(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ボンド磁石およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 7/02 20060101AFI20240827BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01F7/02 A
H01F7/02 E
H01F41/02 G
(21)【出願番号】P 2021053402
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-06-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤中 智徳
(72)【発明者】
【氏名】竹本 佳朗
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0236724(US,A1)
【文献】特開2016-189462(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03711949(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0223099(US,A1)
【文献】特開2013-105964(JP,A)
【文献】特開2016-207773(JP,A)
【文献】特開2016-122827(JP,A)
【文献】特開2017-055493(JP,A)
【文献】特開平06-108309(JP,A)
【文献】特開平08-170225(JP,A)
【文献】特開2015-220906(JP,A)
【文献】特開平08-162351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/02
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構成部(21)と第2構成部(22)とを一組の基本構成部(20)とする複数組の基本構成部を備え、
前記複数組の基本構成部は、前記複数組の基本構成部のそれぞれが中心線(CL2)に対して円周方向に並んで互いに結合することで、1つの円環形状体(23)をなしており、
前記円環形状体は、前記円環形状体のうち前記中心線に対する径方向の内側に位置する内周面(23a)と、前記円環形状体のうち前記径方向の外側に位置する外周面(23b)とを有し、
前記複数組の基本構成部のそれぞれにおいて、前記第2構成部は、前記第1構成部に対して前記円周方向の一方側に隣接し、
前記第1構成部と前記第2構成部とのそれぞれは、互いに結合された複数本のフィラメント(11)によって少なくとも構成され、
前記複数本のフィラメントのそれぞれは、樹脂材料(13)と、前記樹脂材料中に分散された磁粉(12)とを含む糸状の部材であり、
前記第1構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれの一端(11c)と他端(11d)とは、前記外周面に位置し、
前記第1構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれは、前記一端から前記内周面側に向かって、前記径方向に沿って延び広がり、向きを変えて前記円周方向の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端に向かって、前記径方向に沿って延び広がっており、
前記第1構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれにおいて、フィラメントの中心線に沿う方向のそれぞれの部位における前記磁粉の各粒子の磁気モーメントを総合した前記磁粉の磁気モーメントの向きは、前記フィラメントの中心線に沿う向きであって、前記一端側の磁極が第1極となり、前記他端側の磁極が第2極となる向きであり、
前記第2構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれの一端と他端とは、前記外周面に位置し、
前記第2構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれは、前記一端から前記内周面側に向かって、前記径方向に沿って延び広がり、向きを変えて前記円周方向の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて前記他端に向かって、前記径方向に沿って延び広がっており、
前記第2構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれにおいて、フィラメントの中心線に沿う方向のそれぞれの部位における前記磁粉の各粒子の磁気モーメントを総合した前記磁粉の磁気モーメントの向きは、前記フィラメントの中心線に沿う向きであって、前記一端側の磁極が前記第2極となり、前記他端側の磁極が前記第1極となる向きである、ボンド磁石。
【請求項2】
前記円環形状体は第1円環形状体(231)であり、
前記第1円環形状体と同じ構造を持つ第2円環形状体(232)が、前記第1円環形状体に対して前記第1円環形状体の前記中心線に沿う方向に積層されており、
前記第2円環形状体の外周面に存在する磁極の位相は、前記第1円環形状体の外周面に存在する磁極に対して円周方向でずれている、請求項
1に記載のボンド磁石。
【請求項3】
前記円環形状体の前記径方向の長さをA1とし、半径が前記外周面の半径と同じであって、中心角が22.5度である扇形の弧の長さをB1としたとき、A1/B1は、0より大きく2より小さい、請求項
1または
2に記載のボンド磁石。
【請求項4】
第1構成部(71)と第2構成部(72)とを一組の基本構成部(70)とする複数組の基本構成部を備え、
前記複数組の基本構成部は、前記複数組の基本構成部のそれぞれが中心線(CL2)に対して円周方向に並んで互いに結合することで、1つの円環形状体(73)をなしており、
前記円環形状体は、前記円環形状体のうち前記中心線に対する径方向の内側に位置する内周面(73a)と、前記円環形状体のうち前記径方向の外側に位置する外周面(73b)とを有し、
前記複数組の基本構成部のそれぞれにおいて、前記第2構成部は、前記第1構成部に対して前記円周方向の一方側に隣接し、
前記第1構成部と前記第2構成部とのそれぞれは、互いに結合された複数本のフィラメント(11)によって少なくとも構成され、
前記複数本のフィラメントのそれぞれは、樹脂材料(13)と、前記樹脂材料中に分散された磁粉(12)とを含む糸状の部材であり、
前記第1構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれの一端(11c)と他端(11d)とは、前記内周面に位置し、
前記第1構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれは、前記一端から前記外周面側に向かって、前記径方向に沿って延び広がり、向きを変えて前記円周方向の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて前記他端に向かって、前記径方向に沿って延び広がっており、
前記第1構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれにおいて、フィラメントの中心線に沿う方向のそれぞれの部位における前記磁粉の各粒子の磁気モーメントを総合した前記磁粉の磁気モーメントの向きは、前記フィラメントの中心線に沿う向きであって、前記一端側の磁極が第1極となり、前記他端側の磁極が第2極となる向きであり、
前記第2構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれの一端と他端とは、前記内周面に位置し、
前記第2構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれは、前記一端から前記外周面側に向かって、前記径方向に沿って延び広がり、向きを変えて前記円周方向の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて前記他端に向かって、前記径方向に沿って延び広がっており、
前記第2構成部の前記複数本のフィラメントのそれぞれにおいて、フィラメントの中心線に沿う方向のそれぞれの部位における前記磁粉の各粒子の磁気モーメントを総合した前記磁粉の磁気モーメントの向きは、前記フィラメントの中心線に沿う向きであって、前記一端側の磁極が前記第2極となり、前記他端側の磁極が前記第1極となる向きである、ボンド磁石。
【請求項5】
前記円環形状体は第1円環形状体(731)であり、
前記第1円環形状体と同じ構造を持つ第2円環形状体(732)が、前記第1円環形状体に対して前記第1円環形状体の前記中心線に沿う方向に積層されており、
前記第2円環形状体の内周面に存在する磁極の位相は、前記第1円環形状体の内周面に存在する磁極に対して円周方向でずれている、請求項
4に記載のボンド磁石。
【請求項6】
前記円環形状体の前記径方向の長さをA1とし、半径が前記外周面の半径と同じであって、中心角が22.5度である扇形の弧の長さをB1としたとき、A1/B1は、0より大きく2より小さい、請求項
4または
5に記載のボンド磁石。
【請求項7】
請求項
1に記載のボンド磁石の製造方法であって、
前記樹脂材料と前記磁粉とを含む複合材料(14)を加熱して、前記樹脂材料を溶融することと、
前記樹脂材料が溶融した状態の前記複合材料を、磁場が形成されたノズル(33)の内部を通過させることで、前記磁粉を着磁させるとともに、前記磁粉を配向させることと、
前記磁粉が配向した状態の前記複合材料を前記ノズルの先端(33a)から出して前記フィラメントを形成するとともに、前記フィラメントを配置することと、を含み、
前記フィラメントを配置することにおいては、前記第1構成部および前記第2構成部が形成されるように、複数本のフィラメントを配置する、ボンド磁石の製造方法。
【請求項8】
請求項
4に記載のボンド磁石の製造方法であって、
前記樹脂材料と前記磁粉とを含む複合材料(14)を加熱して、前記樹脂材料を溶融することと、
前記樹脂材料が溶融した状態の前記複合材料を、磁場が形成されたノズル(33)の内部を通過させることで、前記磁粉を着磁させるとともに、前記磁粉を配向させることと、
