経路ra28と、電流経路rb4とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0126】
[交流電位が正の状態:第6状態]
図24に示すように、第6状態において、一次側回路10には、電流経路ra9と、電流経路ra26とに電流が流れる。また、第6状態において、整流平滑回路20には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路ra9、電流経路ra26と、電流経路rb5とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0127】
[本実施形態の電力変換装置2にかかる作用効果について]
(2-1)電力変換装置2において、バッファキャパシタCcは、第1キャパシタ17と直列に接続されている。また、バッファキャパシタCc及び第1キャパシタ17は、第2状態~第3状態において、ブリッジ回路14から第1キャパシタ17に流れる電流と、漏れインダクタンスRw1から第1キャパシタ17に流れる電流とが衝突してサージ電圧が発生しないように、サージ電圧を吸収する。つまり、電力変換装置2によれば、バッファキャパシタCcと第1キャパシタ17との組み合わせにより、サージ電圧を抑制できる。また、電力変換装置2によれば、電力変換装置1においてバッファキャパシタCcの両端に印加されていた電圧が、第1キャパシタ17に印加される電圧とバッファキャパシタCcに印加される電圧とに分圧される。これにより、電力変換装置1に用いたバッファキャパシタCcに比して、バッファキャパシタCcの耐圧を小さくできる。
【0128】
<変形例1>
以下、図面を参照して上述した第1実施形態の変形例1について説明する。上述した実施形態では、電力変換装置1が、整流平滑回路20を備える場合について説明した。変形例1では、電力変換装置3が、整流平滑回路20に代えて整流平滑回路30を備える場合について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0129】
図25に示すように、電力変換装置3は、一次側回路10と、第1キャパシタ17と、トランス18と、第2キャパシタ19と、整流平滑回路30と、バッファ回路40と、制御部50とを備える。整流平滑回路30は、第2インダクタ21と、二次側ダイオード22と、出力キャパシタ23と、第1出力線OL1と、第2出力線OL2と、第1出力端t91と、第2出力端t92とを備える。
【0130】
二次巻線W2の終端は、第2キャパシタ19を介して第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のカソードとに電気的に接続される。具体的には、二次巻線W2の終端は、第2キャパシタ19の第1端t61に接続され、第2キャパシタ19の第2端t62は、第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のカソードとに接続される。二次巻線W2の始端は、二次側ダイオード22のアノードと、第2出力線OL2とに接続されている。本実施形態において、二次側ダイオード22のカソードは、「二次側整流素子の一端」の一例であり、二次側ダイオード22のアノードは、「二次側整流素子の他端」の一例である。
【0131】
出力キャパシタ23は、第1出力線OL1と、第2出力線OL2との双方に接続されている。具体的には、出力キャパシタ23の第1端t81は、第1出力線OL1に接続されている。そして、出力キャパシタ23の第2端t82は、第2出力線OL2に接続されている。
【0132】
第2インダクタ21の第2端t72は、第1出力線OL1に接続されている。上述したように、第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のカソードとが接続されている。また、第2インダクタ21の第2端t72と、出力キャパシタ23の第1端t81とが接続されている。したがって、整流平滑回路30は、第2キャパシタ19を介して、トランス18の二次巻線W2に接続されている。
【0133】
以下、
図25~
図28を参照して、電力変換装置3の動作の詳細について説明する。なお、一次側回路10の動作については、上述した第1実施形態と同様の動作であるため、説明を省略する。
【0134】
[第1状態での動作]
図25は、交流電位が正の状態及び負の状態の第1状態である場合の電流経路を示す図である。
図25に示すように、第1状態において、一次側回路10の一次巻線W1には、終端から始端に向かう電流経路ra2の電流が流れる。また、第1状態において、整流平滑回路30には、二次巻線W2に伴う電流経路rb6の電流が流れる。電流経路ra2については、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0135】