前記磁粉が配向した状態の前記複合材料を前記ノズルの先端(33a)から出して前記フィラメントを形成するとともに、前記フィラメントを配置することと、を含み、
前記フィラメントを配置することにおいては、前記第1構成部および前記第2構成部が形成されるように、複数本のフィラメントを配置する、ボンド磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、樹脂材料に磁粉が分散されたボンド磁石が開示されている。特許文献1のボンド磁石は、円柱形状または円環形状である。このボンド磁石は、円周方向で複数に分割した形状の磁石片を、金型を用いて樹脂成形することで製造される。金型を用いての樹脂成形において、金型の内部空間に磁場が形成された状態で、樹脂成形されることで、磁粉が着磁される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のボンド磁石では、金型の内部空間に形成された磁場によって、ボンド磁石の内部の磁束の向きが決められる。しかし、金型の内部空間に形成される磁場の磁力線の向きの自由度は低い。このため、上記した従来のボンド磁石では、ボンド磁石の内部の磁束の向きの自由度は低い。また、上記した従来のボンド磁石の製造方法では、作用面の表面磁束密度が高い円環形状のボンド磁石が得られない。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、ボンド磁石の内部の磁束の向きの自由度が高いボンド磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。また、作用面の表面磁束密度が高い円環形状のボンド磁石およびその製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ボンド磁石は、
第1構成部(21)と第2構成部(22)とを一組の基本構成部(20)とする複数組の基本構成部を備え、
複数組の基本構成部は、複数組の基本構成部のそれぞれが中心線(CL2)に対して円周方向に並んで互いに結合することで、1つの円環形状体(23)をなしており、
円環形状体は、円環形状体のうち中心線に対する径方向の内側に位置する内周面(23a)と、円環形状体のうち径方向の外側に位置する外周面(23b)とを有し、
複数組の基本構成部のそれぞれにおいて、第2構成部は、第1構成部に対して円周方向の一方側に隣接し、
第1構成部と第2構成部とのそれぞれは、互いに結合された複数本のフィラメント(11)によって少なくとも構成され、
複数本のフィラメントのそれぞれは、樹脂材料(13)と、樹脂材料中に分散された磁粉(12)とを含む糸状の部材であり、
第1構成部の複数本のフィラメントのそれぞれの一端(11c)と他端(11d)とは、外周面に位置し、
第1構成部の複数本のフィラメントのそれぞれは、一端から内周面側に向かって、径方向に沿って延び広がり、向きを変えて円周方向の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端に向かって、径方向に沿って延び広がっており、
第1構成部の複数本のフィラメントのそれぞれにおいて、フィラメントの中心線に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉の各粒子の磁気モーメントを総合した磁粉の磁気モーメントの向きは、フィラメントの中心線に沿う向きであって、一端側の磁極が第1極となり、他端側の磁極が第2極となる向きであり、
第2構成部の複数本のフィラメントのそれぞれの一端と他端とは、外周面に位置し、
第2構成部の複数本のフィラメントのそれぞれは、一端から内周面側に向かって、径方向に沿って延び広がり、向きを変えて円周方向の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端に向かって、径方向に沿って延び広がっており、
第2構成部の複数本のフィラメントのそれぞれにおいて、フィラメントの中心線に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉の各粒子の磁気モーメントを総合した磁粉の磁気モーメントの向きは、フィラメントの中心線に沿う向きであって、一端側の磁極が第2極となり、他端側の磁極が第1極となる向きである。
【0010】
また、請求項7に記載の発明によれば、
請求項1に記載のボンド磁石の製造方法は、
樹脂材料と磁粉とを含む複合材料(14)を加熱して、樹脂材料を溶融することと、
樹脂材料が溶融した状態の複合材料を、磁場が形成されたノズル(33)の内部を通過させることで、磁粉を着磁させるとともに、磁粉を配向させることと、
磁粉が配向した状態の複合材料をノズルの先端(33a)から出してフィラメントを形成するとともに、フィラメントを配置することと、を含み、
フィラメントを配置することにおいては、第1構成部および第2構成部が形成されるように、複数本のフィラメントを配置する。
【0011】
これらによれば、外周面と内周面とのうち外周面のみに磁極が発生するとともに、ボンド磁石の内部では、磁束が外周面に向かって径方向またはそれに近い方向に延び広がるように、磁束が形成される。このため、外周面から外部へ延び広がる磁束の径方向の成分を大きくすることができる。よって、作用面である外周面の表面磁束密度が高い円環形状のボンド磁石を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、ボンド磁石は、
第1構成部(71)と第2構成部(72)とを一組の基本構成部(70)とする複数組の基本構成部を備え、
複数組の基本構成部は、複数組の基本構成部のそれぞれが中心線(CL2)に対して円周方向に並んで互いに結合することで、1つの円環形状体(73)をなしており、
円環形状体は、円環形状体のうち中心線に対する径方向の内側に位置する内周面(73a)と、円環形状体のうち径方向の外側に位置する外周面(73b)とを有し、
複数組の基本構成部のそれぞれにおいて、第2構成部は、第1構成部に対して円周方向の一方側に隣接し、
第1構成部と第2構成部とのそれぞれは、互いに結合された複数本のフィラメント(11)によって少なくとも構成され、
複数本のフィラメントのそれぞれは、樹脂材料(13)と、樹脂材料中に分散された磁粉(12)とを含む糸状の部材であり、
第1構成部の複数本のフィラメントのそれぞれの一端(11c)と他端(11d)とは、内周面に位置し、
第1構成部の複数本のフィラメントのそれぞれは、一端から外周面側に向かって、径方向に沿って延び広がり、向きを変えて円周方向の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端に向かって、径方向に沿って延び広がっており、
第1構成部の複数本のフィラメントのそれぞれにおいて、フィラメントの中心線に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉の各粒子の磁気モーメントを総合した磁粉の磁気モーメントの向きは、フィラメントの中心線に沿う向きであって、一端側の磁極が第1極となり、他端側の磁極が第2極となる向きであり、
第2構成部の複数本のフィラメントのそれぞれの一端と他端とは、内周面に位置し、
第2構成部の複数本のフィラメントのそれぞれは、一端から外周面側に向かって、径方向に沿って延び広がり、向きを変えて円周方向の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端に向かって、径方向に沿って延び広がっており、
第2構成部の複数本のフィラメントのそれぞれにおいて、フィラメントの中心線に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉の各粒子の磁気モーメントを総合した磁粉の磁気モーメントの向きは、フィラメントの中心線に沿う向きであって、一端側の磁極が第2極となり、他端側の磁極が第1極となる向きである。
【0013】
また、請求項8に記載の発明によれば、
請求項4に記載のボンド磁石の製造方法は、
樹脂材料と磁粉とを含む複合材料(14)を加熱して、樹脂材料を溶融することと、
樹脂材料が溶融した状態の複合材料を、磁場が形成されたノズル(33)の内部を通過させることで、磁粉を着磁させるとともに、磁粉を配向させることと、
磁粉が配向した状態の複合材料をノズルの先端(33a)から出してフィラメントを形成するとともに、フィラメントを配置することと、を含み、
フィラメントを配置することにおいては、第1構成部および第2構成部が形成されるように、複数本のフィラメントを配置する。
【0014】
これらによれば、外周面と内周面とのうち内周面のみに磁極が発生するとともに、ボンド磁石の内部では、磁束が内周面に向かって径方向またはそれに近い方向に延び広がるように、磁束が形成される。このため、内周面から外部へ延び広がる磁束の径方向の成分を大きくすることができる。よって、作用面である内周面の表面磁束密度が高い円環形状のボンド磁石を提供することができる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態におけるボンド磁石の斜視図である。
【
図2】
図1のボンド磁石が用いられるモータの模式的な分解斜視図である。
【
図5】
図3中の1本のフィラメントの斜視図である。
【
図6】
図5のフィラメントのVI-VI線断面図である。
【
図8】第1実施形態における1本のフィラメントの構成を示す模式図である。
【
図9】第1実施形態における1本のフィラメントの内部の磁束の向きを示す模式図である。
【
図11】第1実施形態におけるボンド磁石の製造装置の断面図である。
【
図12】第1実施形態におけるボンド磁石の製造方法において、ボンド磁石の製造装置のステージ上に複数本のフィラメントが配置されている様子を示す図である。
【
図13】第1実施形態におけるボンド磁石の製造方法において、ボンド磁石の製造装置のステージ上における複数本のフィラメントの配置を説明するための図である。
【
図14】第1実施形態におけるボンド磁石の製造方法において、第1構成部を形成するための複数本のフィラメントの配置を説明するための図である。
【
図15】第1実施形態におけるボンド磁石の製造方法において、第2構成部を形成するための複数本のフィラメントの配置を説明するための図である。
【
図16】第1実施形態におけるボンド磁石の磁束についてのシミュレーション結果である。
【
図17】比較例1のボンド磁石の平面図であって、ボンド磁石内の磁束を模式的に示した図である。
【