電流経路rb6は、二次巻線W2の終端から、第2キャパシタ19、第2インダクタ21、第1出力端t91、電力変換装置3に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した二次巻線W2の始端までの経路である。第1状態において、第2インダクタ21に流れる電流は、時間の経過とともに第2インダクタ21の第2端t72から第1端t71に向かう方向に大きくなる。また、電流経路rb6に電流が流れることにより、第2キャパシタ19及び出力キャパシタ23は、充電される。第2インダクタ21には、二次巻線W2の両端の電圧と、第2キャパシタ19の両端の電圧の合計から、第1出力端t91、第2出力端t92から出力される直流電圧を差し引いた値の電圧が印加される。これに伴い、第2インダクタ21を流れる電流は増加する。第1状態において、二次側ダイオード22は導通状態にはない。
【0136】
[第2状態~第3状態での動作]
図26は、交流電位が正の状態及び負の状態の第2状態~第3状態である場合の電流経路を示す図である。
図26に示すように、第2状態~第3状態において、一次側回路10の一次巻線W1には、終端から始端に向かう電流であって、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性により電流経路ra4(電流経路ra4´)の電流が流れる。また、第2状態~第3状態において、整流平滑回路30には、二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2の電流の連続性により電流経路rb7が流れる。電流経路ra4(電流経路ra4´)については、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0137】
電流経路rb7は、二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2から、第2キャパシタ19、第2インダクタ21、第1出力端t91、電力変換装置3に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した二次巻線W2の始端までの経路である。第2状態~第3状態において、一次巻線W1を流れる電流が減少することに伴い、電流経路rb7を流れる電流も減少する。
【0138】
[第4状態~第5状態での動作]
図27は、交流電位が正の状態及び負の状態の第4状態~第5状態である場合の電流経路を示す図である。
図27に示すように、第4状態~第5状態において、一次側回路10の一次巻線W1には、始端から終端に向かう電流経路ra5又は電流経路ra11の電流が流れる。また、第4状態~第5状態において、整流平滑回路30には、二次巻線W2からの電流による電流経路rb8と、第2インダクタ21の電流の連続性による電流経路rb9とに電流が流れる。電流経路ra5と、電流経路ra11とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0139】
電流経路rb8は、二次巻線W2の始端から、二次側ダイオード22及び第2キャパシタ19を経由した二次巻線W2の終端までの経路である。また、電流経路rb8に電流が流れることにより、第2キャパシタ19は充電される。第4状態~第5状態では、二次側ダイオード22が導通している。すなわち、変形例1では、上アームスイッチング素子15が導通状態で、下アームスイッチング素子16が非導通状態のとき、二次側ダイオード22が導通するような極性で、トランス18の一次巻線W1と二次巻線W2とが磁気結合している。電流経路ra5又は電流経路ra11を流れる電流が減少することに伴い、電流経路rb8に流れる電流も減少する。
【0140】
電流経路rb9は、第2インダクタ21の第2端t72から、第1出力端t91、電力変換装置3に接続される負荷、第2出力端t92及び二次側ダイオード22を経由した第1端t71までの経路である。上述したように、第5状態において、二次側ダイオード22が導通するため、第2インダクタ21が蓄えたエネルギーにより、電流経路rb9に電流が流れ続ける。出力キャパシタ23は、第1出力端t91、第2出力端t92から直流電圧を出力する。また、電流経路rb9に電流が流れることにより、出力キャパシタ23は充電され、第2インダクタ21に流れる電流は、減少する。
【0141】
[第6状態での動作]
図28は、交流電位が正の状態及び負の状態の第6状態である場合の電流経路を示す図である。
図28に示すように、第6状態において、一次側回路10の一次巻線W1には、始端から終端に向かう電流であって、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性により電流経路ra8の電流が流れる。また、第6状態において、整流平滑回路30には、電流経路rb9と、二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2の電流の連続性により電流経路rb10の電流と、が流れる。電流経路ra8と、電流経路rb9とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0142】
電流経路rb10は、二次巻線W2から、二次側ダイオード22及び第2キャパシタ19を経由した二次巻線W2までの経路である。電流経路rb10に電流が流れることにより、第2キャパシタ19は充電される。
【0143】
[変形例1の電力変換装置3にかかる作用効果について]
(3-1)変形例1の電力変換装置3によれば、交流電源V1の極性及び上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16の導通/非導通状態に関わらず、第2インダクタ21により、電力変換装置3の負荷に電流が供給される。