図18】比較例2のボンド磁石の平面図であって、ボンド磁石内の磁束を模式的に示した図である。
【
図19】第1実施形態のボンド磁石の平面図であって、ボンド磁石内の磁束を模式的に示した図である。
【
図20】比較例3のボンド磁石の平面図であって、ボンド磁石内の磁束を模式的に示した図である。
【
図21】比較例3のボンド磁石の製造工程の一部を示す図である。
【
図22】比較例3のボンド磁石の磁束についてのシミュレーション結果である。
【
図23】比較例3のボンド磁石の平面図であって、ボンド磁石の径方向の長さと、ボンド磁石の一部の円弧の長さとを示す図である。
【
図24】第1実施形態の変形例のボンド磁石の平面図である。
【
図25】第1実施形態の他の変形例のボンド磁石の平面図である。
【
図26】第2実施形態におけるボンド磁石の斜視図である。
【
図27】
図26のボンド磁石が用いられるモータの分解斜視図である。
【
図31】第2実施形態におけるボンド磁石の製造方法において、ボンド磁石の製造装置のステージ上における複数本のフィラメントの配置を説明するための図である。
【
図32】第2実施形態におけるボンド磁石の製造方法において、第1構成部を形成するための複数本のフィラメントの配置を説明するための図である。
【
図33】第2実施形態におけるボンド磁石の製造方法において、第2構成部を形成するための複数本のフィラメントの配置を説明するための図である。
【
図34】第3実施形態におけるボンド磁石の斜視図である。
【
図35】第3実施形態におけるボンド磁石の側面図である。
【
図36】第4実施形態におけるボンド磁石の斜視図である。
【
図37】第4実施形態におけるボンド磁石の側面図である。
【
図38】他の実施形態におけるボンド磁石の斜視図である。
【
図39】他の実施形態におけるボンド磁石の斜視図である。
【
図40】
図39のボンド磁石を構成する1つのフィラメントの斜視図である。
【
図41】他の実施形態におけるボンド磁石の製造装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態のボンド磁石10は、
図2に示すインナーロータ型のモータ1のインナーロータ3に用いられる極異方磁石である。ボンド磁石10は、軽量化のため、中空の円環形状である。
【0019】
図2に示すモータ1は、永久磁石同期モータである。モータ1は、ステータ2と、インナーロータ3と、ハウジング4とを備える。
【0020】
ステータ2は、図示しないが、鉄心、巻線を含む。ステータ2は、インナーロータ3を回転させる磁力を発生させる。インナーロータ3は、ステータ2の内部に配置される回転体である。インナーロータ3は、回転軸5、ヨーク6、ボンド磁石10を含む。ヨーク6は、ボンド磁石10の内側に配置されている。ヨーク6は、磁力を整える。ヨーク6の中心部に、回転軸5が配置されている。
【0021】
インナーロータ3がステータ2の内部に配置された状態のとき、ボンド磁石10の外周面は、ステータ2の巻線と対向する。ボンド磁石10の外周面には、
図3に示すように、8極の磁極が存在する。ハウジング4は、ステータ2およびインナーロータ3を収容する。ハウジング4は、回転軸5を回転可能に支持する軸受7を有する。
【0022】
図3、4に示すように、ボンド磁石10は、複数本のフィラメント11の集合体で構成されている。換言すると、ボンド磁石10は、互いに結合されてボンド磁石10の形状をなす複数本のフィラメント11を備える。複数本のフィラメント11のそれぞれは、磁気異方性を有する永久磁石である。
【0023】
図5に示すように、各フィラメント11は、糸状の部材である。各フィラメント11の太さは、1本のフィラメント11の全体で、均一である。複数本のフィラメント11のそれぞれの太さは同じである。
【0024】
図6に示すように、各フィラメント11の断面形状は、円形状である。円形状には、真円だけでなく、真円に近い形状、楕円等が含まれる。なお、
図4では、図示の簡略化のために、各フィラメント11の断面形状は四角で示されている。各フィラメント11の断面形状は、多角形等の他の形状であってもよい。
【0025】
各フィラメント11は、樹脂材料と、樹脂材料中に分散された磁粉とを含む。樹脂材料と磁粉とは、所定の比率で混合されている。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーが用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、アクリル樹脂、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。磁粉としては、フェライト系、Sm-Co系、Nd-Fe-B系、Sm-Fe-N系などの磁性材料の粉末が用いられる。磁粉としては、磁気等方性の磁粉よりも磁気異方性の磁粉を用いることが好ましい。
【0026】
図7は、
図6中のVII部の拡大図である。
図7中のフィラメント11において、粒状の部分が磁粉の各粒子であり、粒状の部分を除く部分が樹脂材料である。
図7に示すように、各フィラメント11の表層部11aは、各フィラメント11のうち表層部11aよりも中心側の部分11bと比較して、磁粉に対する樹脂材料の割合が大きい。これは、後述の通り、ボンド磁石の製造装置のノズルの先端から、樹脂材料が溶融した状態の磁粉と樹脂材料の複合材料が押し出されて、溶融した樹脂材料が冷却固化されることで、各フィラメント11が形成されるためである。表層部11aの平均厚さは、1~500μmである。磁粉の平均粒径は、0.01~1000μmである。磁粉同士の間隔は、0~1000μmである。なお、
図7では、表層部11aをわかりやすく示すために、表層部11aにハッチングを付している。
【0027】
図8に示すように、各フィラメント11において、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、中心線CL1に沿う向きである。中心線CL1に沿う向きとは、中心線CL1に対して平行な方向に沿う向きである。中心線CL1に沿う向きとは、中心線CL1に平行またはそれに近い向きのことである。
図8には、1本のフィラメント11において、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における代表的な磁粉12の粒子が拡大して示されている。
図8の磁粉12に示される矢印は、磁気モーメントを示している。矢印の先がN極である。
図8に示す磁粉12の磁気モーメントの向きは、磁粉12の各粒子の磁気モーメントを総合した磁気モーメントの向きに対応している。このように、磁粉12の磁気モーメントの向きは、中心線CL1に対して所定角度をなす方向に沿う向きである。本実施形態では、所定角度は180度である。「所定角度をなす方向に沿う向き」とは、所定角度に対してプラスマイナス10度の範囲の向きを意味する。
【0028】
なお、中心線CL1に沿う方向のフィラメント11のそれぞれの部位における磁粉12の全粒子の磁気モーメントが完全に一致していなくてもよい。フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の各粒子の磁気モーメントを総合した磁粉の磁気モーメントの向きが、中心線CL1に対して所定角度をなす方向に沿う向きであればよい。
【0029】
フィラメント11が曲がっている部分において、「中心線CL1に対して」とは、「中心線CL1の接線方向に対して」であることを意味する。すなわち、フィラメント11が曲がっている部分において、磁粉12の磁気モーメントの向きは、中心線CL1の接線方向に対して所定角度をなす方向に沿う向きである。
【0030】
このため、
図9に示すように、フィラメント11の内部における磁束の向きは、フィラメント11の中心線CL1に沿う向きである。
図9には、フィラメント11の内部における磁束を表す磁束線ML1が示されている。フィラメント11が曲がっている部分において、磁束線ML1は、中心線CLの曲がりに追従して曲がっている。すなわち、フィラメント11が曲がっている部分においても、磁束線ML1の向きは、中心線CL1に沿う向きである。このように、フィラメント11の内部における磁束の向きは、フィラメント11の中心線CL1に対して所定角度をなす方向に沿う向きである。
【0031】
本実施形態のボンド磁石10について、より詳細に説明する。
図3に示すように、ボンド磁石10は、第1構成部21と第2構成部22とを一組の基本構成部20とする複数組の基本構成部20を備える。
図10には、
図3中の一組の基本構成部20が示されている。
図3に示すように、複数組の基本構成部20のそれぞれは、中心線CL2に対する円周方向D2に並んで互いに結合している。これによって、複数組の基本構成部20は、1つの円環形状体23をなしている。中心線CL2に対する円周方向D2とは、中心線CL2を中心とする円の円周方向を意味する。
【0032】
円環形状体23は、円環形状体23のうち中心線CL2に対する径方向D3の内側に位置する内周面23aと、円環形状体23のうち径方向D3の外側に位置する外周面23bとを有する。中心線CL2に対する径方向D3とは、中心線CL2を中心とする円の径方向を意味する。
図4に示すように、複数の円環形状体23が中心線CL2に平行な方向D1に積層した積層体によって、ボンド磁石10が構成されている。
【0033】
図10に示すように、円環形状体23の径方向D3の幅をA1とする。半径が外周面23bの半径と同じ長さであって中心角が22.5度である、扇形の弧の長さをB1とする。このとき、A1/B1=1.0である。
【0034】
図10に示すように、一組の基本構成部20は、円環形状体23を円周方向D2で所定の中心角θ20ずつに分割した一つに相当する。複数組の基本構成部20のそれぞれにおいて、第2構成部22は、第1構成部21に対して円周方向D2の一方側に隣接する。本実施形態では、円周方向D2の一方側は、円周方向D2の時計回り側である。円周方向D2の他方側は、円周方向D2の反時計回り側である。第1構成部21および第2構成部22は、一組の基本構成部20を円周方向D2で二等分した一方と他方に相当する。第1構成部21と第2構成部22とのそれぞれの中心角θ21、θ22は、基本構成部20の中心角θ20の1/2である。本実施形態では、ボンド磁石10は、四組の基本構成部20を備える。一組の基本構成部20の中心角θ20は、90度である。第1構成部21と第2構成部22とのそれぞれの中心角θ21、22は、45度である。
【0035】
また、一組の基本構成部20において、第1構成部21の外周面のうち円周方向D2の他方側の半分の領域は、N極である。第1構成部21の外周面のうち円周方向D2の一方側の半分の領域は、S極である。
【0036】
第1構成部21は、互いに結合された複数本のフィラメント11によって少なくとも構成されている。複数本の第1フィラメント11は、互いに隣接して配置されている。
【0037】
第1構成部21の複数本の第1フィラメント11のそれぞれの一端11cは、円環形状体23の外周面23bに位置する。第1構成部21の複数本の第1フィラメント11のそれぞれの他端11dは、円環形状体23の外周面23bのうち一端11cよりも円周方向D2の一方側に位置する。
【0038】
第1構成部21の複数本のフィラメント11のそれぞれは、一端11cから他端11dまでU字状に延び広がっている。より詳細には、第1構成部21の複数本のフィラメント11のそれぞれは、一端11cから内周面23a側に向かって、径方向D3に沿って延び広がり、向きを変えて円周方向D2の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端11dに向かって、径方向D3に沿って延び広がっている。第1構成部21の複数本のフィラメント11のそれぞれのうち円周方向D2に延び広がる部分は、径方向D3に並んでいる。
【0039】
図8の説明の通り、第1構成部21の複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線CL1に沿う向きである。一端11c側の磁極がN極であり、他端11d側の磁極がS極である。本実施形態では、N極が第1極に相当する。S極が第2極に相当する。
【0040】
第2構成部22は、第1構成部21と同様に、互いに結合された複数本のフィラメント11によって少なくとも構成されている。第2構成部22の複数本のフィラメント11の配置は、第1構成部21と同じである。
【0041】
図8の説明の通り、第2構成部22の複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線CL1に沿う向きである。一端11c側の磁極がS極であり、他端11d側の磁極がN極である。このように、第2構成部22の複数本のフィラメント11における磁粉12の磁気モーメントの向きは、第1構成部21の複数本のフィラメント11における磁粉の磁気モーメントの向きに対して反対の向きである。
【0042】
図4に示すように、本実施形態のボンド磁石10では、複数の円環形状体23が積層されている。すなわち、上記した1つの円環形状体23が第1円環形状体231である。第1円環形状体231と同じ構造を持つ第2円環形状体232が、第1円環形状体231に対して第1円環形状体231の中心線CL2に平行な方向D1に積層されている。さらに、第1円環形状体231と同じ構造を持つ他の円環形状体233が、第2円環形状体232に対して第1円環形状体231の中心線CL2に平行な方向D1に積層されている。第1円環形状体231、第2円環形状体、他の円環形状体233のそれぞれの外周面に存在する磁極の位相は、一致している。
【0043】
なお、本実施形態のボンド磁石10は、複数の円環形状体23の積層体によって構成されている。しかしながら、ボンド磁石10は、1つの円環形状体23のみによって構成されてもよい。
【0044】
次に、本実施形態のボンド磁石10の製造方法について説明する。ボンド磁石10は、
図11に示すボンド磁石の製造装置30を用いて、熱溶解積層法によって製造される。熱溶解積層法は、溶融物堆積法とも呼ばれる。
【0045】
図11に示すように、ボンド磁石の製造装置30は、容器31と、ヒータ32と、ノズル33と、磁石34とを備える。容器31は、樹脂材料13と磁粉12とを含む複合材料14を内部に収容する。ヒータ32は、容器31の外側に配置される。ヒータ32は、容器31の内部に収容された複合材料14を加熱し、複合材料14中の樹脂材料13を溶融させる。ノズル33は、一方向を軸線方向として直線状に延び広がる筒形状である。ノズル33は、樹脂材料13が溶融した複合材料14をノズル33の内部に通過させ、ノズル33の先端33aから外部に出す。これによって、ノズル33は、樹脂材料13を固化させ、複合材料14が糸状となったフィラメント11を形成する。磁石34は、ノズル33の周囲に配置される。磁石34は、ノズル33の内部に磁場を形成する。
【0046】
ボンド磁石10の製造方法は、樹脂材料13の溶融工程と、磁粉12の着磁および配向工程と、フィラメント11の配置工程とを含む。
【0047】
樹脂材料13の溶融工程では、
図11に示す容器31の内部で、ヒータ32によって、樹脂材料13と磁粉12との複合材料14が加熱されることで、複合材料14中の樹脂材料13が溶融される。樹脂材料13が溶融された複合材料14は、ノズル33に送られる。
【0048】
磁粉12の着磁および配向工程では、磁粉12の着磁と磁粉12の配向とが行われる。すなわち、
図11に示すノズル33の内部には、磁粉12を着磁させるとともに、磁粉12の各粒子の磁気モーメントの向きをノズル33の軸線方向に対して所定の角度をなす向きにするための磁場が、磁石34によって形成されている。樹脂材料13が溶融した状態の複合材料14が、ノズル33の内部を通過することで、磁粉12が着磁されるとともに、磁粉12が配向する。
【0049】
本実施形態では、磁粉12の磁気モーメントの向きを、ノズル33の軸線方向に対して平行な向きであって、ノズル33の内部をノズル33の先端33aに向かって移動する複合材料14の進行方向D4に対して、前方側がN極、後方側がS極である向きとするための磁場が形成されている。このため、ノズル33の内部をノズル33の先端33aに向かって複合材料14が移動することで、複合材料14中の磁粉12の磁気モーメントの向きは、ノズル33の軸線方向に対して平行な向きであって、複合材料14の進行方向D4に対して、前方側がN極、後方側がS極である向きになる。Sm-Fe-N系の磁粉を用いたときでは、着磁前の磁粉の磁化は0Tであり、磁粉の配向度は0%であった。着磁後の磁粉の配向度は、90%であった。
【0050】
フィラメント11の配置工程では、
図11に示すように、ノズル33の先端33aから複合材料14が押し出されることで、複合材料14が糸状となり、フィラメント11が形成される。ノズル33の先端33aからノズル33の外部に複合材料14が出て、樹脂材料13が冷却されることで、磁粉12が特定の方向に配向した状態で、樹脂材料13が固化する。このとき、
図12に示すように、ノズル33から出たフィラメント11は、
図3、4に示す形状のボンド磁石10が形成されるように、ステージ35の表面上に配置される。
図12中のフィラメント11の隣りに示す矢印は、ステージ35に対するノズル33の移動方向を示す。樹脂材料13が完全に固化する前に、フィラメント11が配置される。樹脂材料13が固化することで、隣り合うフィラメント11同士が結合する。このように、フィラメント11の配置工程では、磁粉12が配向した状態の複合材料14をノズル33の先端33aから出して、フィラメント11を形成するとともに、フィラメント11を配置することが行われる。フィラメント11の配置工程では、第1構成部21および第2構成部22が形成されるように、複数本のフィラメント11を配置することが行われる。
【0051】
ここで、複数本のフィラメント11の配置について具体的に説明する。
図13に示すように、仮想平面において、内円41と外円42とを有する二重の円を想定する。外円42は内円41の外側に位置する。外円42の中心の位置は、内円41と同じである。内円41の半径は、目的とする円環形状のボンド磁石10の内周面の半径と同じである。外円42の半径は、目的とする円環形状のボンド磁石10の外周面の半径と同じである。
【0052】
まず、第1構成部21を次のように形成する。
図13に示す外円42および内円41のうち中心の真上の位置を、それぞれ、アナログ時計の0時の位置42a、41aとする。外円42および内円41の0時の位置42a、41aから1時30分の位置42b、41bまでの範囲が、第1構成部21の形成予定領域43である。1時30分の位置42b、41bとは、アナログ時計で1時30分のときに時針が指し示す位置である。
【0053】
第1構成部21の形成予定領域43において、外円42のうち中心角が第1構成部21の中心角θ21の1/2の大きさである外円の2つの弧であって、反時計回り側の部分を外円42の第1領域421とし、時計回り側の部分を外円42の第2領域422とする。すなわち、外円42の0時の位置42aから1時30分の位置42bまでの円弧のうち0時側の半分の領域が外円42の第1領域421であり、1時30分側の半分の領域が外円42の第2領域422である。第1構成部21の形成予定領域43では、外円42の第1領域421上の位置がフィラメント11の描画開始位置である。外円42の第2領域422上の位置がフィラメント11の描画終了位置である。
【0054】
図14に示すように、フィラメント11としての第1フィラメント111を、
図14中の破線矢印の向きで、U字状に描画する。すなわち、第1フィラメント111を、外円42の0時の位置42aから外円42の径方向D5の中心側に向かって内円41の0時の位置41aまで描画する。続いて、第1フィラメント111を、内円41の0時の位置41aから内円41の円周方向D6の一方側、すなわち、時計回り側に向かって、内円41のうち中心角が第1構成部21の中心角θ21の大きさである扇形の弧の長さ分となる位置まで描画する。中心角θ21の扇形の弧の長さ分となる位置は、内円41の1時30分の位置41bである。続いて、第1フィラメント111を、径方向D5の外側に向かって外円42の1時30分の位置42bまで描画する。
【0055】
次に、フィラメント11としての第2フィラメント112を、
図14中の破線矢印の向きで、第1フィラメント111に隣接させて、U字状に描画する。すなわち、第2フィラメント112を、第1フィラメント111に隣接させて、外円42の0時の位置42aに対して時計周り側の隣りの位置から径方向D5の中心側に向かう方向、円周方向D6の一方側に向かう方向、径方向D5の外側に向かう方向の順に描画する。
【0056】
その次に、フィラメント11としての第3フィラメント113を、
図14中の破線矢印の向きで、第2フィラメント112に隣接させて、U字状に描画する。すなわち、第3フィラメント113を、第2フィラメント112に隣接させて、外円42の0時の位置42aに対して時計回り側の位置から径方向D5の中心側に向かう方向、円周方向D6の一方側に向かう方向、径方向D5の外側に向かう方向の順に描画する。