【0144】
[電力変換装置3の別例について]
なお、電力変換装置3は、第2実施形態と同様に、一次側回路10と、バッファ回路40との接続が、上述した一例と異なるものであってもよい。
図29に示すように、電力変換装置4は、例えば、電力変換装置3と同様の構成を備える一方で、一次側回路10、第1キャパシタ17、トランス18及びバッファ回路40の接続が電力変換装置3とは異なる。具体的には、電力変換装置4において、一次巻線W1の始端は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子15の第1端t31とに電気的に接続される。また、一次巻線W1の終端は、第1キャパシタ17の第1端t51に接続され、第1キャパシタ17の第2端t52は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子15の第1端t31とに接続される。
【0145】
また、バッファスイッチング素子Q3の端子tq2と、ブリッジ回路14(詳細には上アームダイオード12のカソード及び第1端t31)と一次巻線W1の始端との接続点とは、接続されている。また、バッファキャパシタCcの端子tc2は、一次巻線W1の終端及び第1キャパシタ17の第1端t51に接続されている。これにより、バッファキャパシタCcは、バッファスイッチング素子Q3を介してトランス18の一次巻線W1と並列に接続されている。また、バッファキャパシタCcは、第1キャパシタ17と直列に接続されている。
【0146】
電力変換装置4における一次側回路10の動作は、上述した実施形態に記載した一次側回路10の動作と同様であるため、説明を省略する。また、電力変換装置4において、一次側回路10に対応する整流平滑回路30の動作は、上述した変形例1の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0147】
かかる構成によれば、電力変換装置4は、上述した第2実施形態の効果と同様に、バッファキャパシタCcの耐圧を小さくできる。また、電力変換装置4は、上述した変形例1の効果と同様に、交流電源V1の極性及び上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16、及びバッファスイッチング素子Q3の導通/非導通状態に関わらず、第2インダクタ21により、電力変換装置4の負荷に電流が供給される。
【0148】
<変形例2>
以下、図面を参照して上述した第1実施形態の変形例2について説明する。上述した実施形態及び変形例では、電力変換装置1,3が、整流平滑回路20や整流平滑回路30を備える場合について説明した。変形例2では、電力変換装置4が、整流平滑回路20や整流平滑回路30に代えて、整流平滑回路60を備える場合について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0149】
図30に示すように、電力変換装置5は、一次側回路10と、第1キャパシタ17と、トランス18aと、バッファ回路40と、制御部50と、整流平滑回路60を備える。トランス18は、二次巻線W2として、第1二次巻線W21と、第2二次巻線W22とを備える。整流平滑回路60は、第2インダクタ21と、出力キャパシタ23と、第1二次側ダイオード24と、第2二次側ダイオード25と、第1出力線OL1と、第2出力線OL2と、第1出力端t91と、第2出力端t92とを備える。
【0150】
第1二次巻線W21の始端は、第1二次側ダイオード24のアノードに電気的に接続される。第2二次巻線W22の終端は、第2二次側ダイオード25のアノードに電気的に接続される。第1二次側ダイオード24のカソードは、第2インダクタ21を介して出力キャパシタ23の一端に接続される。具体的には、第1二次側ダイオード24のカソードは、第2インダクタ21の第1端t71に接続される。第2二次側ダイオード25のカソードは、第1二次側ダイオード24のカソードと、第1端t71との接続点に接続される。第1二次巻線W21の終端と第2二次巻線W22の始端とは、接続されている。
【0151】
第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25は、上述したように接続されることにより、それぞれが、第1二次巻線W21に流れる電流と第2二次巻線W22に流れる電流とのうち、一方を許容し、他方を制限する。具体的には、一次巻線W1の始端の電位が終端の電位よりも高いとき、第1二次側ダイオード24が、二次巻線W2の第1二次巻線W21から第2インダクタ21以降に電流が流れることを許容する。また、第2二次側ダイオード25が二次巻線W2の第2二次巻線W22から第2インダクタ21以降に電流が流れることを禁止する。逆に、一次巻線W1を終端の電位が始端の電位よりも高いとき、第2二次側ダイオード25が、二次巻線W2の第2二次巻線W22から第2インダクタ21以降に流れることを許容する。また、一次巻線W1を終端の電位が始端の電位よりも高いとき、第1二次側ダイオード24が、二次巻線W2の第1二次巻線W21から第2インダクタ21以降に電流が流れることを禁止する。
【0152】