【0057】
同様に、フィラメント11としての第4フィラメント114~第15フィラメント125のそれぞれを、先に描画したフィラメント11に隣接させて、U字状に描画する。このようにして、複数本のフィラメント11のそれぞれがU字状で互いに隣接して配置されることで、
図10に示す第1構成部21が形成される。
【0058】
続いて、第2構成部22を次のように形成する。
図13に示す外円42と内円41とのそれぞれの1時30分の位置42b、41bから3時の位置42c、41cまでの範囲が、第2構成部22の形成予定領域44である。第2構成部22の形成予定領域44において、外円42のうち中心角が第2構成部22の中心角θ22の1/2の大きさである外円の2つの弧であって、反時計回り側の部分を外円42の第3領域423とし、時計回り側の部分を外円42の第4領域424とする。すなわち、外円42の1時30分の位置42bから3時の位置42cまでの円弧のうち1時30分側の半分の領域が第3領域423であり、3時側の半分の領域が第4領域424である。第2構成部22の形成予定領域44では、外円42の第4領域424上の位置が、フィラメント11の描画開始位置である。外円42の第3領域423上の位置が、フィラメント11の描画終了位置である。
【0059】
図15に示すように、フィラメント11としての第21フィラメント131を、
図15中の破線矢印の向きで、U字状に描画する。すなわち、第21フィラメント131を、外円42の3時の位置42cから径方向D5の中心側に向かって内円41の3時の位置41cまで描画する。続いて、第21フィラメント131を、内円41の3時の位置41cから円周方向D6の他方側、すなわち、反時計回り側に向かって、内円41のうち中心角が第2構成部22の中心角θ22の大きさである扇形の弧の長さ分となる位置まで描画する。中心角θ22の扇形の弧の長さ分となる位置は、内円41の1時30分の位置41bである。このとき、第21フィラメント131を、第1構成部21の第1フィラメント111に隣接させる。続いて、第21フィラメント131を、径方向D5の外側に向かって外円42の1時30分の位置42bまで描画する。
【0060】
次に、フィラメント11としての第22フィラメント132を、
図15中の破線矢印の向きで、第21フィラメント131に隣接させて、U字状に描画する。すなわち、第22フィラメント132を、第21フィラメント131に隣接させて、外円42の3時の位置の反時計回り側の隣りの位置から径方向D5の中心側に向かう方向、円周方向D6の他方側に向かう方向、径方向D5の外側に向かう方向の順に描画する。
【0061】
その次に、フィラメント11としての第23フィラメント133を、
図15中の破線矢印の向きで、第22フィラメント132に隣接させて、U字状に描画する。すなわち、第23フィラメント133を、第22フィラメント132に隣接させて、外円42の3時の位置42cに対して反時計回り側の位置から径方向D5の中心側に向かう方向、円周方向D6の他方側に向かう方向、径方向D5の外側に向かう方向の順に描画する。
【0062】
同様に、フィラメント11としての第24フィラメント134~第35フィラメント145のそれぞれを、先に描画したフィラメント11に隣接させて、U字状に描画する。このようにして、複数本のフィラメント11のそれぞれがU字状で互いに隣接して配置されることで、
図10に示す第2構成部22が形成される。
【0063】
このようにして、
図10に示す一組の基本構成部20が形成された後、他の三組の基本構成部20も同様に形成される。
図3に示すように、隣り合う基本構成部20同士が結合されるように、四組の基本構成部20が円周方向に並んで形成されることで、1つの円環形状体23が形成される。
【0064】
さらに、
図4に示すように、この円環形状体23に対して、この円環形状体23の中心線CL2に平行な方向D1に、この円環形状体23と同じ構造を持つ複数の他の円環形状体23が積層される。このとき、
図3に示す円環形状体23の外周面23bに存在する磁極の位相は、一致している。すなわち、積層された複数の円環形状体23のそれぞれにおいて、円周方向での四組の基本構成部20の位置は、一致している。このようにして、円環形状のボンド磁石10が製造される。
【0065】
次に、本実施形態のボンド磁石10の磁束について説明する。
図16は、本実施形態のボンド磁石10の磁束についてのシミュレーションソフトウェアの「JMAG-Desginer」を用いたシミュレーション結果である。シミュレーションの対象のボンド磁石において、ボンド磁石を構成する磁粉は、SmFeNである。ボンド磁石を構成する樹脂材料は、ポリカプロラクトンである。磁粉と樹脂材料との比率は、磁粉:樹脂材料=60vol%:40vol%である。
【0066】
図16には、本実施形態のボンド磁石10の一部が示されるとともに、この一部の内部と外部とにわたって磁束線が実線で示されている。この一部の中心角は、45度である。この一部には、一組の基本構成部20の第1構成部21の半分と第2構成部22の半分とが含まれる。
図16において、複数本のフィラメント11は、破線で示されている。
【0067】
図16に示すように、ボンド磁石10の内部の磁束線は、複数本のフィラメント11のそれぞれの中心線に沿う方向に延び広がっている。このことから、ボンド磁石10の内部の磁束の向きは、複数本のフィラメント11のそれぞれの中心線に沿う向きである。中心線に沿う向きとは、中心線に平行またはそれに近い向きのことである。
【0068】
ボンド磁石10の内部では、磁束線が外周面に向かって径方向またはそれに近い方向に延びており、磁束の向きが揃っている。そして、外周面からボンド磁石10の外部に向かって磁束線が出ている。ボンド磁石10の外周面の表面磁束密度は、平均0.37Tであった。
【0069】
以上の説明の通り、本実施形態のボンド磁石10は、互いに結合されてボンド磁石10の形状をなす複数本のフィラメント11を備える。複数本のフィラメント11のそれぞれは、磁気異方性を有する。具体的には、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の各粒子の磁気モーメントを総合した磁粉12の磁気モーメントの向きは、その磁粉12が位置するフィラメント11の部位におけるフィラメント11の中心線CL1に対して所定角度をなす方向に沿う向きである。
【0070】
また、本実施形態のボンド磁石10は、本実施形態のボンド磁石10の製造方法によって、製造される。本実施形態のボンド磁石10の製造方法は、樹脂材料13を溶融することと、磁粉12を配向させることと、フィラメント11を配置することとを含む。樹脂材料13を溶融することにおいては、樹脂材料13と磁粉12とを含む複合材料14を加熱する。磁粉12を配向させることにおいては、樹脂材料13が溶融した状態の複合材料14を、磁場が形成されたノズル33の内部を通過させることで、磁粉12を着磁させるとともに、磁粉12を配向させる。フィラメント11を配置することにおいては、磁粉12が配向した状態の複合材料14をノズル33の先端33aから出して、フィラメント11を形成するとともに、フィラメント11を配置する。フィラメント11を配置することにおいては、所定の形状のボンド磁石10が形成されるように、複数本のフィラメント11を配置する。
【0071】
これらによれば、ボンド磁石10の内部の磁束の向きは、複数本のフィラメント11の配置によって決まる。複数本のフィラメント11の配置の自由度の方が、金型の内部空間に形成される磁場の磁力線の向きの自由度よりも高い。よって、金型を用いた樹脂成形によってボンド磁石が製造される場合と比較して、ボンド磁石10の内部の磁束の向きの自由度を高めることができる。
【0072】
また、これらによれば、ボンド磁石10の内部の磁束の向きが狙いの向きで揃うように、複数本のフィラメント11が配置される。これにより、ボンド磁石10の内部の磁束の向きが狙いの向きで揃うボンド磁石10が得られる。
【0073】
また、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0074】
(1)
図7に示すように、複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、1本のフィラメント11の表層部11aは、1本のフィラメント11のうち表層部11aよりも中心側の部分11bと比較して、磁粉に対する樹脂材料の割合が大きい。これによれば、フィラメント11の表層部11aに樹脂材料が多く含まれている。複数本のフィラメント11のそれぞれの結合は、フィラメント11の表層部11aの樹脂材料同士が結合することによってなされる。このため、フィラメント11の表層部11aに含まれる樹脂材料が多いほど、フィラメント11同士の結合が強固になり、ボンド磁石10の形状を維持し易いという効果が得られる。
【0075】
(2)ボンド磁石10は、第1構成部21と第2構成部22とを一組の基本構成部20とする複数組の基本構成部20を備える。複数組の基本構成部20のそれぞれは、中心線CL2に対する円周方向D2に並んで互いに結合することで、1つの円環形状体23をなしている。複数組の基本構成部20のそれぞれにおいて、第2構成部22は、第1構成部21に対して円周方向の一方側に隣接する。第1構成部21と第2構成部22とのそれぞれは、互いに結合された複数本のフィラメント11によって少なくとも構成される。
【0076】
第1構成部21の複数本の第1フィラメント11のそれぞれの一端11cと他端11dとは、円環形状体23の外周面23bに位置する。第1構成部21の複数本のフィラメント11のそれぞれは、一端11cから内周面23a側に向かって、径方向D3に沿って延び広がり、向きを変えて円周方向D2の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端11dに向かって、径方向D3に沿って延び広がっている。第2構成部22の複数本のフィラメント11の配置は、第1構成部21と同じである。
【0077】
第1構成部21の複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線に沿う向きであって、一端11c側の磁極がN極となり、他端11d側の磁極がS極となる向きである。一方、第2構成部22の複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線に沿う向きであって、一端11c側の磁極がS極となり、他端11d側の磁極がN極となる向きである。
【0078】
モータ1のインナーロータ3に用いられる磁石には、作用面である外周面の表面磁束密度が高いことが求められる。ここで、本実施形態のボンド磁石10と、比較例1、2のボンド磁石J1、J2とを対比する。
【0079】
図17に示す比較例1のボンド磁石J1は、中空である円環形状の磁石である。
図17のボンド磁石J1の内部に、代表的な磁束線MLJ1が示されている。比較例1のボンド磁石でJ1は、外周面と内周面との両方に、磁極が存在する。ボンド磁石J1の内部の磁束は、
図17中の磁束線MLJ1のように、内周面と外周面との間を、径方向に延び広がる。外周面から磁束が外部へ延び広がるだけでなく、作用面ではない内周面からも磁束が延び広がる。このため、比較例1のボンド磁石J1では、外周面で使える磁束が半分となる。よって、比較例1のボンド磁石J1では、外周面の表面磁束密度が低い。
【0080】
図18に示す比較例2のボンド磁石J2は、中空である円環形状の磁石である。
図18のボンド磁石J2の内部に、代表的な磁束線MLJ2が示されている。比較例2のボンド磁石J2では、主に外周面に磁極が発生するように、ボンド磁石J2の内部に磁束が形成されている。ボンド磁石J2の内部では、
図18中の磁束線MLJ2のように、外周面の一部から外周面の他の一部に向かって、磁束が中心側に凸の円弧状に延びている。すなわち、ボンド磁石J2の内部で、磁束は外周面に向かって径方向に対して斜めに延び広がる。このため、外周面から外部へ延び広がる磁束の径方向の成分が小さい。よって、比較例2のボンド磁石J2では、外周面の表面磁束密度が低い。
【0081】
図19に示すボンド磁石は、本実施形態のボンド磁石10である。
図19のボンド磁石10の内部に、代表的な磁束線ML1が示されている。
図19に示すように、本実施形態のボンド磁石10では、主に外周面に磁極が発生するように、磁束が形成されている。ボンド磁石10の内部では、
図19中の磁束線ML1のように、磁束は外周面に向かって径方向またはそれに近い方向に延びている。このため、外周面から外部へ延び広がる磁束の径方向の成分が大きい。よって、本実施形態のボンド磁石10によれば、比較例1、2のボンド磁石J1、J2と比較して、外周面の表面磁束密度を高めることができる。
【0082】
次に、本実施形態のボンド磁石10と、
図20に示す比較例3のボンド磁石J3とを対比する。比較例3のボンド磁石J3は、特許文献1に記載のボンド磁石に対応する。このボンド磁石J3は、中実の円柱形状である。このボンド磁石J3は、円柱形状を円周方向に複数に分割した形状である複数の磁石片J10を接合することで、製造される。複数の磁石片J10のそれぞれは、
図21に示すように、着磁用磁石J11、J12、J13によって、金型の内部空間に磁場が形成された状態で、金型によって成形される。
【0083】
図22は、比較例3のボンド磁石J3における1つの磁石片J10の磁束についてのシミュレーションソフトウェアの「JMAG-Desginer」を用いたシミュレーション結果である。1つの磁石片J10の
図20に示す中心角θJ10は、45度である。このシミュレーションにおいて、磁粉と樹脂材料とのそれぞれの材料名、磁粉と樹脂材料の比率は、上記の本実施形態のボンド磁石10のシミュレーションのときと同じである。このシミュレーション結果によると、比較例3のボンド磁石J3では、外周面の表面磁束密度は、平均0.30Tであった。本実施形態のボンド磁石10では、外周面の表面磁束密度は、平均0.37Tであった。これらのことから、本実施形態のボンド磁石10の方が、比較例3のボンド磁石J3よりも、表面磁束密度が高いことが確認された。
【0084】
(3)本実施形態のボンド磁石10では、
図10に示すA1/B1は1である。
【0085】
比較例3のボンド磁石J3では、A1/B1は2.8である。
図23に示すように、A1は、ボンド磁石J3の径方向の長さであり、ボンド磁石J3の円形状の面における半径r1に等しい。B1は、半径がボンド磁石J3の外周面の半径r1と同じであって、中心角が22.5度の扇形の弧の長さである。
【0086】
特許文献1には、磁石片J10の中心角θJ10が45度の場合において、弧の長さB1に対する径方向の長さA1の比が2より大きい場合が好ましいと記載されている。このため、特許文献1に記載のボンド磁石の製造方法では、A1/B1が2より小さい円環形状のボンド磁石であって、外周面の表面磁束密度が高いボンド磁石の製造は困難である。
【0087】
これに対して、本実施形態のボンド磁石10の製造方法は、着磁後のフィラメント11を配置することで、ボンド磁石10を製造する。このため、本実施形態によれば、A1/B1が2より小さい円環形状のボンド磁石であって、外周面の表面磁束密度が高いボンド磁石が得られる。
【0088】
なお、本実施形態のボンド磁石10では、A1/B1は1である。しかしながら、
図24、
図25に示すボンド磁石10A、10Bのように、A1/B1は、0より大きく2より小さい1以外の値でもよい。
図24に示す円環形状のボンド磁石10Aでは、径方向の長さA1は、円環形状体の外周面の半径r1の1/2である。A1/B1は、1.4である。
図25に示す円環形状のボンド磁石10Bでは、径方向の長さA1は、円環形状体の外周面の半径r1の1/4である。A1/B1は、0.7である。
【0089】
A1/B1<1.0である円環形状のボンド磁石では、U字状に延び広がる1本のフィラメント11において、径方向に延び広がる部分の太さは、円周方向に延び広がる部分の太さよりも大きくされる。これにより、A1/B1<1.0である円環形状を実現することができる。このように、フィラメント11の部位によって、フィラメント11の太さを異ならせることで、複数本のフィラメント11によって構成されるボンド磁石の形状の自由度を高めることができる。
【0090】
(第2実施形態)
図26に示す本実施形態のボンド磁石60は、
図27に示すアウターロータ型のモータ51のアウターロータ53に用いられる。このボンド磁石60は、第1実施形態と同様に、中空の円環形状である。
【0091】
図27に示すモータ51は、永久磁石同期モータである。モータ51は、ステータ52と、アウターロータ53と、ハウジング54とを備える。
【0092】
ステータ52は、図示しないが、鉄心、巻線を含む。ステータ52は、アウターロータ53を回転させる磁力を発生させる。アウターロータ53は、ステータ52の外側に配置される回転体である。アウターロータ53は、回転軸55、ボンド磁石60を含む。
【0093】
アウターロータ53がステータ52の外側に配置された状態のとき、ボンド磁石60の内周面は、ステータ52の巻線と対向する。ボンド磁石60の内周面には、
図28に示すように、8極の磁極が存在する。ハウジング54は、ステータ52およびアウターロータ53を収容する。ハウジング54は、回転軸55を回転可能に支持する軸受56を有する。
【0094】
図28、29に示すように、ボンド磁石60は、複数本のフィラメント11の集合体で構成されている。換言すると、ボンド磁石60は、互いに結合されてボンド磁石60の形状をなす複数本のフィラメント11を備える。本実施形態のボンド磁石60では、複数本のフィラメント11の配置が第1実施形態のボンド磁石10と異なる。
【0095】
図28に示すように、ボンド磁石60は、第1構成部71と第2構成部72とを一組の基本構成部70とする複数組の基本構成部70を備える。
図30には、
図28中の一組の基本構成部70が示されている。
図28に示すように、複数組の基本構成部70のそれぞれは、中心線CL2に対する円周方向D2に並んで互いに結合している。これによって、複数組の基本構成部70は、1つの円環形状体73をなしている。円環形状体73は、円環形状体73のうち中心線CL2に対する径方向D3の中心側に位置する内周面73aと、円環形状体73のうち径方向D3の外側に位置する外周面73bとを有する。
図29に示すように、複数の円環形状体73が中心線CL2に平行な方向D1に積層した積層体によって、ボンド磁石60が構成されている。
【0096】
図30に示すように、一組の基本構成部70は、円環形状体73を円周方向D2で所定の中心角θ70ずつに分割した一つに相当する。複数組の基本構成部70のそれぞれにおいて、第2構成部72は、第1構成部71に対して円周方向D2の一方側に隣接する。本実施形態では、円周方向D2の一方側は、円周方向D2の時計回り側である。円周方向D2の他方側は、円周方向D2の反時計回り側である。第1構成部71および第2構成部72は、一組の基本構成部70を円周方向D2で二等分した一方と他方に相当する。第1構成部71と第2構成部72とのそれぞれの中心角θ71、θ72は、基本構成部70の中心角θ70の1/2である。本実施形態では、ボンド磁石60は、四組の基本構成部70を備える。一組の基本構成部70の中心角θ70は、90度である。第1構成部71と第2構成部72とのそれぞれの中心角θ71、72は、45度である。
【0097】
また、円環形状体73の径方向D3の幅をA1とする。半径が外周面73bの半径と同じ長さであって中心角が22.5度である、扇形の弧の長さをB1とする。このとき、A1/B1=1.0である。
【0098】
また、一組の基本構成部70において、第1構成部71の内周面のうち円周方向D2の他方側の半分の領域は、N極である。第1構成部71の内周面のうち円周方向D2の一方側の半分の領域は、S極である。
【0099】
第1構成部71は、互いに結合された複数本のフィラメント11によって少なくとも構成されている。複数本の第1フィラメント11は、互いに隣接して配置されている。
【0100】
第1構成部71の複数本の第1フィラメント11のそれぞれの一端11cは、円環形状体73の内周面73aに位置する。第1構成部71の複数本の第1フィラメント11のそれぞれの他端11dは、円環形状体73の内周面73aのうち一端11cよりも円周方向D2の一方側に位置する。
【0101】
第1構成部71の複数本のフィラメント11のそれぞれは、一端11cから他端11dまでU字状に延び広がっている。より詳細には、第1構成部71の複数本のフィラメント11のそれぞれは、一端11cから外周面73b側に向かって、径方向D3に沿って延び広がり、向きを変えて円周方向D2の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端11dに向かって、径方向D3に沿って延び広がっている。第1構成部71の複数本のフィラメント11のそれぞれの円周方向D2に延び広がる部分は、径方向D3に並んでいる。