変形例2において、第1二次側ダイオード24は、「第1二次側整流素子」の一例である。また、第1二次側ダイオード24のカソードは、「第1二次側整流素子の一端」の一例であり、第1二次側ダイオード24のアノードは、「第1二次側整流素子の他端」の一例である。また、第2二次側ダイオード25は、「第2二次側整流素子」の一例である。また、第2二次側ダイオード25のカソードは、「第2二次側整流素子の一端」の一例であり、第2二次側ダイオード25のアノードは、「第2二次側整流素子の他端」の一例である。
【0153】
出力キャパシタ23は、第1出力線OL1と第2出力線OL2との双方に接続されている。具体的には、出力キャパシタ23の第1端t81は、第1出力線OL1に接続されている。そして、出力キャパシタ23の第2端t82は、第2出力線OL2に接続されている。
【0154】
第2インダクタ21は、第1出力線OL1上における第1二次側ダイオード24と出力キャパシタ23との間の部分に設けられている。具体的には、第2インダクタ21は、第1出力線OL1上における第1二次側ダイオード24の接続点と出力キャパシタ23の接続点との間の部分に設けられている。上述したように、第1二次側ダイオード24のカソードと、第2二次側ダイオード25のカソードとが、第2インダクタ21の第1端t71に接続されている。また、第2インダクタ21の第2端t72と、出力キャパシタ23の第1端t81とが接続されている。
【0155】
第1二次巻線W21と、第2二次巻線W22との接続点は、出力キャパシタ23の第2端t82と、第2出力線OL2とに接続されている。第1二次巻線W21と、第2二次巻線W22との接続点は、例えば、二次巻線W2の中点である。したがって、出力キャパシタ23の第2端t82は、二次巻線W2の中点に接続されている。
【0156】
以下、
図30~
図33を参照して、電力変換装置5の動作の詳細について説明する。なお、一次側回路10の動作については、上述した第1実施形態と同様の動作であるため、説明を省略する。
【0157】
[第1状態での動作]
図30は、交流電位が正の状態及び負の状態の第1状態である場合の電流経路を示す図である。
図30に示すように、第1状態において、一次側回路10の一次巻線W1には、終端から始端に向かう電流経路ra2の電流が流れる。また、第1状態において、整流平滑回路60には、第2二次巻線W22から電流経路11の電流が流れる。電流経路ra2については、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0158】
電流経路rb11は、第2二次巻線W22の終端から、第2二次側ダイオード25、第2インダクタ21、第1出力端t91、電力変換装置5に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した第2二次巻線W22の始端までの経路である。二次巻線W2には、第1二次側ダイオード24を非導通状態にし、且つ第2二次側ダイオード25を導通状態にする方向に電圧が発生する。第1状態において、第2インダクタ21には、第2二次巻線W22にかかる電圧と、出力キャパシタ23の両端の電圧(つまり、出力電圧)との差分の電圧が印加される。
【0159】
[第2状態~第3状態での動作]
図31は、交流電位が正の状態及び負の状態の第2状態~第3状態である場合の電流経路を示す図である。
図31に示すように、第2状態~第3状態において、一次側回路10の一次巻線W1には、終端から始端に向かう電流であって、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性により電流経路ra4(電流経路ra4´)の電流が流れる。また、第2状態~第3状態において、整流平滑回路60には、第2二次巻線W22の漏れインダクタンスRw22による電流経路rb12が流れる。
【0160】
電流経路rb12は、第2二次巻線W22の漏れインダクタンスRw22と、第2インダクタ21の電流の連続性によるものである。電流経路rb12は、第2二次巻線W22から、第2二次側ダイオード25、第2インダクタ21、第1出力端t91、電力変換装置5に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した第2二次巻線W22までの経路である。第2状態~第3状態において、二次巻線W2には、第1二次側ダイオード24を非導通状態にし、且つ第2二次側ダイオード25を導通状態にする方向に電圧が発生する。第2状態~第3状態において、一次巻線W1を流れる電流が減少することに伴い、電流経路rb12を流れる電流も減少する。出力キャパシタ23は、電流経路rb12を流れる電流の減少を補うように、放電する。
【0161】
[第4状態~第5状態での動作]
図32は、交流電位が正の状態及び負の状態の第4状態~第5状態である場合の電流経路を示す図である。
図32に示すように、第4状態~第5状態において、一次側回路10の一次巻線W1には、始端から終端に向かう電流経路ra5又は電流経路ra11の電流が流れる。また、第4状態~第5状態において、整流平滑回路60には、第1二次巻線W21に伴う電流経路rb13の電流が流れる。電流経路ra5と、電流経路ra11とについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0162】