【0102】
図8の説明の通り、第1構成部71の複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線CL1に沿う向きである。一端11c側の磁極がN極であり、他端11d側の磁極がS極である。
【0103】
第2構成部72は、第1構成部71と同様に、互いに結合された複数本のフィラメント11によって少なくとも構成されている。第2構成部72の複数本のフィラメント11の配置は、第1構成部71と同じである。
【0104】
図8の説明の通り、第2構成部72の複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線CL1に沿う向きである。一端11c側の磁極がS極であり、他端11d側の磁極がN極である。このように、第2構成部72の複数本のフィラメント11における磁粉12の磁気モーメントの向きは、第1構成部71の複数本のフィラメント11における磁粉12の磁気モーメントの向きに対して反対の向きである。
【0105】
図29に示すように、本実施形態のボンド磁石60では、複数の円環形状体73が積層されている。すなわち、上記した1つの円環形状体73が第1円環形状体731である。第1円環形状体731と同じ構造を持つ第2円環形状体732が、第1円環形状体731に対して第1円環形状体731の中心線CL2に平行な方向D1に積層されている。さらに、第1円環形状体731と同じ構造を持つ他の円環形状体733が、第2円環形状体732に対して第1円環形状体731の中心線CL2に平行な方向D1に積層されている。
【0106】
なお、本実施形態のボンド磁石60は、複数の円環形状体73の積層体によって構成されている。しかしながら、ボンド磁石60は、1つの円環形状体73のみによって構成されてもよい。
【0107】
次に、本実施形態のボンド磁石60の製造方法について説明する。本実施形態のボンド磁石60の製造方法は、フィラメント11の配置工程を除いて、第1実施形態のボンド磁石10の製造方法と同じである。フィラメント11の配置工程では、第1構成部71および第2構成部72が形成されるように、複数本のフィラメント11が配置される。
【0108】
本実施形態における複数本のフィラメント11の配置について具体的に説明する。
図31に示すように、仮想平面において、内円81と外円82とを有する二重の円を想定する。外円82は内円81の外側に位置する。外円82の中心の位置は、内円81と同じである。内円81の半径は、目的とする円環形状のボンド磁石60の内周面の半径と同じである。外円82の半径は、目的とする円環形状のボンド磁石60の外周面の半径と同じである。
【0109】
まず、第1構成部71を次のように形成する。
図31に示す外円82および内円81のうち中心の真上の位置を、それぞれ、アナログ時計の0時の位置82a、81aとする。外円82および内円81の0時の位置82a、81aから1時30分の位置82b、81bまでの範囲が、第1構成部71の形成予定領域83である。
【0110】
第1構成部71の形成予定領域83において、中心角が第1構成部71の中心角θ71の1/2の大きさである内円81の2つの弧であって、反時計回り側の部分を内円81の第1領域811とし、時計回り側の部分を内円81の第2領域812とする。すなわち、内円81の0時の位置81aから1時30分の位置81bまでの円弧のうち0時側の半分の領域が内円81の第1領域811であり、1時30分側の半分の領域が内円81の第2領域812である。第1構成部71の形成予定領域83では、内円81の第1領域811上の位置がフィラメント11の描画開始位置である。内円81の第2領域812上の位置がフィラメント11の描画終了位置である。
【0111】
図32に示すように、フィラメント11としての第1フィラメント111を、
図32中の破線矢印の向きで、U字状に描画する。すなわち、第1フィラメント111を、内円81の0時の位置81aから外円82の径方向D5の外側に向かって外円82の0時の位置82aまで描画する。続いて、第1フィラメント111を、外円82の0時の位置82aから外円82の円周方向D6の一方側、すなわち、時計回り側に向かって、外円82のうち中心角が第1構成部71の中心角θ71の大きさである扇形の弧の長さ分となる位置まで描画する。中心角θ71の扇形の弧の長さ分となる位置は、外円82の1時30分の位置82bである。続いて、第1フィラメント111を、径方向D5の中心側に向かって内円81の1時30分の位置81bまで描画する。
【0112】
次に、フィラメント11としての第2フィラメント112を、
図32中の破線矢印の向きで、第1フィラメント111に隣接させて、U字状に描画する。すなわち、第2フィラメント112を、第1フィラメント111に隣接させて、内円81の0時に対して時計周り側の隣りの位置から径方向D5の外側に向かう方向、円周方向D6の一方側に向かう方向、径方向D5の中心側に向かう方向の順に描画する。
【0113】
その次に、フィラメント11としての第3フィラメント113を、
図32中の破線矢印の向きで、第2フィラメント112に隣接させて、U字状に描画する。すなわち、第3フィラメント113を、第2フィラメント112に隣接させて、内円81の0時の位置81aに対して時計回り側の位置から径方向D5の外側に向かう方向、円周方向D6の一方側に向かう方向、径方向D5の中心側に向かう方向の順に描画する。
【0114】
同様に、フィラメント11としての第4フィラメント114~第10フィラメント120のそれぞれを、第4~第10の番号が小さい方から大きい順に、先に描画したフィラメント11に隣接させて、U字状に描画する。このようにして、複数本のフィラメント11のそれぞれがU字状で互いに隣接して配置されることで、
図30に示す第1構成部71が形成される。
【0115】
続いて、第2構成部72を次のように形成する。
図31に示す外円82と内円81とのそれぞれの1時30分の位置82b、81bから3時の位置82c、81cまでの範囲が、第2構成部72の形成予定領域84である。第2構成部72の形成予定領域84において、中心角が第2構成部72の中心角θ72の1/2の大きさである内円81の2つの弧であって、反時計回り側の部分を内円81の第3領域813とし、時計回り側の部分を内円81の第4領域814とする。すなわち、内円81の1時30分の位置81bから3時の位置81cまでの円弧のうち1時30分側の半分の領域が内円81の第3領域813であり、3時側の半分の領域が内円81の第4領域814である。第2構成部72の形成予定領域84では、内円81の第4領域814上の位置が、フィラメント11の描画開始位置である。内円81の第3領域813上の位置が、フィラメント11の描画終了位置である。
【0116】
図33に示すように、フィラメント11としての第21フィラメント131を、
図33中の破線矢印の向きで、U字状に描画する。すなわち、第21フィラメント131を、内円81の3時の位置81cから径方向D5の外側に向かって外円82の3時の位置82cまで描画する。続いて、第21フィラメント131を、外円82の3時の位置82cから円周方向D6の他方側、すなわち、反時計回り側に向かって、外円82のうち中心角が第2構成部72の中心角θ72の大きさである扇形の弧の長さ分となる位置まで描画する。中心角θ72の扇形の弧の長さ分となる位置は、外円82の1時30分の位置82bである。続いて、第21フィラメント131を、径方向D5の中心側に向かって内円81の1時30分の位置81bまで描画する。このとき、第21フィラメント131を、
図32の第1構成部71の第1フィラメント111に隣接させる。
【0117】
次に、フィラメント11としての第22フィラメント132を、
図33中の破線矢印の向きで、第21フィラメント131に隣接させて、U字状に描画する。すなわち、第22フィラメント132を、第21フィラメント131に隣接させて、内円81の3時の位置81cの反時計回り側の隣りの位置から径方向D5の外側に向かう方向、円周方向D6の他方側に向かう方向、径方向D5の中心側に向かう方向の順に描画する。
【0118】
その次に、フィラメント11としての第23フィラメント133を、
図33中の破線矢印の向きで、第22フィラメント132に隣接させて、U字状に描画する。すなわち、第23フィラメント133を、第22フィラメント132に隣接させて、内円81の3時の位置81cに対して反時計回り側の位置から径方向D5の外側に向かう方向、円周方向D6の他方側に向かう方向、径方向D5の中心側に向かう方向の順に描画する。
【0119】
同様に、フィラメント11としての第24フィラメント134~第30フィラメント140のそれぞれを、第24~第30の番号が小さい方から大きい方へ順に、先に描画したフィラメント11に隣接させて、U字状に描画する。このようにして、複数本のフィラメント11のそれぞれがU字状で互いに隣接して配置されることで、
図30に示す第2構成部72が形成される。
【0120】
このようにして、
図30に示す一組の基本構成部70が形成された後、他の三組の基本構成部70も同様に形成される。
図28に示すように、隣り合う基本構成部70同士が結合されるように、四組の基本構成部70が円周方向に並んで形成されることで、1つの円環形状体73が形成される。
【0121】
さらに、この円環形状体73に対して、
図29に示すように、この円環形状体73の中心線CL2に平行な方向D1に、この円環形状体73と同じ構成である複数の他の円環形状体73が積層される。このとき、円環形状体73の内周面73aに存在する磁極の位相は、一致している。すなわち、積層された複数の円環形状体73のそれぞれにおいて、円周方向での四組の基本構成部70の位置は、一致している。このようにして、円環形状のボンド磁石60が製造される。
【0122】
以上の説明の通り、本実施形態のボンド磁石60は、第1構成部71と第2構成部72とを一組の基本構成部70とする複数組の基本構成部70を備える。複数組の基本構成部70のそれぞれは、中心線CL2に対する円周方向D2に並んで互いに結合することで、1つの円環形状体73をなしている。複数組の基本構成部70のそれぞれにおいて、第2構成部72は、第1構成部71に対して円周方向の一方側に隣接する。第1構成部71と第2構成部72とのそれぞれは、互いに結合された複数本のフィラメント11によって少なくとも構成される。