電流経路rb13は、第1二次巻線W21の始端から、第1二次側ダイオード24、第2インダクタ21、第1出力端t91、電力変換装置5に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した第1二次巻線W21の終端までの経路である。第4状態~第5状態において、二次巻線W2には、第1二次側ダイオード24を導通状態にし、且つ第2二次側ダイオード25を非導通状態にする方向に電圧が発生する。第2インダクタ21には、第2二次巻線W22にかかる電圧と、出力キャパシタ23の両端の電圧(つまり、出力電圧)との差分の電圧が印加される。
【0163】
[第6状態での動作]
図33は、交流電位が正の状態及び負の状態の第6状態である場合の電流経路を示す図である。
図33に示すように、第6状態において、一次側回路10の一次巻線W1には、始端から終端に向かう電流であって、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性により電流経路ra8の電流が流れる。また、第6状態において、整流平滑回路60には、第1二次巻線W21の漏れインダクタンスRw21の電流の連続性により電流経路rb15の電流が流れる。電流経路ra8については、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0164】
電流経路rb15は、第1二次巻線W21の漏れインダクタンスRw21と、第2インダクタ21の電流の連続性によるものである。電流経路rb15は、第1二次巻線W21から、第1二次側ダイオード24、第2インダクタ21、第1出力端t91、電力変換装置5に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した第1二次巻線W21までの経路である。第6状態において、二次巻線W2には、第1二次側ダイオード24を導通状態にし、且つ第2二次側ダイオード25を非導通状態にする方向に電圧が発生する。第6状態において、一次巻線W1を流れる電流が減少することに伴い、電流経路rb15を流れる電流も減少する。出力キャパシタ23は、電流経路rb15を流れる電流の減少を補うように、放電する。
【0165】
上述したように、第1状態~第6状態において、整流平滑回路60は、第1二次側ダイオード24又は第2二次側ダイオード25のいずれか一方が導通する。
[変形例2の電力変換装置5にかかる作用効果について]
(4-1)変形例2の電力変換装置5によれば、交流電源V1の極性及び上アームスイッチング素子15、下アームスイッチング素子16の導通/非導通状態に関わらず、第2インダクタ21により、電力変換装置5の負荷に電流が供給される。また、電力変換装置5は、第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25により、一次巻線W1を流れる電流の向きに応じて、第1二次巻線W21及び第2二次巻線W22を流れる電流を転流する。これにより、電力変換装置5は、第2キャパシタ19を用いることなく第2インダクタ21に電流を流すことができる。したがって、変形例2の電力変換装置5によれば、第2キャパシタ19を省略できる。
【0166】
[電力変換装置5の別例について]
なお、電力変換装置5は、第2実施形態と同様に、一次側回路10と、バッファ回路40との接続が、上述した一例と異なるものであってもよい。
図34に示すように、電力変換装置6は、例えば、電力変換装置5と同様の構成を備える一方で、一次側回路10、第1キャパシタ17、トランス18及びバッファ回路40の接続が電力変換装置5とは異なる。具体的には、電力変換装置6において、一次巻線W1の始端は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子15の第1端t31とに電気的に接続される。また、一次巻線W1の終端は、第1キャパシタ17の第1端t51に接続され、第1キャパシタ17の第2端t52は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子15の第1端t31とに接続される。
【0167】
また、バッファスイッチング素子Q3の端子tq2と、ブリッジ回路14(詳細には上アームダイオード12のカソード及び第1端t31)と一次巻線W1の始端との接続点とは、接続されている。また、バッファキャパシタCcの端子tc2は、一次巻線W1の終端及び第1キャパシタ17の第1端t51に接続されている。これにより、バッファキャパシタCcは、バッファスイッチング素子Q3を介してトランス18の一次巻線W1と並列に接続されている。また、バッファキャパシタCcは、第1キャパシタ17と直列に接続されている。
【0168】
電力変換装置6における一次側回路10の動作は、上述した実施形態に記載した一次側回路10の動作と同様であるため、説明を省略する。また、電力変換装置6において、一次側回路10に対応する整流平滑回路60の動作は、上述した変形例2の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0169】
かかる構成によれば、電力変換装置6は、上述した第2実施形態の効果と同様に、バッファキャパシタCcの耐圧を小さくできる。また、電力変換装置6は、上述した変形例2の効果と同様に、第2キャパシタ19を省略できる。
【0170】
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
〇上述の各実施形態では、上アーム整流素子と下アーム整流素子としてダイオードを用いたが、これに限られず、ダイオードに代えてスイッチング素子を用いてもよい。この場合、上アームダイオード12、下アームダイオード13が導通するタイミングで、当該スイッチング素子をONする、いわゆる同期整流制御を行う。ダイオードに代えてスイッチング素子を用いることにより、導通損失を低減できる。
【0171】
○上述では、整流平滑回路20及び整流平滑回路30は、二次側整流素子として、二次側ダイオード22を備え、整流平滑回路60は、二次側整流素子として、第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25を備える場合について説明したが、これに限られない。整流平滑回路20及び整流平滑回路30は、二次側ダイオード22に代えて、スイッチング素子を有していてもよい。また、整流平滑回路60は、第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25に代えて、スイッチング素子を有していてもよい。この場合、制御部50は、二次側ダイオード22、第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25が導通するスイッチングパターンの状態で、当該スイッチング素子をONする、いわゆる同期整流制御を行う。これにより、整流平滑回路20、整流平滑回路30及び整流平滑回路60は、ダイオードに代えてスイッチング素子を用いることにより、導通損失を低減できる。
【0172】
○上述の各実施形態及び各変形例では、第1インダクタ11が第1入力端t21と第1接続線CL1との間に接続されたが、第1インダクタ11の位置はこれに限られず、第2入力端t22と第2接続線CL2との間に接続されてもよい。また、第1インダクタ11は二つのインダクタであるとして、第1入力端t21と第1接続線CL1との間と、第2入力端t22と第2接続線CL2との間の両方に接続してもよい。
【0173】
〇上述の第1実施形態では、第1キャパシタ17が、一次巻線W1の始端と上アームスイッチング素子15の第1端t31との間に接続されたが、第1キャパシタ17の位置はこれに限られるものではない。第1キャパシタ17は、一次巻線W1の終端と下アームスイッチング素子16の第2端t42との間に接続してもよい。また、第1キャパシタ17は、二つのキャパシタにより構成されてもよい。この場合、一次巻線W1の始端と上アームスイッチング素子15の第1端t31との間と、一次巻線W1の終端と下アームスイッチング素子16の第2端t42との間の両方に接続されている。
【0174】
〇上述の第1実施形態及び第2実施形態では、第2キャパシタ19が、二次巻線W2の始端と二次側ダイオード22のアノードとの間に接続されたが、第2キャパシタ19の位置はこれに限られるものではない。第2キャパシタ19は、二次巻線W2の終端と第2インダクタ21の第2端t72との間に接続してもよい。また、第2キャパシタ19は、二つのキャパシタにより構成されてもよく、この場合、二次巻線W2の始端と二次側ダイオード22のアノードとの間と、二次巻線W2の終端と第2インダクタ21の第2端t72との間の両方に接続されている。
【0175】
〇上述の変形例1では、第2キャパシタ19が、二次巻線W2の始端と二次側ダイオード22のカソードとの間に接続されたが、第2キャパシタ19の位置はこれに限られるものではない。第2キャパシタ19は、二次巻線W2の終端と二次側ダイオード22のアノードとの間に接続してもよい。また、第2キャパシタ19は二つのキャパシタにより構成されてもよく、この場合、二次巻線W2の始端と二次側ダイオード22のカソードとの間と、二次巻線W2の終端と二次側ダイオード22のカソードとの間の両方に接続される。
【0176】
〇電流センサC1は、第1中間線ML1上ではなく、第2中間線ML2上に設けてもよい。
〇バッファ回路40は、一次側回路10とは別体に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0177】
1、2、3、4、5、6…電力変換装置、10…一次側回路、11…第1インダクタ、12…上アームダイオード、13…下アームダイオード、14…ブリッジ回路、15…上アームスイッチング素子、16…下アームスイッチング素子、17…第1キャパシタ、18、18a…トランス、19…第2キャパシタ、20、30、60…整流平滑回路、21…第2インダクタ、22…二次側ダイオード、23…出力キャパシタ、24…第1二次側ダイオード、25…第2二次側ダイオード、40…バッファ回路、50…制御部、C1…電流センサ、C2、C3…電圧センサ、Cc…バッファキャパシタ、CL1…第1接続線、CL2…第2接続線、CL3…第3接続線、L1…第1入力線、L2…第2入力線、ML1…第1中間線、ML2…第2中間線、OL1…第1出力線、OL2…第2出力線、Q3…バッファスイッチング素子、t91…第1出力端、t92…第2出力端、V1…交流電源、W1…一次巻線、W2…二次巻線、W21…第1二次巻線、W22…第2二次巻線。