【0123】
第1構成部71の複数本の第1フィラメント11のそれぞれの一端11cと他端11dとは、円環形状体73の内周面73aに位置する。第1構成部71の複数本のフィラメント11のそれぞれは、一端11cから外周面73b側に向かって、径方向D3に沿って延び広がり、向きを変えて円周方向D2の一方側に向かって延び広がり、さらに向きを変えて他端11dに向かって、径方向D3に沿って延び広がっている。第2構成部72の複数本のフィラメント11の配置は、第1構成部71と同じである。
【0124】
第1構成部71の複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線CL1に沿う向きであって、一端11c側の磁極がN極となり、他端11d側の磁極がS極となる向きである。一方、第2構成部72の複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線CL1に沿う向きであって、一端11c側の磁極がS極となり、他端11d側の磁極がN極となる向きである。
【0125】
ここで、モータ51のアウターロータ53に用いられる磁石には、作用面である内周面の表面磁束密度が高いことが求められる。本実施形態のボンド磁石60によれば、主に内周面に磁極が発生するとともに、ボンド磁石60の内部では、磁束が内周面に向かって径方向またはそれに近い方向に延び広がるように、磁束が形成される。このため、内周面から外部へ延び広がる磁束の径方向の成分を大きくすることができる。よって、本実施形態のボンド磁石60によれば、内周面の表面磁束密度を高めることができる。
【0126】
なお、本実施形態のボンド磁石60では、A1/B1は1である。しかしながら、第1実施形態での説明の通り、
図24、25に示すように、A1/B1は、0より大きく2より小さい1以外の値でもよい。本実施形態によれば、A1/B1が2より小さい円環形状のボンド磁石であって、内周面の表面磁束密度が高いボンド磁石が得られる。
【0127】
(第3実施形態)
図34、
図35に示すように、本実施形態のボンド磁石10Aでは、第1実施形態のボンド磁石10と同様に、複数の円環形状体23が積層されている。各円環形状体23の構造は、第1実施形態のボンド磁石10と同じである。
【0128】
本実施形態のボンド磁石10Aでは、第1実施形態のボンド磁石10と異なり、複数の円環形状体23のそれぞれの磁極の位相が、円周方向で所定量ずつずれている。すなわち、第2円環形状体232の外周面に存在する磁極の位相は、第1円環形状体231の外周面に存在する磁極に対して、円周方向で所定量ずれている。第3円環形状体233の外周面に存在する磁極の位相は、第2円環形状体232の外周面に存在する磁極に対して円周方向で所定量ずれている。さらに、換言すると、第1円環形状体231と第2円環形状体232とにおいて、互いに同じ形状および磁気モーメントのフィラメント11に着眼する。第2円環形状体232の外周面に存在するフィラメント11の端部の位置が、第1円環形状体231の外周面に存在するフィラメント11の端部の位置に対して、円周方向で所定量ずれている。所定量は、例えば、円環形状体23の中心位置を中心とする回転角で10度である。
【0129】
本実施形態のボンド磁石10Aによれば、円周方向で徐々にS極またはN極が増えているため、トルク変動が少なく、インナーロータ3が滑らかに回転することが期待できる。なお、本実施形態のボンド磁石10Aにおいては、2つ以上の円環形状体23が積層されていればよい。
【0130】
(第4実施形態)
図36、
図37に示すように、本実施形態のボンド磁石60Aでは、第2実施形態のボンド磁石60と同様に、複数の円環形状体73が積層されている。各円環形状体73の構造は、第2実施形態のボンド磁石60と同じである。
【0131】
本実施形態のボンド磁石60Aでは、第2実施形態のボンド磁石60と異なり、複数の円環形状体73のそれぞれの磁極の位相が、円周方向で所定量ずつずれている。すなわち、第2円環形状体732の内周面に存在する磁極の位相は、第1円環形状体731の内周面に存在する磁極に対して、円周方向で所定量ずれている。第3円環形状体733の内周面に存在する磁極の位相は、第2円環形状体732の内周面に存在する磁極に対して円周方向で所定量ずれている。さらに、換言すると、
図36に示すように、第1円環形状体731と第2円環形状体732とにおいて、互いに同じ形状および磁気モーメントのフィラメント11に着眼する。第2円環形状体732の内周面に存在するフィラメント11の端部の位置が、第1円環形状体731の内周面に存在するフィラメント11の端部の位置に対して、円周方向で所定量ずれている。所定量は、例えば、円環形状体23の中心位置を中心とする回転角で10度である。
【0132】
本実施形態のボンド磁石60Aによれば、円周方向で徐々にS極またはN極が増えているため、トルク変動が少なく、アウターロータ53が滑らかに回転することが期待できる。なお、本実施形態のボンド磁石60Aにおいては、2つ以上の円環形状体73が積層されていればよい。
【0133】
(他の実施形態)
(1)第1~第4実施形態では、基本構成部20、70の中心角θ20、θ70は45度である。このため、ボンド磁石10、10A、60、60Aの作用面の磁極の数は8である。しかしながら、中心角θ20、θ70は、11.25度~180度の範囲内の大きさで変更可能である。中心角θ20、θ70が11.25度の場合、ボンド磁石の作用面の磁極の数は32である。中心角θ20、θ70が180度の場合、ボンド磁石の作用面の磁極の数は2である。
【0134】
(2)第1実施形態のボンド磁石10において、第1構成部21は、第1フィラメント111~第15フィラメント125の15本のフィラメント11で構成される。同様に、第2構成部22は、第21フィラメント131~第35フィラメント145の15本のフィラメント11で構成される。しかしながら、第1構成部21および第2構成部22を構成する複数本のフィラメント11の本数は、任意に変更可能である。第2実施形態のボンド磁石60においても同様に、第1構成部71および第2構成部72を構成する複数本のフィラメント11の本数は、任意に変更可能である。
【0135】
(3)第1実施形態では、ボンド磁石10の製造において、第1構成部21を形成するために、第1フィラメント111~第15フィラメント125は、第1~第15の数字が小さい順に配置される。しかしながら、第1フィラメント111~第15フィラメント125が配置される順序はこれに限られない。第1構成部21が形成されるように、第1フィラメント111~第15フィラメント125が配置されればよい。例えば、第1フィラメント111~第15フィラメント125は、第1~第15の数字が大きい順に配置されてもよい。第2構成部22の形成においても同様である。
【0136】
同様に、第2実施形態では、ボンド磁石60の製造において、第1構成部71を形成するために、第1フィラメント111~第10フィラメント120は、第1~第10の数字が小さい順に配置される。しかしながら、第1フィラメント111~第10フィラメント120が配置される順序はこれに限られない。第1構成部71が形成されるように、第1フィラメント111~第10フィラメント120が配置されればよい。第2構成部72の形成においても同様である。
【0137】
(4)ボンド磁石の形状は、第1~第4実施形態に限られない。
図38に示すボンド磁石90のように、ボンド磁石は、互いに結合された複数本のフィラメント11で構成されていれば、円環形状以外の他の形状でもよい。
図38に示すボンド磁石90では、1本のフィラメント11は、2つの曲がっている部分を有する。しかしながら、1本のフィラメント11の全部が直線状であってもよい。
【0138】
(5)
図39に示すボンド磁石91は、互いに結合された複数本のフィラメント11を備える。複数本のフィラメント11のそれぞれは、フィラメント11の幅方向に並んでいる。
図40に示すように、ボンド磁石91を構成する複数本のフィラメント11のそれぞれは、一端11eから他端11fまで直線状に延び広がっている。一端11eから他端11fに向かうにつれて、フィラメント11の幅(すなわち、太さ)が徐々に大きくなっている。これにより、フィラメント11の幅方向に、複数本のフィラメント11が並ぶことで、円環形状の一部の形状をなすことができる。
【0139】
このように、複数本のフィラメント11のうち1本のフィラメント11において、フィラメント11の太さが異なる部分が存在する。これによれば、フィラメント11の太さをフィラメント11の部位によって異ならせることで、複数本のフィラメント11によって構成されるボンド磁石の形状の自由度を高めることができる。
【0140】
(6)上記した各実施形態では、
図11に示すように、ノズル33の内部に形成される磁場の向きは、磁粉12の磁気モーメントの向きを、ノズル33の軸線方向に対して平行な向きであって、複合材料14の進行方向D4に対して前方側がN極である向きとするための向きであった。しかしながら、磁場の向きは、磁粉12の磁気モーメントの向きを、ノズル33の軸線方向に対して平行な向きであって、複合材料14の進行方向D4に対して前方側がS極である向きとするための向きであってもよい。
【0141】
また、磁粉12の磁気モーメントの向きを狙いの向きとするために、磁場の向きは、他の向きであってもよい。例えば、
図41に示すように、磁場の向きは、磁粉12の磁気モーメントの向きを、ノズル33の軸線方向に対して垂直な向きするための向きであってもよい。この場合、ノズル33の内部を複合材料14が移動することで、複合材料14中の磁粉12の磁気モーメントの向きは、ノズル33の軸線方向に対して垂直な方向に沿う向きになる。互いに結合されてボンド磁石の形状をなす複数本のフィラメント11のそれぞれにおいて、フィラメント11の中心線CL1に沿う方向のそれぞれの部位における磁粉12の各粒子の磁気モーメントを総合した磁粉12の磁気モーメントの向きは、フィラメント11の中心線CL1に対して垂直な方向(すなわち、90度をなす方向)に沿う向きである。
【0142】
(7)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0143】
10 ボンド磁石
11 フィラメント
12 磁粉
13 樹脂材料
14 複合材料
20 基本構成部
21 第1構成部
22 第2構成部
23 円環形状体